(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180301
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】路面の補修方法及び路面の管理方法
(51)【国際特許分類】
E01C 23/00 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
E01C23/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-247212(P2013-247212)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105492(P2015-105492A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大作 淳
(72)【発明者】
【氏名】杉野 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 紳也
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−234489(JP,A)
【文献】
特開平06−263498(JP,A)
【文献】
特開2004−324161(JP,A)
【文献】
特開2000−119057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 21/00−23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)予めミキサで練り混ぜ製造した遅硬性流動性モルタルを車両で運搬する工程と、
(B)前記遅硬性流動性モルタルを小分けする工程と、
(C)前記工程(B)で小分けした遅硬性流動性モルタルの量に応じた急結材を該遅硬性流動性モルタルに添加する工程と、
(D)前記工程(C)で急結材を添加した遅硬性流動性モルタルを、簡易ミキサで混合することにより速硬性モルタルを製造する工程と、
(E)前記工程(D)で製造した速硬性モルタルを、路面に生じたポットホールに充填する工程と
を具備することを特徴とする路面補修方法。
【請求項2】
上記工程(B)が、小分けする遅硬性流動性モルタルの量を1〜5種類に限定することを特徴とする請求項1記載の路面補修方法。
【請求項3】
上記工程(D)で使用する簡易ミキサが、電池を電源とするもの又は人力式のものであることを特徴とする請求項1又は2記載の路面補修方法。
【請求項4】
更に、(F)上記ポットホールの容積を求める工程を具備することを特徴とする請求項1〜3何れかに記載の路面補修方法。
【請求項5】
(G)路面の状態を車両でパトロールする工程を具備し、該工程(G)で発見した路面に生じたポットホールを、請求項1〜4何れかに記載の路面補修方法で補修することを特徴とする路面管理方法。
【請求項6】
上記工程(G)で発見した路面に生じたポットホールを、直ちに、請求項1〜4何れかに記載の路面補修方法で補修することを特徴とする請求項5記載の路面管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面の補修方法及び路面の管理方法方法に関する。より詳しくは、路面に生じたポットホールを速やか且つ簡便に補修することができる路面の補修方法及び路面の管理方法方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントコンクリート又はアスファルトコンクリートからなる、或いはこれら一種と他の材料が積層され形成された舗装路面(以下本発明では、「路面」という。)は、広く高速道路、一般自動車道路、遊歩道、駐車場、滑走路等に使用されている。路面は風雨にも晒され、冬季には凍結防止剤(塩化物)の散布され、車輪による荷重が局所的に掛かるため等により、路面が局所的に損傷し、ポットホールと呼ばれるような窪みが生じる。このような窪み(以下、「ポットホール」という。)が生じると、車輪がポットホールに嵌り車両のコントロールが一時的に効かなくなることや、タイヤが破裂する虞があり、事故になる虞がある。このため、路面にポットホールが生じていないか等を定期的にパトロールカー等に乗車した人が点検している。また、道路の場合は、通行者から路面の損傷について通報が届くこともある。
【0003】
