(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方面全体に凹凸部が形成されたセパレートフィルムの当該凹凸部が形成された面側に、離型剤を介して樹脂をコーティングすることにより保護層を形成し、さらに電磁波シールド層を形成したシールドフィルムであって、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成しており、この離型層の厚みの最大値は前記凹凸部の高さより薄くしてあり、
前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離したときの前記保護層の表面粗さ(Ra)が、0.2μm〜0.6μmであることを特徴とするシールドフィルム。
マット処理により一方面全体が凹凸形状にされたセパレートフィルムにおける当該凹凸形状側の面に離型剤と保護層と電磁波シールド層とを少なくとも積層したシールドフィルムを、一層以上のプリント回路を含む基体の少なくとも片面上に載置し、
前記離型剤は、前記セパレートフィルムの凹凸部が形成された面の凹部に分散配置されて離型層を形成し、この離型層の厚みの最大値は前記凹凸の高さより薄くしてあり、
前記シールドフィルム及び前記基体を積層方向に加熱・加圧した後、前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離することによって、表面粗さ(Ra)が0.2μm〜0.6μmの前記保護層を有するようにしたことを特徴とするシールドプリント配線板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、セパレートフィルムの片面に離型剤をコーティングしたカバーフィルム(保護層)を用いた場合、セパレートフィルムのカバーフィルム(保護層)に対する接着度合(剥離強度)は、離型剤の特性に依存することになり、その接着度合(剥離強度)のコントロールは困難である。そのため、セパレートフィルムをカバーフィルム(保護層)から剥がす際に、過剰に大きな接着力によってカバーフィルム(保護層)自体が破れてしまったり、また、過剰に小さな接着力によって製造過程でセパレートフィルムがカバーフィルム(保護層)から剥がれてしまったりする場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、セパレートフィルムの保護層に対する接着力を適度にコントロールして、過剰に大きな接着力や過剰に小さな接着力で接着することによる不具合を防止するシールドフィルム、シールドプリント配線板、及び、シールドプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシールドフィルムは、一方面全体に凹凸部が形成されたセパレートフィルムの当該凹凸部が形成された面側に、離型剤を介して樹脂をコーティングすることにより保護層を形成し、さらに電磁波シールド層を形成したシールドフィルムであって、前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離したときの前記保護層の表面粗さ(Ra)は、0.2μm〜1.0μmであることを特徴とする。
【0008】
上記構成のように、セパレートフィルムが離型剤を介して保護層に接着した状態では、セパレートフィルム表面の凹凸部、及び、セパレートフィルム表面の凹凸部が転写されて形成された、表面粗さ(Ra)が0.2μm〜1.0μmの保護層表面の凹凸部によるアンカー効果によって、保護層に対するセパレートフィルムの接着性を、後工程でシールドフィルムを薬液に浸漬させたりしたときに薬液が保護層とセパレートフィルムとの間に入り込まずに、セパレートフィルムが保護層から剥離することを防止する程度に高めることができる。また、凹凸部を有するセパレートフィルムに離型剤を塗布する過程で離型剤は
自然に略均一に分散配置された状態となり、さらに保護層用の樹脂を塗布し、セパレートフィルム表面の凹凸部が転写されて形成された、表面粗さ(Ra)が0.2μm〜1.0μmの保護層とする。これにより、保護層に対するセパレートフィルムの接着性を、セパレートフィルムを保護層から剥がす際に、過剰に大きな接着力によって保護層自体が破れてしまわない程度に抑制することができる。このように、セパレートフィルムの保護層に対する接着力を適度にコントロールすることができるため、過剰に大きな接着力や過剰に小さな接着力で接着することによる不具合を防止することができる。
