(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180310
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】高周波加熱調理用発熱皿および高周波加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 7/02 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
F24C7/02 561E
F24C7/02 561F
F24C7/02 561A
F24C7/02 340G
F24C7/02 511D
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-257356(P2013-257356)
(22)【出願日】2013年12月12日
(65)【公開番号】特開2015-114061(P2015-114061A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】金井 孝博
(72)【発明者】
【氏名】杉山 直也
【審査官】
宮崎 光治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−144056(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3171157(JP,U)
【文献】
実開平02−055822(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C7/02
A47J27/00−27/13
A47J27/20−29/06
A47J33/00−36/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーで構成される基材に、高周波を吸収して発熱し被加熱物を加熱する高周波発熱材を混練して、被加熱物載置皿に着脱自在に載置できる波板状に形成するとともに、前記波板状の裏面に複数の脚部を設け、
前記脚部は、
高周波発熱材を含有しない素材で構成され、前記波板状の部分と一体に形成されていることを特徴とする高周波加熱調理用発熱皿。
【請求項2】
前記脚部は、
クロス板状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波加熱調理用発熱皿。
【請求項3】
前記脚部の先端部の外形は、
側面視において円弧形状であり、
複数の前記脚部の間は、
リブでつながっている請求項1又は2に記載の高周波加熱調理用発熱皿。
【請求項4】
前記波板状の谷部には、複数の穴が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高周波加熱調理用発熱皿。
【請求項5】
前記リブは、波形状に交差する方向に延びていることを特徴とする請求項3に記載の高周波加熱調理用発熱皿。
【請求項6】
エラストマーの材料として、シリコンゴムまたはフッ素ゴムを用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高周波加熱調理用発熱皿。
【請求項7】
食品を収納する加熱室と、
高周波を前記加熱室に供給する高周波発生手段と、
高周波を透過する素材で構成され、前記加熱室に収容された前記被加熱物載置皿と、
前記被加熱物載置皿に着脱自在に載置され、高周波を吸収して発熱し、被加熱物を加熱する高周波加熱調理用発熱皿と、
前記加熱室に設けられたヒーターと、
前記高周波発生手段および前記ヒーターの動作を制御する制御手段とを有し、
前記高周波発生手段あるいは前記ヒーターの少なくとも1つを動作させ、被加熱物を加熱する焼き工程を行う調理モードを備え、
前記高周波加熱調理用発熱皿として請求項1〜6のいずれかの高周波加熱調理用発熱皿を用いたことを特徴とする高周波加熱調理器。
【請求項8】
高周波を前記加熱室内に照射する高周波出口を、前記加熱室の底面に配置したことを特徴とする請求項7に記載の高周波加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジなどで使用される高周波により発熱する高周波発熱材を用いて被加熱物の表面に焦げ目を付けることができる高周波加熱調理用発熱皿および高周波加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高周波加熱調理器は、高周波の照射により発熱する発熱体が金属製の載置皿に接着されて一体化されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−317019号公報(段落[0027]、
図5、
図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の高周波加熱調理器は、前記のように高周波の照射により発熱する発熱体が金属製の載置皿と一体化されているため、下面を焦がす必要のない被加熱物の場合であっても、発熱してしまい、焦がしてしまうおそれがあり、調理の幅が狭くなる。
