特許第6180230号(P6180230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180230
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】距離画像化のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/06 20060101AFI20170807BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G01C3/06 120Z
   G01B11/00 H
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-171751(P2013-171751)
(22)【出願日】2013年8月21日
(65)【公開番号】特開2014-41126(P2014-41126A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2016年3月11日
(31)【優先権主張番号】1202273
(32)【優先日】2012年8月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507321233
【氏名又は名称】オフィス ナショナル デチュデ エ ドゥ ルシェルシェ アエロスパシアレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ピポニエール マーティン
(72)【発明者】
【氏名】プリモット ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ドリュースト ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ゲリノー ニコラ
【審査官】 三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−127700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 3/06
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り込んだ1つの画像に基づいて視界(100)内に存在する複数の物体(O〜O)それぞれまでの距離を求め、距離画像化するための方法であって、
(1)トランスミッタンスtを有する平板上光学コンポーネント(1)を得るステップであって、上記トランスミッタンスは、上記コンポーネントの平面における2つの座標(x,y)に応じて変わるとともに、半径ρの基礎円上に位置するピークから成る2次元フーリエ変換Tを有するものであるステップと、
(2)上記コンポーネントを、視界方向を向いている光軸Zに対し垂直に配置するステップと、
(3)上記コンポーネントの上記視界とは反対側の上記コンポーネントから距離dの位置にある、上記Z軸に対し垂直な平面に画像センサ(101)を配置するステップと、
(4)上記物体から出射され、上記コンポーネントを通過した光によって形成された画像を取り込むために上記センサを用いるステップと、
(5)上記取り込んだ画像をフーリエ変換したピークに対応する空間周波数のスペクトルStotを得るために、上記取り込んだ画像に対しフーリエ変換を実行するステップであって、上記取り込んだ画像に対応する上記スペクトルは、それぞれ、対応する円内に位置している同心の複数の要素を含んでいるステップと、
を含む方法であり、
上記ステップ(1)では、上記トランスミッタンスtの上記フーリエ変換Tは、上記基礎円上に配置された有限数Nのピークから成り、
さらに、上記方法は、上記ステップ(5)が実行された後に、
(6)参照スペクトルSrefを供給するステップであって、上記参照スペクトルSrefは、Z軸上で、無限に離れた地点にある点光源からの光が上記コンポーネントを通過し上記センサに到達して生成された参照画像のフーリエ変換のピークに対応し、参照空間周波数から成るとともに、基礎円の半径の2倍である半径2ρの参照円内に位置しているステップと、
(7)共通基準系において、同心円状に、取り込んだ画像Stotの空間周波数の上記スペクトルと上記参照スペクトルSrefとを重ね合わせるステップと、
(8)上記共通基準系において集められた相似形の該相似の比H=2ρ/2ρを変えることによって、半径2ρの参照円内に位置する参照スペクトルSrefを、可変な半径2ρの円内に位置する変換された参照スペクトルSにデジタル変換するステップと、
(9)変換された参照スペクトルSの全てのピークが、取り込まれた画像Stotのピークに重ね合わせられ、変換された参照スペクトルSが取り込まれた画像Stotのスペクトルの構成要素の1つと一致するとき、相似比Hを格納するステップと、
