(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る電気駆動機器を備える車両の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1〜
図3には、本発明に係る電気駆動機器を備える車両の一実施形態である電気自動車1を示した。
図1は、電気自動車1を俯瞰した平面概略図である。
図2は、
図1に示した電気自動車1を左側から見た概略透視図である。
図3は、
図1に示した電気自動車1を前側から見たときに、後述の第1横断部材13A及び第2横断部材13Bの接合部位において各フレーム8及び9を切断した場合の概略端面図である。以下、
図1での電気自動車1の姿勢に基づいた上下方向、前後方向及び左右方向を基準とする。
電気自動車1は、車両の一種である。電気自動車1は、バッテリ14の蓄電電力でモータ17を駆動する。このバッテリ14及びモータ17は、電気駆動機器である。また、後述のDC(Direct Current)/DCコンバータ15及びコントロールユニット16も、電気駆動機器である。
図1の電気自動車1は、複数の骨格部材を有する車体2を有する。
図1の車体2は、乗車空間3、前室4及び荷室5に大別することができる。乗車空間3は、乗員が乗車する領域であり、前方及び後方にシート6が配置されている。前室4は、乗車空間3の前側に位置する領域である。荷室5は、乗車空間3の後側に位置する領域であり、適宜の荷物、スペアタイヤ等が積載可能である。乗車空間3と前室4とは、前隔壁7によって仕切られている。乗車空間3と荷室5とは1つに連結されている。なお、車種によっては乗車空間3と荷室5とを仕切部材を設けて隔絶しても良い。車体2は、2ボックスタイプである。乗車空間3、前室4及び荷室5は、複数の骨格部材により画成される。
図1には、複数の骨格部材のうち、一対のロアフレーム8と、一対のアッパフレーム9とを図示している。車体2の下部には、一対の前輪FT及び一対の後輪RTが配置される。一対の前輪FTは、前室4の下方に配置される。一対の後輪RTは、荷室5の下方に配置される。
【0016】
一対のロアフレーム8は、車体2の前室4から荷室5に至る骨格部材である。ロアフレーム8は、高剛性鋼鈑による中空の角材である。つまり、ロアフレーム8は本発明における前後延在部材の一つである。ロアフレーム8は、車体2の底面に沿って、左右にそれぞれ1本ずつ平行に配設され、前後方向に延在する。一対の前輪FT及び一対の後輪RTは、一対のロアフレーム8に軸支される。乗車空間3内のシート6は、一対のロアフレーム8に直接的又は間接的に取付けられる。ロアフレーム8は、乗車空間3と前室4とを隔絶する前隔壁7の下部から前方へ突出する。
【0017】
一対のアッパフレーム9は、車体2の前室4から荷室5に至る骨格部材である。アッパフレーム9は、高剛性鋼鈑による中空の角材である。つまり、アッパフレーム9は本発明における前後延在部材の一つである。アッパフレーム9は、車体2の上部に沿って、左右にそれぞれ1本ずつ平行に配設され、前後方向に延在する。一対のアッパフレーム9は、前隔壁7についての、車体2の左右側面寄りの上部から、前方へ突出する。一対のアッパフレーム9は、車体2の上下方向において、一対のロアフレーム8より高い位置で突出する。一対のアッパフレーム9は、車体2の左右方向において、一対のロアフレーム8より左右方向の外側に位置する。前室4において、一対のアッパフレーム9は、ボンネットの下に配置される。
【0018】
特に
図3に示すように、左右それぞれのロアフレーム8とアッパフレーム9との間には板金Sが固定される。該板金Sは、本発明における前後延在部材及びサイドパネルの一つである。この板金Sに前輪FTを懸架するサスペンション(図示せず)が取付けられる。サスペンションが取付けられる部位には、上下方向に延在する筒状部材であるストラットタワー10が設けられ、該ストラットタワー10内にサスペンション等が収容される。ストラットタワー10と板金Sとは一体的に形成される。電気自動車1におけるストラットタワー10は、左右それぞれのロアフレーム8とアッパフレーム9とを上下方向に連結する。ストラットタワー10の材料は高剛性鋼鈑である。
