(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180421
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】担持活性金属触媒および前駆体を製造および形成する方法
(51)【国際特許分類】
B01J 37/02 20060101AFI20170807BHJP
B01J 37/03 20060101ALI20170807BHJP
B01J 29/14 20060101ALI20170807BHJP
B01J 29/80 20060101ALI20170807BHJP
B01J 37/18 20060101ALI20170807BHJP
C07C 1/04 20060101ALI20170807BHJP
C07C 9/02 20060101ALI20170807BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20170807BHJP
C07C 9/14 20060101ALI20170807BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20170807BHJP
【FI】
B01J37/02 101C
B01J37/03 A
B01J29/14 Z
B01J29/80 Z
B01J37/18
C07C1/04
C07C9/02
C07C9/04
C07C9/14
!C07B61/00 300
【請求項の数】25
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2014-536285(P2014-536285)
(86)(22)【出願日】2012年10月22日
(65)【公表番号】特表2014-534902(P2014-534902A)
(43)【公表日】2014年12月25日
(86)【国際出願番号】EP2012070897
(87)【国際公開番号】WO2013057319
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2015年10月19日
(31)【優先権主張番号】1118228.4
(32)【優先日】2011年10月21日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2012/000803
(32)【優先日】2012年10月19日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】314005528
【氏名又は名称】アイジーティエル・テクノロジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IGTL Technology Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176485
【弁理士】
【氏名又は名称】菊地 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ハイマン
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−511230(JP,A)
【文献】
特開平02−172813(JP,A)
【文献】
特開平07−316120(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02475492(GB,A)
【文献】
国際公開第2011/042451(WO,A1)
【文献】
特開2006−263614(JP,A)
【文献】
特開2009−106863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C07C 1/04
C07C 9/02
C07C 9/04
C07C 9/14
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担持触媒の製造方法であって、
該方法が以下:
(i)一またはそれ以上のポアを含む内部ポア構造を有するフレームワークを含む、アルミノケイ酸塩ゼオライトである多孔性触媒担体であって、該内部ポア構造が塩基性沈殿剤を含む多孔性触媒担体を提供するステップ;
(ii)該塩基性沈殿剤と接触することによって触媒活性金属を含む粒子が該触媒担体のフレームワークの内部ポア構造内に沈殿するように、該触媒担体を、乾燥した形態にて、触媒活性金属を含む溶液またはコロイド性懸濁液と接触させるステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
内部ポア構造が、より小さい直径セクションのポアまたは「ウィンドウ」を通してアクセス可能な、一またはそれ以上の領域または「ケージ」を有する、請求項1の方法。
【請求項3】
触媒活性金属を含む粒子が、より小さい直径セクションのポアよりも大きい有効径を有する、請求項2の方法。
【請求項4】
ポア直径またはポア「ウィンドウ」の直径が、0.2nmよりも大きい、請求項1〜3のいずれか一つの方法。
【請求項5】
アルミノケイ酸塩ゼオライトが、10未満のケイ素とアルミニウムのモル比を有する、請求項4の方法。
【請求項6】
触媒担体フレームワークが、ゼオライト構造の国際ゼオライト学会データベースに従うFAU、BEAまたはMWW構造を採用する、請求項1〜5のいずれか一つの方法。
【請求項7】
触媒担体が、一またはそれ以上の電荷平衡カチオンによって平衡化される、負電荷を持つフレームワークを含む、請求項1〜6のいずれか一つの方法。
【請求項8】
電荷平衡カチオンが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属カチオンから選択される、請求項7の方法。
【請求項9】
フレームワークの電荷平衡カチオンが、プロモーターまたは共触媒として作用できる、請求項7または8の方法。
【請求項10】
沈殿剤が電荷平衡カチオンと同じカチオンを含み、また担持触媒中のカチオンの全含有量が触媒担体の全イオン交換能力よりも大きい、請求項8または9の方法。
【請求項11】
触媒活性金属が、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、オスミウム、白金、イリジウム、レニウム、モリブデン、クロム、タングステン、バナジウム、ロジウム、およびマンガンからなる群より選択される一またはそれ以上の要素である、請求項1〜10のいずれか一つの方法。
【請求項12】
さらに、触媒担体を、触媒活性金属含有粒子の一部も形成する、イットリウム、ランタン、セリウム、および他のあらゆるランタニド金属からなる群より選択される金属の一またはそれ以上を含む溶液またはコロイド性懸濁液と接触することを含む、請求項11の方法。
【請求項13】
さらに、触媒担体を、触媒活性金属含有粒子の一部も形成する、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、およびパラジウムからなる群より選択される要素の一またはそれ以上と接触することを含む、請求項11または12の方法。
【請求項14】
触媒担体を触媒活性金属含有粒子と含む得られた物質を空気中か焼し、得られた物質の乾燥後に適宜行ってもよい、さらなるステップを含む、請求項1〜13のいずれか一つの方法。
【請求項15】
触媒活性金属を含む粒子が結晶構造を有する、請求項1〜14のいずれか一つの方法。
【請求項16】
触媒活性金属を含む粒子が、スピネルまたはペロブスカイト構造を有する、請求項15の方法。
【請求項17】
触媒活性金属を含む粒子の構造が、カチオン空きを含む、請求項1〜16のいずれか一つの方法。
【請求項18】
触媒活性金属を含む粒子が、触媒担体フレームワークの電荷平衡カチオンと静電気的に相互作用する、請求項17の方法。
【請求項19】
担持触媒が、Fe、Cu、Kを含む、請求項1〜18のいずれか一つの方法。
【請求項20】
触媒活性金属含有粒子を、化学的に還元する、さらなるステップを含む、請求項1〜19のいずれか一つの方法。
【請求項21】
沈殿剤が、触媒担体フレームワークの内部ポア構造に最初に充填される、請求項1〜20のいずれか一つの方法。
【請求項22】
沈殿剤が炭酸塩または炭酸水素塩である、請求項1〜21のいずれか一つの方法。
【請求項23】
触媒担体が、初期湿潤含浸法を用いて、触媒活性金属を含む溶液またはコロイド性懸濁液と接触される、請求項1〜22のいずれか一つの方法。
【請求項24】
触媒担体が、触媒活性金属の溶液と接触される、請求項1〜23のいずれか一つの方法。
【請求項25】
担持触媒が、フィッシャー・トロプシュ触媒である、請求項1〜24のいずれか一つの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈殿担持活性金属触媒(precipitated supported active metal catalysts)および前駆体(precursors)を製造および形成する方法、特に(但し以下に限定されないが)酸化炭素水素化プロセス(carbon oxide hydrogenation processes)に有用な触媒に関する。特に、本発明は、被包された触媒活性金属含有粒子、ナノ粒子またはクラスターであって部分的にまたは全て還元されていてもよいものを含む、例えばゼオライトで見られるような、機能的多孔性担体フレームワーク(functionalised porous support framework)を含む触媒の製造方法に関する。本発明の態様は、そのように作られらた触媒の使用方法、特に炭化水素の様々なクラス(classes)の合成および/または変換への適用に関する。
【背景技術】
【0002】
不均一触媒は、膨大な数の化学的および石油化学的プロセスにおいて用いられる。多くの場合、プロセスの実行可能性は、触媒の活性の成功した組み合わせ並びにその選択性および安定性に依存する。高い活性を有するものの目的生成物に対して悪い選択性を示す触媒は、商業規模の化学反応を行うのに有用でないと考えられる。さらには、優れた活性および目的生成物に対して優れた選択性を有するものの、悪い安定性を示す触媒も、産業利用に適していないと考えられる。触媒の実用化を検討するには、活性、選択性および安定性における最適なバランスを達成しなければならない。
【0003】
触媒の実用化はまた、その製造方法の経済性およびスケーラビリティ(scalability)によっても制限される。科学文献には、活性、選択性および安定性に関して許容できるパフォーマンスを示す触媒が多く記載されているものの、それらの製造方法は化学実験室の外ではしばしば実行不可能であるか、または単に、産業利用においては経済的に実行可能でない。
【0004】
ナノスケール領域の直径を有する、小さな金属または金属酸化物粒子は大抵、クラスター(clusters)と呼ばれる。金属または金属酸化物クラスターの触媒活性を研究することには重要な動機がある、というのも、それらはより巨大な粒子が示す特性と大きく異なるからである。クラスターの作用によって予想外の触媒効果が生じ得ることが多い。
【0005】
触媒活性金属含有のクラスターをゼオライト物質に担持することには利点がある。ゼオライト物質は金属クラスターのための特有の担体である。なぜならば、それらのケージ(cage)およびポア(pore)によって生じる立体制限が、その中に形成できるクラスターのサイズを限定するからである。ケージとポアの間の開口部(しばしば、「ウィンドウ」と称される)によって生じる制限は、ポアとケージに出入りできるもののサイズを限定する。従って、クラスターを、ケージ中の小さな前駆体(例えば、金属塩)から形成することができ、またそこにトラップする(trap)ことができる。
【0006】
ゼオライト物質のケージは、その中に形成されたクラスターに対して溶媒様効果を発揮するのに十分に小さいので、ケージはそれが含むクラスターに対して異なる触媒活性を引き起こすかもしれない。ゼオライト物質ケージ中のクラスターの閉じ込めは、クラスター相互作用および凝集を妨げるのでクラスター安定性を高める。
【0007】
担持金属(supported metal)および金属酸化物クラスター触媒(metal oxide cluster catalysts)は、多種多様な方法で製造することができる。US 4,552,855は、ゼオライトに担持されたゼロ価金属クラスターを生成するための製造方法を記載する。金属の析出は、高真空での金属蒸発によって行われる。
