(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タイヤを支持する下リムを備えた下スピンドル軸の上方から、上リムを有する上スピンドル軸を近接させ、前記下スピンドル軸の内部に収容されるロックシャフトを上下方向に移動させて前記上スピンドル軸と前記下スピンドル軸とを締結し、締結された前記上リムと前記下リムとの間に挟持された前記タイヤ内に、前記下スピンドル軸の内部に設けられた流路を通じて空気を供給可能とするタイヤ試験機であって、
前記ロックシャフトは、前記締結された状態で前記上スピンドル軸と一体に回転する構成とされており、
前記空気を供給する流路が、前記上スピンドル軸と一体に回転する前記ロックシャフトの内部に軸心方向に沿って形成されていて、
前記ロックシャフトの上端側には、前記流路を通じて供給されてきた空気を前記タイヤに流通させる空気流通口が形成されていて、
前記空気流通口から外側に流れ出た空気が前記タイヤの外部に漏れ出ることを抑制するシール部材が、前記ロックシャフトと当該ロックシャフトに対して相対回転しない箇所との間に設けられており、
前記ロックシャフトは、
前記下スピンドル軸の内部に設けられると共に前記下スピンドル軸を回転させる筒部材と、前記筒部材に対して上下方向に移動して前記上スピンドル軸と前記下スピンドル軸とを締結する芯部材とを備えており、
前記筒部材と芯部材との間に、前記筒部材に対する芯部材の上下方向に沿った移動を許容しつつ前記タイヤ内の空気の圧力を保持するシール部材が設けられている
ことを特徴とするタイヤ試験機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したタイヤの均一性などを評価するためにはタイヤ内を所定の空気圧にする必要があり、試験を行う前に上下リム間に挟持されたタイヤ内に空気を供給する必要がある。また、試験が終了した後には、上下リム間からタイヤを取り外すためにタイヤ内の空気を排出する必要がある。そのため、上述したタイヤ試験機の下スピンドル軸には、タイヤT内に空気を供給したりタイヤT内から空気を排出したりする空気供給流路が設けられている。
【0007】
ところが、この空気供給流路が設けられる下スピンドル軸は、上スピンドル軸と一体となって回転する構成となっており、この下スピンドル軸の内部には下スピンドル軸を回転
自在に支持するスピンドル支持体が設けられている。そして、特許文献1のタイヤ試験機では、上述した空気供給流路は、スピンドル支持体とこのスピンドル支持体に対して相対回転する下スピンドル軸109との間に形成されている。
【0008】
それ故、空気供給流路には供給された空気が下スピンドル軸の外部に漏れることを抑制するシールの設置が必要不可欠であるが、特許文献1のタイヤ試験機では相対回転する部材間でシール状態を維持する必要があり、空気供給流路のシールに「回転シール」が使用されている。ところが、この「回転シール」は、1.0MPaという高い空気圧、60rpmといった高い回転速度、1分間で1回という高頻度で使用し続ける性能は有していない場合が多く、使用中に空気漏れが発生したり、短期間で「回転シール」を交換する必要が生じたりするといった問題を招く。また、この空気漏れが発生した場合には、復旧までに時間が必要となり、タイヤ試験機の稼働率や効率を低下させる原因ともなる。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、回転シールを用いることなく、タイヤへ空気を安定して供給すると共に、空気圧を安定して保持することができるタイヤ試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のタイヤ試験機は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明のタイヤ試験機は、タイヤを支持する下リムを備えた下スピンドル軸の上方から、上リムを有する上スピンドル軸を近接させ、