(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有底角筒形の外装缶と、前記外装缶の開口部を封口する蓋板とで形成された電池ケース内に、正極と負極とをセパレータを介して重ねて渦巻状に巻回し、横断面を扁平状にした巻回電極体と、非水電解質とが収容されてなるリチウムイオン二次電池であって、
前記外装缶の側面部は、互いに対向し、側面視で他の面よりも幅の広い2枚の幅広面を有しており、かつ前記幅広面の幅が前記他の面の幅の5倍以上であり、
前記正極および前記負極は、リチウムイオン二次電池の外部端子と電気的に接続する集電タブを有しており、
前記正極の集電タブと前記負極の集電タブとが、前記外装缶の幅広面の幅方向の中央部を中心としたときのいずれか一方の同じ片側であって、前記外装缶の前記他の面の幅をA(mm)としたとき、前記中央部からA/2以上離れた位置に相当する箇所に配置されており、
前記外装缶は、前記正極および前記負極のうちのいずれか一方の外部端子を兼ねており、前記正極および前記負極のうち、前記外装缶の対極の電極の集電タブは、前記電極の、前記巻回電極体における巻回中心側の1周目に当たる箇所に配置されており、
前記外装缶の側面部には、前記電池ケース内の圧力が閾値よりも大きくなった場合に開裂する開裂溝が設けられていることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
前記正極の集電タブが、前記正極の、前記巻回電極体における巻回中心側の1周目に当たる箇所に配置されており、かつ前記負極の集電タブが、前記負極の、前記巻回電極体における巻回中心側の1周目に当たる箇所に配置されている請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本発明のリチウムイオン二次電池の一例を模式的に表す斜視図を、
図2に、その部分縦断面図を、
図3に、その横断面図を、それぞれ示す。
図1から
図3に示すリチウムイオン二次電池1は、角形の電池ケース10を有しており、電池ケース10は中空で、正極31と負極32とをセパレータ33を介して重ねて渦巻状に巻回し、横断面を扁平状にした巻回電極体30(以下、「扁平状巻回電極体」という場合がある)や、非水電解質(図示しない)などを内部に収容している。
【0014】
電池ケース10は、外装缶11と蓋体20とで構成され、外装缶11は有底角筒形の形態を有しており、その開口端部に蓋体20が被せられて、溶接によって蓋体20と一体化している。外装缶11および蓋体20は、例えばアルミニウム合金などにより構成される。そして、外装缶11の側面部は、互いに対向し、側面視で他の面よりも幅の広い2枚の幅広面111、111と、前記他の面(幅狭面)112、112とを有している。
【0015】
正極31と負極32は前記のようにセパレータ33を介して渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状の巻回電極体30として、外装缶11に非水電解質と共に収容されている。ただし、
図2では、煩雑化を避けるため、正極31や負極32の作製にあたって使用した集電体としての金属箔や非水電解質などは図示しておらず、扁平状巻回電極体の図中左端の部分のみ断面にし、他の部分を断面にしていない(後記の
図6も同様である)。また、
図3では、扁平状巻回電極体を構成する正極、負極およびセパレータを区別して示していない(後記の
図5も同様である)。
【0016】
外装缶11の底部にはポリエチレンシートからなる絶縁体40が配置され、正極31、負極32およびセパレータ33からなる扁平状巻回電極体30からは、正極31および負極32のそれぞれ一端に接続された正極タブ51と負極タブ52とが引き出されている。また、蓋体20にはポリプロピレン製の絶縁パッキング22を介してステンレス鋼製の端子21が取り付けられ、この端子21には絶縁体24を介してステンレス鋼製のリード板25が取り付けられている。
【0017】
また、蓋体20には電解液(非水電解質)注入口が設けられており、この電解液注入口には、封止部材23が挿入された状態で、例えばレーザー溶接などにより溶接封止されて、電池の密閉性が確保されている。
【0018】
この実施例1の電池では、正極タブ51を蓋体20に直接溶接することによって外装缶11と蓋体20とが正極端子(正極外部端子)として機能し、負極タブ52をリード板25に溶接し、そのリード板25を介して負極タブ52と端子21とを導通させることによって端子21が負極端子(負極外部端子)として機能するようになっている。ただし、電池ケース10の材質などによっては、その正負が逆になる場合もある。
