(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180317
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】蛍光性染料含有樹脂ビーズの製造方法、該方法によって得られた蛍光性染料含有樹脂ビーズ、並びにこれを用いた蛍光性を有する物品
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20170807BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20170807BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20170807BHJP
C08F 20/20 20060101ALI20170807BHJP
C08F 2/18 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
C08F2/44 B
C09D133/04
C09D7/12
C08F20/20
C08F2/18
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-264991(P2013-264991)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2015-120814(P2015-120814A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2015年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100175787
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 龍也
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100098213
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 武
(72)【発明者】
【氏名】安部 隆士
【審査官】
渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−265401(JP,A)
【文献】
特開2007−150224(JP,A)
【文献】
特開2013−107281(JP,A)
【文献】
特開平07−276569(JP,A)
【文献】
特開2001−072887(JP,A)
【文献】
特開2004−277691(JP,A)
【文献】
特開2005−002172(JP,A)
【文献】
特開2013−064031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2,6−246、C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光性染料含有樹脂ビーズの製造方法であって、
前記蛍光性染料が、油溶性のペリレン系蛍光性染料又はクマリン系蛍光染料であり、
共重合可能な官能基を2以上有するモノマーを、使用する全モノマーに対して30質量%を超える量で含むモノマー混合液に、前記蛍光性染料をモノマー混合液に対して3質量%以下となる量で溶解し、これに重合開始剤を加えて重合性モノマー液を調製した後、該重合性モノマー液を水相に加えて撹拌して懸濁液を調製し、懸濁重合することにより、樹脂ビーズを得ることを特徴とする蛍光性染料含有樹脂ビーズの製造方法。
【請求項2】
前記共重合可能な官能基を2以上有するモノマーが、(メタ)アクリレート骨格を有するモノマーである請求項1に記載の蛍光性染料含有樹脂ビーズの製造方法。
【請求項3】
前記共重合可能な官能基を2以上有するモノマーが、アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びそれらの誘導体の群から選択された少なくとも1種である請求項1又は2に記載の蛍光性染料含有樹脂ビーズの製造方法。
【請求項4】
前記蛍光性染料の使用量が、前記モノマー混合液に対して2質量%以下となる量である請求項1〜3のいずれか1項に記載の蛍光性染料含有樹脂ビーズの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする蛍光性染料含有樹脂ビーズ。
【請求項6】
請求項5に記載の蛍光性染料含有樹脂ビーズを含むことを特徴とする蛍光性を有する物品であって、該物品が、蛍光性を有する、成形体、フィルム、印刷物、塗膜、塗料、分散体及び分散液のいずれかであることを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色移行に対する耐性に優れた蛍光性染料含有樹脂ビーズの製造方法、該方法によって得られた蛍光性染料含有樹脂ビーズ、並びにこれを用いた蛍光性を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光性染料は良好な蛍光特性を有するため、従来より、成形体、フィルム、印刷物、塗膜、塗料、分散体及び分散液などの様々な用途に使用されている。中でもペリレン系蛍光性染料は、非常に堅牢な耐候性や耐熱性を持つ蛍光性染料として知られており、有用である。しかし、ペリレン系蛍光性染料には、下記に挙げるように、色移行の面での問題があった。具体的には、樹脂中で使用した際にはマイグレーション耐性に劣り、蛍光性染料が樹脂に色移行する場合があった。また、塗料として使用した場合には、ブリード耐性が劣ることから、重ね塗りした塗膜に色移行するといった現象が起こりやすかった。このため、その使用に際しては、これらの色移行の問題を解決しなければならなかった。