ポットホールが見つかると補修が行われる。その補修の方法としては、加熱状態の改質アスファルト乳剤混合物をポットホールに敷き均す方法(例えば特許文献1参照。)、常温硬化性の樹脂と骨材を含んだ混合物を袋内で混合することで製造しポットホールに充填又は敷き均す方法(例えば特許文献2及び3参照。)、常温アスファルト舗装材を袋に詰め、その袋をポットホールにそのまま投入し、その上を通過する車両のタイヤで転圧する方法(例えば特許文献4)、セメントやフライアッシュ等の無機系材料を主体とした速硬性のモルタル又はペーストをポットホールに充填する方法(例えば特許文献5及び非特許文献1参照)等がある。
【0004】
加熱状態の改質アスファルト乳剤混合物をポットホールに敷き均す方法は、加熱装置やミキサ等の大型の装置が必要で、複数個所の点在しているポットホールの補修には適さない。また、通常のセメントやフライアッシュ等の無機系材料を主体とした速硬性のモルタル又はペーストをポットホールに充填する方法も、ミキサによる混練に商用電源又は発電機からの電気を用いるため電源の準備等に手間が補修現場で掛かるため、複数個所の点在しているポットホールの補修にはあまり適さない。また、これらの補修方法は、パトロール車両1台で対応可能することは困難であり、使用規制(通行規制)の時間が長いという問題もあった。このため、数箇所の点在しているポットホールの補修を1組の少人数の作業員で短時間に補修することはできなかった。
【0005】
また、常温硬化性の樹脂と骨材を含んだ混合物を袋内で混合することで製造しポットホールに充填又は敷き均す方法は、数kg前後、多い場合は50kg程度まで袋内で材料を人力で混合することになり、労力が大変であり、混合が不充分になる虞もある。また、常温アスファルト舗装材を袋に詰め、その袋をポットホールにそのまま投入し、その上を通過する車両のタイヤで転圧する方法は、予盛りを充分取る必要があり、即ち、常温アスファルト舗装材入りの袋が路面からはみ出るように充填するので、タイヤが滑る虞や車両の運転者が落下物と勘違いをしてハンドル操作を誤る虞があり、危険が生じることがあり得る。また、数種の大きさの常温アスファルト舗装材入りの袋を事前に準備しても、実際のポットホールの容積と一致することは稀であり、ポットホールに投入する補修材の量について過不足が生じる虞が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−105713号公報
【特許文献2】特開平08−209620号公報
【特許文献3】特開2002−173909号公報
【特許文献4】特開2004−324161号公報
【特許文献5】特開2009−234897号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「技術フラッシュ 舗装 打設10分間で固まる補修材」、日経コンストラクション、日経BP社、2005年3月25日、p.30−31
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、路面に生じたポットホールを速やか且つ簡便に補修することができる路面の補修方法及び路面の管理方法方法を提供することを目的とする。また、本発明は、パトロール車両1台で対応可能で、短い使用規制(通行規制)で、数箇所の点在しているポットホールを1組の少人数の作業員で短時間に補修することができる路面補修方法及び路面管理方法を提供することを目的とする。また、本発明は、ポットホールの発見から補修完了までの期間が短い路面補修方法及び路面管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、予め製造した遅硬性流動性モルタルを車両で運搬し、前記遅硬性流動性モルタルを小分けし、小分けした遅硬性流動性モルタルの量に応じた急結材を該遅硬性流動性モルタルに添加し、簡易ミキサで混合することにより速硬性モルタルを製造した速硬性モルタルを、路面に生じたポットホールに充填することにより、前記課題を解決することを見出し本発明を完成させた。本発明は、以下の(1)〜(4)で表す路面補修方法、並びに(5)又は(6)で表す路面管理方法である。
(1)(A)予めミキサで練り混ぜ製造した遅硬性流動性モルタルを車両で運搬する工程と、
(B)前記遅硬性流動性モルタルを小分けする工程と、
(C)前記工程(B)で小分けした遅硬性流動性モルタルの量に応じた急結材を該遅硬性流動性モルタルに添加する工程と、
(D)前記工程(C)で急結材を添加した遅硬性流動性モルタルを、簡易ミキサで混合することにより速硬性モルタルを製造する工程と、
(E)前記工程(D)で製造した速硬性モルタルを、路面に生じたポットホールに充填する工程と
を具備することを特徴とする路面補修方法。
