特許第6180246号(P6180246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6180246緊急通報システム、サーバおよび緊急通報方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180246
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】緊急通報システム、サーバおよび緊急通報方法
(51)【国際特許分類】
   H04M 11/04 20060101AFI20170807BHJP
   H04Q 3/58 20060101ALI20170807BHJP
   G08B 25/08 20060101ALI20170807BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   H04M11/04
   H04Q3/58 105
   G08B25/08 B
   G08B25/10 D
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-188512(P2013-188512)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-56740(P2015-56740A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123434
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 英昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100156351
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 秀央
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(72)【発明者】
【氏名】勝亦 敦
(72)【発明者】
【氏名】木下 靖彦
【審査官】 石田 紀之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−244531(JP,A)
【文献】 特開平09−116955(JP,A)
【文献】 特表2006−520122(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0021403(US,A1)
【文献】 特開2006−203750(JP,A)
【文献】 特開2010−287938(JP,A)
【文献】 特開平10−224515(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0309365(US,A1)
【文献】 特開2002−290566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 11/04
G08B 25/08
G08B 25/10
H04Q 3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急通報装置と音声応答手段とを電話回線網を介して接続し、かつ前記緊急通報装置とサーバとをデータ通信網を介して接続してなる緊急通報システムであって、
前記緊急通報装置は、
緊急通報手段の操作に応じて、該緊急通報装置固有の識別情報を前記データ通信網を介して送信する識別情報送信手段を備え、
前記サーバは、
前記データ通信網を介して受信した前記識別情報が、予め記憶した前記識別情報と一致するか否かを確認する発信者確認手段と、
前記音声応答手段に対するすべての音声通話の着信を拒否するように前記電話回線網を予め設定しておくとともに、前記識別情報が一致することを確認した場合のみ前記緊急通報装置からの音声通話を前記音声応答手段に着信させるように前記電話回線網を設定し、前記識別情報が一致することを確認してから所定時間が経過するか、または前記緊急通報装置と前記音声応答手段との音声通話が終了した場合に、前記音声応答手段に対する前記緊急通報装置からの音声通話の着信を拒否するように前記電話回線網を再度設定する着信設定手段とを備えた
ことを特徴とする緊急通報システム。
【請求項2】
緊急通報装置と音声応答手段とをデータ通信網を介して接続し、かつ前記緊急通報装置とサーバとを前記データ通信網を介して接続してなる緊急通報システムであって、
