(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の基地局に対して重複せずに送信タイミングが規定され、各基地局が自己の送信タイミングで当該送信タイミングを示す情報を含む信号を端末局へ送信する無線通信システムであって、
前記端末局は、
前記規定の内容を示す情報を記憶する記憶手段と、
前記基地局から送信される信号を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された信号に含まれる前記送信タイミングを示す情報と前記記憶手段に記憶された前記規定の内容を示す情報とに基づいて、前記受信手段により受信された信号に対応する基地局の送信タイミングを特定し、同期捕捉対象の基地局の送信タイミングで同期を取れた場合に、当該基地局の送信タイミングに同期した受信タイミングで前記受信手段により信号を受信させるように、当該基地局を同期捕捉する同期手段と、を備えた、
ことを特徴とする無線通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
以下では、第1〜第10の10個の基地局が共通の制御用チャネルを用いて制御信号を送信するMCA無線システムを例に説明する。まず、本例のMCA無線システムの基本的な構成や動作を
図1、
図2を参照して説明する。
【0021】
図1に示すように、一実施形態としてのMCA無線システムは、通信卓101と回線制御装置102を備えた制御局103があり、制御局103の回線制御装置102には基地局104及び基地局105が通信可能に接続されている。なお、上記のように、本実施形態では第1〜第10の10個の基地局を備えているが、
図1は図面の簡略のため、2つの基地局104、105のみを図示している。
【0022】
基地局104及び基地局105は、それぞれ基地局ゾーン(通信可能エリア)106,107を有しており、これらの基地局ゾーン106,107がそれぞれの基地局104,105のサービスエリアとなる。各基地局の基地局ゾーンの全てを合わせたものがこのMCA無線システムのサービスエリアとなる。
また、複数の移動局108〜112があり、移動局108,109,110は基地局104のサービスエリア(基地局ゾーン106)に、移動局111,112は基地局105のサービスエリア(基地局ゾーン107)に位置しており、基地局104,105のそれぞれと無線により通信を行う。これら移動局108〜112は、携帯無線機や車載無線機等の移動可能な端末局であるが、固定的に設置された端末局を用いてもよい。
【0023】
本システムでは無線方式としてSCPCを採用し、複数のチャネル(上下ペア波)が利用可能である。
図1には使用状況の一例として、制御用チャネルにCH1(上り周波数:f1、下り周波数:f2)、通信用チャネルにCH2(上り周波数:f3、下り周波数:f4)及びCH3(上り周波数:f5、下り周波数:f6)が割り当てられた例を示している。つまり、各基地局は制御用チャネルCH1を共用して使用し、通信卓101と移動局108〜112との間や移動局108〜112間の通信(音声通話やデータ通信など)には他の通信用チャネルCH2、CH3等を割り当てて使用する。
【0024】
図2には、MCA無線システムの通信手順の例を示す。
ここでは、2つの移動局108,109間の通信を例に説明する。
まず、移動局108,109は、通信を行っていない時は制御用チャネルで待ち受ける。移動局108が発呼すると、移動局108は、制御用チャネルにて基地局104に通信開始要求を送信する。基地局104は、移動局108からの通信開始要求を受信すると、回線制御装置102に移動局108からの通信開始要求を通知する。回線制御装置102は、通信相手(本例では移動局109)がビジー状態である等の通信不可能状態でなければ、空いている通信用チャネルを割り当てて、通信開始と使用する通信用チャネルを通信相手に通知するよう基地局104に指示を出す。回線制御装置102からの指示を受けた基地局104は、移動局108とその通信相手である移動局109に対して、通信開始と使用する通信用チャネルを通知する。通信開始と使用する通信用チャネルの通知を受けた移動局108,109は、指示に従ってチャネル設定を指定された通信用チャネルに変更し、通信を開始する。
【0025】
以上のように、本例のMCA無線システムでは、接続要求など制御系のやり取り(制御信号の送信)は制御用チャネルで行い、通信開始要求に対しては回線制御装置にて空いている通信用チャネルを逐次その通信に割り当てていくことで、システムに割り当てられた一定数の周波数(チャネル)を効率的に利用している。
【0026】
次に、本システムにおける制御用チャネルの使用方法の詳細について説明する。ここで、本明細書では、フレーム長40msの無線フレームを複数まとめたものをサブフレームと呼び、更にサブフレームを複数まとめたものをスーパーフレームと呼ぶこととする。また、各基地局はGPS(Global Positioning System)受信機を備え、GPS受信機から出力される時刻情報及び基準信号(例えば、時刻情報が1秒を刻むタイミングを示す1秒周期の矩形波信号である1PPS信号)に基づいて、各基地局が共通のタイミング周期を持つように同期を取っているものとする。
【0027】
図3には、スーパーフレーム及びサブフレームのフレーム構成の例を示してある。
同図の例では、スーパーフレーム内の各サブフレームは、第1の基地局に対応するサブフレームから第10の基地局に対応するサブフレームへと順番に並んでいる。また、サブフレームは30個の無線フレーム(40ms)により構成され、スーパーフレームは300個の無線フレーム(40ms)により構成されている。スーパーフレーム内の各無線フレームには識別情報として0〜299のフレーム番号を付してあり、フレーム番号0〜29の無線フレームが第1の基地局に対応するサブフレームに属し、フレーム番号30〜59の無線フレームが第2の基地局に対応するサブフレームに属し、・・・、フレーム番号270〜299の無線フレームが第10の基地局に対応するサブフレームに属する。