【0019】
一対のロアフレーム8の先端には、一般的に、一対のクラッシュボックス11及びバンパビーム12が取り付けられる。クラッシュボックス11は、一対のロアフレーム8から前へ突出する。バンパビーム12は、一対のクラッシュボックス11の前端に連結される。一対のクラッシュボックス11の上には、枠状部材(図示せず)が取り付けられる。該枠状部材には、ラジエータ等が取り付けられることが多い。
【0020】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る電気自動車1の前室4においては、横断部材13、バッテリ14、DC/DCコンバータ15、コントロールユニット16及びモータ17が設置されている。
【0021】
第1横断部材13A及び第2横断部材13Bは、前隔壁7よりも前方に配置され、前後延在部材を接続する。具体的には、特に
図3に示すように、第1横断部材13Aは、前室4を左右方向に横断するように延在し、前室4における一対のアッパフレーム9の間を接続している。また、第2横断部材13Bは、前室4を左右方向に横断するように延在し、前室4における一対のロアフレーム8の間を接続している。ロアフレーム8及びアッパフレーム9と第1横断部材13A及び第2横断部材13Bとはそれぞれ接合されている。ロアフレーム8及びアッパフレーム9と第1横断部材13A及び第2横断部材13Bとの接合形態としては、車両の製造過程で多用される溶接を用いることができる。
バッテリ14、DC/DCコンバータ15、コントロールユニット16及びモータ17は、前隔壁7と第1横断部材13A及び第2横断部材13Bの前縁との間に配置されている。したがって、バッテリ14等の電気自動車1における電気駆動機器が、前室4内で前後延在部材に接合されて成る第1横断部材13A及び第2横断部材13Bよりも後方に配置される。
【0022】
なお、第1横断部材13Aは、本発明に係る電気駆動機器を備える車両における第1左右接続部材の一例である。更に、第2横断部材13Bは、本発明に係る電気駆動機器を備える車両における第2左右接続部材の一例である。本発明における第1左右接続部材及び第2左右接続部材は、総合して左右接続部材と称される。本発明において左右接続部材は、前後延在部材に接合されて、前後延在部材を接続可能であり、前室におけるバッテリ等の電気駆動機器が配置される領域の良好な耐衝突性能が得られる限り特に限定されない。左右接続部材としては、例えばフレーム状部材又は棒状部材等を採用することができる。フレーム状部材は、例えば前記アッパフレームと同様の中空の角材等を挙げることができる。左右接続部材の材料としては高剛性材料を用いるのが好ましい。左右接続部材の材料は、本発明に係る車両が遭遇し得る衝突形態、例えばフルラップ衝突及びオフセット衝突等において左右接続部材に入力される応力の大きさに応じて決定すれば良い。
【0023】
図4は、
図1に示した電気自動車1での駆動系の説明図である。
図4は、電気自動車1の駆動系の一例である。駆動系は、電気駆動機器として、バッテリ14、DC/DCコンバータ15、コントロールユニット16、及びモータ17を有する。
【0024】
バッテリ14は、電気を蓄電する電池である。バッテリ14は、電気を蓄電する複数の電池セルを有する。
【0025】
モータ17は、一対の前輪FTを駆動するモータである。モータ17は、例えば直流モータで良い。モータ17は、一対の前輪FTをダイレクトに駆動しても、変速機等を介して間接的に駆動しても良い。
図2において、モータ17は、前室4において、一対のロアフレーム8に取付けられている。
【0026】
DC/DCコンバータ15は、バッテリ14、コントロールユニット16及びモータ17に接続される。DC/DCコンバータ15は、バッテリ14から入力される電圧をモータ17へ供給する。DC/DCコンバータ15は、バッテリ14から供給される直流電圧を昇圧し、昇圧した電圧をモータ17に供給することができる。