【0008】
担持金属クラスター触媒を生成する別の方法には、担体を金属カルボニル複合体前駆体と一緒に含浸させることを含む。そのような製造方法の例は、US 4,192,777に記載されている。
【0009】
US 5,194,244には、ゼオライトおよびアルカリ金属化合物を含む組成物であって、化合物中のアルカリ金属およびゼオライト交換されたあらゆる金属カチオン量の合計が、十分に金属カチオン交換されたゼオライトを提供するために要求されているの量に対して過剰である組成物が記載されている。いったん化合物がゼオライトで充填されると、それらはか焼されて、高温にさらされて、塩基性物質を形成し、塩基性触媒または吸着剤として使用することができる。Haber et al, in Pure and Applied Chemistry, vol 67, Nos 8/9, pp1257-1306は担持触媒の形成法として析出沈殿を取り上げ(section 2.1.2.2)、沈殿剤の遅い添加またはインサイツ形成によって担体上に沈殿溶液中で活性金属が析出される。特筆すべき点は、多孔性担体に関しては、析出は外部部分において好ましくは行われるという点である。
【0010】
US 4,113,658には、シリカのような核形成表面(nucleating surface)上に実質的に均一に析出された、金属物質の細かく分けられた粒子を含む物質を製造するための析出沈殿プロセスが記載されている。これは、核形成表面の懸濁液を製造し、金属化合物を含む溶液から金属化合物を核形成部位の表面上に結晶化することによって達成される。
【0011】
EP 2314557には、鉄が、アルミナのように鉄に対して化学的に不活性な担体上に析出されている触媒を用いて、合成ガスから低いオレフィンの生成をするための触媒が記載されている。
【0012】
プロモーターは、化学反応中のパフォーマンスを高めるために、固形触媒または触媒を含むプロセスに加えられる化学種である。プロモーター単独では、触媒効果はほとんどか全く無い。いくつかのプロモーターは触媒の活性成分と相互作用するので、触媒物質に対する化学効果を変える。相互作用は、活性固形成分の電子または結晶構造に変化をもたらすかもしれない。通常使用されているプロモーターは、金属および金属酸化物触媒に組み込まれた金属イオン(それは、ガスや液体を還元および酸化させる)、並びに反応の間にまたは使用前の触媒に添加される酸および塩基である。
【0013】
カリウムは、グループVIII(Group VIII)金属触媒の周知プロモーターであり、鉄ベースの高温フィッシャー・トロプシュ(High Temperature Fischer−Tropsch)(HTFT)触媒で広く使用されている。しかしながら、カリウムは、グループVIII金属および金属酸化物の焼結を促進させる。例えば、US 6,653,357は、フィッシャー・トロプシュ法におけるカリウム移動の効果について記載する。US 7,459,485などに記載されているように、例えば炭化水素合成触媒および酸性触媒を用いる炭化水素合成プロセスにおいて、プロモーターがニ官能性触媒における二次的触媒機能のために有害である場合、プロモーター移動に起因する非活性化は、特別の関連性を有する。カリウムを多く充填することは、担体のポアの遮断に起因して活性の減少を引き起こすかもしれず、いくつかの処理においては、促進的効果は重量で2%を超えるカリウム充填で悪化する、ということが示されている。
【0014】
担持金属触媒(supported metal catalysts)の製造に伴う別の問題は、それを使用する間または活性化のために必要とされ得る、あらゆる高温な前処理の間、金属は凝集または焼結する傾向があるということである。そのような凝集または焼結は、触媒反応に利用できる触媒の有効表面積を減少させ、触媒活性を低下させる。
【0015】
長期間安定性を有する金属または金属酸化物触媒を提供すること、並びにそのような触媒を作る方法であって、焼結や触媒非活性化を起こし得る、合成または使用中の活性触媒構成成分の移動などの問題を回避する方法を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【0016】
本発明の第1の態様において、担持触媒の製造方法であって、該方法が以下:
(i)内部ポア構造を有するフレームワークを含む多孔性触媒担体(porous catalyst support)であって、該内部ポア構造が沈殿剤を含む多孔性触媒担体を提供すること;
(ii)該沈殿剤と接触することによって触媒活性金属(catalytically active metal)を含む粒子が該触媒担体のフレームワークの内部ポア構造内に沈殿するように、該触媒担体を、触媒活性金属を含む溶液またはコロイド性懸濁液と接触させること
のステップを特徴とする方法。
【0017】
本発明の第2の態様において、上記方法によって製造された担持触媒が提供される。
【0018】
本発明の第3の態様において、フィッシャー・トロプシュ合成法のような触媒プロセスにおける、該担持触媒の使用が提供される。
【0019】
(発明の詳細な説明)
触媒担体のフレームワーク内部ポア構造に、触媒担体の合成の間に例えば沈殿剤を触媒担体合成混合物またはゲルへ組み込むことによって、沈殿剤を充填することができる。あるいは、例えば沈殿剤を含む溶液を用いる含浸法(初期湿潤含浸法など)によって、沈殿剤を触媒担体の後処置によって充填することができる。その結果、フレームワークの内部ポア構造内に沈殿剤が位置する触媒担体ができる。
【0020】
触媒担体に触媒活性金属を含む溶液またはコロイド性懸濁液が接触すると、溶液またはコロイド性懸濁液が、触媒担体フレームワークの内部多孔性構造へ入り、沈殿剤と接触し、不溶性粒子(その粒子には触媒活性金属が含まれる)の沈殿または形成が起こる。触媒活性金属を含むそのような粒子は、本明細書において「クラスター」(clusters)と言う。典型的には、そのようなクラスターは5.0nm未満、より好ましくは2.0nm未満、例えば1.3nm未満の有効径を有する。典型的には、クラスター有効径の最大寸法は、触媒担体フレームワークの内部ポア構造によって定義される。触媒活性金属は、溶液中に溶解させることができ、または懸濁液中のコロイド構成物であることもでき、またはその両方であることもできる。
【0021】
触媒活性金属を含むそのように形成されたクラスターは、それ自体で触媒活性を有することができるか、または活性触媒を形成するように、例えば化学的還元や熱処理によってまたは共触媒や触媒プロモーターなどのさらなる成分の添加によって、処理することができる。一つの態様において、沈殿剤には、共触媒および/またはプロモーターなどのさらなる成分の原料が含まれる。
【0022】
触媒担体のポアは、ポア直径が小さい直径から大きな直径へ変化する領域またはチャンバーの一またはそれ以上を含むことが好都合である。そのような領域またはチャンバーはしばしば、「ケージ」と称される。好ましくは、これらのケージは、ポアのより小さい直径セクション(そのような、より小さい直径セクションはしばしば「ウィンドウ」と称される)を介して、触媒担体の外表面からのみアクセスできる。そのような態様において、クラスターがウィンドウよりも大きい有効径を有するように、触媒活性金属のクラスター形成がケージ内において行われることが好都合である。これによって、使用または活性化の間クラスターがケージの外へ移動してしまうのを防ぐことができ、よって多孔性触媒担体のポア内部の保持を向上させ、焼結を減少または阻止するのに役立つ。焼結は阻止するのが望ましく、なぜならば、クラスターがより大きなクラスターまたは粒子へ凝集すると、反応物が利用できる触媒活性金属の表面積全体が減少し、触媒活性が低下し、よって触媒の非活性化が起こるからである。
【0023】
触媒担体は結晶またはアモルファスであることができ、結晶が好ましく、その根拠は結晶のきちんとしたポア構造および一般的に有する高い安定性に起因する。触媒担体は好ましくは無機担体、より好ましくは酸化物担体である。酸化物担体には、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリア、酸化ランタン、およびそれらの混合酸化物(例えばアルミナ−シリカ)が含まれる。触媒担体の他の例には、拡張ホスフェート(extended phosphate)構造を有するものが含まれ、例えば、アルミノフォスフェート(alumino-phosphate)、ガロフォスフェート(gallo-phosphate)、シリコアルミノフォスフェート(silico-alumino-phosphate)およびシリコガロフォスフェート(silico-gallo-phosphate)である。
【0024】
触媒担体は、好ましくは ゼオタイプ構造を有する酸化物物質(oxide material)であり、例えばゼオライトである。多数のゼオタイプ構造が知られており、国際ゼオライト学会によって発行され維持されている「Atlas of Zeolite Structures」に記載されている。好ましい構造は、ポアの直径よりも大きな直径を有するケージで交差する、2次元または3次元多孔性ネットワークを有するものである。そのような2次元および3次元ポア配置を有するゼオタイプ構造の例には、CHA、FAU、BEA、MFI、MELおよびMWWが含まれる。3次元ポア構造が最も好ましい、なぜならば、これは触媒が触媒化学反応に用いられる場合に、反応物および生成物の拡散の向上を示す傾向にあるからである。
【0025】
酸化物物質について、ポア「ウィンドウ」は、ポアまたはポア/ケージ開口部の周径を形成する、いわゆる「T」原子の数によってしばしば定義される。「T」原子は、酸化物担体のフレームワーク中の非酸素原子(non-oxygen atom)である。例えば、アルミノケイ酸塩物質中では「T」原子はアルミニウムおよびケイ素であり、アルミノフォスフェート中では「T」原子はアルミニウムおよびリンである。好ましくは、内部ポア構造の少なくとも1次元(dimension)において、ポアウィンドウは、少なくとも10の「T」原子、より好ましくは少なくとも12の「T」原子の環によって形成される。好ましい構造は、FAU、BEA、MFIおよびMWWである。
【0026】
ゼオライトフレームワークであるかこれを含む触媒担体は、触媒活性金属含有のクラスターを担持するための大きな表面積を提供し、また、触媒担体のポア構造全体にわたって、一様なサイズおよび分布のクラスターの規則正しい配列を可能とする。
【0027】
触媒担体のフレームワークは、荷電フレームワーク構造で構成されてもよい。例えば、アルミノケイ酸塩(aluminosilicate)およびシリコアルミノフォスフェート(silico-alumino phosphate)ゼオライト構造は負電荷を有し、追加フレームワークカチオンで平衡にする必要がある。そのような負電荷を持つフレームワークを有する触媒担体を用いることは好都合であり得る、なぜならば、電荷平衡カチオンは最終活性触媒のさらなる成分(例えば、触媒活性金属を含むクラスターと相互作用するかまたはその一部を形成することができる、共触媒または触媒プロモーター)として選択され得るからである。
【0028】
触媒担体に負電荷を持つフレームワークが含まれる場合(例えば、アルミノケイ酸塩物質、特にアルミノケイ酸塩ゼオライト)、担体のフレームワークは中程度または低いケイ素とアルミニウムのモル比(割合)を含むことが好都合である。ここで、中程度または低いケイ素とアルミニウムのモル比とは、10未満の割合(すなわち、SiO
2:Al
2O
3の割合が20未満)を意味する。好ましくは、ケイ素:アルミニウムのモル比(割合)がおよそ2〜5(すなわち、SiO
2:Al
2O
3の割合が4〜10)の範囲にある。本発明の特定の態様において、Si:Alの割合はおよそ2.4(すなわち、SiO
2:Al
2O
3の割合がおよそ4.8)である。本発明の別の態様において、ゼオライト中のケイ素:アルミニウムの割合は2未満(すなわち、SiO
2:Al
2O
3の割合が4未満)であり、また、ある態様においては、ゼオライトXなどのように、ゼオライト中のケイ素:アルミニウムの割合はおよそ1.0(すなわち、SiO
2:Al
2O
3の割合がおよそ2)である。
【0029】
低いまたは中程度のシリカ含有量の触媒担体を提供することによって、ゼオライトフレームワークにおける、電荷平衡カチオンとのイオン交換能力が向上する。電荷平衡カチオンが共触媒または触媒プロモーターとして作用できる場合は、そのような共触媒またはプロモーターの充填量増加を行うことができる。