【0009】
また、本発明のシールドフィルムは、前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度が、1N/50mm〜20N/50mmであることを特徴としてもよい。
【0010】
上記の構成によれば、セパレートフィルムの保護層に対する剥離強度を、1N/50mm〜20N/50mmにすることで、セパレートフィルムの保護層に対する接着力をより最適にすることができる。
【0011】
また、本発明のシールドフィルムは、前記シールドフィルムをプリント配線板に載置し、加熱・加圧した後の前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度が、1N/50mm〜10N/50mmであることを特徴としてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、前記シールドフィルムをプリント配線板に載置し、加熱・加圧した後の前記セパレートフィルムの前記保護層に対する剥離強度を、1N/50mm〜10N/50mmにすることで、セパレートフィルムの保護層に対する接着力をより最適にす
ることができる。
【0013】
また、本発明のシールドフィルムは、前記電磁波シールド層が、導電性接着剤層を含むことを特徴としてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、確実にプリント配線板のグランド回路と電磁波シールド層とを電気的に接続できる。
【0015】
また、本発明のシールドフィルムは、前記電磁波シールド層が、金属層を更に含み、前記導電性接着剤層は、異方導電性接着剤層により構成されていることを特徴としてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、導電性フィラーの量が少ないため、可撓性の優れたものにすることができる。
【0017】
また、本発明のシールドフィルムは、前記導電性接着剤層が、等方導電性接着剤により構成されていることを特徴としてもよい。
【0018】
上記構成によれば、導電性接着剤層を設けるだけで、グランド回路等に対するグランド接続を可能とするとともに電磁波シールド効果を持たせることができる。
【0019】
また、本発明は、一層以上のプリント回路を含む基体の少なくとも片面上に、一方面全体に凹凸部が形成されたセパレートフィルムの当該凹凸部が形成された面側に、離型剤を介して樹脂をコーティングすることにより保護層を形成し、さらに電磁波シールド層を形成したシールドフィルムを設けたシールドプリント配線板であって、前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離したときの前記保護層の表面粗さ(Ra)が0.2μm〜1.0μmであることを特徴としている。
【0020】
上記の構成によれば、基体の片面上に、電磁波シールド層と、保護層とを有するシールドプリント配線板に関して、セパレートフィルムが離型剤を介して保護層に接着した状態では、セパレートフィルム表面の凹凸部、及び、セパレートフィルム表面の凹凸部が転写されて形成された、表面粗さ(Ra)が0.2μm〜1.0μmの保護層表面の凹凸部によるアンカー効果によって、保護層に対するセパレートフィルムの接着性を、後工程でシールドフィルムをめっき等の薬液に浸漬させたりしたときに薬液が保護層とセパレートフィルムとの間に入り込まずに、セパレートフィルムが保護層から剥離することを防止する
程度に高めることができる。また、セパレートフィルム表面の凹凸部、及び、セパレートフィルム表面の凹凸部が転写されて形成された、表面粗さ(Ra)が0.2μm〜1.0μmの保護層表面の凹凸部を設けることにより、セパレートフィルムに離型剤を塗布する過程で自然に離型剤が分散されるため、離型剤を略均一に分散配置された状態にすることができる。これにより、保護層に対するセパレートフィルムの接着性を、セパレートフィルムを保護層から剥がす際に、過剰に大きな接着力によって保護層自体が破れてしまわない程度に抑制することができる。このように、セパレートフィルムの保護層に対する接着
力を適度にコントロールすることができるため、過剰に大きな接着力や過剰に小さな接着力で接着することによる不具合を防止することができる。
