特許第6180210号(P6180210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180210
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】体表面皮脂分布の測定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20170807BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20170807BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   A61B5/00 MZDM
   G01N21/64 Z
   A61B5/10 300Q
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-144598(P2013-144598)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2014-14687(P2014-14687A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2016年6月20日
(31)【優先権主張番号】201210238560.1
(32)【優先日】2012年7月10日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201310243160.4
(32)【優先日】2013年6月19日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】ティ ユ
(72)【発明者】
【氏名】リゥ チェンウェイ
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−509154(JP,A)
【文献】 特表2011−530351(JP,A)
【文献】 特開平02−294786(JP,A)
【文献】 特開2004−032068(JP,A)
【文献】 特開平05−103771(JP,A)
【文献】 特開2005−230301(JP,A)
【文献】 特開2008−183394(JP,A)
【文献】 特開2009−75109(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0269576(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/01
A61B 5/06−5/22
G01N 21/62−21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光を利用する体表面皮脂分布の測定方法であって、
画像形成システムによって被試験者の体表面蛍光画像を形成する体表面蛍光画像取得ステップと、
画像分析システムによって前記体表面蛍光画像からブライトーホワイトの蛍光点を取り出すブライトーホワイト蛍光点取出ステップと、
前記ブライトーホワイトの蛍光点の分布を前記体表面皮脂分布とし、且つ前記ブライトーホワイトの蛍光点の面積比率又は強度と、前記ブライトーホワイトの蛍光点に対応する前記被試験者の体表面の領域の皮脂量との正の相関性に基づく体表面皮脂分布取得ステップと、
を備える、体表面皮脂分布の測定方法。
【請求項2】
前記ブライトーホワイト蛍光点取出ステップは、
前記体表面蛍光画像における所定の数のブライトーホワイトの蛍光点を人工的に選択し、前記画像分析システムによって該ブライトーホワイトの蛍光点のRGB値を測定し、測定した複数のRGB値のうちの最大値を上限界値とし、測定した複数のRGB値のうちの最小値を下限界値とする限界値確定ステップと、
前記上限界値及び前記下限界値をパラメータとして前記画像分析システムに設定し、前記画像分析システムによってRGB値が上限界値以下且つ下限界値以上のブライトーホワイトの蛍光点を自動的に取り出す蛍光点取出ステップと、
を含む、請求項1に記載の体表面皮脂分布の測定方法。
【請求項3】
前記限界値確定ステップにおいては、10〜20個のブライトーホワイトの蛍光点を人工的に選択する、請求項2に記載の体表面皮脂分布の測定方法。
【請求項4】
前記ブライトーホワイトの蛍光点は、「sRGB IEC61966−2.1」に基づくカラースペースにおいて、Rが0〜30であり、Gが40〜255であり、Bが73〜255である蛍光点である、請求項1〜3のいずれかに記載の体表面皮脂分布の測定方法。
【請求項5】
前記画像形成システムは、
撮影ブースであって、前記撮影ブースの周りに黒色カーテンが設置される撮影ブースと、
前記撮影ブース内に設置され、前記被試験者の体表面に励起光を照射する光源と、
前記撮影ブース内に設置され、前記励起光で励起した前記被試験者の体表面の蛍光性物質から発させる蛍光を撮影し、前記被試験者の体表面蛍光画像を取得する撮影手段と、
を含む、請求項1に記載の体表面皮脂分布の測定方法。
