特許第6180437号(P6180437)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180437
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】動力車のパワートレインの適応制御
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/182 20120101AFI20170807BHJP
   F02D 11/10 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   B60W30/182
   F02D11/10 K
【請求項の数】24
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-553729(P2014-553729)
(86)(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公表番号】特表2015-506307(P2015-506307A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】EP2013051439
(87)【国際公開番号】WO2013110758
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2014年8月20日
【審判番号】不服2016-8509(P2016-8509/J1)
【審判請求日】2016年6月8日
(31)【優先権主張番号】1201200.1
(32)【優先日】2012年1月25日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512308720
【氏名又は名称】ジャガー ランド ローバー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Jaguar Land Rover Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ダーネル
(72)【発明者】
【氏名】エリオット・ヘメス
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ステイシー
【合議体】
【審判長】 中村 達之
【審判官】 松下 聡
【審判官】 槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5265570(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/114521(US,A1)
【文献】 特開平9−147294(JP,A)
【文献】 特開2008−168866(JP,A)
【文献】 特開2007−69625(JP,A)
【文献】 特表平5−500401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W30/182
F02D11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルペダル位置と、制御システムで実現される車両の出力トルクとの関係の特性を、ソース特性からターゲット特性へ推移させる方法であって、
車両の第1の操作モードを検知して、ソース特性を適用するステップと、
車両の操作モードの変更を検知して、ターゲット特性を選択するステップと、
車両に適用する特性をソース特性からターゲット特性へ所定の推移レートで徐々に推移させるステップとを有し、
前記推移レートは、同一アクセルペダル位置におけるソース特性での出力トルクとターゲット特性での出力トルクとの差の単位時間当たりの百分率であることを特徴とする方法。
【請求項2】
ソース特性は、第1のトルクマップを有し、
ターゲット特性は、第2のトルクマップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の操作モードは、第1の地形タイプを含み、
操作モードの変更は、第2の地形タイプへの変更を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1の操作モードは、エコノミー操作モード、ノーマル操作モード、およびスポーツ操作モードを含み、
操作モードの変更は、エコノミー操作モード、ノーマル操作モード、およびスポーツ操作モードのうちの別の操作モードへの変更を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記推移レートは、ソース特性からターゲット特性への推移が当初開始されたときの同一アクセルペダル位置におけるソース特性での出力トルクとターゲット特性での出力トルクとの差の単位時間当たりの百分率であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
すべてのアクセルペダル位置に対して同一の推移レートを維持するステップをさらに有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
アクセルペダル位置に依存して推移レートを変化させるステップをさらに有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
トルク変化率の最大絶対値を超えないように推移レートを制限するステップを有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
トルク変化率の最大絶対値は10Nm/秒以下であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アクセルペダル位置を20Hz以上の更新レートで決定するステップを有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
アクセルペダル位置の新しい位置への移動を検知するステップと、
新しい位置におけるソース特性での出力トルクとターゲット特性での出力トルクとの差に応じて推移レートを再計算するステップと、
再計算された推移レートで、新しい位置へのアクセルペダル位置の移動が検知された時点で車両に適用された特性からターゲット特性へ推移させるステップとを有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
アクセルペダル位置の新しい位置への移動を検知するステップと、
前記新しい位置における、アクセルペダル位置の移動があった時点で車両に適用された所定の特性での出力トルクと、ターゲット特性での出力トルクとの差に応じて、推移レートを再計算するステップと、
再計算された推移レートで、前記所定の特性からターゲット特性へ推移させるステップとを有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
アクセルペダル位置の新しい位置への移動を検知するステップと、
前記新しい位置における、アクセルペダル位置の移動が検知された時点で車両に適用された所定の特性での出力トルクと、前記新しい位置におけるターゲット特性での出力トルクとの差と、アクセルペダル位置の移動が検知された時点におけるソース特性からターゲット特性への推移の完了度合百分率とに応じて推移レートを再計算するステップと、
再計算された推移レートで、前記所定の特性からターゲット特性へ推移させるステップとを有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