前記下スピンドル軸の内部に収容されるロックシャフトを上下方向に移動させて前記上スピンドル軸と前記下スピンドル軸とを締結し、締結された前記上リムと前記下リムとの間に挟持された前記タイヤ内に、前記下スピンドル軸の内部に設けられた流路を通じて空気を供給可能とするタイヤ試験機であって、前記ロックシャフトは、前記締結された状態で前記上スピンドル軸と一体に回転する構成とされており、前記空気を供給する流路が、前記上スピンドル軸と一体に回転する前記ロックシャフトの内部に軸心方向に沿って形成されていて、前記ロックシャフトの上端側には、前記流路を通じて供給されてきた空気を前記タイヤに流通させる空気流通口が形成されていることを特徴とする。
【0011】
なお、好ましくは、前記空気流通口から外側に流れ出た空気が前記タイヤの外部に漏れ出ることを抑制するシール部材が、前記ロックシャフトと当該ロックシャフトに対して相対回転しない箇所との間に設けられているとよい。
なお、好ましくは、前記ロックシャフトは、前記下スピンドル軸の内部に設けられると共に前記下スピンドル軸を回転させる筒部材と、前記筒部材に対して上下方向に移動して前記上スピンドル軸と前記下スピンドル軸とを締結する芯部材とを備えており、前記筒部材と芯部材との間に、前記筒部材に対する芯部材の上下方向に沿った移動を許容しつつ前記タイヤ内の空気の圧力を保持するシール部材が設けられているとよい。
【0012】
なお、好ましくは、前記シール部材が、上下方向に二重に設けられているとよい。
なお、好ましくは、前記空気を供給する流路が、前記芯部材の内部に形成されているとよい。
なお、好ましくは、前記空気を供給する流路が、前記筒部材と芯部材との間に設けられているとよい。
【0013】
なお、好ましくは、前記ロックシャフトは、前記下スピンドル軸の内部に設けられると共に前記下スピンドル軸を回転させる筒部材と、前記筒部材に対して上下方向に移動して前記上スピンドル軸と前記下スピンドル軸とを締結する芯部材とを備えており、前記筒部材と芯部材とは、上下方向及び回転方向に一体となって動く一体物として形成されており、前記空気を供給する流路が、前記ロックシャフトの内部に軸心方向に沿って形成され、前記空気流通口から外側に流れ出た空気が前記タイヤの外部に漏れ出ることを抑制するシール部材が、前記ロックシャフトと前記下スピンドル軸との間に設けられているとよい。
また、本発明に係るタイヤ試験機の最も好ましい形態は、タイヤを支持する下リムを備えた下スピンドル軸の上方から、上リムを有する上スピンドル軸を近接させ、前記下スピンドル軸の内部に収容されるロックシャフトを上下方向に移動させて前記上スピンドル軸と前記下スピンドル軸とを締結し、締結された前記上リムと前記下リムとの間に挟持された前記タイヤ内に、前記下スピンドル軸の内部に設けられた流路を通じて空気を供給可能とするタイヤ試験機であって、前記ロックシャフトは、前記締結された状態で前記上スピンドル軸と一体に回転する構成とされており、前記空気を供給する流路が、前記上スピンドル軸と一体に回転する前記ロックシャフトの内部に軸心方向に沿って形成されていて、前記ロックシャフトの上端側には、前記流路を通じて供給されてきた空気を前記タイヤに流通させる空気流通口が形成されていて、前記空気流通口から外側に流れ出た空気が前記タイヤの外部に漏れ出ることを抑制するシール部材が、前記ロックシャフトと当該ロックシャフトに対して相対回転しない箇所との間に設けられており、前記ロックシャフトは、前記下スピンドル軸の内部に設けられると共に前記下スピンドル軸を回転させる筒部材と、前記筒部材に対して上下方向に移動して前記上スピンドル軸と前記下スピンドル軸とを締結する芯部材とを備えており、前記筒部材と芯部材との間に、前記筒部材に対する芯部材の上下方向に沿った移動を許容しつつ前記タイヤ内の空気の圧力を保持するシール部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタイヤ試験機によれば、回転シールを用いることなく、タイヤ内の空気圧を安定して保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は第1実施形態のタイヤ試験機1を示しており、
