特許 6180319 フォーカルプレンシャッタ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6180319

(24)【登録日】2017年7月28日

(45)【発行日】2017年8月16日

(54)【発明の名称】フォーカルプレンシャッタ

(51)【国際特許分類】

   G03B 9/36 20060101AFI20170807BHJP

【ＦＩ】

   G03B9/36 D

【請求項の数】5

【全頁数】13

(21)【出願番号】特願2013-270994(P2013-270994)

(22)【出願日】2013年12月27日

(65)【公開番号】特開2015-125369(P2015-125369A)

(43)【公開日】2015年7月6日

【審査請求日】2016年7月19日

(73)【特許権者】

【識別番号】000001225

【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100137947

【弁理士】

【氏名又は名称】石井 貴文

(72)【発明者】

【氏名】山口 康孝

【審査官】 高橋 雅明

(56)【参考文献】

【文献】 特開２００２−３２８４０９（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００６−００３４４０（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｇ０３Ｂ ９／３６

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

露光用の開口部を有する地板と、前記開口部を開閉するべく前記地板に移動自在に設けられた羽根部材と、前記羽根部材を駆動するべく一方向に付勢された駆動部材と、前記駆動部材を付勢力に抗して露光動作開始前のセット位置にセットするセット部材と、前記駆動部材の取付保持部に移動自在に支持された軸部，前記軸部の一端に設けられた被吸着部，及び前記軸部の他端に設けられて前記取付保持部の端部と離脱可能に当接する鍔部を有する被吸着部材と、前記駆動部材が前記セット位置にセットされた状態において前記被吸着部を磁気的に吸着する電磁石と、を備えたフォーカルプレンシャッタであって、
前記取付保持部と前記被吸着部の間には、前記被吸着部を前記電磁石に向けて付勢する第１付勢バネが配置され、
前記取付保持部と前記鍔部の間には、前記取付保持部の端部が前記鍔部に当接する際の衝撃を緩和するべく付勢する第２付勢バネが配置されており、
前記第１付勢バネは、前記被吸着部に当接する側のコイル径が小さい円錐台状の圧縮コイルバネであり、
前記第２付勢バネは、前記鍔部に当接する側のコイル径が小さい円錐台状の圧縮コイルバネである、
ことを特徴とするフォーカルプレンシャッタ。

【請求項2】

前記第１付勢バネの付勢力は、前記第２付勢バネの付勢力よりも大きく設定されており、
前記第２付勢バネは、前記駆動部材が前記セット部材によりセット位置にセットされた状態において、付勢力を及ぼさない自由長さになるように設定されている、
ことを特徴とする請求項１に記載のフォーカルプレンシャッタ。

【請求項3】

前記羽根部材は、先羽根及び後羽根を含み、
前記駆動部材は、前記先羽根を駆動する先羽根駆動部材と、前記後羽根を駆動する後羽根駆動部材を含み、
前記電磁石は、前記先羽根駆動部材及び後羽根駆動部材にそれぞれ対応して設けられた二つの電磁石を含む、
ことを特徴とする請求項１または請求項２に記載のフォーカルプレンシャッタ。

【請求項4】

請求項１ないし３のいずれか１項に記載のフォーカルプレンシャッタを備えるカメラ。

【請求項5】

請求項１ないし３のいずれか１項に記載のフォーカルプレンシャッタを備える光学機器。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、露光用の開口部を開閉する羽根部材を有するフォーカルプレンシャッタに関し、特に、デジタルカメラ等のカメラにおいて露光用の開口部を開閉するフォーカルプレンシャッタに関する。

