特許第6180216号(P6180216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180216
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】連結具を有する上衣及び下衣を含む衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/02 20060101AFI20170807BHJP
   A41D 7/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   A41D13/02
   A41D7/00 D
   A41D7/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-152129(P2013-152129)
(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公開番号】特開2014-40695(P2014-40695A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-163150(P2012-163150)
(32)【優先日】2012年7月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594137960
【氏名又は名称】株式会社ゴールドウイン
(73)【特許権者】
【識別番号】592019523
【氏名又は名称】株式会社ゴールドウインテクニカルセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 宗治
(72)【発明者】
【氏名】伊東 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 のり子
【審査官】 藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−162896(JP,A)
【文献】 特開2005−350841(JP,A)
【文献】 特開2004−308089(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3111300(JP,U)
【文献】 特開2006−089901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/02
A41D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の連結具を有する上衣と、第1の連結具に係合する第2の連結具を有する下衣とを含み、所定の方向を有する衣服であって、
第1の連結具が、第1の連結具を備えるテープ状基材と、前記テープ状基材が取り付けられた補助布帛とを介して前記上衣の内側に取り付けられており、
第2の連結具が、第1の連結具と係合する位置において、前記下衣の外側に取り付けられており、そして
前記補助布帛が、前記所定の方向の一方の端部のみにおいて前記上衣に取付けられている、
ことを特徴とする、前記衣服。
【請求項2】
前記所定の方向が水平方向である、請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
第1の連結具を有する上衣と、第1の連結具に係合する第2の連結具を有する下衣とを含み、所定の方向と、前記所定の方向と直交する直交方向とを有する衣服であって、
第1の連結具が、第1の連結具を備えるテープ状基材と、前記テープ状基材が取り付けられた補助布帛とを介して前記上衣の内側に取り付けられており、
第2の連結具が、第1の連結具と係合する位置において、前記下衣の外側に取り付けられており、そして
前記補助布帛が、前記所定の方向の一方の端部と、前記直交方向の一方の端部とのみにおいて前記上衣に取付けられている、
ことを特徴とする、前記衣服。
【請求項4】
前記所定の方向及び前記直交方向が、それぞれ、丈方向及び水平方向である、請求項3に記載の衣服。
【請求項5】
前記補助布帛が、前記上衣と独立した布帛パーツである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の衣服。
【請求項6】
