特許第6180347号(P6180347)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6180347光ディスク再生装置およびフォーカス引込制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180347
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】光ディスク再生装置およびフォーカス引込制御方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/085 20060101AFI20170807BHJP
   G11B 7/09 20060101ALI20170807BHJP
   G11B 7/005 20060101ALI20170807BHJP
   G11B 20/10 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G11B7/085 C
   G11B7/09 B
   G11B7/005 C
   G11B20/10 321Z
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-47352(P2014-47352)
(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2015-170382(P2015-170382A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504113008
【氏名又は名称】東芝アルパイン・オートモティブテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩道
(72)【発明者】
【氏名】工藤 健二
【審査官】 川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−272953(JP,A)
【文献】 特開平11−296994(JP,A)
【文献】 特開2007−242146(JP,A)
【文献】 特開2004−185741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/08 − 7/22
G11B 7/00 − 7/013
G11B 20/10 − 20/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを回転する回転手段と、
前記ディスクに記録されたデータを光学的に読取る読取り手段と、
前記読取り手段で読取られたデータを一時的に記憶するバッファ手段と、
前記バッファ手段から出力されたデータを再生する再生手段と、
前記バッファ手段に記憶されたデータ量を検出する検出手段と、
前記読取り手段の位置をサーボ制御するサーボ制御手段とを有し、
前記サーボ制御手段は、フォーカスサーボが解除されたとき、前記検出手段により検出されたデータ量に基づきフォーカス引込み処理の動作モードを決定し、
前記動作モードは、ディスクの回転速度、フォーカスサーチ振幅、フォーカスサーチ速度または時間、フォーカス引込みゲインの少なくとも1つにより設定される、光ディスク再生装置。
【請求項2】
前記サーボ制御手段は、予め用意された複数の動作モードの中から一つの動作モードを選択し、選択された動作モードに基づきフォーカス引込み処理を実行する、請求項1に記載の光ディスク再生装置。
【請求項3】
前記サーボ制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づき前記バッファ手段のデータ残量が複数段階のいずれに該当するかを判別し、前記サーボ制御手段は、判別された段階に応じた動作モードに従いフォーカス引込み処理を実行する、請求項1または2に記載の光ディスク再生装置。
【請求項4】
光ディスク再生装置はさらに、ディスク再生時の面振れ量を検出する面振れ量検出手段を含み、前記サーボ制御手段は、前記面振れ量と前記バッファ手段のデータ量とに基づきフォーカス再引込処理時のディスク回転速度を設定する、請求項1ないしいずれか1つに記載の光ディスク再生装置。
【請求項5】
前記サーボ制御手段は、前記バッファ手段のデータ量が第1のしきい値より大きいか否かを判定し、第1のしきい値よりも大きいとき、第1のフォーカス引込みゲインを有する第1の動作モードを選択し、前記データ量が第1のしきい値よりも小さいとき、第2のフォーカス引込みゲインを有する第2の動作モードを選択し、第1のフォーカス引込みゲインは、第2のフォーカス引込みゲインよりも小さい、請求項1ないしいずれか1つに記載の光ディスク再生装置。
【請求項6】
前記サーボ制御手段は、前記バッファ手段のデータ量が第1のしきい値より大きいか否かを判定し、第1のしきい値よりも大きいとき、第1のフォーカスサーチ振幅を有する第1の動作モードを選択し、前記データ量が第1のしきい値よりも小さいとき、第2のフォーカスサーチ振幅を有する第2の動作モードを選択し、第1のフォーカスサーチ振幅は、第2のフォーカスサーチ振幅よりも小さい、請求項1ないしいずれか1つに記載の光ディスク再生装置。
【請求項7】
前記サーボ制御手段は、前記バッファ手段のデータ量が第1のしきい値より大きいか否かを判定し、第1のしきい値よりも大きいとき、第1のフォーカスサーチ速度を有する第1の動作モードを選択し、前記データ量が第1のしきい値よりも小さいとき、第2のフォーカスサーチ速度を有する第2の動作モードを選択し、第1のフォーカスサーチ速度は、第2のフォーカスサーチ速度よりも速い、請求項1ないしいずれか1つに記載の光ディスク再生装置。