アクセルペダル位置の新しい位置への移動を検知するステップと、
トルク変化率の最大絶対値である最大推移レートで、新しい位置へのアクセルペダル位置の移動が検知された時点で車両に適用された特性からターゲット特性へ推移させるステップとを有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
アクセルペダルの新しい位置への移動を検知するステップは、新しい位置へのアクセルペダルの移動を検知するステップを有することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
最大推移レートは10Nm/秒以下であることを特徴とする請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
車両の操作モードのさらなる変更を検知するステップと、
新しいターゲット特性を選択するステップと、
車両の操作モードのさらなる変更を検知した時点での特性から新しいターゲット特性に、現時点でのアクセルペダル位置に基づいて更新される推移レートで推移させるステップとを有し、
更新される推移レートは、現時点でのアクセルペダル位置における現時点で車両に適用された特性での出力トルクと新しいターゲット特性での出力トルクとの差の単位時間当たりの百分率であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
メモリ内に記憶された複数のトルクマップを参照して、アクセルペダル位置と関連付けて出力トルクを決定する車両用の電子制御システムであって、
車両の第1の操作モードを検知して、ソーストルクマップを適用し、
車両の操作モードの変更を検知して、ターゲットトルクマップを選択し、
車両に適用するトルクマップを、ソーストルクマップからターゲットトルクマップに、同一アクセルペダル位置におけるソーストルクマップでの出力トルクとターゲットトルクマップでの出力トルクとの差の単位時間当たりの百分率として定義される推移レート徐々に推移させるように構成されたことを特徴とする電子制御システム。
【請求項19】
車両の操作モードの自動変更に応答することを特徴とする請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記推移レートは選択可能であることを特徴とする請求項18または19に記載のシステム。
【請求項21】
前記推移レートは、10Hz以上の更新レートであることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
トルクマップの推移を開始した後、アクセルペダル位置の新しい位置への移動を検知し、
新しい位置における現時点のトルクマップでの出力トルクとターゲットトルクマップでの出力トルクとの差に応じて推移レートを再計算し、
再計算された推移レートで、前記現時点のトルクマップからターゲットトルクマップ推移させるように構成されたことを特徴とする請求項18〜21のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項23】
現時点のトルクマップは、ソーストルクマップからターゲットトルクマップへの推移の完了度合に応じて、ソーストルクマップとターゲットトルクマップとの重み付けされた平均値に相当することを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
請求項18〜23のいずれか1項に記載の電子制御システムと、使用状態に応じて車両の操作モードを自動的に変更するシステムとを備えた車両であって、
複数のトルクマップのうちの1つのトルクマップが各操作モードに対して選択されることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る実施形態は、動力車のパワートレインの適応制御に関する。特に、本発明に係る実施形態は、これに限定するものではないが、とりわけエンジン動作モードが変化する中で、オペレータの要求に対するエンジンに呼応した内燃エンジン等のパワートレインの動力源の適応制御に関する。エンジン操作モードは、エンジンが搭載された車両の操作モード(たとえば車両走行中の地形に関連する操作モード)の変化に付随して変化する。本発明の態様は、システム、方法、および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内燃エンジンは、ドライバにより選択可能な動作モードを有する。すなわち、いくつかの車両は、エコノミーモード、ノーマルモード、およびスポーツモードを有し、各モードは、1つまたはそれ以上のドライバ要求に対して異なるエンジン応答を有する。典型的には、エンジンは、アクセルペダルの所与の入力に対して各モードで異なった応答を示し、エコノミーモードでの応答性が最も低く、スポーツモードでの応答性が最も高い。このように、たとえばエンジンの所望の出力トルク特性に適したアクセルペダルの可動範囲を設定することにより、車両の運転操作性を改善することができる。こうしたシステムは、詳細後述する複数のアクセルペダル位置/出力トルクのマップを有する電子制御ユニットに入力信号を出力する加速度計ポテンショメータ等、車両ドライバからの電気的インプットに必然的に依拠する。これらのマップは、アクセルペダル移行マップまたはペダル移行マップという。
【0003】
別の種類の動作モードは、車両が走行しようとしている地形に関する。ここに参考として一体に統合される米国特許第7,349,776号は、広範な運転状況に対して、特にオフロード走行中に遭遇し得る数多くの異なる地形に対して改善された制御方法を実現できる車両制御システムを開示している。地形に関するドライバが入力した要求に応じて、車両制御システムは、1つのまたはそれ以上の地形応答(TR)モードを含む数多くの異なる動作モードの内の1つの動作モードで動作するように選択される。各地形応答モードに対して、さまざまな車両サブシステムが対応する地形に適した手法で動作する。
【0004】
1つの実施形態において、前進第1ギア以外の第2ギアで静止状態から発進するとき、車輪が過剰にスリップするリスクを低減するように車両を構成するモード(冬仕様モード)を利用することができる。異なるモードにおいて、アクセルペダルマップ(所与のアクセルペダル位置に対して生じるエンジントルク量)、トルク伝達(ギアシフトを行う頻度を決定するように変速機クラッチの制御された係合頻度に関連したアクセルペダルマップ)、および表面摩擦係数の関数としての変速シフトポイントは、それぞれ異なる。たとえば、1つまたはそれ以上の地形応答モードにおいて、変速シフトは、より緩やかに(より緩慢な頻度で)行われた頻度より遅く行われるように構成される。
【0005】
すなわち、その地形に適した1つまたはそれ以上のアクセルペダル位置/トルクマップをドライバが選択するようにしてもよい。たとえば岩石の多い地形を走行するときは、わずかなアクセル動作に対して、大きなトルク出力を示唆し、岩石の段差を乗り越えるように瞬発力を与えるものであってもよい。逆に砂地を走行する場合は、車両がスピン回転するのを避け、穴をつくることのないように、同じアクセル動作に対して、より小さいトルク出力を示唆するものであってもよい。ある程度、選択されたトルクマップは、地形上の利用可能なグリップ力に関連して判断すべき事項である。
【0006】