【0005】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、被加熱物の下面に焦げ目を付けるか否かを選択することができる高周波加熱調理用発熱皿および高周波加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る高周波加熱調理用発熱皿は、エラストマーで構成される基材に、高周波を吸収して発熱し被加熱物を加熱する高周波発熱材を混練して、被加熱物載置皿に着脱自在に載置できる波板状に形成するとともに、
前記波板状の裏面に複数の脚部を設け
、前記脚部は、高周波発熱材を含有しない素材で構成され、前記波板状の部分と一体に形成されているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の高周波加熱調理用発熱皿によれば、エラストマーで構成される基材に、高周波を吸収して発熱し被加熱物を加熱する高周波発熱材を混練して、被加熱物載置皿に着脱自在に載置できる波板状に形成するとともに、波板状の裏面に複数の脚部を設けている。このため、被加熱物の下面を焦がす必要があるときには、高周波加熱調理用発熱皿を被加熱物載置皿に載置し、調理を行う。これによって、高周波加熱調理用発熱皿が高周波を吸収して発熱し、被加熱物を下方から加熱し、被加熱物の下面に焦げ目を付けることができる。
また、被加熱物の下面を焦がす必要がないときには、高周波加熱調理用発熱皿を被加熱物載置皿から外す。これによって、被加熱物に効率よく高周波を照射することができる。
さらに、複数の脚部によって、高周波加熱調理用発熱皿と被加熱物載置皿との間に空隙を設けることができ、これによって被加熱物載置皿への放熱を防ぐことができ、被加熱物を集中して加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る高周波加熱調理器の外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る高周波加熱調理器の内部構造を示す正面視の断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る高周波加熱調理用発熱皿と被加熱物載置皿との関係を示す側面視の断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る高周波加熱調理用発熱皿を上面側より見た斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る高周波加熱調理用発熱皿を下面側より見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明の実施形態に係る高周波加熱調理器の外観を示す斜視図である。
本発明の実施形態に係る高周波加熱調理器は、
図1に示すように、本体1の前面が把手2を有する縦開き扉3にて覆われている。縦開き扉3の右側には、制御手段4に接続されている操作部5と表示部6とが配置されている。操作部5には、スタートキー7や取り消しキー8などの各種の操作キーが設けられている。
【0010】
図2は本発明の実施形態に係る高周波加熱調理器の内部構造を示す正面視の断面図である。
図2に示すように、本体1の内部は、加熱室12と電気室13とに画成されている。加熱室12には、その前面となる前板(図示せず)に被加熱物の出し入れを行う開口部が形成され、この開口部を含む本体1の前面の全域が、前述の縦開き扉3によって開閉されるようになっている。また、加熱室12には、左右の側壁に、被加熱物載置皿16を支持するレール23,24が設けられているとともに、一方(右側)の側壁に、加熱室12内の被加熱物の温度を検出する赤外線センサー17が設置されている。被加熱物載置皿16は、高周波を透過する素材(例えばセラミック)で構成されている。また、被加熱物載置皿16上には、高周波加熱調理用発熱皿(以下、単に「発熱皿」という)30が着脱自在に載置されている。
【0011】
電気室13には、高周波発生手段であるマグネトロン14と、このマグネトロン14に駆動電力を供給する高圧電力発生手段15とが配置されている。加熱室12を加熱する手段として、高周波を用いた高周波加熱手段と、ヒーターを用いた輻射加熱手段が備えられている。
【0012】
高周波加熱とは、電気室13に設置したマグネトロン14より高周波が励起され、導波管18を伝搬し、加熱室12下部に配置されたアンテナモーター19により駆動される回転アンテナ20を介して加熱室12内部へ放射し、高周波により被加熱物を加熱する加熱方式を指す。なお、高周波を加熱室12内に照射する高周波出口は、加熱室12の底面に配置されており、高周波を透過する素材(例えばセラミック)で構成された仕切り板26にて覆われている。
【0013】
輻射加熱とは、加熱室12の上部や下部に設置されたヒーターにて、加熱室12内部を高温にし、被加熱物を加熱する加熱方式を指す。ここでは、