前記緊急通報装置は、
緊急通報手段の操作に応じて、該緊急通報装置固有の識別情報を前記データ通信網を介して送信する識別情報送信手段を備え、
前記サーバは、
前記データ通信網を介して受信した前記識別情報が、予め記憶した前記識別情報と一致するか否かを確認する発信者確認手段と、
前記音声応答手段に対するすべての音声データの受信を拒否するように前記データ通信網を予め設定しておくとともに、前記識別情報が一致することを確認した場合のみ前記緊急通報装置からの音声データを前記音声応答手段に受信させるように前記データ通信網を設定し、前記識別情報が一致することを確認してから所定時間が経過するか、または前記緊急通報装置と前記音声応答手段との音声通話が終了した場合に、前記音声応答手段に対する前記緊急通報装置からの音声データの受信を拒否するように前記データ通信網を再度設定する着信設定手段とを備えた
ことを特徴とする緊急通報システム。
【請求項3】
緊急通報装置から音声応答手段への電話回線網を介した音声通話の着信を管理するサーバであって、
データ通信網を介して前記緊急通報装置から受信した該緊急通報装置固有の識別情報が、予め記憶した前記識別情報と一致するか否かを確認する発信者確認手段と、
前記音声応答手段に対するすべての音声通話の着信を拒否するように前記電話回線網を予め設定しておくとともに、前記識別情報が一致することを確認した場合のみ前記緊急通報装置からの音声通話を前記音声応答手段に着信させるように前記電話回線網を設定し、前記識別情報が一致することを確認してから所定時間が経過するか、または前記緊急通報装置と前記音声応答手段との音声通話が終了した場合に、前記音声応答手段に対する前記緊急通報装置からの音声通話の着信を拒否するように前記電話回線網を再度設定する着信設定手段とを備えた
ことを特徴とするサーバ。
【請求項4】
緊急通報装置と音声応答手段とを電話回線網を介して接続し、かつ前記緊急通報装置とサーバとをデータ通信網を介して接続してなる緊急通報システムによる緊急通報方法であって、
前記サーバで、前記音声応答手段に対するすべての音声通話の着信を拒否するように前記電話回線網を予め設定しておく着信拒否ステップと、
前記緊急通報装置で、緊急通報手段の操作に応じて、該緊急通報装置固有の識別情報を前記データ通信網を介して送信する識別情報送信ステップと、
前記サーバで、前記データ通信網を介して受信した前記識別情報が、予め記憶した前記識別情報と一致するか否かを確認する発信者確認ステップと、
前記サーバで、前記識別情報が一致することを確認した場合にのみ前記緊急通報装置からの音声通話を前記音声応答手段に着信させるように前記電話回線網を設定する着信設定ステップと、
前記音声応答手段で、前記電話回線網を介して前記緊急通報装置と音声通話を行う音声応答ステップと、
前記サーバで、前記識別情報が一致することを確認してから所定時間が経過するか、または前記緊急通報装置と前記音声応答手段との音声通話が終了した場合に、前記音声応答手段に対する前記緊急通報装置からの音声通話の着信を拒否するように前記電話回線網を再度設定する着信再拒否ステップとを有する
ことを特徴とする緊急通報方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、緊急通報装置からコールセンター等へ、音声通話によって緊急時の通報を行う緊急通報システム、サーバおよび緊急通報方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、利用者が所持する端末からコールセンター等へ、電話回線網を介した音声通話によって緊急時の通報を行う緊急通報システムが用いられている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1には、携帯子機から緊急メッセージを含む無線信号が送信されると、電話回線網に接続された消防署の電話機など、予め登録されている場所の電話機のベルを鳴らさせて、送受話器をオフフックした消防署員に緊急メッセージなどを伝える構成が開示されている。この構成により、予め指定した場所にいる人に緊急事態が発生したことを確実に通報できるようにしている。
【0004】
また、特許文献2には、携帯電話機の所定の操作ボタンの押下により、予め設定されている通報先に自動発信を行う通報装置において、着信した際の発信者番号と記憶している電話番号とが一致しているときはオフフック状態として電話回線を繋げる構成が開示されている。この構成により、通報中に回線が切断されかつ利用者が電話をオフフックできない状態になった場合でも、コールセンターと通報装置との間の回線が繋がるようにしている。
