特許第6180483号(P6180483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180483
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】錠装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 19/20 20060101AFI20170807BHJP
   E05B 65/02 20060101ALI20170807BHJP
   E05B 19/06 20060101ALI20170807BHJP
   E05B 27/10 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   E05B19/20
   E05B65/02 C
   E05B19/06
   E05B27/10
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-186555(P2015-186555)
(22)【出願日】2015年9月24日
(65)【公開番号】特開2017-61783(P2017-61783A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108708
【氏名又は名称】タキゲン製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慶
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−094195(JP,A)
【文献】 特開2015−101945(JP,A)
【文献】 特開2015−140576(JP,A)
【文献】 特開2003−227253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 19/06
E05B 19/20
E05B 27/00−27/10
E05B 29/00−29/14
E05B 35/08−35/12
E05B 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ錠と、このシリンダ錠を施解錠操作するための常用、非常用の2種のキーとからなる錠装置であって、
前記シリンダ錠は、概略円筒状のシリンダケースと、外周面が前記シリンダケースの内周面に摺接するように当該シリンダケース内に施錠位置と解錠位置の間を軸周り回転可能に挿入される円柱状のプラグとを具備し、
前記シリンダケースは、半径方向に延びて内周面に開口する複数のドライバピン孔と少なくとも1つのロック用ドライバピン孔とを具え、
前記プラグは、前記キーを挿入できるように前端に開口して軸線方向に延びる鍵穴と、施錠位置において前記ドライバピン孔に対応するように外周面から鍵穴に貫通する複数のコードピン孔と、施錠位置と解錠位置との中間角度位置において前記ロック用ドライバピン孔に対応するように外周面から鍵穴に貫通するロック用コードピン孔と、を具備し、
前記ドライバピン孔には、前記プラグの回転中心方向に付勢されるドライバピンが挿入され、
前記ロック用ドライバピン孔には、ロック用ドライバピンと、このロック用ドライバピンによって前記プラグの回転中心方向に付勢される中間ピンとが挿入され、
前記コードピン孔には、内側端が前記鍵穴へ突出するようにコードピンが挿入され、
前記ロック用コードピン孔には、内側端が前記鍵穴へ突出するようにロックピンが挿入され、
前記常用キーは、施錠位置にある前記プラグの鍵穴への挿入時に、前記ロックピンの外側端面をプラグの外周面に一致させて前記ロック用コードピン孔を閉じる位置にロックピンを保持するアンチロック面と、前記コードピンとドライバピンとの接触面をプラグの外周面に一致させる位置にコードピンを保持する解錠凹部とを具備し、
前記非常用キーは、施錠位置にある前記プラグの鍵穴への挿入時に、前記ロックピンを前記ロック用コードピン孔の深部に配置してロック用コードピン孔の外側端部に空所を形成し、それによってプラグが中間角度位置にある時当該空所に前記中間ピンを受け入れ、中間ピンと前記ロック用ドライバピンとの接触面を前記プラグの外周面に一致させる位置にロックピンを保持するロック凹部と、前記コードピンとドライバピンとの接触面をプラグの外周面に一致させる位置にコードピンを保持する解錠凹部とを具備し、