【0027】
コントロールユニット16は、シート6に着座する乗員の操作に基づいて、
図4の駆動系の動作及び停止を制御する。例えば乗員によりアクセルペダルが操作された場合、DC/DCコンバータ15からモータ17への電力供給を開始する。逆に、アクセルペダルが操作されなくなった場合、DC/DCコンバータ15からモータ17への電力供給を停止する。また、アクセルペダルの操作量に応じてモータ17への供給電力を調整する。これにより、モータ17の回転、停止、回転数が制御される。電気自動車1は、モータ17の回転に応じて、停止状態から加速し、減速して停止する。
【0028】
ところで、電気自動車では、基本的に、バッテリに蓄電した電力によりモータを駆動し、モータの駆動力により走行する。電気自動車の航続距離は、バッテリの蓄電電力により依存する。好ましくは、電気自動車には大容量のバッテリを、多数で積載すると良い。従来においては、電気自動車では、多数のバッテリを、乗車空間又は荷室に積載していた。
しかしながら、電気自動車の乗車空間又は荷室に全てのバッテリを配置する場合、乗車空間又は荷室の積載能力と、航続距離との間に、トレードオフが成立する。電気自動車の航続距離を上げるためには、大量のバッテリを積載するために、乗車空間又は荷室の積載能力を犠牲する必要があった。
図1に示す電気自動車1おいても、例えばバッテリ14を乗車空間3の床下又は荷室5に積載する場合、後側のシート6の高さ又は荷室5の床面を上げなければならなくなる。これにより、乗車空間3の快適性、又は荷室5の積載能力が損なわれる。
このように、電気自動車では、乗車空間又は荷室を犠牲にしないで、車両の航続距離を維持又は向上することが求められる。そこで、電気自動車1のように、例えば従来のガソリン車又はハイブリッド車ではエンジン室であった前室4に、バッテリ14等の電気駆動機器を配置することが考えられる。これにより、乗車空間3及び荷室5が犠牲とならない。
【0029】
しかしながら、バッテリ等の電気駆動機器を車体の前室に配置する場合、乗車空間又は荷室に配置する場合と比べて、電気駆動機器が配置される領域の耐衝突性能が低下する可能性がある。具体的には、車両の衝突形態として多く発生するフルラップ衝突及びオフセット衝突等は、車両の前室に大きな応力が作用して破損し易い。これにより、前室に電気駆動機器を積載すると、前室を破損させる応力が電気駆動機器にも直接作用し易くなってしまうので、電気駆動機器も前室と共に破損して継続使用不能となる可能性がある。なお、従来の電気自動車のように、乗車空間の床下又は荷室に電気駆動機器を積載している場合は、前室の破損による電気駆動機器への直接的な影響は小さいことが多い。
つまり、電気自動車1等の車両では、例えば衝突しても電気駆動機器を継続使用可能に維持しつつ、乗車空間3の快適性及び荷室5の積載能力への影響を抑え、更に車両の航続距離を維持又は向上することが求められる。
【0030】
更に、従来の電気自動車が前輪駆動である場合、乗車空間の床下又は荷室にバッテリ等の電気駆動機器を配置すると、車両の重心が乗車空間の中央又は後方寄りに位置することになる。よって、登坂時に特定のモータの回転数で所望の速度を実現することができない状況に陥ることがあった。つまり、従来の電気自動車は電気駆動機器の配置によって所望の走行性能を実現することができないことがあった。
したがって、前輪駆動の電気自動車において、乗車空間の床下又は荷室に電気駆動機器を配置した場合に比べて走行性能を少なくとも維持又はより一層向上することが求められる。
【0031】
そこで本実施形態では、前輪駆動であっても良好な走行性能を得ることができ、かつ、乗車空間3及び荷室5を狭小化せず、かつ、バッテリ14等の電気駆動機器を車体2の前室4に配置しても、従来の乗車空間3の床下又は荷室5に電気駆動機器が配置されていた場合と比べて、耐衝突性能が低下しない車体構造を提供する。特に、燃料駆動機器を備える既存のエンジン車及びハイブリッド車の車体では、エンジン等を前室に配置する必要がある関係から採用し得なかった、車体構造を提供することができる。
