(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る空気調和機について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る空気調和機1の冷凍サイクルを示す。
【0014】
空気調和機1は、室外機10と室内機20とを備えている。室外機10と室内機20とは、ガス接続配管2および液接続配管3により接続される。本実施の形態では、室外機10と室内機20とを1対1で接続しているが、一台の室内機に対し複数台の室外機を接続しても良いし、一台の室外機に対し複数台の室内機を接続しても良い。
【0015】
室外機10は、圧縮機11と、四方弁12と、室外熱交換器13と、室外ファン14と、室外膨張弁15と、アキュムレータ16とを有している。また、室外熱交換器13には、室外ガス側冷媒分配器17と、室外液側冷媒分配器18とが設けられている。
【0016】
圧縮機11は、冷媒を圧縮して配管に吐出する。四方弁12を切り替えることで、冷媒の流れが変化し、冷房運転と暖房運転が切り替わる。室外熱交換器13は、冷媒と外気の間で熱交換させる。室外ファン14は、室外熱交換器13に対し外気を供給する。室外膨張弁15は、冷媒を減圧して低温にする。アキュムレータ16は、過渡時の液戻りを貯留するために設けられており、冷媒を適度な乾き度に調整する。
【0017】
室内機20は、室内熱交換器21と、室内ファン22と、室内膨張弁23とを備える。室内熱交換器21は、冷媒と内気の間で熱交換させる。室内ファン22は、室外熱交換器21に対し外気を供給する。室内膨張弁23は、その絞り量を変化させることにより室内熱交換器21を流れる冷媒の流量を変化させることが可能である。また、室内熱交換器21には、室内ガス側冷媒分配器24と、室内液側冷媒分配器25とが設けられている。
【0018】
本実施形態における空気調和機1では、冷凍サイクル内に封入されて、冷房運転時および暖房運転時に熱エネルギーを運搬する作用をなす冷媒として、R32を単独(100重量%)、または、R32を70重量%以上含む混合冷媒が用いている。
【0019】
次に、空気調和機1の冷凍サイクルの動作について説明する。
【0020】
まず、空気調和機1における冷房運転について説明する。冷房運転において、四方弁12は、実線で示すように、圧縮機11の吐出側と室外熱交換器13とを連通させ、圧縮機11の吸入側とガス接続配管2とを連通させる。
【0021】
圧縮機11から吐出された高温高圧のガス冷媒は、四方弁12を通って、室外熱交換器13に流入する。室外熱交換器13へ入った高温のガス冷媒は、室外ファン14により供給される室外空気と熱交換して凝縮され、液冷媒となる。この液冷媒は、室外膨張弁15および液接続配管3を通過して、室内機20に流入する。室内機20に流入した液冷媒は、室内膨張弁22により減圧されて、低温低圧のガス液混合冷媒となる。この低温低圧の冷媒は、室内熱交換器21に流入して、室内ファン22により供給される室内空気と熱交換されて蒸発し、ガス冷媒となる。この際、室内空気は、冷媒の蒸発潜熱により冷却され、冷風が室内に送られる。その後、ガス冷媒は、ガス接続配管2を通って、室外機10に戻される。
【0022】
室外機10に戻ったガス冷媒は、四方弁12およびアキュムレータ16を通過し、圧縮機11に吸入され、再度圧縮機11で圧縮されることにより、一連の冷凍サイクルが形成される。
【0023】
次に、空気調和機1における暖房運転について説明する。暖房運転において、切換え弁12は、点線で示すように、圧縮機11の吐出側とガス接続配管2とを連通させ、圧縮機11の吸入側と室外熱交換器13とを連通させる。
【0024】
圧縮機11から吐出される高温高圧のガス冷媒は、四方弁12を通って、ガス接続配管2へ送られ、室内機20の室内熱交換器21に流入する。室内熱交換器21に流入した高温高圧のガス冷媒は、室内ファン23により供給される室内空気と熱交換して凝縮し、高圧の液冷媒となる。この際、室内空気は、冷媒によって加熱され、温風が室内に送られる。その後、液化した冷媒は、室内膨張弁22、および液接続配管3を通過して、室内機10へと戻される。