前記非常用キーを用いて前記プラグを解錠方向へ回転させる中間角度位置において前記中間ピンが前記ロック用コードピン孔の前記ロックピンの上に落ち、解錠後、プラグを施錠位置に戻しても、ロックピンがロック凹部に係合して非常用キーが拘束されており、鍵穴からの抜き取りが不可能されることを特徴とする錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機用扉の施解錠機構等に用いられる錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
常用キーに加えて非常キーによる解錠操作が可能で、非常用キーによる解錠操作の履歴が残る錠装置として、特許文献1に記載のものが知られている。
この錠装置においては、プラグに、コードピンとロック用コードピンが装着される。シリンダケースには、ドライバピンとロック用ドライバピンが装着される。常用キーには、コードピンとロック用コードピンとをプラグとシリンダケースとの回転境界を開放する位置に導く解錠凹部が設けられる。これに対し、非常キーには、コードピンをプラグとシリンダケースとの回転境界を開放する位置に導く解錠凹部と、ロック用コードピンを嵌合するためのロック凹部とが設けられる。
以上の構成の下、常用キー、非常キーのいずれを挿入した状態においてもコードピンとロック用コードピンの双方がプラグとシリンダケースとの回転境界を閉塞することがないために、プラグの回転操作が許容されるが、非常キーを使用してプラグを回転させ、ロック用コードピンがロック用ドライバピンに正対する位置まで移動すると、ロック用コードピンがロック凹部に嵌合し、ロック用ドライバピンが回転境界を閉塞し、以後、プラグの回転が規制され、かつ非常キーの抜去も規制されることから、非常キーの使用履歴を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-124496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に錠装置は、シリンダ錠のプラグの回転を、伝動機構を介してロック機構に伝達することにより、扉等の施錠、解錠状態を変更するように構成される。シリンダ錠とロック機構とは個別に所定位置に配置、固定されるため、プラグの施錠位置から解錠位置までの回転角度とロック機構の施錠状態から解錠状態への遷移動作との間に誤差が発生する。すなわち、プラグが解錠位置に至ってもロック機構が解錠状態とならないストローク不足や、プラグが解錠位置に至る前にロック機構が解錠状態となるオーバーストロークの状態が生じる。
上記従来例において、ストローク不足の場合、ロック機構が解錠動作完了前にシリンダ錠のロック用コードピンが非常キーのロック凹部に落ち込んで、プラグの回転が規制され結果、解錠不能となる。逆にオーバーストロークの場合、プラグを解錠位置まで回転させずにロック機構を解錠できるので、その時点でプラグを施錠位置へ戻せば非常キーの抜き取りが可能となり、常用キーと同様の使用が可能になってしまうという問題が発生する。
したがって、本発明は、常用キーと非常用キーを併用でき、非常用キーで解錠操作した場合にその履歴が確実に残り、かつ動作信頼性の高い錠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明の錠装置は、シリンダ錠1と、このシリンダ錠1を施解錠操作するための常用、非常用の2種のキー2,3とからなる。シリンダ錠1は、概略円筒状のシリンダケース4と、外周面11が前記シリンダケース4の内周面11に摺接するように当該シリンダケース4内に施錠位置と解錠位置の間を軸周り回転可能に挿入される円柱状のプラグ5とを具備する。シリンダケース4は、半径方向に延びて内周面11に開口する複数のドライバピン孔6と、少なくとも1つのロック用ドライバピン孔7とを具える。プラグ5は、キー2,3を挿入できるように前端に開口して軸線方向に延びる鍵穴8と、施錠位置においてドライバピン孔6に対応するように外周面11から鍵穴8に貫通する複数のコードピン孔9と、施錠位置と解錠位置との中間角度位置においてロック用ドライバピン孔7に対応するように外周面11から鍵穴8に貫通する少なくとも1つのロック用コードピン孔10とを具備する。ドライバピン孔6には、プラグ5の回転中心方向に付勢されるドライバピン12が挿入される。