【背景技術】

【0002】

従来のフォーカルプレンシャッタとしては、露光用の開口部を有する略矩形の地板、地板の開口部を開閉するべく移動自在に形成された先羽根及び後羽根（羽根部材）、先羽根を駆動するべく駆動バネにより付勢された先羽根用駆動部材、後羽根を駆動するべく駆動バネにより付勢された後羽根用駆動部材、先羽根用駆動部材及び後羽根駆動部材の取付部に移動自在にそれぞれ設けられた鉄片部材（被吸着部材）、先羽根用駆動部材（及び先羽根）と後羽根駆動部材（及び後羽根）を駆動バネの付勢力に抗して露光動作前（シャッタ動作前）のセット位置にセットするセット部材、セット部材によりセットされた先羽根用駆動部材及び後羽根用駆動部材の鉄片部材（被吸着部材）に磁気的吸引力を及ぼす二つの電磁石（鉄芯部材及び励磁用のコイル）、鉄片部材（被吸着部材）を鉄芯部材に向かうように付勢するべく取付部と被吸着部材（鉄片部材）の間に圧縮して配置された圧縮コイルバネ、レリーズ直後の撮影開始直前において電磁石の磁気的吸引力により鉄片部材（被吸着部材）に吸着作用を及ぼしてセット部材による係止を解除した際に、先羽根用駆動部材及び後羽根用駆動部材がオーバーチャージの過移動分だけ駆動バネ等の付勢力により戻されて露光動作開始位置に至る際の衝撃を緩和するべく取付部と鉄片部材（被吸着部材）の間に配置された緩衝ゴム等を備えた、又は、圧縮コイルバネ及び緩衝ゴムの替わりに一体的に形成した一つのコイルバネを備えた、フォーカルプレンシャッタが知られている（例えば、特許文献１を参照）。

【0003】

しなしながら、緩衝ゴムを用いる場合、経時劣化、摩耗等により、所期の緩衝機能が得られなくなる虞があり、又、一体的に形成されたコイルバネを用いる場合、鉄片部材（被吸着部材）を電磁石の鉄芯部材に向けて付勢する付勢力と鉄片部材（被吸着部材）を逆向きに付勢する付勢力との調整（それぞれ独立して最適な付勢力を設定すること）が困難であり、所望の衝撃緩和作用が得られない虞がある。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２００２−３２８４０９号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、低コスト化、省スペース化等を図りつつ、駆動バネ等の付勢力により駆動部材がオーバーチャージされて過移動した位置から所定の露光動作開始位置に戻る際の衝撃力等を緩和でき、羽根部材を駆動する駆動部材（の被吸着部材）を電磁石により確実に吸着して保持できるカメラ用のフォーカルプレンシャッタを提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明のフォーカルプレンシャッタは、露光用の開口部を有する地板と、開口部を開閉するべく地板に移動自在に設けられた羽根部材と、羽根部材を駆動するべく一方向に付勢された駆動部材と、駆動部材を付勢力に抗して露光動作開始前のセット位置にセットするセット部材と、駆動部材の取付保持部に移動自在に支持された軸部，軸部の一端に設けられた被吸着部，及び軸部の他端に設けられて取付保持部の端部と離脱可能に当接する鍔部を有する被吸着部材と、駆動部材がセット位置にセットされた状態において被吸着部を磁気的に吸着する電磁石と、を備えたフォーカルプレンシャッタであって、上記取付保持部と被吸着部の間には、被吸着部を電磁石に向けて付勢する第１付勢バネが配置され、上記取付保持部と鍔部の間には、取付保持部の端部が鍔部に当接する際の衝撃を緩和するべく付勢する第２付勢バネが配置されている、ことを特徴としている。
この構成によれば、駆動部材が（例えば、駆動バネ等の）付勢力に抗してセット部材により露光動作開始前（シャッタ動作前）のセット位置にセットされると、駆動部材はオーバーチャージにより過移動して、被吸着部材の被吸着部が第１付勢バネの付勢力に抗しつつ電磁石（の鉄芯部材）に当接すると共に被吸着部材の鍔部が取付保持部の端部から離れ、その後、例えばレリーズ動作がなされて電磁石により被吸着部が吸着保持されると共にセット部材が休止位置に向けて解除されると、駆動部材が（駆動バネ等の）付勢力により過移動の分だけ戻り、取付保持部の端部が被吸着部材の鍔部に当接して露光動作開始位置に位置決めされる。
ここでは、第２付勢バネを設けたことにより、戻り動作の際の衝撃力が第２付勢バネにより緩和され、被吸着部が電磁石に吸着保持された状態を維持することができる。特に、緩衝部材として、ゴム等ではなく、又、第１付勢バネとは別個の第２付勢バネを採用しているため、構造の簡素化、低コスト化、省スペース化等を達成しつつ、経時的劣化等を生じることなく所期の衝撃緩和特性を維持することができ、又、駆動部材を駆動する（駆動バネ等の）付勢力に影響を及ぼすことなく、第１付勢バネの付勢力と切り離して、衝撃の緩和作用に最適な力量（付勢力）に設定することができる。