図2はタイヤ試験機1に設けられたスピンドル軸3の断面図(
図1の2点鎖線部分の拡大断面図)を示している。
図1及び
図2に示すように、第1実施形態のタイヤ試験機1は、フレーム部材2と、このフレーム部材2に支持されてタイヤTを着脱自在に装着するスピンドル軸3と、を有している。また、このタイヤ試験機1には、スピンドル軸3の側方に、外周面に形成された模擬路面をスピンドル軸3に装着されたタイヤTに押し付ける回転ドラム(図示略)が設けられている。
【0017】
なお、
図1における紙面左右を、タイヤ試験機1を説明する際の左右方向乃至は幅方向とする。また、
図1における紙面貫通方向をタイヤ試験機1を説明する際の前後方向とする。さらに、
図2における紙面上下方向を、タイヤ試験機1を説明する際の上下方向とする。
図1に示すように、フレーム部材2は、正面視で略長方形状とされると共に基礎に設置されたベース部5と、このベース部5の左端上面と右端上面とに立設された左右一対の支柱6、6と、を備えている。これら左右一対の支柱6、6の上端には左右方向に沿ってビーム部7が架設されている。また、ビーム部7の左右方向の中途部からは、スピンドル軸3を支持するスピンドル取付部8が前方に向かって(
図1では紙面貫通方向に向かって)張り出すように取り付けられており、この前方に張り出したスピンドル取付部8とベース部5との間に上述したスピンドル軸3が上下方向に沿って配備されている。
【0018】
スピンドル軸3は、フレーム部材2内における左右方向の中央部に配置された上下方向に長い部材であり、タイヤTの軸心が上下方向を向くようにタイヤTを上下方向に挟み込んで支持できるようになっている。また、スピンドル軸3は、上下方向を向く軸回りに回転可能とされていて、挟持されたタイヤTを上下方向を向く軸回りに回転駆動できるようになっている。
【0019】
図2に拡大して示すように、スピンドル軸3は、上下方向を向く軸回りに回転自在とされた下スピンドル軸9(図中において濃いグレーで示す部分)と、この下スピンドル軸9の上方に配備されると共に下スピンドル軸9に対して上下方向に移動自在とされた上スピンドル軸10(図中において薄いグレーで示す部分)と、を有している。つまり、スピンドル軸3は、上スピンドル軸10と下スピンドル軸9との2部材を上下に組み合わした構成とされており、これらの上スピンドル軸10と下スピンドル軸9とは後述するロック機構11を用いて締結可能となっている。
【0020】
下スピンドル軸9は、フレーム部材2のベース部5上に、上下方向に軸心を向けて起立するように設けられた円筒状の部材である。この下スピンドル軸9における上下方向の中途側の外周面には、タイヤTを下方から支持する下リム12が取り付けられている。この下リム12の上部は、タイヤTの内周側に嵌り込むことができるように円筒状に形成されている。また、下リム12は、タイヤTを下方から支持できるように下部が径外側に向かってフランジ状に張り出されていて、この張り出された部分でタイヤTを下方より支持できるようになっている。この下リム12は、マグネットの磁力を用いて下スピンドル軸9の外周面に着脱自在に取り付けられている。
【0021】
下スピンドル軸9の内部(内周側)には、フレーム部材2のベース部5上に上方に突出するスピンドル支持体13が設けられており、このスピンドル支持体13により下スピンドル軸9が支持されている。具体的には、下スピンドル軸9は、上方に向かって突出したスピンドル支持体13の上方からスピンドル支持体13に外嵌するように取り付けられている。そして、この下スピンドル軸9とスピンドル支持体13との間には、スピンドル支持体13に対して下スピンドル軸9を回転自在に支持するベアリング14が、スピンドル支持体13の外周面に上下方向に離間して複数、設けられている。