任意の車両操作モードに付随するすべてのトルクマップ(ペダル移行特性)のグラフは、最小ペダル位置/ゼロトルクおよび最大ペダル位置/最大トルクのポイントで一致する。これらの状態の間においては、マップの変更により、エンジン出力トルクが急激に変化し、特にマップ変更時にアクセルペダルが移動しない場合、車両ドライバを混乱させることになる。
【0007】
次にアクセルペダルを移動させたときに車両の動きが予想されない場合、最小アクセルペダル位置においてトルクマップが変更されることが好ましくないことがある。
【0008】
車両ドライバが択一的な操作モードを選択した場合、エンジン応答特性の変更は、通常、これに車両ドライバが驚くことはなく、予想されたものであり、好ましいものである。しかしながら、車両が操作状態の変化を検知したことに応じて自動的に操作モードを選択した場合、問題が生じる場合がある。すなわちアクセルペダルを操作したときに、車両がたとえば岩石地形から砂地地形への地形変化を検知した場合、異なるトルクマップを採用するようにエンジンに命令する。特に自動モード変更が頻繁に繰り返し実行される場合には、その後に生じるエンジン応答の変化は、ドライバを混乱させることがある。
【0009】
同様に、車両が走行して停止したときに(最小アクセルペダル位置にあるときに)モード変更があると、次にアクセルペダルを踏み込んだときに、車両が予想とは実質的に異なって加速されることを意味する。
【0010】
図1は、パワートレイン101Pを有する既知の動力車101を示す。パワートレイン101Pは、エンジン121、トランスミッション(変速装置)124、動力テイクオフユニット(動力取出ユニット、PTU)137、後輪のドライブシャフトまたはプロペラシャフト131Rと、前輪のドライブシャフトまたはプロペラシャフト131Fとを有する。後輪のドライブシャフト131Rは、後輪ディファレンシャル(後輪作動装置)135Rを介して一対の後輪113,114を駆動するように動作可能であり、前輪のドライブシャフト131Fは、前輪ディファレンシャル(前輪作動装置)135Fを介して一対の前輪111,112を駆動するように動作可能である。
【0011】
車両101は、アクセルペダル161からのアクセルペダル位置信号を受信するように構成されたエンジンコントローラ121Cと、ブレーキペダル161からのブレーキペダル位置信号を受信するように動作可能なブレーキコントローラ141Cとを有する。
【0012】
図1の構成において、トランスミッション124は、2輪駆動操作または4輪駆動操作を選択できるように、動力テイクオフユニットPTU137を介して後輪ドライブシャフト131Rと着脱可能に接続されている。
【0013】
動力テイクオフユニットPTU137は、入力シャフトと出力シャフトとの間のギア比が高速比または低速比に選択される「高速比」構成または「低速比」構成で動作可能である。高速比構成は、一般的なオンロード走行または「高速道路」走行に適し、低速比構成は、特定のオフロード地形および牽引時等の他の低速走行に対応するのにより適したものである。
【0014】
車両101は、車両制御ユニット(VCU)101Cと呼ばれる中央コントローラ101Cを有する。車両制御ユニット(VCU)101Cは、車両に搭載されるさまざまなセンサおよびサブシステムに信号を出力し、これらからの信号を受信する。
【0015】
車両101は、トランスミッション124の必要とされる操作モードを選択するように動作可能な変速機モード選択ダイヤル124Sを有する。選択ダイヤル124Sは、変速機コントローラ124Cに制御信号を出力することにより、選択されたモードに応じてトランスミッション124を操作するように制御する。利用可能なモードは、パーク(駐車)モード、バック(後方走行)モード、およびドライブモードである。
【0016】
また車両101は、地形応答モード選択ダイヤル128Sを有する。地形応答モード選択ダイヤル128Sは、車両操作の必要とされる地形応答モードを選択するようにドライバにより操作することができる。
【0017】
理解されるように、ユーザがトランスミッション124のドライブモードを選択したとき、エンジンコントローラ121Cは、ドライブモードのスロットルマップを用いて、アクセルペダル位置Pの関数としてエンジンが出力すべきドライブトルク量Tを決定する。ユーザが「ダイナミック」地形応答モードを選択したとき、エンジンコントローラ121Cは、ドライブモードのアクセル(スロットル)ペダル移行マップの代わりに、スポーツモードのアクセルペダル移行マップを用いる。スロットルマップにおいて、スポーツモードスロットルマップは、アクセルペダル161の所与の初期移動(踏込等)に対して、エンジンがより攻撃的に応答するように構成される点で異なる。
【0018】
異なるユーザ選択可能な地形応答モードに対して、それぞれ異なるスロットルマップが採用される。
【0019】
上述のように、いくつかの実施形態では、車両は、支配的な運転状態に適した地形応答モードを自動的に選択するように動作可能である。
【0020】
図2は、アクセルペダルの踏込量が0%から最大100%の範囲で推移するアクセルペダル位置Pの関数としてのトルク出力Tを表すプロット(グラフ)の形態を有する2つの異なるアクセルペダル移行マップを示す。2つの極端な車両操作モードA,Bが図示されている。操作モードAは、当初段階で慎重な(用心深い)トルクマップであり、たとえば砂上走行中に適した地形応答モードに対応するものである。操作モードBは、より強引な(攻撃的な)トルクマップであり、岩石地形上の走行中に適した地形応答モードに対応するものである。ドライバは、地形応答モード選択ダイヤル128Sを用いて、モードAまたはモードBに応じて操作を選択することができる。いくつかの車両において、異なるトルクマップが車両制御ユニット(VCU)101Cにより自動的に選択されてもよい。
【0021】
すなわちポイントCにおいて(アクセルペダルが50%踏み込まれているとき)、モードAからモードBに切り換えると、急にポイントDに飛び移り、エンジンの出力トルクが急激に上昇する。モードBが選択されている間、トルク特性は実質的にラインBに沿って移行する。モードAに向かって逆方向に切り換えると、出力トルクが実質的に低減することになる。一般に、トルクマップを切り換えると、出力トルクがy軸方向に変化する。
【0022】
時間をかけてエンジンの出力トルクを変化させてもよく、図3に示すように時間をかけてブレンド調整することができる。すなわち出力トルクの急激な変化を回避するように、ポイントCからポイントDへの増大を制御してもよい。たとえば7Nm/sの最大ブレンド調整率で調整し、および/またはたとえば20秒間の最大時間内において所定速度でブレンド調整してもよい。トルク変化が小さければ比較的に速やかにブレンド調整することができ、トルク変化が大きければより長い時間がかかる。
【0023】
図4は、慎重なトルクマップAから強引なトルクマップBへのブレンド調整であって、たとえば7Nm/sの補間調整率のブレンド調整を示す。各時間間隔t=1,t=2等において、慎重なトルクマップから強引なトルクマップに接近させるが、トルク特性が強引なトルクマップBに従い、ブレンド調整が完了するまで、慎重なトルクマップの形状は維持される。ブレンド調整は、一般に矢印Eの方向に行われる。すなわちブレンド調整が進行中のとき、アクセルペダル位置を変化させても、アクセルペダル位置に対する感覚には変化を与えない。
【0024】