【0007】

上記構成において、第１付勢バネの付勢力は、第２付勢バネの付勢力よりも大きく設定されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、レリーズ動作がなされて電磁石により被吸着部が吸着保持されると共にセット部材が休止位置に向けて解除されて、駆動部材が（駆動バネ等の）付勢力により過移動の分だけ戻る際に、第１付勢バネの付勢力が第２付勢バネの付勢力よりも大きいため、取付保持部の端部を被吸着部材の鍔部に確実に当接させて、露光動作開始位置に確実に位置決めすることができる。

【0008】

上記構成において、第２付勢バネは、駆動部材がセット部材によりセット位置にセットされた状態において、付勢力を及ぼさない自由長さになるように設定されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、第１付勢バネの付勢力を抑えつつ、被吸着部を電磁石に向けて付勢する付勢作用と、取付保持部の端部が被吸着部材の鍔部に当接する際の衝撃緩和作用を得ることができる。

【0009】

上記構成において、第１付勢バネは、被吸着部に当接する側のコイル径が小さい円錐台状の圧縮コイルバネであり、第２付勢バネは、鍔部に当接する側のコイル径が小さい円錐台状の圧縮コイルバネである、構成を採用することができる。
この構成によれば、取付保持部に対する被吸着部材のガタツキを防止しつつ、軸部を支点とした被吸着部材の円滑な首振り動作を得ることができる。

【0010】

上記構成において、羽根部材は、先羽根及び後羽根を含み、駆動部材は、先羽根を駆動する先羽根駆動部材と、後羽根を駆動する後羽根駆動部材を含み、電磁石は、先羽根駆動部材及び後羽根駆動部材にそれぞれ対応して設けられた二つの電磁石を含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、先羽根及び後羽根をそれぞれ駆動する先羽根駆動部材及び後羽根駆動部材において、上記の衝撃緩和作用を得ることができ、所望の露光動作（シャッタ動作）を行わせることができる。

【発明の効果】

【0011】

上記構成をなすフォーカルプレンシャッタによれば、構造の簡素化、低コスト化、省スペース化等を達成しつつ、駆動部材が駆動バネ等の付勢力により過移動した位置から所定の露光動作開始位置に戻る際の衝撃力等を緩和でき、羽根部材を駆動する駆動部材（の被吸着部材）を電磁石により確実に吸着して保持することができ、それ故に、所望の露光動作（シャッタ動作）を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【0012】

【図1】本発明に係るフォーカルプレンシャッタの一実施形態を示すものであり、駆動部材（先羽根駆動部材、後羽根駆動部材）及び羽根部材（先羽根及び後羽根）が露光動作（シャッタ動作）を完了した状態を示す平面図である。

【図2】本発明に係るフォーカルプレンシャッタの一実施形態を示すものであり、駆動部材（先羽根駆動部材、後羽根駆動部材）及び羽根部材（先羽根及び後羽根）がセット部材により露光動作開始前（シャッタ動作開始前）のセット位置（オーバーチャージによる過移動した位置）にセットされたセット完了の状態を示す平面図である。

【図3】本発明に係るフォーカルプレンシャッタの一実施形態を示すものであり、レリーズ動作信号等により電磁石を通電して被吸着部材を吸着保持しかつセット部材を休止位置に戻して、駆動部材（先羽根駆動部材、後羽根駆動部材）及び羽根部材（先羽根及び後羽根）が露光動作開始位置（シャッタ動作直前の位置）に位置決めされた状態を示す平面図である。

【図4】図１に示す露光動作完了（シャッタ動作完了）の状態において、フォーカルプレンシャッタに含まれる駆動部材（先羽根駆動部材、後羽根駆動部材）及び被吸着部材、第１付勢バネ、第２付勢バネ、セット部材、電磁石（の鉄芯部材）等を示す部分平面図である。

【図5】図２に示すセット完了の状態において、フォーカルプレンシャッタに含まれる駆動部材（先羽根駆動部材、後羽根駆動部材）及び被吸着部材、第１付勢バネ、第２付勢バネ、セット部材、電磁石（の鉄芯部材）等を示す部分平面図である。

【図6】図３に示す露光動作開始位置（シャッタ動作直前の位置）に位置決めされた状態において、フォーカルプレンシャッタに含まれる駆動部材（先羽根駆動部材、後羽根駆動部材）及び被吸着部材、第１付勢バネ、第２付勢バネ、セット部材、電磁石（の鉄芯部材）等を示す部分平面図である。

