(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180322
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】自動車の排ガス中のNOx排出量を低減するための方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20170807BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20170807BHJP
F01N 9/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
F01N3/08 GZAB
B01D53/86 222
F01N9/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-521237(P2013-521237)
(86)(22)【出願日】2011年7月18日
(65)【公表番号】特表2013-536346(P2013-536346A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】IB2011001696
(87)【国際公開番号】WO2012014037
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2014年2月26日
【審判番号】不服2016-279(P2016-279/J1)
【審判請求日】2016年1月7日
(31)【優先権主張番号】EP10007831
(32)【優先日】2010年7月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513020397
【氏名又は名称】アークイス アンド アークイス エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】オードゥアン,アルノー
【合議体】
【審判長】
伊藤 元人
【審判官】
中村 達之
【審判官】
金澤 俊郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−522852(JP,A)
【文献】
特表2001−500063(JP,A)
【文献】
特開2009−185685(JP,A)
【文献】
特開2007−231894(JP,A)
【文献】
特開2009−228616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の排ガス中のNOx量を削減するためのシステムを制御する方法であり、前記自動車に搭載される前記システムは:
−貯蔵物質の温度に依存して汚染物除去剤を吸収又は脱吸収する前記貯蔵物質を含む貯蔵チャンバであって、該貯蔵チャンバは、アルカリ土類金属塩化物型の塩を貯蔵する、貯蔵チャンバと;
−前記貯蔵チャンバの温度を制御するように構成される加熱装置と;
−前記汚染物除去剤を前記排気ガス内に注入するように構成される供給モジュールと;を含み、及び該供給モジュールが:
−前記貯蔵チャンバ内部の圧力又は温度を測定するための装置;及び
−前記汚染物除去剤を分配するための装置;を含み;
前記方法が次のステップ:
(a)前記自動車が運転されており、且つ所定の運転期間に亘って運転されるときに、前記貯蔵チャンバ内の設定圧力又は温度を、前記所定の運転期間中での前記自動車の運転タイプの関数である、前記自動車の1つ又は複数のパラメータに応じて計算するステップ;
(b)前記所定の運転期間後の、前記自動車の運転中に、前記設定圧力又は温度を、前記圧力又は温度測定装置により測定された圧力又は温度と比較するステップ;及び
(c)もし前記測定された圧力又は温度が前記設定圧力又は温度よりも低い場合は、前記貯蔵チャンバを加熱するステップ;を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であり、前記所定の運転期間中での前記貯蔵チャンバ内の前記設定圧力又は温度を計算するステップ(a)が次の操作:
(d)前記所定の運転期間よりも非常に短いような前記自動車の第1運転期間(T1)中での前記自動車の運転分類基準を前記自動車の異なるパラメータの関数として定める操作;
(e)前記自動車の第1運転期間(T1)中での平均運転分類基準を決定する操作;
(f)前記平均運転分類基準を様々な閾値と比較して、いくつかの運転タイプから第1運転期間(T1)中での前記自動車の運転タイプを決定する操作、及び