前記補助布帛が、その一部を前記上衣の内側の縫い目部分に縫い付け、そして/又は折り曲げ部分に縫い込むことにより、前記上衣の内側に取り付けられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の衣服。
【請求項7】
前記上衣が裏地を有し、前記補助布帛の少なくとも一部が、前記裏地に取り付けられている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の衣服。
【請求項8】
前記補助布帛が、前記上衣の内側に、接着又は溶着により取り付けられている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の衣服。
【請求項9】
第1の連結具を前記上衣の左右2カ所に有し、それに対応して第2の連結具を前記下衣の左右2カ所に有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の衣服。
【請求項10】
前記上衣の左右2カ所にそれぞれ複数の第1の連結具を備え、そして前記下衣の左右2カ所にもそれぞれ複数の第2の連結具を備えている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の衣服。
【請求項11】
水着である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上衣と下衣とに分かれたセパレートタイプの衣服に関する。より詳しく言えば、本発明は、上衣と下衣の双方にそれらをずれないようにつなぐ連結具を備えたセパレートタイプの衣服であって、連結具を衣服に取り付ける縫い目を外側から見えなくした、美観的に優れた衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上衣及び下衣を含む衣服、例えば、スポーツ用衣服では、運動時に上衣が捲れ、腹部が露出する場合があった。また、上衣及び下衣に分かれたセパレートタイプの水着は、ワンピースタイプの水着と比較して脱着がしやすいことから人気があるが、アクアエクササイズ等、水中で激しく動く際に、運動及び水流に起因して、腹部が露出する場合があり、ユーザーに敬遠されることがあった。
【0003】
上記問題点を改良するため、特許文献1〜3には、スナップボタン等の連結具により、上衣及び下衣を互いに固定することができるスポーツウェアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3111300号公報
【特許文献2】特開2006−89901号公報
【特許文献3】特開2011−162896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
連結具を備えたこれまでのセパレートタイプの衣服では、連結具の取り付けは、連結具を予め取り付けたテープ状基材を生地に縫い付けることで行われている。この場合、上衣に取り付けた連結具を衣服の外側から見たところを模式的に示した図9のように、衣服を着用した状態において、衣服2の外側から、連結具51及びテープ状基材52は見えないものの、縫い目53が見えてしまう。ファッション性を追求する商品の場合、外観から体のラインを隠すためのボタンや縫い目がわずかでも見えるようなものは、商品価値が非常に低くなるため、わずかな縫い目も外側から認識されないような技術が強く求められている。
【0006】
本発明は、ユーザーからの上記要望を満足させて、連結具を上衣に取り付ける縫い目が外側から見えないセパレートタイプの衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、第1の連結具を有する上衣と、第1の連結具に係合する第2の連結具を有する下衣とを含む衣服であって、第1の連結具が、第1の連結具を備えるテープ状基材と、上記テープ状基材を備える補助布帛とを介して上記上衣の内側に取り付けられており、そして第2の連結具が、第1の連結具と係合する位置において、上記下衣の外側に取り付けられていることを特徴とする衣服を見いだした。
【0008】
具体的には、本発明の要旨とするところは次のとおりである。
(1)第1の連結具を有する上衣と、第1の連結具に係合する第2の連結具を有する下衣とを含む衣服であって、
