【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年のエンジン発電機は、排ガス3次規制を達成するために、ほとんどがエンジン制御器(ECU)を装備している。かかるエンジン発電機には、エンジン始動時間の短縮を図るため、外気温に応じて予熱時間を調節する機能をECUに付加することが行われている。このようなECUを備えたディーゼルエンジンを駆動源とする可搬式エンジン発電機を非常用電源として用いる際に前記同様に外部予熱回路を設けると、ECUが外気温に基づいて設定した予熱時間と、外部予熱回路に設定された予熱時間とが異なることがある。このとき、ECUが設定した予熱時間が経過しても、外部予熱回路による予熱が継続していると、ECUは、予熱が終了したにもかかわらず予熱が継続している状態になっているため、予熱にかかわる電気回路に異常が発生したと判定し、エンジンが始動できないように制御してしまう。
【0005】
例えば、
図6は、外気温に応じて予熱時間を制御するECUに設けられた予熱回路の一例を示す回路図であって、ECU11には、ECU内の予熱指令によってON・OFFする内部予熱スイッチ12と、電圧検出部13とが設けられ、予熱ヒータ14には、内部予熱スイッチ12のON・OFFによって作動する予熱リレー15が設けられている。予熱リレー15は、作動コイル15aと、該作動コイル15aが通電状態になったときにONとなるヒータスイッチ15bとを有している。
【0006】
図6に示すように、予熱指令がなく、内部予熱スイッチ12がOFFのときには、作動コイル15aが非通電状態であるからヒータスイッチ15bがOFFであり、予熱ヒータ14は非作動状態になっている。このとき、電圧検出部13は、作動コイル15aを介してリレー用電源部16の電圧を検出することになるので、電圧検出部13では所定の高電圧(+V=High)を検出した状態となる。
【0007】
予熱指令によって内部予熱スイッチ12がONになると、リレー用電源部16からの電流が作動コイル15a及び内部予熱スイッチ12を経て内部アース17に流れるので、作動コイル15aが通電状態になり、ヒータスイッチ15bがONになる。これにより、ヒータ用電源部18からヒータスイッチ15bを介して予熱ヒータ14に電流が流れ、予熱ヒータ14が作動して予熱状態になる。このとき、電圧検出部13は、内部予熱スイッチ12を介してアース状態になるので、検出する電圧は、所定の低電圧(V=Low)となる。ECU11は、予熱指令がなく、検出した電圧が高電圧のときには正常な非予熱状態であると判定し、予熱指令があり、検出した電圧が低電圧のときには正常な予熱中の状態であると判定する。
【0008】
このような予熱回路を有し、外気温に応じて内部予熱スイッチ12をONにする時間を制御するECUでは、外気温が低い極寒状態では予熱時間が長くなるため、非常用電源に関する法律で規定された40秒以内という時間内に電圧確立及び投入が行えなくなるおそれがある。また、40秒以内で電圧確立及び投入が行えるように、例えば、予熱開始から20秒後にエンジンを始動するように設定した場合、外気温が低いときには予熱が不十分でエンジンの始動が困難になるおそれがあり、外気温が高いときには、予熱が短時間で終了してしまうため、始動時に冷えてしまって始動が困難になるおそれがある。したがって、外気温に応じて予熱時間を制御するECUを備えた可搬式エンジン発電機を非常用電源として使用することは好ましくない。
【0009】
図7は、予熱及び始動を確実に行えるようにするため、
図6に示したECUの予熱回路に前記外部予熱回路を追加した予熱回路の一例を示す回路図である。この予熱回路は、
図6に示した予熱回路に、外部予熱回路の予熱作動手段である外部予熱リレー21と、停電検出手段からの外部予熱指令によってON・OFFする外部予熱スイッチ22と、外部予熱リレー21を作動させる電源となる外部リレー用電源部23とを追加したものであって、外部予熱リレー21には、外部予熱スイッチ22に接続した外部予熱作動コイル21aと、該外部予熱作動コイル21aの状態によって接点が切り替わる外部予熱作動スイッチ21bとを有している。
【0010】
図7に示すように、ECUに予熱指令がなく、内部予熱スイッチ12がOFFで、かつ、外部予熱指令がなく、外部予熱スイッチ22がOFFのときには、外部予熱リレー21の外部予熱作動スイッチ21bがECU側に切り替わった状態になっているため、ECUの電圧検出部13は、
図6に示したものと同様に、リレー用電源部16から作動コイル15a及び外部予熱リレー21を経た所定の高電圧(+V=High)を検出する。ECUの予熱指令によって内部予熱スイッチ12がONになると、
図6に示したものと同様に、予熱リレー15がONとなって予熱ヒータ14が作動するとともに、電圧検出部13は所定の低電圧(V=Low)を検出する。
【0011】
一方、停電による外部予熱指令によって外部予熱スイッチ22がONになると、外部リレー用電源部23からの電流が外部予熱作動コイル21aに流れ、外部予熱作動コイル21aが作動状態になって外部予熱作動スイッチ21bが外部アース24側に切り替わる。これにより、リレー用電源部16からの電流が作動コイル15aを通り、外部予熱作動スイッチ21bを通って外部アース24に流れ、ヒータスイッチ15bがONになって予熱ヒータ14に電流が流れて予熱状態になる。このとき、リレー用電源部16からの電流は、作動コイル15a及び外部予熱作動スイッチ21bを通って外部アース24に流れてしまうため、電圧検出部13は低電圧(V=Low)を検出することになる。
【0012】
したがって、ECUにおいては、内部予熱スイッチ12がOFFであるにもかかわらず、電圧検出部13が低電圧(V=Low)を検出していることから、予熱回路にエラーが発生したと判定し、エンジンの始動を禁止するように制御する。このため、外部予熱回路に設定した予熱時間が経過してもエンジンを始動させることができなくなってしまい、非常用電源として機能しなくなる。
【0013】
また、停電による外部予熱指令に基づいて外部予熱スイッチ22と共にECUの内部予熱スイッチ12も同時にONにすることにより、内部予熱スイッチ12がONで、電圧検出部13が低電圧(V=Low)を検出している正常な状態にできるが、ECUの内部予熱スイッチ12は、ON状態の継続時間が外気温に応じて設定されるため、外気温が高い場合には、外部予熱回路に設定されている予熱時間が終了する前に内部予熱スイッチ12がOFFになってしまい、前記同様に、内部予熱スイッチ12がOFFで、電圧検出部13が低電圧(V=Low)を検出するエラー状態になってしまう。
【0014】
なお、ECU内に外部予熱回路に相当する回路を組み込むことも可能であるが、外部予熱回路は、可搬式エンジン発電機を非常用電源として使用するときにのみ必要な回路であり、他の用途にも使用するディーゼルエンジンの全てのECUに外部予熱回路に相当する回路を組み込むことは、不必要な回路を無駄に組み込んでコストアップを招くだけであり、不経済であり、実用性は全くないといえる。
【0015】
そこで本発明は、可搬式エンジン発電機を非常用電源として使用する際のディーゼルエンジンの予熱及び始動を確実に行うことができる可搬式エンジン発電機を提供することを目的としている。