(10)式d=d/(H−1)を用いて、視界に存在する物体の1つまでの距離を算出するステップと、を含み、
相似比Hの新しい値を用いてステップ(9)の実行が不可能になるまで、ステップ(8)からステップ(10)までのシーケンスを繰り返し、視界に存在する物体の1つに対応するステップ(10)を1つ実行することにより、各々の距離を得る、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
上記のステップ(8)からステップ(10)までのシーケンスの繰り返しは計数され、上記視界に存在する物体の数nは、上記繰り返しの回数と等しいものとして決定する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記コンポーネント(1)は、周期的に連続した自己結像のグレーティングであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
距離画像化のための装置であって、
トランスミッタンスtを有する平板上光学コンポーネント(1)であって、上記トランスミッタンスは、上記コンポーネントの平面における2つの座標(x,y)に応じて変わるとともに、半径ρの基礎円上に位置するピークから成る2次元フーリエ変換Tを有するものであるコンポーネント(1)と、
光軸Zと垂直で上記コンポーネントとは並行になるとともに、上記コンポーネントの上記視界とは反対側で、上記コンポーネントから距離dの位置に設置された画像センサ(101)と、
上記センサによって取り込まれた画像、及び、Z軸上の無限に離れた地点にある点光源により生成された参照画像のフーリエ変換のピークに対応する参照スペクトルSrefであって、参照空間周波数から成り、上記基礎円の半径の2倍である半径2ρの参照円内に位置している参照スペクトルSrefを格納する記憶部(102)と、
請求項1に記載のステップ(7)からステップ(10)を実行し、相似比Hの新しい値がステップ(9)で得られるまでステップ(8)からステップ(10)までのシーケンスを繰り返す処理を実行する計算ユニット(103)と、を備え、
上記コンポーネントは、基礎円上に配置されている有限数Nのピークからなるコンポーネントのトランスミッタンスtのフーリエ変換Tを実行するのに適していることを特徴とする装置。
【請求項5】
上記コンポーネント(1)は、周期的に連続した自己結像のグレーティングであることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
上記コンポーネント(1)は、フェイズグレーティングであることを特徴とする請求項5に記載の装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離画像化のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
視界に含まれる物体を検知することに加え、検知した物体それぞれまでの距離を求めるアプリケーションが多く存在する。そのようなアプリケーションには、飛行中のヘリコプターの安全を守るために送電線を検出したり、着陸中のジェット機をアシストするために滑走路照明を検出したりするもの等が含まれる。立体画法による画像化方法を除いて、たいていの光学的画像化の方法では、画像内にある物体までの距離を早く正確に求めることはできない。
【0003】
立体画法による画像化では、同じ物体を視角の異なる地点から見た少なくとも2つの画像が必要となる。このことから以下の問題が生じる。
・少なくとも2つの撮像装置が、相互に正確に決められた位置で、同時に設置されていなければならない。
・撮像対象が動いている場合、画像は同時に撮像されなければならない。
・2つの装置によって別々に撮像された画像における同じ物体の位置を比較するための画像相関ソフトウェアが必要となる。
【0004】
複数の平板上光学コンポーネントが知られている。該コンポーネントは、それぞれのコンポーネントの平面における2つの座標に応じて変わるトランスミッタンス、及び、所定の半径の円内に位置するピークを導く二次元フーリエ変換を有する。そのようなコンポーネントは、連続した自己結像と言われており、“Exact solutions for nondiffracting beams. I. The scalar theory," J.Durnin, Journal of the Optical Society of America A, Vol.4, pp. 651-654, 1987”や、連続した自己結像を定義している“Generation of achromatic and propagation-invariant spot array by use of continuously self-imaging gratings," N. Guerineau et al., Optics Letter, Vol.26, pp. 411-413, 2001”に記載がある。