【0032】
上述したように、電気自動車1は、前室4において、バッテリ14等の電気駆動機器が前後延在部材に接合されて成る第1横断部材13A及び第2横断部材13Bの前縁よりも後方に配置される。電気自動車1がフルラップ衝突又はオフセット衝突した場合、車体2の前室4に配置されるバンパビーム12及びクラッシュボックス11が破損し、更に前後延在部材であるロアフレーム8及びアッパフレーム9の少なくとも一方が座屈して変形し、前室4が破損することがある。
しかしながら、電気自動車1においては、例えば一対のロアフレーム8における左右いずれか一方が応力を受けたときに、応力を受けた一方のロアフレーム8から応力を受けなかった他方のロアフレーム8に対して第2横断部材13Bが応力を分散する。すなわち、一対のロアフレーム8の一方のみに応力が作用しても、第2横断部材13Bによって、一対のロアフレーム8全体で応力を受けることができるようになる。
【0033】
更に、上述したように、一対のロアフレーム8及び一対のアッパフレーム9の左右それぞれを接続するストラットタワー10は、ロアフレーム8及びアッパフレーム9と同様に高剛性材料によって形成されている。よって、例えば第2横断部材13Bによって一方のロアフレーム8から一対のロアフレーム8全体に分散された応力は、板金S及びストラットタワー10によって一対のアッパフレーム9にも応力が分散される。特に
図3に示すように、一対のアッパフレーム9同士を接続する第1横断部材13Aと、一対のロアフレーム8同士を接続する第2横断部材13Bと、左右の板金S及びストラットタワー10とによって形成される連続した接続構造は、前方から見ると略矩形を成す。この略矩形を成す連続した接続構造により、前室4において、一対のロアフレーム8及び一対のアッパフレーム9の第1横断部材13A及び第2横断部材13Bがそれぞれ接合される部位、及び、ストラットタワー10よりも後方では、一対のロアフレーム8及び一対のアッパフレーム9が衝突に係る応力を分散して受けることができる。仮に、上記連続した接続構造が形成される部位に壁状部材を設けた場合、ロアフレーム8及びアッパフレーム9のいずれかが応力を受けたときに壁状部材が面全体で応力を受けることによって、応力を受けていないフレームに応力を分散することができる。該壁状部材と同様の機能を、上記連続した接続構造は有しており、壁状部材ではなくフレーム状部材又は棒状部材で実現することができる。
よって、ロアフレーム8及びアッパフレーム9における第1横断部材13A及び第2横断部材13Bの接合部位及びストラットタワー10の接合部位よりも後方において、衝突に係る応力が分散されるので、一対のロアフレーム8及び一対のアッパフレーム9が座屈して変形し難い。したがって、前室4の破損が第1横断部材13A及び第2横断部材13Bの前方のみで食い止めることができる。換言すると、電気自動車1は、電気駆動機器が配置される領域の耐衝突性能が高い。
【0034】
電気自動車1は、前方にモータ17が設けられて成る前輪駆動車である。電気自動車1は、バッテリ14等の電気駆動機器を前室4に積載しているので、車両の重心は前寄りとなっている。これにより、電気自動車1が登坂時に特定のモータの回転数で所望の速度を実現し易い。つまり、電気自動車1の走行性能は、乗車空間の床下又は荷室に電気駆動機器を配置していた従来の電気自動車に比べて、向上している。
【0035】
電気自動車1はエンジン車及びハイブリッド車に積載されている燃料駆動機器が不要であるので、前室4に大容量のバッテリ14を積載可能である。これにより、乗車空間の床下又は荷室にバッテリを積載していた従来の電気自動車と比較しても、バッテリの積載容量は変わらない、又は増大させることができる。したがって、従来の電気自動車に比べて、バッテリの積載容量の差に起因する航続距離の差は生じない、又は航続距離を向上させることができる。
なお、電気自動車1の前室4に所望する容量のバッテリ14を積載することはできない場合であっても、所望する容量の内の大部分は前室4に積載可能である。つまり、前室4に積載し切れなかったバッテリは大容量とならないので、積載し切れないバッテリの積載に要する領域も狭小な領域があれば済むことになる。よって、電気自動車1の乗車空間3及び荷室5を狭小化することなく、乗車空間3の床下又は荷室5等に残りのバッテリを積載することができる。
【0036】
本発明に係る電気駆動機器を備える車両における左右接続部材は、前後延在部材に接合される。
前後延在部材に対する左右接続部材の接合強度は、電気自動車の走行時に生じる衝撃及び振動、並びに、電気自動車の衝突時に前後延在部材を介して左右接続部材に応力が作用しても接合状態を維持可能である限り特に制限は無い。また、接合形態は、例えば車両の製造過程で多用される溶接であれば、特殊な接合用装置等が不要であるので好ましい。
なお、前後延在部材における左右接続部材の接合部位は、前隔壁と左右接続部材の前縁との間にバッテリ等の電気駆動機器が収容できる限り特に限定はされない。
図1〜
図3に示した実施形態においては、一対のアッパフレーム9同士を接続する上側の第1横断部材13Aと、一対のロアフレーム8同士を接続する下側の第2横断部材13Bとの2本が設けられている。本発明において、左右接続部材の数は、前室における電気駆動機器が配置される領域の耐衝突性能が良好である限り特に制限されず、車重の軽量化、製造工程の簡素化等の車両製造において要求される事項を考慮して決定すれば良い。
第1横断部材13A及び第2横断部材13Bの数を
図1〜
図3に示した実施形態よりも増やす場合、例えば左右のストラットタワー10を接続する横断部材を追加で設けることができる。つまり、上記実施形態における第1横断部材13A及び第2横断部材13Bの間に3本目の横断部材13を設けることができる。第1横断部材13A及び第2横断部材13Bに比べて左右接続部材の数を増やすことにより、衝突に係る応力の分散効率が更に向上するので好ましい。
また、
図1〜
図3に示した実施形態においては、一対のアッパフレーム9と第1横断部材13Aとの接合位置、及び、一対のロアフレーム8と第2横断部材13Bとの接合位置は、ストラットタワー10より前方である。本発明において該接続位置は、特に限定されず、ストラットタワー10より後方であっても良い。
【0037】
本発明において、車両が衝突しても左右接続部材による応力分散によって左右接続部材自体が変形し難い。左右接続部材の材料が高剛性材料である場合は、左右接続部材が特に変形し難く、電気駆動機器が配置される領域に変形した左右接続部材が侵入することが起こり難い。よって、電気駆動機器は左右接続部材の前縁より後方に配置すれば足りる。
【0038】
なお、本発明において、前後延在部材と左右接続部材との接合部位を補強する構造を採用することもできる。例えば、高剛性を有するストラットタワー10から、一対のロアフレーム8と横断部材13との接合部位、及び、一対のアッパフレーム9と横断部材13との接合部位に向かって、板金Sに筋状の凸部(図示せず)を設けることができる。筋状の凸部を設けると、該凸部近傍の板金Sの剛性が向上し、変形し難くなるので、各フレームと横断部材13との接合部位近傍も変形し難くなる。接合部位近傍が変形し難くなると、接合部位に応力が作用し難くなるので、衝突に係る応力によって接合状態が解除され難くなる。
【0039】
[第2実施形態]
ここで、本発明の別の実施形態について、
図5を参照しつつ説明する。
図5に示す電気自動車100と、
図3に示す電気自動車1との相違点は、縦断部材131の有無である。この相違点以外は、同一の部材を用いているので、同一の参照符号を付すと共に、詳細な説明は省略する。なお、縦断部材131は、本発明に係る電気駆動機器を備える車両における第3左右接続部材の一例である。
縦断部材131は、第1横断部材13Aと第2横断部材13Bとを上下方向に接続する部材である。縦断部材131は、相互に略平行となるように2本設けられたフレーム状部材である。