【請求項8】
前記サーボ制御手段は、前記バッファ手段のデータ量が第1のしきい値より大きいか否かを判定し、第1のしきい値よりも大きいとき、前記回転手段が第1の回転速度を有する第1の動作モードを選択し、前記データ量が第1のしきい値よりも小さいとき、第2の回転速度を有する第2の動作モードを選択し、第1の回転速度は、第2の回転速度よりも高速である、請求項1ないしいずれか1つに記載の光ディスク再生装置。
【請求項9】
光ディスク再生装置はさらに、ディスク再生時の面振れ量を検出する面振れ量検出手段を含み、前記サーボ制御手段は、前記面振れ量が一定以上であるとき、前記第1の回転速度よりも低い第3の回転速度に設定する、請求項に記載の光ディスク再生装置。
【請求項10】
前記回転手段の回転速度は前記バッファ手段のデータ量が少ないほど小さく、前記フォーカスサーチ速度は前記バッファ手段のデータ量が少ないほど小さく、前記フォーカスサーチ振幅は前記バッファ手段のデータ量が少ないほど大きく、前記フォーカス引込みゲインは前記バッファ手段のデータ量が少ないほど大きくなるように動作モードが設定される、請求項に記載の光ディスク装置。
【請求項11】
前記回転手段の回転速度は面振れ量が大きいほど低速になるように動作モードが設定される、請求項1ないし10いずれか1つに記載の光ディスク再生装置。
【請求項12】
前記サーボ制御手段はさらに、フォーカスサーボ引込み処理が成功したか否かを判定する判定手段を含み、前記判定手段により成功しないと判定されたとき前記バッファ手段のデータ量に応じた処理内容が設定されたリカバリ処理を実行する、請求項1ないし11いずれか1つに記載の光ディスク再生装置。
【請求項13】
前記リカバリ処理は、前記バッファ手段のデータ量が一定値以下であるとき、フォーカス引込みゲインを増加する処理内容を有する、請求項12に記載の光ディスク再生装置。
【請求項14】
前記リカバリ処理はさらに、前記回転手段の回転速度を高速から低速に減少させる処理内容を含む、請求項13に記載の光ディスク再生装置。
【請求項15】
前記リカバリ処理は、前記バッファ手段のデータ量が一定値を超えるとき、前記回転手段の回転速度をリトライ回数に応じて段階的に減少させる、請求項12ないし14いずれか1つに記載の光ディスク再生装置。
【請求項16】
前記リカバリ処理はさらに、フォーカス引込みゲインをリトライ回数に応じて段階的に増加させる、請求項15に記載の光ディスク再生装置。
【請求項17】
ディスクから通常再生速度よりも速い速度でデータを読出し、読み出したデータをバッファに記憶し、当該バッファから前記通常再生速度でデータを読み出して再生を行う光ディスク再生装置のフォーカス引込み制御方法であって、
フォーカスサーボが解除されたことが検出されたとき、前記バッファに記憶されたデータ量を判定し、
前記判定されたデータ量に基づき、フォーカス引込み処理の動作モードを決定し、
前記動作モードは、ディスクの回転速度、フォーカスサーチ振幅、フォーカスサーチ速度または時間、フォーカス引込みゲインの少なくとも1つにより設定される、フォーカス引込み制御方法。
【請求項18】
フォーカス引込み制御方法はさらに、ディスクの面振れ量を検出することを含み、前記回転速度は、前記面振れ量に基づき設定される、請求項17に記載のフォーカス引込み制御方法。
【請求項19】
前記ディスクの回転速度は前記バッファのデータ量が少ないほど小さく、前記フォーカスサーチ速度は前記バッファのデータ量が少ないほど小さく、前記フォーカスサーチ振幅は前記バッファのデータ量が少ないほど大きく、前記フォーカス引込みゲインは前記バッファのデータ量が少ないほど大きくなるように動作モードが設定される、請求項17または18に記載のフォーカス引込み制御方法。
【請求項20】
フォーカス引込み制御方法はさらに、フォーカスサーボ引込み処理が成功したか否かを判定し、成功しないと判定されたとき前記バッファのデータ量に応じた処理内容が設定されたリカバリ処理を実行する、請求項17ないし19いずれか1つに記載のフォーカス引込み制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク状の記憶媒体に記憶されたデータを光学的に読取りこれを再生する機能を備えた光ディスク再生装置に関し、特に、フォーカスが外れたときのフォーカス引込み処理に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク再生装置は、CD、DVD、ブルーディスク等の記録媒体(以下、光ディスクという)に渦巻状に記録されたデータを光学的に読取るための光学ピックアップを備えている。光学ピックアップは、光ディスクの記録面に光を照射する発光素子、記録面で反射された光を集光する対物レンズ、対物レンズで集光された光を受光する受光素子等を備えている。記録面からデータを正確に読取るため、光学ピックアップは、トラッキングサーボおよびフォーカスサーボにより位置制御されるのが通常である。トラッキングサーボは、トラッキングエラー信号に基づき光学ピックアップの半径方向の位置を制御し、フォーカスサーボは、フォーカスエラー信号に基づき光学ピックアップの光ディスクとの距離を制御する。
【0003】
