特許第6180353号(P6180353)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6180353-画像形成装置 図000002
  • 特許6180353-画像形成装置 図000003
  • 特許6180353-画像形成装置 図000004
  • 特許6180353-画像形成装置 図000005
  • 特許6180353-画像形成装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180353
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20170807BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20170807BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20170807BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G03G21/00 370
   G03G15/08 322
   G03G15/01 Y
   G03G15/00 303
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-66011(P2014-66011)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-191005(P2015-191005A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 重春
【審査官】 三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−023392(JP,A)
【文献】 特開2008−096735(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0007509(US,A1)
【文献】 特開2006−171138(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0140650(US,A1)
【文献】 特開2009−217163(JP,A)
【文献】 特開2005−352379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/00
G03G 15/01
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を用いて画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部が形成する画素数と前記現像剤の使用量の関係を記憶する記憶部と、
前記画像形成部が形成したパッチ画像の濃度を測定する濃度測定部と、
前記測定された濃度結果に基づいて、キャリブレーション処理を行うキャリブレーション部と、
前記キャリブレーション処理前後の予め定められた複数の濃度における画素数の差分を用いて、前記記憶部が記憶する前記画素数と前記現像剤の使用量の関係を補正する補正部と、を備え
前記補正部は、前記差分の合計が予め定められた値より大きいとき、前記予め定められた複数の濃度以外の異なる濃度における前記キャリブレーション処理前後の画素数の差分を算出し、更に当該差分を用いて前記画素数と前記現像剤の使用量の関係を補正する画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成部は、前記キャリブレーション部によるキャリブレーション処理後、当該キャリブレーション処理で用いられた画像処理パラメーターに基づいて前記パッチ画像を潜像で形成し、
前記補正部は、前記画像形成部による前記潜像形成時の画素数を、前記キャリブレーション処理後の画素数として、前記補正を行う請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーやインク等の現像剤を用いて用紙に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現像剤としてトナーやインク等を使っている画像形成装置では、カートリッジに収容された現像剤を使用して用紙に画像が印刷される。そしてカートリッジが収容する現像剤の残量を算出して、この残量が所定量以下になるとユーザーに対してカートリッジの交換を促す必要がある。残量算出の正確性が欠けると、カートリッジの交換等に影響を与え、装置の信頼性低下を招く原因となる。
【0003】