【請求項6】
前記光源は、ウードランプであり、
前記励起光は、波長が320nm〜400nmである紫外光である、請求項5に記載の体表面皮脂分布の測定方法。
【請求項7】
前記画像分析システムは、規定の画素の面積比率及び強度を計算する機能を有する画像処理ソフトウェアからなる、請求項5に記載の体表面皮脂分布の測定方法。
【請求項8】
前記体表面蛍光画像取得ステップにおいては、前記撮影手段と前記被試験者の間の縦方向の距離又は前記撮影手段の焦点距離を変えることにより、前記体表面蛍光画像の解析度を調整する、請求項5に記載の体表面皮脂分布の測定方法。
【請求項9】
前記体表面蛍光画像取得ステップの前に前記被試験者の体表面を洗う体表面洗浄ステップをさらに備える、請求項1に記載の体表面皮脂分布の測定方法。
【請求項10】
体表面洗浄ステップが、石鹸や洗顔料で洗浄するステップである請求項9に記載の体表面皮脂分布の測定方法。
【請求項11】
前記体表面は、顔である請求項1〜10のいずれかに記載の体表面皮脂分布の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体表面皮脂分布の測定方法に関し、特に蛍光を利用する体表面皮脂分布の測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体表面、例えば顔、胸、下腹や背中などの脂漏部位の皮脂の過量の分泌は、通常、体表面の皮膚疾患と緊密な関係がある。例えば、ニキビは、皮脂が大量に分泌し、多すぎる皮脂が直ちに排出することができなくて、毛嚢の内で堆積して、それによって毛嚢の炎症の反応を招くことにより、にきびの症状を呈する。そのため、体表面の皮脂量が多い領域に対して治療を行うために、体表面の皮脂分布の測定が必要である。
【0003】
体表面の皮脂分布の測定には、一般的に、従来の皮脂測定器(sebumeter)が使われている。当該皮脂測定器は、光度計の原理に基づく器械であり、体表面の所定の領域の上に貼り付ける厚さ0.1mmの特殊な吸光テープが用いられる。このテープは、体表面の皮脂を吸収すると半透明になって、その透光量が変化する。すなわち、吸収した皮脂量が大きいほど、透光量が大きくなることから、透光量の変化に基づいて、この領域の上の皮脂量を測量することができる。しかし、皮脂測定器を採用する方法において、一回の測量は体表面の1つの部分の領域に対して行うことしかできなくて、もし全体の体表面の皮脂分布の測定が必要になれば、複数回の測量が必要になるので、測量ステップが煩雑になり且つ消耗時間が長いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、体表面皮脂分布を的確且つ迅速に測定できる体表面皮脂分布の測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、皮膚の診断に広範に運用されるウッド(Wood)ランプを利用して、体表面に対してウッドランプから発する長波長紫外光(UVA光)を照射した場合に、体表面から各種の色の蛍光が発せされることを発見した。尚、この場合のウッドランプは、高圧水銀ランプを発射光源とし、9%の酸化ニッケル含有の珪酸バリウムのフィルタ(Woodフィルタ)を通じ、320nm〜400nm波長の光を発し、ピークは365nmである。
【0006】
さらに、本発明者らは、大量の文献を研究した後に、体表面の皮脂が、ポルフィリンのような毛嚢に存在する蛍光性物質を体表面に発生させることを発見した。この蛍光性物質はUVA光などの励起光の励起で蛍光を発することから、上述の各種の色の蛍光は、皮脂による毛嚢中の蛍光性物質に起因し、且つ体表面の皮脂と蛍光との間に関連性が存在する可能性があると考えた。
【0007】
本発明者らは、上述の見解の下、皮脂測定器(sebumeter)によってそれぞれN名の被試験者の体表面の所定の領域の皮脂量を測定することで第1のデータ群を得て、画像分析システム(例えば、ソフトウェアImageJから構成する)によってN名の被試験者の体表面の所定の領域の異なる色の蛍光点の面積比率又は強さを測定することで第2のデータ群を得て、SPSS(Statistical Product and Service Solutions)ソフトウェアを使って第1のデータ群と第2のデータ群との間の関係を計算したところ、皮脂測定器によって測定した体表面の皮脂量と、画像分析システムによって測定したブライトーホワイトの蛍光点の面積比率又は強度との間に正の相関性がある(つまり、体表面皮脂分布とライトーホワイトの蛍光点の分布とが一致しており、且つ、ブライトーホワイトの蛍光点の面積比率又は強度が高いほど、ブライトーホワイトの蛍光点に対応する被試験者の体表面の領域の皮脂量が高くなる)、一方で、皮脂測定器によって測定した体表面の皮脂量と画像分析システムによって測定した他の色(例えば、オレンジーレッド)の蛍光点の面積比率又は強度との間に相関性がないこと見出したことから、特定の色であるブライトーホワイトの蛍光点を選び取って、体表面の皮脂とブライトーホワイトの蛍光点との間の関連性を検討する、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法は、蛍光を利用する体表面皮脂分布の測定方法であって、画像形成システムによって被試験者の体表面蛍光画像を形成する体表面蛍光画像取得ステップと、画像分析システムによって前記体表面蛍光画像からブライトーホワイトの蛍光点を取り出すブライトーホワイト蛍光点取出ステップと、前記ブライトーホワイトの蛍光点の分布を前記体表面皮脂分布とし、且つ前記ブライトーホワイトの蛍光点の面積比率又は強度と、前記ブライトーホワイトの蛍光点に対応する前記被試験者の体表面の領域の皮脂量との正の相関性に基づく体表面皮脂分布取得ステップと、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、体表面皮脂分布を的確且つ迅速にに測定できる体表面皮脂分布の測定方法を提供する。本発明の方法は、これまでに知られている皮脂測定技術と比較して、極めて短時間で測定することができる。また本発明の方法は、皮膚に測定具を接触あるいは接着させる方法ではなく、非接触で測定できるため、被測定者の皮膚に対するストレスがきわめて少ない。また、非接触による測定なので、本発明の方法によれば、皮脂の状態の継時的な測定が可能である。さらには、皮膚に乳液の塗布がされている状態や、各種のメークなどの化粧をした状態においても皮脂の測定をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、それぞれ普通光の照射下及びウッドランプから発する励起光の照射下の被試験者の体表面の写真を示す図である。
図2図2は、本発明に係る画像形成システムの概略構成を示す写真である。
図3図3は、本発明に係る画像形成システムの概略構成を示す側面図である。
図4図4は、被試験者の体表面の鼻翼における所定の領域上のsebumeterによって測定した体表面の皮脂量と画像分析システムによって測定したブライトーホワイトの蛍光点の面積比率との間の関係を示すグラフである。
図5図5は、被試験者の体表面の鼻翼における所定の領域上のsebumeterによって測定した体表面の皮脂量と画像分析システムによって測定したブライトーホワイトの蛍光点の強度との間の関係を示すグラフである。
図6図6は、被試験者の体表面の額における所定の領域上のsebumeterによって測定した体表面の皮脂量と画像分析システムによって測定したブライトーホワイトの蛍光点の面積比率との間の関係を示すグラフである。
図7図7は、被試験者の体表面の額における所定の領域上のsebumeterによって測定した体表面の皮脂量と画像分析システムによって測定したブライトーホワイトの蛍光点の強度との間の関係を示すグラフである。
図8図8は、被試験者の体表面の鼻翼における所定の領域上のsebumeterによって測定した体表面の皮脂量と画像分析システムによって測定したオレンジーレッドの蛍光点の面積比率との間の関係を示すグラフである。
図9図9は、被試験者の体表面の鼻翼における所定の領域上のsebumeterによって測定した体表面の皮脂量と画像分析システムによって測定したオレンジーレッドの蛍光点の強度との間の関係を示すグラフである。
図10図10は、被試験者の体表面の額における所定の領域上のsebumeterによって測定した体表面の皮脂量と画像分析システムによって測定したオレンジーレッドの蛍光点の面積比率との間の関係を示すグラフである。
図11図11は、被試験者の体表面の額における所定の領域上のsebumeterによって測定した体表面の皮脂量と画像分析システムによって測定したオレンジーレッドの蛍光点の強度との間の関係を示すグラフである。
図12図12は、本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法の第1の実施形態の構成を示すフロー図である。
図13図13は、本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法の第2の実施形態の構成を示すフロー図である。
図14図14は、本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法の第3の実施形態の構成を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法によれば、カラーデジタルカメラ等の撮影手段でウッドランプ照射下の被試験者の体表面を撮影し、被試験者の体表面蛍光画像を取得することにより、該体表面蛍光画像におけるブライトーホワイトの蛍光点の分布を利用して、体表面皮脂分布を取得することができるので、従来技術に比べて、被試験者の皮膚に直接接触する必要がなく、体表面皮脂分布を的確且つ迅速に測定でき、且つ、画像分析システムによって体表面蛍光画像からブライトーホワイトの蛍光点を取り出すので、体表面皮脂分布をリルタイムに測定できる。
【0012】