図3に示した連続する接続構造の一部が、電気自動車1において上下方向に配置される板金S及びストラットタワー10であったのに対して、第2実施形態においては板金S及びストラットタワー10に代えて縦断部材131が用いられている。つまり、
図5に示すように、上下に2本設けられたフレーム状部材の第1横断部材13Aと、第2横断部材13Bと、左右に2本設けられたフレーム状部材の縦断部材131とが、前方から見ると格子形状を成す連続する接続構造を形成している。これにより、上記電気自動車1と同様に、衝突に係る応力が一対のロアフレーム8及び一対のアッパフレーム9の一部に作用したとしても、一対のロアフレーム8及び一対のアッパフレーム9全体に分散することができる。よって、電気自動車100は、前室において電気駆動機器が配置される領域の耐衝突性能が高い。
なお、第2実施形態においては、板金S及びストラットタワー(
図5には図示せず)も衝突に係る応力の分散に寄与することができる。すなわち、電気自動車100は、電気自動車1に比べて、応力の分散に寄与する部材が多いので、応力分散効率が向上している。
電気自動車100は、電気自動車1の電気駆動機器の配置は変更していない。したがって、前輪駆動である電気自動車100の走行性能は、従来の電気自動車に比べて向上している。
本第2実施形態の変形例としては、第2左右接続部材が縦断部材131に代えて、板金Sに沿って設けられるフレーム状部材である実施形態(図示せず)が挙げられる。例えば板金Sに沿ったフレーム状部材が、第1横断部材13A及び第2横断部材13Bに加えて、ストラットタワー、一対のロアフレーム8、及び一対のアッパフレーム9に対しても接合しているのが好ましい。つまり、連続する接続構造が正面から見ると矩形を成すだけでなく、かつ第1左右接続部材に加えて、各前後延在部材にも第2左右接続部材が接合されているので、良好な応力分散効率を得ることができると共に、連続する接続構造自体が強固な枠体として機能する。よって、電気駆動機器が配置される領域の耐衝突性能をより一層向上させることができる。
【0040】
[第3実施形態]
ここで、本発明に係る電気駆動機器を備える車両の第3実施形態について、
図6を参照しつつ説明する。
図6に示す電気自動車101と、
図3に示す電気自動車1との相違点は、横断部材13に代えて斜行部材132を設けた点である。この相違点以外は、同一の部材を用いているので、同一の参照符号を付すと共に、詳細な説明は省略する。なお、斜行部材132は、本発明に係る電気駆動機器を備える車両における左右接続部材の一例である。
斜行部材132は、フレーム状部材であり、2本設けられている。一方の斜行部材132は、右側のロアフレーム8と左側のアッパフレーム9とを接続し、他方の斜行部材132は、左側のロアフレーム8と右側のアッパフレーム9とを接続する。
図3に示した連続する接続構造は、第1横断部材13Aと第2横断部材13Bと板金Sとストラットタワー10とにより形成されていたのに対して、第3実施形態においては2本の斜行部材132により形成されている。つまり、
図6に示すように、2本の斜行部材132が前方から見ると交差形状を成す連続する接続構造を形成している。これにより、上記電気自動車1と同様に、衝突に係る応力が一対のロアフレーム8及び一対のアッパフレーム9の一部に作用したとしても、斜行部材132分散することができる。第3実施形態において衝突に係る応力の分散効率を更に向上させるには、例えば斜行部材132同士が交差する部位を接合することによって、上記横断部材13及び上記縦断部材131の応力分散機能を斜行部材132に付与することができる。よって、電気自動車101は、前室において電気駆動機器が配置される領域の耐衝突性能が高い。
なお、第3実施形態においては、板金S及びストラットタワーも衝突に係る応力の分散に寄与することができる。すなわち、電気自動車101は、電気自動車1に比べて、応力の分散に寄与する部材が多いので、応力分散効率が更に向上している。
更に、上記横断部材13及び上記縦断部材131のいずれか一方、好ましくは両方を斜行部材132と共に設けることによって、応力の分散効率がより一層向上することになるので好ましい。