【0030】
ゼオライトフレームワークは、ウィンドウでつながっているケージを複数含む微孔性フレームワークである。好ましくは、ゼオライトフレームワークのケージは、ケージへのアクセスをもたらすウィンドウの直径よりも大きい最大寸法を有する。
【0031】
ゼオライトフレームワークのケージの最大寸法は、5オングストローム(0.5ナノメートル)よりも大きいかもしれない。ゼオライトフレームワークのケージの最大寸法は、好ましくは10オングストローム(1ナノメートル)よりも大きく、より好ましくはおよそ13オングストローム(1.3ナノメートル)である。本発明の好ましい態様において、触媒担体はフォージャサイトゼオライトであるかまたはそれを含み、ゼオライト−Yまたはゼオライト−Xであるかもしれない。フォージャサイト(FAU)構造において、ケージは、その最大寸法がケージの最大寸法よりも小さいウィンドウを通してのみアクセス可能である。望ましい構造の別の例はMWW構造であり、例えばゼオライトMCM−22において見られる。
【0032】
好ましくは、触媒担体は、例えばゼオタイプまたはゼオライト構造中にケージおよびウィンドウを有するポアであって、そこで触媒活性金属を含むクラスターがケージ中でケージへのアクセスをもたらすウィンドウの直径よりも大きい動力学的直径(kinetic diameter)に形成される。ウィンドウの寸法よりも大きな最大寸法(maximum dimensions)を有するクラスターを製造することによって、触媒が高温反応にされされたとしても、金属酸化物クラスターの凝集(aggregation)または焼結(sintering)は緩和または防止される。
【0033】
ケージへのアクセスをもたらすウィンドウの直径は、典型的には、2オングストローム(0.2ナノメートル)よりも大きい。ゼオライトフレームワークのウィンドウの最大寸法は、好ましくは4オングストローム(0.4ナノメートル)よりも大きく、より好ましくはおよそ7.4オングストローム(0.74ナノメートル)である。触媒活性金属を含むクラスターは、好ましくは2オングストローム(0.2ナノメートル)よりも大きい、好ましくは4オングストローム(0.4ナノメートル)よりも大きい、より好ましくは7.4オングストローム(0.74ナノメートル)よりも大きい動力学的直径を有する。
【0034】
スラリーまたは流動床プロセスが用いられる場合の触媒処理については、触媒担体は、良好な摩擦抵抗特性を有するものから選択されるのが好ましい。この点で、ゼオライト、特にゼオライトYなどのアルミノケイ酸塩ゼオライトが有益である。
【0035】
本発明の方法によって製造する担持触媒は、化学反応を触媒するのに使用できる。触媒担体フレームワークの内部ポア構造全体にわたってクラスターが高分散されていることによって、反応物にさらされる触媒活性金属の表面積が大きく、よって触媒回転数および反応物変換に有効である。加えて、ポア内部に触媒活性金属のクラスターを被包することによって、クラスターの移動および焼結(それは、小さい全体表面積を有する、より大きなクラスターの形成をもたらす)を防ぐ。これによって、触媒非活性化を抑え、触媒寿命を向上させる。多孔性構造が大きい直径のケージを含む場合に被包および焼結抑制が向上し、上述の通り、そのようなポア構造はゼオタイプ構造で例示される。好ましい構造は、ケージ「ウィンドウ」と比較して増加された直径のケージで交差する、ポアの2次元または3次元ネットワークを含む。相互接続された多孔性構造が好都合であり、なぜならば、溶液またはコロイド性懸濁液中の触媒活性金属の分散の向上は、ポアを通じての、より効率的な拡散によって達成されるからである。加えて、もしクラスターによるポア遮断のいくつかが担持触媒の合成の間に行われ、あるいは何らかの焼結が使用の間に起これば、多孔性ネットワークの遮断は少ないであろう。
【0036】
触媒活性金属は、溶液またはコロイド性懸濁液として触媒担体へ添加され、触媒担体フレームワークの内部ポア構造中に拡散する。懸濁相中に触媒活性金属を含有するコロイド性懸濁液を使用する場合、懸濁相/コロイド性粒子の有効径は、ポア開口部またはウィンドウを通じてのおよび内部多孔性構造への、浸入を可能とするのに十分小さくすべきである。しかしながら、コロイド性懸濁液内の粒子は、ポアの限定されたネットワークを通じての拡散がゆっくりであり、また完全に溶解している触媒活性金属と比較して、ポア構造の遮断を生じる可能性がより大きいことから、触媒活性金属の溶液が好ましい。
【0037】
触媒の他の構成成分もまた、同じ方法で(すなわち、溶液またはコロイド性懸濁液によって)触媒担体フレームワークの内部ポア構造へ添加できる。それらは、触媒活性金属と別々に、あるいは同じ溶液またはコロイド性懸濁液の一部として組み込むことができる。
【0038】
触媒担体フレームワークがアニオン性である場合、例えばアルミノケイ酸塩やアルミノケイ酸塩ゼオライトの場合、イオン交換を行うことで電荷平衡カチオン(例えば、少なくとも1つの第1族(Group I)または第2(Group II)族金属のカチオン)を置換することができる。そのようなプロセスはしばしば「イオン交換」と称され、好ましくは、イオン交換は、ゼオライトフレームワークを、置換カチオンを含む塩溶液にさらすことによって置換カチオンを提供することを特徴とする。塩溶液は水溶性でもよい。あるいは、溶媒はアルコールなどの有機溶媒を含んでもよい。カチオンは、好ましくは触媒活性金属のプロモーターまたは共触媒であり、好ましい態様においてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される。カチオンは、好ましくは炭酸塩などの塩溶液の形で提供され、最も好ましくは炭酸水素塩溶液である。炭酸塩(特に、炭酸水素塩)の使用は、触媒担体フレームワークに与える乱れが少ないことが見出された。アルミノケイ酸塩およびアルミノケイ酸塩ゼオライトの場合、炭酸塩および炭酸水素塩の使用は、例えばそうでなければフレームワーク構造の破壊を引き起こす、フレームワークの脱アルミニウムおよびポアを遮断することができるアルミナの追加フレームワーク粒子の形成を減らす傾向があり、また触媒活性金属含有のクラスターのための能力を減らす傾向がある。フレームワーク構造を破壊することによって、焼結を減少する能力も負の影響を受ける。
【0039】
本発明の一つの態様において、触媒担体は、アニオン性ゼオライトフレームワーク(例えば、アルミノケイ酸塩ゼオライト)であるかまたはそれを含む。本方法は、周知の技術を用いてイオン交換を行い、フレームワークにカチオン(例えば、第1族または第2族金属のカチオン)を充填することを含んでもよい。このイオン交換を必要であれば1回以上行うことによって、担持フレームワークが、カチオンで可能な限り十分に交換されていることを確実にする。カチオンがプロモーターまたは共触媒である場合、これによってプロモーター充填が増加することに作用し、触媒活性に有用であり得る。加えて、フレームワーク上の平衡カチオンとしてのあらゆるプロトンを減少または除去することによって、塩基性沈殿剤の中和が生じにくくなる。
【0040】
さらなる態様において、ゼオライトフレームワーク担体上の第一のイオン交換を、ゼオライトフレームワークに一またはそれ以上の第1族または第2族金属のカチオンを充填するために行い、次いで第二のイオン交換を行う。第二のイオン交換は、フレームワーク中のカチオンプロモーターの充填を高めるかもしれない。第二のイオン交換に充填されたカチオンは第一のイオン交換で充填したのと同じであるものが好ましいものの、別のカチオンであってもよい。本発明の好ましい態様において、本方法には、ゼオライトフレームワーク上の第一、第二および第三のイオン交換を行うことによってフレームワーク中の好ましいカチオンの充填を高めることが含まれる。
【0041】
イオン交換には、イオン交換溶液を加熱することが含まれるかもしれない。イオン交換にはさらに、触媒活性金属の添加または含浸前に、イオン交換ゼオライトを乾燥およびか焼することが含まれるかもしれない。
【0042】
触媒担体がアニオン性フレームワーク(例えば、アルミノケイ酸塩やアルミノケイ酸塩ゼオライト)を含む場合、フレームワークの、一またはそれ以上の電荷平衡カチオンによってイオン交換される範囲は、好ましくは2wt%よりも多い。フレームワーク中の電荷平衡カチオンの割合は好ましくは5wt%よりも多く、より好ましくは10wt%よりも多い。本発明の特定の態様において、フレームワーク中の電荷平衡カチオンの割合は12wt%よりも多い。
【0043】
初期湿潤含浸法は、触媒活性金属およびプロモーターまたは共触媒金属を触媒担体フレームワークの内部ポア構造中に組み込む方法の一つである。初期湿潤含浸法には、計算された、触媒担体の内部ポア構造のポア容積と等しい量の、一またはそれ以上の金属が溶解した化合物(例えば、塩)を含有する溶液を添加することが含まれる。初期湿潤含浸法には、溶液を加熱することによって、溶液中の金属化合物(例えば、塩)の溶解を向上させることが含まれ得る。金属含有塩の適当な例には、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、ハロゲン化物、アルコキシド、フェノキシド、酢酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、アセチルアセトネートおよびカルボン酸塩が挙げられる。好ましい塩のアニオンは、触媒担体フレームワークの内部多孔性構造へ浸入ができるのに十分小さい有効径を有するものである。好ましいアニオンは、塩が水溶液に溶解する場合に、少なくともいくらかの酸性の特徴を有し、次いで塩基性沈殿剤(例えば、アルカリ金属炭酸塩または炭酸水素塩)と効果的に反応して触媒活性金属含有のクラスターを形成することができる。硝酸が特に好ましいアニオンである。
【0044】
本方法は典型的に、触媒活性金属を含む溶液との触媒担体の単一処理を含む。同じまたは別の金属との追加処理を必要に応じて行うこともできるものの、これは好ましくは、初期浸透物質を洗浄し、必要であればさらなる沈殿剤の添加後に行う。
【0045】
当該技術は、溶液またはコロイド性懸濁液から固形担体へ触媒的活性種の沈殿を含む析出沈殿法であって、沈殿剤(触媒担体の内部ポア構造内にある)は含浸溶液または液体との接触時点で固相中にある方法として考えられる。好ましい態様において、沈殿は、酸/塩基反応によって行われる。
【0046】
溶液またはコロイド懸濁液の溶媒または液相のアイデンティティー(identity)は、特に制限されない。その目的は、触媒担体の内部ポア構造を介して触媒活性金属の拡散を促進させることであり、触媒活性金属を含有する化合物の溶解を確実にする能力に従って選択されるか、あるいは、適当なサイズのコロイド性粒子が得られるように触媒活性金属含有コロイドを安定化させることである。溶液またはコロイドは、付加的な構成成分(例えば、一またはそれ以上の付加的な、触媒活性金属、任意の共触媒の構成成分または任意のプロモーターの構成成分)を含んでもよい。溶媒または液相として作用する液体の組み合わせを使用することができる。水は便利な溶媒であり、特に触媒担体のポア内にクラスターの効率的な沈殿を確実にするために触媒活性金属含有溶液のpH制御が必要な場合に便利である。しかしながら、他の溶媒/液体および混合物の使用が排除されるわけではない。例えば、アルコール、ケトン、アルデヒド、カルボン酸エステルおよびエーテルなどの有機液体も、個別にまたは別の液体との組み合わせで、用いることができる。
【0047】
触媒担体フレームワークの内部ポア構造内の沈殿剤は、懸濁コロイドまたは溶液から触媒活性金属の沈殿を起こし、触媒活性金属を含むクラスターを形成する。沈殿剤は触媒担体のフレームワーク構造の一部ではなく、単に、負電荷を持つフレームワーク構造の電荷平衡カチオンというわけでもなく、例えば典型的には、沈殿剤は、例えば合成ゲルの未反応構成成分として含まれることによって、または初期湿潤含浸法などの合成後技術で内部多孔性構造へ浸透させることにによって、触媒担体フレームワークの内部多孔性構造に組み込むことのできる化合物である。沈殿剤は、最終的な活性触媒のさらなる成分を含むかまたはそれに変換することができ、例えば、それは適宜行われる熱処理または化学的還元などのさらなる処理後に、プロモーターまたは共触媒として機能する。
【0048】