本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法において、前記ブライトーホワイト蛍光点取出ステップは、前記体表面蛍光画像における所定の数のブライトーホワイトの蛍光点を人工的に選択し、前記画像分析システムによって該ブライトーホワイトの蛍光点のRGB値を測定し、測定した複数のRGB値のうちの最大値を上限界値とし、測定した複数のRGB値のうちの最小値を下限界値とする限界値確定ステップと、前記上限界値及び前記下限界値をパラメータとして前記画像分析システムに設定し、前記画像分析システムによってRGB値が上限界値以下且つ下限界値以上のブライトーホワイトの蛍光点を自動的に取り出す蛍光点取出ステップと、を含むことが好ましい。そのように、まず、複数のブライトーホワイトの蛍光点を人工的に取出しそのRGB値を算出して、そのうちの最大値及び最小値をパラメータとして画像分析システムに設定することにより、ブライトーホワイトの蛍光点を画像分析システムで正確に取出することができ、それによって、体表面皮脂分布をより的確に測定することができ、また、適当な限界値を人工的に設定することにより、必要に応じて、蛍光点を異なる色に分割するように分析することができる。
【0013】
本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法において、前記限界値確定ステップにおいては、測定結果の安定性及び分析過程の効率性の視点から、10〜20個のブライトーホワイトの蛍光点を人工的に選択することが好ましい。
【0014】
本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法において、前記ブライトーホワイトの蛍光点は、「sRGB IEC61966−2.1」に基づくカラースペースにおいて、Rが0〜30であり、Gが40〜255であり、Bが73〜255である蛍光点である。
【0015】
本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法において、前記画像形成システムは、撮影ブースであって、前記撮影ブースの周りに黒色カーテンが設置される撮影ブースと、前記撮影ブース内に設置され、前記被試験者の体表面に励起光を照射する光源と、前記撮影ブース内に設置され、前記励起光で励起した前記被試験者の体表面の蛍光性物質から発させる蛍光を撮影し、前記被試験者の体表面蛍光画像を取得する撮影手段と、を含むことが好ましい。そのように、撮影ブースの周りに黒色カーテンが設置されることにより、黒色カーテンに囲まれるダーク環境において、被試験者の体表面に向けて分布均一な励起光を照射することができる。
【0016】
本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法において、前記光源は、ウードランプであり、前記励起光は、波長が320nm〜400nmである紫外光であることが好ましい。ウードランプが非接触、無傷害等の利点を有するので好ましい、また、励起光は波長が320nm〜400nmである紫外光であることにより、皮膚に対する傷害を避けることができる。
【0017】
本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法において、前記体表面蛍光画像取得ステップにおいては、前記撮影手段と前記被試験者の間の縦方向の距離又は前記撮影手段の焦点距離を変えることにより、前記体表面蛍光画像の解析度を調整することが好ましい。
【0018】
本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法において、前記画像分析システムは、規定の画素の面積比率及び強度を計算する機能を有する画像処理ソフトウェアからなることが好ましい。
【0019】
前記画像分析システムは、画像処理ソフトウェアImageJからなることがより好ましい。画像処理ソフトウェアImageJが通用のソフトウェアであり、National Institutes of Healthにより開発された。該画像処理ソフトウェアImageJは、取り込んだ画像に対し、必要な領域を特定し、画素分析を行う機能を有するので、体表面の皮脂の測定に適用することが容易である。
【0020】
本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法において、前記体表面蛍光画像取得ステップの前に前記被試験者の体表面を洗う体表面洗浄ステップをさらに備えることが好ましい。具体的には、まずは水で肌表面を濡らし、市販の石鹸又は洗顔料で肌表面を洗い、その後洗い落とす。一定時間後、例えば30分後、顔蛍光画像を取る。なお、本発明は、体表面洗浄ステップを備えていなくても、体表面皮脂分布の測定を行うことができる。
【0021】
体表面蛍光画像を得る時間は、体表面を洗った後の30分であり、体表面を洗う前ではない。このように、例えば空気の中に含んだ蛍光性物質の粉塵、蛍光性物質を含むタオル等のその他の要因を排除することができ、それにより、更に体表面皮脂分布を的確に測定することができる。