【0025】
室外機10へ戻った液冷媒は、室外膨張弁15により減圧されて、低温低圧のガス液混合冷媒となる。減圧された冷媒は、室外熱交換器13に流入して、室外ファン14により供給される外気と熱交換し、蒸発され、低圧のガス冷媒となる。室外熱交換器13から流出したガス冷媒は、およびアキュムレータ16を通過し、圧縮機11に吸入され、再度圧縮機11で圧縮されることにより、一連の冷凍サイクルが形成される。
【0026】
次に、本実施形態の空気調和機1で使用するR32の特性について説明する。具体的には、R32とR410Aとの冷媒物性の違いにより、これらの冷媒を使用した時の違いについて説明する。
図2は、R410A(破線)を冷媒として用いたとき、および、R32(実線)を冷媒として用いたときにおける暖房運転時の冷凍サイクルをモリエル線図上に示した図である。なお、R410Aは、従来より用いられる冷媒であり、R32と比較してGWP(地球温暖化係数)が高い冷媒である。
【0027】
R32は、R410Aに比べて蒸発潜熱が大きい特性があるので、R32のΔhe_R32、Δhc_R32で示される蒸発器あるいは凝縮器における比エンタルピ差は、R410AのΔhe_R410A、Δhc_R410Aよりも大きくなる。よって、R32は、同一能力発生に必要な冷媒循環量をR410Aより少なくすることができる。
【0028】
ここで、Δheは蒸発器での比エンタルピ差、Δhcは凝縮器での比エンタルピ差を示しており、添え字の_R410A、_R32はそれぞれ、冷媒R410A、R32での状態を示している。
【0029】
R32を冷媒として用いたときは冷媒循環量を少なくすることができるので、熱交換器13、21の流路を冷媒が通過する際の圧力損失は減少して高圧と低圧の差圧が小さくなる。よって、圧縮機11における必要な圧縮動力を減少させることができ、空気調和機1のCOP(Coefficient of Performance:成績係数)向上効果がある。この一方で、熱交換器13、21の伝熱管内における冷媒流速の減少により、冷媒側の表面熱伝達率の低下が生じて熱交換器13、21の効率低下が生じる場合がある。
【0030】
図3は、冷媒循環量の伝熱管の圧力損失に対する影響を示す図であり、
図4は、冷媒循環量の伝熱管の表面熱伝達率に対する影響を示す図である。
【0031】
図3と
図4に示すように、R32を蒸発器よりも凝縮器で使用したときの方が、相対的に圧力損失が小さくなり、表面熱伝達率が小さくなる。このため、冷房と暖房を切り替えて使用する空気調和機1においては、熱交換器13、21の一流路(一本の伝熱管26(
図7))あたりの冷媒循環量を冷房と暖房の双方でバランスが良い流量に設定する必要がある。
【0032】
熱交換器13、21の一流路あたりの冷媒循環量を調整するために、例えば、室内熱交換器21の冷媒入口において室内ガス側冷媒分配器24および室内液側冷媒分配器25(
図7)が使用されている。当該分配器24、25から、複数の流路(複数の伝熱管26)に分岐されて冷媒が室内熱交換器21内を流通するように構成されている。
【0033】
次に、本実施形態における天井埋込型4方向吹出の室内機20の構成について詳細に説明する。
図5は、空気調和機1の室内機20の横断面、
図6は、室内機20の縦断面を示している。
【0034】
図5、6に示すように、室内機20の筐体28内に室内熱交換器21および室内ファン22が収容され、室内ファン22の周りを囲むように室内熱交換器21が配置されている。このように本実施形態における室内機20は、天井埋込型4方向吹出の室内機である。
【0035】
図5に示すように、室内熱交換器21は、室内ファン22の周りを略一周して取り囲む形(略ロ字状)であり、一端部21Aと他端部21Bとを有する。よって、室内熱交換器21の長さが長くなるので、室内熱交換器21を複数の流路に分ける際には、室内熱交換器21の両端においてのみ分岐、集合が可能であるため、流路分割には制約が多い形態である。また、室内熱交換器21の一端部21Aには、室内ガス側冷媒分配器24および室内液側冷媒分配器25が接続されている。