フォーカスサーボには、一般に、非点収差法などが用いられる。非点収差法は、光ディスクの反射面で反射された光を4分割された受光素子により受光し、その対角の受光素子の出力電圧の差分に基づきフォーカスを制御している。出力電圧の差分は、図9に示すようなS字特性のフォーカスエラー信号FEとなり、対物レンズと光ディスクの反射面との距離が近ければ正側にピーク値が生じ、距離が遠ければ負側にピーク値が生じ、焦点が一致していればゼロとなる。フォーカスエラー信号FEの正側と負側のピークの間FSがフォーカスサーボがオンする期間、すなわち、光学ピックアップの合焦点位置の追従を行うことができる期間である。外乱等によりフォーカスサーボ期間FSを外れると、フォーカス引込み処理が実行される。
【0004】
フォーカス引込み処理を実行するとき、光学ピックアップを一気に光ディスクへ接近させると、光学ピックアップが光ディスクの記録面にぶつかり、記録面を傷つけてしまうおそれがある。そこで、光学ピックアップの移動距離が徐々に大きくなるような制御が行われている。その一例を図10に示す。同図に示すように、光学ピックアップを移動させるためのフォーカスサーチ信号を三角波または鋸波とし、その振幅に応じて光学ピックアップを移動させ、合焦点可能な位置、つまりフォーカスサーボ可能な位置がシークされる。
【0005】
また、光ディスクには、反りがあるため、光ディスクを回転させると面振れが生じる。光ディスクを高速回転させたとき、面振れ量が小さければフォーカス引込み処理が成功し易いが、面振れ量が大きくなると光ディスク面の振れと対物レンズの相対速度が速くなり、フォーカス引込み処理が失敗する可能性がある。特許文献1は、フォーカス引込み処理が失敗したとき、リカバリ処理時に、メモリに記憶された光ディスクの回転速度、対物レンズの移動速度および移動量を用いて光学ピックアップの移動を制御させ、光ディスクの面振れ量の大小にかかわらず早期のフォーカス引込み処理を可能にしている。
【0006】
光ディスクの回転数制御を行うとき、光ディスクに急激なトルクが加わると光ディスクに変形が生じ面振れ量が増加し、フォーカスサーボが許容する面振れ量を超えてしまうことがある。特許文献2は、こうした不具合を解消するために、ディスクの面振れ量を検出し、面振れ量に対する利得を増大させた制御信号によりシーク動作を行う光ディスク装置を開示している。特許文献3は、面振れの周期に同期する再生信号のジッタ量が閾値を超えたとき、面振れの光ディスクを再生していると判断し、光学ピックアップのサーボ系のゲインを増加させる光ディスク装置を開示している。特許文献4は、光ディスクから読み取った情報を格納する情報格納手段を含み、情報格納手段に格納された情報を監視し、情報が一定以上または一定時間以上である場合にのみフォーカスオフセット調整を行うようにすることで音声や映像の途切れを防止する光ディスク再生装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−185741号公報
【特許文献2】特開2000−20989号公報
【特許文献3】特開2004−280990号公報
【特許文献4】特開2000−163778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、従来の光ディスク再生装置は、振動や面振れ等の外乱によりフォーカス外れが発生したとき、フォーカス引込み処理を実行し、フォーカス引込み処理が成功すればフォーカスサーボによる制御に移行し、フォーカス引込み処理が失敗すればリカバリ処理を実行しフォーカス引込み処理が繰り返される。また、特許文献4に示すように、光ディスクから高速で読み出したデータをバッファメモリ等に蓄積し、バッファメモリから読み出したデータを再生することで、フォーカス外れが発生したときに、音切れや映像飛びのような再生切れの発生を防止している。
【0009】
しかしながら、従来の光ディスク再生装置のフォーカス引込み処理には、次のような課題がある。フォーカス引込み処理は、ディスクの回転速度、面振れ量、フォーカスサーボのゲイン等などによって成功率が変わるが、従来の光ディスク再生装置は、一定の条件(回転速度/ゲイン等)で再引き込み処理を行っていたため、場合によっては、フォーカス引込み処理の失敗の回数が多くなり、つまり、リトライ(リカバリ処理)の回数が多くなってしまう。フォーカス再引込み処理のための時間が、バッファメモリに蓄積されたデータによる再生可能な時間を超えると、その間、音切れや映像飛びが発生してしまう。
【0010】
他方、フォーカス引込み処理の際に、フォーカスサーチ速度やディスクの回転速度を低速とし、フォーカスサーボのゲインを増加させれば、1回のフォーカス引込み処理で成功する確率は高くなるが、フォーカスサーチのゲインを増加させることおよび、スピンドルモータの加減速によりディスクの回転数を変更させることは、消費電力を増加させることになり、必ずしも好ましい方法ではない。
【0011】
本発明は、上記のような従来の課題を解決するものであり、フォーカス外れが発生したときに、音切れや映像飛びの発生を最小限に抑制しつつ消費電力の低減を図ることができる光ディスク再生装置およびフォーカス引込み制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る光ディスク再生装置は、ディスクを回転する回転手段と、前記ディスクに記録されたデータを光学的に読取る読取り手段と、前記読取り手段で読取られたデータを一時的に記憶するバッファ手段と、前記バッファ手段から出力されたデータを再生する再生手段と、前記バッファ手段に記憶されたデータ量を検出する検出手段と、前記読取り手段の位置をサーボ制御するサーボ制御手段とを有し、前記サーボ制御手段は、フォーカスサーボが解除されたとき、前記検出手段により検出されたデータ量に基づきフォーカス引込み処理の動作モードを決定する。