(2)上記工程(B)が、小分けする遅硬性流動性モルタルの量を1〜5種類に限定することを特徴とする上記(1)の路面補修方法。
(3)上記工程(D)で使用する簡易ミキサが、電池を電源とするもの又は人力式のものであることを特徴とする上記(1)又は(2)の路面補修方法。
(4)更に、(F)上記ポットホールの容積を求める工程を具備することを特徴とする上記(1)〜(3)何れかに記載する路面補修方法。
(5)(G)路面の状態を車両でパトロールする工程を具備し、該工程(G)で発見した路面に生じたポットホールを、上記(1)〜(4)何れかに記載の路面補修方法で補修することを特徴とする路面管理方法。
(6)上記工程(G)で発見した路面に生じたポットホールを、直ちに、(1)〜(4)何れかの路面補修方法で補修することを特徴とする路面管理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、路面に生じたポットホールを速やか且つ簡便に補修することができる路面の補修方法及び路面の管理方法方法が得られる。本発明によれば、パトロール車両1台で対応可能で、短い使用規制(通行規制)で、数箇所の点在しているポットホールを1組の少人数の作業員で短時間に補修することができる路面補修方法及び路面管理方法が得られる。本発明によれば、ポットホールの発見から補修完了までの期間が短い路面補修方法及び路面管理方法が得られる。また、本発明によれば、ポットホールの発見から補修完了までの期間が短いので、ポットホールが原因の事故が発生するリスクが低い、即ち安全な路面が得られる。また、本発明によれば、短い使用規制(通行規制)で済むことから、社会的又は経済的損失が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の路面補修方法は、以下の工程(A)〜工程(E)を具備することを特徴とする。
(A)予めミキサで練り混ぜ製造した遅硬性流動性モルタルを車両で運搬する工程
(B)前記遅硬性流動性モルタルを小分けする工程
(C)前記工程(B)で小分けした遅硬性流動性モルタルの量に応じた急結材を該遅硬性流動性モルタルに添加する工程
(D)前記工程(C)で急結材を添加した遅硬性流動性モルタルを、簡易ミキサで混合することにより速硬性モルタルを製造する工程
(E)前記工程(D)で製造した速硬性モルタルを、路面に生じたポットホールに充填する工程
【0012】
工程(A)で運搬する遅硬性流動性モルタルは、予めミキサで練り混ぜ製造したモルタルで、流動性が1時間以上保持するものが好ましく、流動性が2時間以上保持するものがより好ましく、流動性が3時間以上保持するものが更に好ましい。遅硬性流動性モルタルは、流動性保持時間が12時間以下である方が、工程(C)において急結材の添加量を少なくできることから好ましく、流動性保持時間が10時間以下であるものがより好ましく、流動性保持時間が8時間以下であるものが更に好ましい。また、ここでいう流動性は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」のフロー試験に準じて測定した、フローコーン引き抜き直後のフロー値(15回の落下運動前のフロー値、以下「静置フロー値」という。)が150mm以上あることを云い、静置フロー値が150mm未満の場合は流動性が充分でない。即ち、流動性が1時間以上保持するとは、静置フロー値が混練直後乃至混練開始(水和開始)から1時間150mm以上あることを云う。本発明で使用する遅硬性流動性モルタルの静置フロー値が150mm以上の場合は簡易ミキサで充分に混合できることから好ましく、静置フロー値が180mm以上あると急結材を添加した後に簡易ミキサで混合し易いことから更に好ましい。
【0013】
また、本発明で使用する遅硬性流動性モルタルは、工程(C)において添加する急結材により、急硬性を示すモルタルである。急結材添加後15分以内に硬化することが好ましく、工程(E)においてポットホールへ充填作業を行う時間を確保する点で、急結材添加後5分間は硬化しないことが好ましい。急結材添加後の遅硬性流動性モルタルの硬化時間は、急結材添加から5〜15分が好ましく、5〜10分がより好ましい。また、本発明で使用する遅硬性流動性モルタルは、結合材と骨材を含有する。結合材としては、水硬性セメントやリン酸カルシウムセメント等の無機質結合材、並びに熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の有機質結合材から選ばれる一種又は二種以上を使用できる。