【0005】
また、特許文献3には、無線操作部のボタンの押下により送信された無線信号が、緊急通報端末により「緊急」を示す連絡情報に変換され、固有のIDと共に緊急通報サーバへ送信される構成が開示されている。この構成により、利用者である高齢者が、住まいのどの場所にいても緊急通報が容易にできるようしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−209026号公報
【特許文献2】特開2011−145733号公報
【特許文献3】特開2002−150455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3の緊急通報システムでは、未登録の利用者からコールセンターへの音声通話の着信自体を防ぐための構成については開示されていない。したがって、未登録の利用者が音声通話を発信した場合、コールセンターに着信後、発信者を確認してから速やかに音声通話を終了させる必要があり、短時間ではあるが電話回線が接続されてしまう。そのため、未登録の利用者からのいたずら電話と登録した利用者からの緊急通報とのタイミングが重なった場合、前者が後者の着信を妨害する可能性があるという課題があった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、未登録の利用者からの音声通話の着信自体を防ぎ、登録した利用者からの音声通話をより確実に着信させることができる緊急通報システム、サーバおよび緊急通報方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る緊急通報システムは、緊急通報装置と音声応答手段とを電話回線網を介して接続し、かつ緊急通報装置とサーバとをデータ通信網を介して接続してなる緊急通報システムであって、緊急通報装置は、緊急通報手段の操作に応じて、当該緊急通報装置固有の識別情報をデータ通信網を介して送信する識別情報送信手段を備え、サーバは、データ通信網を介して受信した識別情報が、予め記憶した識別情報と一致するか否かを確認する発信者確認手段と、音声応答手段に対するすべての音声通話の着信を拒否するように電話回線網を予め設定しておくとともに、識別情報が一致することを確認した場合のみ緊急通報装置からの音声通話を音声応答手段に着信させるように電話回線網を設定し、識別情報が一致することを確認してから所定時間が経過するか、または緊急通報装置と音声応答手段との音声通話が終了した場合に、音声応答手段に対する緊急通報装置からの音声通話の着信を拒否するように電話回線網を再度設定する着信設定手段とを備えたものである。
【0010】
また、この発明に係る緊急通報方法は、緊急通報装置と音声応答手段とを電話回線網を介して接続し、かつ緊急通報装置とサーバとをデータ通信網を介して接続してなる緊急通報システムによる緊急通報方法であって、サーバで、音声応答手段に対するすべての音声通話の着信を拒否するように電話回線網を予め設定しておく着信拒否ステップと、緊急通報装置で、緊急通報手段の操作に応じて、当該緊急通報装置固有の識別情報をデータ通信網を介して送信する識別情報送信ステップと、サーバで、データ通信網を介して受信した識別情報が、予め記憶した識別情報と一致するか否かを確認する発信者確認ステップと、サーバで、識別情報が一致することを確認した場合にのみ緊急通報装置からの音声通話を音声応答手段に着信させるように電話回線網を設定する着信設定ステップと、音声応答手段で、電話回線網を介して緊急通報装置と音声通話を行う音声応答ステップと、サーバで、識別情報が一致することを確認してから所定時間が経過するか、または緊急通報装置と音声応答手段との音声通話が終了した場合に、音声応答手段に対する緊急通報装置からの音声通話の着信を拒否するように電話回線網を再度設定する着信再拒否ステップとを有するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、上記のように構成したので、電話回線網に対して着信拒否の設定を行うことで、未登録の利用者からの音声通話の着信自体を防ぎ、登録した利用者からの音声通話をより確実に着信させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施の形態1に係る緊急通報システムを示す構成図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る緊急通報装置を示す構成図である。