【0013】
好ましくは前記サーボ制御手段は、予め用意された複数の動作モードの中から一つの動作モードを選択し、選択された動作モードに基づきフォーカス引込み処理を実行する。好ましくは前記サーボ制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づき前記バッファ手段のデータ残量が複数段階のいずれに該当するかを判別し、前記サーボ制御手段は、判別された段階に応じた動作モードに従いフォーカス引込み処理を実行する。好ましくは前記動作モードは、ディスクの回転速度、フォーカスサーチ振幅、フォーカスサーチ速度または時間、フォーカス引込みゲインの少なくとも1つにより設定される。好ましくは光ディスク再生装置はさらに、ディスク再生時の面振れ量を検出する面振れ量検出手段を含み、前記サーボ制御手段は、前記面振れ量と前記バッファ手段のデータ量とに基づきフォーカス再引込処理時のディスク回転速度を設定する。好ましくは前記サーボ制御手段は、前記バッファ手段のデータ量が第1のしきい値より大きいか否かを判定し、第1のしきい値よりも大きいとき、第1のフォーカス引込みゲインを有する第1の動作モードを選択し、前記データ量が第1のしきい値よりも小さいとき、第2のフォーカス引込みゲインを有する第2の動作モードを選択し、第1のフォーカス引込みゲインは、第2のフォーカス引込みゲインよりも小さい。好ましくは前記サーボ制御手段は、前記バッファ手段のデータ量が第1のしきい値より大きいか否かを判定し、第1のしきい値よりも大きいとき、第1のフォーカスサーチ振幅を有する第1の動作モードを選択し、前記データ量が第1のしきい値よりも小さいとき、第2のフォーカスサーチ振幅を有する第2の動作モードを選択し、第1のフォーカスサーチ振幅は、第2のフォーカスサーチ振幅よりも小さい。好ましくは前記サーボ制御手段は、前記バッファ手段のデータ量が第1のしきい値より大きいか否かを判定し、第1のしきい値よりも大きいとき、第1のフォーカスサーチ速度を有する第1の動作モードを選択し、前記データ量が第1のしきい値よりも小さいとき、第2のフォーカスサーチ速度を有する第2の動作モードを選択し、第1のフォーカスサーチ速度は、第2のフォーカスサーチ速度よりも速い。好ましくは前記サーボ制御手段は、前記バッファ手段のデータ量が第1のしきい値より大きいか否かを判定し、第1のしきい値よりも大きいとき、前記回転手段が第1の回転速度を有する第1の動作モードを選択し、前記データ量が第1のしきい値よりも小さいとき、第2の回転速度を有する第2の動作モードを選択し、第1の回転速度は、第2の回転速度よりも高速である。好ましくは光ディスク再生装置はさらに、ディスク再生時の面振れ量を検出する面振れ量検出手段を含み、前記サーボ制御手段は、前記面振れ量が一定以上であるとき、前記第1の回転速度よりも低い第3の回転速度に設定する。好ましくは前記回転手段の回転速度は前記バッファ手段のデータ量が少ないほど小さく、前記フォーカスサーチ速度は前記バッファのデータ量が少ないほど小さく、前記フォーカスサーチ振幅は前記バッファのデータ量が少ないほど大きく、前記フォーカス引込みゲインは前記バッファのデータ量が少ないほど大きくなるように動作モードが設定される。好ましくは前記回転手段の回転速度は面振れ量が大きいほど低速になるように動作モードが設定される。好ましくは前記サーボ制御手段はさらに、フォーカスサーボ引込み処理が成功したか否かを判定する判定手段を含み、前記判定手段により成功しないと判定されたとき前記バッファ手段のデータ量に応じた処理内容が設定されたリカバリ処理を実行する。好ましくは前記リカバリ処理は、前記バッファ手段のデータ量が一定値以下であるとき、フォーカス引込みゲインを増加する処理内容を有する。好ましくは前記リカバリ処理はさらに、前記回転手段の回転速度を高速から低速に減少させる処理内容を含む。好ましくは前記リカバリ処理は、前記バッファ手段のデータ量が一定値を超えるとき、前記回転手段の回転速度をリトライ回数に応じて段階的に減少させる。好ましくは前記リカバリ処理はさらに、フォーカス引込みゲインをリトライ回数に応じて段階的に増加させる。
【0014】
本発明に係るフォーカス引込み制御方法は、ディスクから通常再生速度よりも速い速度でデータを読出し、読み出したデータをバッファに記憶し、当該バッファから前記通常再生速度でデータを読み出して再生を行う光ディスク再生装置で行われるものであって、フォーカスサーボが解除されたことが検出されたとき、前記バッファに記憶されたデータ量を判定し、前記判定されたデータ量に基づき、フォーカス引込み処理の動作モードを決定し、前記動作モードは、ディスクの回転速度、フォーカスサーチ振幅、フォーカスサーチ速度または時間、フォーカス引込みゲインの少なくとも1つにより設定される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バッファに記憶されたデータ量に応じてフォーカス引込み処理の動作モードを決定するようにしたので、音切れや映像飛びの発生を抑制しつつ消費電力の抑制を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例に係る光ディスク再生装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施例に係る光ディスク再生装置のフォーカス引込み処理の動作を説明するフローチャートである。