【0021】
また、本発明のシールドプリント配線板は、前記プリント回路を含む基体がフレキシブルプリント配線板からなることを特徴としてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、シールドプリント配線板を可撓性の優れたものにすることができる。
【0023】
また、本発明のシールドプリント配線板は、前記プリント回路を含む基体がテープキャリアパッケージ用TABテープであることを特徴としてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、柔軟で組み込み性に優れたシールドプリント配線板を得ることができる。
【0025】
また、本発明は、マット処理により一方面全体が凹凸形状にされたセパレートフィルムにおける当該凹凸形状側の面に離型剤と保護層と電磁波シールド層とを少なくとも積層したシールドフィルムを、一層以上のプリント回路を含む基体の少なくとも片面上に載置し、前記シールドフィルム及び前記基体を積層方向に加熱・加圧した後、前記セパレートフィルムを前記保護層から剥離することによって、表面粗さ(Ra)が0.2μm〜1.0μmの前記保護層を有するようにしたことを特徴とするシールドプリント配線板の製造方法である。
【0026】
上記方法によれば、セパレートフィルムが離型剤を介して保護層に接着した状態では、セパレートフィルム表面の凹凸部、及び、セパレートフィルム表面の凹凸部が転写されて形成された、表面粗さ(Ra)が0.2μm〜1.0μmの保護層表面の凹凸部によるアンカー効果によって、保護層に対するセパレートフィルムの接着性を、後工程でシールドフィルムをめっき液等の薬液に浸漬させたりしたときに薬液が保護層とセパレートフィルムとの間に入り込まずに、セパレートフィルムが保護層から剥離することを防止する程度に高めることができる。また、セパレートフィルム表面の凹凸部、及び、セパレートフィルム表面の凹凸部が転写されて形成された、表面粗さ(Ra)が0.2μm〜1.0μmの保護層表面の凹凸部を設けることにより、セパレートフィルムに離型剤を塗布する過程で自然に離型剤が分散されるため、離型剤を略均一に分散配置された状態にすることができる。これにより、保護層に対するセパレートフィルムの接着性を、セパレートフィルムを保護層から剥がす際に、過剰に大きな接着力によって保護層自体が破れてしまわない程度に抑制することができる。このように、セパレートフィルムの保護層に対する接着力を適度にコントロールすることができるため、過剰に大きな接着力や過剰に小さな接着力で
接着することによる不具合を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて、本発明に係るシールドFPCの実施形態の一例について説明する。
図1は、本実施の形態のシールドFPCの製造方法の説明図であり、
図2は、このシールドFPCを製造する際に用いるシールドフィルムの横断面図である。
図1(a)は、ベースフィルム2上に形成され、信号回路3aとグランド回路3bからなるプリント回路3のうちグランド回路3bの少なくとも一部(非絶縁部)3cを除いて絶縁フィルム4により被覆してなる基体フィルム5上に、シールドフィルム1を載置し、プレス機P(PA,PB)で加熱hしつつ、加圧pしている状態を示す。また、
図3は、シールドFPCの
横断面図のシールドフィルムの一部拡大図である。
【0029】
ここで、ベースフィルム2とプリント回路3との接合は、接着剤によって接着しても良いし、接着剤を用いない、所謂、無接着剤型銅張積層板と同様に接合しても良い。また、絶縁フィルム4は、可撓性絶縁フィルムを接着剤を用いて張り合わせても良いし、感光性絶縁樹脂の塗工、乾燥、露光、現像、熱処理などの一連の手法によって形成しても良い。また、更には、基体フィルム5は、ベースフィルムの一方の面にのみプリント回路を有する片面型FPC、ベースフィルムの両面にプリント回路を有する両面型FPC、この様なFPC(フレキシブルプリント配線板)が複数層積層された多層型FPC、多層部品搭載
部とケーブル部を有するフレクスボード(登録商標)や、多層部を構成する部材を硬質なものとしたフレックスリジッド基板、或いは、テープキャリアパッケージの為のTABテープ等を適宜採用して実施することができる。