【0003】
上記したような色移行の問題を解決するため、これまでに様々な工夫が施されてきた。例えば、特許文献1では、架橋ポリメタアクリレートまたはポリアクリレートである重合体マトリックスと、ペリレン系列等の非極性の蛍光性染料を実質的に含んでなる蛍光顔料を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−48899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上記した従来技術では、前記した蛍光性染料の色移行に対する十分な効果が達成されておらず、使用した蛍光性染料がより良好な色移行に対する耐性を示すものとなる蛍光性染料の使用技術の開発が望まれる。
【0006】
従って本発明の目的は、蛍光性染料が良好な蛍光特性を維持しつつ、色移行に対する十分な耐性を持つ、蛍光性染料含有樹脂ビーズの製造方法、該方法によって得られた蛍光性染料含有樹脂ビーズ、及びこれを用いた製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、従来技術を解決すべく鋭意検討した結果、蛍光性染料、特に色移行に対する耐性について課題があったペリレン系蛍光性染料を使用した場合でも、良好な蛍光特性を維持しつつ、色移行に対する十分な耐性が付与された製品の提供が可能になる、極めて有用な蛍光性染料含有樹脂ビーズを提供し得る技術を見出して、本発明に到達したものである。
【0008】
前記した従来技術の課題は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、蛍光性染料含有樹脂ビーズの製造方法であって、共重合可能な官能基を2以上有するモノマーを、使用する全モノマーに対して30質量%を超える量で含むモノマー混合液に、蛍光性染料をモノマー混合液に対して3質量%以下となる量で溶解し、これに重合開始剤を加えて重合性モノマー液を調製した後、該重合性モノマー液を水相に加えて撹拌して懸濁液を調製し、懸濁重合することにより、樹脂ビーズを得ることを特徴とする蛍光性染料含有樹脂ビーズの製造方法を提供する。
【0009】
上記した本発明の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。前記共重合可能な官能基を2以上有するモノマーが、(メタ)アクリレート骨格を有するモノマーであること;前記共重合可能な官能基を2以上有するモノマーが、アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びそれらの誘導体の群から選択された少なくとも1種であること;前記蛍光性染料が、ペリレン系蛍光性染料であること;前記蛍光性染料の使用量が、前記モノマー混合液に対して2質量%以下となる量であることが挙げられる。
【0010】
また、本発明は、別の実施形態として、上記した製造方法により製造されたことを特徴とする蛍光性染料含有樹脂ビーズを提供する。
【0011】
更に、本発明は、別の実施形態として、上記蛍光性染料含有樹脂ビーズを含むことを特徴とする蛍光性を有する物品であって、該物品が、蛍光性を有する、成形体、フィルム、印刷物、塗膜、塗料、分散体及び分散液のいずれかであることを特徴とする物品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蛍光性染料が良好な蛍光特性を維持しつつ、色移行に対する十分な耐性を持つ、蛍光性染料含有樹脂ビーズの製造方法、該方法によって得られた蛍光性染料含有樹脂ビーズ、及びこれを用いた製品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明について詳述する。なお、本発明の特許請求の範囲及び明細書における「(メタ)アクリル」という用語は、「アクリル」及び「メタクリル」の双方を意味し、「(メタ)アクリレート」という用語は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を意味する。
【0014】
本発明者らは、蛍光性染料、特にペリレン系蛍光性染料の良好な蛍光特性を維持しつつ、色移行に対する十分な耐性を示す蛍光性染料含有樹脂ビーズの製造する手段について種々検討したところ、共重合可能な官能基を2以上有するモノマーを含むモノマーを用い、これらを懸濁重合することによって、蛍光性染料を使用した場合の解決課題であった前記した色移行に対する耐性を持つ効果を付与できることを見出し、上記課題がみごとに解決されることを確認し、本発明に至ったものである。
【0015】