【0005】
加えて、Piponnierらによる発表“Analysis and development of non-diffracting arrays for the design of advanced imaging systems," Journees scientifiques de l’Ecole Doctorale Ondes & Matieres (EDOM), 7-8 March 2011”では、上述した連続した自己結像コンポーネントを、簡単な対象物体の検出、特定、及び正確な位置の決定が可能なアプリケーションのための画像センサと結びつける提案をしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Exact solutions for nondiffracting beams. I. The scalar theory," J.Durnin, Journal of the Optical Society of America A, Vol.4, pp. 651-654, 1987
【非特許文献2】Generation of achromatic and propagation-invariant spot array by use of continuously self-imaging gratings," N. Guerineau et al., Optics Letter, Vol.26, pp. 411-413, 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえ、本発明の目的は、上述した立体画法における欠点を克服した距離画像化の新しい方法を提案することにある。
【0008】
特に、本発明の目的の1つは、1つの撮像画像に基づいて、視界に含まれる複数の物体までのそれぞれの距離を求めることにある。
【0009】
本発明の他の目的は、高性能なコンピュータによる計算を必要とせずに、物体までの距離を簡単に求めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明では、次のステップを含む方法を提案する。
(1)トランスミッタンスtを有する平板上光学コンポーネントを得るステップであって、上記トランスミッタンスは、上記コンポーネントの平面における2つの座標に応じて変わるとともに、半径ρの基礎円上に位置するピークから成る2次元フーリエ変換Tを有するものであるステップと、
(2)上記コンポーネントを、視界方向を向いている光軸Zに対し垂直に配置するステップと、
(3)上記コンポーネントの上記視界とは反対側の上記コンポーネントから距離dの位置にある、上記Z軸に対し垂直な平面に画像センサを配置するステップと、
(4)上記物体から出射され、上記コンポーネントを通過した光によって形成された画像を取り込むために上記センサを用いるステップと、
(5)上記取り込んだ画像をフーリエ変換したピークに対応する空間周波数のスペクトルStotを得るために、上記取り込んだ画像に対しフーリエ変換を実行するステップであって、上記取り込んだ画像に対応する上記スペクトルは、それぞれ、対応する円内に位置している同心の複数の要素を含んでいるステップと、
を含む。
【0011】
上記ステップ(1)で示される光用コンポーネントのトランスミッタンスtの特性により、このコンポーネントは連続した自己結像である。
【0012】
本発明に係る方法では、ステップ(1)において、半径ρの基礎円内に位置する有限数Nのピークから成る、コンポーネントのトランスミッタンスtのフーリエ変換Tを特徴としている。さらに、本発明に係る方法は、上記ステップ(5)に続く、以下のステップを含む。
(6)参照スペクトルSrefを供給するステップであって、上記参照スペクトルSrefは、Z軸上で、無限に離れた地点にある点光源からの光が上記コンポーネントを通過し上記センサに到達して生成された参照画像のフーリエ変換のピークに対応し、参照空間周波数から成るとともに、基礎円の半径の2倍である半径2ρの参照円内に位置しているステップと、
(7)共通基準系において、同心円状に、取り込んだ画像Stotの空間周波数の上記スペクトルと上記参照スペクトルSrefとを重ね合わせるステップと、
(8)上記共通基準系において集められた相似形の該相似の比H=2ρ/2ρを変えることによって、半径2ρの参照円内に位置する参照スペクトルSrefをデジタル変換して、可変な半径2ρの円内に位置する変換された参照スペクトルSにするステップと、