図3】この発明の実施の形態1に係るサーバを示す構成図である。
図4】この発明の実施の形態1に係る緊急通報装置の動作を示すフローチャートである。
図5】この発明の実施の形態1に係るサーバの動作を示すフローチャートである。
図6】この発明の実施の形態1に係る緊急通報システムの動作を示すシーケンス図である(通報先が応答した場合)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る緊急通報システムを示す構成図である。実施の形態1に係る緊急通報システムは、緊急通報装置1、PBX(構内交換機)2、オペレータ電話機3、サーバ4およびオペレータ端末5を備える。なお、緊急通報装置1は利用者が所持するものであり、PBX2、オペレータ電話機3、サーバ4およびオペレータ端末5は通報先である緊急通報事業者のコールセンターに設置されるものである。
【0014】
緊急通報装置1は、各利用者が所持する端末である。緊急通報装置1は、音声通話機能およびデータ通信機能を有し、電話回線網6を介してオペレータ電話機3と音声通話を行うとともに、インターネットなどのデータ通信網7を介してサーバ4とデータ通信を行うものである。なお、緊急通報装置1の構成については後述する。
【0015】
PBX2は、コールセンターの構内に設置され、オペレータ電話機3と電話回線網6とを中継し、電話回線の回線交換を行うものである。
【0016】
オペレータ電話機3は、コールセンターに配置されたオペレータが緊急通報装置1と音声通話を行うための電話機であり、PBX2を介して電話回線網6に接続されるものである。なお、PBX2およびオペレータ電話機3は音声応答手段を構成する。
【0017】
サーバ4は、コールセンターの構内に設置され、データ通信網7を介して緊急通報装置1とデータ通信を行うものである。また、PBX2と接続され、PBX2の動作を制御する処理、および緊急通報装置1とオペレータ電話機3との音声通話の状況に関する情報を取得する処理を実行するものである。なお、サーバ4の構成については後述する。
【0018】
オペレータ端末5は、コールセンターに配置されたオペレータが使用するパーソナルコンピュータなどの端末である。オペレータ端末5は、サーバ4と接続され、サーバ4から取得した緊急通報装置1とオペレータ電話機3との音声通話の状況に関する情報を、ディスプレイ(図示せず)に表示する処理などを実行するものである。
【0019】
なお、図1では、一つの緊急通報装置1を備えた例を示したが、緊急通報装置1の個数は複数であっても良い。また、一つのオペレータ電話機3および一つのオペレータ端末5を備えた例を示したが、オペレータ電話機3およびオペレータ端末5の個数は複数であっても良い。
【0020】
図2は、実施の形態1に係る緊急通報装置1を示す構成図である。緊急通報装置1は、通報先登録手段11、緊急通報手段12、識別情報送信手段13、表示手段14、操作手段15および音声通話手段16を備える。
【0021】
通報先登録手段11は、緊急時の通報先の情報を予め記憶しておくものである。通報先の情報は、施設名称、電話番号、住所、担当者氏名などを含むものとする。登録する通報先の数は、一つでも複数でも構わないが、複数であるほうが望ましい。
【0022】
緊急通報手段12は、緊急時に通報を行うための専用のボタンである。
【0023】
識別情報送信手段13は、緊急通報装置1固有の識別情報をデータ通信網7を介してサーバ4に送信する処理を実行するものである。識別情報は、固有のID番号や緊急通報装置1に割り当てられた電話番号など、個々の緊急通報装置1を識別可能な情報を含むものである。実施の形態1では、緊急通報装置1に割り当てられた電話番号を識別情報として用いるものとする。
【0024】
表示手段14は、緊急通報装置1に設けた液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイであり、オペレータ電話機3との音声通話の状況に関する情報、サーバ4から受信したデータ、その他の緊急通報に関する各種情報を表示するものである。
【0025】
操作手段15は、緊急通報装置1に設けたタッチキーまたはタッチパネルであり、利用者から緊急通報装置1への操作を入力するものである。
【0026】
音声通話手段16は、通報先登録手段11に記憶した通報先へ音声通話を発信する処理を実行するものである。
【0027】