図2のように上ヒーター(フラットヒーター)21と下ヒーター(シーズヒーター)22が配置され、上ヒーター21の上方に断熱材25が設置されている。
【0014】
図3は本発明の実施形態に係る高周波加熱調理用発熱皿と被加熱物載置皿との関係を示す側面視の断面図である。
図4は本発明の実施形態に係る高周波加熱調理用発熱皿を上面側より見た斜視図である。
図5は本発明の実施形態に係る高周波加熱調理用発熱皿を下面側より見た斜視図である。
発熱皿30は、シリコンゴムなどのエラストマー(高分子物質)からなる基材に、高周波を吸収して発熱し被加熱物を加熱する高周波発熱材を混練して、
図3〜
図5に示すように、波板状に形成したものである。
【0015】
エラストマーの材料としては、耐熱性、調味料や水蒸気などの耐化学薬品性に優れ、機械的衝撃、熱衝撃に強いシリコンゴムやフッ素ゴムを主成分とするものが好適である。
【0016】
高周波発熱材としては、磁性材料の粒子が用いられる。例えば、電子レンジなどで使用される2.45GHzの高周波を吸収して発熱するMg、Cu、Zn等で構成される磁性体である。
【0017】
また、発熱皿30には、
図4および
図5に示すように、波板状の谷部31に複数の穴32が形成され、加熱調理中に被加熱物から排出された油分を発熱皿30から穴32を通して下方の被加熱物載置皿16に流せるようになっている。
【0018】
また、発熱皿30には、
図3および
図5に示すように、波板状の裏面に、複数の脚部33が設けられている。これによって、発熱皿30と被加熱物載置皿16との間に空隙gが形成され、発熱皿30から被加熱物載置皿16への放熱を防ぐことができ、被加熱物を集中して加熱することができる。
【0019】
また、複数の脚部33は、高周波発熱材を含有しない素材、例えばシリコンゴムやフッ素ゴムで構成されている。これによって、脚部33は、高周波を吸収して発熱しないので、発熱皿30に効率よく高周波を当てることができる。従って、発熱皿30をより効率よく発熱させ、被加熱物を加熱することができ、かつ被加熱物載置皿16への放熱も防ぐことができる。また、本発明者による実験の結果、脚部33も高周波発熱体を含有する素材とすると、射出成型時の脚部33の離型性が悪く、一方、脚部33のみ高周波発熱体を含有しない素材とすることで、射出成型時の離型性が良好となることも分かった。
【0020】
また、複数の脚部33は、それぞれクロス板状に形成されている。これによって、強度を確保しながら、脚部33の肉厚を減らせる。
【0021】
また、複数の脚部33は、マトリックス状に配置され、これらの間が波形状に交差する方向に延びるリブ34と、波形状に沿う方向に延びるリブ35とによってつながっている。これによって、脚部33の強度を更に高めることができるとともに、発熱皿30全体の強度も高めることができる。
【0022】
なお、発熱皿30の周縁部にフランジを設けてもよい。このように発熱皿30の周縁部にフランジを設けることで、加熱調理中に、発熱皿30の周縁部から被加熱物載置皿16の外側へ油が垂れるのを防止することができる。
【0023】
次に、以上の構成を有する高周波加熱調理器を用い、本発明の発熱皿30の動作と作用について説明する。本発明の実施形態に係る高周波加熱調理器において、発熱皿30は、高周波を透過する素材(セラミック)で構成された被加熱物載置皿16に載置して使用される。
【0024】
まず、被加熱物載置皿16に発熱皿30に置いた被加熱物(例えば食品)を載置し、被加熱物載置皿16を加熱室12の左右の側壁のレール23,24に配置する。次いで、所定の指示操作を行うと、マグネトロン14が動作して高周波が発生する。発生した高周波は、導波管18を経て回転アンテナ20より加熱室12の内部に給電される。
【0025】
加熱室12内部に給電された高周波は、発熱皿30に吸収され、発熱皿30そのものの温度が上昇し、食品を加熱し、食品の外周部分に焼き色や焦げ目をつけることができる。
【0026】
また、高周波を加熱室12の下方から供給するように加熱調理器の本体1を構成しているので、最も焼き色のつき難い食品の下面側から加熱することができ、食品全体をより均一に加熱することができる。
【0027】
また、被加熱物の下面を焦がす必要がないときには、発熱皿30を被加熱物載置皿16から外す。これによって、被加熱物に効率よく高周波を照射することができ、通常の高周波加熱を行うことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 本体、2 把手、3 縦開き扉、4 制御手段、5 操作部、6 表示部、7 スタートキー、8 取り消しキー、12 加熱室、13 電気室、14 マグネトロン、15 高圧電力発生手段、16 被加熱物載置皿、17 赤外線センサー、18 導波管、19 アンテナモーター、20 回転アンテナ、21 上ヒーター、22 下ヒーター、23,24 レール、25 断熱材、26 仕切り板、30 発熱皿(高周波加熱調理用発熱皿)、31 谷部、32 穴、33 脚部、34,35 リブ、g 空隙。