【0030】
シールドフィルム1は、ここでは
図2(a)に示すものを用いている。
図2(a)に示すように、シールドフィルム1は、セパレートフィルム6aと、離型層6bと、シールドフィルム本体9とを備える。シールドフィルム本体9は、離型層6b上に耐摩耗性・耐ブロッキング性に優れた樹脂からなるハード層7aとクッション性に優れた樹脂からなるソフト層7bとを順次コーティングすることによって形成された保護層7と、保護層7の離型層6bに接する面と反対の面に金属層8bを介して設けられた接着剤層8aとを有する。ここでは、導電性接着剤からなる接着剤層8aと金属層8bとで電磁波シールド層8が
形成される。この電磁波シールド層8において、加熱hにより軟かくなった接着剤8a'は加圧pにより、絶縁除去部4aに矢印のように流れ込む(
図1(a)参照)。
【0031】
なお、保護層7は、ハード層7a及びソフト層7bを備えた2層構造でなくてもよく、
図5に示すように、単層構造であってもよい。この単層構造を採用する場合、保護層7を構成する樹脂として、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電子線硬化樹脂等を使用することができる。
【0032】
また、
図3に示すように、セパレートフィルム6aの保護層7側の面にはマット処理が施されている。具体的には、セパレートフィルム6aの片面に微細な砂を吹きつけて表面に凹凸61(凸部61a、凹部61b)をつけることによって、セパレートフィルム6aの片面を凹凸形状にして表面積を大きくしている。なお、マット処理としては、サンドマット、エッチングマット、コーティングマット、ケミカルマット、練り込みマットなどが挙げられる。
【0033】
また、
図3に示すように、保護層7を構成するハード層7aのセパレートフィルム6a側の面には、その面全体に複数の凹凸形状の凹凸部71が形成されている。この凹凸部71は、隣接する凹部71bと凸部71aとの組み合わせからなる。ハード層7aに形成される凹凸部71は、セパレートフィルム6aの片面に離型層6bがコーティングされた後、セパレートフィルム6aの片面にマット処理により形成された凹凸61に沿ってハード層7aがコーティングされることによって形成される(
図3の拡大図参照)。また、セパレートフィルムが剥がされた後のハード層7aの凹凸部71が設けられた面の表面粗さ(
Ra)は、0.2μm〜1.0μmとするのがよく、更には、0.2μm〜0.6μmが好ましい。
【0034】
また、保護層7を構成するハード層7aはJIS L 0849に規定された学振形摩擦試験機による摩擦試験方法により、摩擦子の質量を500グラムとし、試験片台を毎分30回往復の速度で120mmの間を水平に往復運動させたとき、1000回往復運動させても擦り傷が生じない耐磨耗性を有する樹脂で形成され、ソフト層7bはJIS K 7244−4に規定された動的機械特性の試験方法により、周波数1Hz、測定温度範囲−50℃〜150℃、昇温速度毎分5℃、として測定した弾性率が3ギガパスカル以下の樹脂からなる。後工程でセパレートフィルム6aを保護層7から剥離する必要があるため、耐摩耗性に優れたハード層7aは、セパレートフィルム6aの剥離後に、保護層としての役割を果たし、保護層7の磨耗を防止する。また、ハード層7aは耐ブロッキング性に優れるため、回路部品搭載工程におけるリフロー工程等の加熱を要する工程中で、配線板を搭載して搬送する搬送用冶具や搬送ベルト等の他のものにくっつくこともない。保護層7のソフト層7b上に設けられた金属層8bは、下地となる保護層7がハード層7aの優れた硬度とソフト層7bのクッション効果によって、加熱・加圧されても亀裂・断裂等の破壊を生じない。また、シールドフィルム1をプリント回路3を含む基体フィルム5上に載置し、プレス機P(PA,PB)で加熱hしつつ加圧pする際に、ソフト層7bのクッション効果によってハード層7aへの圧力伝達が緩やかに行われるので、高硬度のハード層7aの割れが防止される。ハード層、ソフト層の樹脂としては熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電子線硬化樹脂等を使用することができる。
【0035】