【0036】
また、
図6に示すように、室内ファン22により室内から導入された空気が室内熱交換機21において熱交換を行い、吹出し口より室内に送られるように構成されている。
【0037】
図7は、本実施形態における室内熱交換器21の伝熱管26およびフィン27の構成を示している。
図7における矢印は暖房運転時に伝熱管26を流れる冷媒の流れを示している。
図7に示すように、複数本の伝熱管26は、金属製の板状の複数のフィン27に挿通されている。複数本の伝熱管26は、室内ファン22による室内空気の気流方向Fに交差する方向に複数本が並んで形成される列を気流方向Fに沿って3列含む列構成を有している。
【0038】
3列で構成していることにより、凝縮器として作用する際に、空気の流れに対して対向する方向に冷媒通路を構成した場合に、吸込空気との温度差を比較的均等に保つことが出来、空気流に対して1列目、2列目、3列目でほぼ過冷却域、飽和域、過熱域と冷媒温度レベルが異なる毎に熱交換器のフィンが分断でき、伝熱性能で優位である。更に通風抵抗や搭載スペース面でも優位である。
【0039】
当該列構成は、気流方向Fの最上流に位置する最上列(第1列)L1と、気流方向Fの最下流に位置する最下列(第3列)L3と、最上列L1と最下列L3との間に位置する中間列(第2列)L2とからなる。ここで、最下列L3を構成する伝熱管を伝熱管26aとし、中間列L2を構成する伝熱管を伝熱管26bとし、最上列L1を構成する伝熱管を伝熱管26cとする。なお、各列L1〜L3において、伝熱管26は上下方向において一列に並んでいる。
【0040】
最上列L1を構成する伝熱管26cは、室内液側冷媒分配器25と接続され、最下列L3を構成する伝熱管26aは、室内ガス側冷媒分配器24と接続されている。そして、最下列L3の伝熱管26aは、室内熱交換器21の一端部21Aから他端部21Bまで延び、他端部21BにおいてUターンして、中間列L2において、室内熱交換器21の一端部21Aまで戻ってくる。そして、室内熱交換器21の一端部21Aにおいて、中間列L2において互いに隣り合う2本の伝熱管26bが結合し、結合して1本となった伝熱管26cが、最上列L1において、一端部21Aと他端部21Bとの間を一往復するように延び、一端部21Aまで戻ってきた伝熱管26cは、室内液側冷媒分配器25に接続される。
【0041】
換言すると、伝熱管26(第1の伝熱管)は、最下列(第3列)L3において室内熱交換器21の一端部21Aから他端部21Bへ延び、中間列(第2列)L2において、室内熱交換器21の他端部21Bから一端部21Aへ延び、一端部21Aにおいて上下で互いに隣り合う他の伝熱管26(第2の伝熱管)と結合して、結合した一本の伝熱管26が、最上列(第1列)L1において室内熱交換器21の一端部21Aと他端部21Bとを一往復するように構成されている。また、中間列L2の2本の伝熱管26bと、最上列L1の伝熱管26cとを連結する三又ベンド28は、2本の伝熱管26bの上下方向の略中間において伝熱管26cが連結される形状をなしている。すなわち、気流方向Fから見たときに、三又ベント28に接続された伝熱管26cは、2本の伝熱管26bの間に位置している。
【0042】
室内熱交換器21の伝熱管26は、上記のような構成なので、暖房運転時に凝縮器として機能する場合には、R32である冷媒は、
図7の矢印で示すように、室内ガス側冷媒分配器24から複数の伝熱管26に流入し、最下列L3および中間列L2を通って合流し、合流した冷媒が、最上列L1において一往復して室内液側冷媒分配器25に排出される。
【0043】
図8は、室内熱交換器21の縦断面図を示している。
図8に示すように、伝熱管26の径Dは、4≦D≦6mmであり、上下において隣り合う伝熱管26の上下ピッチPt(伝熱管26の中心間の距離)は、11≦Pt≦17mmであり、伝熱管26の横ピッチPL(各列を構成する伝熱管26の中心を通る直線間の距離)は、7≦PL≦11mmである。