第1の連結具が、第1の連結具を備えるテープ状基材と、上記テープ状基材が取り付けられた補助布帛とを介して上記上衣の内側に取り付けられており、そして
第2の連結具が、第1の連結具と係合する位置において、上記下衣の外側に取り付けられていること、
を特徴とする、上記衣服。
【0009】
(2)上記補助布帛が、上記上衣と独立した布帛パーツである、(1)に記載の衣服。
(3)上記補助布帛が、その一部を上記上衣の内側の縫い目部分に縫い付け、そして/又は折り曲げ部分に縫い込むことにより、上記上衣の内側に取り付けられている、(1)又は(2)に記載の衣服。
【0010】
(4)上記上衣が、前身頃及び後身頃を含み、上記補助布帛が、上記前身頃又は後身頃と一体のパーツである、(1)に記載の衣服。
(5)上記上衣が裏地を有し、上記補助布帛のすくなくとも一部が、上記裏地に取り付けられている、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の衣服。
【0011】
(6)上記補助布帛が、上記上衣の内側に、接着又は溶着により取り付けられている、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の衣服。
(7)第1の連結具を上記上衣の左右2カ所に有し、それに対応して第2の連結具を上記下衣の左右2カ所に有する、(1)〜(6)のいずれか一項に記載の衣服。
【0012】
(8)上記上衣の左右2カ所にそれぞれ複数の第1の連結具を備え、そして上記下衣の左右2カ所にもそれぞれ複数の第2の連結具を備えている、(1)〜(7)のいずれか一項に記載の衣服。
(9)第1の連結具及び第2の連結具が、一対のスナップボタンで構成されている、(1)〜(8)のいずれか一項に記載の衣服。
【0013】
(10)スポーツ用衣服である、(1)〜(9)のいずれか一項に記載の衣服。
(11)上記スポーツ用衣服が水着である、(10)に記載の衣服。
【0014】
本明細書において、「内側」とは、ユーザーが衣服を着用した状態において、上衣又は下衣のユーザーの身体に面する側を意味し、「外側」とは、上衣又は下衣の内側とは反対側、すなわち外気に面する側を意味する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、連結具を備えるテープ状基材を取り付けた補助布帛を用い、この補助布帛を上衣の内側に連結させるようにしており、これにより上衣に連結具を取り付けるための縫い目が上衣の外側から見えなくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の衣服の実施態様の一つの斜視図である。
図2図1の衣服において、上衣の一部が裏返された状態を示す図である。
図3】本発明における補助布帛の一例を説明する図である。
図4】本発明における補助布帛のさらなる例を説明する図である。
図5】本発明の衣服の別の実施形態の斜視図である。
図6図5の衣服において、上衣の一部が裏返された状態を示す図である。
図7図5の衣服における補助布帛を説明するための図である。
図8】本発明における補助布帛のさらなる例を説明する図である。
図9】従来の衣服の上衣に取り付けた連結具を外側から見たところを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の衣服について、以下、必要に応じて図面を参照して、詳細に説明する。
図1は、本発明の衣服の実施態様の一つの斜視図である。図1の衣服1は、上衣2及び下衣3を含むセパレートタイプの水着であり、上衣2の内側の第1の連結具5を下衣の外側の第2の連結具(図示せず)に係合させ、上衣2と下衣3とを連結した状態を示している。なお、図1の斜視図において、図示していない下衣側の連結具と対をなす上衣側の第1の連結具5は衣服の左側のものだけが示されているが、上衣側の第1の連結具と下衣側の第2の連結具との対は、上衣の捲れを防止するという目的上、衣服の右側にも設けられることが好ましい。また、図1において、符号6、7及び8は、それぞれ、ファスナー、縫製部及び縫合部を示している。
【0018】
図2は、図1の衣服において、上衣が一部裏返された状態(上衣側の第1の連結具と下衣側の第2の連結具とを係合させる前、あるいはそれらの係合を解いた後の状態)を示す図である。第1の連結具5は、テープ状基材4に予め取り付けられたものを利用することができる。本発明では、このテープ状基材4を補助布帛12に取り付け、第1の連結具5が上衣2と下衣3とを連結する際に下衣3側の第2の連結具10と係合する位置にくるように、補助布帛12を上衣2の内側に取り付ける。