【図7】図２に示すセット完了の状態において、駆動部材の取付保持部、被吸着部材（軸部、被吸着部、鍔部）、第１付勢バネ、第２付勢バネ、電磁石（鉄芯部材、コイル）等を示す部分断面図である。

【図8】図３に示す露光動作開始位置（シャッタ動作直前の位置）に位置決めされた状態において、駆動部材の取付保持部、被吸着部材（軸部、被吸着部、鍔部）、第１付勢バネ、第２付勢バネ、電磁石（鉄芯部材、コイル）等を示す部分断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0013】

以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
この実施形態に係るフォーカルプレンシャッタは、図１ないし図３、図４、図７に示すように、地板１０、羽根部材としての先羽根２０及び後羽根３０、先羽根２０を駆動する駆動部材（及び先羽根駆動部材）としての先羽根駆動レバー４０、後羽根３０を駆動する駆動部材（及び後羽根駆動部材）としての後羽根駆動レバー５０、先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０にそれぞれ設けられた被吸着部材６０及び第１付勢バネ７０並びに第２付勢バネ８０、先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０の被吸着部材６０に対して磁気的吸引力を及ぼすべくそれぞれ対応して設けられた二つの電磁石９０（鉄芯部材９１、励磁用のコイル９２）、先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０を露光動作開始前（シャッタ動作開始前）のセット位置にセットするセット部材１００等を備えている。
尚、地板１０には、表側において、電磁石９０等を保持する保持板（不図示）が所定間隔をおいて固定され、裏側において、先羽根２０を収容する羽根室を画定する中間板（不図示）及び後羽根３０を収容する羽根室を画定する裏板（不図示）が所定間隔をおいて固定されている。

【0014】

地板１０は、図１ないし図３に示すように、露光用の開口部１０ａ、円弧状の長孔１０ｂ及び長孔１０ｃ、羽根室側に立設されて先羽根２０を回動自在に支持する支軸１０ｄ，１０ｅ、後羽根３０を回動自在に支持する支軸１０ｆ，１０ｇ、表側に立設されて先羽根駆動レバー４０を回動自在に支持する支軸１０ｈ、表側に立設されて後羽根駆動レバー５０を回動自在に支持する支軸１０ｉ、表側に立設されてセット部材１００を回動自在に支持する支軸１０ｊ等を備えている。

【0015】

先羽根２０は、図１ないし図３に示すように、４枚の羽根本体２１，２２，２３，２４、羽根本体２１，２２，２３，２４を連結する２つのアーム２５，２６により構成されている。
アーム２５は、支軸１０ｄにより回動自在に支持されると共に、その一部が先羽根駆動レバー４０の駆動ピン４１に連結されている。
アーム２６は、支軸１０ｅにより回動自在に支持されている。
そして、アーム２５が、図２及び図３に示すように、先羽根駆動レバー４０により上方に向けて（反時計回りに）駆動されることにより、４枚の羽根本体２１，２２，２３，２４が展開して開口部１０ａを閉鎖し、一方、図１に示すように、先羽根駆動レバー４０により下方に向けて（時計回りに）駆動されることにより、４枚の羽根本体２１，２２，２３，２４が重なり合って開口部１０ａを開放するようになっている。

【0016】

後羽根３０は、図１ないし図３に示すように、４枚の羽根本体３１，３２，３３，３４、羽根本体３１，３２，３３，３４を連結する２つのアーム３５，３６により構成されている。
アーム３５は、支軸１０ｆにより回動自在に支持されると共に、その一部が後羽根駆動レバー５０の駆動ピン５１に連結されている。
アーム３６は、支軸１０ｇにより回動自在に支持されている。
そして、アーム３５が、図２及び図３に示すように、後羽根駆動レバー５０により上方に向けて（反時計回りに）駆動されることにより、４枚の羽根本体３１，３２，３３，３４が重なり合って開口部１０ａを開放し、一方、図１に示すように、後羽根駆動レバー５０により下方に向けて（時計回りに）駆動されることにより、４枚の羽根本体３１，３２，３３，３４が展開して開口部１０ａを閉鎖するようになっている。