【0028】
サブフレームは30個の無線フレームで構成されるので、40ms×30フレーム=1200ms(=1.2秒)の送信時間を有することになる。また、スーパーフレームは300個の無線フレームで構成されるので、40ms×300フレーム=12000ms(=12秒)の送信時間を有することになる。このような構成とすれば、スーパーフレームは12秒で完結するため、例えば、毎分0秒、12秒、24秒、36秒、48秒というように区切りの良い時間単位でスーパーフレームが開始するように基準点を設定することができ、各基地局が共通のタイミングで動作するように同期を取りやすくなる。つまり、各基地局がGPS受信機から出力される基準信号だけでなく、時刻情報を用いて同期を取ることにより、より高精度な基地局間タイミング同期が可能になる。
【0029】
サブフレームは、10フレームの占有区間と、これに続く20フレームの共用区間に分かれる。すなわち、占有区間は40ms×10フレーム=400msの送信時間を有し、共用区間は40ms×20フレーム=800msの送信時間を有する。
占有区間は、対象の基地局が占有する区間であり、共用区間に比べて長いので比較的容量が大きい情報の送信も可能となる。
共用区間は、全ての基地局が共用する区間であり、全基地局を対象にして順番に2フレームずつ割り当てられる。この割り当ては占有区間対象の基地局の次の基地局から順番に行われ、最後に占有区間対象の基地局の割り当てとなる。
例えば、第1の基地局を占有区間対象の基地局としたサブフレームでは、まず、第1の基地局に10フレームを割り当て、その後、第2の基地局から第10の基地局へと順番に2フレームずつ割り当て、最後に第1の基地局に2フレーム割り当てるフレーム構成となる。
【0030】
図3の例では、サブフレーム内の占有区間に割り当てられた10フレームのうち、最初の3フレームを同期バースト(SB)に用い、残りの7フレームを通信情報用チャネル(SC)に用いる構成となっている。この通信情報用チャネルには、報知情報や通信接続のための接続情報が含まれる。通信情報用チャネルの送信期間は、場合によって一部または全部が空線(送信なし)であってもよい。
また、サブフレーム内の共用区間で各基地局に割り当てられた2フレームのうち、先頭の1フレームを同期バースト(SB)に用い、次の1フレームを同期バースト又は通信情報用チャネル(SB/SC)に用いる構成となっている。
【0031】
図4には、スーパーフレームにおける全基地局の送信タイミングの例を示してある。
同図によれば、第1の基地局から第10の基地局の順に送信時間の割り当てが循環して行われる。また、送信時間の割り当てが一巡する間において、1つの基地局に対してのみ長い送信時間(10フレーム)が割り当てられ、他の基地局に対しては短い送信時間(2フレームずつ)が割り当てられる。また、送信時間の割り当てが一巡する毎に長い送信時間の割り当て基地局が順番にシフト(変更)され、1つのスーパーフレームが終了するまでに長い送信時間の割り当てが各基地局に対して1回ずつ行なわれる。すなわち、1つのスーパーフレームにより、全ての基地局に長い送信時間が1回ずつ与えられる一連の周期が完結する。
一方、無線フレームに着目すれば、各々の無線フレームは何れかの基地局に専用的に割り当てられるため、信号の同時送信による衝突が回避される。また、全ての無線フレームが必ず何れかの基地局に割り当てられるため、1つの制御用チャネルを無駄なく利用することができる。
【0032】
このように、各基地局が共通のタイミング周期を持つように同期を取り、互いの基地局で送信が衝突しないように(送信時間が重複しないように)送信タイミングを割り振る(各基地局が自身の送信タイミングを予め保持する)ことで、複数の基地局が共通の制御用チャネル(例えば1チャネル)を用いる場合でも、各基地局から送信される信号が衝突することを回避でき、これに起因する同一波干渉を防ぐことが可能となる。
また、長い送信時間と短い送信時間を用意し、送信時間の割り当てが一巡する間において、いずれかの基地局は長い送信時間である第1の信号の送信タイミングを有し、他の基地局は短い送信時間である第2の送信タイミングを有するので、比較的大きい容量の情報を送信する必要がある基地局は第1の送信タイミングを得た際に当該情報の送信を行うことができる。
また、送信時間の割り当てが一巡する毎に、長い送信時間の割り当て基地局が順番にシフト(変更)されるので、特定の基地局に長い送信時間の割り当てが占有されることはなく、各基地局は比較的大きい容量の情報を送信する機会を得ることができる。
【0033】
図5には、スーパーフレームにおける1つの基地局に着目した送信時間の例を示してある。
同図では第1の基地局に着目しており、スーパーフレーム内の先頭10フレーム(フレーム番号0〜9)が占有区間であり、この占有区間はスーパーフレーム毎に1度の周期で回ってくる。これに対し、共用区間(占有区間以外)においては、占有区間の直後に18フレームの送信無し区間を置いた後に2フレーム分の送信時間があり、その後は28フレーム周期で(26フレームの送信なし区間を置いて)2フレーム分の送信時間が回ってくる。
【0034】
すなわち、各基地局には10フレーム分の長い送信時間は比較的長い周期(300フレーム周期)で割り当てられ、2フレーム分の短い送信時間は比較的短い周期(ほぼ28フレーム周期)で割り当てられる。
長い送信時間は、次の割り当てまでの間隔が長いので、比較的即時性を必要としない情報(例えば、報知情報)を載せた信号の送信に用いるようにする。また、基地局から信号を受信する移動局側では、長い送信時間の同期バーストを利用して同期処理を行うことで同期をとりやすくなる。ただし、移動局は短い送信時間における同期バーストで同期を確立してもよい。また、呼接続情報がある場合にその信号の送信に用いるようにしてもよく、即時性が要求される情報を載せた信号の送信に用いることを禁止するものではない。