【0019】
第1の連結具5を備えたテープ状基材4の補助布帛12への取り付けは、テープ状基材4を補助布帛に縫い付けること(縫製)により行うのが簡単であり、好ましい。また、例えば、接着、溶着等の方法でテープ状基材4を補助布帛12に取り付けることもでき、そして縫製と、接着、溶着等とを併用することができる。
補助布帛12の上衣2の内側への取り付けは、縫製により、そして/又は接着、溶着等により行うことができる。
【0020】
本発明において、補助布帛12は、例えば、上衣2と独立した布帛パーツであることができる。あるいは、補助布帛12は、上衣2の前身頃又は後身頃と一体のパーツであることができる、すなわち、上衣2の前身頃又は後身頃から連続するパーツであることができる。
【0021】
上衣と独立した布帛パーツである補助布帛12を、縫製により上衣2の内側に取り付ける場合には、例えば、補助布帛12の少なくとも一部、例えば、その1辺を上衣2の裾折り曲げ部13に縫合し、他の1辺を上衣2の前後身頃の縫い目部分(縫合部)8に縫い付けることができる。こうすることで、第1の連結具5を上衣2に取り付けるための縫い目が、連結具5を備えたテープ状基材4を補助布帛12に取り付けるための縫い目を含めて、上衣2の外側に現れることがなくなり、ユーザーが、衣服1を着用した状態において美観的に美しい状態を作り出すことができる。
【0022】
接着、溶着等により補助布帛を上衣2に取り付ける場合には、補助布帛12を上衣2の内側の所定の位置に配置して、慣用の接着剤を用いる等により、補助布帛12を上衣2の内側に取り付けることができる。
補助布帛12が前身頃又は後身頃と一体のパーツである場合には、補助布帛12を、慣用の接着剤を用いる等により、上衣2の内側に取り付けることができる。
【0023】
また、補助布帛12が前身頃又は後身頃と一体のパーツである場合であって、上衣の前身頃及び後身頃の少なくとも一方が裏地を有するときには、補助布帛12の少なくとも一部を、上記裏地に縫い付けることができる。
また、補助布帛12は、その他の部分で上記上衣の内側の縫い目部分に縫い付け、そして/又は折り曲げ部分に縫い込むことにより上記上衣の内側に連結させることができる。
【0024】
図3は、補助布帛12が上衣2と独立した布帛パーツである実施形態を説明するための図である。なお、図3においては、簡単にするため縫い目は図示していない。
【0025】
図3に示される実施形態では、補助布帛12の形状は、直角三角形であるが、本発明の別の実施形態では、補助布帛は、直角三角形の斜辺15を直線でなく任意の曲線状にしたような擬似三角形等とすることができる。
直角三角形、擬似三角形等の補助布帛は、斜辺部分が上衣に取り付けられていない場合に、補助布帛が捲れるのを最小限度に抑える効果を有する。
【0026】
図3では、上衣2の前後身頃の縫い目部分(縫合部)8が、裾折り曲げ部13に対し直角をなしているため、直角三角形の補助布帛12を用いているが、例えば、縫合部8が裾折り曲げ部13に対し直角以外の角度を形成している場合は、補助布帛12はそれに応じて直角三角形以外の三角形(又は擬似三角形)の形状を取ることがある。あるいは、縫合部8が図3に示したように直線状でなく、曲線状である場合は、補助布帛12の縫合部8に縫い付けられる辺も、縫合部8の曲線に応じた形状をとることがある。
【0027】
上衣2が裏地(図示せず)を有する場合には、補助布帛12を上衣2の裏地に取り付けることも可能である。
【0028】
補助布帛12としては、それを介して第1の連結具5を上衣2の所定の位置に固定することを可能にする限り、任意の素材の生地を用いることができる。特に衣服が水着の場合は、補助布帛が余分な水を溜めるのを防ぐ目的で、メッシュ状の生地を用いるのが好適である。
【0029】
図4は、本発明における補助布帛のさらなる例を説明する図である。図4に示される実施形態では、後身頃21は裏地を有せず、前身頃(図示せず)が裏地2’を有している。補助布帛12は、前身頃と一体である擬似三角形のパーツによって構成されており、そして外側に膨らんだ曲線状の斜辺15を有している。そして補助布帛12は、縫合部8から前身頃側に折り返して、斜辺15を前身頃の裏地2’に縫い付け、他の1辺(下辺)を前身頃の裾折り曲げ部13に縫い込むことにより、上衣の内側に取り付けられている。