特許文献1には、画素数を用いてトナー消費量を求め、そのトナー消費量からカートリッジ内のトナー残量を求める方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−83842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、画像形成装置の経年劣化や使用環境等によって、画素数とトナー消費量の関係が常に同じとは限らない。この為、特許文献1に記載の方法ではトナー残量を常に正確に算出することができない。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、トナー残量を常に正確に算出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における画像形成装置は、現像剤を用いて画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部が形成する画素数と前記現像剤の使用量の関係を記憶する記憶部と、前記画像形成部が形成したパッチ画像の濃度を測定する濃度測定部と、前記測定された濃度結果に基づいて、キャリブレーション処理を行うキャリブレーション部と、前記キャリブレーション処理前後の予め定められた複数の濃度における画素数の差分を用いて、前記記憶部が記憶する前記画素数と前記現像剤の使用量の関係を補正する補正部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キャリブレーション処理毎に画素数と現像剤の使用量の関係を補正することで、トナー残量の精度を常に保つことができ、ユーザーに対して的確にトナーカートリッジの交換を報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】画像形成装置の構造を示す正面断面図である。
図2】画像形成装置の主要内部構成を示す機能ブロック図である。
図3】濃度と画素数の関係を示したグラフである。
図4】画素数とトナー使用量の関係を示したグラフである。
図5】変換式補正部が実行する変換式の補正処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について図面を参照して説明する。尚、本実施の形態では、現像剤としてトナーを用いた電子写真方式の画像形成装置を例に挙げて説明する。この他に、インクを用いたインクジェットプリンターにも適用可能である。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態における画像形成装置1の構造を示す正面断面図である。尚、本実施の形態ではカラーの画像形成装置1を用いて説明するが、場合によってはモノクロ機とすることも可能である。画像形成装置1は、装置本体11に、操作部47、画像形成部12、定着部13、給紙部14、原稿給送部6及び原稿読取部5等を備えて構成されている。
【0012】
操作部47は、画像形成装置1が実行可能な各種動作及び処理について操作者から画像形成動作実行指示や原稿読取動作実行指示等の指示を受け付ける。
【0013】
画像形成装置1が原稿読取動作を行う場合、原稿給送部6により給送されてくる原稿、又は原稿載置ガラス161に載置された原稿の画像を原稿読取部5が光学的に読み取り、画像データを生成する。
【0014】
画像形成装置1が画像形成動作を行う場合は、上記原稿読取動作により生成された画像データ等に基づいて、画像形成部12が、給紙部14から給紙される記録媒体としての記録紙Pにトナー像を形成する。カラー印刷を行う場合、画像形成部12のマゼンタ用の画像形成ユニット12M、シアン用の画像形成ユニット12C、イエロー用の画像形成ユニット12Y及びブラック用の画像形成ユニット12Bkは、それぞれに、上記画像データを構成するそれぞれの色成分からなる画像に基づいて、帯電、露光、及び現像の工程により感光体ドラム121上にトナー像を形成し、当該トナー像を一次転写ローラー126により中間転写ベルト125上に転写させる。
【0015】
中間転写ベルト125上に転写される上記各色のトナー画像は、転写タイミングを調整して中間転写ベルト125上で重ね合わされ、カラーのトナー像となる。二次転写ローラー210は、中間転写ベルト125の表面に形成された当該カラーのトナー像を、中間転写ベルト125を挟んで駆動ローラー125aとのニップ部Nにおいて、給紙部14から搬送路190を搬送されてきた記録紙Pに転写させる。この後、定着部13が、記録紙P上のトナー像を、熱圧着により記録紙Pに定着させる。定着処理の完了したカラー画像形成済みの記録紙Pは、排出トレイ151に排出される。
【0016】
濃度センサー9(濃度測定部)は、中間転写ベルト125上に転写されたキャリブレーション用のパッチ画像の濃度(トナー濃度)を測定するものであり、例えば、パッチ画像に検査光を照射する発光部と、反射した検査光を受光する受光部を有する。そして、受光部が受けた光量に基づいてパッチ画像の濃度を検出する。
【0017】
従来、トナーカートリッジに収容されているトナーの残量の検出方法は、トナーカートリッジ内に残量検知手段を備える方法や画像形成部12が形成したドット(画素数)に応じてトナー消費量を算出し、トナー残量を求める方法等があった。
【0018】