短い送信時間は、次の割り当てまでの間隔が短いので、呼接続情報等の即時性が要求される情報を載せた信号の送信に用いるようにする。また、情報が無い場合は空線(或いは同期バースト)等を送信する。また、短い送信時間の同期バースト信号は、移動局が基地局との同期を維持するための信号としても利用できる。
【0035】
このように、スーパーフレーム内で各基地局に割り当てる送信時間として、長い送信時間と短い送信時間の2種類を用意したので、報知情報のような急を要しない情報やデータ量が多い情報は比較的長い周期で割り当てられる長い送信時間を用いて送信し、接続要求のような早く通知したい情報は比較的短い周期で割り当てられる短い送信時間を用いて全ての基地局から送信するといったように、送信する情報の特性(役割や即時性やデータ量等)に応じて長い送信時間又は短い送信時間を選んで情報の送信を行うことができる。このため、各基地局が共通の制御用チャネルで制御信号を送信する必要がある環境であっても、ユーザにとって使い勝手の良いMCA無線システムを提供することが可能となる。
【0036】
なお、
図3〜
図5を参照して説明したフレーム構成は例示に過ぎず、スーパーフレーム内のサブフレーム数や無線フレーム数、無線フレーム長、各送信時間で送信する情報などは、MCA無線システムを動作させる環境(例えば、チャネル数、割り当て周波数の帯域幅や基地局数)等の要因に応じて決定すればよい。また、1つのサブフレーム内で複数の基地局に長い送信時間を割り当てる構成としてもよい。また、本例のように送信時間を割り当てる基地局の順序を常に一定とするのではなく、送信時間の割り当てが一巡する毎に異なる順序で各基地局に送信時間を割り当てるように構成してもよい。
【0037】
次に、上記のMCA無線システムにおける移動局について説明する。
本システムの移動局は、基地局捕捉処理や基地局切替処理を有する。
基地局捕捉処理は、移動局の装置の起動時に、任意の基地局に対して同期を試み、いずれかの基地局と同期を取れた場合に、当該基地局が運用に最も適した基地局(以下、最適基地局)であれば当該基地局を通信相手としてそのまま同期捕捉し、最適基地局でなければ同期捕捉の対象(通信相手)を最適基地局に切り替える処理である。
基地局切替処理は、同期捕捉中の基地局が最適基地局でなくなったことが判明した場合(受信レベルが低下した場合)に、最適基地局を選択し直して、同期捕捉の対象を当該選択後の最適基地局に切り替える処理である。
【0038】
基地局と同期を取れたとは、当該基地局の送信タイミングに移動局の受信タイミングを合わせることができたことを意味する。基地局と同期を取れたか否かは、当該基地局から有意なデータ(誤りが無い又は誤り率が所定値未満のデータ)を受信できたか否かで判断できる。
また、基地局を同期捕捉するとは、当該基地局との同期を維持し続け、当該基地局の送信タイミングに同期した受信タイミングで信号を受信すること、すなわち、スーパーフレーム内の各無線フレームのうち当該基地局に送信時間が割り当てられた無線フレームの受信を行うことを意味する。
【0039】
ここで、本システムの各基地局は、互いに重複しないように規定された送信タイミングに基づいて、自局(基地局)の送信タイミングで信号の送信を行い、このとき、当該信号にその送信タイミングを示す情報を含めることとする。本例では、送信タイミングを示す情報として、スーパーフレーム内の各無線フレームを一意に識別する識別情報であるフレーム番号を用い、各無線フレームにそのフレーム番号を格納して送信するが、当該手法に限定するものではなく、信号の送信タイミングを特定可能な情報を移動局側に伝達できればよい。
また、本システムの各基地局は、長い送信時間が割り当てられた送信タイミングにおいて、先頭の数フレームを同期バーストに用い、残りのフレームを通信情報用チャネルに用い、通信情報用チャネルにて、自局の基地局状態(後述する)の情報を含めた報知情報を送信するものとする。
【0040】
移動局は、スーパーフレーム内の各無線フレームのフレーム番号と、当該フレーム番号を割り当てられた基地局を一意に識別する基地局番号との対応関係を示す情報を記憶しており、いずれかの基地局と同期を取れた場合に、当該基地局からの信号に含まれるフレーム番号を上記の対応関係に照らすことで、当該信号の送信タイミング(スーパーフレーム内の位置づけ)を特定する。
これにより、移動局は、どの基地局と同期を取れたか、及び、当該基地局による信号の送信タイミング(スーパーフレーム内の各無線フレームのうちの当該基地局に送信時間が割り当てられた無線フレーム)を特定でき、当該基地局を同期捕捉すること(当該基地局の送信タイミングに同期した受信タイミングで信号を受信すること)ができる。
【0041】
また、移動局は、同期捕捉中の基地局に対して信号(例えば、通信接続要求のための発呼信号)を送信する場合には、当該基地局の送信タイミング以外のタイミング、すなわち、当該基地局に送信時間が割り当てられた無線フレーム(及びその前後1フレーム)以外の無線フレームで、信号の送信を行う。
【0042】
図6には、移動局が有する受信装置部分の機能ブロックの例を示してある。
本例の移動局は、アンテナ201、受信復調部202、デコード部203、制御部204、RSSI検出部205を有する。
【0043】
アンテナ201は、基地局から送信される信号(本例では、制御用チャネルの信号)を受信する。
受信復調部202は、アンテナ201により受信された信号を復号する。
デコード部203は、受信復調部202により復号されたデータを各情報要素に分解し、受信データとして制御部204へ出力する。