ブレンド調整が進行中であっても、トルク特性が慎重なトルクマップの形状から強引なトルクマップの形状に切り換わり、ブレンド調整が完了したとき、車両ドライバはアクセルペダル位置の感覚に突然の変化を感じる。すなわちブレンド調整が進行して、ポイントFに達し得る。アクセルペダルを踏み込むと、エンジントルクは慎重なトルクマップの形状に沿ってポイントGへ推移した後、強引なトルクマップの形状に沿ってポイントHへ推移する。この実施例では、ポイントはGでのペダル応答の段差的な変化は、アクセルペダルをさらに踏み込んでも、エンジン出力トルクが突然にほとんど応答しなくなるため、ドライバを混乱させることがある。
【0025】
要求されることは、アクセルペダル応答に対する実質的で予期しない変化を車両ドライバに与えることなく、異なるトルクマップ間で切り換えることができるブレンド調整の解決手段(戦略)である。こうした解決手段は、操作モード間、すなわちトルクマップ間における手動の切換スイッチを有する車両、および自動切換スイッチを有する車両に適している。
【0026】
本発明は、上記課題に鑑みて着想されたものである。本発明に係る態様および実施形態は、トルクのブレンド調整を改善する方法、システム、または車両に関するものである。本発明に係る他の目的および利点は、以下の発明の詳細な説明、クレーム、および図面から明らかなものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許第7,349,776号明細書
【発明の概要】
【0028】
本発明の1つの態様によれば、アクセルペダル位置および制御システムで実現される車両の出力トルクに関する複数の特性間でブレンド調整する方法が提供される。この方法は、車両の第1の操作モードを検知し、ソース特性を適用するステップと、車両の操作モードの変更を検知して、ターゲット特性を選択するステップと、ソース特性とターゲット特性とのトルク差の単位時間当たりの百分率であるブレンド調整レートで、ソース特性をターゲット特性にブレンド調整するステップと、アクセルペダル位置の全範囲において漸進的に特性変更を行うステップとを有するものである。
【0029】
理解されるように、特性間のトルク差の「単位時間当たりの百分率(たとえばトルク差の10%/秒)」とは、トルク差の「単位時間当たりの割合」に相当し、トルク差とは無関係の一定量(たとえば単位時間当たりに7Nmの固定量)としての絶対値ではないものと考えられる。
【0030】
アクセルペダル位置を出力トルクに関連付けた特性は、内燃エンジンのフライホイールに出力されるトルクを直接的に意味するものであってもよいし、車両の車輪、パワー出力、牽引力、燃料フロー、またはアクセルペダルの移動とトルク出力に応じて変化する任意の測定可能なインジケータ等の同等のものを意味するものであってもよい。
出力トルクは、電気モータまたは同等物等の他の形態の原動力の出力を表すものであってもよい。車両は、1つまたはそれ以上の推進源を有していてもよい。たとえばハイブリッド電気自動車は、エンジンと、推進モータとして動作可能な少なくとも1つの電気マシンとを有するものであってもよい。電気自動車は、推進モータとして動作可能な少なくとも1つの電気マシンを有するものであってもよい。
【0031】
同様のものが数多く知られており、トルクは便利な直接的測定結果であるが、本発明に係る実施形態は、変化するペダル移行特性を定義するために1つまたはそれ以上の同等物の使用を排除するものではない。
【0032】
すなわち新しいトルクマップにブレンド調整する際、所与のアクセルペダル位置に対してトルク特性が異なるとき、ブレンド調整は、第1のモードの特性形状から、第2のモードのターゲット特性の特性形状に徐々に推移する。その結果として、2つの特性間の遷移ポイントにおけるアクセルペダル位置/出力トルク特性が段差的に(急激に)変化することを回避することができる。
【0033】
1つの実施形態では、最大トルク変化レートは選択可能であり、任意的にはコントロールシステムにより選択可能である。すなわち変化レートは、任意の操作モードにおいて、車両に対する最大値として特定でき、主として車両乗員の快適性および安全性を確保することが意図されている。
【0034】
1つの改善点において、最大トルク変化レートは、車両の使用状態に依存させるようにしてもよく、たとえば車両が高速または低速のトランスミッション範囲で駆動されているか、たとえば特定の操作モードにおけるドライブ操作性または洗練性に影響を及ぼし得る推進源の許容できない出力変化レートを回避することを意図したものであるかに依存させるようにしてもよい。
【0035】
本発明に係る実施形態によれば、ブレンド調整の完了に要する時間は、すべてのアクセルペダル位置に対して一定であってもよく、たとえば最大トルク変化レートで最大遷移トルクを得るために必要な最大時間により決定してもよい。アクセルペダル移行マップ間の最大遷移可能トルクが140Nmであるとき、最大許容可能ブレンド調整レートは7Nm/秒であり、ブレンド調整の完了に要する時間は20秒と一定である。
【0036】
しかしながら、1つの実施形態では、ソーストルク特性とターゲットトルク特性の間のトルク推移は、すべてのアクセルペダル位置に対して、最大許容可能ブレンド調整レートで行われ、トルク推移が小さいとき、これに応じてブレンド調整時間も短い。
【0037】
1つの実施形態において、アクセルペダル位置が一定であるとき、ブレンド調整レートは、ソーストルク特性とターゲットトルク特性の間のトルク差の百分率である。遷移するトルク特性がターゲットトルク特性と実質的に一致したとき、たとえば95%以上完了度合に達したとき、ブレンド調整は完了したものと考えられる。
【0038】
ただし典型的には、一方の車両操作モードのトルク特性から別の車両操作モードのトルク特性へブレンド調整しているときに、車両ドライバは、アクセルペダル位置を変化させる。本発明によれば、開始特性(ソース特性)を参照してブレンド調整を継続できるように、新しいアクセルペダル位置におけるトルク差にブレンド調整の完了度合を適用する。択一例においては、現時点でのトルク特性を新しいブレンド調整のための開始ポイントと考えて、ターゲット特性に向かってブレンド調整を続行する。すなわちブレンド調整の完了度合が、新しいアクセルペダル位置におけるトルク差、および現時点でのブレンド調整の完了度合における現時点のトルク特性に適用される。換言すると、ブレンド特性は、リセットされるのではなく、最初から開始されるかのように再開される。むしろ、一部のブレンド調整はすでに完了したものとして、ブレンド調整は新しいペダル位置から継続される。したがって、ターゲット特性に至るブレンド調整は、完了したブレンド調整の残存部分に対して行われる。
【0039】
ブレンド調整の実行中、別の操作モードに変更されると、ブレンド調整の完了度合をゼロにリセットして、現時点でのアクセルペダル移行特性から新しい目標とするアクセルペダル移行特性に至るブレンド調整を開始する。他の構成も同様に有用である。
【0040】
車両ドライバがブレンド調整中であることを感じないように、ブレンド調整中の典型的な更新レートは10Hz以上であってもよい。
【0041】
任意的には、上記更新レートは、ブレンド調整が当初開始されたときの複数の特性間のトルク差の単位時間当たりの百分率である
【0042】
この方法は、アクセルペダル位置に依存してブレンド調整レートを変化させるステップを有していてもよい。
【0043】
この方法は、トルク変化率の最大絶対値を超えないようにブレンド調整レートを制限するステップを有していてもよい。
【0044】
任意的には、トルク変化率の最大絶対値は10Nm/秒以下であってもよい。他の値も同様に有用である。
【0045】