電気自動車101は、電気自動車1の電気駆動機器の配置は変更していない。したがって、前輪駆動である電気自動車101の走行性能は、従来の電気自動車に比べて向上している。
【0041】
[第4実施形態]
ここで、本発明に係る電気駆動機器を備える車両の第4実施形態について、
図7を参照しつつ説明する。
図7に示す電気自動車102と、
図1に示す電気自動車1との相違点は、第1横断部材13A及び第2横断部材(
図7には図示せず)の接合位置と、遮蔽板133の有無である。この相違点以外は、同一の部材を用いているので、同一の参照符号を付すと共に、詳細な説明は省略する。
遮蔽板133は、板体であり、上下左右に延在して車体、具体的には左右において板金Sと接続され、上方において第1横断部材13Aと接続され、下方において第2横断部材と接続されている。また、遮蔽板133は、バッテリ14よりも前方に配置されている。遮蔽板133は、ストラットタワー10の前側に接して配置されている。また、第1横断部材13A及び第2横断部材は、遮蔽板133に対して後方から接触するように配置され、左右のストラットタワー10同士を接続している。なお、本発明においては、左右接続部材に対する遮蔽板の接続形態としては、相互に接合せずに単なる接触状態を維持していても良く、溶着又は接着等の固定手段を以って相互に接合されていても良い。
本発明において板状を成す遮蔽板は、厚み及び形状について制限されず、一枚の板材又は複数の板材の合板であっても良く、内部に空隙を有する板材であっても良い。
上記第1実施形態においては連続する接続構造が第1横断部材13A及び第2横断部材とストラットタワー10とにより形成されていたのに対して、本第4実施形態においては遮蔽板133が更に追加されて連続する接続構造を形成している。つまり、応力を面全体で分散可能な遮蔽板133が追加された電気自動車102は、電気自動車1に比べて、応力の分散に寄与する部材が多いので、応力分散効率が更に向上している。よって、電気自動車102は、前室において電気駆動機器が配置される領域の耐衝突性能が高い。
電気自動車102は、電気自動車1の電気駆動機器の配置は変更していない。したがって、前輪駆動である電気自動車102の走行性能は、従来の電気自動車に比べて向上している。
本第4実施形態の変形例としては、遮蔽板がストラットタワー10を形成する高剛性板状部材を電気自動車102の左右方向に延在して、左右のストラットタワー10同士を接続する実施形態が挙げられる。つまり、ストラットタワー10と遮蔽板とを一体化する実施形態である。この実施形態を採用すると、電気駆動機器が配置される領域の良好な耐衝突性能は維持しつつ、別体の遮蔽板が不要になるので部品点数、及び製造工程の削減に寄与することができる。
【0042】
本発明における遮蔽板の材料としては特に限定はされないが、衝突に係る応力の分散効率の向上を目的として、応力が作用しても容易には破断しない材料であるのが好ましい。
バンパビーム12、クラッシュボックス11、遮蔽板133より前方に突出する一対のロアフレーム8及び一対のアッパフレーム9、及び図示しない他の車両構成部品は、衝突によって破損又は変形する。破損又は変形した部品、破片となった部品、及び、前室4内に侵入してくる衝突物が、バッテリ14等の電気駆動機器に対して接触すると、電気駆動機器が破損して継続使用不能となる可能性がある。
遮蔽板133を配置することにより、衝突で生じた飛散物又は前室内侵入物は遮蔽板133に接触又は衝突するので、遮蔽板133より後方の電気駆動機器が配置される領域には飛散物又は前室内侵入物が侵入しない。つまり、遮蔽板133を設けることによって、応力分散に起因する電気駆動機器を配置する領域の耐衝突性能の向上だけでなく、電気駆動機器が破損する直接の原因となり得る飛散物又は前室内侵入物を遮蔽板133により堰き止める機能も得ることができる。これにより、電気自動車102は耐衝突性能が上記電気自動車1に比べて高い。
なお、飛散物又は前室内侵入物を遮蔽板が堰き止めるには、高強度の材料を採用するのが好ましく、加工容易性、車両の構成部材に材料との接合容易性等を考慮して適宜に決定することができる。