(9)変換された参照スペクトルSの全てのピークが、取り込まれた画像Stotのピークに重ね合わせられとき、変換された参照スペクトルSが取り込まれた画像Stotのスペクトルの構成要素の1つと一致し、このとき相似比Hを格納するステップと、
(10)式d=d/(H−1)を用いて、視界に存在する物体の1つまでの距離を算出するステップ。
【0013】
格納されている値とは異なる、相似比Hの新しい値を用いてステップ(9)の実行が不可能になるまで、ステップ(8)からステップ(10)までのシーケンスが繰り返される。視界に存在する物体の1つと対応するステップ(10)の実行により距離dが得られる。
【0014】
このように、本発明に係る方法では、画像を取り込むステップ(4)は、それぞれの物体までの距離を求めるために1度だけ実行される。画像が取り込まれた時刻と同時刻における距離を求めるのに、撮像装置を移動させることは必要ない。よって、本発明により、同時刻における、複数の物体までの距離を容易に求めることができる。
【0015】
フーリエ変換の線形性により、ステップ(5)で求められた、複数の物体の画像のフーリエ変換は、1つの物体のみに対し実行されたフーリエ変換を合計したものと等しい。
【0016】
基礎円内に位置する有限数Nのピークから成る、コンポーネントのトランスミッタンスtのフーリエ変換Tに起因して、視界に位置する物体によって生成された空間周波数スペクトルには、ギャップが存在する。これらのギャップにより、ステップ(9)において、取り込まれた画像のスペクトルStotにおいて、物体それぞれを区別することができ、ステップ(10)において、それぞれの物体までの距離を個々に求めることができる。
【0017】
視界に位置する、距離によって相互に区別される物体を計数することにより、上記方法を補完することができる。この目的のために、異なる相似比Hの値を生成するステップ(8)からステップ(10)までのシーケンスの繰り返しが計数され、これら繰り返しの数と等しいものとして、視界に位置する物体の数nが決定される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、上記コンポーネントは、周期的に連続した自己結像のグレーティング(回折格子)であってもよい。この場合、上記コンポーネントのトランスミッタンスtのフーリエ変換Tのピークは、周期的グレーティング上で半径ρの参照円上に同時に位置する。これは、ステップ(9)で実行される、参照スペクトルSrefの空間周波数と取り込まれた画像のスペクトルStotの少なくとも一部分との一致検索を手助けする。視界内で相互に近接している複数の物体それぞれまでの距離を正確に決定することは容易である。
【0019】
本発明はまた、以下の構成を備える距離画像化のための装置を提案する。
−平板上光学コンポーネントであって、可能であれば、周期的に連続した自己結像のグレーティング型の平板上光学コンポーネント。
−上記コンポーネントの上記視界とは反対側の上記コンポーネントから距離dの位置にある、上記Z軸に対し垂直な平面に配置された画像センサ。
−センサによって取り込まれた画像、及び、参照スペクトルSrefを格納するのに適合した記憶部。
−上述した方法のステップ(7)からステップ(10)を実行し、相似比Hの新しい値がステップ(9)で得られるまでステップ(8)からステップ(10)までのシーケンスを繰り返す処理を実行するのに適合した計算ユニット。
【0020】
本発明に係る装置において、上記コンポーネントは、半径ρの基礎円上に位置するN個のピークから成る、トランスミッタンスtのフーリエ変換Tを実行するのに適している。なお、Nは、有限でも無限でもよい。
【0021】
上記コンポーネントは、フェイズグレーティング(位相格子)であってもよい。これは、可能でよく知られている生成方法によって、容易に配置、及び実行できる。
【0022】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の、限定されない例の説明、及び添付した図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る距離画像化のための装置を示す概略図である。
図2図1に示す装置における処理の特徴点及びステップを示すチャート図である。
図3a図1に示す装置で選択的に用いられることができるトランスミッタンスの一例を示す図である。
図3b図1に示す装置で選択的に用いられることができるトランスミッタンスの一例を示す図である。
図3c図1に示す装置で選択的に用いられることができるトランスミッタンスの一例を示す図である。
図4a図3aをフーリエ変換した図である。
図4b図3bをフーリエ変換した図である。
図4c図3cをフーリエ変換した図である。
図5a図1に示す装置で用いられることができるトランスミッタンスの他の例を示す図である。
図5b図5aに対応する、参照スペクトルを示す図である。