(g)前記決定された運転タイプ及び過去の運転条件を表す運転パターンの関数として設定圧力又は温度を割り当てる操作を含み、前記過去の運転条件の運転パターンが別の操作により決められ、前記別の操作が、前記自動車により、前記所定の運転期間に対応する前記自動車の第2運転期間(T2)中でのそれぞれの運転タイプに費やされた時間を決定することからなる、操作を含む、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であり、運転分類基準が、エンジントルク、前記自動車の重量/馬力比、及び手動ギアボックス又は自動ギアボックスかどうかのギアボックスのタイプから選択される少なくとも2つのパラメータの関数として決定される、方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法であり、前記自動車の第1の運転期間(T1)中の前記平均運転分類基準を、少なくとも3つの異なる閾値と比較して運転の3つのタイプを決定することを可能にする、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であり、前記自動車の第1の運転期間(T1)中の前記平均運転分類基準を、4つの異なる閾値と比較して運転の5つのタイプを決定することを可能にする、方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法であり、前記自動車の第2の運転期間(T2)中の3つの運転パターンが、それぞれ都市部、郊外道路及び高速道路に対応する、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であり、前記自動車の第2の運転期間(T2)中に主な運転タイプが存在しない場合に、所謂混合パターンが追加される、方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法であり、前記汚染物除去剤がアンモニアである、方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法であり、前記圧力又は温度を測定するための装置は、1〜15バールの間で変更される前記設定圧力を測定し、前記アンモニアの流速を、0.5mg/秒〜50mg/秒の範囲にわたり変更する、方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法であり、前記設定圧力又は温度が、前記排気ガス内のNOx濃度の関数として決定される、方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法であり、前記設定圧力又は温度が、前記所定の運転期間中での自動車速度及び/又はエンジン負荷及び/又はエンジン回転数の関数として決定される、方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法であり、前記設定圧力又は温度が、前記所定の運転期間中でのエンジン潤滑剤の温度及び/又はエンジン冷却剤の温度の関数として決定される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車産業分野に関し、より具体的には自動車排気ガス中のNOx量を低減することを意図するシステムを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
輸送関連汚染物排出は、30年近く、産業において進展の促進の最前線となってきた。4つの規制汚染物(CO、HC、NOx、粒子)について排出制限がより厳しくなるにつれて、特に大都市での大気汚染の大きな改善を可能にしてきた。
【0003】
自動車の使用の増加につれて、さらにこれらの汚染物排出を低減する努力が必要とされてきている。従って、窒素酸化物(NOx)の低減は、Euro6標準が有効になる2015年に予想されるさらに厳しいヨーロッパ規制値という点で、なお複雑な問題を残したままである。あらゆる運転条件で利用可能な有効性の高い汚染防止技術を持つことは、前記輸送産業にとって主要な解決課題となっている。
【0004】
次に、CO
2排出に直接関連する燃料消費が主要な関心事となっている。例えば、自動車CO
2排出に関連する1012年以後のヨーロッパレベルの規制が導入されることになる。この制限は定期的に今後数十年にわたってさらに下げられることが受け入れられている。CO