図3】本発明の第1の実施例によるバッファのデータ残量に応じた動作モードの一例を説明する図である。
図4】フォーカス引込みゲインと消費電力との関係を説明する図である。
図5】フォーカスオープンループ特性の一例を示すグラフである。
図6】本発明の第2の実施例による面振れ量と光ディスクの回転速度との関係を説明する図である。
図6A】本発明の第1および第2の実施例におけるフォーカス引込み処理の動作モードの電力消費例を示す図である。
図7】本発明の第3の実施例によるフォーカス引込み処理の動作モードを説明する図である。
図8図7に示すリカバリ処理の詳細を説明する図である。
図9】光ディスク再生装置のフォーカスエラー信号のS字特性を示す図である。
図10】従来の光ディスク再生装置のフォーカスサーチ信号の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る光ディスク再生装置は、好ましくは、車両などに搭載されるオーディオシステムやナビゲーションシステムにおいて実施される。また、光ディスク再生装置において再生される記録媒体は、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD、ブルーレイディスク等の光ディスクであって、このような光ディスクは、音声データ、映像データその他の必要なデータ等を記憶する。記録されるデータは、所定のフォーマットに圧縮されるものであってもよい。以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の実施例に係る光ディスク再生装置の概略構成を示すブロック図である。光ディスク再生装置1は、ターンテーブル等に搭載された光ディスク10を回転するスピンドルモータ12、対物レンズ14や図示しない発光素子および受光素子を含み、光ディスクの記録面に光を照射し、記録面からの反射光を電気信号に変換する光学ピックアップ16、光学ピックアップ16からの電気信号を受け取るデータ読取部18、バッファ20および再生部22を含む。
【0019】
データ読取部18は、再生のためのRF信号を生成するアンプ、生成されたRF信号をディジタル信号に変換するアナログ・ディジタル変換器を含み、さらにサーボ制御等に必要なフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を生成する。
【0020】
バッファ20は、データ読取部18から出力された読取データを順次蓄積する。バッファ20は、例えば、ファーストイン・ファーストアウトでデータの読み書きが可能なFIFOメモリから構成される。データ読取部18のデータの読取速度は、光ディスク10の回転速度に依存するが、データ読取部18の読取速度が再生部22の通常再生速度よりも速いとき、すなわち、データ読取部18からバッファ20に供給される単位時間当たりのデータ量がバッファ20から再生部22へ提供される単位時間当たりのデータ量よりも大きいとき、バッファ20には、読取データが蓄積される。記憶容量の大きいバッファ20を用いれば、それだけ多くの読取データを蓄積することが可能となり、光学ピックアップ16による読取が一時的に中断しても、バッファ20に蓄積された読取データの再生が可能となり、音切れや映像飛びの発生が抑制される。
【0021】
再生部22は、バッファ20から出力された読取データを受け取り、オーディオデータおよびビデオデータの分離を行い、さらに分離されたオーディオデータおよびビデオデータのデコード等を行う。再生されたデータは、図示しない音声出力部や表示部へ提供される。
【0022】
光ディスク再生装置1はさらに、バッファ20に記憶されたデータ量を検出する検出部24、データ読取部18からのフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を受け取り、光学ピックアップ16のトラッキングサーボおよびフォーカスサーボを行うサーボ回路26、サーボ回路26からの信号に基づきトラッキング駆動信号やフォーカス駆動信号を生成する駆動回路28、駆動回路28からのトラッキング駆動信号やフォーカス駆動信号に基づき光学ピックアップ16を駆動するアクチュエータ30、検出部24からの検出結果やトラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号等を受け取り、サーボ回路26やその他を制御するコントローラ32、コントローラ32からの制御に基づきスピンドルモータ12の回転速度を設定するモータ駆動部34、コントローラ32が必要とする情報やプログラム等を記憶するメモリ36を備えている。
【0023】
検出部24は、バッファ20に蓄積されたデータ残量あるいは空き容量を監視し、この結果をコントローラ32へ提供する。好ましくは、検出部24は、常時、データ残量を検出し、これをコントローラ32へ提供する。コントローラ32は、再生中であれば、バッファ20のデータ残量がオーバーフローしないように、あるいは一定のデータ残量が保たれるように、バッファ20のデータ残量に基づき光ディスク10の回転速度を制御することができる。また、後述するフォーカス引込み処理中であれば、コントローラ32は、バッファ20のデータ残量に応じたフォーカス引込み処理および/またはリカバリ処理の動作モードを実行させる。
【0024】