【0017】

先羽根駆動レバー４０は、図４ないし図６に示すように、アーム２５が連結される駆動ピン４１、セット部材１００が係合して反時計回りに回転力が及ぼされる係合部４２、被吸着部材６０を取り付けて保持する取付保持部４３等を備えており、支軸１０ｈにより回動自在に支持されと共に、支軸１０ｈの周りに配置されたコイル状の駆動バネ（不図示）により時計回りに回転付勢されている。
駆動ピン４１は、地板１０の長孔１０ｂに挿入されると共に、時計回りに回転した回転端において長孔１０ｂに固定されたゴム等の緩衝部材（不図示）に当接して停止するようになっている。
取付保持部４３は、図７及び図８に示すように、所定隙間をおいて被吸着部材６０の軸部６１を遊挿させる挿通孔４３ａ、被吸着部材６０の被吸着部６２を移動自在に受け入れる凹部４３ｂ、第１付勢バネ７０の一端側を受け入れて当接させる環状凹部４３ｃ、第２付勢バネ８０の一端側を受け入れて当接させる環状凹部４３ｄ、被吸着部材６０の鍔部６３を離脱可能に当接させるべく凸状に湾曲する端部４３ｅ等を備えている。

【0018】

後羽根駆動レバー５０は、図４ないし図６に示すように、アーム３５が連結される駆動ピン５１、セット部材１００が係合して反時計回りに回転力が及ぼされる係合部５２、被吸着部材６０を取り付けて保持する取付保持部５３等を備えており、支軸１０ｉにより回動自在に支持されと共に、支軸１０ｉの周りに配置されたコイル状の駆動バネ（不図示）により時計回りに回転付勢されている。
駆動ピン５１は、地板１０の長孔１０ｃに挿入されると共に、時計回りに回転した回転端において長孔１０ｃに固定されたゴム等の緩衝部材（不図示）に当接して停止するようになっている。
取付保持部５３は、図７及び図８に示すように、所定隙間をおいて被吸着部材６０の軸部６１を遊挿させる挿通孔５３ａ、被吸着部材６０の被吸着部６２を移動自在に受け入れる凹部５３ｂ、第１付勢バネ７０の一端側を受け入れて当接させる環状凹部５３ｃ、第２付勢バネ８０の一端側を受け入れて当接させる環状凹部５３ｄ、被吸着部材６０の鍔部６３を離脱可能に当接させるべく凸状に湾曲する端部５３ｅ等を備えている。

【0019】

被吸着部材６０は、図７及び図８に示すように、取付保持部４３，５３の挿通孔４３ａ，５３ａに通されて移動自在に支持された軸部６１、軸部６１の一端に設けられると共に電磁石９０（の鉄芯部材９１）に当接して吸着される被吸着部６２、軸部６１の他端に設けられて取付保持部４３，５３の端部４３ｅ，５３ｅと離脱可能に当接する鍔部６３等を備えている。
軸部６１は、図７及び図８に示すように、挿通孔４３ａ，５３ａの中心線Ｓに対して所定の角度範囲内で傾斜可能に挿通孔４３ａ，６３ａの内径よりも小さい外径をなすように形成されている。
被吸着部６２は、図７及び図８に示すように、略直方体状に形成されて軸部６１に連結固定されると共に、取付保持部４３，５３の凹部４３ｂ，５３ｂに対して軸部６１の傾斜に伴って移動可能に嵌め込まれ、電磁石９０の鉄芯部材９１に当接して吸着されるように形成されている。
鍔部６３は、図７及び図８に示すように、平板状に形成されて軸部６１に一体的に形成され、その中心寄りの内側領域において第２付勢バネ８０の端部を受けると共に、その中心から離れた外側領域において取付保持部４３、５３の端部４３ｅ，５３ｅと離脱可能に当接するように形成されている。

【0020】

第１付勢バネ７０は、図７及び図８に示すように、被吸着部６２に当接する側のコイル径が小さい円錐台状の圧縮コイルバネであり、被吸着部材６０の軸部６１に所定の隙間をおいて通されると共に、取付保持部４３，５３の環状凹部４３ｃ，５３ｃに一端部が（内周面との間に所定の隙間をおいて）収容されて当接され、かつ、被吸着部材６０の被吸着部６２の一部（鉄芯部材９１に当接する側と反対側の面）に他端部が当接されて、所定の圧縮代に圧縮した状態で嵌め込まれている。