2削減は従って、全輸送産業にとって明確な必要性となっている。
【0005】
局地的汚染(NOx)の低減及び燃料消費の削減(CO
2)という両方の問題は、特にディーゼル機関にとって困難となっており、というのはその希薄燃焼が処理しにくいNOx排出を伴うからである。
【0006】
塩形貯蔵物質、即ちアルカリ土類塩化物中に貯蔵されたアンモニアを用いるSCR触媒(選択的触媒還元)の手段でNOx量を低減させ得る装置は既に存在する。アンモニアの燃焼ガス中への注入は、前記貯蔵材料を加熱して、アンモニアの可逆的な吸収/脱吸収反応を可能にする加熱手段で制御されているが、というのはこの反応は直接前記貯蔵材料内の温度に関連するからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、前記加熱装置のエネルギー消費を制限する一方で、前記貯蔵材料内の十分な高圧力を保証して、NOx排出に合わせた十分な注入速度を可能にするための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この課題は、自動車の排気ガス中のNOx量を低減することを目的としたシステムを制御するための方法の手段により達成される。このシステムは、自動車に搭載され、前記システムは、汚染物除去剤を含む貯蔵チャンバ、前記貯蔵チャンバの温度を制御するように構成される加熱装置、及び前記排気ガス内に前記汚染除去剤を注入するように構成される供給モジュールを含む。前記供給モジュールは、前記貯蔵チャンバ内部の圧力又は温度を測定するための装置、及び前記汚染物除去剤を分配する装置を含む。本発明の方法は、次のステップ:
(a)前記自動車が運転中であり、かつ既定の運転期間運転中である場合に、この期間前記自動車の運転のタイプに関連する自動車の1以上のパラメータに従って、前記貯蔵チャンバ(8)内の設定圧力又は温度を、計算するステップ;
(b)前記設定圧力又は温度を、前記運転期間の後、前記又は温度の測定装置(6a)で測定された圧力又は温度と比較するステップ;及び
(c)もしその内の圧力又は温度が、前記設定圧力又は温度よりも低い場合には、前記貯蔵チャンバ(8)を加熱するステップ、を含む。
【0009】
前記所定の運転期間で前記貯蔵チャンバ内の前記設定圧力又は温度を決定するために、ステップ(a)は好ましくは、次の操作:
(d)前記所定に運転期間よりも非常に短い前記自動車の第1運転期間(T1)での前記
自動車の異なるパラメータの関数として自動車運転
分類基準を定める操作;
(e)前記自動車の前記第1運転期間(T1)での前記運転
分類基準の手段を決定する操作;
(f)前記平均運転
分類基準の手段を、異なる閾値と比較して、いくつかの運転のタイプから前記第1運転期間(T1)で前記自動車の現在の運転タイプを決定する操作;
(g)前記現在の運転タイプ及び/又は過去の運転条件を表すパターンに関連させて設定圧力又は温度を割り当てる操作を含み、前記過去の運転条件のパターンが追加の運転により決められ、前記追加の運転が、前記所定の運転期間に対応して前記自動車の第2運転期間(T2)でのそれぞれの運転タイプで前記自動車により使われた時間を決定することからなる、操作を含む。
【0010】
本発明の実施態様によれば、前記自動車の第1運転期間(T1)での前記平均運転
分類基準が、少なくとも3つ及び好ましくは5つの異なる閾値と比較し、それにより、3つの運転タイプ及び好ましくは5つの運転タイプをそれぞれ決定することができる。また、本発明の好ましい実施態様によると、前記3つの運転パターンが、都市部、郊外部及び高速道路にそれぞれ対応する自動車の前記第2運転期間(T2)について決定される。場合により、どのタイプの運転もこの第2運転期間(T2)で主要なものではない場合には所謂混合パターンが追加され得る。最後に、前記システムは、前記設定圧力は、好ましくは1と15バールの間に変更可能であり、それにより前記アンモニアの流速を、0.5mg/秒から50mg/秒の範囲にわたり変化させることができる。
【0011】
本発明の特徴は、例示としてのみ与えられ、なんらを限定するものではないこれらの好ましい実施態様の記載と、添付の図面を参照することで、より明らかなものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、アンモニア貯蔵及び供給システムの構造的特徴を示す。
【
図2】
図2は、アンモニア貯蔵及び供給システムの機能的特徴を示す。
【
図3】
図3は、アルカリ土類金属塩化物型の塩中でのアンモニアの吸収/脱吸収平衡曲線を示す。