RSSI検出部205は、受信復調部202からRSSI測定用の情報を受けてRSSIを測定し、測定結果のRSSIの値を制御部204へ出力する。RSSIは、基地局から送信された信号の受信レベルを表す指標である。
【0044】
制御部204は、フレーム番号管理部206、RSSI判定部207、第1記憶部208、第2記憶部209、最適基地局算出処理部210、基地局捕捉/切替処理部211を有する。また、基地局捕捉/切替処理部211は、同期捕捉処理部212を有する。
【0045】
デコード部203からの受信データは、フレーム番号管理部206と基地局捕捉/切替処理部211へ出力される。また、RSSI検出部205からのRSSIの値は、RSSI判定部207へ出力される。
【0046】
フレーム番号管理部206は、フレーム番号を内部的に管理し、RSSI判定部207へ出力する。また、フレーム番号管理部206は、デコード部203からの受信データの無線フレームに含まれるフレーム番号に基づいて、内部のフレーム番号をMCA無線システム(システム内の各基地局)に同期させる。
【0047】
第1記憶部208は、システム内の各基地局に対して重複せずに規定された送信タイミングを示す情報(スーパーフレーム内の各無線フレームのフレーム番号と基地局番号との対応関係を示す情報)を記憶する。
【0048】
RSSI判定部207は、フレーム番号管理部206から出力されるフレーム番号と、第1記憶部208に記憶されている情報とに基づいて、デコード部203から出力された受信データのフレーム番号に対応する基地局番号(受信データの送信元の基地局の基地局番号)を特定し、RSSI検出部205で測定されたRSSIの値を前記特定した基地局番号とともに、基地局サーチ用の情報として第2記憶部209へ出力する。
【0049】
第2記憶部209は、RSSI判定部207から出力されたRSSIの値と基地局番号とを対応付けて記憶する。また、第2記憶部209は、同期捕捉処理部212(基地局捕捉/切替処理部211)から出力される基地局状態の情報なども、基地局番号に対応付けて記憶する。すなわち、第2記憶部209では、基地局毎に、RSSIの値や基地局状態の情報などを管理する。
【0050】
最適基地局算出処理部210は、第2記憶部209に記憶されている情報(基地局毎のRSSIの値や基地局状態の情報など)に基づいて、自己(当該移動局)の通信相手として運用するに最も適していると推定される最適基地局を算出(選択)する。
【0051】
基地局捕捉/切替処理部211は、最適基地局算出処理部210による最適基地局の選択結果に基づいて、同期捕捉処理部212を用いて、基地局捕捉処理や基地局切替処理を行う。基地局捕捉処理や基地局切替処理では、同期捕捉対象の基地局を指定して同期捕捉処理部212を呼び出す。
【0052】
同期捕捉処理部212は、基地局捕捉/切替処理部211から呼び出され、その際に指定された同期捕捉対象の基地局との同期を試みる。また、各基地局からの受信データ(本例では、長い送信時間で送信される報知情報)に含まれる基地局状態の情報の取得を行い、その結果を第2記憶部209に出力して記憶させる。
【0053】
図7には、フレーム番号管理部206におけるフレーム番号管理の処理フローの例を示してある。このフレーム番号管理処理は、無線フレームの周期で繰り返し実行される。また、デコード部203におけるデコード処理や、RSSI検出部205におけるRSSI検出処理なども、この周期で実行される。
【0054】
フレーム番号管理処理では、まず、受信データに誤りが無いか判定する(ステップS11)。
ステップS11にて受信データに誤りが無いと判定された場合(当該受信データの誤り率が所定値未満の場合を含む)は、当該受信データの無線フレームに含まれるフレーム番号を取得し、当該取得したフレーム番号で内部のフレーム番号を更新する(ステップS12)。
ステップS11にて受信データに誤りが有ると判定された場合(当該受信データの誤り率が所定値以上のほか、受信データが得られない場合を含む)は、内部のフレーム番号をインクリメント(1つ加算)する(ステップS13)。
【0055】
すなわち、受信データに誤りが無い場合には、内部のフレーム番号を当該受信データの無線フレームに含まれるフレーム番号に更新することで、内部のフレーム番号をシステム(各基地局)に同期させる。また、受信データに誤りが有る場合には、内部のフレーム番号を1つ進めることで、内部のフレーム番号をシステム(各基地局)に同期させた状態に維持する。
【0056】
ここで、第1記憶部208にはスーパーフレーム内の各無線フレームのフレーム番号と基地局番号との対応関係を示す情報が格納されており、内部のフレーム番号に対応する基地局番号を第1記憶部208に照らして特定することで、その時点の送信タイミングが割り当てられた基地局(つまり、送信元の基地局)を特定できる。
【0057】
これにより、RSSI判定部207は、RSSI検出部205により無線フレームの周期で検出された各RSSI(受信レベル)について、RSSIと基地局との対応を特定できる。例えば、内部のフレーム番号が“59”の場合に検出されたRSSIの値は、フレーム番号“59”は第2の基地局に割り当てられているので、第2の基地局についてのものであることが分かる。このとき、第2の基地局からの信号を受信できず、受信データが得られない場合(受信データの無線フレームからフレーム番号を抽出できない場合)でも、フレーム番号を内部で管理しているため、第2の基地局のRSSIの値は無しと判断できる。
【0058】
図8には、第2記憶部209が保持する基地局情報の管理テーブルの例を示してある。
本例の管理テーブルには、基地局毎に、「基地局番号」、「RSSI」、「基地局状態」、「優先度」などの情報が格納されている。
【0059】
ここで、管理テーブルの「基地局状態」は、基地局の通信の動作状態を示すものであり、同図の例では、“通常運用”、“非常運用”、“受信不可”、“不明”のいずれかが格納されている。