図6a図5aおよび図5bに示すトランスミッタンスを用いた図1に示す装置で取り込まれた画像を示す図である。
図6b図6aに対応する、全てのスペクトルを示す図である。
図7図1に示す装置で実行される処理の概要を示す図である。
【0024】
なお、これらの図において示されている構成要素の寸法は、実際の寸法及び比率に対応していないことを明記しておく。また、異なる図において同じ部材番号が振られている場合、同じ要素または同じ機能を持つ要素であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
物体O〜Oそれぞれから出射した電磁放射線は、単色であってもよいし、又はそれぞれが明確な波長をもった多くの放射線から成っていてもよい。上記の多くの波長(特に遠赤外、中赤外、近赤外、可視光など)の幅の範囲内で、光検知又は物体観察のために用いられてもよい。よって、センサ101は、検出感度の周波数幅に応じて選択される。さらに、物体O〜Oから出射される放射線は、空間的に干渉してもしなくてもよい。
【0026】
コンポーネント1は、軸Zに対し垂直な平面に長方形の開口部を備え、半透明である。そして、平面内でデカルト軸x及びyの2軸によって示されている。
【0027】
tで示され、コンポーネント1から透過する部分である、コンポーネント1の開口部の内側は、2つの座標x及びyの関数で表される(t(x,y))。2つの座標x及びyで表された透過座標t(x,y)のフーリエ変換は、T(σ,σ)で示される。よって、σはx座標に対応する空間周波数であり、σはy座標に対応する空間周波数である。本発明では、コンポーネント1は、軸σ及びσで定義される空間周波数平面における所定の円上に全て位置された、有限数Nのピークから成る関数T(σ,σ)となるように選択される。この円は、基礎円と呼ばれ、空間周波数における軸σ及びσの原点を中心とし、その半径はρで示される。
【0028】
本実施形態では、関数T(σ,σ)は最初に選択され、透過関数t(x,y)は、逆フーリエ変換により求められる。故に、コンポーネント1は、開口部の内側のそれぞれの点で部分的に透過座標を調整することにより製造することができる。そのような調整は、好適な感光性の材料のフィルムを開口部に貼り付けて、コンポーネント1の開口部におけるグリッド上のそれぞれの点で焦点合わせに成功した放射量をデジタル的に調整することによって実行されてもよい。当業者であれば、関数T(σ,σ)のピークは極めて薄いということは無く、コンポーネント1の開口部の外形で決まる幅を持っているということが理解できるであろう。
【0029】
半径ρ、中心σ=σ=0の基礎円上に位置されたピークからなる関数T(σ,σ)ということにより、平面波2がコンポーネント1を透過した結果である放射線3は、軸Zに対し並進不変な強度分布を持つ。この強度は、コンポーネント1と検出部101との間にある、軸Zに垂直ないかなる平面においても、透過モジュールt(x,y)の四角形の大きさ(|t(x,y)|)に比例する。
【0030】
この強度分布は、コンポーネント1と平行な面にある光出射物体Oによって生成されるものの1つである。これは、図2のチャートにおいて4で示され、参照画像と呼ばれている。これは、センサ101で形成される。この参照画像をフーリエ変換することにより得られる分解5は、空間周波数σ及びσの価値ペアでそれぞれ位置決めされた一連のN’個のピークを生成する。ここで、N’は、自然数である。空間周波数σ及びσのこれら価値ペアのセットは、参照パターンの構成要素となる。これは、参照スペクトルと呼ばれ、Srefで示される。フーリエ変換の特性から、参照スペクトルSrefは、透過関数t(x,y)のフーリエ変換T(σ,σ)の自己相関である(図2の特性6)。これは、半径f=2ρ、中心σ=σ=0の円内に記載され、参照円として参照される。本発明では、スペクトルが記載された円、又はスペクトルと外接している円は、円上に位置決めすることが可能なピークを含む、このスペクトルの全てのピークを含んだ最も小さい円である。
【0031】
好ましくは、コンポーネント1は、周期的に格子をつける(grating)ようにしてもよい。そのとき、透過関数t(x,y)は、コンポーネント1の開口部を満たすために繰り返される基礎2次元パターンから成る。この基礎パターンは、コンポーネント1の開口部を覆うように用いることができるいかなる形状であってもよい。周期的に格子をつける場合、フーリエ変換T(σ,σ)によるピークは、空間周波数σ及びσの平面における周期的格子の交点上の少なくともいくつかのところに位置決めされる。図3aは、基礎パターンの第1の例を示している。これは、一辺の長さがaの正方形である。この基礎パターンの縦及び横の辺はそれぞれ、軸x及び軸yに平行である。図4aは、図3aの透過関数t(x,y)をフーリエ変換T(σ,σ)したものを示す。図4aの水平及び垂直方向は、空間周波数σ及びσの水平軸及び垂直軸の方向である。このフーリエ変換は、回折次数と明確に関わる16のピークから構成されている。16のピークは、コンポーネント1の周期的格子化に基づく間隔1/aの格子の交点上で、かつ、コンポーネント1の連続した自己結像に基づく基礎円上の位置にある。この例では、基礎円の半径ρは、651/2/aである。