なお、緊急通報装置1は、CPUを実装した半導体集積回路またはワンチップマイコンと、ハードディスク装置(HDD)または半導体ディスク装置(SSD)とを備えたコンピュータで構成される。また、当該コンピュータを通報先登録手段、緊急通報手段、識別情報送信手段、表示手段、操作手段、音声通話手段として機能させるためのプログラムをHDDまたはSSDに記憶するとともに、半導体集積回路またはワンチップマイコンが当該プログラムを読み出し、各処理を実行するものである。
【0028】
図3は、実施の形態1に係るサーバ4を示す構成図である。サーバ4は、利用者登録手段41、発信者確認手段42、着信設定手段43、通信制御手段44および電話網制御手段45を備える。
【0029】
利用者登録手段41は、利用者の個人情報を予め記憶しておくものである。利用者の個人情報は、氏名、住所、電話番号、年齢、家族連絡先、かかりつけ医連絡先などを含むものとする。
【0030】
発信者確認手段42は、データ通信網7を介して緊急通報装置1から識別情報を受信するとともに、受信した識別情報に含まれる電話番号が利用者登録手段41に予め記憶した利用者の電話番号と一致するか否かを確認する処理を実行するものである。
【0031】
着信設定手段43は、データ通信網7を介して、PBX2に対するすべての音声通話の着信を拒否するように電話回線網6を予め設定しておく処理と、特定の緊急通報装置1からの音声通話のみ着信を許可するように電話回線網6を設定する処理と、当該緊急通報装置1からの音声通話の着信を拒否するように電話回線網6を再度設定する処理とを実行するものである。
具体的には、電話回線網6を管理する電話会社が提供する転送電話機能を用いる。転送電話機能は、電話回線網6を構成する所定の交換機またはデータ通信網7に接続された電話会社の所定のサーバ(いずれも図示せず、以下「電話転送装置」と記載)に予め登録した電話番号からの発信は任意の端末または交換機(PBX2)に着信させ、かつ予め登録した電話番号以外の電話番号からの発信はPBX2とは別の任意の端末または交換機(図示せず)に転送するものである。
すなわち、着信設定手段43は、データ通信網7を介して、電話転送装置に対してすべての電話番号の登録を抹消することを示す初期化信号を予め送信しておく処理と、特定の緊急通報装置1の電話番号のみを登録することを示す着信許可信号を送信する処理と、当該緊急通報装置1の電話番号の登録を抹消することを示す着信拒否信号を送信する処理とを実行するものである。また、データ通信網7を介して、特定の緊急通報装置1に対してコールセンターへの音声通話の発信を許可することを示す発信許可信号を送信する処理を実行するものである。
【0032】
通信制御手段44は、データ通信網7と接続され、緊急通報装置1とサーバ4との通信の制御を行うものである。
【0033】
電話網制御手段45は、PBX2と接続され、緊急通報装置1とオペレータ電話機3との音声通話の制御を行うものである。
【0034】
なお、サーバ4は、CPUを実装した半導体集積回路またはワンチップマイコンと、HDDまたはSSDとを備えたコンピュータで構成される。また、当該コンピュータを利用者登録手段、発信者確認手段、着信設定手段、通信制御手段、電話網制御手段として機能させるためのプログラムをHDDまたはSSDに記憶するとともに、半導体集積回路またはワンチップマイコンが当該プログラムを読み出し、各処理を実行するものである。
【0035】
次に、図4〜6を用いて、実施の形態1に係る緊急通報システムの動作について説明する。
【0036】
図4は、実施の形態1に係る緊急通報装置1の動作を示すフローチャートである。
まず、ステップST11において、緊急通報手段12のボタンが押下されたか否かを判定する。緊急通報手段12のボタンが押下された場合(Yes)、ステップST12に進む。一方、緊急通報手段12のボタンが押下されていない場合(No)、緊急通報装置1は待機状態を継続する。
【0037】
次いで、ステップST12において、識別情報送信手段13が、緊急通報装置1の電話番号を含む識別情報を、データ通信網7を介して、通報先登録手段11に登録した通報先のサーバ4に送信する処理を実行する。当該処理を実行した後、ステップST13に進む。なお、ステップST12は識別情報送信ステップを構成する。
【0038】
次いで、ステップST13において、データ通信網7を介してサーバ4から所定時間内に発信許可信号を受信したか否かを判定する。所定時間内に発信許可信号を受信した場合(Yes)、ステップST14に進む。一方、所定時間内に発信許可信号を受信しなかった場合(No)、緊急通報装置1は処理を終了する。
【0039】