“通常運用”は、基地局が上位装置(回線制御装置や通信卓など)を介して他の基地局と通信可能な状態であることを示す。この基地局のサービスエリアに存する移動局は、同サービスエリアに存する他の移動局との通信を行えるだけでなく、当該基地局が上位装置を介して通信可能な他の基地局のサービスエリアに存する他の移動局との通信も行える。
“非常運用”は、基地局が上位装置と通信できず、他の基地局と通信不能な状態であることを示す。この基地局のサービスエリアに存する移動局は、同サービスエリアに存する他の移動局との通信を行えるが、他の基地局のサービスエリアに存する他の移動局とは通信を行えない。
“受信不可”は、基地局との同期が取れず、当該基地局から基地局状態の情報を含む信号を受信できないことを示す。
“不明”は、基地局から未だ基地局状態の情報を含む信号が送信されておらず、基地局状態が分からないことを示す。
なお、上記の基地局状態は一例であり、例えば、グループ通信の実施中を示す状態や、発呼の禁止中を示す状態など、該当基地局を介した通信の動作が如何なる状態にあるかを示す種々の状態を用いることができる。
【0060】
また、管理テーブルの「優先度」は、当該移動局が通信相手とする基地局を選択する際の優先度を示すものであり、同図の例では、“ホーム(最優先)”、“非優先”、“通常”のいずれかが格納されている。
“ホーム(最優先)”は、最も優先度が高い基地局であること、すなわち、最優先で通信相手に選択する基地局であることを示す。なお、“ホーム(最優先)”に設定される基地局は最大1つであり、“ホーム(最優先)”
を全く設定しなくてもよい。
“非優先”は、最も優先度が低い基地局であること、すなわち、基本的に通信相手に選択せず、他の選択の余地が無い場合に選択する基地局であることを示す。これは、特定の基地局を多数の移動局が同期捕捉することによって輻輳が発生することを避けるために、できるだけ当該移動局で同期捕捉しない基地局を指定するものである。なお、複数の基地局に対して“非優先”を設定してもよく、“非優先”を全く設定しなくてもよい。
“通常”は、優先度が中間程度の基地局であることを示す。
本例では、“ホーム(最優先)”は当該移動局のユーザにより設定され、“非優先”はシステム管理者により設定される。
なお、上記の優先度は一例であり、数値的に優先度を表現してもよい。また、上記のように3段階の優先度ではなく、2段階の優先度や4段階以上の優先度を用いてもよい。
【0061】
図9には、同期捕捉処理部212による同期捕捉処理の処理フローの例を示してある。
この同期捕捉処理は、基地局捕捉/切替処理部211による基地局捕捉処理や基地局切替処理において実行される。なお、基地局捕捉処理では、任意の基地局を同期捕捉対象に指定して同期捕捉処理を実行し、同期を取れた基地局が最適基地局でない場合に、最適基地局を同期捕捉対象に指定して同期捕捉処理を実行し直す。また、基地局切替処理では、RSSI(受信レベル)が良好な基地局を同期捕捉対象に指定して同期捕捉処理を実行し、同期を取れた基地局が最適基地局でない場合に、最適基地局を同期捕捉対象に指定して同期捕捉処理を実行し直す。
ここで、各基地局は、上位装置やシステム管理者等により、自局の基地局状態として“通常運用”又は“非常運用”が設定されており、自局に割り当てられた長い送信時間において、同期バーストに後続する通信情報用チャネルにて、基地局状態の情報を含めた報知情報を送信するものとする。
【0062】
同期捕捉処理が開始すると、処理開始からの経過時間Tim1の計測に用いるタイマーをリセットし、経過時間Tim1の計測を始める(ステップS21)。
次に、デコード部203からの受信データに基づいて、基地局同期捕捉及びフレーム番号取得を行い、これらが成功したか否かを判定する(ステップS22)。
ここで、基地局同期捕捉では、任意の基地局に対して同期を試みる。すなわち、任意の基地局に割り当てられた長い送信時間で送信される同期バーストに基づく同期処理を行い、その結果、いずれかの基地局と同期を取れた時点で成功となる。また、フレーム番号取得は、フレーム番号管理部206において、受信データからフレーム番号を取得できた場合に成功となる。
【0063】
ステップS22において、基地局同期捕捉及びフレーム番号取得に成功したと判定された場合は、経過時間Tim1を取得する(ステップS23)。
そして、同期を取れた基地局から遡って送信順がn個前までの基地局(同期に失敗した基地局)を特定し、これら基地局の基地局状態を“受信不可”として第2記憶部209の管理テーブルに登録(更新)する(ステップS24)。
ここで、基地局状態を“受信不可”とする基地局(同期に失敗した基地局)の個数であるnは、経過時間Tim1から算出できる。すなわち、経過時間Tim1を、スーパーフレーム内における長い送信時間の間隔で除算することで算出できる。例えば、フレーム番号
“0”から同期捕捉処理を開始し、フレーム番号 “62”で同期を取れた場合(第3の基地局と同期を取れた場合)には、その前に同期を取る機会があった(長い送信時間が割り当てられた)第1の基地局と第2の基地局は同期に失敗しているため、これらの基地局状態を“受信不可”とする。
また、同期を取れた基地局については、同期バーストに続く通信情報用チャネル内の報知情報から基地局状態(“通常運用”又は“非常運用”)を取得して、第2記憶部209の管理テーブルに登録(更新)する(ステップS25)。
【0064】
その後、同期を取れた基地局が同期捕捉対象であるか否かを判定する(ステップS26)。この判定は、フレーム番号管理部206において受信データから取得したフレーム番号に対応する基地局番号を第1記憶部208に照らして特定し、当該特定した基地局番号を同期捕捉対象の基地局の基地局番号と比べることで判定できる。
ステップS26において、同期を取れた基地局が同期捕捉対象でないと判定された場合は、ステップS22に戻る。