すなわち、本発明は、蛍光性染料含有樹脂ビーズの製造方法において、共重合可能な官能基を2以上有するモノマーを、使用する全モノマーに対して30質量%を超える量で含むモノマー混合液に、蛍光性染料をモノマー混合液に対して3質量%以下となる量で溶解し、これに重合開始剤を加えて重合性モノマー液を調製した後、該重合性モノマー液を水相に加えて撹拌して懸濁液を調製し、懸濁重合することにより樹脂ビーズを得ることを特徴とする。本発明で使用する共重合可能な官能基を2以上有するモノマーとしては、共重合可能な、後述するような、多官能性モノマーや架橋作用性モノマーが挙げられる。以下、本発明の各構成について、それぞれ説明する。
【0016】
[モノマー]
すなわち、本発明の製造方法では、モノマー成分として、共重合可能な官能基を2以上有するモノマー成分を、全体のモノマーに対して特定の量以上で使用して、この重合性モノマー液中に蛍光性染料を加え、該モノマー液を使用して懸濁重合することで樹脂ビーズを製造する。本発明の製造方法は、共重合可能な官能基を2以上有するモノマー成分を、使用する全モノマーに対して30質量%を超える量で使用することを特徴とする。本発明者らの検討によれば、共重合可能な官能基を2以上有するモノマー成分が、懸濁重合に使用する全モノマーに対して30質量%以下と少ないと、樹脂中の架橋ネットワークが粗くなり、樹脂中での蛍光性染料の移動(色移行)を許容し易くなる。懸濁重合に使用する全モノマー中における共重合可能な官能基を2以上有するモノマーの配合割合は、好ましくは40質量%以上であり、更に好ましくは50質量%以上である。
【0017】
本発明者らの検討によれば、例えば、本発明に好適なペリレン系蛍光性染料は、油溶性の蛍光性染料であるが、このような染料を用いて本発明の製造方法を実施して蛍光性染料含有樹脂ビーズを得る場合に、本発明で目的とする良好な蛍光特性を維持しつつ、色移行に対する十分な耐性を高いレベルで実現させるためには、使用するモノマー類の構成のバランスが重要になることが分かった。すなわち、例えば、上記したような油溶性の蛍光性染料を用いた場合に、水親和性が低過ぎるモノマー類が多いと、蛍光性染料が樹脂ビーズの表面のシェル層を容易に越えて移動し易くなり、改良の効果が低くなる傾向がある。反対に、使用するモノマー類の構成のバランスが、水親和性が高過ぎるモノマー類が多いと、懸濁重合が難しくなったり、懸濁重合の際に乳化重合が併発して収率が低下するなどの不具合を生じる傾向が高まるため、本発明の製造方法で使用する共重合性モノマー等を選択する際には、使用するモノマー類の構成の水親和性バランスを検討することが重要になる。
【0018】
本発明者らは、上記した知見の下、本発明で使用するモノマーについて鋭意検討した結果、本発明で用いる共重合可能な官能基を2以上有するモノマー(以下、共重合性モノマーとも呼ぶ)の好適なものとしては、例えば、(メタ)アクリレート骨格を有するモノマーが挙げられ、中でも、アクリレート骨格を有するモノマーを使用することがより好ましいことを見出した。そして、この(メタ)アクリレート骨格を有するモノマーにおける効果の違いは、アクリレート系のモノマーは、メタクリレート系のモノマーに比べて水親和性が高く、このことが原因して本発明のより顕著な効果が得られたものと考えられる。すなわち、このような水親和性が適度に高い傾向にあるアクリレート系のモノマーを使用し、水相中で懸濁重合すると、得られる樹脂ビーズの表面(シェル層)が水親和性となるため、形成された蛍光性染料含有樹脂ビーズは、蛍光性染料の移動を妨げる効果において、より高い効果をもたらすものとなったと考えられる。先にも述べたように、本発明に好適なペリレン系蛍光性染料などは、油溶性の蛍光性染料であることから、樹脂中での移動をより効果的に防止するためには、上記したように、水親和性が適度に高い樹脂をシェル層とすることが好ましい。
【0019】
本発明で用いる共重合可能な官能基を2以上有するモノマーとして好ましいものとしては、下記のものが挙げられる。具体的には、(メタ)アクリレート骨格を有するモノマーである、アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びそれらの誘導体が挙げられる。前記したように、本発明において、より顕著な効果を得るためには、これらの中でも、アクリレート骨格を有するモノマーを用いることがより好ましい。
【0020】
本発明の製造方法で使用する共重合可能な官能基を2以上有するモノマーとしては、一般的な、共重合の能力がある二重結合を含む架橋作用性の官能基を持つ共重合性モノマーを用いることができる。このような本発明に好適な架橋に適したモノマーとしては、以下のものが挙げられる。例えば、2官能(メタ)アクリレートである、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレートなどを使用することができる。また、3官能(メタ)アクリレートである、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートなどを使用することができる。
【0021】