【0032】
図3b及び図4bはそれぞれ、透過関数t(x,y)の別の正方基礎パターンの場合であり、図3a及び図4aに対応するものである。フーリエ変換T(σ,σ)により同じく、回析の順に16のピークから構成されている。16のピークは、間隔1/aの格子の交点の位置にあるが、図4aと異なり、空間周波数σ及びσの平面における確度分布で、半径1451/2/aの基礎円上に位置している。
【0033】
図3c及び図4はそれぞれ、透過関数t(x,y)のさらに別の正方基礎パターンの場合であり、図3a及び図4aに対応するものである。フーリエ変換T(σ,σ)により24の回析ピークで構成されている。これらのピークは、間隔1/aの格子のいくつかの交点上に位置しているが、同時に、半径ρ∞=3251/2/aの基礎円上に位置している。
【0034】
フーリエ変換T(σ,σ)の結果は、周期的格子化により構成されているコンポーネント1において角度が分けられている回折次数の有限数により構成されているが、この次数は、コンポーネント1とセンサ101との間における光強度分布を、軸Zに対し並進不変とし続けるために、空間的に一体であることに留意すべきである。
【0035】
図5aは、コンポーネント1が、正方に覆われて、周期的グレーティングされている場合におけるトランスミッタンスt(x,y)の基礎パターンの別の例であり、図3aに対応するものである。図5bは、空間周波数σ図5bにおける水平方向)及びσ図5bにおける垂直方向)の平面において、正方のトランスミッタンスモジュールt(x,y):FT|t(x,y)|(σ,σ)から成る関数をフーリエ変換したピークの位置を示す。これは、図5aに示すパターンのトランスミッタンスt(x,y)の場合のコンポーネント1の参照スペクトルである。
【0036】
これらとは別に、Z軸上で有限の距離dの位置にある物体Oから出射された球状の入射波9により、コンポーネント1から下りながら伝播する明度10(図2)は、コンポーネント1とセンサ101との間と、Z軸に沿って連続的に自分自身と相似している。Z軸と垂直な平面で、コンポーネント1から固定距離dだけ下った位置にあるセンサ101の平面に生成される明度分布は、ダイレイト(dilated:膨張)画像と呼ばれる。このダイレイト画像は、相似比がH=1+d/dとなる参照画像に適用した相似11の結果、生じる。上記ダイレイト画像を、2つの座標x及びyをフーリエ変換することにより空間周波数に分解した分解12は、ダイレイトスペクトル(dilated spectrum)Sdillと呼ばれる空間周波数σ及びσの価値ペアのセットで位置決めされるピークのセットを生成する。このダイレイトスペクトルSdillは、参照スペクトルSrefのN’個のピークの空間周波数の平面における相対分布と同じ相対分布を持つN’個のピークから成る。ダイレイトスペクトルのピークは、半径f’=2ρ/H(図2の13)の円内に位置される。
【0037】
n(nは1より大きい整数)個の区別された物体14、例えば、3個の物体O、O、及びOがコンポーネント1からセンサ101への光を同時に生成した場合、センサの平面におけるトータル画像Itotは、各物体i(iは、ここの例では1、3、又は4)それぞれによって生成される画像Iの合計15である。しかしながら、フーリエ変換は、線形的な数的演算16である。その結果、n個の物体によって生成された全画像ItotのトータルスペクトルStotは、各物体iによってそれぞれ別個に生成されたスペクトルSの合計17である。換言すれば、それぞれのスペクトルSは、トータルスペクトルStotの構成要素である。
【0038】
以下の通り仮定する。
7:半径ρの基礎円上に分布している有限数Nのピークから成るトランスミッタンスt(x,y)のフーリエ変換T(σ,σ);
8:半径2ρの参照円内に位置しているN’個のピークのセットから成る参照スペクトルSref
18:半径fci’が異なるそれぞれの円に別個に位置しているスペクトルS
Z軸上に位置している全ての物体iによって別々に生成されたスペクトルSは、空間周波数σ及びσの平面内に別々にある。
【0039】
よって、本発明では、n個の物体を検出し、それぞれまでの距離dを求めるアルゴリズム19を提案する。空間周波数σ及びσの平面における物体iそれぞれと別個に関連する半径fci’を求めれば、半径fは予め認識されているので、物体iの相似比Hは、f/fci’の商として求められる。最後に(図2のステップ20)、それぞれの物体までの距離は、d=d/(H−1)の関係から個々に得ることができる。