【0019】
本発明のリチウムイオン二次電池では、幅広面の幅(
図3に示すBの長さ)が他の面(幅狭面)の幅(
図3に示すAの長さ)の5倍以上である。本明細書でいう「幅広面の幅」とは、幅広面側からの側面視における幅方向の全長さのことであり、「他の面の幅」とは、前記他の面側からの側面視における幅方向の全長さのことである。
【0020】
すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池は、電池ケースの幅(外装缶の幅)が厚み(外装缶の厚み)の5倍以上といった横断面が細長い形状である。
図4には、角形のリチウムイオン二次電池1において、幅方向の両端(すなわち、両方の幅狭面)から矢印方向に大きな荷重がかかったときの、電池上方から見た様子を模式的に示しているが、前記のような細長い形状の電池では、この
図4に示すように「くの字」状に折れ曲がりやすい。
【0021】
角形リチウムイオン二次電池では、巻回電極体の有する正極のタブと、負極のタブとが、外装缶の幅広面の中央部を中心としたときに、正極タブがいずれか一方の片側に相当する箇所に配置され、負極タブが他方の片側に相当する箇所に配置されるように構成した扁平状巻回電極体を使用したり、正極タブおよび負極タブの少なくとも一方が、外装缶の幅広面の中央部やその近傍に相当する箇所に位置するように構成した扁平状巻回電極体を使用したりすることが通常である。
【0022】
このようなリチウムイオン二次電池が、前記のように「くの字」状に折れ曲がると、その内部に収容されている扁平状巻回電極体も「くの字」状に折れ曲がるが、その場合、正極タブや負極タブには、蓋体や蓋体に取り付けられたリード板と接合されているために、よじれが生じ、これらのタブのエッジが扁平状巻回電極体のセパレータと触れて破断させてしまう虞がある。こうしたセパレータの破断が発生すると、正極や負極のタブが対極と直接触れることになるため、短絡が生じて電池が熱暴走してしまう。
【0023】
そこで、本発明のリチウムイオン二次電池では、
図2および
図3に示すように、正極の集電タブ51および負極の集電タブ52を、外装缶11の幅広面111を、その幅方向の中央部(
図3中a−a線)を中心としたときのいずれか一方の同じ片側(
図2および
図3では左側)であって、外装缶11の前記他の面(幅狭面112)の幅をA(mm)としたとき、前記中央部からA/2以上離れた位置に相当する箇所(すなわち、図中Cの長さが、A/2以上となる位置に相当する箇所)に配置するようにした。
【0024】
正極の集電タブおよび負極の集電タブを、前記のように配置した場合には、リチウムイオン二次電池が、
図4に示すように「くの字」状に折れ曲がっても、電池内で、正極の集電タブおよび負極の集電タブに、よじれが生じ難いことから、これらの集電タブによるセパレータの破断を抑制して、集電タブと対極とが直接接触することによる電池の熱暴走を抑えることができる。これにより、本発明のリチウムイオン二次電池では、高い安全性が確保できる。
【0025】
なお、
図3に示すリチウムイオン二次電池では、前記の通り、外装缶11が正極の外部端子を兼ねているが、その対極である負極の集電タブ52は、扁平状巻回電極体における巻回中心側の1周目に当たる箇所に配置されている。
【0026】
このように、本発明のリチウムイオン二次電池では、正極および前記負極のうち、前記外装缶の対極の電極の集電タブを、この電極の、扁平状巻回電極体における巻回中心側の1周目に当たる箇所に配置する。扁平状巻回電極体の外周部に集電タブが配置されていると、リチウムイオン二次電池が「くの字」状に折れ曲がった際に外装缶の内面と接触する虞がある。よって、外装缶の対極の電極の集電タブを、扁平状巻回電極体の巻回中心側に配置しておくことで、この集電タブと外装缶の内面との接触による電池の熱暴走を抑制することができる。
【0027】
図5に、本発明のリチウムイオン二次電池の他の例を模式的に表す横断面図を示す。
図5に示すリチウムイオン二次電池1は、正極の集電タブ51が、正極の、扁平状巻回電極体における巻回中心側の1周目に当たる箇所に配置されており、かつ負極の集電タブ52が、負極の、扁平状巻回電極体における巻回中心側の1周目に当たる箇所に配置されている例である。
【0028】
この