【0022】
また、上記の本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法において、前記体表面は、顔であることが好ましい。
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
(第1の実施形態)
【0024】
まず、ウッド(Wood)ランプ下の被試験者の体表面の画像を研究している。図1の左側の写真は、普通光(ここで、例えば日光)照射下の被試験者の体表面の写真を示し、図1の右側の写真は、ウッドランプから発する励起光(ここで、長波長紫外光(UVA光))の照射下の被試験者の体表面の写真を示す。
【0025】
図1に示されるように、本発明者らは、被試験者の体表面に対してウッドランプから発する励起光を照射する場合に、ほとんど全ての被試験者の体表面にライトーホワイト、オレンジーレッド、ターコイズブルー、黄色等の蛍光点があることを発見した。本発明者らは、当該状況に対して、大量の文献を研究した後に、体表面の皮脂が、体表面にポルフィリンのような毛嚢に存在する蛍光性物質の発生を招くことを発見した。この蛍光性物質はUVA光などの励起光の励起で蛍光を発することから、上述の各種の色の蛍光は皮脂による毛嚢中の蛍光性物質に起因し、且つ体表面の皮脂と蛍光との間に関連性が存在する可能性があると考えられた。
【0026】
次に、本発明者らは、40名の全ての皮膚種類の被試験者を選択し、画像形成システム1を利用して、該40名の被試験者のウッドランプ照射下の体表面の蛍光画像を取得する。
【0027】
ここで、40名の全ての皮膚種類の被試験者を選択することにより、サンプルの数及び種類を十分にさせるので、信頼性をより向上させる。
【0028】
図2は、本発明に係る画像形成システムの概略構成を示す写真である。図3は、本発明に係る画像形成システムの概略構成を示す側面図である。
【0029】
図2及び図3に示されるように、該画像形成システム1は、撮影ブース20、頭部位置付け装置30、撮影手段40、及び光源50を含む。撮影ブース20の周りに黒色カーテンが設置される。撮影手段40としては、ディジタルカラーカメラを採用している。光源50としては、ウッドランプ(三洋株式会社制、コンパクトブルーブラックランプFPL27BLB、波長320nm〜400nmのUVA光(紫外光)を発射する、ピーク値が365nmである)を採用している。ウッドランプは高圧水銀ランプを発射光源とし、9%の酸化ニッケル含有の珪酸バリウムのフィルタ(Woodフィルタ)を通じ、320nm〜400nm波長の光を発し、ピークは365nmである。ウードランプが非接触、無傷害等の利点を有するので好ましい、また、励起光は波長が320nm〜400nmである紫外光であることにより、皮膚に対する傷害を避けることができる。
【0030】
そして、被試験者の体表面10を撮影する時に、光源50から発射される紫外光(励起光)が頭部位置付け装置30上に位置する被試験者の体表面10に照射され、該紫外光で励起した被試験者の体表面10上の蛍光性物質から発させる蛍光が撮影手段40に向けて反射されるとともに、撮影手段40で撮影することにより、被試験者の体表面10の体表面蛍光画像を取得する。そのように、撮影ブースの周りに黒色カーテンが設置されることにより、黒色カーテンに囲まれるダーク環境において、被試験者の体表面に向けて分布均一な励起光を照射することができる。
【0031】
次に、皮脂測定器(sebumeter)を利用して、被試験者の体表面の所定の領域(即ち、特殊な吸光テープが貼り付けられる領域)上の皮脂量を測出する。そして、画像分析システムである画像分析ソフトウェアImageJを利用して、それぞれ該所定の領域上のブライトーホワイト及びオレンジーレッドの蛍光点を取り出し、ブライトーホワイト及びオレンジーレッドの蛍光点の面積比率及び強度をそれぞれ算出する。
【0032】
ここで、画像分析システムとしては、画像分析ソフトウェアImageJが例示されるが、画像分析システムは、規定の画素の面積比率及び強度を計算する機能を有する画像処理ソフトウェアからなることであれば、画像分析ソフトウェアImageJに限らず。なお、画像処理ソフトウェアImageJが通用のソフトウェアであり、National Institutes of Healthにより開発された。該画像処理ソフトウェアImageJは、取り込んだ画像に対し、必要な領域を特定し、画素分析を行う機能を有し、画像におけるRGB値等を分析できる通用のソフトウェアであるので、体表面の皮脂の測定に適用することが容易である。
【0033】
なお、体表面とは、例えば被試験者の顔、胸、下腹や背中などの脂漏部位である。
【0034】
図4及び図5は、それぞれ、被試験者の体表面の鼻翼における所定の領域上のsebumeterによって測定した体表面の皮脂量と画像分析システムによって測定したブライトーホワイトの蛍光点の面積比率/強度との間の関係を示すグラフである。
【0035】