【0030】
このようにして、第1の連結具5を上衣2に連結させるための縫い目が、連結具5を備えたテープ状基材4を補助布帛12に取り付けるための縫い目を含めて、上衣2の外側に現れることがなくなり、ユーザーが衣服1を着用した状態において美観的に美しい状態を作り出すことができる。図4においても、簡単にするため縫い目は図示していない。
【0031】
上衣の前身頃及び後身頃が裏地を有しない場合は、補助布帛12を、前身頃又は後身頃の裏側に接着又は溶着により連結させることにより、上衣の内側に取り付けることができる。
【0032】
本発明においては、上述のように、上衣側の第1の連結具と下衣側の第2の連結具との対は、上衣の捲れを防止するという目的上、衣服の左右両側に設けられるべきである。この場合において、双方の対の上衣側の第1の連結具を前身頃又は後身頃のいずれか一方の布帛材料の一部である補助布帛に取り付けてもよく、あるいは、一方の対の上衣側の第1の連結具は前身頃の布帛材料の一部である補助布帛に取り付け、もう一方の対の上衣側の第1の連結具は後身頃の布帛材料の一部である補助布帛に取り付けるようにしてもよい。
【0033】
下衣3側の第2の連結具10(図2)は、やはりテープ状基材9に予め取り付けられたものを利用することができる。テープ状基材9の下衣3への取り付けは、取り付けのための縫い目を気に掛ける必要がないため、下衣3に直接縫い付ける、接着、溶着する等の任意の方法で行うことができる。例えば、特許文献3に記載されるように、下衣側の連結具10のためのテープ状基材9を、連結具10の係合されない側と下衣3との間に指を入れることができるように下衣3の外側に取り付けると、上衣及び下衣の連結を痛みを感じることなく行うことができ、好適である。
【0034】
図5は、本発明の衣服の別の実施形態の斜視図である。図5の衣服1は、上衣2及び下衣3を含むセパレートタイプの水着であり、Aラインシルエットのチュニック丈水着である。図5に示される衣服1では、上衣2の内側の第1の連結具5を下衣の外側の第2の連結具(図示せず)に係合させ、上衣2と下衣3とを連結した状態が示されている。なお、図5の斜視図において、図示していない下衣側の連結具と対をなす上衣側の第1の連結具5は衣服の左側のものだけが示されているが、上衣側の第1の連結具と下衣側の第2の連結具との対は、上衣の捲れを防止するという目的上、衣服の右側にも設けられることが好ましい。また、図5において、符号6、7及び8は、それぞれ、ファスナー、縫製部及び縫合部を示している。
【0035】
図6は、図5の衣服において、上衣が一部裏返された状態(上衣側の第1の連結具と下衣側の第2の連結具とを係合させる前、あるいはそれらの係合を解いた後の状態)を示す図である。第1の連結具5は、テープ状基材4に予め取り付けられたものを利用することができる。本発明では、このテープ状基材4を補助布帛12に取り付け、第1の連結具5が上衣2と下衣3とを連結する際に下衣3側の第2の連結具10と係合する位置にくるように、補助布帛12を上衣2の内側に取り付ける。
【0036】
第1の連結具5を備えたテープ状基材4の補助布帛12への取り付けは、テープ状基材4を補助布帛に縫い付けること(縫製)により行うのが簡単であり、好ましい。また、例えば、接着、溶着等の方法でテープ状基材4を補助布帛12に取り付けることもでき、そして縫製と、接着、溶着等とを併用することができる。
図6に示される衣服1では、補助布帛12は、上衣2と独立した布帛パーツであるが、本発明の衣服の別の実施形態では、補助布帛は、上衣と一体のパーツ、例えば、上衣の前身頃又は後身頃と一体のパーツである。
【0037】
図7は、図5の衣服1における補助布帛を説明するための図である。図5において、補助布帛12は略矩形であり、そして補助布帛12の長辺の1つが、上衣2の前後身頃の縫い目部分である縫合部8に縫い付けられている。図7に示される補助布帛12は、1つの長辺及び2つの短辺が上衣2に取り付けられていない。
【0038】
図7に示される補助布帛12では、第1の連結具5を備えるテープ状基材4が、補助布帛12に取り付けられ、具体的には、縫合部7を介して補助布帛12に縫い付けられている。