次いで、ステップST14において、音声通話手段16が、通報先の電話番号へ音声通話を発信する処理を実行する。当該処理を実行した後、ステップST15に進む。
【0040】
次いで、ステップST15において、コールセンターとの音声通話を開始するか否かを判定する。すなわち、電話回線網6およびPBX2を介して、オペレータ電話機3との電話回線が接続されたか否かを判定する。電話回線が接続された場合(Yes)、音声通話を開始し、ステップST16に進む。一方、電話回線が接続されない場合(No)、緊急通報装置1は待機状態を継続する。
【0041】
次いで、ステップST16において、コールセンターとの音声通話を終了するか否かを判定する。すなわち、緊急通報装置1またはオペレータ電話機3の終話ボタンが押下され、両者の間の電話回線が切断された場合(Yes)、音声通話を終了する。また、電話回線が切断されていない場合(No)、緊急通報装置1は音声通話を継続する。
【0042】
以上のように、緊急通報装置1は、緊急通報手段12のボタン押下した後、音声通話を発信するより先に識別情報をサーバ4に送信する処理と、サーバ4から発信許可信号を受信した場合にのみ音声通話を発信する処理とを実行する。
【0043】
図5は、実施の形態1に係るサーバ4の動作を示すフローチャートである。
なお、着信設定手段43が、データ通信網7を介して、PBX2に対するすべての音声通話の着信を拒否するように電話回線網6を予め設定しているものとする。すなわち、電話転送装置に対して、すべての電話番号の登録を抹消することを示す初期化信号を予め送信しているものとする。
【0044】
まず、ステップST21において、緊急通報装置1からの通報の有無を判定する。すなわち、データ通信網7を介して、緊急通報装置1から識別情報を受信したか否かを判定する。識別情報を受信した場合(Yes)、ステップST22に進む。一方、識別情報を受信していない場合(No)、サーバ4は待機状態を継続する。
【0045】
次いで、ステップST22において、登録した利用者からの通報であるか否かを判定する。すなわち、発信者確認手段42が、受信した識別情報に含まれる電話番号が利用者登録手段41に予め記憶した電話番号と一致するか否かを確認する。電話番号が一致する場合(Yes)、ステップST23に進む。一方、電話番号が一致しない場合(No)、サーバ4は処理を終了する。なお、ステップST22は発信者確認ステップを構成する。
【0046】
次いで、ステップST23において、着信設定手段43が、データ通信網7を介して、識別情報を送信した緊急通報装置1からの音声通話のみ着信を許可するように電話回線網6を設定する処理を実行する。すなわち、電話転送装置に対して、識別情報を送信した緊急通報装置1の電話番号を登録することを示す着信許可信号を送信する。また、データ通信網7を介して、識別情報を送信した緊急通報装置1に対して発信許可信号を送信する。当該処理を実行した後、ステップST24に進む。なお、ステップST23は着信設定ステップを構成する。
【0047】
次いで、ステップST24において、所定時間内にPBX2に音声通話が着信したか否かを判定する。所定時間内に着信した場合(Yes)、ステップST25に進む。
【0048】
次いで、ステップST25において、PBX2が緊急通報装置1とオペレータ電話機3との電話回線を接続して音声通話を開始すると、サーバ4は、PBX2から緊急通報装置1とオペレータ電話機3との音声通話の状態に関する情報を取得し、オペレータ端末5のディスプレイに表示させる。当該処理を実行した後、ステップST26に進む。
【0049】
次いで、ステップST26において、音声通話が終了したか否かを判定する。すなわち、緊急通報装置1またはオペレータ電話機3の終話ボタンが押下され、両者の間の電話回線が切断された場合(Yes)、ステップST27に進む。一方、電話回線が切断されていない場合(No)、サーバ4は待機状態を継続する。
【0050】
なお、ステップST24において所定時間内に着信がない場合(No)、およびステップST26において音声通話を終了した場合(Yes)、ステップST27に進む。
【0051】
ステップST27において、着信設定手段43が、識別情報を送信した緊急通報装置1からの音声通話の着信を拒否するように電話回線網6を再度設定する処理を実行する。すなわち、電話転送装置に対して、当該緊急通報装置1の電話番号の登録を抹消することを示す着信拒否信号を送信する。なお、ステップST27は着信再拒否ステップを構成する。
【0052】