図5で示しているように、本発明のリチウムイオン二次電池においては、正極の集電タブが、正極の、扁平状巻回電極体における巻回中心側の1周目に当たる箇所に配置されており、かつ負極の集電タブが、負極の、扁平状巻回電極体における巻回中心側の1周目に当たる箇所に配置されていることがより好ましい。正負極の集電タブは、扁平状巻回電極体の外周側よりも巻回中心側に配置されている方が、電池が「くの字」状に折れ曲がった際に、よりよじれ難いため、正負極の集電タブを前記のように配置することで、リチウムイオン二次電池の安全性をより高めることができる。
【0029】
正極の集電タブおよび負極の集電タブは、外装缶の幅広面の中央部からA/2以上離れた位置に相当する箇所に配置されていればよいが、電池が「くの字」に折れ曲がった際に、これらの集電タブのよじれが、より生じ難いことから、可能な限り外装缶の前記他の面(幅狭面)側に配置することが好ましい。
【0030】
また、正極の集電タブと負極の集電タブとの間の距離は、これらの接触をより良好に抑制する観点から、外装缶の幅広面の幅方向に平行な方向の距離(
図3および
図5におけるDの長さ)で、1mm以上であることが好ましく、正極の集電タブの幅以上の長さ、および負極の集電タブの幅以上の長さであることがより好ましい(すなわち、正極の集電タブの幅と負極の集電タブの幅とが異なる場合には、両集電タブの間の距離は、より幅の広い集電タブの幅以上の長さであることがより好ましい)。
【0031】
本発明のリチウムイオン二次電池に係る正極には、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダを含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが使用される。
【0032】
正極活物質には、従来から知られているリチウムイオン二次電池用の正極活物質として使用されているもの、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出できる活物質が使用される。このような正極活物質の具体例としては、例えば、Li
1+xMO
2(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mn、Al、Mgなど)で表される層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMn
2O
4やその元素の一部を他元素で置換したスピネル構造のリチウムマンガン酸化物、LiMPO
4(M:Co、Ni、Mn、Feなど)で表されるオリビン型化合物などが挙げられる。前記層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、LiCoO
2やLiNi
1−xCo
x−yAl
yO
2(0.1≦x≦0.3、0.01≦y≦0.2)などの他、少なくともCo、NiおよびMnを含む酸化物(LiMn
1/3Ni
1/3Co
1/3O
2、LiMn
5/12Ni
5/12Co
1/6O
2、LiNi
3/5Mn
1/5Co
1/5O
2など)などを例示することができる。
【0033】
正極合剤層に係る導電助剤としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などの黒鉛(黒鉛質炭素材料);アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカ−ボンブラック;炭素繊維;などの炭素材料などが挙げられる。また、正極合剤層に係るバインダには、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などを用いることができる。
【0034】
正極は、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダー処理を施す工程を経て製造される。ただし、正極は、前記の製造方法で製造されたものに限定される訳ではなく、他の方法で製造したものであってもよい。
【0035】
正極の集電体は、従来から知られているリチウムイオン二次電池の正極に使用されているものと同様のものが使用でき、例えば、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好ましい。
【0036】
正極の集電タブは、例えば、ニッケルなどの金属製の箔(板)で構成することができ、通常は、正極集電体の一部に正極合剤層を形成しない露出部を設け、この露出部に前記の箔を溶接するなどして接合することによって取り付ける。
【0037】
正極の集電タブの厚みは40〜200μmであることが好ましい。また、正極の集電タブの幅は2〜8mmであることが好ましい。
【0038】