この方法は、アクセルペダル位置を10Hz以上、20Hz以上、またはそれ以上の適当な値(たとえば100Hz以上)の更新レートで決定するステップを有していてもよい。
【0046】
この方法は、アクセルペダル位置の新しい位置への移動を検知するステップと、新しい位置における複数の特性間のトルク差に応じてブレンド調整レートを再計算するステップと、新しい位置からターゲット特性にブレンド調整するステップとを有していてもよい。
【0047】
択一的には、この方法は、アクセルペダル位置の新しい位置への移動を検知するステップと、アクセルペダル位置の移動があった時点での特性とターゲット特性の間のトルク差に応じてブレンド調整レートを再計算するステップと、新しい位置からターゲット特性にブレンド調整するステップとを有していてもよい。
【0048】
この方法は、アクセルペダル位置の新しい位置への移動を検知するステップと、新しいアクセルペダル位置における特性の間のトルク差と、アクセルペダル位置の移動が検知された時点でのブレンド調整の完了度合百分率とに応じてブレンド調整レートを再計算するステップと、新しい位置からターゲット特性にブレンド調整するステップとを有していてもよい。
【0049】
択一的には、この方法は、アクセルペダル位置の新しい位置への移動を検知するステップと、アクセルペダル位置の移動が検知された時点での特性とターゲット特性の間のトルク差と、ブレンド調整の完了度合百分率とに応じてブレンド調整レートを再計算するステップと、新しい位置からターゲット特性にブレンド調整するステップとを有していてもよい。
【0050】
理解されるように、いくつかの実施形態では、アクセルペダル位置の新しい位置への移動を検知したとき、その時点でのブレンド調整の完了度合の割合を、新しいアクセルペダル位置におけるソーストルク特性とターゲットトルク特性に適用して、ブレンド調整レートを再計算してもよい。すなわち、アクセルペダル位置の新しい位置への移動を検知したとき、その時点でのブレンド調整の完了度合の割合が40%であったとき、新しいアクセルペダル位置において要求される現時点でのトルクは、新しいアクセルペダル位置におけるソーストルク特性とターゲットトルク特性におけるトルク値の間であって、ブレンド調整が40%の完了したときのトルクに相当すると判断される。ソースペダル移行特性とターゲットペダル移行特性の間のブレンド調整に相当する中間的なアクセルペダル移行特性を得るために、上記計算はペダル位置が移動している間も反復的に行われる。
【0051】
新しいアクセルペダルで適用される現時点でのトルクと、ターゲット特性に応じて適用されるトルクとの間のトルク差は、ブレンド調整の残りのトルクの収支と考えられ、すなわち、この具体例では60%である。
【0052】
理解されるように、いくつかの実施形態では、ペダルの移動を検知する前に適用されていた同一の単位時間当たりの百分率で、新しいペダル位置におけるプレンド調整が続行される。すなわち、ソーストルク特性とターゲットトルク特性の間のトルク差に関する同一の単位時間当たりの割合でブレンド調整を行ってもよい。このように決定されたブレンド調整レートの絶対値が最大許容可能絶対レート(たとえば7Nm/秒)を超えることがなければ、同一の単位時間当たりの上記割合を適用してもよい。その他の最大許容可能レートも有用である。すなわちブレンド調整が40%完了し、現時点でのアクセルペダル位置に適用されるトルク量と、同一のアクセルペダル位置に対してターゲットトルク特性が適用された場合のトルク量とのトルク差が30Nmである場合、30Nmが残りの60%のブレンド調整に相当するとき、10%の単位時間当たりのブレンド調整レートは5Nm/秒の絶対ブレンド調整値となる。
【0053】
我々は、次に、車両の操作モードがソースアクセルペダル移行マップとターゲットアクセルペダル移行マップとの間で変更され、モード変更が開始されたときのアクセルペダル位置P1におけるトルク差が50Nmであった場合のシナリオについて検討する。単位時間当たり10%、すなわち5Nm/秒の名目上のデフォルトのブレンド調整レートでブレンド調整が行われ、ブレンド調整レートは、この具体例では7Nm/秒の最大許容可能レートより小さい。
【0054】
ブレンド調整が40%完了したとき、アクセルペダルが位置P2に移動する。アクセルペダル位置がP1からP2に移動した時点でのトルク特性は、現時点でのアクセルペダル位置をソース特性に適用した場合のトルク量に、現時点でのアクセルペダル位置におけるソース特性とターゲット特性のトルク差の百分率を加えたものと考えられ、いくつかの実施形態では、この百分率は、ブレンド調整の完了度合を示す百分率に相当する。いくつかの実施形態では、ブレンド調整百分率は、ペダルが移動するたびに継続的に再計算してもよい。
【0055】
アクセルペダルが新しい位置P2に達したとき、1つの実施形態に係るブレンド調整は、新しいアクセルペダル位置におけるソース特性とターゲット特性の間のトルク差に関する同一の単位時間当たりの割合で続行してもよい。ただし、この値が最大許容可能絶対値(たとえば7Nm/秒)を超えないものとする。この値が最大許容可能絶対値を超える場合、いくつかの実施形態では、この方法を実施する制御システムは、最大許容可能値(この具体例では7Nm/秒)を、新しいアクセルペダル位置におけるソース特性とターゲット特性の間のトルク差の百分率に変換し、新しいアクセルペダル位置P2におけるソース特性とターゲット特性の間のトルク差の上記百分率でブレンド調整を続行する。したがって、最大許容可能レートでブレンド調整を効率よく続行することができる。ただし重要なことは、ブレンド調整は、ソース特性とターゲット特性の間のトルク差に関する単位時間当たりの百分率で継続される。これは、上記説明したように、ブレンド調整中に、アクセルペダル位置P2が変化したとき、現時点でのアクセルペダル移行特性を制御システムにより形成することができる点において利点を有する。現時点でのアクセルペダル移行特性は、ソースペダル移行特性とターゲットペダル移行特性の態様の融合(ブレンド調整)である、アクセルペダル位置Pの関数としての形態を有するものである。
【0056】
ブレンド調整レートの絶対値が最大許容可能絶対値(たとえば7Nm/秒)を超えるために、単位時間当たり10%のデフォルト最大ブレンド調整レートより小さいブレンド調整レートでブレンド調整が実行されているときに、その後アクセルペダルが移動すると、アクセルペダルの現時点におけるソースペダル移行特性のトルク値に、そのアクセルペダル位置に対するソーストルクとターゲットトルクの間のトルク差の割合を追加することにより、現時点でのトルク特性が継続的に求められる。この割合は、ブレンド調整が完了した割合に相当し、この具体例では実質的に等しい。これにより、現時点でのペダル移行特性を定義し、上記説明したように求めることができる。制御システムは、ソース特性とターゲット特性との間のトルク差に関する単位時間当たりの割合と同一の割合でブレンド調整を継続することができる。択一的に、いくつかの実施形態では、制御システムは、ブレンド調整レートの最大絶対値(この具体例では7Nm/秒)を超えることなく、単位時間当たり10%の最大ブレンド調整レートに相当する、より高いブレンド調整レートでブレンド調整することができるか否か判断してもよい。
【0057】