【0022】
上スピンドル軸10は、下スピンドル軸9の上方に、上下方向に軸心を向けて設けられた円筒状の部材である。この上スピンドル軸10は、下スピンドル軸9と同軸となるように配備されており、下スピンドル軸9と同様に上下方向を向く軸回りに回転自在とされている。また、上スピンドル軸10は、下スピンドル軸9に対しても上下方向を向く軸回りに回転自在とされており、後述するロック機構11で締結されていない場合には下スピンドル軸9に対する相対回動を許容する構成とされている。
【0023】
具体的には、この上スピンドル軸10は、
図1に示すように、フレーム部材2の上部に固定された昇降装置15に上下移動自在に支持されている。この昇降装置15は、フレーム部材2のスピンドル取付部8に設けられた昇降シリンダにより上下方向に移動自在とされた昇降ロッドを有しており、この昇降ロッドに取り付けられた上スピンドル軸10を下スピンドル軸9に対して上下方向に移動させる構成となっている。
【0024】
上スピンドル軸10の下端側の外周面には、タイヤTの内周側に嵌り込んでタイヤTを上方から支持する上リム16が取り付けられている。この上リム16は、上述した下リム12と上下方向に反転したような形状に形成されており、上方からタイヤTの内周側に嵌め込むことができるようになっている。また、上リム16は、下リム12と同様にマグネットの磁力を用いて上スピンドル軸10の外周面に着脱自在に取り付けられている。なお、上リム16の上スピンドル軸10の外周面への取り付けは、マグネットの磁力に替えて、ボルトでの両者の締結によって成されるよう、構成しても良い。
【0025】
上スピンドル軸10の下端側は、下スピンドル軸9の上端側よりも広幅に形成されている。そして、この広幅とされた上スピンドル軸10の下端側には、下スピンドル軸9の上端側を差し込み可能なスピンドル挿入部17が上方に向かって抉れた凹状に形成されている。つまり、このスピンドル挿入部17は、下スピンドル軸9の上端側を挿入できるように下方に向かって開口しており、またスピンドル挿入部17の内部形状は上スピンドル軸10の上端側に対応した略円筒状とされている。それゆえ、上述した昇降装置15を用いて上スピンドル軸10を下スピンドル軸9に近接(下降)させれば、上スピンドル軸10のスピンドル挿入部17に下スピンドル軸9の上端側が差し込まれ、上スピンドル軸10と下スピンドル軸9とを上下に組み合わせることが可能となる。
【0026】
一方、ロック機構11は、上スピンドル軸10のスピンドル挿入部17に対して下スピ
ンドル軸9の上端側が差し込まれた状態で、上スピンドル軸10と下スピンドル軸9とを締結するものである。このロック機構11は、上述した下スピンドル軸9の周壁を径方向に貫通する貫通孔18と、この貫通孔18に挿入されて径方向に出退自在とされたロック部材19と、上下方向に移動することによりロック部材19を径方向に押動する(ロック部材19を進出させる)ロックシャフト20と、を有している。
【0027】
貫通孔18は、ロック部材19を案内するために下スピンドル軸9に形成された孔であり、上述したスピンドル挿入部17と下スピンドル軸9の外周側とを連通可能なように径方向に沿って形成されている。この貫通孔18は、ロック部材19を貫通孔18に沿って径方向に案内可能とされている。この貫通孔18は、周方向に複数箇所(本実施形態の場合であれば90°毎に、全部で4箇所に)形成されている。
【0028】
この貫通孔18の内部には、ロック部材19が径方向に移動自在に収容されている。ロック部材19は、径内側に比べて径外側が水平方向に広幅に形成されており、この広幅とされたロック部材19の外周面には、径外側に突出する噛み合い部21が形成されている。この噛み合い部21は、径外側に向かって鋸歯状に突出する歯を上下方向に複数列に亘って備えている。また、この噛み合い部21に対向する上スピンドル軸10の内周面にも、径内側に向かって突出する被噛み合い部22が形成されている。この被噛み合い部22にも、噛み合い部21と噛み合い可能な鋸歯状に突出する歯が形成されている。つまり、ロック機構11では、ロック部材19の噛み合い部21と上スピンドル軸10の内周面の被噛み合い部22とが噛み合うことで、下スピンドル軸9に対する上スピンドルの上方移動を規制される。