サーボ回路26は、サーボ制御がオン状態のとき、トラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号に基づきエラーがゼロとなるように駆動回路28を制御し、駆動回路28は、それに従いトラッキング駆動信号およびフォーカス駆動信号を生成し、これをアクチュエータ30へ出力する。一方、サーボ制御が外れたとき、サーボ回路26は、サーボ制御が可能となるようなサーボ引込み処理を実行する。一つの実施態様では、コントローラ32は、トラッキングエラー信号および/またはフォーカスエラー信号に基づきサーボ制御が解除されたか否かを判定し、外れたと判定された場合には、コントローラ32の制御によりサーボ回路30がサーボ引込み処理を行う。他の実施態様では、サーボ回路32自身によってサーボが解除されか否かを判定し、サーボ引込み処理を実行するようにしてもよい。さらに好ましい態様では、コントローラ32は、データ読取部18で生成されたフォーカスエラー信号の電圧またはRF信号の電圧等に基づき光ディスクの面振れ量を検出することが可能である。コントローラ32は、面振れ量に応じてサーボ引込み処理の動作モードを決定することができる。
【0025】
本実施例の光ディスク再生装置1は、フォーカスサーボが外れたとき、バッファ20のデータ残量に応じて、音切れや映像飛びの発生を最小限に抑制しつつ消費電力の低減を図るフォーカス引込み処理を行う。以下、本発明の実施例によるフォーカス引込み処理の動作について説明する。
【0026】
図2は、データ再生中にフォーカス外れが発生したときのフォーカス引込み処理を説明するフローチャートである。光ディスク10が所定の回転速度で回転され、光学ピックアップ16を介して得られた電気信号がデータ読取部18に供給され、データの読取が行われる(S100)。読取られたデータは、バッファ20に蓄積されつつ(S102)、再生部22へ出力され、再生部22によって再生されたデータは、音声出力および/または画像出力される(S104)。
【0027】
コントローラ32は、フォーカスエラー信号を監視し、フォーカス外れが生じたか否かを判定する(S106)。フォーカスサーボは、図8に示すように、フォーカスエラー信号が範囲FS内のとき実施可能(オン状態)であるが、範囲FSを外れたとき、フォーカスサーボが外れたと判定される。フォーカス外れが発生していなければ、サーボ回路26によるフォーカスサーボが行われ、ステップS100ないしS104が繰り返される。
【0028】
コントローラ32は、フォーカス外れが生じたと判定すると、フォーカス引込み処理に移行する。先ず、コントローラ32は、検出部24からの検出結果に基づきバッファ20に蓄積されているデータ残量を判定する(S108)。1つの好ましい例では、データ残量を1つまたは複数のしきい値と比較し、データ残量のレベルを判定する。例えば、1つのしきい値と比較すれば、データ残量がしきい値よりも大きいか否か2つのレベルが判定される。N個(Nは、1以上の整数)しきい値と比較すれば、データ残量がN+1のレベルのどのレベルにあるかが判定される。データ残量の判定は、バッファ20に蓄積されたデータの絶対量を判定するものであってもよいし、バッファ20の全体の記憶容量に占める割合を判定するものであってもよい。
【0029】
コントローラ32は、バッファ20のデータ残量に応じて、フォーカス引込み処理の動作モードを決定する。上記したように、データ残量をN+1のレベルで判定した場合、フォーカス引込み処理には、N+1の動作モードが存在し得る。1つの好ましい例では、予めN+1の動作モードを用意しておき、その中から最適な動作モードを選択することができる。図2のフローチャートでは、説明を容易にするため、データ残量が大、小の2つのレベルで判定した例を示している。
【0030】
コントローラ32は、データ残量が一定以上であると判定した場合、フォーカス引込み処理時の消費電力が抑制される動作モードを選択する(S112)。この動作モードの詳細は後述するが、バッファ20に一定以上のデータ残量が蓄積されている場合には、フォーカス引込み処理に要する時間の制約は少なく、フォーカス引込み処理の成功率が必ずしも高くなくても良い。つまり、1回のフォーカス引込み処理で成功しなくてもリトライが可能である。それ故、データ残量が一定以上であれば、成功率よりも、できるだけ消費電力を抑制する動作モードが優先される。
【0031】
他方、データ残量が一定未満であると判定された場合、コントローラ32は、フォーカス引込み処理の成功率が高い動作モードを選択する(S114)。この動作モードの詳細は後述するが、バッファ20に一定未満のデータ残量しか蓄積されていない場合には、音切れや映像飛びの発生を抑制するためにフォーカス引込み処理を短時間で終了させることが望まれる。それ故、消費電力の抑制よりも、成功率が高くなるような動作モードが優先される。
【0032】
コントローラ32は、選択された動作モードに従いサーボ回路26およびモータ駆動部34を制御し、アクチュエータ30からのフォーカスサーチ信号に基づき光学ピックアップが移動され、フォーカス引込み処理が実行される(S116)。ここで、フォーカス引込み処理とは、アクチュエータ30で光学ピックアップ16を移動させて、光ディスク10の合焦位置を通過したときに検出されるフォーカスエラー信号によりフォーカスサーボをオンさせ、フォーカス合焦させる処理である。
【0033】