正極合剤層の厚みは、例えば、集電体の片面あたり10〜100μmであることが好ましい。また、正極合剤層の組成としては、例えば、正極活物質の量が60〜95質量%であることが好ましく、バインダの量が1〜15質量%であることが好ましく、導電助剤の量が3〜20質量%であることが好ましい。
【0039】
本発明のリチウムイオン二次電池に係る負極には、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて導電助剤などを含有する負極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが使用される。
【0040】
負極活物質には、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛)、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛材料;ピッチをか焼して得られるコークスなどの易黒鉛化性炭素質材料;フルフリルアルコール樹脂(PFA)やポリパラフェニレン(PPP)およびフェノール樹脂を低温焼成して得られる非晶質炭素などの難黒鉛化性炭素質材料;などの炭素材料が挙げられる。また、炭素材料の他に、リチウムやリチウム含有化合物も負極活物質として用いることができる。リチウム含有化合物としては、Li−Alなどのリチウム合金や、Si、Snなどのリチウムとの合金化が可能な元素を含む合金が挙げられる。更にSn酸化物やSi酸化物などの酸化物系材料も用いることができる。
【0041】
負極合剤層に係るバインダおよび導電助剤には、正極合剤層に係るバインダおよび導電助剤として先に例示したものと同じものを用いることができる。
【0042】
負極は、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて導電助剤などを、NMPや水などの溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の負極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダー処理を施す工程を経て製造される。ただし、負極は、前記の製造方法で製造されたものに限定される訳ではなく、他の方法で製造したものであってもよい。
【0043】
負極の集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、下限は5μmであることが望ましい。
【0044】
負極の集電タブは、例えば、ニッケルなどの金属製の箔(板)で構成することができ、通常は、負極集電体の一部に負極合剤層を形成しない露出部を設け、この露出部に前記の箔を溶接するなどして接合することによって取り付ける。
【0045】
負極の集電タブの厚みは40〜200μmであることが好ましい。また、負極の集電タブの幅は2〜8mmであることが好ましい。
【0046】
負極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり、集電体の片面あたり10〜100μmであることが好ましい。また、負極合剤層の組成としては、例えば、負極活物質の量が80〜95質量%であることが好ましく、バインダの量が1〜20質量%であることが好ましく、導電助剤を使用する場合には、その量が1〜10質量%であることが好ましい。
【0047】
本発明のリチウムイオン二次電池に係るセパレータは、80℃以上(より好ましくは100℃以上)170℃以下(より好ましくは150℃以下)において、その孔が閉塞する性質(すなわちシャットダウン機能)を有していることが好ましく、通常の非水二次電池などで使用されているセパレータ、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン製の微多孔膜を用いることができる。セパレータを構成する微多孔膜は、例えば、PEのみを使用したものやPPのみを使用したものであってもよく、また、PE製の微多孔膜とPP製の微多孔膜との積層体であってもよい。セパレータの厚みは、例えば、10〜30μmであることが好ましい。
【0048】
前記の通り、前記の正極と前記の負極とは、前記のセパレータを介して重ねて渦巻状に巻回し、横断面が扁平となるように成形した扁平状巻回電極体の形で、本発明のリチウムイオン二次電池に使用される。
【0049】
本発明のリチウムイオン二次電池に係る非水電解質には、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液(非水電解液)を用いることができる。リチウム塩としては、溶媒中で解離してLi
+イオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こしにくいものであれば特に制限はない。例えば、LiClO
4、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiSbF
6などの無機リチウム塩、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、Li
2C
2F
4(SO
3)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC
nF
2n+1SO
3(n≧2)、LiN(RfOSO
2)
2〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などの有機リチウム塩などを用いることができる。
【0050】
非水電解液に用いる有機溶媒としては、前記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;プロピオン酸メチルなどの鎖状エステル;γ−ブチロラクトンなどの環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類;エチレングリコールサルファイトなどの亜硫酸エステル類;などが挙げられ、これらは2種以上混合して用いることもできる。なお、より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒など、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。また、これらの非水電解液に充放電サイクル特性の改善、高温貯蔵性や過充電防止などの安全性を向上させる目的で、無水酸、スルホン酸エステル、ジニトリル、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤(これらの誘導体も含む)を適宜加えることもできる。
【0051】
このリチウム塩の非水電解液中の濃度は、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
【0052】
また、前記の非水電解液に公知のポリマーなどのゲル化剤を添加してゲル状としたもの(ゲル状電解質)を、本発明のリチウムイオン二次電池に使用してもよい。
【0053】
本発明のリチウムイオン二次電池においては、
図1および
図2に示すように、端子21を、外装缶10の幅広面111の中央部に相当する箇所に配置することが好ましい。端子の設置部は、その周囲よりも強度が小さくなる。よって、電池の幅方向の両端から荷重がかかった際には、通常、端子の設置部が折れ曲がりの起点となり、正極および負極の集電タブを配置した箇所の近傍が折れ曲がりの起点となることを抑制できることから、リチウムイオン二次電池の安全性向上効果を、より良好に確保することが可能となる。
【0054】
本発明のリチウムイオン二次電池の電池ケースには、電池ケースの圧力が閾値よりも大きくなった場合に開裂する開裂溝や開裂ベントを設けることが好ましく、この場合には、リチウムイオン二次電池の安全性が更に向上する。
【0055】
図1に示すリチウムイオン二次電池1では、電池ケース10の圧力が閾値よりも大きくなった場合に開裂する開裂溝12が、外装缶11の側面部に設けられているが、このように、本発明のリチウムイオン二次電池では、前記開裂溝を外装缶の側面部に設けることがより好ましい。
【0056】
従来のリチウムイオン二次電池では、蓋体に開裂ベントを設けたものが多いが、開裂ベントを設けた部分は、その周囲よりも強度が小さくなるため、電池の幅方向の両端から荷重がかかった際に、幅方向の中央部ではなく、開裂ベントの形成部で折れ曲がる虞があり、この場合には、正極および負極の集電タブの配置を前記のように調整することによる安全性向上効果が小さくなる虞がある。
【0057】
これに対し、前記開裂溝を外装缶の側面部に設けた場合には、電池の幅方向の両端から荷重がかかったときに折れ曲がる際の起点を、より強度の小さな端子設置部の配置によって制御できることから、正極および負極の集電タブの配置を前記のように調整することによる安全性向上効果を、より良好に確保することが可能となる。
【0058】
外装缶の側面部における開裂溝は、幅広面側からの側面視における対角線に交差するように設けることが好ましい。電池ケースの内圧が上昇した際には、幅広面側からの側面視における対角線に相当する箇所の近傍が稜線となり、この稜線に沿って側面部の側壁に特に大きな応力がかかる。そこで、電池の急激な内圧上昇によって膨れが生じた場合に特に大きな応力がかかる部分である前記対角線に交差するように開裂溝を設けることで、開裂溝が開裂する閾値を可及的に下げ、開裂溝の作動速度を高めて、その安全性をより高めることが可能となる。