図7に示される実施形態では、補助布帛12が長辺の1つのみで上衣2に固定されているため、自由に動くことができ、そして補助布帛12に固定された第1の連結具5がまた、自由に動くことができ、着用時にユーザーが大きな動作をしても、第1の連結具5と、第2の連結具10(図示せず)との係合が外れにくく、上衣2が捲れにくい。
また、図7に示される実施形態は、Aラインシルエットのチュニック丈水着のフワッととした着用感を維持しながら、捲れを防止することができる。
【0039】
図8は、本発明における補助布帛のさらなる例を説明するための図である。図8に示される補助布帛12は略台形を有し、そして上底が上衣2の前後身頃の縫い目部分である縫合部8に縫い付けられている以外は、図7に示される補助布帛12と同一である。
図8に示されるような実施形態では、補助布帛12が上底のみで上衣2に固定されているため、図7に示される実施形態よりも自由に動くことができ、そして補助布帛12に固定された第1の連結具5がまた、図7に示される実施形態よりも自由に動くことができ、着用時にユーザーが大きな動作をしても、第1の連結具5と、第2の連結具10(図示せず)との係合が外れにくく、上衣2が捲れにくい。
また、図8に示される実施形態は、図7に示される実施形態と同様に、Aラインシルエットのチュニック丈水着のフワッととした着用感を維持しながら、捲れを防止することができる。
【0040】
図2では、上衣側の第1の連結具5及び下衣側の第2の連結具10の個数は、それぞれ2個であるが、本発明においては、第1及び第2の連結具の個数は特に制限されず、それぞれ独立して、1個又は複数、例えば、2個、3個若しくは4個以上であることができる。第1及び第2の連結具はそれぞれ複数個であること、すなわち複数対の連結具を用いることが好ましい。1対が破損しても、ほかの対の連結具がそれを補完することができるからである。
【0041】
また、上衣2と下衣3が複数の連結具を有する実施形態は、特に第1の連結具及び第2の連結具が丈方向に配列される場合に、第1の連結具と、対になる第2の連結具をずらして係合させることができ、ユーザーの個人差、特に身長差に適合するサイズ調節機能を有することができる。本明細書において、「丈方向」とは、ユーザーの頭から足にかけての方向を意味する。
【0042】
補助布帛12に取り付ける第1の連結具5を複数とする場合、連結具を備えたテープ状基材4は1つであっても複数であってもよい。例えば、補助布帛12に2個の連結具を取り付ける場合は、補助布帛12には連結具5を1個ずつ備えた基材状テープを2つ取り付けることができ、3個の連結具5を取り付ける場合は、連結具5を1個ずつ備えたテープ状基材を3つ取り付けてもよく、あるいは連結具5を1個備えたテープ状基材と2個備えたテープ状基材とを1つずつ取り付けることもできる。
【0043】
また、図1図8では、第1の連結具5及び第2の連結具10が、それぞれ丈方向に配置されるように取り付けられているが、本発明においては、上記方向は特に限定されず、第1の連結具及び/又は第2の連結具が、例えば、丈方向、丈方向に対し30°の角度を有する方向、丈方向に対し45°の角度を有する方向、丈方向に対し60°の角度を有する方向、丈方向に対し90°の角度を有する方向(水平方向)等に配置されるように、上衣及び/又は下衣に取り付けられてもよい。
【0044】
図1〜8に示される実施形態では、第1の連結具及び第2の連結具がスナップである。上記スナップとしては、例えば、スナップボタン、スナップリング、アメリカンスナップ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明において、「スナップ」には、ホックが含まれる。
【0045】
本発明における第1の連結具及び第2に連結具は、スナップに限らず、力を加えることにより互いに係合させることができるものであれば、特に制限されない。例えば、面ファスナー等を、第1の連結具及び第2の連結具として用いることも可能である。面ファスナーは、機械的結合を用いたファスナーであり、例えば、表面に複数の突起、例えば、鉤状、きのこ状、錨状の突起が形成されたフック部と、表面に複数のループが配置されたループ部とを組み合わせたものを挙げることができる。面ファスナーは、フック部の複数のフックを、ループ部の複数のループに係合させることにより、2つの部位を剥離可能なように固定することができる。