フォーカス引込み処理が成功したとき(S118)、サーボ回路26によるフォーカスサーボが再開される。フォーカス引込み処理が失敗した場合には、リカバリ処理が行われる(S120)。1つの好ましい例では、リカバリ処理において、再びバッファ20のデータ残量のレベルが判定され、当該レベルに応じた動作モードが選択され、その動作モードに従いリカバリ処理が実行される。これについては後述する。また、他の例では、前回選択された動作モードと同じ動作モードに従いリカバリ処理が実行される。リカバリ処理は、フォーカス合焦が見つかるまで繰り返される。
【0034】
次に、フォーカス引込み処理の動作モードについて図3を参照して説明する。図3に示す例では、しきい値の数N=3のときの例であり、バッファ20のデータ残量Dが4つのレベル、すなわち、100%≧D>75%、75%≧D>50%、50%≧D>25%、25%≧D≧0%のレベルに判定される。データ残量Dのレベルに応じて、引込み処理の成功率が70%、80%、90%、100%となるような動作モードが設定される。本実施例では、動作モードは、4つのファクター、すなわち、ディスクの回転速度、フォーカスサーチ速度(またはフォーカスサーチ時間)Fs、フォーカスサーチ振幅Fa、フォーカス引込みゲインから設定される。
【0035】
データ残量Dが75%よりも大であるとき、成功率が70%に設定される。ディスクの回転速度は高速に設定されるが、低速回転への減速が必要とされないので、回転速度を低速に設定するときと比較して消費電力が抑制される。また、フォーカスサーチ信号のフォーカスサーチ速度Fsが速く、フォーカスサーチ振幅Faが最小に設定される。フォーカスサーチ信号は、アクチュエータ30が光学ピックアップ16を移動させる信号であり、フォーカスサーチ速度(または時間)Fsが速く、振幅Faが最小であれば、光学ピックアップ16の移動時間および移動量も制限されるので、アクチュエータ30による消費電力が抑制される。
【0036】
さらに、フォーカス引込みゲインが最小に設定される。図4に、フォーカス引込みゲインと電力消費の関係を示す。サーボ回路26は、その内部にフォーカスゲインを設定するためのゲイン設定部26Aを備える。ここでは、ゲイン設定部26Aが入力されるフォーカスエラー信号に対し、ゲイン=等倍、ゲイン=2倍のときの波形を模式的に表している。ゲインが等倍であれば、ゲイン設定部26Aは、入力されたフォーカスエラー信号を等倍のまま駆動回路28へ出力し、駆動回路28は、等倍の駆動出力をアクチュエータ30に出力する。ゲインが2倍であれば、ゲイン設定部26Aは、入力されたフォーカスエラー信号の2倍の振幅をもつ信号を駆動回路28へ出力し、駆動回路28は、ゲインがアップされた駆動信号をアクチュエータ30へ出力する。従って、フォーカス引込み処理時のゲインを増加させると、アクチュエータ30による駆動量が増加するため、それに応じて消費電力も増加する。
【0037】
データ残量Dが75%以下のとき、およびデータ残量Dが50%以下のときには、光ディスクの回転速度が幾分減速され、フォーカスサーチ速度Fsがそのまま維持され、フォーカスサーチ振幅Faは中間に設定され、フォーカス引込みゲインが中間に設定される。その結果、成功率が80%、および90%になり得る。
【0038】
データ残量が25%以下の場合、光ディスクの回転速度が低速に設定され、フォーカスサーチ速度Fsが遅く、フォーカスサーチ振幅Faが最大に設定され、フォーカス引込みゲインが増加するように設定される。それ故、成功率が100%となり得る。回転数を減速させることで、スピンドルモータ12の加速/停止のための駆動電流が増加し、消費電力が増加する。また、フォーカスサーチ振幅Faおよびフォーカス引込みゲインの増加は、アクチュエータ30による駆動量が増加するので消費電力が増加する。その代わり、フォーカスサーチ速度Fsを遅くすることで、フォーカスが引込み易くなる。
【0039】
図5に、フォーカスオープン特性を示す。これは、偏差(加速度)に追従するために必要なゲインを表したものである。同図に示すように、フォーカスサーボ系を+6dBすることにより、通常に対し、2倍の加速度を抑圧することができる。同一加速度の場合は、目標値の残差を1/2にすることが出来る。すなわち、フォーカス引込みゲインを増加させることは抑圧力増加となり、フォーカスが引き込み易くなる。
【0040】
なお、ディスクの回転速度、フォーカスサーチ速度、フォーカスサーチ振幅、フォーカス引込みゲインで用いられる「速い」、「遅い」、「最小」、「中間」、「最大」等の意味するところは、データ残量Dに対応する各レベル間の相対的な関係を表すために用いられていることに留意すべきである。
【0041】
このように本実施例によれば、バッファのデータ残量に応じてフォーカス引込み処理の動作モードを決定ないし選択するようにしたので、音切れや映像飛びの発生を最小限に抑制しつつ消費電力の低減を図ることができる。
【0042】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例は、ディスクの面振れ量を考慮してディスクの回転速度を設定する。上記したようにコントローラ32は、フォーカスエラー信号の電位やRF信号に基づき光ディスクの回転時の面振れ量を検出することができる。光ディスクを高速回転させたとき、面振れ量が小さければフォーカス引込み処理が成功する確率が増加するが、面振れ量が大きくなると、光ディスクの記録面と対物レンズとの相対速度が速くなるためフォーカス引込み処理が失敗する確率が増加する。
【0043】