また、セパレートフィルム6aの片面に離型層6bがコーティングされた後、離型層6bは自然に略均一に分散配置された状態になり、保護層7のハード層7aがコーティングされ、セパレートフィルム6aの凹凸61がハード層7aに転写されて表面粗さ(Ra)が0.2μm〜1.0μmの保護層7が形成される(
図3の拡大図参照)。
【0036】
また、離型層6bは、保護層7に対して剥離性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、シリコンや非シリコン系のメラミン離型剤やアクリル離型剤がコーティングされたPETフィルム等を使用することができる。また、離型層6bの厚みの最大値は、セパレートフィルム6aの表面にマット処理をして形成した凹凸の高さよりも薄くするのが好ましい(離型層6bの厚みが凹凸の高さを越えると、実質的に凹凸がなくなりセパレートフィルム6aの保護層7に対する剥離強度のコントロールが難しくなるた
め)。なお、セパレートフィルム6aの片面にハード層7aおよびソフト層7bを成層する方法としては、コーティングが好ましいが、コーティング以外の層形成方法としてラミネート、押し出し、ディツピングなどを用いてもよい。
【0037】
また、セパレートフィルム6aを保護層7のハード層7aから剥がす際のセパレートフィルム6aの保護層7(ハード層7a)に対する剥離強度は、加熱h・加圧p前の状態で1N/50mm〜20N/50mmとするのがよい。また、保護層7(ハード層7a)に対する剥離強度は、加熱h・加圧p後の状態で1N/50mm〜10N/50mmとするのがよく、更には、1N/50mm〜4N/50mmとするのが好ましい。
【0038】
上記マット加工によって形成されるセパレートフィルム6aの凹凸61(凸部61a、凹部61b)による表面粗さや、離型剤の種類・量を、使用目的に応じて製造段階で変えることにより、セパレートフィルム6aの保護層7に対する接着強度(剥離強度)の幅を大きくすることができ、接着強度のコントロール(調整)を容易にすることができる。
【0039】
そして、接着剤8a'がグランド回路3bの非絶縁部3c及び絶縁フィルム4と十分に接着したのち、
図1(b)に示すように、形成されたシールドフレキシブルプリント配線板10をプレス機Pから取り出し、シールドフィルム1のセパレートフィルム6aを離型層6bとともに剥離fすると、ハード層7aの表面に凹凸部71が設けられた、
図1(c)に示すシールドFPC10'が得られる。
【0040】
図2(a)に示すように、シールドフィルム1は、シールドフィルム本体9よりもセパレートフィルム6aの分だけ厚くなっているので、所定のサイズに打ち抜きやすく、きれいに裁断でき、基体フィルム5上への位置合わせもしやすい。また、加熱・加圧の際、セパレートフィルム6によりクッション効果が増え、圧力伝達が緩やかに行われるので、絶縁除去部4aへの接着剤8a'の流入が容易になる。従って、接着剤8a'がグランド回路3bの非絶縁部3c面に十分接着するため、接続導電性が良くなる。また、セパレートフィルム6aを離型層6bとともに剥離すれば、薄くて可撓性のあるシールドFPC10'が簡単に得られる。なお、シールドフィルム1はリジッド配線板に用いられるものであってもよい。
【0041】
ベースフィルム2、絶縁フィルム4はいずれもエンジニアリングプラスチックからなる。例えば、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンツイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂が挙げられる。あまり耐熱性を要求されない場合は、安価なポリエステルフィルムが好ましく、難燃性が要求される場合においては、ポリフェニレンサルファイドフィルム、さらに耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルムが好ましい。
【0042】
セパレートフィルム6aにも、ベースフィルム2、絶縁フィルム4、保護層7と同様のエンジニアリングプラスチックが用いられるが、製造過程で除去されるものであるから、安価なポリエステルフィルムが好ましい。また、離型層6bとしては、シリコン皮膜を公知の手法で形成して使用することができる。
【0043】