沈殿剤は、好ましくは、適宜イオン交換される触媒担体の乾燥重量に基づいて2wt%またはそれ以上の充填量で触媒担体の内部ポア構造中に含まれる。充填量は、より好ましくは5wt%またはそれ以上、さらにより好ましくは10wt%またはそれ以上である。触媒担体内部ポア構造中に含むことのできる沈殿剤が多いほど、高い、触媒活性金属の充填能力を達成することができる。
【0049】
担体を、触媒活性金属を含む溶液またはコロイド性懸濁液と接触させる前は、沈殿剤を有する触媒担体は乾燥した形態にある。従って、沈殿剤が溶液ベース含浸法(solution-based impregnation method)によって触媒担体へ添加されている場合は、触媒活性金属との接触が行われる前に溶媒は除去される。これは、触媒担体の内部ポア構造が、触媒活性金属含有溶液またはコロイド性懸濁液の内部ポア構造への侵入を妨害することができるいかなる液相を含まないことを確実し、また触媒活性金属含有のクラスターの沈殿の効率および速度を改善するのに役立つ。
【0050】
沈殿剤は、酸塩基沈殿を介して働くことができる。一つの例において、沈殿剤は塩基性であってもよく、例えば炭酸または炭酸水素アルカリ金属塩である。触媒活性金属(他の触媒活性金属、プロモーターおよび共触媒などの付加的な構成成分も適宜含んでもよい)を含む溶液またはコロイド性懸濁液が塩基性沈殿剤と接触する場合、触媒活性金属を含む不溶性クラスターは例えば不溶性水酸化物または酸化物種の沈殿によって形成される。そのような沈殿クラスターは、触媒として用いられる前に還元プロセスによって(例えば、水素ガスを含む還元性雰囲気中で加熱することによって)金属クラスターへ変換することができる。
【0051】
沈殿剤が酸塩基沈殿を通じてクラスターの形成を起こす場合、触媒活性金属を含む含浸溶液のpHを前もって制御または調整することによって、内部ポア構造内の沈殿の程度および効率を最適化する。pHは公知の方法によって、例えば触媒活性金属を含む溶液またはコロイド性懸濁液のpHを高めるために適当な水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩を添加することによって、あるいはpHを下げるために適当な酸を添加することによって調整できる。単なる代表的な例としてだが、水溶液またはコロイド性懸濁液に関して、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは好ましくは水酸化アンモニウムなどの水酸化物溶液を用いてpHを高めることができ、一方で硝酸またはカルボン酸を用いてpHを下げることができる。ある態様において、触媒担体に添加する前の溶液またはコロイド性懸濁液は、約1〜2の範囲のpH、例えば1.1〜1.7の範囲のpHを有する。典型的には、沈殿剤含有触媒担体との接触後、コロイド性懸濁液の溶液または液相のpHは、好ましくは4またはそれ以上、より好ましくは5またはそれ以上、例えば6またはそれ以上に増加する。得られた含浸溶液またはコロイド性懸濁液のpHを制御する別の方法は、より多くの充填は結果的に含浸溶液の得られたpHを高める効果が強いというように、触媒担体に充填された塩基性沈殿剤の量を制御することである。
【0052】
沈殿剤が塩基性を有することおよび得られた溶液のpHが4またはそれ以上であることのさらなる利点は、触媒担体上に触媒活性金属を含む溶液またはコロイド性懸濁液に伴うあらゆる酸性度のいかなる崩壊効果も還元または中和できることである。例えば、アルミノケイ酸塩ゼオライトの場合、そのようなゼオライトを酸溶液にさらすことは結晶化度にとって有害であるかもしれず、フレームワーク構造の損失を引き起こし得る。崩壊は、フレームワークから構成成分の一部を剥がすことによって引き起こされ得る、例えば、アルミニウムはフレームワークから剥がされ、ポア構造内部にアルミナの追加フレームワーク粒子が形成され得る。これは、焼結阻害を抑えるポア構造の破壊のみならず、潜在的にはポアの遮断さえも引き起こすかもしれず、触媒活性金属含有のクラスターを形成することができる内部ポア構造の量も減少する。従って、そのような破壊は、活性触媒生成物の焼結、移動および/または凝集の防止に対して否定的な結果をもたらし、それによって、表面積および触媒性能(例えば、その活性、選択性、および/または安定性)に対して負の影響を与える。
【0053】
塩基性沈殿剤それ自体の使用もまたそのような効果を緩和し、それは触媒活性金属および他の構成成分と一緒に含浸に使用される、より酸性度の高い金属塩溶液の可能性を許容することによって行われる。これによって、必要であれば先に熟考(previously contemplated)したよりもより高濃度溶液な金属塩およびまたはコロイド性懸濁液を使用することができ、触媒担体中のそれぞれの金属の充填を改善できる、というさらなる利益がある。触媒担体がアニオン性(anionic in nature)である場合、アニオン部位が電荷平衡カチオン(例えば、アルカリ金属カチオン)と可能な限り十分に交換されるのを確実にすることは、いかなる含浸溶液または液体の酸性度のあらゆる効果を緩和するのに役立ち、また中和反応を介して沈殿剤の活性の潜在的損失も抑えられる。
【0054】
従って、本発明の方法において、触媒製造中に触媒担体のフレームワーク破壊が一定量は未だに起こるかもしれないが、本発明はフレームワーク構造をより良く維持することを提供できる。これは、ゼオライトのように、結晶多孔性フレームワーク構造を有する触媒担体に特に好都合である。
【0055】
また適宜行われてもよいことだが、触媒担体粒子の外表面上に存在し得る沈殿剤はいずれも触媒活性金属を含む溶液またはコロイド性懸濁液と接触させる前に洗い落とす一方で、内部ポア構造内から沈殿剤が除去されるのを防ぐ(例えば、繰り返しの洗浄を防ぐ)。外部の沈殿剤を除去することは、含浸し、内部ポア構造内に触媒活性金属含有のクラスターの沈殿を促進させる間、触媒担体粒子の外表面上に形成される金属クラスターの傾向を減らすのに役立ち得る。しかしながら、表面上における少量の塩基性沈殿剤は、触媒担体フレームワークの外表面上の酸性含浸溶液からのあらゆる潜在的被害を緩和するのに役立ち得る。
【0056】
負電荷を持つフレームワーク(例えば、アルミノケイ酸塩ゼオライト)を有する触媒担体であって、イオン交換処理にさらされている場合、触媒担体はイオン交換後に洗浄することができ、一方でゼオライト担体は部分的に乾燥、湿潤スラリーまたはペースト様状態(paste-like condition)にある。
【0057】
上述の原理を例証するために、担持カリウム促進鉄触媒(supported potassium-promoted iron catalyst)の製造例をこれから説明する。そのような触媒を製造するために、触媒担体としてアルミノケイ酸塩ゼオライトのような、アニオン性フレームワークを有するゼオライトを使用することができ、それはしばしば電荷平衡カチオンとしてのナトリウムと一緒に供給または製造される。フレームワークがカリウムで完全に荷電平衡になり、内部ポア構造内に過剰なカリウム塩が残るように、アニオン性触媒担体は、カリウム塩水溶液の含浸の一またはそれ以上によってカリウムで完全に交換することができる。そのような状況において、カリウム塩の便利な原料は炭酸カリウムおよび/または炭酸水素カリウムであり、というのも、そのような塩は塩基性であり、また触媒担体のフレームワーク構造に対して著しい損傷や破壊を起こす傾向がないからである。過剰な炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウムは次いで、沈殿剤として作用することができる。カリウム充填物質は、炭酸カリウム/炭酸水素カリウム沈殿剤の表面トレースを触媒担体の外表面から除去するために穏やかに洗浄またはすすぐことができるものの、決して多い量ではない、というのも内部ポア構造内からの沈殿剤がかなりの程度まで除去されてしまうからである。次いで、鉄含有塩の溶液[例えば、硝酸鉄(III)の水溶液]を得られたカリウム修飾ゼオライトに加え、ゼオライトの内部ポア構造内に鉄含有クラスターの沈殿を起こすことができる。
【0058】
本発明のいくつかの側面および態様において、本方法は、カチオン空き金属酸化物クラスターを形成することを含むかもしれない。カチオン空き金属酸化物クラスターはカチオン空きを有する酸化物質であって、空きから生じる潜在的に過剰な負電荷が、遷移金属またはランタニドイオンのような多酸化状態(multiple oxidation states)を採用する能力を有するクラスター中の他のカチオンからの酸化状態の増加によって補償される。あるいは、詳しくは後述するように、過剰な負電荷は、異なるカチオン(例えば、フレームワークの電荷平衡カチオンまたは沈殿剤に伴うカチオン)によって平衡となることができる。
【0059】
クラスターの構造は、結晶であってもよい。一つの態様において、触媒活性金属を含むクラスターは、一般式ABO
3のペロブスカイト構造または一般式AB
2O
4のスピネル構造である。ペロブスカイト構造は、化合物CaTiO
3によって採用される結晶相であるが、CaおよびTiは、同一の構造タイプを維持しながら、他の要素で置換されることができる。スピネル構造はMgAl
2O
4の構造に基づいており、同一構造を維持しながら、MgおよびAlは同様に他の要素で置換されることができる。ペロブスカイト構造を有する触媒の例には、WO 2007/076257に記載されているもの(それらはフィッシャー・トロプシュ反応に有用である)が含まれ、またK、Fe、CuおよびLaの要素を含む触媒も含まれる。スピネル構造を有し、またフィッシャー・トロプシュ反応に対して活性のある触媒の例には、式Fe
xCo
yO
4(x+y=3)のUS 4,537,867に記載されたもの(金属AおよびBとしてそれぞれ鉄およびコバルトを含む)が含まれ、それはまたアルカリ金属によっても促進され得る。本発明に従って、ペロブスカイトまたはスピネル構造のそのような物質は、触媒活性金属並びにいかなるプロモーターおよび共プロモーター(例えば、溶解Fe、Mnおよび/またはCo塩を含む水溶液、またはFe、CuおよびLa塩を含む水溶液)を含む溶液を加え、沈殿剤としてK塩を含む担体(例えば、炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウムが完全にカリウム交換されたアルミノケイ酸塩ゼオライトのような塩基性カリウム塩の形態)を含浸させ、適宜水で洗浄するかまたはすすぎ、続いて浸透物質を乾燥してあらゆる水を除去し、触媒担体フレームワークの内部ポア構造中の結晶ペロブスカイトまたはスピネル物質の形成を生じさせることができるように、高温(例えば、500℃〜630℃の範囲における温度)で酸素含有雰囲気中、乾燥物質をか焼することによって作ることができる。ペロブスカイトまたはスピネル物質は、カチオン空きまたはカチオン欠失にしておくことができる。クラスターの小さいサイズに起因して、またクラスターが可溶な前駆体から形成されることから、そのようないかなる結晶相を生成するのに要求される温度は典型的にはバルク結晶構造を作る方法のそれよりも小さく、それはしばしば出発物質として別々の不溶性酸化物質が用いられる。
【0060】
金属酸化物クラスターの別のタイプおよび構造は、本発明の方法を用いて作ることができる。全体的に見て生じる構造は、金属それ自体のアイデンティティーのみならず、それらの相対的な割合およびそれらの正電荷にも依存する。従って、適当な、金属の選択およびそれらの相対量は、得られた金属酸化物クラスターの構造を方向付けるのに使用することができる。
【0061】
カチオン空き(場合によっては、「カチオン欠失」または「金属欠失」と呼ばれる)金属含有クラスターは、負電荷を持つフレームワークに伴うカチオンと静電相互作用を有するということ、およびこの静電相互作用は、電荷平衡カチオンおよびクラスターの移動の緩和または防止に役立つことができ、さらには特にゼオライトにおけるもののようにゼオタイプ構造で例示されるようなそのままの「ウィンドウ」/「ケージ」構造において、クラスターの焼結または凝集の緩和または防止に働くことが仮説として立てられている。移動および/または焼結並びに凝集は一般的に、触媒パフォーマンスに有害をもたらす。触媒からの電荷平衡カチオンの移動を防止することによって、また電荷平衡カチオンがプロモーターまたは共触媒として働く場合、触媒活性金属含有のクラスターは共触媒/プロモーターのより多い充填で形成することができ、それによってあらゆる促進または共触媒効果を高めることができる。これは先行技術とは対照的である。先行技術では、過剰なプロモーター充填は活性金属粒子パフォーマンスに有害をもたらすことを教示し、そこでは過剰なプロモーターは触媒担体から移動して活性の喪失を生じ、また担持触媒と組み合わせて存在するかもしれない他の構成成分(例えば、二元触媒またはニ官能性触媒系統における第2触媒)にも悪い影響を与え得る。