我々は、現時点でのペダル位置においてソース特性とターゲット特性との間に70Nmを超えるトルク差(たとえば140Nm)があるときに、ソース特性からターゲット特性にブレンド調整を開始した場合の具体例について検討する。単位時間当たり10%のデフォルトのブレンド調整レートの割合で、14Nm/秒のブレンド調整レートで10秒間、ブレンド調整を行うものとする。ただし、14Nm/秒の絶対値は、7Nm/秒の最大許容可能絶対値を超えている。したがって、この方法を実施する制御システムは、7Nm/秒で示されるソーストルクとターゲットトルクの間のトルク差の割合を決定し(この具体例の場合、5%)、単位時間当たり5%のブレンド調整レートでブレンド調整を行う。したがって全体的なブレンド調整時間は20秒と予想される。
【0058】
たとえば50%だけブレンド調整が完了した時にアクセルペダル位置Pが実質的に移動した場合、制御システムは、ブレンド調整完了の割合(50%)を、新しいペダル位置Pに対する現時点でのトルクとターゲットトルクとのトルク差に適用する。この実施形態において、新しいトルク差は、ソース特性とターゲット特性との間のトルク差に関して50%だけブレンド調整したときの残りの50%を表すものと考えられる。したがって、ソース特性とターゲット特性との間のトルク差に関して単位時間当たり5%のレートでブレンド調整を継続して、約10秒で完了させる。新しいペダル位置におけるソーストルクとターゲットトルクの間の新しいトルク差の絶対値が50Nmであった場合、残りの25Nm、すなわちトルク差に対して、2.5Nm/秒の絶対レートで、ブレンド調整を継続して行う。
【0059】
択一的な実施形態では、新しいペダル位置におけるソーストルク値とターゲットトルク値の間のトルク差に関する単位時間当たり10%の最大許容可能レートでブレンド調整を続行することができるか否か、判断する。この具体例では、5Nmのトルク差は10%となり、ブレンド調整レートは5Nm/秒になる。これは、7Nm/秒の最大許容可能絶対値より小さい。すなわちブレンド調整は、単位時間当たり10%のレート、すなわち5Nm/秒で続行され、25Nmのトルク差をトルク調整するために5秒かかる。
【0060】
この方法は、アクセルペダル位置の新しい位置への移動を検知するステップと、トルク変化率の最大絶対値である最大ブレンド調整レートで、新しい位置からターゲット特性にブレンド調整するステップとを有していてもよい。
【0061】
この特徴は、ユーザがスロットルペダルを移動させると比較的に速やかにブレンド調整を行うことができるという利点を有する。
【0062】
択一的には、アクセルペダルの新しい位置への移動を検知するステップは、新しい位置へのアクセルペダルの移動を検知するステップを有する。
【0063】
最大ブレンド調整レートは10Nm/秒以下、任意的には7Nm/秒、任意的には約5Nm/秒から10Nm/秒の値であってもよい。その他の値も同様に有用である。
【0064】
任意的には、この方法は、車両の操作モードのさらなる変更を検知するステップと、新しいターゲット特性を選択するステップと、車両の操作モードのさらなる変更を検知した時点での特性から新しいターゲット特性にブレンド調整レートと、現時点でのアクセルペダル位置でブレンド調整するステップとを有し、更新されたブレンド調整レートは、現時点での特性と新しいターゲット特性の間のトルク差の単位時間当たりの百分率である。
【0065】
上述のように、現時点での特性は、元のソース特性とターゲット特性の重み付けされた平均値として再計算してもよく、重み付けされた平均値は、ブレンド調整の完了百分率に基づいて計算される。この特徴によれば、図4に示す既知の方法とは異なり、本質的に、ソース特性からターゲット特性に至る態様か急激な変化としてドライバに感じさせないように、ソース特性からターゲット特性に至る態様をプレンド調整することができる。
【0066】
保護を求めようとする本発明の1つの態様によれば、メモリ内に記憶された複数のトルクマップを参照し、アクセルペダル位置と関連付けて、車両のエンジン等の推進源の出力を決定するための電子制御システムが提供され、この電子制御システムは、車両の第1の操作モードを検知して、ソーストルクマップを適用し、車両の操作モードの変更を検知して、ターゲットトルクマップを選択し、車両に適用するトルクマップを、ソーストルクマップからターゲットトルクマップに、複数のトルクマップ間のトルク差の単位時間当たりの百分率として定義されるブレンド調整レートでブレンド調整するように構成される。
【0067】
このシステムは、車両の操作モードの自動変更に応答するものであってもよい。このシステムは、車両の操作モードの変更命令に応じて、任意的には1つまたはそれ以上のセンサ入力に応じて動作可能であってもよい。
【0068】
任意的には、ブレンド調整レートは選択可能であってもよい。ブレンド調整レートは制御システムにより選択可能であってもよい。いくつかの実施形態では、ブレンド調整レートはユーザにより選択可能であってもよい。
【0069】
任意的には、10Hz以上の更新レートでブレンド調整する。
【0070】
このシステムは、ブレンド調整を開始した後、アクセルペダル位置の新しい位置への移動を検知し、現時点のトルクマップとターゲットトルクマップの差に応じてブレンド調整レートを再計算し、新しい位置からターゲット特性にブレンド調整するように構成されてもよい。
【0071】
現時点のトルクマップは、ソーストルクマップからターゲットトルクマップへのブレンド調整の完了度合に応じて、ソーストルクマップとターゲットトルクマップとの重み付けされた平均値に相当するものであってもよい。
【0072】
1つの実施形態では、ブレンド調整レートは、ソース特性とターゲット特性の間のトルク差、最小許容可能な絶対値のブレンド調整時間、および最大許容可能ブレンド調整レートの情報を得た上で決定される。最初に、最大許容可能ブレンド調整レートでブレンド調整を完了させるためにかかる時間を決定する。この時間が最小時間と実質的に等しいか、それ以上である場合、絶対値の最大ブレンド調整レートを、ソース特性とターゲット特性との間のトルク差の単位時間当たりの百分率に変換する。特性間のトルク差の単位時間当たりの割合でブレンド調整を行う。
【0073】
ブレンド調整時間が最小時間より短い場合、ブレンド調整時間が最小時間と実質的に等しくなるようにブレンド調整レートを決定する。すなわち1つの実施形態では、ブレンド調整レートは、100を最小時間で割ったもの(100/最小時間)の単位時間当たりのものに相当する単位時間当たりの百分率として決定される。特性間のトルク差の単位時間当たりの割合でブレンド調整を行う。
【0074】
保護を求めようとする本発明の別の態様によれば、上記説明した態様に係る電子制御システムを備えた車両が提供される。このシステムは、利用状態に応じて操作モードを自動的に変更するように作動可能であり、複数のトルクマップのうちの1つが各操作モードに対して選択される。
【0075】
本発明に係る実施形態によれば、本発明に係る実施形態による方法を採用する電子制御システム、および操作状態に応じて典型的には自動的に操作モードを変更するシステムを有し、上記電子制御システムを備えた車両が提供される。
【0076】
保護を求めようとする本発明の別の態様によれば、メモリ内に記憶された複数のトルクマップを参照して、アクセルペダル位置と関連付けて、車両のエンジン等の推進源の出力を決定する電子制御システムが提供され、この電子制御システムは、車両のソース操作モードを検知して、ソースマップを適用し、車両のターゲット操作モードを検知して、ターゲットマップを適用し、ソースマップからターゲットマップに、これらのマップ間のトルク差の単位時間当たりの百分率として定義されるブレンド調整レートでブレンド調整するように構成されている。