以上のように、サーバ4は、受信した識別情報に含まれる電話番号が利用者登録手段41に予め記憶した電話番号と一致することを確認した場合のみ、識別情報を送信した緊急通報装置1からの音声通話をPBX2に着信させるように電話回線網6を設定する処理を実行する。
【0053】
図6は、実施の形態1に係る緊急通報システムにおいて、通報先が応答した場合の動作を示すシーケンス図である。
具体的には、利用者が所持する緊急通報装置1の動作と、電話会社が管理する電話回線網6を構成する交換機および電話転送装置の動作と、通報先である緊急通報事業者のコールセンターに設けたPBX2およびサーバ4の動作とを示すものである。図中、点線の矢印はデータ通信網7を介した各装置間のデータ通信を表し、実線の矢印は電話回線網6を介した音声通話および電話回線の接続・切断を表している。
なお、図中、利用者が所持する緊急通報装置1の動作については、図4と同一の工程番号(ST11〜16)を付し、説明を省略する。また、緊急通報事業者のコールセンターに設けたサーバ4の動作については、図5と同一の工程番号(ST21〜27)を付し、説明を省略する。以下、電話回線網6を構成する交換機および電話転送装置の動作を中心に説明する。
また、電話転送装置はサーバ4から予め初期化信号を受信しており、電話回線網6に対して、すべての電話番号からPBX2への音声通話の着信を、PBX2とは別の任意の端末または交換機に転送するように設定しているものとする。
【0054】
まず、ステップST31において、電話転送装置は、サーバ4から識別番号を送信した緊急通報装置1の電話番号を含む着信許可信号を受信すると、当該電話番号を登録し、当該電話番号を割り当てられた緊急通報装置1からPBX2への音声通話を転送せず、そのまま着信させるように電話回線網6を構成する交換機を設定する。
【0055】
次いで、ステップST32において、電話回線網6を構成する交換機は、識別番号を送信した緊急通報装置1が音声通話を発信すると、当該緊急通報装置1とPBX2との間の電話回線を接続する。
【0056】
次いで、ステップST33において、電話回線網6を構成する交換機は、緊急通報装置1またはオペレータ電話機3の終話ボタンが押下されると、当該緊急通報装置1とPBX2との間の電話回線を切断する。なお、図6では緊急通報装置1の終話ボタンが押下された例を示したが、オペレータ電話機3の終話ボタンが押下された場合も、同様に電話回線を切断する。
【0057】
次いで、ステップST34において、電話転送装置は、サーバ4から識別番号を送信した緊急通報装置1の電話番号を含む着信拒否信号を受信すると、当該電話番号の登録を抹消し、当該電話番号からPBX2への音声通話をPBX2とは別の任意の端末または交換機に転送するように電話回線網6を構成する交換機を再度設定する。
【0058】
以上のように、電話回線網6を構成する交換機および電話転送装置は、サーバ4から着信許可信号および着信拒否信号を受信し、緊急通報装置1からPBX2への音声通話の発信を、PBX2とは別の端末または交換機に転送するか、そのまま着信させるかを切り換える。
【0059】
以上のように、実施の形態1によれば、緊急通報装置1は、緊急通報手段12の操作に応じて、当該緊急通報装置1固有の識別情報をデータ通信網7を介して送信する識別情報送信手段13を備え、サーバ4は、データ通信網7を介して受信した識別情報が、予め記憶した識別情報と一致するか否かを確認する発信者確認手段42と、データ通信網7を介して、PBX2に対するすべての音声通話の着信を拒否するように電話回線網6を予め設定しておくとともに、識別情報が一致することを確認した場合のみ緊急通報装置1からの音声通話をPBX2に着信させるように電話回線網6を設定し、識別情報が一致することを確認してから所定時間が経過するか、または緊急通報装置1とオペレータ電話機3との音声通話が終了した場合に、PBX2に対する緊急通報装置1からの音声通話の着信を拒否するように電話回線網6を再度設定する着信設定手段43とを備えた。
そのため、電話回線網6に対して着信拒否の設定を行うことで、未登録の利用者からの音声通話の着信自体を防ぎ、登録した利用者からの音声通話をより確実に着信させることができる。
【0060】
また、着信設定手段43は、識別情報が一致することを確認した場合、データ通信網7を介して、PBX2への音声通話の発信を許可する発信許可信号を緊急通報装置1に送信し、緊急通報装置1は、発信許可信号を受信した場合のみ、PBX2への音声通話を発信する音声通話手段16を備えるように構成した。