ステップS26において、同期を取れた基地局が同期捕捉対象であると判定された場合は、同期捕捉処理の成功とし(ステップS27)、処理を終了する。
【0065】
また、ステップS22において、基地局同期捕捉及びフレーム番号取得に失敗したと判定された場合は、経過時間Tim1を参照して処理開始から1スーパーフレーム時間(本例では、40ms×300フレーム=12000ms(=12秒))が経過したか否かを判定する(ステップS28)。
ステップS28において、1スーパーフレーム時間を経過していないと判定された場合は、ステップS22に戻る。
ステップS28において、1スーパーフレーム時間を経過したと判定された場合は、全ての基地局の基地局状態を“受信不可”として第2記憶部209の管理テーブルに登録(更新)し(ステップS29)、同期捕捉処理の失敗とし(ステップS30)、処理を終了する。
【0066】
以上のような処理により、同期捕捉処理を行いながら、その処理中に長い送信時間の割り当てが巡ってきた基地局(同期を取る機会があった基地局)の基地局状態を取得することができる。このため、基地局状態の取得を効率的に行うことができる。
【0067】
図10には、最適基地局算出処理部210により最適基地局を算出(選択)する際に使用する最適基地局算出条件の例を示してある。
ここでは、基地局捕捉方法として、「優先」、「自動」、「固定」の3つの方法を有する場合を例に説明する。なお、第2記憶部209が保持する基地局情報の管理テーブルにおける優先度が“ホーム(最優先)”の基地局を「ホーム基地局」と呼び、“非優先”
の基地局を「非優先基地局」と呼ぶ。
【0068】
「優先」は、ホーム基地局を優先して同期捕捉し、その基地局のRSSI(受信レベル)が低下した場合に、RSSIが良化する最適基地局を選択して同期捕捉の対象に切り替える。
「自動」は、RSSIが最も良好な基地局を同期捕捉し、その基地局のRSSIが低下した場合に、RSSIが良化する最適基地局を選択して同期捕捉の対象に切り替える。
「固定」は、ホーム基地局のみを同期捕捉し、その基地局のRSSIが低下しても同期捕捉を維持し続ける。
【0069】
図10の最適基地局算出条件は、「優先」と「自動」の基地局捕捉方法における最適基地局の選択において使用される。本例では、「優先」と「自動」のいずれを適用するかは、管理テーブルの優先度に“ホーム(最優先)”を設定するか否かで変更できるようにしてある。すなわち、“ホーム(最優先)”を設定された基地局があれば「優先」が適用され、“ホーム(最優先)”を設定された基地局がなければ「自動」が適用される。
【0070】
図10の最適基地局算出条件について具体的に説明する。
基地局状態が“通常運用”又は“不明”の基地局が存在する場合について説明する。
基地局状態が“通常運用”又は“不明”の基地局の中に、優先度が“ホーム(最優先)”の基地局が存在する場合には、当該基地局を最適基地局に選択する。
また、基地局状態が“通常運用”又は“不明”の基地局の中に、優先度が“ホーム(最優先)”の基地局が存在せず、優先度が“通常”の基地局が存在する場合には、その内でRSSIが最も高い基地局を最適基地局に選択する。
また、基地局状態が“通常運用”又は“不明”の基地局の中に、優先度が“ホーム(最優先)”又は“通常”の基地局が存在せず、優先度が“非優先”の基地局が存在する場合には、その基地局を最適基地局に選択する。なお、優先度が“非優先”の基地局が複数存在する場合には、その内でRSSIが最も高い基地局を最適基地局に選択すればよい。
【0071】
次に、基地局状態が“通常運用”又は“不明”の基地局が存在しない場合(“非常運用”又は“受信不可”の基地局のみの場合)について説明する。
基地局状態が“非常運用”の基地局が存在する場合において、その中に、優先度が“ホーム(最優先)”の基地局が存在する場合には、当該基地局を最適基地局に選択する。
また、基地局状態が“非常運用”の基地局が存在する場合において、その中に、優先度が“ホーム(最優先)”の基地局が存在せず、優先度が“通常”の基地局が存在する場合には、その内でRSSIが最も高い基地局を最適基地局に選択する。
また、基地局状態が“非常運用”の基地局が存在する場合において、その中に、優先度が“ホーム(最優先)”又は“通常”の基地局が存在せず、優先度が“非優先”の基地局が存在する場合には、その基地局を最適基地局に選択する。なお、優先度が“非優先”の基地局が複数存在する場合には、その内でRSSIが最も高い基地局を最適基地局に選択すればよい。
また、基地局状態が“非常運用”の基地局が存在しない場合(“受信不可”の基地局のみの場合)は、最適基地局に該当する基地局が存在しないと判断する。
【0072】
図4に示した基地局情報の管理テーブルを元に、
図6の最適基地局算出条件で最適基地局を選択する場合を例に説明する。
図4の例では、基地局状態が“通常運用”又は“不明”の基地局が存在するが、その中には、優先度が“ホーム(最優先)”の基地局が存在せず、優先度が“通常”の基地局が存在するので、その内でRSSIが最も高い基地局が最適基地局に選択されることになる。基地局状態が“通常運用”又は“不明”で優先度が“通常”の基地局のうち、RSSIが最も高いのは、第3の基地局(基地局番号が“3”の基地局)であるため、この基地局が最適基地局として選択される。
【0073】
図11には、基地局捕捉/切替処理部211による基地局捕捉処理の処理フローの例を示してある。基地局捕捉処理は、移動局の装置の起動時に実行される。なお、基地局捕捉処理を開始する際に、基地局情報の管理テーブル(第2記憶部209)のRSSIは全て空に、基地局状態は全て“不明”に初期化される。
【0074】
基地局捕捉処理では、まず、任意の基地局を同期捕捉対象に指定して同期捕捉処理部212に同期捕捉処理を実行させ(ステップS41)、同期捕捉処理に成功したか否かを判定する(ステップS42)。