【0029】
ロックシャフト20は、下スピンドル軸9の内部に収容された棒状の部材、より正確には後述のとおり、中空とされた筒部材29に収容される芯部材28(この芯部材28もまた中空に構成されている)にて構成されている。そして、下スピンドル軸9の内部を上下方向に移動可能な構成となっている。ロックシャフト20の上端側には、中実の芯部材28aが形成され、その芯部材28aに、ロックシャフト20の上方移動に伴ってロック部材19を径方向に押動するロックウエッジ23が設けられている。このロックウエッジ23は、略円錐台形状の外観を備え、外周面には下方に向かうほど径外側に膨らむように傾斜する摺動溝24が、周方向に複数箇所(本実施形態の場合であれば4箇所)形成されている。それぞれの摺動溝24には、上述したロック部材19の径内側の端部が接しており、ロック部材19と係合する摺動溝24の位置を径方向に動かすことで、ロック部材19が進退する構成とされている。つまり、ロックウエッジ23を上方に移動させると、ロック部材19が接する摺動溝24の位置が径外側に移動し、貫通孔18の内部でロック部材19が径外側に進出(移動)する。そうすると、ロック部材19の外周面に形成された噛み合い部21が上スピンドル軸10の内周面に形成された被噛み合い部22に噛み合うようになり、下スピンドル軸9に対する上スピンドルの上方移動が規制されて、上スピンドルを下スピンドル軸9に締結することが可能となる。
【0030】
ところで、本発明のタイヤ試験機1は、上下リム16、12間に挟持されたタイヤT内に、タイヤ試験機1の外部から空気を供給する流路(空気供給流路25)を備えている。この空気供給流路25は、上スピンドル軸10と一体に回転するロックシャフト20の内部に軸心方向に沿って形成されている。また、このロックシャフト20の上端側には、空気供給流路25を通じて供給されてきた空気をタイヤT側に流通させる空気流通口26が形成されている。
【0031】
次に、第1実施形態のタイヤ試験機1の下スピンドル軸9に設けられる空気供給流路25、この空気供給流路25に形成される空気流通口26、及び空気供給流路25に設けられるシール部材27について説明する。
図2に示すように、第1実施形態のタイヤ試験機1に設けられるロックシャフト20は、筒部材29に収容される芯部材28にて主に構成されている。芯部材28の内部は中空とされており、この中空とされた芯部材28の内部(中空部)に上述した空気供給流路25が形成されている。
【0032】
具体的には、筒部材29は、軸心が上下方向を向くように取り付けられた長尺円筒状の部材である。筒部材29の上端は下スピンドル軸9の上下方向の中途側(配備されたタイヤTに対応する部位)に位置し、また筒部材29の下端はベース部5よりも下方に位置していて、筒部材29はベース部5の上側と下側とに跨るように配備されている。また、筒部材29は、ベース部5に対して上下方向に移動しないように固定状態で取り付けられている。ベース部5より下側に位置する筒部材29の外周側には、上下方向を向く軸回りに筒部材29を回転駆動させる回転駆動部30が設けられている。
【0033】
また、この筒部材29の内部は中空とされており、この中空とされた内部に芯部材28が収容されている。芯部材28は、筒部材29の内部に上下方向に摺動自在に遊嵌している棒状の部材であり、筒部材29と同様に軸心を上下方向に向けるようにして配備されている。この芯部材28の外周面と筒部材29の内周面との間には、タイヤT内の空気の圧力を保持しつつも筒部材29に対する芯部材28の上下方向に沿った移動を許容するシール部材27が設けられている。
【0034】