【0040】
このように(図2のステップ21)、本発明における方法は、1つの撮像画像から、視界内の異なる距離に位置している複数の物体を検出することを可能にする。それは、空間周波数の平面において、異なる物体により生成されたトータル画像に対する個々の寄与度を明確に分けることを可能にし、それぞれの物体までの距離を算出することを可能にする。よって、運動部分を持たない距離画像化装置が与える技術的問題は、解決されている。
【0041】
図6aは、図5a及び図5bに対応するコンポーネント1において、Z軸の近傍に位置する3個の物体を同時に、センサ101によって撮像されたトータル画像Itotを示す。例えば、3個の物体は、図1のO、O及びOである。白矢印は、これら3個の物体の位置を示しており、OはZ軸上にあり、O及びOは、Z軸からオフセット分離れた位置にある(図においてオフセットが0のときが中心である)。図6bは、図6aのトータル画像Itotについて、座標x及びyそれぞれをフーリエ変換したものを示す。これは、半径2ρの円内に位置するピークの3個のセットから成っている。ここで、iは、1、3、又は4であり、3個の物体O、O及びOにそれぞれが対応する円であることを示している。空間周波数σ及びσの平面における円の半径が2ρよりも大きい場合は、対応する物体iが、コンポーネント1からさらに離れていることになる。
【0042】
図7の線図、図5a、図5b、図6a、及び図6bに示すように、図1に示す距離画像化装置を用いる場合、以下のステップが含まれる。
ステップS1:図5aに示すトランスミッタンス関数t(x,y)を有するコンポーネント1を図1に示す装置に挿入する。
ステップS4:トータル画像Itotとして参照される、図6aに示す画像を撮像する。
ステップS5:図6aの画像に対しフーリエ変換を行い、図6bに示すトータルスペクトルStotを生成する。
ステップS7:2つのスペクトルの同じ中心座標点σ=0、σ=0を用いて、図5bに示す参照スペクトルSref図6bに示すトータルスペクトルStotに重ねる。
ステップS8:外接円の半径が、トータルスペクトルStotの構成要素であるスペクトルSの1つに対応する外接円の半径2ρと等しくなるように、重ね合わせにおいて、空間周波数σ及びσの平面内で参照スペクトルSrefは、相似的に変わる。
ステップS9:参照スペクトルSrefに対応する外接円の初期の半径2ρが、スペクトルSに対応する外接円の半径2ρと等しくなるために、相似比Hを特定する。そして、
ステップS10:相似比Hの値に基づいて、スペクトルSを生成した物体iまでの距離dを算出する。
【0043】
ステップS8からS10までは、トータルスペクトルStotにおけるそれぞれの半径を区別できるように、それぞれのスペクトルS毎に繰り返される。
【0044】
最後に、次の任意のステップS11において、ステップS8からS10までのシーケンスを繰り返した回数は、視界100内に存在し、コンポーネント1からセンサ101に光を送っている、それぞれ分離している物体の数と対応している。
【0045】
視界100に存在する物体は、光軸Zに平行に、0でない長さに伸ばすことができる。この場合、ステップS8からS10までのシーケンスは、2つの限界値の間で連続している相似比Hがどのような値であっても、繰り返すことができる。式d=d/(H−1)を用いることにより、この区間の長さから、Z軸に沿った物体の長さを得ることができる。ここで、dは、コンポーネント1から物体の現在位置までの距離である。
【符号の説明】
【0046】
1 平板上光学コンポーネント
101 画像センサ
102 センサ101によって取り込まれた画像を格納するユニット、メモリと示す
103 ユニット102に格納された画像データの処理に適した計算ユニット、CPUと示す
Z 画像化装置の光軸、コンポーネント1及びセンサ2に対し垂直
Z軸に平行な、コンポーネントとセンサ2との間の距離
100 Z軸の周りに広がる視界
〜O コンポーネント1を通過しセンサ101へ向かう光を生成又は反射する、視界100に位置する物体
視界100内のZ軸上でコンポーネント1から有限の距離にある、光を出射する物体
視界100内のZ軸上でコンポーネント1から無限と考えられる距離にある、光を出射する物体
2 物体Oから出射され、コンポーネント1を通過してセンサ101に到達する平面波
3 平面波2が、コンポーネント1を通過することによって生じた波
Z軸に平行な、物体Oとコンポーネント1との間の距離
9 物体Oから出射され、コンポーネント1を通過してセンサ101に到達する球面波
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6a
図6b
図7