そのため、コールセンター側で音声通話を着信する体制が整ったことを利用者に伝えることになり、利便性が向上する。また、音声通話を適切に利用することができない状況下において、利用者からの音声通話の発信自体を防ぐことで、回線使用率をさらに低減することができる。
【0061】
なお、実施の形態1では、緊急通報装置1として専用のハードウェアを用いる構成を示したが、緊急通報装置1は既存の携帯電話またはスマートフォンに専用のソフトウェアをインストールしたものであってもよい。一般に、携帯電話およびスマートフォンは電話回線網6を介して音声通話を行う機能およびデータ通信網7を介してデータ通信を行う機能を標準搭載していることから、利用者は専用のハードウェアを購入することなく、より簡便に緊急通報システムを導入することができる。
【0062】
また、緊急通報装置1およびオペレータ電話機3がIP電話機能を有する場合、PBX2に代えてデータ通信網7に接続したIP−PBXを採用し、電話回線網6に代えてデータ通信網7を介して音声通話を行うように構成しても良い。
この場合、IP−PBXはデータ通信網7に含まれる所定のIP電話サーバと通信を行い、また当該IP電話サーバが電話転送装置となる。また、着信設定手段43は、IP−PBXに対するすべてのリアルタイム音声データの受信を拒否するようにIP電話サーバを予め設定しておくとともに、識別情報が一致することを確認した場合のみ緊急通報装置1からのリアルタイム音声データをIP−PBXに受信させるようにIP電話サーバを設定し、識別情報が一致することを確認してから所定時間が経過するか、または緊急通報装置1とオペレータ電話機3との音声通話が終了した場合に、IP−PBXに対する緊急通報装置1からのリアルタイム音声データの受信を拒否するようにIP電話サーバを再度設定する処理を実行する。
IP電話を利用した場合、利用者はより安価に緊急通報システムを使用することができる。
なお、電話回線網6を介した音声通話とデータ通信網7を介した音声通話とを組み合わせ、前者を主系統、後者を従系統として用いても良い。
【0063】
また、サーバ4と緊急通報装置1とのデータ通信について、サーバ4から緊急通報装置1へ発信許可信号を自動的に送信するプッシュ型通信の構成を示したが、当該プッシュ型通信には、発信が許可されたことをほぼリアルタイムで確認できるものであれば任意のアプリケーションおよびプロトコルを用いて良い。たとえば、プッシュ型電子メールや電気通信事業者が提供するショートメッセージサービス(SMS)等、任意のアプリケーションを用いても良い。
また、プッシュ型通信ではなく、HTTPなどのプロトコルを用いて緊急通報装置1がサーバ4にアクセスし、発信が許可されたか否かを示すデータを能動的に取得するプル型通信の構成としても良い。
【0064】
また、サーバ4と緊急通報装置1とのデータ通信については、送受信するデータを暗号化することをはじめ、情報漏えいを防ぐための各種対策を講ずることが望ましい。
【0065】
また、実施の形態1では、サーバ4がデータ通信網7を介して電話転送装置に電話番号を登録する方式の転送電話機能を用いた例を示したが、これに限るものではない。例えば、電話回線網6を介して電話番号を登録する一般的な転送電話機能を採用し、サーバ4が送信する信号に代えて、サーバ4からの指示に基づきオペレータ電話機3のダイヤル操作によって転送電話装置に電話番号を登録するように構成しても良い。
また、着信可否設定については、転送電話機能に限るものではない。電話回線網6とPBX2との電話回線の接続を制御し、任意の電話番号からPBX2への音声通話の着信自体を拒否できるものであれば、任意の機器および機能を用いて構わない。
【0066】
また、実施の形態1では、PBX2、オペレータ電話機3、サーバ4、オペレータ端末5をすべて緊急通報事業者のコールセンターの構内に設置した例を示したが、当該構成は一例にすぎず、各機器の設置場所はそれぞれ任意の場所で構わない。
【0067】
その他、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 緊急通報装置
2 PBX
3 オペレータ電話機
4 サーバ
5 オペレータ端末
6 電話回線網
7 データ通信網
11 通報先登録手段
12 緊急通報手段
13 識別情報送信手段
14 表示手段
15 操作手段
16 音声通話手段
41 利用者登録手段
42 発信者確認手段
43 着信設定手段
44 通信制御手段
45 電話網制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6