【
図4】
図4は、システム圧力を変化させるための分配装置の制御を示すグラフである。
【
図5】
図5は、前記運転
分類基準を計算するための原理を示す。
【
図6】
図6は、前記運転パターン
分類基準を計算するための原理を示す。
【
図7】
図7は、運転タイプ及びそれぞれの運転パターンに従う設定圧力の分布図(マップ)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい実施態様によると、前記制御方法は、自動車エンジンからの排気ガスにより排出されるNOxの選択的触媒還元(SCR)のための装置に適合される。
【0014】
図2によれば、本システムは貯蔵チャンバ8を含み、これは汚染物除去剤を含み、その温度が加熱装置9で制御されるように構成される。前記システムはまた、供給モジュール6を含み、これは前記汚染物除去剤を前記排気ガスに注入するように構成され、前記供給モジュール6は、前記貯蔵チャンバ8内の圧力又は温度を測定するための装置6aと、前記汚染物除去剤を分配するための装置6bを含む。本発明の制御方法は、例えば:第1期間での特にエンジントルクに関連して決定される運転
分類基準を定めること;前記運転
分類基準を、前記第1期間に対応してフィルタ期間T1でフィルタすること(
図5);前記フィルタされた運転
分類基準を異なる閾値と比較して運転タイプを決定すること;第2期間でのそれぞれの運転タイプで使った時間を決定し、この第2期間T2での運転条件を表すパターンを関連付けること(
図6)
;運転タイプ及び
過去の運転条件を表す運転パターンに関連する設定圧力又は温度を計算すること;前記設定圧力又は温度を、圧力又は温度測定のための装置6aにより測定された前記圧力又は温度と比較すること;その中の圧力又は温度が前記設定圧力又は温度よりも低い場合には、前記貯蔵チャンバ8を加熱すること、である。
【0015】
図1によりより具体的には、前記エンジン1は、電子的コンピュータ11で制御される。前記エンジンからの出口で、排気ガス12は第1の汚染物除去要素2へ向かい、これは酸化触媒又は三元触媒及び好ましくは粒子フィルタにより形成され得る。
【0016】
前記アンモニア16が、注入モジュール3の手段で、前記第1の汚染物除去要素2の下流で注入され、前記排気ガスと混合される。前記アンモニア/排気ガス混合物13はその後SCR触媒装置4を通過し、NOxのアンモニアによる還元を可能にする。種々の追加の後処理要素5、例えば粒子フィルタや酸化触媒などが前記SCR触媒装置の後に設けられ得る。前記脱汚染物された排気ガス14はその後、排気出口へ向かう。
【0017】
アンモニア16の供給及び分配を保証するために、前記アンモニア貯蔵チャンバ8は貯蔵材料7を含み、その温度が前記加熱装置9で制御されるように構成され、前記加熱装置は電気抵抗又は前記エンジン冷却剤などの熱交換流体を供給される熱交換装置であり得る。本発明によれば、前記アンモニアは好ましくは、アルカリ土類金属塩化物型(MgCl
2、SrCl
2、CaCl
2、BaCl
2など)の塩中に貯蔵される。
【0018】
提案されるシステムでは、前記アンモニアの貯蔵は、この型の可逆的固体−気体反応に基づく。
【0019】
【数1】
アルカリ土類塩では、アンモニアは、配位錯体を形成し、これはまたアンモニアケート(ammoniacates)と呼ばれる。この現象は、知られており文献に記載されている。
【0020】
例えばアンモニアと塩化ストロンチウムとの反応は:
【0021】
【数2】
であり、アンモニアと塩化バリウムとは、単一反応:
【0023】
吸収体SrCl
2及ぶBaCl
2によるアンモニアリガンドの化学的吸収は、前記固体と気体間の電子移動を起こし、これはNH
3とSrCl
2及びBaCl
2の原子の外層との間の化学結合を形成する。前記気体は、前記固体構造内へ核酸過程を介して全体に及ぶ。この反応は完全に可逆的であり、吸収は発熱的であり、脱吸収は吸熱的である。
【0024】
この反応の際に、固体による気体の固定は容積増加を伴い、オクタアンモニアケートは、純粋な塩の容積と比べてずっと大きい容積を占める(4から5倍まで)。前記塩の容積増加は、その結晶格子を拡張するだけでなく、また、Sr(NH
3)Cl
2及びBa(NH
3)Cl
2のミクロ結晶間の遊離空間を残すことで分画することによる。
【0025】