【0059】
開裂溝の形状は、直線状としてもよく、曲線状としてもよいが、曲線状とすることがより好ましく、この場合には、直線状とする場合に比べて狭い領域で溝の全長をより長くすることができるため、開裂時に開口部分の面積をより大きくすることができ、電池内部のガスなどを、より効率的に外部へ排出することができるようになる。
【0060】
また、開裂溝を曲線状とする際には、円弧状や楕円弧状としてもよく、
図1に示すようにS字状としても構わないが、幅広面側からの側面視における対角線上に変曲点が位置するS字状とすることが特に好ましく、この場合には、開裂時の開口面積を更に大きくすることができ、また、開裂溝の開裂による外装缶の側壁で構成される半円状の舌部によって、非水電解質の電池外への流出も抑制することができる。
【0061】
他方、本発明のリチウムイオン二次電池では、蓋体に開裂ベントを設けることもできる。
図6に、開裂ベントを蓋体に形成した本発明のリチウムイオン二次電池を模式的に表す縦断面図を示す。この
図6に示すように、リチウムイオン二次電池1の蓋体20に開裂ベント26を設ける場合には、外装缶11の幅広面の幅方向における正極の集電タブ51および負極の集電タブ52が配置されている側(図中左側)の反対側に相当する箇所に配置することが好ましい。
【0062】
前記の通り、開裂ベントの形成部は、その周囲に比べて強度が小さくなるため、電池の幅方向の両端から荷重がかかった際に、折れ曲がりの起点となる虞がある。よって、開裂ベントの形成部を、外装缶の幅広面の幅方向の中央部を中心とした両側のうち、正極および負極の集電タブを配置した側とは反対側に相当する箇所とすることで、正極および負極の集電タブを配置した箇所の近傍が折れ曲がりの起点となることを防止して、リチウムイオン二次電池の安全性をより良好に高めることが可能となる。
【0063】
なお、蓋体に係る電解液注入口は、封止部材を挿入して溶接することから、端子の設置部や開裂ベントの形成部に比べると、その強度をある程度高くすることができるため、電池の幅方向の両端から荷重がかかったときに折れ曲がる際の起点となり難い。よって、電解液注入口を蓋体に形成する際には、外装缶の幅広面の幅方向の中央部を中心とした両側のうち、正極および負極の集電タブを配置した側としてもよく、その反対側としてもよいが、正極および負極の集電タブを配置した側とする場合には、
図6に示すように、正極の集電タブと負極の集電タブとの間に相当する箇所に形成することが、より好ましい。
【0064】
本発明のリチウムイオン二次電池は、従来から知られているリチウムイオン二次電池が適用されている各種用途と同じ用途に用いることができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0066】
実施例1
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO
2:100質量部と、バインダであるPVDFを10質量%の濃度で含むNMP溶液:20質量部と、導電助剤である人造黒鉛:1質量部およびケッチェンブラック:1質量部とを、プラネタリーミキサーを用いて混練し、更にNMPを加えて粘度を調節して、正極合剤含有スラリーを調製した。
【0067】
前記の正極合剤含有スラリーを、厚みが15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗布した後、120℃で12時間の真空乾燥を行って、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、カレンダー処理を行って、正極合剤層の厚みおよび密度を調節し、アルミニウム箔の露出部に、幅3mm、厚み100μmのアルミニウム製の集電タブを溶接して、長さ375mm、幅43mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、片面あたりの厚みが55μmであった。
【0068】
<負極の作製>
負極活物質である数平均粒子径が10μmの天然黒鉛:97.5質量部と、バインダであるSBR:1.5質量部と、増粘剤であるCMC:1質量部とに、水を加えて混合し、負極合剤含有ペーストを調製した。この負極合剤含有ペーストを厚みが8μmの銅箔の両面に塗布した後、120℃で12時間の真空乾燥を行って、銅箔の両面に負極合剤層を形成した。その後、カレンダー処理を行って、負極合剤層の厚みおよび密度を調節し、銅箔の露出部に、幅3mm、厚み100μmのニッケル製の集電タブを溶接して、長さ380mm、幅44mmの帯状の負極を作製した。得られた負極における負極合剤層は、片面あたりの厚みが65μmであった。