結合材として水硬性セメントを用いる場合は、水、水溶液又は水を分散媒とする分散系の混和材料或いは有機質結合材を含有する。また、骨材としては、細骨材が含まれることが好ましく、その細骨材としては、例えば砕砂、陸砂、川砂、海砂、人工細骨材、セメントクリンカ粒(セメントとして市販されているセメントクリンカ粉末よりも粗い粒状のもの)、スラグ細骨材等が好ましい例として挙げられる。また、骨材として、本発明の効果を損なわない範囲において、粗骨材を使用することができる。その粗骨材としては、砕石、陸砂利、川砂利、人工粗骨材、スラグ粗骨材等が好ましい例として挙げられる。また、本発明で使用する遅硬性流動性モルタルには、結合材、骨材、水以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、他の混和材料等の添加剤を含有させることができる。また、本発明で使用する遅硬性流動性モルタルとはしては、路面との一体性を保持し易いことから、結合材として水硬性セメントと熱可塑性樹脂を併用することが好ましい。水硬性セメント等の無機質結合材と熱可塑性樹脂との割合は、無機質結合材(B)の質量に対する熱可塑性樹脂(P)の質量割合、即ちポリマー無機質結合材比(P/B)が10%以上とすることが好ましく、更に、15〜30%とすることがより好ましい。また、本発明で使用する遅硬性流動性モルタルとはしては、路面との一体性を保持し易く且つ流動性を得やすいことから、無機質結合材(B)に対する骨材の質量比、即ち骨材無機質結合材比(骨材が細骨材(S)のみの場合は、細骨材無機質結合材比(S/B))が1.0〜2.5が好ましい。
【0014】
また、工程(A)の練り混ぜに使用するミキサは、モルタルを混練できるミキサであれば特に限定されずに用いることができ、連続式ミキサでもバッチ式ミキサでも良く、例えばパン型コンクリートミキサ、パグミル型コンクリートミキサ、重力式コンクリートミキサ、グラウトミキサ、ハンドミキサ、左官ミキサ、連続式コンクリートミキサ等が挙げられる。また、遅硬性流動性モルタルを練り混ぜる場所も限定されず、屋外でも、屋内でもよい。
【0015】
工程(A)における遅硬性流動性モルタルを運搬する車両は特に限定されないが、路面の状態を確認するパトロールカー等のパトロール用車輌が、路面に不具合を発見してから路面を補修するまでの時間が短いことから好ましい。また、遅硬性流動性モルタルを運搬する方法も特に限定されないが、例えば、ポリタンク、蓋付きポリバケツ、石油缶、ポリ袋、ステンレス製タンク、蓋付きプラスチック製箱(プラスチック製ケース)、蓋付き樹脂製筒(ポリビン)、蓋付きステンレス製筒、クーラーボックス等の鋼製又は樹脂製蓋付き容器に遅硬性流動性モルタルを入れ、蓋を閉めた状態で運搬することが好ましい。遅硬性流動性モルタルを運搬するときに、容器内で攪拌しながら運搬してもよいが、必ずしも必要ではない。また、工程(B)で小分けしたものを運搬してもよい。
【0016】
工程(B)において遅硬性流動性モルタルを小分けする方法、時期、小分け後の量は特に限定されない。工程(B)は、工程(A)よりも前であっても後であってもよい。工程(B)において遅硬性流動性モルタルを小分けするときに小分けした遅硬性流動性モルタルを入れる容器が、運搬用の容器も兼ねていると、運搬中に振動等で遅硬性流動性モルタルが材料分離を起こしても、工程(D)の簡易ミキサで攪拌すれば容易に均一に戻ることから好ましい。遅硬性流動性モルタルを小分けするときに、小分けする遅硬性流動性モルタルの量を1〜5種類に限定すると、その量に見合った急結材量を予め小袋、薬包紙又は小瓶等に小分けしておくと、補修現場で計量作業及びそのための計量器が不要となり、作業時間が短くすることができることから好ましい。また、小分けした遅硬性流動性モルタルを、工程(D)における簡易ミキサによる混合するときに、別な容器に移して急結材と混合してもよい。
【0017】
工程(C)において、小分けした遅硬性流動性モルタルの量に応じた急結材を遅硬性流動性モルタルに添加する。急結材の添加量による急結材添加後の遅硬性流動性モルタルの硬化時間を予め把握した上で、急結材の添加量を決定することが好ましい。本発明で用いる急結材の種類は、遅硬性流動性モルタルの種類、特に結合材の種類に応じて適宜決定すればよい。また、急結材を遅硬性流動性モルタルに添加する方法は、特に限定されないが、簡易ミキサで混合しながら添加する方法又は容器に入った遅硬性流動性モルタルにその表面から添加することが好ましい。
【0018】