【0062】
触媒活性金属を含む溶液またはコロイド性懸濁液と接触後、触媒担体を、例えば空気中で通常の乾燥炉で、乾燥させることができる。あるいは、乾燥はマイクロ波によって行うこともできる。別の態様において、乾燥は酸化性または中性雰囲気中で凍結乾燥によって行うこともできる。これらの乾燥方法のいずれも減圧下で行うことができる。
【0063】
触媒活性金属のクラスター形成後、得られた物質は中性または酸化性雰囲気中でか焼されてもよく、さらに通気を良くするためのガス状酸化物を含んでもよい。か焼または他の後処置(例えば、乾燥または還元)の前に、触媒担体の外表面から過剰な液体を除去するために、触媒担体を洗浄することができる。この段階での徹底的な洗浄は好都合である、というのも沈殿触媒または触媒活性金属が触媒担体フレームワークの内部多孔性構造内に捕捉されるからであり、従って洗浄によってはいかなる量も除去されることはなく、沈殿触媒活性金属含有のクラスターの充填を著しく損なわずにあらゆる不純物または未反応物質を除去することを可能とする。
【0064】
被包された触媒活性金属含有のクラスターを製造するための従来の方法は、大規模で行うのが簡単でないという傾向があった。本発明の方法は、熱安定性担持被包された(thermally stable supported encapsulated)金属および金属酸化物触媒粒子の商業的バルク製造のための経済的方法を提供する。
【0065】
本発明の製法で作った担持触媒は、化学反応を触媒するのに有用であり得る。
【0066】
例えば、触媒を用いることで、水蒸気改質(steam reforming)または水ガスシフト反応を触媒することができる。水蒸気改質においては、水は炭化水素または他の有機物質と接触して、合成ガスを生成する。水ガスシフト反応は、一酸化炭素を、水の存在下で二酸化炭素および水素に変換させる。そのような反応において、金属クラスターを形成するための触媒の前還元を必要とせずに、スピネルまたはペロブスカイト構造のような金属酸化物クラスターは触媒として使用することができる。
【0067】
フィッシャー・トロプシュ(FT)法は、本発明の方法で作られた触媒によって触媒され得る反応の別の例である。FT法は、合成ガス(一酸化炭素、水素および典型的には二酸化炭素の混合物)を液体炭化水素に変換するのに用いることができる。合成ガスは、部分酸化のようなプロセスまたは水蒸気改質原料(例えば、バイオマス、天然ガス、石炭または固形有機もしくは炭素含有老廃物もしくは廃棄物)を通して生成し得る。FT法の生成物は、反応条件および触媒構成成分を変える、例えば炭化水素のパラフィン/オレフィン割合を修飾し、また生じ得る酸化生成物(例えば、アルコール類、ケトン類およびアルデヒド類)の量を増加または減少させることによって目的に合わせることができる。FT反応において、触媒活性金属含有のクラスターは典型的には使用前に化学的に還元される(例えば、高温で水素ガスによる処理される)。
【0068】
一般的に、フィッシャー・トロプシュ法には2種類ある、すなわち高温プロセス(HTFT)および低温プロセス(LTFT)である。FT触媒にしばしば使用される触媒活性金属には、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、オスミウム、白金、イリジウム、レニウム、モリブデン、クロム、タングステン、バナジウム、ロジウム、マンガンおよびその組み合わせからなる群より選択されるものが含まれる金属のこのグループを、本明細書においてグループAと呼ぶ。触媒活性金属または少なくとも1つの触媒活性金属は、好ましくは鉄およびコバルトから選択される。
【0069】
FT触媒には、一またはそれ以上のアルカリ金属またはアルカリ土類金属、好ましくはリチウム、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム、セシウム、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択されるものも含まれ得る。アルカリ金属およびアルカリ土類金属プロモーターは、1種類のみのプロモーターとして、または他のプロモーターと一緒に組み合わせて使用することができる。このカテゴリーにおける好ましいプロモーターは、カリウムである。
【0070】
フィッシャー・トロプシュ触媒において使用することができるプロモーターの他の例には、イットリウム、ランタン、セリウム、他のあらゆるランタニド金属、およびその組み合わせからなる群より選択される金属が含まれる。金属のこのグループを、本明細書においてグループBと呼ぶ。そのようなプロモーターは、1種類のみのプロモーターとして、または他のプロモーターと一緒に組み合わせて使用することができる。このグループの好ましいプロモーターは、一またはそれ以上のランタンおよびセリウムから選択される。
【0071】
使用することができるプロモーターのさらなる例には、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、パラジウムおよびその組み合わせからなる群より選択される金属が含まれる。金属のこのグループを、本明細書においてグループCと呼ぶ。このグループの好ましいプロモーターは、銅である。
【0072】
フィッシャー・トロプシュガス相プロセス(Fischer Tropsch gas-phase processes)は、典型的には高温(HTFT)および低温(LTFT)プロセスに分類される。HTFT法は典型的には鉄含有触媒を用いて触媒され、300〜400℃の範囲における温度および10〜25バール(1.0〜2.5MPa)の範囲における圧力で作動する。LTFT法は典型的には鉄またはコバルト含有触媒を用いて触媒され、150〜240℃の範囲における温度および10〜25バール(1.0〜2.5MPa)の範囲における圧力で作動する。LTFTガス相プロセスは、典型的には長めの鎖の炭化水素形成を好む。しかしながら、本発明の方法で製造した触媒は高温でも安定であることができるので、本方法は得られた触媒によって耐えることができる処理条件の範囲に柔軟性を提供し、触媒反応の反応ゾーンにおける温度が調整されることを可能とする。
【0073】
一またはそれ以上の触媒活性金属は、本発明の方法によって形成されたクラスターにおける唯一の金属であり得る。あるいは、クラスターには、一またはそれ以上の付加的な触媒金属、共触媒およびプロモーターが含まれ得る。FT法のための担持触媒について、触媒活性金属は、好ましくはグループAまたはその組み合わせから選択することができる。好ましくは、少なくとも1つの触媒金属はHTFT法については鉄であり、LTFT法については少なくとも1つはコバルトである。好ましくは、さらに存在するのは、アルカリまたはアルカリ土類金属、グループBの金属およびグループCの金属から選択される金属の一またはそれ以上である。好ましくは、少なくとも1つのアルカリ金属は存在し、それは好ましくはカリウムである。
【0074】
一つの態様において、本発明の方法は以下:
ゼオライトフレームワークを含む触媒担体であって、該ゼオライトフレームワークが、第1族もしくは第2族金属またはそれらの組み合わせの少なくとも1つの電荷平衡カチオン含有する触媒担体を提供し;
上記グループAおよびその組み合わせから選択される金属の第1塩;上記グループBおよびその組み合わせから選択される金属の第2塩;および上記グループCおよびその組み合わせから選択される金属の第3塩;を含む金属塩溶液を提供し;
ゼオライトフレームワークを初期湿潤含浸法によって金属塩溶液で含浸させ;並びに
浸透ゼオライトフレームワーク担体をか焼して、ゼオライトフレームワーク担体中に混合金属酸化物クラスターを形成させる[ここで、混合金属酸化物クラスターは式A
xB
yC
zO
nを有し、式中、x、yおよびzは各々、酸化物中の金属A、BおよびCの相対的比率であり、x+y+zは整数であり、nは酸化物を中性に帯電させる酸素の相対的比率である]
ことを特徴とする。
【0075】
この態様において、形成されたクラスターには、グループA、およびグループBおよびCの他の金属、加えて第1族または第2族金属からの触媒活性金属が酸化物の形態で含まれる。この態様におけるゼオライトは、好ましくはアルミノケイ酸塩ゼオライトである。
【0076】
そのように形成されたクラスターは、浸透および電荷平衡金属の水酸化物または酸化物であってもよく、またはそれを含んでもよい。従って、本方法には、金属または炭化物種を形成することによって、反応開始前に触媒を活性化させるように、クラスターを還元および/または浸炭させることを含むことができる。
【0077】
反応条件下では、反応中の反応物および生成物からの酸素の条件および量によっては、触媒活性金属を含むクラスターは、多酸化状態になるかもしれない。例えば、FT反応において、一酸化炭素および二酸化炭素の存在は、反応中の酸素の原料を提供し、それは結果的に生成物を、酸化化合物(例えば、アルコール類、ケトン類、アルデヒド類およびカルボン酸類)の形態にさせる。それらはまた、触媒構成成分の酸化または部分酸化を引き起こす、酸素の原料を提供する。従って、FT反応のような反応の間、クラスターは、金属状態に酸化または部分酸化、部分的または完全に還元される、および/または炭化物または部分的炭化物相にあるかもしれない。
【0078】
本発明の製法で製造した担持触媒は、他の触媒と組み合わせることができ、例えばニ官能性または多官能性触媒を形成する。
【0079】
例えば、本発明の方法で製造した担持触媒は、適宜、単一反応ゾーン中で酸性触媒と組み合わせることができる。担持触媒を酸性触媒と組み合わせて用いることによって、担持触媒上に形成された生成物はさらに、より商業的に価値の高い生成物へアップグレードされる。例えば、FT触媒に対して酸触媒を加えることによって、オレフィンオリゴマー化の程度は増加し、ディーゼル燃料として使用するのに適した範囲の炭化水素鎖長を有する、有用な液体炭化水素の収率を増加させることができる。
【0080】
本発明の方法の利点は、触媒の構成成分(例えば、触媒活性金属、プロモーター、共触媒および電荷平衡カチオン)の移動(migration)を減少させるので、そのようなカチオンが触媒担体の内部ポア構造から外へ移動するのを阻害し、それらを他の構成成分(例えば、付加的な酸触媒)と接触することを防ぎ、それは中和反応または他のプロセスにわたって非活性化を減らすか無くすことである。従って、担持触媒が使用される場合でも(例えばゼオライトと一緒に多量のアルカリまたはアルカリ土類カチオンを含むものの場合でも)、これらのカチオンの移動による、ニ官能性触媒の酸性触媒構成成分の非活性化は減るか、さらには無くなる。
【0081】
一つの態様において、そのようなニ官能性触媒は酸化炭素水素化プロセス(carbon oxide hydrogenation processes)に使用され、またそれは、上述の方法で製造した担持FT触媒および酸性触媒を含む。酸性触媒は、酸性ゼオライト、シリカ−アルミナ、酸硫化物(sulphided oxide)、酸性レジン、固形リン酸、酸性粘土、およびその組み合わせからなる群より選択される固形であるかもしれない。そのような酸性触媒の例は、H−ZSM−5ゼオライトである。
【0082】
炭化水素クラッキング、オリゴマー化、環化および異性化、並びに酸化脱水などの反応に対して、酸性構成成分は活性を有することができる。
【0083】
担持触媒は、触媒担体としてゼオライトフレームワークであるか、それを含むことができ、同様に(in turn)第1族または第2族金属の電荷平衡カチオンの少なくとも1つ(例えば上述に記載のようなカリウム)、および鉄などの触媒活性金属を含むクラスターを含むことができる。
【0084】
そのような態様において、ニ官能性触媒の一つの官能性構成成分(FT合成構成成分)は塩基性カチオンによって促進されることができ、同時にそのような塩基性カチオンの、ニ官能性触媒の別の官能性構成成分(酸性構成成分)に対するあらゆる負の効果を防ぐことができる。
【0085】