【0069】
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートとの容積比2:3:1の混合溶媒に、LiPF
6を1mol/Lの濃度で溶解させて、非水電解液を調製した。
【0070】
<電池の組み立て>
前記帯状の正極と前記帯状の負極とを、厚みが16μmの微孔性ポリエチレンセパレータ(空孔率:41%)を介して重ね、渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状巻回電極体とし、この巻回電極体をPP製の絶縁テープで固定した。この扁平状巻回電極体は、幅が33mmで、厚みが4mmであった。また、この扁平状巻回電極体では、
図5に示すように、正極の集電タブ51と負極の集電タブ52とを、これらの電極の、扁平状巻回電極体の巻回中心側の1周目に相当する箇所に配置し、正極の集電タブ51と負極の集電タブとの間の距離(外装缶の幅広面の幅方向に平行な方向の距離。
図5中Dの長さ。)を3mmとした。
【0071】
外寸が厚み4.0mm、幅34mm、高さ50mmのアルミニウム合金製の角筒形の外装缶(
図5に示す幅広面111の幅Bが、幅狭面112の幅Aの8.5倍)に前記巻回電極体を挿入し、正負極の集電タブの溶接を行うと共に、アルミニウム合金製の蓋板を外装缶の開口端部に溶接した。その後、蓋板に設けた電解液注入口から前記非水電解液を注入し、1時間静置した後注入口を封止して、
図1に示す外観で、
図2および
図5に示す構造の角形のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0072】
実施例1のリチウムイオン二次電池では、外装缶の幅広面の幅方向の中央部と、それにより近い負極の集電タブとの距離(
図5中Cの長さ)を、4mm(幅狭面112の幅Aの1倍)とした。また、実施例1のリチウムイオン二次電池には、外装缶の幅広面にS字状の開裂溝を、幅広面側からの側面視における対角線にS字の変曲点で交差するように設けた。
【0073】
実施例2
図3に示すように、正極の集電タブ51を外周側の1周目に相当する箇所に配置し、負極の集電タブ52を巻回中心側の1周目に相当する箇所に配置した以外は、実施例1と同様にして扁平状巻回電極体を作製した。なお、この扁平状巻回電極体における正極の集電タブ51と負極の集電タブとの間の距離(外装缶の幅広面の幅方向に平行な方向の距離。
図3中Dの長さ。)は、3mmとした。
【0074】
そして、前記の扁平状巻回電極体を用いた以外は、実施例1と同様にして角形のリチウムイオン二次電池を作製した。実施例2のリチウムイオン二次電池では、外装缶の幅広面の幅方向の中央部と、それにより近い負極の集電タブとの距離(
図3中Cの長さ)を、4mm(幅狭面112の幅Aの1倍)とした。
【0075】
比較例1
外装缶の幅広面の幅方向の中央部と、負極の集電タブとの距離(
図3中Cの長さ)が0mm(幅狭面112の幅Aの0倍)となるようにした以外は、実施例2と同様にして扁平状巻回電極体を作製し、この扁平状巻回電極体を用いた以外は実施例2と同様にして角形のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0076】
実施例および比較例のリチウムイオン二次電池について、0.2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電し、続いて4.2Vの電圧で電流値が0.05Cになるまで定電圧充電し、その後に3.0Vの電流値で放電して初期容量を求めたところ、いずれのリチウムイオン二次電池も、800mAhであった。
【0077】
また、実施例および比較例のリチウムイオン二次電池について、前記と同じ条件で定電流充電および定電圧充電を行った後に、電池の外部温度を測定しつつ、
図4に示すように、外装缶の両方の幅狭面に押し潰すための平らな面が接触するようにして、圧力が13kNに達するまで電池を押し潰し、最大の力が得られ次第、圧力の負荷を停止した。そして、その際の電池の熱暴走の有無を確認した。
【0078】
その結果、実施例1、2のリチウムイオン二次電池では、折り曲げから1分後の外部温度が130℃以下で熱暴走の発生が抑制されていたのに対し、比較例1の電池では熱暴走が確認された。