また、4官能(メタ)アクリレートである、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどを使用することができる。更に、6官能(メタ)アクリレートである、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを使用することもできる。本発明では、更に、上記に列挙した多官能(メタ)アクリレートの誘導体も使用することができる。本発明において、上記した多官能(メタ)アクリレート及びこれらの誘導体は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
[蛍光性染料]
本発明の製造方法で使用する蛍光性染料としては、公知のものがいずれも使用できる。特に耐候性及び耐熱性に優れるペリレン系蛍光性染料を用いることが好ましく、市販のペリレン系蛍光性染料がいずれも好適に使用できる。例えば、LumogenF Violet570(BASF)、LumogenF Yellow083(BASF)、LumogenF Orange240(BASF)、LumogenF Red305(BASF)などが挙げられる。
【0023】
本発明の製造方法で形成した蛍光性染料含有樹脂ビーズは、該ビーズ中に含まれる蛍光性染料の濃度が3質量%以下となるようにすることを要す。すなわち、本発明者らの検討によれば、樹脂ビーズ中の染料濃度が3質量%よりも高いと濃度消光が生じて添加量に見合う蛍光強度を発しない。このため、本発明の製造方法では、上記したような共重合可能な官能基を2以上有するモノマーを、全モノマーに対して30質量%を超える量で含むモノマー混合液に、上記に挙げたような蛍光性染料を3質量%以下となる量で溶解し、重合性モノマー液を調製した後、これを懸濁重合して製造することを要する。より好ましい蛍光性染料濃度は2質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下である。
【0024】
本発明の製造方法で得られる蛍光性染料含有樹脂ビーズの大きさは特に限定されないが、例えば、その体積平均粒子径が20μm以下の微粒子を容易に得ることができる。そして、このような大きさのものは、多様な用途に好適に使用でき、使用した場合に、良好な蛍光性を有する多様な製品とできる。すなわち、本発明者らの検討によれば、製造した蛍光性染料含有樹脂ビーズの体積平均粒子径が20μmよりも大きいと、このような樹脂ビーズを用いて、成形体、フィルム、印刷物、塗膜、塗料、分散体及び分散液等の物品とした場合に、その使用形態にもよるが、見かけの蛍光強度が低下して見えてしまう傾向が生じる場合もある。本発明の製造方法によれば、例えば、より微量な、体積平均粒子径が15μm以下のものや、更には10μm以下のものであって、しかも粒度の揃ったものを得ることができるので、用途に合致したより好適な粒子径のものを適宜に設計すればよい。
【0025】
[懸濁重合の方法]
本発明の蛍光性染料含有樹脂ビーズの製造方法で行う懸濁重合は、従来公知の方法で行う。具体的には、上述した組成のモノマー混合液に、蛍光性染料を3質量%以下となる量で溶解し、これに重合開始剤を加えて重合性モノマー液を調製した後、該重合性モノマー液を水相に加えて撹拌して懸濁液を調製し、懸濁重合する。重合性モノマー液を調製する時に、モノマーの粘度調整や溶解性向上のために、例えばプロピレングリコールモノメチルアセテートのような公知の溶剤を添加してもよい。重合性モノマー液を調製する際には、十分に撹拌して蛍光性染料をモノマー類に溶解した後、例えば、公知の油溶性重合開始剤を溶解したモノマーまたは溶剤を添加して重合性モノマー液を調製すればよい。このようにすることで、モノマー混合液に、蛍光性染料と重合開始剤とを均一に溶解することができる。
【0026】
本発明の製造方法では、上記のようにして得た重合性モノマー液を水相に加えて撹拌して懸濁液を調製し、懸濁重合する。この際に使用する水相としては、例えば、脱イオン水に分散安定剤(保護コロイド)を溶解した水媒体を調整して使用することが好ましい。本発明の製造方法では、このような水相に、上記した重合性モノマー液を加えて撹拌し、懸濁液を調製する。上記撹拌には、必要であれば、ホモジナイザーなどの乳化装置を用いて、重合性モノマー液の懸濁液滴径を調整する。ホモジナイザーなどの乳化装置は、回転数を変えてせん断力を調整することによって、容易に重合性モノマー液を所望の懸濁液滴径に調整できる。
【0027】
上記の分散安定剤(保護コロイド)を用いて調製する水相は、ホモジナイザーなどの乳化装置により作成された懸濁液滴が、液滴調整中や重合装置への移送中や重合過程中に液滴の破壊や合一など不具合が発生しないように、使用する分散安定剤の種類、濃度を適宜に設定することが好ましい。この際に使用することが可能な分散安定剤としては、メチルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ハイドロキシアパタイト、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの無機塩類が挙げられる。
【0028】