【0044】
図9は、
図8のIX−IX線に沿った断面図である。
図8に示すように、フィン27には、スリット27A、27Bが設けられている。フィン27の板厚t[mm]と、隣り合うフィン27のピッチPf[mm]とは、0.06≦t/Pf≦0.12に構成されている。また、スリット切起し幅Hs1、Hs2[mm]は、伝熱性能および通風抵抗を考慮し、例えば、それぞれPf/3に対して若干の差を設けた1.2≦Hs1/Hs2≦1.6 に構成されている。
【0045】
上記のように、伝熱管26は、最下列L3において室内熱交換器21の一端部21Aから他端部21Bへ延び、中間列L2において、室内熱交換器21の他端部21Bから一端部21Aへ延び、一端部21Aにおいて上下で互いに隣り合う他の伝熱管26と結合して、結合した一本の伝熱管26が、最上列L1において室内熱交換器21の一端部21Aと他端部21Bとを一往復するように構成されている。
【0046】
よって、2本の伝熱管26を流れる冷媒を合流させて1本の伝熱管26に流すようにすることにより、冷媒の流速を増加させることができ、表面熱伝達率を高くすることができる。
【0047】
また、本実施の形態では、冷媒にR32を用いているので、使用する冷媒循環量を減少させることができる。よって、上記のように冷媒の流速を合流させたとしても、冷媒流速は比較的小さい為、圧力損失を抑えることができる。
【0048】
一方、
図10に示す従来の熱交換器121の構成では、室内ガス側冷媒分配器24に接続された伝熱管126は、列L1〜L3を合計1.5往復して、室内液側冷媒分配器25に接続されるように構成されている。この場合には、熱交換器121を凝縮器として使用する際に、室内ガス側冷媒分配器24から流出する冷媒流路数と、室内液側冷媒分配器25に流入する冷媒流路数が同一となる。
【0049】
よって、冷媒流路数を減少させるには、熱交換器121の伝熱管126の本数を減少させる必要があり、伝熱管126の本数を減少させると、管内伝熱面積の減少してしまう。これでは、熱交換器121の性能向上につながらない。
【0050】
また、凝縮過程の進行に伴って最下列L3から中間列L2、最上列L1と進むにしたがって、冷媒の密度が上昇し、伝熱管126内の冷媒流速が減少することにより、伝熱管126内の表面熱伝達率は悪化していくため、熱交換器121の効率を最大限に高めることができない。
【0051】
次に、R32を用いた空気調和機1における、暖房運転時に凝縮器として機能する室内熱交換器21の過冷却度とCOPとの関係について
図11に基づき説明する。R32の比較として、空気調和機1の冷媒にR410Aを使用した場合における室内熱交換器21の過冷却度とCOPとの関係も示している。R410AとR32を使用したいずれの場合においても、過冷却度に対してCOPが、最大となるピークが存在することが分かる。そして、R410AのCOPのピークP1よりも、R32の方が過冷却度の小さいときにCOPがピークP2を示す。
【0052】
この理由には、
図2のモリエル線図上の冷凍サイクルで示したように、R32の方が比エンタルピ差が大きくなることが関係している。
【0053】
凝縮器の出口の過冷却度の能力に対する寄与は、
図2のΔhsc_R410AとΔhsc_R32で示した比エンタルピ差の増分である。R32は元々の凝縮器での比エンタルピ差Δhc_R32が大きいため、過冷却分Δhsc_R32による能力増加率はR410Aのそれと比べて小さくなる傾向がある。
【0054】
また、過冷却度増加による能力増加に対して、凝縮圧力の増加により圧縮動力を増加させる必要があるので、COP低下が上回る点が存在する。よって、R32の方が過冷却度の小さい点で暖房時のCOPが最大となる。
【0055】
このことは、