【0046】
第1の連結具及び第2の連結具は、一対の連結具として用いられるものであり、例えば、第1の連結具及び第2の連結具がスナップである場合には、第1の連結具が凸部材であり、そして第2の連結具が凹部材であってもよく、あるいは第1の連結具が凹部材であり、そして第2の連結具が凸部材であってもよい。同様に、第1の連結具及び第2の連結具が面ファスナーである場合には、第1の連結具がフック部を有する部材であり、そして第2の連結具がループ部を有する部材であってもよく、又は第1の連結具がループ部を有する部材であり、そして第2の連結具がフック部を有する部材であってもよい。
【0047】
第1及び第2の連結具を備えたテープ状基材4、9は、衣服に一般的に用いられる基材であり且つ第1の連結具及び第2の連結具を保持することができるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、テープ状の織物、編物等を挙げることができる。第1の連結具及びテープ状基材の組み合わせ、又は第2の連結具及びテープ状基材の組み合わせが、例えば、モリト株式会社からテーピースナッパー(商標)の名称で市販されており、これを用いてもよい。
【0048】
本発明の衣服は、一対の上衣及び下衣を有するものであれば、特に制限されず、例えば、日常生活用の衣服、スポーツ用衣服が挙げられる。これらの衣服の中では、スポーツ用衣服が好ましい。スポーツ用衣服の場合は、ユーザーの激しい動きによって上衣が捲れる可能性が大きいからである。
【0049】
スポーツ用衣服としては、特に制限されないが、例えば、陸上競技、野球、ソフトボール、テニス、ハンドボール、体操、卓球、バドミントン、サッカー、バスケットボール、バレーボール、自転車、スキー、スノーボード、スケート、水泳、ボートレース用の衣服を始め、持久系スポーツ、ランニング、ウォーキング、トレッキング、登山、ゴルフ等用の衣服が挙げられる。
【0050】
スポーツ用衣服のなかでも、特に水着が好ましい。水着は一般的に体にフィットし、特に水中でのユーザーの運動と水流に起因して、上衣が捲れ易いからである。
【0051】
本発明の衣服において、上衣は、下衣と重なり合う部分があれば、それ以外は特に制限されず、例えば、袖に関しては、半袖、五分袖、七分袖、長袖等であることができ、そして身丈に関しては、例えば、ウエストまで、腹囲まで、ヒップまで、そして大腿部までであることができる。図1に例示した水着では、上衣2はファスナー6を有し、前部を開いて着脱することができるが、本発明に用いられる上衣においてファスナーは必須ではない。また、本発明の衣服において、下衣は、上衣と重なり合う部分があれば、それ以外は特に制限されないが、身丈に関しては、例えば、股下まで、膝上まで、膝下まで、足首まで、そして足までであることができる。
【0052】
本発明の衣服において、上衣及び下衣の素材は、衣服において通常用いられる素材であれば、特に制限されず、例えば、天然繊維及び合成繊維に由来する、織物、編物等を挙げることができる。
【0053】
以下、実施例により本発明を更に説明する。
【実施例】
【0054】
図1、2に示されるような、上衣の外側に連結具取り付け用の縫い目のない本発明による水着と、上衣の外側に連結具取り付け用の縫い目が現れた従来の水着を用意し、それぞれを複数名のモニターに試着してもらった。本発明による水着としては、上衣と独立した布帛パーツである補助布帛を用いたものと、上衣の前身頃と後身頃との縫合部からはみ出した前身頃の布帛材料によって構成される補助布帛を用いたものの2種類を用意した。本発明による水着でも、従来の水着でも、連結具を備えた基材状テープは同一のものを使用した。
【0055】
モニターに試着した上での外観について尋ねると、従来の水着と比較して、本発明による水着の方が美観的に優れており、好ましいとの回答を得た。
また、プールに入り運動してもらった後に尋ねると、運動機能上はどちらの水着も違いがないとの回答を得た。
【符号の説明】
【0056】
1 衣服
2 上衣
2’ 上衣の裏地
3 下衣
4,9 テープ状基材
5 第1の連結具
6 ファスナー
7 縫製部
8 縫合部
10 第2の連結具
12 補助布帛
13 裾折り曲げ部
15 斜辺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9