ロック用ドライバピン孔7には、ロック用ドライバピン13と、このロック用ドライバピン13によってプラグ5の回転中心方向に付勢される中間ピン14とが挿入される。コードピン孔9には、内側端が鍵穴8へ突出するようにコードピン15が挿入される。ロック用コードピン孔10には、内側端が鍵穴8へ突出するようにロックピン16が挿入される。常用キー2は、アンチロック面17と、解錠凹部18とを具備する。アンチロック面17は、施錠位置にあるプラグ5の鍵穴8へ常用キー2を挿入したときに、ロックピン16の外側端面をプラグ5の外周面11に一致させてロック用コードピン孔10を閉じる位置にロックピン16を保持する。解錠凹部18は、コードピン15とドライバピン12との接触面をプラグの外周面11に一致させる位置にコードピン15を保持する。非常用キー3は、ロック凹部1と、解錠凹部20とを具備する。ロック凹部1は、施錠位置にあるプラグ5の鍵穴8へ非常用キー3を挿入したときに、ロックピン16をロック用コードピン孔10の深部に配置して、それの外側端部に空所21を形成し、それによってプラグ5が中間角度位置にある時当該空所21に中間ピン14を受け入れ、中間ピン14とロック用ドライバピン13との接触面をプラグ5の外周面11に一致させる位置にロックピン16を保持する。解錠凹部20は、コードピン15とドライバピン12との接触面をプラグ5の外周面11に一致させる位置にコードピン15を保持する。非常用キー3を用いてプラグ5を解錠方向へ回転させる中間角度位置において、中間ピン14がロック用コードピン孔10のロックピン16の上に落ち、解錠後、プラグ5を施錠位置に戻すと、ロックピン16がロック凹部19に係合して非常用キー3が拘束され、鍵穴8からの抜き取りが不可能される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の錠装置は、常用キーと非常用キーを併用でき、非常用キーで解錠操作した場合にその履歴が確実に残り、かつ動作信頼性の高い錠装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る錠装置のシリンダ錠を常用キーで操作する過程を示す断面図である。
図2図1の錠装置のシリンダ錠を非常用キーで操作する過程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図において、錠装置は、シリンダ錠1と、これを操作する常用、非常用の2種のキー2,3とのセットで構成される。
【0009】
シリンダ錠1は、概略円筒状のシリンダケース4と、これに軸周り回転可能に挿入される円柱状のプラグ5とを具備する。プラグ5の外周面は、シリンダケース4の内周面に摺接(以下この摺接面11を「シアライン」という。)し、シリンダケース4内において施錠位置(図1(a),図1(b),図2(c),図2(d))と、解錠位置(図1(d),図2(c))の間を約90°の範囲で正逆回転自在である。
【0010】
シリンダケース4は、軸心に向かって半径方向に延びて内周面に開口する複数のドライバピン孔6(簡単のため、1つのみを図示した。)と、少なくとも1つのロック用ドライバピン孔7とを具える。
【0011】
プラグ5は、キー2,3を挿入できるように、前端に開口して軸線方向に延びる鍵穴8と、施錠位置においてドライバピン孔6に対応するように外周面から鍵穴8に貫通する複数のコードピン孔9(簡単のため、1つのみを図示した。)と、施錠位置と解錠位置との中間角度位置(図1(c),図2(b))においてロック用ドライバピン孔7に対応するように外周面から鍵穴8に貫通するロック用コードピン孔10とを具備する。
【0012】
ドライバピン孔6には、プラグ5の回転中心方向に付勢されるドライバピン12が挿入される。ロック用ドライバピン孔7には、ロック用ドライバピン13と、このロック用ドライバピン13によってプラグ5の回転中心方向に付勢される中間ピン14とが挿入される。
【0013】
コードピン孔9には、内側端が鍵穴8へ突出するようにコードピン15が挿入される。ロック用コードピン孔10には、内側端が鍵穴8へ突出するようにロックピン16が挿入される。
【0014】