具体的には、芯部材28は、筒部材29に対して上下方向に移動自在とされているが、この上下移動に関係なく芯部材28の上端が筒部材29の上端よりも常時上方に位置するように配備されている。また、芯部材28は、この芯部材28の下端が筒部材29の下端より下方に位置するように配備されている。そして、この筒部材29の上端及び下端に、筒部材29に対する芯部材28の摺動を許容するシール部材27が設けられている。このように筒部材29の上端及び下端の2箇所に、摺動を許容するシール部材27を二重に設ければ、シール部材27が一つの場合に比べて空気漏れをさらに低減することができ、タイヤT内の空気の圧力をより精度良く保持することが可能となる。
【0035】
上述した回転駆動部30が設けられた芯部材28の外周側にはキー溝31が形成されており、このキー溝31には差し込まれたキー32を用いて筒部材29は回転駆動可能となっている。つまり、回転駆動部30で発生した回転駆動力がキー32を介して筒部材29に伝達し、筒部材29に伝達した回転駆動力がキー32を用いて芯部材28に伝達して、回転駆動部30により筒部材29と芯部材28とが一体に回転する。
【0036】
さらに、回転駆動部30よりもさらに下方の芯部材28の外周面には、芯部材28が上下方向を向く軸回りに回転することを許容しつつも、芯部材28を上下方向に沿って移動させるロータリユニオン33が設けられている。
ところで、上述した芯部材28の内部には、芯部材28の内部を上下方向に貫通する空気供給流路25が形成されている。この空気供給流路25の一方の端部(下端)は芯部材28の下端に開口しており、また空気供給流路25の他方の端部(上端)は芯部材28の上端よりもさらに上方に突出する芯部材28の外周面に形成されていて、芯部材28の下端から供給された空気を下スピンドル軸9の内部に流通できるようになっている。この空気供給流路25の上側開口(以降、この上側開口を空気流通口26という)よりもさらに上側に位置する芯部材28(芯部材28a)は、空気供給流路25が形成された下側よりも細径であり、また中実に形成されていて、この細径且つ中実とされた芯部材28aに上述したロックウエッジ23が取り付けられている。
【0037】
また、この空気流通口26の径外側に位置する下スピンドル軸9の内部は空洞とされており、この空洞とされた部分が上側開口から供給された空気を一時的に貯留する空気室3
4とされている。この空気室34は、筒部材29に対して芯部材28が上下方向に移動しても、芯部材28の空気流通口26が常に空気室34と連通した状態を維持できるように、芯部材28の上下方向に沿った移動長さ以上の長さを上下方向に確保している。
【0038】
さらに、この空気室34は、芯部材28が回転して空気流通口26の開口方向が変化しても、空気流通口26が常に空気室34と連通した状態を維持できるように、筒部材29の周囲を全周に亘って取り囲むように形成されている。この空気室34より径外側の下スピンドル軸9の内部には、空気室34の空気を下スピンドル軸9の内部を経由してタイヤT内に流通させる空気導入路35が形成されている。この空気導入路35の径外側の開口は、下リム12と上リム16との間に開口するように形成されており、下リム12と上リム16との間からタイヤT内に空気を供給できるようになっている。
【0039】
つまり、第1実施形態のタイヤ試験機1では、空気供給流路25から空気流通口26を通って空気室34に入り、次に空気室34から空気導入路35を通ってタイヤT内に至る経路に沿って、「空気を供給する流路」が形成されている。
上述した「空気を供給する流路」を用いてタイヤT内に空気を供給しつつ、タイヤ試験を行う場合には、まず下スピンドル軸9に取り付けられた下リム12の上に、タイヤ搬送手段を用いて水平方向に沿って寝かせた状態でタイヤTを搬入する。そして、上リム16をタイヤTの内周側に嵌め込んだ状態にした上で、上述した昇降装置15を用いて上スピンドル軸10を下スピンドル軸9の上側に下降させる。
【0040】