【0077】
保護を求めようとする本発明の態様によれば、上記電子制御システムおよび操作モードを変更するシステムが提供される。
【0078】
本願の範疇において、上記段落、クレーム、および/または以下の明細書および図面に記載された、さまざまな態様、実施形態、実施例、および択一例、特に個々の特徴物は、独立してまたは組み合わせて採用することができる。たとえば1つの実施形態に関連して説明された特徴物は、その特徴物が矛盾するものでなければ、すべての実施形態に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
添付図面を参照しながら、ほんの一例としてのみ、本発明に係る実施形態について以下説明する。
図1】既知の動力車の概略図である。
図2】従来技術に係るトルクマップのブレンド調整を示すグラフである。
図3】従来技術に係るトルクマップのブレンド調整を示すグラフである。
図4】従来技術に係るトルクマップのブレンド調整を示すグラフである。
図5】本発明に係る動力車の概略図である。
図6】本発明に係る実施形態によるトルクブレンド調整を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0080】
図5は、本発明に係る実施形態による動力車201の概略図である。図1の動力車101の構成部品に同様の図5の動力車201の構成部品には、参照符号の頭を1から2に代えた同様の参照符号を用いて示す。すなわち図1の車両101のエンジン121は、図5の車両201のエンジン221に対応する。
【0081】
車両201は、アクセルペダル位置Pの関数としてエンジントルクTを決定するために用いられるアクセルペダル移行マップとともにプログラムされた車両制御ユニット(VCU)201Cを有する。
【0082】
図6は、最大アクセルペダル位置(P)に対してエンジントルク(T)をプロットしたグラフである。慎重なトルク特性を符号Aで示し、強引なトルク特性を符号Bで示す。
【0083】
車両操作モードに変更があった場合、たとえば慎重なトルク特性が強引なトルク特性にブレンド調整された場合、ブレンド調整は矢印Eの方向に行われ、ブレンド調整の推移は、時刻t=1,t=2等で図示されている。
【0084】
図5の実施形態において図6に示すように、ブレンド調整進行中、たとえばポイントFにおけるアクセルペダル位置が増大して、トルクブレンド特性に沿って最大値に推移するように、エンジントルク特性が漸進的に形状変化する。こうしたブレンド調整(図6)は、アクセルペダル位置PがラインFGHに沿ってP1からP=100%に変化して、ポイントGでの応答が段差的に変化する図3の場合とは異なり、実質的に急激に(段差的に)変化することはない。
【0085】
1つの実施形態では、ブレンド調整中の任意の段階でのブレンド調整結果は、元のモードのトルクと新たに要求されたモードのトルクとの重み付けされた平均値である。より詳細に上記または下記するように、ブレンド調整中にアクセルペダル位置が変化すると、車両エンジンは、ブレンド調整の完了度合を示す百分率における現時点でのトルク特性に従う(トルク特性で応答する)。
【0086】
現時点でのトルク特性は、元のモードのトルクと現時点でのアクセルペダル位置において新たに要求されたトルクモードのトルクとの重み付けされた平均値として決定される。重み付けされた平均値は、ブレンド調整の完了度合で求められる。すなわち、ブレンド調整が40%完了したときに、アクセルペダル位置が変化すると、車両制御ユニット(VCU)201Cは、所与の時刻(瞬間)においてエンジン221が出力すべきトルク量として、元のトルクモードに応じて(トルク移行マップAを参照して)現時点でのアクセルペダル位置で出力されるだろうトルク量に、元のトルクモードに応じて現時点でのアクセルペダル位置で出力されるだろうトルク量と新たに要求されたトルクモードに応じて現時点でのアクセルペダル位置で出力されるだろうトルク量との間の差異の40%を加えたものを計算して求める。
【0087】
この特徴は、図4に示す既知のブレンド調整に示すように元のトルクモードの形状を保持するのではなく、ブレンド調整が進行中、現時点でのペダル移行マップの形状が元のトルクモードの形状から新たに要求されたトルクモードの形状に徐々に変化するという利点を有する。
【0088】
換言すると、図5に示す実施形態において、アクセルペダル位置が変化したとき、エンジントルク値は、所与のペダル位置における元のトルクモードのトルクと新たに要求されたトルクモードのトルクとの重み付けされた平均値に実質的に継続して相当し、重み付けされた平均値は、ブレンド調整の完了度合により決定される。ブレンド調整の進行中、アクセルペダル261を移動させた場合でも、重み付けを変化させることができる。
【0089】
ブレンド調整レート(ブレンド調整率)は、たとえば1秒当たり10%で、単位時間当たりの固定した百分率であってもよい。ただしブレンド調整レートの絶対値を、最大許容ブレンド調整レートに制限してもよい。予め設定された最大許容ブレンド調整レートは、たとえば7Nm/秒、10Nm/秒、または任意の適当な値であってもよい。理解されるように、適当な値を実験的に決定してもよい。
【0090】
車両制御ユニット(VCU)201Cは、元のトルク特性(オリジナルトルク特性)と目標とするトルク特性(ターゲットトルク特性)との間の現時点でのトルクの差異に基づいて、固定ブレンド調整レートを連続的に変更してもよい。
【0091】
理解されるように、アクセルペダル位置の全範囲において、オリジナルトルク特性からターゲットトルク特性へ漸進的に推移させる特徴は、本発明に係る実施形態において基本的なものである。
【0092】
1つの実施例では、アクセルペダル261の所与の位置におけるトルク特性間のトルク差が140Nmとなる場合がある。この値の10%に対するブレンド調整レートは、14Nm/秒であり、本実施形態に係る最大許容ブレンド調整レートの7Nm/秒を超える。ブレンド調整レートが7Nm/秒であるとき、ブレンド調整時間は20秒である。したがって、新旧のトルク特性間トルクが連続的に推移するように、単位時間当たり5%のブレンド調整レートが適用される。その後、ドライバがアクセルペダル位置を変更した場合であっても、単位時間当たり5%のブレンド調整レートを維持してもよい。ただし、このような状況下で、ブレンド調整レートが7Nm/秒を超える場合、本実施形態では7Nm/秒の最大許容ブレンド調整レートを適用してもよい。いくつかの実施形態では、最大許容ブレンド調整レートで表される調整レート百分率を再計算して、適用してもよい。
【0093】
択一的な方法において、新たなアクセルペダル位置におけるオリジナルモード(ソースモード)と新たに要求されたターゲットモードの間のトルク差に基づいて、ブレンド調整レートを再計算してもよい。いくつかの実施形態では、現時点でのトルク特性(すなわちオリジナルトルク特性とターゲットトルク特性の重み付けされた平均値)と、新たなアクセルペダル位置におけるターゲット特性との間のトルク差に基づいて、ブレンド調整レートを再計算してもよい。
【0094】
理解されるように、本発明に係る実施形態は、アクセルペダル161の位置に対する感覚に対する段階的な変化を回避して、ブレンド調整中のアクセルペダル位置のわずかな変化があっても、ドライバがトルク特性の変化形状に順応できるようにするものである。
【0095】
理解されるように、目標とするブレンド調整レートは、たとえば単位時間当たり10%の固定した値であるが、実質的に単位時間当たり10%に等しく、たとえば7Nm/秒の最大許容可能な絶対値であってもよい。