ほとんどの塩は、その配位サイトの機能としての段階的にアンモニアを脱吸収する。塩化ストロンチウムについては、アンモニア7分子が最初脱吸収され、最後のアンモニア分子が第2段階で脱吸収される。前記塩の前記アンモニア吸収/脱吸収平衡曲線は、クラジウス−クラペイロン式により温度及び圧力の関数として定義される:
【0026】
【数4】
ここで、考慮している化学量論的アンモニア/塩錯体形成について、ΔHrはエンタルピーを表し、ΔSrはエントロピーを表す。
【0027】
以下の表は、MgCl
2、SrCl
2及びBaCl
2塩の科学的文献からのエンタルピー及びエントロピー形成値を与える。
【0029】
これらの3つの塩のアンモニア吸収/脱吸収の平衡曲線が、
図3に示される。これらの吸収及び脱吸収現象は完全に可逆的である。従って、SCR応用のためにこれらの塩にアンモニアを貯蔵することが可能である。アンモニアケートは、前記塩の脱吸収後に脱汚染のために前記排気内に注入されるが、この脱吸収は、前記貯蔵チャンバ8内の温度/圧力を制御することで案内される。
【0030】
図2によれば、この貯蔵チャンバ8は、前記供給及び分配装置6に接続される。前記装置6は、電子制御装置10により駆動され、これは前記エンジン11の電子的コンピュータへ接続されている。他の構成では、前記供給及び分配モジュール6は、本発明の原理に従って前記エンジンコンピュータ1により直接制御され得る。
【0031】
図2によれば、前記アンモニアチャンバ8は、インターフェイス8aを含み、これにより前記チャンバ8と前記供給モジュール6との接続を保証することを可能にする。これは、圧力センサ6a及びアンモニア分配装置6bを含む。
【0032】
本発明によれば、前記アンモニア分配装置6bは、ある数のエンジン及び自動車パラメータに関連して制御され、これらは前記エンジンコンピュータ11から誘導され、前記加熱装置9の最適化制御を可能にするためのデータと組み合わせて使用される。
【0033】
ここで使用される用語「システム圧力」とは、前記貯蔵チャンバ8、接続インターフェイス8a、圧力センサ6a及びアンモニア分配装置6bを含む前記貯蔵及び供給システム内で操作の際に与えられる圧力を示すために使用される。このシステム圧力は、クラジウス−クラペイロン式を介して前記貯蔵チャンバ8の中の温度に直接関連する。
【0034】
操作の際に、前記貯蔵チャンバに適用される外部温度及び/又は加熱の関数として変更され得る前記システム圧力は、1と15バールの間の範囲で変更され得る。
【0035】
前記加熱装置のエネルギー消費を制限するために、前記システム圧力をできるだけ制限するようにされる。一方で、前記システム圧力は十分高くして、前記加熱エンジンのNOx排出に適合する十分な注入速度を可能とする必要がある。
【0036】
本発明においては、前記設定圧力は、ある数のエンジン及び、ある時間で排出されるNOx濃度(測定され及び/又はモデル化される
大きさ)、
エンジン潤滑剤の温度、エンジン冷却剤の温度、自動車速度、エンジン回転数、エンジン負荷又はこれらの組合せなどのいくつかの自動車パラメータの分析に関連して動的に決定される。
【0037】
好ましい実施態様は、現在の運転条件(運転タイプ
分類基準)及び過去の運転条件(運転パターン
分類基準)のこの分析について以下説明されるが、自動車の異なる相を正確に分類し、前記設定圧力を定めるために大きな自由度を与えることを可能にする。
【0038】
運転
分類基準の第1の段階は、次の式で定められる:
運転
分類基準=自動車速度x(1+KxCMI)
ここで、CMIは、平均エンジントルクを表し、Kはエンジントルクの補正係数を示し、これにより前記重量/馬力比、マニュアルギア又は自動ギアボックスを持つ自動車間の違いを考慮することを可能にし、それによりそれぞれの運転タイプの最善の特徴付けを可能にする(それぞれの応用のために計算されるパラメータ)。
【0039】
図5に示されるように、未処理の運転
分類基準は、その後第1の計算期間T1でフィルタされてT1での平均運転
分類基準を得る。従って、T1秒毎に、新たな値が、T1秒について有効性が維持される運転
分類基準に関連して集められる。
【0040】
運転タイプはその後、前記フィルタされた運転
分類基準を計算可能な閾値と次の方法で比較することで定められる:
もし、運転
分類基準(t)<判断閾値1である場合には、
運転タイプ=1(都市部、厳しい)
もし、判断閾値1≦フィルタされた運転
分類基準(t)<判断閾値2である場合には、
運転タイプ=2(都市部、平均)
もし、判断閾値2≦フィルタされた運転
分類基準(t)<判断閾値3である場合には、