従って、本発明の方法で製造した触媒はニ官能性触媒において使用することができ、例えば、ガソリン沸騰範囲において高いオクタン価炭化水素を生成するために、酸性触媒(例えば、炭化水素を異性化できる)と組み合わせて、触媒活性金属含有のクラスターを含む担持触媒を実用化する炭化水素生成反応(例えば、FTプロセス)に効果的である。
【0086】
ニ官能性触媒は、別の触媒性構成成分を単一形態(例えば、粒子、ペレット、成形品または顆粒)において一緒に含むことができる。あるいは、ニ官能性触媒は、物理的に一緒に混合された(例えば、本質的にランダムに触媒床内の層中で分散または分離された)、別の触媒性構成成分の、分離された非結合の形態を含むこともできる。
【0087】
本発明の製法によって形成された担持触媒は、一酸化炭素/二酸化炭素水素化反応において使用することができる。
【0088】
例えば、炭化水素生成物を生成するために、担持触媒(適宜必要であれば、反応前に化学的に還元された後)の存在下、一酸化炭素および/または二酸化炭素(それらは反応器から除去することができる)が水素化されるように、水素並びに少なくとも1つの一酸化炭素および二酸化炭素を含むガス原料は、担持触媒を含む反応チャンバーへ送ることができる。
【0089】
炭化水素生成物には、飽和、不飽和、酸化、非酸化、芳香族、直線状、分枝状、または環状の炭化水素が含まれ得る。ある態様において、好ましい炭化水素生成物は酸化炭化水素であり、中でもアルコールが最も望ましい。別の態様において、C4〜C9範囲、例えばC6〜C9範囲における、分枝状および/または直線状非酸化炭化水素が好ましい炭化水素生成物である。さらに別の態様において、C10〜C23範囲、例えばC16〜C20範囲における直線状非酸化炭化水素が好ましい炭化水素生成物である。目的生成物への選択性は、多数の方法によって制御することができ、例えば、反応温度および圧力、また反応物および触媒構成成分の相対的濃度または分圧を制御することによって、および様々な構成成分を反応器に加えるかまたは循環させることによって行うことができる。一酸化炭素および二酸化炭素水素化プロセスは、当業者にとって周知である。一つの態様において、2つ目の炭化水素生成物のセット(second set of hydrocarbon products)は、反応器の生成物の全てまたは一部を、別の触媒またはニ官能性触媒の構成成分と一緒に反応させることによって生成することができ、例えば高いまたはより高いオクタンガソリン構成成分を生成するためのリフォーミング反応を通して行うことができる。2つ目の炭化水素生成物のセットは、ガソリン、灯油、ディーゼルまたは潤滑油沸点範囲またはその組み合わせにおいて飽和または不飽和C
4+炭化水素であるかもしれない。
【0090】
最初の炭化水素生成物のセットまたはその一部のリフォーミングには、低いオクタン価の炭化水素生成物をより高いオクタン価の生成物に変化させるいかなるプロセスをも含むことができ、オリゴマー化、異性化、芳香族化、水素添加分解、アルキル化反応またはその組み合わせも含むがこれらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
続いて、図面に言及しながら本発明の様々な態様を説明するが、これらは単に例示する目的のみである。
【0092】
【0093】
【
図1B】
図1Bは、ゼオライトMCM−22の構造の略図である。
【0094】
【
図2】
図2は、本発明のある態様における触媒の略図である。
【0095】
【
図3】
図3は、本発明のある態様における触媒の一般的な製造工程を模式的に示すブロック図である。
【0096】
【
図4】
図4は、本発明のある態様における、ニ官能性触媒ペレットの略図である。
【0097】
【
図5】
図5は、本発明のある態様における触媒が使用され得る反応スキームの略図である。
【0098】
【
図6】
図6は、本発明の触媒の試験に用いる実験セットアップ(experimental set-up)の略図である。
【0099】
【
図7】
図7は、CO水素化処理で試験された、本発明のある態様における触媒のCO変換および選択性を示すグラフである。
【0100】
【
図8】
図8は、CO水素化処理において試験された本発明の別の態様の触媒の変換および選択性を示すグラフである。
【0101】
(発明の態様の詳細な説明)
本発明は、炭化水素生成または製造において使用するための触媒の製造によって例証することができ、有用な炭化水素を形成するための一酸化炭素および二酸化炭素の水素化反応に関する処理における非限定の例を参照しながら記載される。本発明は幅広い適用があり、本発明の原理は、関連する理論および本発明者らによる理論の応用に言及しながら説明される。
【0102】
ゼオライト担体フレームワークは、活性金属クラスター触媒の触媒担体として使用することができる。
図1AはゼオライトYの基本的なフレームワーク単位の略図を示し、一般的に10のように描かれる。ゼオライトYは、フォージャサイト(FAU)ゼオライト構造(国際ゼオライト学会構造命名法委員会に従う)を取る。ゼオライトXは、フォージャサイトゼオライト構造の別の例であり、ゼオライトYとはその化学組成の点で異なる、特にそのケイ素とアルミニウムのモル比が低い。
【0103】
フォージャサイト構造を有するゼオライトは、数オングストロームから1または2ナノメートルのオーダー(order)の寸法(dimensions)を有するゼオライト物質の結晶構造中に空隙スペースまたはケージ12を有することから、本発明の触媒組成物の担体に適している。これらの空隙スペースまたはケージは開口部またはウィンドウ14を通じてアクセスされ、それは典型的には、それらが囲む空隙スペースの最大寸法よりも小さい最大寸法を有する。空隙スペースは、その格子中の位置およびその寸法に依存して、ナノケージまたはスーパーケージと呼ばれる。
図1Aに示される、ゼオライトYに対応するフォージャサイトゼオライト構造の場合、スーパーケージの空隙スペースは1.3ナノメートルの最大寸法を有する。スーパーケージの空隙スペースにアクセスを与える開口部は、0.74ナノメートルの最大寸法を有し、12員環によって形成される。フォージャサイトゼオライト構造中のスーパーケージの空隙スペースもまた、より小さい寸法の10の方ソーダ石ケージによって囲まれており、六角柱によって結び付けられている。
【0104】
フォージャサイト構造を有するゼオライトは、本発明の方法の触媒組成物を生成するのに適しており、というのもゼオライト開口部の寸法よりも大きな最大寸法を有するクラスターを空隙スペース中に形成することができるからである。これによって、触媒活性金属含有のクラスターの凝集または焼結を緩和でき、というのもクラスターは担体スーパーケージ中に被包されるために隣接するクラスターとの接触を防ぐことができるからである。
【0105】
図1BはMCM−22ゼオライト(Mobil Composition of Matter No 22)の構造単位を示し、一般的には20で描かれており、それは国際ゼオライト学会構造委員会に基づくMWWフレームワーク構造を採用する。ゼオライトMCM−22は、その結晶構造によって定義されるスーパーケージ22を有し、またそれは1.82ナノメートルの最大寸法および0.71ナノメートルの最小幅の空隙スペースを有する。ゼオライトMCM−22スーパーケージの空隙スペースは、スーパーケージ空隙スペースの寸法よりも小さい最大寸法の開口部24を通じアクセスする。フォージャサイトゼオライトに関して、金属酸化物クラスターの凝集または焼結を緩和または防止するために、MCM−22ゼオライトの空隙スペース中に金属酸化物クラスターを形成させることが可能である。
【0106】
図2は、本発明の態様における触媒の構造単位を模式的に示し、一般的に30で描かれている。
図2で表される触媒単位は、ゼオライトYフレームワーク32上に担持されており、第1族または第2族カチオン34(この場合はカリウムカチオン)でイオン交換が既に行われている。カリウムカチオンは追加フレームワークカチオンであり、ゼオライトY格子の交換(負電荷を持つ)位置に付着している。カリウムカチオンは、ゼオライトYケージの空隙スペースを囲むフレームワークに充填され、結合されている。カリウムイオンおよび他の第1族および第2族イオンは、炭化水素生成プロセス(例えば、フィッシャー・トロプシュ法)における触媒機能に対して促進効果があることが知られており、特にカリウムは、フィッシャー・トロプシュ法の生成物において、メタン選択性を下げ、鎖成長率(chain growth probability)およびオレフィン特性を増加させる。本発明者らが発見したことは、過剰なイオン交換能力を提供するために、促進カチオンにとってフレームワーク上に充填されることが望ましく、従ってそれはイオン交換部位上で完全に交換される。電荷平衡カチオンとして機能しない過剰なカリウムは、内部ポア構造内で別々の塩または化合物の形態で存在する。この態様において、ゼオライトY中におけるカリウムの全充填量は14wt%よりも大きく、好ましくは15wt%よりも大きく、さらにより好ましくは20wt%よりも大きい。もし使用される沈殿剤が炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウムならば、カリウム−交換ゼオライト上でのそのような炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウムの充填量は、イオン交換されたゼオライト触媒担体の乾燥重量に基づいて、好ましくは5wt%またはそれ以上、より好ましくは10wt%またはそれ以上である。
【0107】
ゼオライトYケージの空隙スペースにおいて、活性金属酸化物クラスター36(すなわち、触媒が意図する触媒反応で活性)は、金属塩溶液を空隙スペース中に含浸させることによって形成する。金属塩は空隙スペース中に沈殿し、か焼後、金属酸化物を形成する。ゼオライトYケージにアクセスする開口部の最大寸法よりも大きい動力学的直径を有するように、金属酸化物は形成される。これによって、クラスターが移動する可能性が減り、従って隣接するクラスターの凝集または焼結を減らす。
【0108】
金属の特定の組み合わせは、カチオン欠失である混合金属酸化物クラスターを形成することができる。一つの態様において、そのような混合金属酸化物クラスターは、ペロブスカイトまたはスピネル構造を有する。理論に縛られなければ、カチオン空きまたは欠失である、そのような金属酸化物クラスターを形成させることによって、移動および焼結に対する安定性を向上できると考えられている。カチオン空き金属酸化物クラスターとは、構造または格子中にカチオン空きを有するものである。カチオン欠失クラスターは、カリウムプロモーターイオン(それはゼオライトフレームワークに関連している)のような電荷平衡カチオンを組み合わせることができるか、またはそれを受け入れることができる。
【0109】
理論に縛られること無く、本発明者らは、この組み合わせが、追加フレームワークカチオン(この場合は、カリウムプロモーター電荷平衡カチオン)およびカチオン空き金属酸化物クラスターとの間の静電相互作用を生じさせると考える。この相互作用はさらに、プロモーターカチオンの移動を減少させることに役立ち得る。従来の公知の方法で製造された触媒において、第1族および第2族プロモーター原子の移動は、アルカリ促進触媒非活性化の一般的原因である。移動を制限または防止することによって、非活性化は減少し、触媒の安定性は増加する。加えて、触媒中に含むことのできるプロモーターカチオンの割合を、増加させることができる。これまでは、プロモーターカチオンが移動するときの触媒安定性および非活性化に対する目に見える効果に起因して、活性金属触媒中に組み込むことのできるプロモーターカチオン量には上限があると考えられていた。これに対して、本発明の製造方法においては、多量に充填するカチオンプロモーターおよびカチオン空きクラスターの組み合わせが、安定なフレームワーク構造および制限されたカチオン移動を生じさせることが仮説として立てられる。
【0110】
好ましい担体構造は、中間体または相対的に低いシリカ含有量を有するゼオライトのものであり、というのもこれらはカチオンプロモーターを組み込むことができる、負電荷を持つ部位であるフレームワークを多く有する傾向にあるからであり、従ってそれはカチオンプロモーターの充填のより大きな程度を許容することができる。
【0111】
混合金属酸化物クラスターは式A
xB
yC
zO