【0075】
ステップS42において同期捕捉処理に失敗したと判定された場合は、基地局捕捉処理の失敗とし(ステップS48)、処理を終了する。
ステップS42において同期捕捉処理に成功したと判定された場合は、全ての基地局のRSSIを取得して、基地局情報の管理テーブル(第2記憶部209)に登録する(ステップS43)。ここで、全ての基地局のRSSIの取得は、同期捕捉処理において同期を取れた任意の基地局に割り当てられた長い送信時間(同期を取る際に使用された数フレーム分の同期バーストが含まれる長い送信時間)に後続する一連の短い送信時間(全ての基地局に対して順に割り当てられた短い送信時間)で各基地局から順に送信される信号を用いて実施される。
【0076】
その後、最適基地局算出処理部210に最適基地局を選択させ(ステップS44)、最適基地局が存在するか否か(最適基地局を選択できたか否か)を判定する(ステップS45)。この時点における基地局情報の管理テーブルは、同期捕捉処理(ステップS41)の開始から終了までに長い送信時間の割り当てが到来した基地局の基地局状態のみが更新され、他の基地局の基地局状態は“不明”のままであり、管理テーブルが不完全の状態で最適基地局の選択が行われる。
【0077】
ステップS45において最適基地局が存在しないと判定された場合は、基地局捕捉処理の失敗とし(ステップS48)、処理を終了する。
ステップS45において最適基地局が存在すると判定された場合は、現時点で同期捕捉している基地局が最適基地局と一致するか否かを判定する(ステップS46)。
【0078】
ステップS46において同期捕捉している基地局が最適基地局と一致すると判定された場合は、基地局捕捉処理の成功とし(ステップS47)、処理を終了する。
ステップS46において同期捕捉している基地局が最適基地局と一致しないと判定された場合は、最適基地局を同期捕捉対象に指定して同期捕捉処理部212に同期捕捉処理を再び実行させ(ステップS49)、ステップS44に戻る。
【0079】
ここで、2度目の同期捕捉処理(ステップS49)では最適基地局を同期捕捉対象に指定するが、同期捕捉対象に指定した最適基地局が同期捕捉処理の後も最適基地局であるとは限らない。これは、最適基地局の選択は各基地局のRSSIや基地局状態などに基づいて行われるが、基地局状態の取得が完了していない不完全な段階で最適基地局の選択が行われると、最適基地局を同期捕捉対象に指定した同期捕捉処理において新たに取得した他の基地局の基地局状態によっては、同期捕捉対象に指定したものとは異なる基地局が最適基地局となることがあるためである。このため、基地局捕捉処理では、同期捕捉処理の後も最適基地局となる基地局と同期を取れるまで、最適基地局の選択や同期捕捉処理を繰り返すようにしている。
【0080】
図12には、基地局捕捉/切替処理部211による基地局切替処理の処理フローの例を示してある。基地局切替処理は、同期捕捉中の基地局のRSSIが閾値未満に低下し、最適基地局でなくなったことが判明した場合に実行される。なお、基地局切替処理を開始する際に、基地局情報の管理テーブル(第2記憶部209)のRSSIは全て空に、基地局状態は全て“不明”に初期化される。
【0081】
基地局切替処理では、まず、全ての基地局のRSSIを取得して、基地局情報の管理テーブル(第2記憶部209)に登録する(ステップS61)。ここで、全ての基地局のRSSIの取得は、基地局切替処理の開始後に最初に出現する一連の短い送信時間(全ての基地局に対して順に割り当てられた短い送信時間)で各基地局から順に送信される信号を用いて実施される。
その後、最適基地局算出処理部210に最適基地局を選択させ(ステップS62)、最適基地局が存在するか否か(最適基地局を選択できたか否か)を判定する(ステップS63)。この時点における基地局情報の管理テーブルは、全ての基地局の基地局状態は“不明”のままであり、基地局状態を考慮せずに最適基地局の選択が行われる。
【0082】
ステップS63において最適基地局が存在しないと判定された場合は、基地局捕捉処理の失敗とし(ステップS68)、処理を終了する。
ステップS63において最適基地局が存在すると判定された場合は、最適基地局に長い送信時間が割り当てられたタイミング、すなわち、最適基地局と同期が取れるタイミングまで待機し(ステップS64)、最適基地局を同期捕捉対象に指定して同期捕捉処理部212に同期捕捉処理を実行させ(ステップS65)、最適基地局に対する同期捕捉に成功したか否かを判定する(ステップS66)。
【0083】
ステップS66において最適基地局に対する同期捕捉に成功したと判定された場合は、基地局切替処理の成功とし(ステップS67)、処理を終了する。
ステップS66において最適基地局に対する同期捕捉に失敗したと判定された場合は、基地局捕捉処理(
図11の処理フロー参照)のステップS44に進み、最適基地局の選択や同期捕捉処理を繰り返す。
【0084】
ここで、基地局切替処理では、ステップS62で最適基地局を選択した後、最適基地局を同期捕捉対象に指定した同期捕捉処理(ステップS65)を直ちに実行するのではなく、最適基地局と同期が取れるタイミングまで待機する処理(ステップS64)を設けることで、同期外れとなる時間を短縮し、当該移動局が発着信できない時間を短くしている。例えば、第1の基地局(基地局番号が“1”の基地局)を同期捕捉している状態で第3の基地局(基地局番号が“3”の基地局)に同期捕捉の対象を切り替える場合には、フレーム番号が“59”のタイミングまでは第1の基地局に対する同期捕捉を継続し、フレーム番号が“60”
のタイミングで同期捕捉処理を実行する。これにより、同期捕捉に200msを要する場合には、発着信できない時間も200ms程度となる。
【0085】