【0021】

すなわち、第１付勢バネ７０は、被吸着部６２を電磁石９０に向けて付勢するように取付保持部４３，５３と被吸着部６２の間に配置されており、第２付勢バネ８０の付勢力よりも大きい付勢力を及ぼして、被吸着部材６０の鍔部６３を取付保持部４３，５３の端部４３ｅ，５３ｅに当接させつつ、被吸着部６２を電磁石９０の鉄芯部材９１に向けて付勢すると共に、図２に示すように先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０がセット部材１００によりセット位置にセットされた状態で、図７に示すように、鍔部６３が取付保持部４３，５３の端部４３ｅ，５３ｅから離脱するのを許容し、又、図３に示すようにセット部材１００が休止位置に戻って先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０が駆動バネの付勢力により過移動分だけ戻される際に、図８に示すように、第２付勢バネ８０の付勢力に打ち勝って、取付保持部４３，５３の端部４３ｅ，５３ｅを被吸着部材６０の鍔部６３に確実に当接させて、先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０を露光動作開始位置に位置付けるようになっている。

【0022】

特に、レリーズ動作がなされて電磁石９０により被吸着部６２が吸着保持されると共にセット部材１００が休止位置に向けて戻り係止が解除されて、先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０が（駆動バネ等の）付勢力により過移動の分だけ戻る際に、第１付勢バネ７０の付勢力が第２付勢バネ８０の付勢力よりも大きいため、取付保持部４３，５３の端部４３ｅ，５３ｅを被吸着部材６０の鍔部６３に確実に当接させて、露光動作開始位置に確実に位置決めすることができる。
また、第１付勢バネ７０は、被吸着部６２に当接する側のコイル径が小さい円錐台状の圧縮コイルバネとして形成されているため、取付保持部４３，５３に対する被吸着部材６０のガタツキを防止しつつ、軸部６１を支点とした被吸着部材６０（の被吸着部６２側）の円滑な首振り動作を得ることができる。

【0023】

第２付勢バネ８０は、図７及び図８に示すように、鍔部６３に当接する側のコイル径が小さい円錐台状の圧縮コイルバネであり、被吸着部材６０の軸部６１に所定の隙間をおいて通されると共に、取付保持部４３，５３の環状凹部４３ｄ，５３ｄに一端部が（内周面との間に所定の隙間をおいて）収容されて当接され、かつ、被吸着部材６０の鍔部６３の一部（径方向の内側領域）に他端部が当接されて、所定の圧縮代に圧縮した状態で嵌め込まれている。

【0024】

すなわち、第２付勢バネ８０は、取付保持部４３，５３の端部４３ｅ，５３ｅが鍔部６３に当接する際の衝撃を緩和するように取付保持部４３，５３と鍔部６３の間に配置されており、図２に示すように先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０がセット部材１００によりセット位置にセットされた状態で、図７に示すように、鍔部６３が取付保持部４３，５３の端部４３ｅ，５３ｅから離脱したときに付勢力を及ぼさない自由長さに設定され、又、図３に示すようにセット部材１００が休止位置に戻って先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０が駆動バネの付勢力により過移動分だけ戻される際に、図８に示すように、圧縮されつつ取付保持部４３，５３の端部４３ｅ，５３ｅが被吸着部材６０の鍔部６３に当接するのを許容し、先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０を露光動作開始位置に位置付けるようになっている。
これによれば、先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０の（過移動した分だけ）の戻り動作の際に、第２付勢バネ８０により、取付保持部４３，５３の端部４３ｅ，５３ｅが鍔部６３に当接するときの衝撃力が緩和され、被吸着部６２が電磁石９０に吸着保持された状態を確実に維持することができる。

【0025】

特に、緩衝部材としてバネ（第２付勢バネ８０）を採用しているため、構造の簡素化、低コスト化、省スペース化等を達成しつつ、経時的劣化等を生じることなく所期の衝撃緩和特性を維持することができ、第２付勢バネ８０が第１付勢バネ７０とは別個に形成されているため、先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０を駆動する（駆動バネ等の）付勢力に影響を及ぼすことなく、第１付勢バネ７０の付勢力と切り離して、衝撃の緩和作用に最適な力量（付勢力）に設定することができる。
また、第２付勢バネ８０は、先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０がセット部材１００によりセット位置にセットされた状態において、付勢力を及ぼさない自由長さになるように設定されているため、第１付勢バネ７０の付勢力を抑えつつ、被吸着部６２を電磁石９０に向けて付勢する付勢作用と、取付保持部４３，５３の端部４３ｅ，５３ｅが被吸着部材６０の鍔部６３に当接する際の衝撃緩和作用を得ることができる。
さらに、第２付勢バネ８０は、鍔部６３に当接する側のコイル径が小さい円錐台状の圧縮コイルバネとして形成されているため、取付保持部４３，５３に対する被吸着部材６０のガタツキを防止しつつ、軸部６１を支点とした被吸着部材６０（の鍔部６３側）の円滑な首振り動作を得ることができる。