nを有することができ、式中x、y、およびzは各々、酸化物中の金属A、B、およびCの相対的比率である。x、y、zの合計は整数であり、nは酸化物を中性に帯電させる酸素の相対的比率である。
【0112】
金属Aは、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、オスミウム、白金、イリジウム、レニウム、モリブデン、クロム、タングステン、バナジウム、ロジウム、マンガンおよびその組み合わせからなる群より選択される触媒活性金属である。フィッシャー・トロプシュ法を含む多くの処理において鉄が使用されており、好ましい態様では金属Aは鉄またはコバルトである。
【0113】
金属Bは、イットリウム、ランタン、セリウム、またはあらゆるランタニド金属、およびその組み合わせからなる群より選択される。金属Bの存在は、(再び、理論によって制限されることはないが)クラスターにカチオン空き特性を与えることで、クラスターのみならずフレームワークの安定性も改善することができると考えられる。加えて、金属Bはまた、担持触媒に、改善された水素吸着特性を与える。
【0114】
金属Cは、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、パラジウムおよびその組み合わせからなる群より選択される。理論に制限されることなく、金属C(特にCu)の存在は、金属クラスターを形成するための混合金属酸化物クラスターの還元温度を下げることに加えて、金属Aに対して正の促進効果があると考えられる。好ましい態様において、金属Cは銅である。
【0115】
図3は、本発明の態様の触媒の一般的製造方法を例示する模式的なブロック図であり、一般的に40で描かれる。以下のステップが、本発明の触媒を製造するために行われる。
【0116】
アルミノケイ酸塩ゼオライト触媒担体に関して、担体物質は典型的にはナトリウム電荷平衡カチオンと一緒に提供または製造され、すなわち、担体フレームワークの負電荷を平衡にさせるカチオンがナトリウム(Na
+)である。ゼオライトフレームワーク中の電荷平衡カチオンの位置は明確に定義されており、交換可能なカチオンの数は担体物質のシリカ−アルミナ割合に依存する。低いシリカ−アルミナ割合が使用されることは担体物質にとって好都合であるものの不可欠ではない、というのもそれは交換カチオンのためのより高い能力を提供するからである。好ましい態様において、ゼオライトYまたはゼオライトXは用いられる担体物質である。
【0117】
電荷平衡ナトリウムイオンを別のカチオンと置換することが望ましいのであれば、ゼオタイプ担体物質51のイオン交換41を行うことができる。これが、ゼオタイプ物質中に存在するカチオンが他のカチオンで交換されるプロセスである。このプロセスは、当技術分野で周知の複数の方法によって行うことができる。最も一般的なのは溶液中におけるイオン交換であり、交換されるカチオンまたは複数のカチオンを含む塩の一またはそれ以上の希釈溶液52が攪拌され、この溶液に担体物質が加えられる。イオン交換の間、溶液中のカチオンは連続的に、担体フレームワークにイオン結合したカチオンを置換し、イオン交換プロセスから得られた溶液53は廃棄される。
【0118】
交換が行われる速度を高めるために、溶液を加熱することができる。本発明において、望ましいイオン交換レベルを達成するために、単一ステップでは完全な交換が達成できないかもしれないことから、1回よりも多くのイオン交換プロセスを行うことが必要かもしれない。
【0119】
シリカ−アルミナ割合が分かるなら、特定のゼオタイプ物質のイオン交換能力を計算することができ、また計算された交換能力を用いて、ゼオタイプ物質中の金属含有量を決定し、ゼオタイプ物質中の金属含有量を比較することが可能である。これは、完全な交換が達成されたのか、または最大交換能力に対して多くのまたは少ない金属がゼオタイプ物質中に残ったかを示す。
【0120】
本発明の例示的態様において、イオン交換は、ゼオライトNa−Yを担体物質として、また炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウムを電荷平衡カチオンの原料として、さらに沈殿剤として用いて行われた。各イオン交換ステップ後、得られた物質を水で洗浄することが行われた。最後のイオン交換ステップは、ゼオライトのポア構造内に過剰な炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウム(沈殿剤として機能する)を含む物質を生じることができる。この場合、最後の洗浄ステップを行うことができ、その目的は部分的に、過剰な塩溶液以外の、物質の外表面上に残る炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウム塩溶液を担体のポアの内側から除くことにある。あるいは、最後のイオン交換ステップ後、得られた物質が連続的に過剰な炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウム溶液で処理する(例えば、ゼオライトのポアに炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウム沈殿剤を充填するために炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウム溶液を用いる初期湿潤含浸法で処理する)前に、イオン交換されたゼオライト物質はイオン交換の完了後に徹底的に洗浄し、続いて乾燥することができる。この時点では、過剰な炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウムを外表面から除くために、穏やかに洗浄/すすぎを行い、外表面上の触媒活性金属クラスターの沈殿を防ぐことができる。あるいは、そのような洗浄を避けることができ、それによって、触媒担体の外表面を酸性触媒活性金属含有溶液による損傷から保護するのに一役買うことができる。沈殿剤の最終的な初期湿潤含浸を用いることは好都合であり、というのも、沈殿剤溶液の既知濃度および触媒担体のポア容積の知識を用いることによって、沈殿剤の既知量を担体の内部ポアに充填することができ、それによって触媒活性金属含有のクラスターの最終的な充填の制御に一役買うことができる。
【0121】
洗浄ステップ後、得られた物質を乾燥して過剰な水分を除去する。乾燥は、従来の当技術分野で周知の乾燥方法のいずれかによって行うことができ、例えば、物質は100〜120℃で終夜、炉中で乾燥させることができる。
【0122】
物質の乾燥後、触媒活性金属を含む溶液またはコロイド性懸濁液を、例えば初期湿潤含浸法を用いて処理を行うことができる。初期湿潤含浸法技術には、触媒活性金属を含む溶液またはコロイド性懸濁液を生成することが含まれており、例えば、それは触媒担体物質に組み込まれるべき、一またはそれ以上の溶解塩の形態にある。担体と混合すべき液体(溶液またはコロイド性懸濁液)の量は、実質的に全ての液体が担体のポアに入るように、使用される担体のポア容積に近いかそれよりもわずかに多い。溶液またはコロイド性懸濁液を生成するのに使用される塩の量によって、最終的触媒の金属充填量が決まる。典型的には、触媒活性金属(および、プロモーターまたは共触媒のような、他のあらゆる金属)は、水溶液を用いて担体に浸透する。本発明の態様の例には、初期湿潤含浸法において、二回蒸留脱イオン水(double de-ionised water)を、塩(例えば、鉄、セリウムおよび銅の塩)のための溶媒として用いる。しかしながら、本発明は、他の金属塩および溶媒の使用にまで及ぶ。
【0123】
初期湿潤含浸42aの間、触媒活性金属54を含む溶液は酸性溶液であることができ、例えばそれは酸性である硝酸塩を含むことができる。溶液は担体のポア内に浸透し、第1族または第2族金属の炭酸塩または炭酸水素塩のような沈殿剤が存在する。この時点では、塩基性沈殿剤があるために溶液のpHは、触媒的活性金属が沈殿する42b(例えば酸化物または水酸化物の形態)の地点まで増加する。pH増加は、担体ポアおよびケージの内側の触媒活性金属含有前駆体塩の効果的で均一な沈殿を生じ、触媒活性金属含有のクラスターを形成する。本方法は従って、初期湿潤含浸法による析出沈殿方法である。生じた物質をこの時点で洗浄し、フレームワークおよび外表面から過剰な硝酸およびカリウムイオンを除くことができる。
【0124】
内部ポア内の沈殿の程度を最大化し、また酸性による負の効果(それはゼオライトのフレームワーク構造を攻撃するかもしれない)を低くするために、含浸前に、触媒活性金属含有溶液のpHを調整してより塩基性にして、沈殿地点pHのすぐ下の地点にすることができる。pH制御は、沈殿剤による沈殿の度合いを改善させることにも役立つ。
【0125】
含浸ステップ後、物質は乾燥される(43)。スラリーは炉中で乾燥させるために残したままでもよく、または他の従来の方法によって乾燥することもできる。水55は、物質から除去される。
【0126】
物質が乾燥した後、物質はか焼される(44)。このか焼ステップは、空気中の熱処理(56)であり、含浸処理で使用された塩のアニオンを除去し、触媒活性種として作用する金属酸化物を生成する。例えば、硝酸塩を、金属酸化物および揮発物窒素化合物57を形成させるために分解する。か焼の間に形成された金属酸化物は、主にゼオライト物質のケージ中に位置しており、一方で窒素化合物は、もし洗浄の間に物質から洗浄除去されていなければ、ガスとして担体から離れる。従来方法では、触媒活性金属が触媒担体(例えば、ゼオライト)に電荷平衡カチオンとして加えられる場合、か焼手順は、結晶ゼオタイプフレームワークを部分的にアモルファス物質に変換させることによって、部分的にそれに影響し得る。酸化物クラスターの過剰な凝集はまた、物質のゼオタイプフレームワークに対して構造的損傷を生じさせることもできる。しかしながら、本発明の態様において、沈殿剤によって、安定効果が生じて金属酸化物がか焼の間(またはその後の使用の間)凝集しない、ということが考えられる。本方法において、ゼオタイプフレームワークに対する損傷を限定することができ、また活性金属酸化物クラスターは保存され、また安定された、担持混合酸化物クラスター触媒前駆体58が生成される。
【0127】
触媒は、固定床反応器、流動床反応器またはスラリー反応器中で使用することができる。固定床反応器で使用するためには、触媒を結合剤または複数の結合剤と組み合わせて、適当なサイズの粒子またはペレットを形成させて、反応器における過剰な圧力低下を防ぎ、触媒の構造的完全性および摩擦抵抗を改善することが有益である。適当な結合剤には、カオリン粘土、二酸化チタン、酸化カルシウム、酸化バリウム、シリカ、アルミナ、それらの混合物および当該分野の他の結合剤が含まれる。本発明の触媒は、結合剤が無くても、高い摩擦抵抗を有する傾向にあり、それは固定床、流動床およびスラリープロセスにおいて好都合である。
【0128】
触媒は、フィッシャー・トロプシュ法のような炭化水素生成プロセス、二酸化炭素放出の減少および価値ある炭化水素の生成のために二酸化炭素捕獲プロセス、および炭化水素のエチルベンゼン脱水素または水素化異性化のような他の炭化水素変換プロセスにおいて、使用することができる。本発明の触媒は、炭化水素合成または変換が関与しない変換にも使用することができ、例えば、窒素および水素からのアンモニア製造、または合成ガスからのメタノール合成である。
【0129】
本発明の態様一またはそれ以上に基づいて、本発明の原理はそれにニ官能性触媒を生成することを可能とする。
図4はニ官能性触媒を示し、一般的60で描かれており、本発明の態様における主要な金属酸化物触媒30を、固形酸触媒62(それは、この態様においてはH−ZSM−5ゼオライトである)と組み合わせることで製造される。ニ官能性触媒60は、ペピチザブル(peptizable)アルミナ結合剤と組み合わされて、ペレット64を形成する。ニ官能性触媒を製造するために、他の固形酸触媒を使用することもできる。
【0130】
この態様におけるニ官能性触媒は、例えば、二酸化炭素に富む原料を用いる炭化水素生成プロセスにおいて使用されるかもしれない。固形酸触媒の機能は、典型的には固形酸触媒で生成される反応によって、主要金属酸化物クラスター触媒で製造された主要生成物を、オクタン価の高い生成物へリフォーム(reform)することである。そのような反応には異性化、芳香族化、オリゴマー化および水素添加分解反応が含まれる。ニ官能性触媒は、炭化水素生成プロセスから、高められた商業的価値の、アップグレードされたガソリン範囲生成物(upgraded gasoline range product)をもたらす。