しかし、画像形成部12の経年劣化や、画像形成装置1の設置環境等によって、画素数とトナー消費量の関係が変化する場合がある。画素数とトナー消費量の関係の変化を考慮しえずに同じ変換式でトナー残量を求めていると、算出されたトナー残量と、実際のトナー残量との間にズレが生じてくる。そして、ユーザーに対して適切なタイミングでトナーカートリッジの交換を報知することができなくなり、画像形成装置1の信頼性の低下を招く虞がある。
【0019】
そこで、キャリブレーション時に形成されたパッチ画像の濃度を用いて、画素数とトナー消費量の関係を補正する。こうすることで、キャリブレーション毎に画素数とトナー消費量の関係を最新の状態に更新できるため、トナー残量の精度を上げることができる。
【0020】
図2は、画像形成装置1の主要内部構成を示す機能ブロック図である。画像形成装置1は、制御ユニット11、原稿読取部5、画像形成部12、濃度測定部9及び記憶部13を備えて構成される。尚、図1において説明した構成要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0021】
記憶部13は、画像形成装置1の動作に必要なプログラムやデータを記憶するものであり、本実施の形態では変換式記憶部131を有する。変換式記憶部131は、画像形成部12が形成した画素数から、単位面積当たりのトナー消費量を導き出すための変換式を記憶する。尚、変換式の他に、データテーブル等であってもよく、画素数とトナー消費量の関係を示すデータであればよい。
【0022】
制御ユニット11は、各種プログラムを読み出して処理を実行し、各機能部への指示信号の出力、データ転送等を行って画像形成装置1を統括的に制御するものであり、キャリブレーション部111及び変換式補正部112(補正部)を有する。
【0023】
制御部110は、画像形成装置1の全体的な動作制御を司る。
【0024】
キャリブレーション部111は、一定期間ごとに画像形成部12に濃度の異なるパッチ画像を形成させ、パッチ画像の濃度が設定された濃度になっていなければ、画像処理パラメーターを変更等することにより濃度調整を行って、正確な色彩の画像が形成されるように色合わせの処理を行う。当該キャリブレーション処理のための画像処理パラメーター変更により、パッチ画像の濃度を設定濃度とするために必要な画素数を増減することになる。
【0025】
変換式補正部112は、予め定められた複数の濃度(以下「設定濃度」という)におけるキャリブレーション処理前後の画素数の差分を算出し、その差分を用いて変換式記憶部131が記憶する変換式を補正する。
【0026】
上記の制御部110は、キャリブレーション部111によるキャリブレーション処理後、当該キャリブレーション処理で用いられた画像処理パラメーターに基づいて、画像形成部12にキャリブレーション用のパッチ画像を潜像で形成させる。変換式補正部112は、画像形成部12により当該潜像形成時に用いられた画素数を取得し、上記キャリブレーション処理後の画素数として用いることで、上記変換式の補正を行う。
【0027】
変換式補正部112の処理について、具体的に説明する。図3は、濃度と画素数の関係を示したグラフである。グラフG1は、キャリブレーション処理前の濃度と画素数の関係を示している。
【0028】
キャリブレーション前後で、例えば濃度aの画像を形成するために必要な画素数がA1からA2に変化したとする。説明を簡単にするために、画素数A1を100画素、画素数A2を110画素とする。また、本実施の形態では、濃度とトナー使用量は一意的に決まっていることとし、例えば、濃度aの画像を出すために必要な単位面積当たりのトナー使用量を100mgとする。
【0029】
上記のように数値を設定した場合、キャリブレーション前の1画素あたりのトナー使用量は100mg÷100画素=1.0mg/画素となり、キャリブレーション後の1画素あたりのトナー使用量は100mg÷110画素=0.9mg/画素となる。つまり、1画素あたりのトナー使用量が1.0mgから0.9mgに変化したことになる。このように、キャリブレーション前後で1画素あたりのトナー使用量が変化していることから、キャリブレーション毎に画素数とトナー使用量の関係を補正しなければならない。
【0030】
そこで、変換式補正部112は、設定濃度(濃度a、b及びc)におけるキャリブレーション前後の画素数の差分を用いて画素数とトナー使用量の関係を補正する。つまり、濃度aにおけるキャリブレーション前後の画素数の差分(A2−A1)、濃度bにおけるキャリブレーション前後の画素数の差分(B2−B1)、濃度cにおけるキャリブレーション前後の画素数(C2−C1)を算出する。そしてその差分を用いて、変換式記憶部131が記憶する画素数とトナー使用量の関係を補正する。
【0031】
図4は、画素数とトナー使用量の関係を示した図であり、変換式記憶部131は、グラフG1やグラフG2を変換式又はデータテーブルとして記憶する。グラフGaはキャリブレーション前、グラフGbはキャリブレーション後を示しており、グラフGbは変換式補正部112が上記で説明した方法を用いてグラフGaを補正した結果を示している。
【0032】