図6及び図7は、それぞれ、被試験者の体表面の額における所定の領域上のsebumeterによって測定した体表面の皮脂量と画像分析システムによって測定したブライトーホワイトの蛍光点の面積比率/強度との間の関係を示すグラフである。
【0036】
図8及び図9は、それぞれ、被試験者の体表面の鼻翼における所定の領域上のsebumeterによって測定した体表面の皮脂量と画像分析システムによって測定したオレンジーレッドの蛍光点の面積比率/強度との間の関係を示すグラフである。
【0037】
図10及び図11は、それぞれ、被試験者の体表面の額における所定の領域上のsebumeterによって測定した体表面の皮脂量と画像分析システムによって測定したオレンジーレッドの蛍光点の面積比率/強度との間の関係を示すグラフである。
【0038】
図4図7から分かるように、鼻翼でも額でも、皮脂量とブライトーホワイトの蛍光点の面積比率/強度との間に正の相関性(関連係数が、それぞれ、0.682、0.612、0.656、0.586である)がある。逆に、図8図11から分かるように、鼻翼でも額でも、皮脂量とオレンジーレッドの蛍光点の面積比率/強度との間に関連性がない。
【0039】
上述のように、本発明者らは、40名の被試験者に対して、皮脂測定器(sebumeter)よってそれぞれ40名の被試験者の体表面の所定の領域の皮脂量を測定することで第1のデータ群を得て、画像分析システム(例えば、ソフトウェアImageJから構成する)によって40名の被試験者の体表面の所定の領域の異なる色の蛍光点の面積比率又は強さを測定することで第2のデータ群を得て、SPSS(Statistical Product and Service Solutions)ソフトウェアを使って第1のデータ群と第2のデータ群との間の関係を計算することにより、皮脂測定器によって測定した体表面の皮脂量と画像分析システムによって測定したブライトーホワイトの蛍光点の面積比率又は強度との間に正の相関性があり、つまり、体表面皮脂分布とライトーホワイトの蛍光点の分布とが一致しており、且つ、ブライトーホワイトの蛍光点の面積比率又は強度が高いほど、ブライトーホワイトの蛍光点に対応する被試験者の体表面の領域の皮脂量が高くなり、一方、皮脂測定器によって測定した体表面の皮脂量と画像分析システムによって測定した他の色(例えば、オレンジーレッド)の蛍光点の面積比率又は強度との間に相関性がないことを見出した。したがって、ブライトーホワイトの蛍光点の分布を測定することは、体表面皮脂分布を測定するための有効な方法である。
【0040】
本実施形態では、本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法は、蛍光を利用する体表面皮脂分布の測定方法である。
【0041】
図12は、本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法の第1の実施形態の構成を示すフロー図である。
【0042】
図12に示されるように、本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法は、画像形成システムによって被試験者の体表面蛍光画像を形成する体表面蛍光画像取得ステップと、画像分析システムによって前記体表面蛍光画像からブライトーホワイトの蛍光点を取り出すブライトーホワイト蛍光点取出ステップと、前記ブライトーホワイトの蛍光点の分布を前記体表面皮脂分布とし、且つ前記ブライトーホワイトの蛍光点の面積比率又は強度が高いほど、前記ブライトーホワイトの蛍光点に対応する前記被試験者の体表面の領域の皮脂量が高くなる体表面皮脂分布取得ステップ、すなわち、前記ブライトーホワイトの蛍光点の面積比率又は強度と、前記ブライトーホワイトの蛍光点に対応する前記被試験者の体表面の領域の皮脂量との正の相関性に基づく体表面皮脂分布取得ステップと、を備える。
【0043】
また、本実施形態では、ブライトーホワイトの蛍光点は、「sRGB IEC61966−2.1」に基づくカラースペースにおいて、Rが0〜30であり、Gが40〜255であり、Bが73〜255である蛍光点。一方、オレンジーレッドの蛍光点は、「sRGB IEC61966−2.1」に基づくカラースペースにおいて、Rが35〜255であり、Gが28〜255であり、Bが51〜157である蛍光点。ここで、「sRGB IEC61966−2.1」は、Windows(登録商標)環境で利用するモニタの標準的なカラースペースである。ここで、RGBは単色光の3元色と称して、それぞれ赤、緑、青であり、その数値は、R:0−255,G:0−255,B:0−255。
【0044】
なお、本実施形態では、「sRGB IEC61966−2.1」に基づくカラースペースを採用しているが、これに限定されることなく、「Adobe RGB (1998)」、「AppleRGB」、又は「ColorMatch RGB」などに基づくカラースペースを採用してもよい。「Adobe RGB (1998)」、「AppleRGB」、又は「ColorMatch RGB」などに基づくカラースペースを採用している場合、ブライトーホワイト、オレンジーレッドなどの色の蛍光点は、そのR、G、B値が、「sRGB IEC61966−2.1」に基づくカラースペース採用している場合と異なる。