図7に示した本実施形態の室内熱交換器21の構成において、R32を使用したことにより、特別な効果を発揮することができる。つまり、凝縮器の出口の過冷却度を小さくすることにより、室内熱交換器21において液冷媒が流れる最上列L1において隣り合う伝熱管26での温度差を小さくすることができる。つまり、隣接した伝熱管26同士の熱ロスを抑えることが可能となり、表面熱伝達率を向上させることができ、室内熱交換器21の性能を向上させることができる。
【0056】
また、
図11に示すように、R410Aを使用した時よりも、R32を使用したときの方が、より大きいCOPを得ることができる。
【0057】
図12および
図13は上記の効果を検証した結果であり、
図12には冷媒にR32を、
図13には冷媒にR410Aを使用した空気調和機において暖房運転時の過冷却度のCOPに対する影響を示したものである。
図12および
図13におけるC1、C3は、
図7に示した本実施形態の室内熱交換器21を備える空気調和機1にR32、R410Aを使用した場合における過冷却度のCOPに対する影響を示し、C2、C4は、
図10に示した室内熱交換器121を備える空気調和機にR32、R410Aを使用した場合における過冷却度のCOPに対する影響を示している。
【0058】
図12に示すように、C1のCOPが高くなるのは上記の効果のためである。一方、
図13に示すようにR410Aを本実施形態の空気調和機1に冷媒として用いた場合では、C3に示すように性能(COP)が低下する。
【0059】
図14および
図15は、冷媒にR32またはR410Aを使用した空気調和機において冷房運転時の冷媒循環量のCOPに対する影響を示したものである。
図14および
図15におけるC5、C7は、
図7に示した本実施形態の室内熱交換器21を備える空気調和機1にR32、R410Aを使用した場合における冷媒循環量のCOPに対する影響を示し、C6、C8は、
図10に示した室内熱交換器121を備える空気調和機にR32、R410Aを使用した場合における冷媒循環量のCOPに対する影響を示している。
【0060】
冷房運転時には過冷却域の熱ロス影響は無いため、冷媒流速による影響が支配的である。よって、R410AとR32の物性違いによって、本実施形態の室内熱交換器21を備える空気調和機1にR32、R410Aを使用したC5、C7のほうが特に冷房中間能力域でCOPが高くなることが分かる。
【0061】
これを詳細に説明する為に、蒸発時の質量流束と管内熱伝達率および圧力損失との関係を
図16に示している。なお、質量流束ならびに管内熱伝達率、圧力損失はそれぞれ、全長における平均値で示している。
【0062】
図16には、冷房中間能力時における運転状態を示しており、蒸発時の質量流束による管内熱伝達率および圧力損失をR32とR410Aの比較で示している。具体的には、R32とR410Aの双方において、
図10で示した従来の熱交換器121における伝熱管126の配列(以下、従来配列とする)と、
図7に示した本実施形態の熱交換器21における伝熱管26の配列(以下、本願配列とする)での運転状態をそれぞれ点で示している。
【0063】
R410Aで従来配列から本願配列に変更した場合には,圧力損失の増加が大きい割に熱伝達率の増加率が少ないが、R32では同一能力発生時の圧力損失が小さいため、本願配列へ変更した場合においても圧力損失の増加率が少なく、熱伝達率増加率が大きくなる。したがって、R32の冷房時の性能向上にはより有効であると言える。
【0064】
なお,
図17には凝縮時の質量流束による管内熱伝達率および圧力損失をR32とR410Aの比較で示している。凝縮時においても質量流束の変化による影響度は、絶対値が異なるが、蒸発時と同様であり、つまり、本願配列をR32に用いることは暖房時の性能向上により効果的であるといえる。
【0065】
また、上記のように、伝熱管26の外径Dは、4≦D≦6mmであるので、
図18に示されるように、通風抵抗の増加を抑えて伝熱管ピッチ(Pt,PL)を小さくできるため、空気調和機1の効率(APF:Annual Performance Factor 通年エネルギー効率)を向上することができる。つまり、APFのピークからの低下を3%以内に抑えることができる。