工程(D)において用いる簡易ミキサは、パトロールカーで運搬が可能なミキサであればよく、例えばハンドミキサ、例えばホバート社製ミキサー「N−50」等の容器容量8L以下の単相100V電源を使用するミキサ、単相100V電源を使用する電動ドライバ又は電動ドリルに攪拌羽根を取り付けたもの、コードレス(バッテリー電源)の電動ドライバ又は電動ドリルに攪拌羽根を取り付けたもの、コードレスハンドミキサ、手動式ドリルに攪拌羽根を取り付けたもの、電動ドライバ又は電動ドリルに攪拌羽根を取り付けたもの等が挙げられる。工程(D)において用いる簡易ミキサとしては、電池を電源とするもの又は人力式のものであることが好ましい。電池を電源とするものとしては、上記のコードレスの電動ドライバ又は電動ドリルに攪拌羽根を取り付けたものの他、単相100V電源を使用するミキサや電動ドライバ等をDC−ACインバータを介してバッテリーに繋いだものでもよく、直流電流用の電動ドライバや電動ドリル等をバッテリーに繋いだものでもよい。バッテリーとしては、車両の電源用に搭載されたものでも、別途車両に積載したものでもよい。取扱いが楽なことから、コードレスの電動ドライバ又はコードレスの電動ドリルに攪拌羽根を取り付けたもの又はコードレスハンドミキサがより好ましい。コードレスハンドミキサとしては、食品用のものを用いることもできる。また、この工程(D)の速硬性モルタル製造時又は速硬性モルタル製造後の速硬性モルタル、或いは工程(C)における急結材添加前乃至添加後遅硬性流動性モルタルに、急結材以外の混和材料、結合材及び骨材から選ばれる1種又は2種以上を添加してもよい。
【0019】
工程(E)において、工程(D)で製造した速硬性モルタルを路面に生じたポットホールに充填する方法は特に限定されないが、流し込みにより充填する方法、鏝やへら等で塗り付ける方法、板等で押し付ける方法等が機械を用いないことから好ましい。また、速硬性モルタルの種類によっては、充填前に、ポットホールの清掃、溜まり水の除去、或いはプライマーと呼ばれる吸水調整剤又は接着剤を塗布することを行うことが、路面と速硬性モルタルとの接着力が高いことから好ましい。ポットホールの清掃は、ポットホール内に在る粒状又は粉状の路面材料や土埃等を取り除くことであり、掃除機、ブロア、刷毛、ブラシ、ほうき、高圧水洗浄機、スポンジ、ウエス等を用いて行うことが好ましい。また、ポットホール内の溜まり水の除去は、掃除機、ブロア、刷毛、ブラシ、スポンジ、ウエス等を用いて行うことが好ましい。また、プライマーの塗布は、刷毛、ブラシ又は噴霧器により行うことが好ましい。用いるプライマーとしては、アクリル樹脂エマルションやエチレン酢酸ビニル樹脂エマルション等の樹脂エマルションからなる吸水調整剤、或いはエポキシ樹脂系接着剤等の接着剤が好ましい例として挙げられる。工程(E)において、ポットホールに充填した速硬性モルタルの表面と周囲の路面に、段差が少ないことが好ましく、段差が殆ど無いことがより好ましい。
【0020】
また、上記ポットホールの容積を求める工程(F)を具備することが、作製する速硬性モルタルの量の過不足が生じ難いことから好ましい。ポットホールの容積を求める方法としては、大まかなポットホールの面積と深さを測り、その積から求めることが、作業が容易であることから好ましい。大まかなポットホールの面積を測る方法としては、ポットホールの上面が長方形に近似すると考えて縦と横の長さをメジャー等で測りその積より面積を求める方法、ポットホールの上面が円に近似すると考えてその円の著形をメジャー等で測りその面積を求める方法等が挙げられる。また、大まかなポットホールの深さを測る方法としては、ポットホールを跨ぐように板又は棒を渡し、それらの下部からポットホールの底までの距離、即ち深さを1乃至数箇所メジャー等で測る方法、ポットホールの深さに差が無いと思われる場合はポットホールの淵の深さをメジャー等で測る方法等が挙げられる。
【0021】
本発明の路面管理方法は、(G)路面の状態を車両でパトロールする工程を具備し、該工程(G)で発見した路面に生じたポットホールを、上記の路面補修方法で補修することを特徴とする。上記工程(G)で発見した路面に生じたポットホールを、直ちに、上記の路面補修方法で補修することが好ましい。上記の小分けした遅硬性流動性モルタル、急結材及び簡易ミキサを積載したパトロール用車両でパトロールし、路面の状態を確認を行い、もしもポットホールを発見したときは、当該ポットホールを、上記の路面補修方法で補修する。
【実施例】
【0022】
[実施例1]
表1に示す遅硬性流動性モルタル(ベースモルタル)を、ハンドミキサ(攪拌羽根:直径100mm円盤、回転数:1000r.p.m.)及び鉄製円筒缶(内径:30cm、深さ:50cm)を用いて練り混ぜ10L(リットル)製造した。製造したベースモルタルの配合を表1に示した。また、試験に用いた材料を以下に示した。