【0043】
[第5実施形態]
ここで、本発明に係る電気駆動機器を備える車両の第5実施形態について、
図8を参照しつつ説明する。
図8に示す電気自動車103と、
図1に示す電気自動車1との相違点は、受力板134の有無である。この相違点以外は、同一の部材を用いているので、同一の参照符号を付すと共に、詳細な説明は省略する。なお、受力板134は、本発明に係る電気駆動機器を備える車両における左右接続パネルの一例である。
受力板134は、上下左右に延在する板状体であり、ストラットタワー10の前側に接続されている。具体的には、受力板134は、受力板134の左右端縁部においてストラットタワー10の前方の板金Sに接続され、受力板134の後方面における左右端部においてストラットタワー10の前部に接続されている。なお、本発明においては、ストラットタワーに対する左右接続パネルの接続形態としては、溶着又は接着等の固定手段を以って相互に接合されているのが良い。
本発明において板状を成す左右接続パネルは、厚み及び形状について制限されず、一枚の板材又は複数の板材の合板であっても良く、内部に空隙を有する板材であっても良い。
上記第1実施形態においては連続する接続構造が第1横断部材13A及び第2横断部材とストラットタワー10とにより形成されていたのに対して、本第5実施形態においては受力板134のみが連続する接続構造を形成している。つまり、応力を面全体で分散可能な受力板134が設けられた電気自動車103は、受力板134が接続されるストラットタワー10に応力を分散する。よって、電気自動車103は、前室において電気駆動機器が配置される領域の耐衝突性能が高い。
電気自動車103は、電気自動車1の電気駆動機器の配置は変更していない。したがって、前輪駆動である電気自動車103の走行性能は、従来の電気自動車に比べて向上している。
本第5実施形態の変形例としては、ストラットタワー10を形成する高剛性板状部材を電気自動車103の左右方向に延在して、左右のストラットタワー10同士を接続する実施形態が挙げられる。つまり、ストラットタワー10と受力板134とを一体化する実施形態である。この実施形態を採用すると、電気駆動機器が配置される領域の良好な耐衝突性能は維持しつつ、別体の受力板134が不要になるので部品点数、及び製造工程の削減に寄与することができる。
【0044】
本発明における遮蔽板の材料としては特に限定はされないが、衝突に係る応力の分散効率の向上を目的として、応力が作用しても容易には破断しない材料であるのが好ましい。
バンパビーム12、クラッシュボックス11、受力板134より前方に突出する一対のロアフレーム8及び一対のアッパフレーム9、及び図示しない他の車両構成部品は、衝突によって破損又は変形する。破損又は変形した部品、破片となった部品、及び、前室4内に侵入してくる衝突物が、バッテリ14等の電気駆動機器に対して接触すると、電気駆動機器が破損して継続使用不能となる可能性がある。
受力板134を配置することにより、衝突で生じた飛散物又は前室内侵入物は受力板134に接触又は衝突するので、受力板134より後方の電気駆動機器が配置される領域には飛散物又は前室内侵入物が侵入しない。つまり、受力板134を設けることによって、応力分散に起因する電気駆動機器を配置する領域の耐衝突性能の向上だけでなく、電気駆動機器が破損する直接の原因となり得る飛散物又は前室内侵入物を受力板134により堰き止める機能も得ることができる。これにより、電気自動車103は耐衝突性能が上記電気自動車1に比べて高い。
なお、飛散物又は前室内侵入物を遮蔽板が堰き止めるには、高強度の材料を採用するのが好ましく、加工容易性、車両の構成部材に材料との接合容易性等を考慮して適宜に決定することができる。
【0045】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により、本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。