【0066】
また、上下において隣り合う伝熱管26の上下ピッチPtは、11≦Pt≦17mmである。この範囲であれば、
図19に示すようにフィンの熱伝導による上下伝熱管の熱ロス影響を減縮させつつ、空気調和機1の効率を向上させることができる。
【0067】
つまり、上下ピッチPtが小さいほどフィンの熱伝導によるロスが大きくなる。
図19には、上下ピッチがAPFに及ぼす影響を示しており、上下ピッチが11mm以下ではフィンを通した熱伝導影響が大きくなるためAPFが低下し、逆に上下ピッチが17mm以上では、伝熱管26の搭載本数の減少により管内伝熱面積およびフィン効率が減少し、APFの低下が生じる。したがって、APFのピークから3%以内の低下率を確保できる上下ピッチPtの範囲として11mm≦Pt≦17mmとすることが望ましい。
【0068】
また、伝熱管26の横ピッチPLは、7≦PL≦11mmであるので、
図20に示すように伝熱面積と通風抵抗のバランスを最適化して、空気調和機1の効率を向上させることができる。つまり、APFのピークからの低下を3%以内に抑えることができる。
【0069】
また、フィン27の板厚t[mm]、フィンピッチPf[mm]の関係は0.06≦t/Pf≦0.12であるので、
図21に示すように過冷却領域における熱ロスを低減効果を得つつ、空調調和機1のAPFを高くすることができる。つまり、フィン27の板厚が厚く、フィン枚数が多いほど、フィン27を通した熱伝導影響による隣接した伝熱管26への熱ロスの影響が出やすくなるが、R32を使用した場合はその熱ロス影響が緩和される。この影響を考慮した場合に、フィンピッチPfが一定のときにt/Pfが小さいと、フィン効率の低下による性能低下し、t/Pfが大きいと熱ロスの影響が大きくなる。よって、空調調和機1のAPFがピークから3%以内の性能にある範囲として0.06≦t/Pf≦0.12に設定することが望ましい。
【0070】
また、フィン27にはスリット27A、27Bを設けているので、表面熱伝達率が高くなり、フィン効率が比較的低くなることから、隣接した伝熱管26への熱伝導影響を抑えることができる。
【0071】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【0072】
例えば、室内熱交換器21の伝熱管26のパスによる効果は、暖房での過冷却域影響が大きいことおよび、伝熱管26の配列の自由度の関係から、天井埋込型室内機20で特に大きい。つまり、天上埋込型室内機においては、
図5、6に示されるように送風機(室内ファン22)の回りに室内熱交換器21が略一周取り囲む形で配置されており、室内熱交換器21の奥行き、高さに制限がある。したがって、伝熱管26の高密度配置による室内熱交換器21の性能の向上が有効であり、冷媒分配器24、25の搭載スペース小さくすることが出来る本実施形態の冷媒通路に加えて、伝熱管径、上下ピッチ、横ピッチを前記範囲とすることにより、R32の特性を最大限に生かした高性能な空気調和機1を実現することが出来る。
【0073】
ただし、他の室内形態や、室外機10に用いられた際にも効果が発揮でき、形態を制限するものではない。よって、伝熱管26のパスの構成は、他の室内形態や、室外機10の室外熱交換器13に用いても良い。
【0074】
また、フィン27にスリット27A、27Bを設けたが、ルーバーを設けても良い。また、上記の実施形態では、冷媒にR32を単独で使用した場合について説明したが、R32を70重量%以上を含む混合冷媒を使用しても同様の効果を得ることができる。
【0075】
また、室内熱交換器の伝熱管の列構成は、
図22に示した伝熱管26の列構成であっても良い。すなわち、
図22に示すように、中間列L2の2本の伝熱管26b1、26b2と、伝熱管26b1よりも上側に位置する最上列L1の伝熱管26c1とを接続するように構成しても良い。そして、2本の伝熱管26b1、26b2に隣接する2本の伝熱管26b3、26b4と、最上列L1の伝熱管26c3とは、上記の実施形態と同様に接続されている。ここで、2本の伝熱管26b1、26b2と伝熱管26c1とを接続する三又ベント128は、