そうすると、上スピンドル軸10の下降に伴って、上スピンドル軸10の内部に形成されたスピンドル挿入部17に下スピンドル軸9の上端側が挿し込まれ、それと同時に上リム16がタイヤTの内周側に嵌り込んで、上下リム16、12間にタイヤTが挟持される。
タイヤTが上下リム16、12間に挟持された後は、ロータリユニオン33を用いてロックシャフト20を、下スピンドル軸9の内部から上方に向かって伸長方向に移動させる。そうすると、ロックシャフト20の上端側に設けられたロックウエッジ23が上方に移動する。このロックウエッジ23の外周面には、径方向に沿って傾斜した摺動溝24が形成されており、この摺動溝24にロック部材19の径内側の端部が案内されている。それゆ、ロックウエッジ23が上方に移動すると、貫通孔18に対応した位置にある摺動溝24の位置に径外側に移動し、摺動溝24に径内側の端部が案内されたロック部材19も径外側に向かって移動するようになる。その結果、径外側に移動したロック部材19の噛み合い部21が上スピンドル軸10の内周側に形成された被噛み合い部22に噛み合い、上スピンドル軸10が下スピンドル軸9に締結される。
【0041】
上スピンドル軸10が下スピンドル軸9に締結された後は、外部に設けられたポンプなどを用いて、芯部材28の内部に形成された空気供給流路25の下側開口に空気を供給する。そうすると、空気供給流路25の下側開口から芯部材28内の空気供給流路25を通って空気流通口26に空気が導かれ、この空気流通口26から空気室34、さらには空気室34から空気導入路35を通ってタイヤT内に空気が供給される。その結果、タイヤT内の圧力が所定の圧力まで高くなり、タイヤ試験を行うことが可能となる。
【0042】
なお、タイヤ試験が終了した後は、供給時とは逆の手順で空気を排出し、タイヤTを搬出する。
上述した第1実施形態のタイヤ試験機1では、下スピンドル軸9の内部に設けられた筒部材29と、空気供給流路25が形成された芯部材28とが、いずれもスピンドル支持体13に対して相対的に回転するようになっている。言い換えれば、筒部材29と芯部材28とは互いに相対回転しないものとされている。それ故、本実施形態のタイヤ試験機1では、空気供給流路25上(筒部材29と芯部材28との間)に空気の漏洩を抑制するシー
ル部材27を設けても、このシール部材27には互いに相対回動し合う界面での使用を考慮する必要はない。
【0043】
したがって、本実施形態のタイヤ試験機1では、耐久性に劣る「回転シール」を設ける必要がなくなる。その結果、「回転シール」の使用に付随する問題、つまり「使用中に空気漏れが発生する」といった問題や、「短期間で回転シールを交換する必要が生じる」といった問題や、「空気漏れを復旧させるためにタイヤ試験機1の稼働率や効率が低下する」といった問題の発生が抑制乃至防止される。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態のタイヤ試験機1について、図を基に説明する。
【0044】
図3に示すように、第2実施形態のタイヤ試験機1は、第1実施形態のタイヤ試験機1が芯部材28の内部に「空気供給流路25」を有していたのに対して、芯部材28と筒部材29との間に「空気供給流路25」を形成したものとなっている。
具体的には、第2実施形態のタイヤ試験機1は、ロックシャフト20の芯部材28と筒部材29との間に径方向に隙間が形成されており、この芯部材28と筒部材29との間の隙間が、ロックシャフト20の内部を通って空気を上下方向に流通させる「空気供給流路25」となっている。
【0045】
第2実施形態のタイヤ試験機1では、筒部材29の下端側に、径外側から供給されてきた空気を空気供給流路25に導入するジョイント部材36が設けられている。このジョイント部材36は、外部に設けられるポンプなどから水平方向に沿って送られてきた空気の向きを垂直に曲げて、空気供給流路25に対して上下方向に沿って空気を送り込む部材であり、芯部材28の外周面に芯部材28の周囲を取り囲むように取り付けられている。また、このジョイント部材36と芯部材28との間、及びジョイント部材36と筒部材29との間には、空気の漏洩を抑制するジョイント用シール部材37と、両部材間での相対回動を許容するジョイント用ベアリング38が設けられている。