上記のようにして得られた懸濁液は、例えば、温度60〜80℃にて3〜10時間加熱し、懸濁重合を行うことにより、蛍光性染料を含有してなる樹脂ビーズが得られる。更に、必要に応じて、洗浄工程にて分散安定剤を除去した後、脱イオン水に邂逅して分散し、再度洗浄工程にて溶解物を除去し、必要があれば洗浄を繰り返した後、乾燥する。乾燥後に凝集した状態で得られた粒子は、解砕することにより、粉状の樹脂ビーズとすることができる。
【0029】
本発明の蛍光性染料含有樹脂ビーズは、上記したようにして行う本発明の製造方法で得られるが、共重合可能な官能基を2以上有するモノマーを30質量%を超える量で含み、且つ、蛍光性染料を3質量%以下となる量で含むモノマー混合液を用い、これを懸濁重合することで、蛍光性染料を、得られる樹脂ビーズ内に良好に固定化できる。この結果、蛍光性染料が良好な蛍光特性を維持しつつ、色移行に対する十分な耐性を有するものとなる。さらに、本発明の製造方法により得られた蛍光性染料含有樹脂ビーズを使用することで、これまで、色移行に対する十分な耐性が実現されていなかったために、蛍光性染料の使用が難しかった、成形体、フィルム、印刷物、塗膜、塗料、分散体及び分散液にも、蛍光性を付与することが可能となる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、文中「部」または「%」とあるのは質量基準である。
【0031】
下記に説明する実施例及び比較例では、特に記載がない限り、以下の部分ケン化ポリビニルアルコール及び重合開始剤を用いた。部分ケン化ポリビニルアルコールとしては、クラレ(株)製のポバール205(商品名、以下PVAと略す)を使用し、重合開始剤としては、油溶性の、大塚化学(株)製の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN(商品名)、以下AIBNと略す)を使用した。
【0032】
<実施例1>
容器に、エチレングリコールジメタクリレート100部(新中村化学工業(株)製、NKエステル1G)及びラウリルメタクリレート40部(花王(株)製、エキセパールL−MA)のモノマー混合液に、ルモゲン蛍光性染料2部(BASF製、LumogenF Red305)を加えて溶解し、蛍光性染料溶解液を得た。次に、予め、AIBN2部をエチレングリコールジメタクリレート60部に溶解した溶液を、上記で得た蛍光性染料溶解液に加えて、均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した。別の容器に、イオン交換水600部、PVA60部を混合溶解した水相を調製した後、その中に上記重合性モノマー液を加えて混合し、ディゾルバーにて2500rpmで5分間撹拌して均一な懸濁液を得た。
【0033】
次に、撹拌機、窒素ガス導入管を備え付けた重合装置の反応缶に、上記で得た懸濁液を仕込み、70℃で6時間続けて重合反応を行った。冷却後、この懸濁液から生成した微粒子を濾過洗浄した。得られた樹脂ビーズをイオン交換水に再邂逅した後、懸濁液から微粒子を、ろ過、洗浄、乾燥、解砕処理を行って、本発明の実施例の蛍光性染料含有樹脂ビーズを得た。
【0034】
<実施例2>
容器に、変性ビスフェノールジアクリレート100部(ダイセルサイテック製、EB150)及びヘキサンジオールジアクリレート100部(ダイセルサイテック(株)製、HDDA)に、ルモゲン蛍光性染料2部(BASF製、LumogenF Red305)を溶解し、蛍光性染料溶解液を得た。次に、予め、AIBN2部を溶剤であるプロピレングリコールモノメチルアセテート20部に溶解した溶液を、上記で得た蛍光性染料溶解液に加えて、均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した。その後は、実施例1と同様に操作し、本発明の実施例の蛍光性染料含有樹脂ビーズを得た。
【0035】
<実施例3>
容器に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100部(ダイセルサイッテック製、DPHA)及びトリプロピレングリコールジアクリレート100部(ダイセルサイッテック(株)製、TPGDA)に、ルモゲン蛍光性染料1部(BASF製、LumogenF Red305)を溶解し、蛍光性染料溶解液を得た。次に、予め、AIBN2部をプロピレングリコールモノメチルアセテート20部に溶解した溶液を、上記蛍光性染料溶解液に加えて、均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した。その後は、実施例1と同様に操作し、本発明の実施例の蛍光性染料含有樹脂ビーズを得た。
【0036】
<実施例4>
容器に、変性ビスフェノールジアクリレート50部(ダイセルサイテック製、EB150)及びトリプロピレングリコールジアクリレート50部(ダイセルサイッテック(株)製、TPGDA)及びラウリルアクリレート100部(大阪有機化学工業(株)製、LA)に、ルモゲン蛍光性染料2部(BASF製、LumogenF Violet570)を溶解し、蛍光性染料溶解液を得た。次に、予め、AIBN2部をプロピレングリコールモノメチルアセテート20部に溶解した溶液を、上記で得た蛍光性染料溶解液に加えて、均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した。その後は、実施例1と同様に操作し、本発明の実施例の蛍光性染料含有樹脂ビーズを得た。