図23に示すように、最上列L1の伝熱管26c1と接続される位置を、中間列L2の2本の伝熱管26bと接続される位置よりも上側になるように構成されている。また、三又ベント128は、冷房運手時には分岐する部分で冷媒が衝突して分岐し、気液二相流がほぼ等分配になるように構成されている。
【0076】
そして、2本の伝熱管26b1、26b2が結合した伝熱管(第一の結合管)26c1、26c2は、伝熱管26c1が一端部21A(
図5)から他端部21B(
図5)まで延び、伝熱管26c1の下側を伝熱管26c2が他端部21Bから一端部21Aまで延びるように配置されている。また、2本の伝熱管26b3、26b4が結合した伝熱管(第2の結合管)26c3、26c4は、伝熱管26c3が一端部21Aから他端部21Bまで延び、伝熱管26c3の上側を伝熱管26c4が他端部21Bから一端部21Aまで延びるように配置されている。よって、他端部21Bから一端部21Aへ延びる伝熱管26b2および伝熱管26b4は、互いに隣り合うように配置されている。
【0077】
従って、
図22に示した伝熱管26の列構成では、他端部21Bから一端部21Aへ延びる伝熱管26b2および伝熱管26b4は、互いに隣り合うように配置されているので、過冷却された冷媒が上下に連続することから近い温度同士では、熱ロスが生じにくくなる。これにより、熱ロスを更に半減する効果があり、空気調和機1のAPFをよりいっそう高めることができる。
【0078】
また、室内熱交換器の伝熱管の列構成は、
図24に示した伝熱管26の列構成であっても良い。
図24に示すように、中間列L2の複数組の2本の伝熱管26bがそれぞれ結合した伝熱管26c5、26c6において、一端部21A(
図5)から他端部21B(
図5)まで延びる伝熱管26c5を上側に集めて配置し、他端部21Bから一端部21Aまで延びる伝熱管26c6を下側に集めて配置している。換言すれば、一端部21Aから他端部21Bまで延びる伝熱管26c5を互いに隣り合うように配置し、他端部21Bから一端部21Aまで延びる伝熱管26c6を互いに隣り合うように配置している。
【0079】
本構成によれば、
図22で示した伝熱管26の列構成に対して更に、凝縮器として作用する際の過冷却域での上下方向に隣の伝熱管26同士の熱ロスを減少することが可能であり、更に高効率な室内熱交換器21を提供することができ、空気調和機1のAPFを高めることが可能となる。
【0080】
上記の実施形態では、室内熱交換器の伝熱管の列構成を、3列で構成した場合について、説明を行なってきたが、
図25に示すように、気流方向Fの最上列(第1列)L1と中間列(第2列)L2の伝熱管26b、26cのみからなる2列の構成であっても、凝縮器として作用する場合の過冷却域熱ロス影響低減および、液側での流速増加による熱伝達率向上という、本実施形態の効果を発揮することができる。すなわち、最下列L3をなくして、最上列L1および中間列L2のみの列構成であっても良い。この場合、室内ガス側冷媒分配器24は、室内熱交換器21の他端側21Aに設けられることとなる。また、2列では比較的能力の小さい空気調和機で、性能とコストのバランスを最適化することができる。
【0081】
更に、
図26に示すように、室内熱交換器の伝熱管の列構成を4列で構成しても良い。すなわち、最下列L3よりも気流方向Fの下流側に追加列L4を設けても良い。そして、追加列L4を構成する伝熱管26dは、それぞれ室内液側冷媒分配器25と接続され、追加列L4を室内熱交換器21の他端部21Bから一端部21Aまで延び、一端部21Aにおいて、最下列L3を構成する伝熱管26aに接続されている。かかる構成によっても、凝縮器として作用する場合の過冷却域熱ロス影響低減および、液側での流速増加による熱伝達率向上という、本実施形態の効果を発揮することができる。なお、伝熱管26が4列以上の構成においては、伝熱面積を増加できることから、更なる性能向上を実現することができる。