【0026】

電磁石９０は、図７及び図８に示すように、地板１０の表側に所定間隔をおいて固定された保持板（不図示）に固定されており、所定長さのＵ字状をなす鉄芯部材９１、鉄芯部材９１の周りおいてボビンに巻回された励磁用のコイル９２等により構成されている。
鉄芯部材９１は、被吸着部材６０の被吸着部６２と離脱可能に当接するように形成され、コイル９２への通電により、鉄芯部材９１を通る磁力線を発生させて、対向する被吸着部材６０の被吸着部６２に対して磁気的吸引力を及ぼすようになっている。

【0027】

セット部材１００は、図４ないし図６に示すように、先羽根駆動レバー４０の係合部４２に係合し得る係合部１０１、後羽根駆動レバー５０の係合部５２に係合し得る係合部１０２、カメラ本体側から回転駆動力を及ぼす駆動機構（不図示）の一部が連結される連結部１０３等を備えており、支軸１０ｊにより回動自在に支持されと共に、支軸１０ｉの周りに配置されたコイル状の戻しバネ（不図示）により休止位置に向けて反時計回りに回転付勢されている。
そして、セット部材１００は、図１及び図４に示す状態から時計回りに回転させられると、係合部１０１が係合部４２に回転力を及ぼしかつ係合部１０２が係合部５２に回転力を及ぼして、図２及び図５に示すように、先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０をそれぞれの駆動バネ（不図示）の回転付勢力に抗しつつ反時計回りに回転させて、露光動作開始前（シャッタ動作前）のセット位置に保持し、一方、セット位置において先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０が電磁石９０，９０によりそれぞれ吸着保持された状態で、反時計回りに回転させられて休止位置に戻ると、図３及び図６に示すように、係合部１０１が係合部４２から離脱しかつ係合部１０２が係合部５２から離脱して、先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０の時計回りの回転を許容する状態とするものである。

【0028】

次に、このフォーカルプレンシャッタの動作について、図１ないし図３、図４ないし図６を参照しつつ説明する。
先ず、露光動作完了後（シャッタ動作完了後）の休止状態においては、図１及び図４に示すように、セット部材１００は反時計回りに回転して休止位置に位置し、先羽根駆動レバー４０は駆動バネの回転付勢力により時計回りに回転して停止し、先羽根２０は開口部１０ａを開放した位置に位置し、又、後羽根駆動レバー５０は駆動バネの回転付勢力により時計回りに回転して停止し、後羽根３０は開口部１０ａを閉鎖した位置に位置している。また、この状態において、被吸着部材６０は、第１付勢バネ７０の付勢力により、鍔部６３が取付保持部４３，５３の端部４３ｅ，５３ｅに当接した状態にある。

【0029】

ここで、シャッタ動作（セット動作）の準備指令が発せられると、図２及び図３に示すように、セット部材１００が時計回りに回転して、係合部１０１が係合部４２に係合して先羽根駆動レバー４０を反時計回りに回転させ、係合部１０２が係合部５２に係合して後羽根駆動レバー５０を反時計回りに回転させ、先羽根駆動レバー４０に設けられた被吸着部材６０の被吸着部６２が対応する電磁石９０の鉄芯部材９１に当接すると共に、先羽根駆動レバー４０の過移動により取付保持部４３の端部４３ｅが被吸着部材６０の鍔部６３から離脱し、又、後羽根駆動レバー５０に設けられた被吸着部材６０の被吸着部６２が対応する電磁石９０の鉄芯部材９１に当接すると共に、後羽根駆動レバー５０の過移動により取付保持部５３の端部５３ｅが被吸着部材６０の鍔部６３から離脱する。