キャリブレーション前、A1(100画素)の画像を形成するために使用するトナー使用量は100画素×1.0mg/画素=100mgであった。しかしキャリブレーション後は、100画素×0.9mg/画素=90mgに変化している。このように、同じ画素数の画像を形成しても、キャリブレーション前後でトナー使用量が異なるため、キャリブレーション毎に変換式補正部112が画素数とトナー使用量の関係を補正することで、トナー残量を常に正確に算出することができる。
【0033】
図5は、変換式補正部112が実行する変換式の補正処理の流れを示したフローチャートである。まずキャリブレーション部111は画像形成部12に対してキャリブレーション用のパッチ画像を形成させ(ステップS11)、濃度測定部9に対してパッチ画像の濃度を測定させる(ステップS12)。そして、キャリブレーション部111は濃度測定部9が出力した測定濃度に基づいてキャリブレーションを行う(ステップS13)。
【0034】
そして、通常、中間調を使った画像形成が多い場合(ステップS14;NO)、変換式補正部112はキャリブレーションの結果から黒の予め定められた設定濃度(例えば、図3における濃度a、b及びc)における各画素数を抽出し(ステップS15)、キャリブレーション前の各設定濃度における画素数と、キャリブレーション後の各設定濃度における画素数の差分とをそれぞれ算出する(ステップS17)。なお、上述したように、変換式補正部112は、上記キャリブレーション処理により変更された画像処理パラメーターを用いて画像形成部12により行われる潜像形成時に用いられた画素数を取得し、上記キャリブレーション処理後の画素数として用いる(後述のステップS16においても同様)。
【0035】
記憶部13は、キャリブレーション前の各設定濃度における画素数を記憶しており、変換式補正部112は画素数の差分を算出する際に、記憶部13からキャリブレーション前の画素数を読み出す。
【0036】
各設定濃度における画素数の差分を全て足した合計が予め定められた値(以下、所定値という)以内である場合(ステップS18;YES)、変換式補正部112は、各設定濃度における画素数の差を用いて変換式の補正を行う(ステップS19)。
【0037】
一方、各設定濃度における画素数の差分の合計が所定値より大きい場合(ステップS18;NO)、変換式の補正を正確に行うために、抽出点を増やして補正を行う。つまり、上記した設定濃度(濃度a、b及びc)以外に、変換式補正部112は更に複数の濃度における画素数を抽出してキャリブレーション前後の画素数の差を算出する。
【0038】
そして、変換式補正部112は、設定濃度における画素数の差分と、追加して抽出した設定濃度以外の画素数の差分を用いて変換式を補正する(ステップS20)。このように、各設定濃度における画素数の差の合計が大きい場合、抽出点を増やして変換式を補正することにより、より正確な補正を行うことができる。
【0039】
尚、抽出点を増やして変換式の補正を行う他に、画像形成装置1によりフルカラー印刷が可能である場合、変換式補正部112は、黒以外の色(シアン、マゼンタ及びイエロー等)の全ての色について設定濃度における各画素数の差を算出し、変換式の補正を行うようにしてもよい(図5に破線により示す。ステップS21)。更にこのとき、変換式補正部112は、各色について設定濃度(濃度a、b及びc)のみ各画素数の差を算出して変換式の補正を行ってもよいし、設定濃度と更に他の複数の濃度における画素数の差を用いて変換式の補正を行ってもよい。こうすることで、より正確に各色の変換式を補正することができる。
【0040】
また、中間調の使用頻度が低い場合、即ち、写真画像等の印刷が少ない場合(ステップS14;YES)、変換式補正部112はキャリブレーションの結果から黒の中間調以外の複数の濃度における各画素数を抽出し(ステップS16)、変換式の補正を行う。こうすることで、使用頻度の少ない中間調における画素数とトナー使用量の関係の補正を省くことができ、処理負荷を軽減することができる。
【0041】
以上、説明したように、キャリブレーション毎に画素数とトナー使用量の変換式の補正を行うことで、トナー残量の精度を常に保つことができ、ユーザーに対して的確にトナーカートリッジの交換を報知することができる。
【0042】
また、写真画像等の中間調の使用頻度が少ない場合は、変換式において中間調以外の範囲のみ補正することで、処理負荷を軽減することができる。
【0043】
また、設定濃度における画素数の差の合計が所定値より大きい場合は、抽出点を増やして変換式の補正に用いたり、全ての色において設定濃度における画素数の差を算出して変換式を補正したりすることで、変換式を正確に補正することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 画像形成装置
11 制御ユニット
110 制御部
111 キャリブレーション部
112 変換式補正部
12 画像形成部
13 記憶部
131 変換式記憶部
5 原稿読取部
9 濃度測定部
図1
図2
図3
図4
図5