【0096】
たとえばトルク差が70Nmであったとき、ブレンド調整レートは7Nm/秒(単位時間当たり10%)であり、最大許容ブレンド調整レートに相当する。トルク差が70Nm以下であった場合、ブレンド調整レートはトルク差の10%に設定してもよい。トルク差が50Nmであった場合、ブレンド調整レートは5Nm/秒となる。
【0097】
図6を参照すると、アクセルペダル位置が50%であるときのブレンド調整レート推移百分率は、アクセルペダル位置が90%であるときの場合に比して、エンジントルクの絶対値に対してより大きい影響を与える。すなわち両方向矢印11で示す変化は、両方向矢印12で示す変化より大きいため、トルク特性は、トルク特性Aおよびトルク特性Bの間で漸進的に変更される。
【0098】
上記説明したように、車両ドライバを混乱させない許容可能な最大ブレンド調整レートに基づいて、ターゲットトルクに推移する時間を設定できることを理解すべきである。上述のように、たとえばトルクマップ間の最大差異が140Nmであることを考えると、この最大ブレンド調整レートは、きわめて小さく、たとえば7Nm/秒である。こうしたブレンド調整は、安定した状態(レート)では20秒間を要する。トルクマップが収束するにつれて、絶対的な差異は小さくなるため、最大ブレンド調整レートでの推移時間もより短くなる。これはドライバを混乱させ得るものである。しかしながら、本発明に係る実施形態は、アクセルペダル位置に対して、トルクマップ間の推移(すなわちブレンド調整)を、絶対値ではなく、段階的な百分率で行うことができる。したがって、トルクマップ間の絶対的な差異が小さくなるにつれ、これに伴って絶対的なブレンド調整レート(単位:Nm/秒)も小さくなる。
【0099】
ブレンド調整中、アクセルペダル位置を決定する際の更新レートは、たとえば50Hz以上の任意の適当な値であってもよい。これは、エンジンから要求される現時点でのトルクを決定するために、現時点のトルク特性(ソーストルク特性)とターゲットトルク特性が、車両ドライバにより認識されない更新レートで継続的に評価されることを意味する。
【0100】
上記説明したように、ブレンド調整中にアクセルペダル位置が変化すると、車両エンジン221は、ブレンド調整の完了度合を示す百分率で、現時点でのトルク特性に沿ってトルク推移させる。すなわち、たとえばアクセルペダル161を増大させて(踏み込んで)、図6のポイントJからポイントKに部分的にシフトさせる。この変化は、瞬間的に50Hzの更新レートでコンピューターにより計算され、ドライバは、アクセルペダル161の移動に呼応して増大するエンジン出力トルクを体感する。
【0101】
1つの実施形態では、新たなトルク出力(K)は、一定のスロットル開度でターゲット特性上のターゲットトルク(L)に向かう新たなブレンド調整に対するスタートポイントであり、新しいブレンド調整は、好ましくは許容可能な最大ブレンド調整レートで開始される。
【0102】
スロットルにおける更なる変更も同様の効果を有する。
【0103】
択一的な解決手段(戦略)は、ポイントJ(アクセルペダル位置に相当)におけるブレント調整の完了百分率を有し、これをポイントK(ポイントLとポイントM)におけるターゲットトルク特性および既存のトルク特性に適用してもよい。すなわちポイントJは、40%のブレンド調整完了度合を有する場合、ポイントMとポイントLの間のブレンド調整の完了度合が40%であると判断され、ポイントKからポイントLまで、ブレンド調整が継続される。理解されるように、その瞬間のトルク特性自体がソース特性とターゲット特性の間におけるブレンド調整を表すものであるため、ポイントKの位置は、当然に、ブレンド調整の完了度合の百分率で定義される。これにより、ブレンド調整が行われているとき、トルク特性Aからトルク特性Bへのトルク特性の推移にドライバが対処しやすくすることができる。
【0104】
ブレンド調整は、アクセルペダル位置P1で行ったように、ターゲットトルク特性とソーストルク特性の間の差異(ペダル位置P2におけるトルク特性Aとトルク特性Bの間の差異)の単位時間当たりの百分率と同じ百分率でポイントKからポイントLへ継続してトルク推移させる。すなわち、ブレンド調整百分率がポイントEとポイントFとの差異の10%/秒であるとき、ポイントMとポイントLとのトルク差の10%/秒のレートでポイントKからポイントLまで、ブレンド調整を継続する。この値が所定の最大許容変更レート(本実施形態では、この値は7Nm/秒である。)を超えたとき、ブレンド調整レートに制限を加え、最大許容可能絶対レート、たとえば7Nm/秒に相当する単位時間当たりの比例係数で継続してもよい。他の構成も同様に有用である。
【0105】
更新レートが50Hzであるとき、ブレンド調整の再計算は、アクセルペダル位置の移動よりも常に迅速であるため、車両ドライバに感知されにくい。
【0106】
理解されるように、本発明に係る実施形態は、トランスミッション124が一対の前輪111,112のみを駆動し、もしくは一対の後輪114,115のみを駆動するか(前輪駆動車または後輪駆動車)、または2輪駆動/4輪駆動を選択できる車両を駆動するように構成された車両に用いられるのに適したものである。本発明に係る実施形態は、4つの車輪より多くの、または4つの車輪より少ない車輪を有する車両に好適なものであってもよい。
【0107】
本願で開示される方法およびシステムは、車両の推進源に係る複数のトルクマップ間でブレンド調整するためのものである。本発明に係る実施形態は、例えば地形変化等の車両操作状態の変化に応じて択一的なトルクマップを自動的に選択する上で特に適したものである。本発明に係る実施形態によるブレンド調整によれば、アクセルペダル位置が変化したときに、推進源の応答変化に段差的な(急激な)変化を回避することができる。
【0108】
本願明細書の発明の詳細な説明及びクレームを通して、「備える(comprise)」および「含む(contain)」の用語、およびこれらの用語から派生した「備えた(comprising)」および「備え(comprises)」の用語は、「これらに限定することなく有する」という意味であり、その他の部分、付随物、成分、整数、またはステップを排除することを意図したものではない。
【0109】
本願明細書の発明の詳細な説明及びクレームを通して、単数形は、文脈上要求されるものでなければ、複数形のものを含む。特に、不定冠詞を用いた場合には、文脈上要求されるものでなければ、単数形のみならず、複数形のものを含む。
【0110】
本発明に係る特定の態様、実施形態、または実施例に関連して説明した特徴物、整数、特性、成分、化学成分、または化学塩基は、矛盾するものでなければ、任意の他の態様、実施形態、または実施例に適用可能であるものと理解すべきである。
【符号の説明】
【0111】
101P…パワートレイン、101…動力車、111,112…前輪、113,114…後輪、121…エンジン、121C…エンジンコントローラ、124…トランスミッション(変速装置)、124S…変速機モード選択ダイヤル、124C…変速機コントローラ、128S…地形応答モード選択ダイヤル、131…ドライブシャフトまたはプロペラシャフト、135…ディファレンシャル(後輪作動装置)、137…動力テイクオフユニット(動力取出ユニット、PTU)、141C…ブレーキコントローラ、161…アクセルペダル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6