【0030】

その後、レリーズ等の信号により、電磁石９０（のコイル９２）が通電され、図３及び図６に示すように、鉄芯部材９１が被吸着部材６０の被吸着部６２を磁気的吸引力により吸着し、又、セット部材１００が反時計回りに回転して休止位置に戻り、係合部１０１が係合部４２から離脱しかつ係合部１０２が係合部５２から離脱し、先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０の時計回りの回転を機械的に規制する状態が解除されると、先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０は、駆動バネの付勢力により、過移動した分だけ時計回りに回転して戻り、取付保持部４３，５３の端部４３ｅ，５３ｅが被吸着部材６０の鍔部６３，６３に当接して露光動作開始位置に位置決めされる。
ここで、この戻り動作の際に、第２付勢バネ８０が圧縮されつつ、取付保持部４３，５３の端部４３ｅ，５３ｅが被吸着部材６０の鍔部６３，６３に当接するため、当接する際の衝撃力が緩和されて、被吸着部６２が電磁石９０に吸着保持された状態が維持される。

【0031】

続いて、二つの電磁石９０の通電がそれぞれ異なる所望のタイミングで断たれると、先ず、先羽根駆動レバー４０が駆動バネの付勢力により時計回りに回転して先羽根２０が走行し、所定の時間間隔をおいて、後羽根駆動レバー５０が駆動バネの付勢力により時計回りに回転して後羽根３０が走行し、図１に示すように、先羽根２０が開口部１０ａを開放しかつ後羽根３０が開口部１０ａを閉鎖する。
以上により、先羽根２０及び後羽根３０により、開口部１０ａの開閉動作が行われて、露光動作（シャッタ動作）が完了する。

【0032】

上記のように、このフォーカルプレンシャッタによれば、先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０の取付保持部４３，５３と被吸着部材６０の鍔部６３の間に、取付保持部４３，５３の端部４３ｅ，５３ｅが鍔部６３に当接する際の衝撃を緩和する第２付勢バネ８０を設けたことにより、戻り動作の際の衝撃力が緩和されて、被吸着部６２が電磁石９０に吸着保持された状態を維持することができる。
特に、緩衝部材として、ゴムではなくかつ第１付勢バネ７０とは別個の第２付勢バネ８０を採用しているため、構造の簡素化、低コスト化、省スペース化等を達成しつつ、経時的劣化等を生じることなく所期の衝撃緩和特性を維持することができ、又、駆動部材（先羽根駆動レバー４０、後羽根駆動レバー５０）を駆動する（駆動バネ等の）付勢力に影響を及ぼすことなく、第１付勢バネ７０の付勢力と切り離して、衝撃の緩和作用に最適な力量（付勢力）に設定することができる。

【0033】

上記実施形態においては、先羽根２０及び後羽根３０を備えた構成において、先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０に対して、本発明の構成（第２付勢バネ８０）を採用した、すなわち二つの羽根部材を採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、一つの羽根部材を備え、単に開口部を開放した状態から閉鎖した状態に移動することでシャッタ動作を行う構成において本発明を採用することもできる。
上記実施形態においては、駆動部材として、所定の軸線回りに回動する先羽根駆動レバー４０及び後羽根駆動レバー５０を採用したが、これに限定されるものではなく、その他の形態をなす駆動部材において、本発明を適用してもよい。

【産業上の利用可能性】

【0034】

以上述べたように、本発明のフォーカルプレンシャッタは、構造の簡素化、低コスト化、省スペース化等を達成しつつ、駆動バネ等の付勢力により駆動部材が所定の露光動作開始位置に戻る際の衝撃力等を緩和でき、羽根部材を駆動する駆動部材（の被吸着部材）を電磁石により確実に吸着して保持することができ、それ故に、所望の露光動作（シャッタ動作）を得ることができるため、デジタルカメラ等のカメラ等に適用できるのは勿論のこと、その他の露光用の開口部を備えた光学機器に対しても有用である。

【符号の説明】

【0035】

１０ 地板
１０ａ 開口部
２０ 先羽根（羽根部材）
３０ 後羽根（羽根部材）
４０ 先羽根駆動レバー（駆動部材）
４３，５３ 取付保持部
４３ｅ，５３ｅ 端部
５０ 後羽根駆動レバー（駆動部材）
６０ 被吸着部材
６１ 軸部
６２ 被吸着部
６３ 鍔部
７０ 第１付勢バネ
８０ 第２付勢バネ
９０ 電磁石
９１ 鉄芯部材
９２ 励磁用のコイル
１００ セット部材

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】