図1(a)は、シリンダ錠1が施錠状態にあるときの断面図である。図1(b)〜(d)には、鍵穴8へ常用キー2を挿入してシリンダ錠1を解錠操作する過程を示した。図1(b)は、施錠位置にあるプラグ5の鍵穴8へ常用キー2を挿入した状態、図1(c)は、プラグ5を施錠位置から時計方向(解錠方向)へ約30°回転操作した状態、図1(d)は、プラグ5を施錠位置から約90°回転させて、解錠位置へ持ち来した状態をそれぞれ示す。
【0015】
図1に示すように、常用キー2は、アンチロック面17と、解錠凹部18とを具備する。アンチロック面17は、施錠位置にあるプラグ5の鍵穴8へ常用キー2を挿入したとき(図1(b))、ロックピン16の外側端面をシアライン11に一致させて、ロック用コードピン孔10の外側開口を閉じる位置にロックピン16を保持する平面である。解錠凹部18は、コードピン15とドライバピン12との接触面(コードピン15の外側端面)をシアライン11に一致させる位置(図1(b))にコードピン15を保持し、プラグの回転操作を許容する。
【0016】
常用キー2を用いてシリンダ錠1を解錠操作するとき、その中間過程(図1(c))で、ロック用コードピン孔10とロック用ドライバピン孔7とが対向する。このとき、ロックピン16がロック用コードピン孔10の開口を閉じているので、中間ピン14は移動することなく、プラグ5は、そのまま解錠位置(図1(d))に至る。この間に、プラグ5の回転に連動する図示しない扉側のロック機構が施錠動作を完了する。そこから、施錠状態に戻す過程は、上述の逆過程である。施錠状態に戻せば、常用キー2は鍵穴8から抜き取ることができる。
【0017】
図2(a)〜(d)に、鍵穴8へ常用キーを挿入してシリンダ錠1を解錠操作する過程を示した。図2(a)は施錠状態のシリンダ錠1へ非常用キー3を挿入した状態を示す。図2(b)は、プラグ5を施錠位置から時計方向(解錠方向)へ約30°回転させた状態、図2(c)は、プラグ5を施錠位置から約90°回転させて、解錠位置へ持ち来した状態、図2(c)は、プラグ5を施錠位置へ戻した状態をそれぞれ示す。
【0018】
図2に示すように、非常用キー3は、ロック凹部19と、解錠凹部20とを具備する。ロック凹部19は、施錠位置にあるプラグ5の鍵穴8へ非常用キー3を挿入したとき(図2(a))、ロックピン16をロック用コードピン孔10の深部に配置して、ロック用コードピン孔10の外側端部に空所21を形成する。解錠凹部20は、コードピン15とドライバピン12との接触面(コードピン15の外側端面)をシアラインに一致させる位置にコードピン15を保持する。
【0019】
非常用キー3を用いてシリンダ錠1を解錠操作するとき、その中間過程(図2(b))で、ロック用コードピン孔10とロック用ドライバピン孔7とが対向する。このとき、ロックピン16は、ロック用コードピン孔10の深部にあって、ロック用コードピン孔10の外側端部に空所21が形成されているので、中間ピン14がロック用ドライバピン13に押されて空所21へ落ち込み、中間ピン14とロック用ドライバピン13との接触面がシアライン11に一致する。プラグ5は、中間ピン14を保持したまま解錠位置(図2(c))に至る。この間に、プラグ5の回転に連動する図示しない扉側のロック機構が施錠動作を完了する。
【0020】
そこから、施錠状態に戻す過程は、上述の逆過程であるが、プラグ5は、中間ピン14を保持したまま解錠位置(図2(d))に至る。この状態において、ロックピン16は、ロック凹部19に落ち込んで、中間ピン14により移動が阻止されているから、非常用キー3は、鍵穴8から抜き取ることができない。これにより、非常用キー3を用いて解錠操作した履歴が残る。
【0021】
シリンダ錠1の動作と扉側のロック機構の動作との間にわずかな齟齬があって、プラグ5が解錠位置に至る直前にロック機構が解錠状態となる場合でも、すでに中間ピン14がロック用コードピン孔10に落ち込んでいるので、プラグ5を施錠位置に戻しても、非常用キー3を鍵穴8から抜き取ることができない。このため、非常用キー3を用いて解錠操作した履歴が確実に残る。
【符号の説明】
【0022】
1 シリンダ錠
2 常用キー
3 非常用キー
4 シリンダケース
5 プラグ
6 ドライバピン孔
7 ロック用ドライバピン孔
8 鍵穴
9 コードピン
10 ロック用コードピン
11 シアライン
12 ドライバピン
13 ロック用ドライバピン
14 中間ピン
15 コードピン
16 ロックピン
17 アンチロック面
18 解錠凹部
19 ロック凹部
20 解錠凹部
21 空所
図1
図2