以上のように、本例の移動局は、装置の起動時に、まず、任意の基地局との同期を試み、いずれかの基地局と同期を取れた場合には、当該基地局から送信される信号に含まれるフレーム番号に基づいて、内部で管理するフレーム番号をシステム(各基地局)に同期させるようにした。また、移動局に、スーパーフレーム内の各無線フレームのフレーム番号と基地局番号との対応関係を示す情報(第1記憶部208の情報)を持たせることで、各基地局からの信号の送信タイミング(フレーム番号)を特定できるようにした。
これにより、本例の移動局は、同期を取れた基地局からその後に送信される信号の送信タイミングを把握でき、これを利用して、当該送信タイミングに同期した受信タイミングで受信処理を行うようにした。
【0086】
また、本例の移動局は、各基地局からの信号の送信タイミングを把握しているため、受信した信号を復号することなく当該信号がいずれの基地局のものかを特定でき、当該信号から検出した受信レベルを送信元の基地局と対応付けることができる。また、信号の復号を行わずに受信レベルと基地局との対応付けを行え、受信レベルの収集のために他の基地局と同期を取り直す必要が無いため、受信レベルの収集を短時間で終えることができる。また、いずれかの基地局との同期を維持した状態で、全ての基地局の受信レベルを常に監視して収集することができる。
【0087】
また、本例の移動局は、いずれかの基地局と同期を取る際に基地局状態の取得も行い、装置の起動後に最初に基地局と同期を取れた後に、それまでに取得した基地局状態及び全ての基地局の受信レベルに基づいて最適基地局を選択し、同期を取れた基地局が最適基地局でない場合には、最適基地局との同期に切り替えるようにした。また、最適基地局との同期に切り替える過程で他の基地局と同期を取る機会がある場合には、当該他の基地局と一時的に同期を取って基地局状態を取得するようにした。すなわち、最初に同期を取れた基地局による信号の送信タイミングに同期した受信タイミング以外でも信号を受信できるようにして、他の基地局の基地局状態を取得するようにした。
そして、最適基地局と同期を取れた後に、再度、それまでに取得した基地局状態及び全ての基地局の受信レベルに基づいて最適基地局を選択し、同期を取れた基地局が最適基地局(再選択後のもの)でない場合には、他の基地局の基地局状態を取得しつつ最適基地局との同期に切り替える処理を、同期を取れた基地局が最適基地局(再選択後のもの)となるまで繰り返すようにした。
これにより、基地局状態の取得や最適基地局の絞り込みを効率的に行うことができ、装置の起動後に最適基地局と同期を取るまでに要する時間を短縮することができる。
【0088】
また、本例の移動局は、最適基地局を同期捕捉した後に、当該基地局の受信レベルが閾値より小さい値に低下した場合に、全ての基地局の受信レベルに基づいて(基地局状態を考慮せずに)、受信レベルが良化する他の基地局(例えば、受信レベルが最も高い他の基地局)を最適基地局に選択し、最適基地局との同期を取れるタイミングまで待機した後に、最適基地局との同期を試みるようにした。
そして、受信レベルに基づいて選択した最適基地局と同期を取れなかった場合に、それまでに取得した基地局状態及び全ての基地局の受信レベルに基づいて最適基地局を選択し、同期を取れた基地局が最適基地局(再選択後のもの)でない場合には、他の基地局の基地局状態を取得しつつ最適基地局との同期に切り替える処理を、同期を取れた基地局が最適基地局(再選択後のもの)となるまで繰り返すようにした。
これにより、基地局状態の取得や最適基地局の絞り込みを効率的に行うことができ、受信レベルの低下後に最適基地局と同期を取るまでに要する時間を短縮することができる。また、受信レベルに基づいて選択した最適基地局と同期を取れた場合には、移動局が発着信できない時間を極めて短くすることができる。
【0089】
また、目的の基地局(例えば、最適基地局)に対して同期を試みる過程で他の基地局の基地局状態を取得できるため、通常運用の基地局のみの場合は1スーパーフレーム以内に運用に最適な基地局との同期が取れ、最も悪いケースでも2スーパーフレーム以内に最適な基地局と同期を取ることができる。
また、基地局サーチにおいては妨害波の問題があり、従来は、受信レベルのみでは妨害波と希望波の判別が難しく、信号の中身まで確認する必要があるため、判別に時間が掛かっていたが、本発明では、基地局サーチ結果の基地局毎の受信レベルを比較することで、通常は基地局毎にばらつくはずである受信レベルが多くの基地局でほぼ同じレベルの場合、その周波数において妨害波が存在する可能性があると容易に判定することができる。
【0090】
ここで、本例では、本発明に係る記憶手段の機能を第1記憶部208により実現し、本発明に係る受信手段の機能をアンテナ201,受信復調部202,デコード部203等により実現し、本発明に係る同期手段の機能を第2記憶部209,最適基地局算出処理部210,基地局捕捉/切替処理部211等により実現している。また、本発明に係る第1の切替機能を基地局捕捉処理により実現し、本発明に係る第2の切替機能を基地局切替処理により実現している。
【0091】
なお、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【0092】
例えば、上記のようなスーパーフレームを用いる方式の場合には、端末局は受信した信号のフレーム番号を特定しなければ、当該基地局による信号の送信タイミングを特定できないが、各基地局に単一の送信時間を順に割り当てる方式の場合には、端末局は受信した信号の送信元の基地局を特定できれば、当該基地局の信号の送信タイミングを特定できるので、基地局から送信された信号の送信タイミングを示す情報として、フレーム番号ではなく基地局番号を用いるようにしてもよい。すなわち、各基地局は、自局(基地局)の送信タイミングで送信する信号に基地局番号を含め、端末局は、受信した信号に含まれる基地局番号に基づいて、当該信号の送信タイミングを特定し、当該送信タイミングに同期した受信タイミングで信号の受信処理を行えばよい。