図6に、面振れ量を考慮したときのバッファのデータ残量と光ディスクの回転数変化との関係を示す。第1の実施例では、データ残量Dが50%以上のとき、光ディスクを高速回転させるようにしたが、上記したように、面振れ量が大きくなると、目標とする成功率70%、80%が低下するおそれがある。そこで、第2の実施例では、面振れ量が一定値以上であると判定した場合には、コントローラ32は、仮にデータ残量Dが50%以上であっても、光ディスクの回転速度が中速となるように、モータ駆動部34を制御する。なお、上記の例では、面振れ量が一定以上か否かを判定したが、面振れ量の大きさをさらに詳細な複数のレベルで判定し、その詳細な複数のレベルに応じた回転数を決定するようにしてもよい。
【0044】
このように第2の実施例によれば、面振れ量を考慮して回転速度を設定するようにしたので、特に、データ残量Dが大きい場合のフォーカス引込み処理の成功率の低下を抑制することができる。
【0045】
図6Aに、各動作モードでフォーカス引込み処理を行ったときの電力消費の比較例を示す。データ残量Dは、同図に示すように、それぞれレベル1、レベル2、レベル3に分類されている。レベル1、2、3に対応する動作モードは、ディスクの回転速度以外は、図3に示す内容であるが、回転速度は、図6に示す面振れ量を考慮したものである。例えば、データ残量が75%以上のレベル1において、フォーカスサーチ時間Fs=0.1、フォーカスサーチ振幅Fa=0.014、フォーカス引込みゲインが最小のときの必要電力=0.057である。そして、スピンドルモータによる電力消費を加えたフォーカス引込み処理1回当たりの電力は、約0.22mWである。リトライ(リカバリ処理)の回数が3回を基準としたときの電力消費は、約0.7mWとなる。これに対し、レベル3に対応する動作は、データ残量が少ないので、消費電力の抑制よりも成功率が優先されるため、フォーカス引込み処理1回当たりの電力消費は約3.11であり、レベル1のときの電力消費の約14倍である。
【0046】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。第3の実施例は、フォーカス引込み処理時のリカバリ処理に関するものである。リカバリ処理は、図2のフローのステップS118、S120で説明したように、フォーカス引込み処理が成功しなかった場合に引き続き行われる処理である。
【0047】
図7に、再生条件とリカバリ処理との関係を示す。ここでは、バッファのデータ残量が2つのレベルにあるときのリカバリ処理を示している。データ残量が少ない場合には、ディスクの回転数と面振れ量に応じてリカバリ処理が選択される。
【0048】
同図に示すように、データ残量が少なく、回転数が低速であり、面振れ量が小さい場合には、通常のリカバリ動作が実施される。但し、面振れ量が大きい場合には、リカバリ1が選択される。また、データ残量が少なく、回転数が高速である場合には、面振れ量に応じてリカバリ2またはリカバリ3が選択される。データ残量が大である場合には、回転数ないし面振れ量に無関係にリカバリ4が選択される。
【0049】
図8に、リカバリ1ないし4の処理内容を示す。データ残量が小さいときのリカバリ1ないし3では、基本的に、消費電力の低減を優先することなく、確実にフォーカス引込み処理が成功する処理内容が設定される。リカバリに要する時間を最小限に抑え、不要なフォーカスリトライ動作を削減可能にし、音切れや映像飛びの発生を抑制する。具体的には、リカバリ1では、面振れ量が大きいので、引込みゲインをアップすることで、フォーカス引込みがされやすくする。リカバリ2では、回転数を高速から低速に減速させることで、引込みをされ易くする。リカバリ3では、面振れ量が大きいので、回転数を高速から低速に減速させ、かつ引込みゲインをアップさせる。
【0050】
データ残量が大であるリカバリ4では、データ残量に応じて処理を段階的に切り替える処理内容が設定される。リカバリ4では、フォーカスリトライの回数には比較的余裕があるので、例えば、リトライ回数に応じて光ディスクの回転数を段階的に低速に切り替えるようにし、1回で回転数を急激に減速するときよりもスピンドルモータの消費電力を抑制する。また、引込みゲインもリトライ回数に応じて段階的に増加させるようにして、消費電力を抑制する。
【0051】
このように本実施例によれば、音切れや映像飛びを抑制しつつ消費電力を最小限する最適なリカバリ処理を選択することが可能となる。さらに、第3の実施例を第1および第2の実施例との組み合わせにより、フォーカス引込み処理の動作モードおよびリカバリ処理の成功率および消費電力の最適化を図ることができる。
【0052】
上記実施例では、コントローラ32がデータ残量に応じて、図3図6図7および図8に規定するような動作モードないし処理内容を選択する例を示したが、これらの動作モードないし処理内容を決定する情報は、例えば、メモリ36に格納することができる。コントローラ32は、フォーカスが外れたと判定したとき、メモリ36に記憶された動作モードないし処理内容に従いフォーカス引込み処理を実行させることが可能である。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:光ディスク装置 10:光ディスク
12:スピンドルモータ 14:対物レンズ
16:光学ピックアップ 18:データ読取部
20:バッファ 22:再生部
24:検出部 26:サーボ回路
26A:ゲイン設定回路 28:駆動回路
30:アクチュエータ 32:コントローラ
34:モータ駆動部 36:メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図6A
図7
図8
図9
図10