【0037】
<実施例5>
容器に、変性ビスフェノールジアクリレート100部(ダイセルサイテック製、EB150)及びヘキサンジオールジアクリレート100部(ダイセルサイテック(株)製、HDDA)に、クマリン蛍光性染料2部(エアブラウン(株)製、ポトマックイエロー)を溶解し、蛍光性染料溶解液を得た。次に、予め、AIBN2部をプロピレングリコールモノメチルアセテート20部に溶解した溶液を、上記で得た蛍光性染料溶解液に加えて、均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した。その後は、実施例1と同様に操作し、本発明の実施例の蛍光性染料含有樹脂ビーズを得た。
【0038】
<比較例1>
容器に、エチレングリコールジメタクリレート20部(新中村化学工業(株)製、NKエステル1G)及びラウリルメタクリレート100部(花王(株)製、エキセパールLMA)に、ルモゲン蛍光性染料2部(BASF製、LumogenF Red305)を溶解し、蛍光性染料溶解液を得た。次に、予め、AIBN2部をラウリルメタクリレート80部に溶解した溶液を、上記蛍光性染料溶解液に加えて均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した。その後は、実施例1と同様に操作し、比較例の蛍光性染料含有樹脂ビーズを得た。
【0039】
<比較例2>
容器に、変性ビスフェノールジアクリレート20部(ダイセルサイテック製、EB150)及びトリプロピレングリコールジアクリレート20部(ダイセルサイッテック(株)製、TPGDA)及びラウリルアクリレート160部(大阪有機化学工業(株)製、LA)に、ルモゲン蛍光性染料10部(BASF製、LumogenF Red305)を溶解し、蛍光性染料溶解液を得た。次に、予め、AIBN2部をプロピレングリコールモノメチルアセテート20部に溶解した溶液を、上記蛍光性染料溶解液に加えて均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した。その後は、実施例2と同様に操作し、比較例の蛍光性染料含有樹脂ビーズを得た。
【0040】
<比較例3:>
容器に、エチレングリコールジメタクリレート60部(新中村化学工業(株)製、NKエステル1G)及びラウリルメタクリレート80部(花王(株)製、エキセパールLMA)のモノマー混合液に、ルモゲン蛍光性染料2部(BASF製、LumogenF Red305)を加えて溶解し、蛍光性染料溶解液を得た。次に、予め、AIBN2部をラウリルメタクリレート60部に溶解した溶液を、上記で得た蛍光性染料溶解液に加えて、均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した。その後は、実施例1と同様に操作し、比較例の蛍光性染料含有樹脂ビーズを得た。
【0041】
[評価]
(1.体積平均粒子径)
実施例及び比較例で得られた各樹脂ビーズの体積平均粒子径を、コールターカウンター(ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。その結果を表1にまとめた。
【0042】
(2.マイグレーション耐性)
実施例及び比較例で得られた各樹脂ビーズのマイグレーション耐性を、以下のようにして評価した。まず、実施例及び比較例の各樹脂ビーズを用い、蛍光性染料濃度が200ppmとなるよう調整した、評価用のPVCシートを、それぞれ作製した。そして、各PVCシートを、蛍光性染料の入っていない白PVCシートで挟み、500g/cm
2の荷重を掛け105℃で2時間加熱放置した。この試験後、白PVCシートへの蛍光性染料の色移りの有無を目視で確認し、◎○×で評価した。その結果を表1にまとめて示した。
【0043】
(3.蛍光強度、ブリード耐性)
実施例及び比較例得られた各樹脂ビーズの蛍光強度及びブリード耐性を、以下のようにして評価した。まず、実施例及び比較例の各樹脂ビーズを用い、蛍光性染料濃度が800ppmとなるように調整した、評価用の各アクリル塗料を作製した。そして、各アクリル塗料をアプリケーターで塗布し、常乾後、蛍光強度を目視で確認した。その後、常乾後の塗膜に、白アクリル塗料を上掛して再び常乾した後、白アクリル塗料への色移り(ブリード)が無いか目視で確認し、◎○×で評価した。た。その結果を表1にまとめて示した。
【0044】
【0045】
表1に示した通り、実施例の樹脂ビーズを用いた成形体及び塗料は、比較例の樹脂ビーズを使用した成形体及び塗料よりも、マイグレーション耐性やブリード耐性が高く、蛍光性染料の移行や蛍光特性の低下が効果的に抑制されていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の蛍光性染料含有樹脂ビーズは、マイグレーション耐性やブリード耐性が高く、蛍光性染料の色移行や蛍光特性の低下を効果的に防止することが可能であり、これらの特性や機能を求める分野、例えば、これを用いた成形体、フィルム、印刷物、塗膜、塗料、分散体及び分散液への使用に最適である。