【0045】
そのような体表面皮脂分布の測定方法によれば、カラーデジタルカメラ等の撮影手段でウッドランプ照射下の被試験者の体表面を撮影し、被試験者の体表面蛍光画像を取得することにより、該体表面蛍光画像におけるブライトーホワイトの蛍光点の分布を利用して、体表面皮脂分布を取得することができるので、従来技術に比べて、被試験者の皮膚に直接接触する必要がなく、体表面皮脂分布を的確且つ迅速に測定でき、且つ、画像分析システムによって体表面蛍光画像からブライトーホワイトの蛍光点を取り出すので、体表面皮脂分布をリルタイムに測定できる。
【0046】
また、上記の本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法において、体表面蛍光画像取得ステップにおいては、撮影手段と被試験者の間の縦方向Yの距離又は撮影手段40の焦点距離を変えることにより、体表面蛍光画像の解析度を調整していてもよい。
【0047】
(第2の実施形態)
図13は、本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法の第2の実施形態の構成を示すフロー図である。第2の実施形態に係る体表面皮脂分布の測定方法の構成は、第1の実施形態に係る体表面皮脂分布の測定方法の構成と大体同様であるので、その説明を省略する。以下、両者の相違点について説明する。
【0048】
第2の実施形態に係る体表面皮脂分布の測定方法は、ブライトーホワイト蛍光点取出ステップは、体表面蛍光画像における所定の数のブライトーホワイトの蛍光点を人工的に選択し、画像分析システムによって該ブライトーホワイトの蛍光点のRGB値を測定し、測定した複数のRGB値のうちの最大値を上限界値とし、測定した複数のRGB値のうちの最小値を下限界値とする限界値確定ステップと、上限界値及び下限界値をパラメータとして画像分析システムに設定し、画像分析システムによってRGB値が上限界値以下且つ下限界値以上のブライトーホワイトの蛍光点を自動的に取り出す蛍光点取出ステップと、を含む点において、第1の実施形態に係る体表面皮脂分布の測定方法と異なる。ここで、「ブライトーホワイトの蛍光点を人工的に取出する」とは、目視によりブライトーホワイトの蛍光点を得ることを意味している。
【0049】
そのように、まず、複数のブライトーホワイトの蛍光点を人工的に取出しそのRGB値を算出して、そのうちの最大値及び最小値をパラメータとして画像分析システムに設定することにより、ブライトーホワイトの蛍光点を画像分析システムで正確的に取出することができ、それによって、体表面皮脂分布をより切実的に測定することができ、また、適当な限界値を人工的に設定することにより、必要に応じて、蛍光点を異なる色に分割するように分析することができる。
【0050】
また、第2の実施形態に係る体表面皮脂分布の測定方法において、限界値確定ステップにおいては、測定結果の安定性及び分析過程の効率性の視点から、10〜20個のブライトーホワイトの蛍光点を人工的に選択していてもよい。しかしながら、ブライトーホワイトの蛍光点の個数が制限されていなく、ブライトーホワイトの蛍光点のRGB値の範囲を取得することができれば、その個数は10〜20個に限定されていない。
【0051】
(第3の実施形態)
図14は、本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法の第3の実施形態の構成を示すフロー図である。第3の実施形態に係る体表面皮脂分布の測定方法の構成は、第1の実施形態に係る体表面皮脂分布の測定方法の構成と大体同様であるので、その説明を省略する。以下、両者の相違点について説明する。
【0052】
第3の実施形態に係る体表面皮脂分布の測定方法は、体表面蛍光画像取得ステップの前に被試験者の体表面を洗う体表面洗浄ステップをさらに備える点において、第1の実施形態に係る体表面皮脂分布の測定方法と異なる。具体的には、まずは水で肌表面を濡らし、市販の石鹸又は洗顔料で肌表面を洗い、その後洗い落とす。一定時間後、例えば30分後、顔蛍光画像を取る。体表面蛍光画像を得る時間が、体表面を洗った後の30分であり、体表面を洗う前ではない、このように、例えば空気の中に含んだ蛍光性物質の粉塵、蛍光性物質を含むタオル等のその他の要因を排除することができ、それにより、更に体表面皮脂分布を的確に測定することができる。
【0053】
以上、本発明に係る体表面皮脂分布の測定方法の各実施形態を説明したが、本発明は上記の本実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 該画像形成システム
20 撮影ブース
30 頭部位置付け装置
40 撮影手段
50 光源
図1
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