<使用材料>
結合材:
ポリマー:スチレンブタジエン系ポリマー(ポリマーディスパージョン、不揮発成分45重量%、太平洋マテリアル株式会社製品)
無機質結合材:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)394質量部とII型無水石膏131質量部を混合したもの
細骨材:珪砂
粗骨材:砂利(粒径4〜6mm、豆砂利)
急結材:カルシウムアルミネート系速硬材
水:千葉県佐倉市上水
【0023】
【表1】
【0024】
作製したベースモルタルの品質試験として、以下に示す通り、フロー試験及び可使時間の測定を行った。その結果を表2に示した。また、作製したベースモルタルは、1Lの蓋付きポリ容器に1L毎に小分けした。尚、ベースモルタルの作製及び品質試験は5℃及び20℃の恒温室内で行った。
<ベースモルタルの品質試験方法>
・コンシステンシー試験
JIS A 1171「ポリマーセメントモルタルの試験方法」に規定されるフロー試験に準じて、練り混ぜ直後のフロー値(15回の落下運動前のフロー値、静置フロー値)を測定した。
・可使時間の測定
ベースモルタルの可使時間は、前記ポリ容器内で攪拌羽根を取り付けた充電式インパクトドリルドライバにより該ベースモルタルを攪拌できる場合をそのベースモルタルは使用可能、攪拌できない場合をそのベースモルタルは使用できないと判断して求めた。
【0025】
【表2】
【0026】
ベースモルタルの作製から30分後に、1Lに小分けしたベースモルタルが入った1Lの蓋付きポリ容器に、急結材を132g添加した後、攪拌羽根を取り付けた充電式インパクトドリルドライバを用いて30秒間混練することで速硬性モルタルを製造した。製造した速硬性モルタルの品質試験として、以下に示す通り、硬化時間及び3時間材齢強度の測定を行った。その結果を表2に合わせて示した。また、小分け後のベースモルタルは恒温室内に置き、速硬性モルタルを製造、硬化時間の測定及び3時間材齢強度供試体の養生は、同じ恒温室内で行った。
<速硬性モルタルの品質試験方法>
・硬化時間の測定
急結材の添加から硬化までの時間を硬化時間として、速硬モルタルを木槌で打ち、そのときの跳ね返り及び音により硬化を判断して、硬化時間を求めた。
・3時間材齢強度
JSCE−G 505−2010「円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法」に準じて急結材の添加から3時間後の圧縮強度を測定した。このとき、試験直前まで恒温室内で供試体を養生した。
【0027】
実現場の路面におけるポットホールを模して、上面(開口部)直径約15cmの円、底面直径約10cm、深さ約10cmの円錐台状の窪みを斫りにより作製したコンクリート供試体を作製した。このコンクリート供試体の窪みに、作製した速硬性モルタル1Lに速やかに粗骨材500gを加え直ちに充填し、表面を鏝を用いて均した。
【0028】
[実施例2]
実施例1と同様に作製したベースモルタルを1L毎に1Lの蓋付きポリ容器に小分けした。小分けしたベースモルタルを入れた1Lの蓋付きポリ容器を調査車両に積み込み、路面に生じたポットホールを調査した。見つけたポットホールをメジャーを用いて縦、横、深さを測定し、ポットホールの容積を求めたところ約1Lであった。ポットホール内をブラシを用いて清掃後、このポットホールの容積に合うようにベースモルタルを入れた1Lの蓋付きポリ容器を1個に実施例1と同じ急結材を同じ量添加した後、攪拌羽根を取り付けた充電式インパクトドリルドライバを用いて30秒間混練することで速硬性モルタルを製造した。製造した速硬性モルタル1Lに速やかに粗骨材500g(0.2L)を加え直ちに充填し、表面をスコップを用いて均した。作製した粗骨材入り速硬性モルタルは、急結材添加から約5分で硬化した。また、粗骨材入り速硬性モルタルの表面仕上げ性は良好で、略平坦であった。また、1週間後に補修箇所の状況を調査したところ、ポットホールに充填した粗骨材入り速硬性モルタルは、剥離せずに状態は健全であった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の路面補修方法は、道路、駐車場、滑走路等の路面に生じたポットホールを速やかに補修することができるので、車両や航空機等のタイヤがポットホールにより取られたりタイヤが破損する等して運転が不安定となることを防ぐことが出来、ポットホールが原因の物損事故や人身事故の発生を抑制できる。