運転タイプ=3(郊外道路)
もし、判断閾値3≦フィルタされた運転
分類基準(t)<判断閾値4である場合には、
運転タイプ=4(山間部)
もし、判断閾値4≦フィルタされた運転
分類基準(t)である場合には、
運転タイプ=5(高速道路)。
【0041】
時間間隔T1より5倍長い第2の時間間隔T2
中でそれぞれの運転条件で使用された時間がその後計算される。これは、
その合計が100となる5つの値X1からX5のベクトルを与える(
図6)。
【0042】
時間tでの運転条件のタイプの分布に基づいて、過去の運転条件を表すパターンが関連付けされる。前記パターンの数は3(都市部、郊外道路及び高速道路)に限定され、運転のどのタイプも主ではない場合には「混合」パターンが追加される。パターン決定の規則は次の通りである:
もし、X1+X2>都市部パターン閾値の場合には、
運転パターン=1(都市部)
もし、X3+X4+X5>高速パターン閾値である場合、
もし、X3+X4>郊外パターン閾値である場合、
運転パターン=2(郊外道路)
でなければ、
運転パターン=3(高速道路)
でなければ、
運転パターン=0(混合)
整合性のために、次の規則が適用される:
−都市部閾値>50%
−高速閾値>50%
−郊外道路パターン閾値<高速パターン閾値
【0043】
前記運転パターンは、エンジンが停止するとすぐに再初期化される。前記第1のT
2秒では運転タイプの分布はなく、前記運転パターンはシステム的に2(郊外道路)に初期化される。
【0044】
本発明においては、前記設定圧力を、現在及び過去の運転条件の分析の関数として決定することが提案される。従って、前記設定圧力は、運転のタイプ及び運転パターンの
分類基準に関連付けた
図7に示されるようなマップにより計算される。従って、所定のシステム圧力でのアンモニア流の要求は、装置6aで測定され、このマップに関連付けられた前記分配装置のデューティサイクルへ変換される。
【0045】
現在及び過去の運転条件の分析は、自動車の異なる相を正確に分類し、アンモニア圧力を計算するように十分適合されることを可能にする。例えば、現在及び過去の条件が厳しい都市部である自動車については、高システム圧力を保証することはほとんど利点はないが、というのはこのような運転条件下で排出されるNOxを処理するために必要とされるNH
3の流速は比較的遅いからである。一方で、過去が都市部で現在が郊外道路である自動車については、システム圧力を増加させて、これらの運転条件で必要となる高いNH
3流速を与えるようにすることは有利であるように見える。
【0046】
留意されるべきことは、運転タイプ及び運転パターンの
分類基準についての計算(T1、T2、X1、X2...)の較正は、前記設定圧力の時間にわたる最適制御、即ち可能な限り正確に、前記システムの熱に関連するエネルギー消費を削減することを可能にするということである。留意すべきことは、この較正はまた、システムの応答時間、即ち設定システム圧力の増加及びこのシステム圧力の到達への応答時間を考慮に入れるべきである、ということである。
【0047】
本発明では、ΔP
eqは、P
set、前記考え方を用いて決定された設定圧力と、前記圧力センサ6aにより測定された圧力P
systemとの圧力差を定める。
ΔP
eq=P
set−P
system
−ここでΔP
eq<0:加熱は不必要
−ここでΔP
eq>0:加熱システム駆動が必要
【0048】
本発明では、前記加熱システムの電力は、システム圧力P
systemと前記圧力差ΔP
eqに依存するマッピングを介して制御される。このマッピングは、使用されるシステムについて及び望ましい応答時間について較正され得る。この方法で、マッピングは、「前記アンモニア貯蔵及び供給システムの温度増加」から決定される。
【0049】
留意すべきことは、T
system及びΔT
eqマッピングの方法で前記装置の電力を制御することがまた可能であり、これらの2つの強度は、システム圧力(P
system)及び圧力差(ΔP
eq)の値から、クラジウス−クラペイロン式を用いて計算することができる、ということである。
【0050】
さらに留意すべきことは、この圧力(又は温度)マッピングは、前記使用されるシステムにおいて実験的に決定することもできるということであり、というのはこれは多くのパラメータ:前記システムの熱損失(貯蔵チャンバを断熱するという利点)、加熱システム(電気、熱交換流体)、グラファイト/塩組成物マトリクス(塩の型、バインダ密度、導電性及び浸透性など)に依存するからである。