【0131】
図4のニ官能性触媒の独特な特徴は、主要触媒から第1族または第2族カチオンが移動することによって生じる固形酸触媒が毒されることによる非活性化が、当該分野で知られている他の触媒と比較して、著しく減少していることである。主要触媒のフレームワークに結び付けられた第1族または第2族カチオンの含有量が高められているのにもかかわらず、この効果を有する。このような毒されることの減少は、本発明の主要触媒の特徴に起因する。
図4の触媒は従って、第1族および第2族促進カチオンを高い含有量で有するニ官能性触媒であり、それは第1族または第2族カチオンがH−ZSM−5酸触媒に移動することによる毒されるレベルを減少する効果を発揮し、従ってストリーム上でより長い時間リフォーミング機能を維持することを可能とする。
【0132】
図5は塩基性炭化水素生成プロセス70を示し、それは流動床反応器72中で行われ、本発明の触媒のための典型的な処理である。反応器には冷蔵および熱要素74が含まれる。冷却は反応器の内側を通る水循環によって達成され、加熱は反応器の内側に付けられた加熱コイルを通る水蒸気循環によって行われる。
【0133】
反応器フィードストリーム(feed stream)は、合成ガスストリームであり、反応容器78の底にある入口76によって導入される。反応器の底の圧力は、反応媒体担体(reaction medium support)の圧力低下を克服するのに、また触媒床を流動化するのに十分である。
【0134】
合成ガスは、流動床80を通じて流れるに従って、炭化水素生成物に変換される。炭化水素生成物は、反応容器の上部にある出口82を通じて抽出される。流動床には、本発明の態様の触媒、および触媒床を流動状態に保ち、また触媒床全体にわたって温度を均一に保つのに役立つ他の物質が含まれる。
【0135】
(実施例)
以下では、本発明の態様の実施例を詳細に記載する。実施例は、
図6で模式的に示される実験セットアップによって試験された。実験セットアップ90には、注水によって重量測定法で決定された840mLの容量の反応器92が含まれる。
【0136】
実験の間、フィード流速は通常1000立方センチメートル毎分(sccm)で保たれ、試験の間に時々200sccmまたは100sccmに変更された。触媒を5gおよび1000sccmのフィード流速によって、修正された滞留時間は0.3グラム秒毎立方センチメートル(gs/sccm)となる。ガス時間空間速度(gas hourly space velocity)は、7800毎時間(h
−1)である。
【0137】
触媒バスケット94(7cm直径)には、2つの環状の3mm開口グリッド(aperture grid)であって、各々が15ミクロンの焼結ステンレス鋼フェルト(それは15ミクロン開口)を所定の位置に保つものが含まれる。上部および下部の篩(lower sieve)/フェルトクロージャー(felt closures)の間に置かれた触媒(5g)は、25ミクロンよりも小さいフラクション(fraction)を除くためのふるいにかけた後、35ミクロンの平均粒径を有する。触媒は篩の開口(apertures of the sieve)を満たし、バスケット床領域(basket floor area)を深さ2mmまで均一にカバーする。
【0138】
反応開始の前に、触媒をそのままの状態で(in situ)、水素中723Kで18時間、還元した。反応器流出物(reactor effluent)の小さな部分はニードルバルブ(needle valve)96を通って、水およびC5+炭化水素を凝縮するためにそれが戻ってくるノックアウトステージ99(knock-out stage 99)から、サンプリングバルブ(sampling valve)GC−FID98(それにはCP−Sil5B非極性キャピラリーカラムが備わっている)へ行き、その後に、micro−GC−TCDでサンプルを採取して、永久気体(permanent gases)(Ar、CO、CH
4、CO
2)をCO
xカラム上、H
2キャリアガスおよび分子篩カラム(molecular sieve column)で、Arキャリアガスと一緒にH
2、CH
4、CO分離のために分析する。
【0139】
実施例1:触媒A
以下のステップを行って、触媒A(Fe/Ce/Cu/KY)を製造した。
【0140】
Y−ゼオライトを、Na
+カチオン交換された形態で製造した。しかしながら、K
+でのイオン交換を行った、というのもFeベースのHTFT触媒に関して、K
+の方がNa
+より良いプロモーターであるからである。
【0141】
12gのNaYを、二回蒸留脱イオン水(doubly deionized water)中の0.5M K
2CO
3溶液(600mL)に加えることによって、NaYのイオン交換を行った。溶液中のK
2CO
3量は、ゼオライトのカチオン交換部位の量に対して、6倍過剰なK
+である。生じた懸濁液を攪拌し、少なくとも4時間の還流冷却をしながら、80℃で加熱した。続いて得られたイオン交換ゼオライトを濾過し、二回蒸留脱イオン水で洗浄した。
【0142】
この手順を3回繰り返して、完全なイオン交換を行い、フレームワークのイオン交換能力を上回る過剰なカチオンを提供し、使用前に乾燥した。
【0143】
生じたKYゼオライトを、適当な量のFe(NO
3)
2、Ce(NO
3)
3およびCu(NO
3)
2溶液で浸透させた。
【0144】
使用した溶液の容量は、加えられたゼオライトのポア容積と同じであった。これらの硝酸塩は溶解性が高く、金属の含浸を同時に行うことを可能とする。
【0145】
生じたスラリーを120℃で乾燥し、空気中、550℃で18時間か焼した。
【0146】
触媒中の浸透遷移金属イオンの全体的な組成物は、以下の原子割合を有する、Fe:Ce:Cu=86:9.5:4.5。2.9のSi/Al割合を有するゼオライトYは、完全に交換された場合、理論的に14.4wt%のKを含む。
【0147】
得られた触媒の5gを反応器中へ充填した。反応前に、触媒をそのままの状態で(in situ)、水素で723Kで18時間、還元した。
【0148】
反応器フィードストリームは159ml/minのCO、100ml/minのAr、635ml/minのH
2および106ml/minのCO
2からなり、それらは反応器に入る前に混合された。H
2/(2CO+3CO
2)の割合は1に等しい。反応温度は603Kであり、またガス時間空間速度(GHSV)は7800h
−1である。反応器中の圧力は20バールであった。
【0149】
CO
2水素化は2ステッププロセスであり、最初に触媒は逆水性ガスシフト反応のために高い活性を示し、CO
2をCOに変換し、続いてCOから炭化水素に変換する。試験結果は、
図7でグラフ的に示しており、表Aにまとめられている。
【0150】
図7で見られるように、定常状態CO変換は74%であり、触媒非活性化はない、ということが分かる。過渡期では、二酸化炭素選択性の減少、およびC5+炭化水素選択性および一酸化炭素変換のトレンドの増加からも明らかなように、水性ガスシフト反応活性において下向きのトレンドがあることも見て分かる。メタン選択性は非常に安定した特性を発揮する。
【0151】
とても顕著なのは、本実施例において得られた、高い値の鎖成長率(chain growth probability)であり、これは従来のHTFT触媒では見られない。商業的な高温フィッシャー・トロプシュFeベース触媒(High Temperature Fischer-Tropsch Fe based catalyst)の、鎖成長率の典型的な値(その最大理論値は1)は、本試験の反応条件下で0.70前後である。これに対して、本実施例の触媒は、行われた本試験および記載の本実施例において0.81の鎖成長率を有し、また高い一酸化炭素変換(74%)、低いメタン選択性(8.4%)および高いコンデンセートフラクション(59.2%)を定常状態で発揮した。
【0152】
観測された、良好なパフォーマンスは長時間にわたって安定であり、また試験中に非活性化効果は記録されなかった。このパフォーマンス安定性が、本発明を、本発明に記載の方法で製造された触媒を用いる炭化水素形成プロセスの商品化を、とても適したものにする。
【表1】
【0153】
触媒Aはまた、二酸化炭素の水素化についても試験された。二酸化炭素の水素化における触媒Aの試験結果は、表Bに要約されている。
【0154】
反応器フィードストリームは、100ml/minのAr、675ml/minのH
2および225ml/minのCO
2からなり、それらは反応器に入る前に混合される。H
2/(2CO+3CO
2)の割合は1に等しい。反応温度は603Kであり、ガス時間空間速度(GHSV)は7800h
−1である。反応器の圧力は、20バールである。
【0155】
得られたコンデンセートフラクションは、生成物の45.6%である。鎖成長率は約0.7である。メタン選択性は9.3、C5+炭化水素に対する選択性は21.8である。
【0156】
比較の目的で、別の触媒である触媒Bを、初期湿潤含浸ステップにおいて銅塩を加えていない点を除き、触媒Aの製造手順と同様に製造した。二酸化炭素の水素化における触媒Bの試験結果は、表Bに要約されている。
【0157】
CO
2変換およびCO選択性は、触媒AおよびBの両方について同様である。触媒Bよりも、触媒Aは酸化物をわずかに多く生成し、メタン選択性は低い。触媒Aでは、鎖成長率は高く、またC5+選択性も高い。触媒Aで得られたコンデンセートフラクションは45.6であるのに対して、触媒Bでは33.7である。
【0158】
この比較は、グループCから選択された金属(この場合は銅)を添加して形成した担持混合酸化物クラスター触媒は、グループCの金属を全く含まない担持金属酸化物クラスター触媒に対して付加的な利益を有するということを例証する。
【表2】
【0159】
実施例2:触媒E
上述で記載の通り、本発明の触媒は、ニ官能性触媒を製造するのにも適した構成成分である。本実施例においては、触媒Eを、5gの触媒Aを5gのZSM−5ゼオライト成形品(80%H−ZSM−5ゼオライト、20%アルミナ結合剤)と組み合わせ、それをSTIRR反応器の触媒バスケット中、触媒Aの上部に置くことによって製造した。この配置(arrangement)は、触媒AおよびH−ZSM−5ゼオライトを含むニ官能性触媒に等しい。
【0160】
触媒Eを、一酸化炭素の水素化について異なる重量時間空間速度(weight hourly space velocities)で試験した。試験結果は
図8に示しており、表Cは、使用された最も高い重量時間空間速度で試験結果を要約する。
【0161】
図8において、触媒Eは、定常状態、7800h
−1ガス時間空間速度で74.3%の一酸化炭素変換をし、一緒に43.4%の生成物中におけるコンデンセートフラクションおよび35.9%のC5+選択性を示した。メタン選択性は、19.3%である。
【表3】
【0162】
表Dは、同様の試験条件下、触媒Aおよび触媒Eの二酸化炭素の水素化に関する試験結果の比較である。主な違いはC5+選択性にあり、触媒Aは21.8%、触媒Eでは30.0%であり、また酸化物への選択性にあり、触媒Aは7.6%、触媒Eでは0.9%である。触媒Eのコンデンセートフラクションは49.3%であるのに対して、触媒Aは45.6%である。
【0163】
試験結果の比較から結論付けられることは、触媒Aよりも、触媒Eは多くの液体炭化水素生成物および少ない酸化物をもたらすことである。
【0164】
触媒Eのパフォーマンスの安定性は
図8から見て分かり、変換崩壊の徴候は全く示さない。典型的に、ニ官能性触媒の酸性機能は、主要触媒から固形酸触媒の酸性部位へ移動する塩基性カチオンによって毒される。ストリーム上340時間後の芳香族への一定の選択性は、主要触媒から第1族または第2族カチオンの移動がないことによって酸性機能が影響を受けないということから明白である。
図8中のストリーム上の268時間での変化は、この時点では7800から1560に変化したGHSVに起因する。
【表4】
【0165】
表Eは、触媒担体フレームワークの内部ポア構造におけるカリウム沈殿剤の効果を示す。触媒Aを19%Kで分析し、触媒A2880を13%Kで分析した。
【表5】
【0166】
本発明が意図するように本発明の範囲内で様々な修飾が可能であり、特許請求の範囲で定義されたもの以外にも、本発明の態様には様々な特徴の組み合わせが含まれ得る。