【0046】
一方、上述した空気供給流路25は、芯部材28と筒部材29との間、つまり芯部材28の周囲を取り囲むように筒状に形成された流路であり、上下方向に沿って伸びるように配置されている。この空気供給流路25の下端は上述したジョイント部材36に連結しており、空気供給流路25の上端は下スピンドル軸9の上下方向の中途側に位置している。そして、この空気供給流路25の上端、つまり筒部材29の上端には、この筒部材29を径方向に貫通して空気供給流路25の空気をタイヤTに送る空気流通口26(上側開口)が形成されている。
【0047】
上述した第2実施形態のタイヤ試験機1では、上下方向に移動しない筒部材29の周壁に空気流通口26が形成されているため、ロックシャフト20を上下方向に移動させても空気流通口26の位置は上下方向に変化しない。そのため、第1実施形態で示されていたような、空気流通口26の位置の変化を考慮して、筒部材29の周囲を全周に亘って取り囲むように形成されていた空気室34を設ける必要がない。そのため、第1実施形態に比べて、「空気供給流路25」の構造を簡単なものにすることが可能となる。
【0048】
また、第2実施形態のタイヤ試験機1では、芯部材28の内部に孔開け加工をする必要がないため、設備のコストを低減することも可能となる。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態のタイヤ試験機1について、図を基に説明する。
図4に示すように、第3実施形態のタイヤ試験機1は、第1実施形態や第2実施形態のタイヤ試験機1で芯部材28と筒部材29との2部材に分けられていたロックシャフト20を、一体物として形成し、この一体物とされたロックシャフト20の内部に「空気供給
流路25」を形成したものとなっている。つまり、第3実施形態のタイヤ試験機1では、上述したロックシャフト20は、筒部材29と芯部材28とが一体物として形成されており、上下方向及び回転方向に一体となって動く構成となっている。
【0049】
具体的には、第3実施形態のタイヤ試験機1は、一体物とされたロックシャフト20の内部に、第1実施形態と同じような空気供給流路25が形成されたものとなっている。この空気供給流路25の下端は、第1実施形態と同様にロックシャフト20の下端面に開口しており、また空気供給流路25の上端に設けられる空気流通口26は、ロックシャフト20の上端側の外周面に形成されている。そして、この空気流通口26の周囲には、ロックシャフト20を全周に亘って取り囲むように筒状の空気室34が設けられており、空気室34の上側と下側とに隣接する下スピンドル軸9に、ロックシャフト20との摺動(図中に矢印で示す程度の摺動)を許容しつつ空気の漏洩を防止するシール39が設けられている。
【0050】
上述した第3実施形態のタイヤ試験機1は、第1実施形態のように芯部材28が筒部材29に対して摺動することがないので、第1実施形態のように芯部材28と筒部材29との間にシール部材を設ける必要がない。特に、第1実施形態では、筒部材29の上端側と下端側とに複数の箇所に亘ってシール部材27を設ける必要があるため、装置構成が複雑なものとなりやすい。この点、第3実施形態の装置構成は、第1実施形態より部品点数が少なくなるという利点を備えている。
【0051】
なお、第3実施形態のタイヤ試験機1では、ロックシャフト20を上下方向に移動させるロータリユニオン33と、回転駆動部30との間を上下方向に広く形成しておいて、この場所にロータリエンコーダ40を設けている。このような位置であれば、上下方向に移動可能な距離を十分に確保しつつロータリエンコーダ40を設置することが可能となる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。