接着剤層8aは、接着性樹脂として、ポリスチレン系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、ゴム系、アクリル系などの熱可塑性樹脂や、フェノール系、エポキシ系、ウレタン系、メラミン系、アルキッド系などの熱硬化性樹脂で構成されている。また、これら接着性樹脂に金属、カーボン等の導電性フィラーを混合し、導電性を持たせた導電性接着剤を使用することもできる。このように、導電性接着剤を使用することで確実にグランド回路3bと金属層8bとを電気的に接続できる。また、導電性接着剤として、導電性フィラーの量を少なくした異方導電性接着剤を使
用してもよい。このように、導電性接着剤として異方導電性接着剤を使用すると、等方導電性接着剤よりも薄膜になり、導電性フィラーの量が少ないため、可撓性の優れたものにすることができる。また、導電性接着剤として、等方導電性接着剤を使用することもできる。このように、導電性接着剤として、等方導電性接着剤を使用すると、等方導電性接着剤による導電性接着剤層を設けるだけで、グランド回路3b等に対するグランド接続を可能とするとともに電磁波シールド効果を持たせることができる。また、耐熱性が特に要求されない場合は、保管条件等に制約を受けないポリエステル系の熱可塑性樹脂が望ましく、耐熱性もしくはより優れた可撓性が要求される場合においては、電磁波シールド層8を形成した後の信頼性の高いエポキシ系の熱硬化性樹脂が望ましい。また、そのいずれにおいても加熱・加圧時のにじみ出し(レジンフロー)の小さいものが望ましいことはいうまでもない。
【0044】
また、上記実施形態では、電磁波シールド層8として、金属層8b及び接着剤層8aを使用しているが、上記のように接着剤層8aとして等方導電性接着剤を使用した場合、金属層8bを省いた構成にしてもよい。
【0045】
導電性フィラーとしては、カーボン、銀、銅、ニッケル、ハンダ、アルミ及び銅粉に銀メッキを施した銀コート銅フィラー、さらには樹脂ボールやガラスビーズ等に金属メッキを施したフィラー又はこれらのフィラーの混合体が用いられる。銀は高価であり、銅は耐熱の信頼性に欠け、アルミは耐湿の信頼性に欠け、さらにハンダは十分な導電性を得ることが困難であることから、比較的安価で優れた導電性を有し、さらに信頼性の高い銀コート銅フィラー又はニッケルを用いるのが好ましい。
【0046】
金属フィラー等の導電性フィラーの接着性樹脂への配合割合は、フィラーの形状等にも左右されるが、銀コート銅フィラーの場合は、接着性樹脂100重量部に対して10〜400重量部とするのが好ましく、さらに好ましくは20〜150重量部とするのがよい。400重量部を超えると、グランド回路(銅箔)3bへの接着性が低下し、シールドFPC10'の可撓性が悪くなる。また、10重量部を下回ると導電性が著しく低下する。また、ニッケルフィラーの場合は、接着性樹脂100重量部に対して40〜400重量部とするのが好ましく、さらに好ましくは100〜350重量部とするのがよい。400重量部を超えると、グランド回路(銅箔)3bへの接着性が低下し、シールドFPC10'の可撓性が悪くなる。また、40重量部を下回ると導電性が著しく低下する。金属フィラー等の導電性フィラーの形状は、球状、針状、繊維状、フレーク状、樹枝状のいずれであってもよい。
【0047】
接着剤層8aの厚さは、前述のように、金属フィラー等の導電性フィラーを混合した場合は、3μm〜25μm程度となる。また、導電性フィラーを混合しない場合は、1μm〜10μmである。このため、電磁波シールド層8を薄くすることが可能となり、薄いシールドFPC10'とすることができる。
【0048】
金属層8bを形成する金属材料としては、アルミニウム、銅、銀、金などを挙げることができる。金属材料は、求められるシールド特性に応じて適宜選択すればよいが、銅は大気に触れると酸化しやすいという問題があり、金は高価であることから、安価なアルミニウム又は信頼性の高い銀が好ましい。膜厚は、求められるシールド特性と可撓性に応じて適宜選択されるが、一般に0.01〜1.0μmとするのが好ましい。0.01μmを下回るとシールド効果が不十分となり、逆に1.0μmを超えると可撓性が悪くなる。金属層8bの形成方法としては、真空蒸着、スパッタリング、CVD法、MO(メタルオーガニック)、メッキなどがあるが、量産性を考慮すれば真空蒸着が望ましく、安価で安定した金属薄膜を得ることができる。また、金属層は、金属薄膜に限られず、金属箔を用いてもよい。
【0049】
図2(b)に示すシールドフィルム1'は、保護層7の片面に導電性フィラーが混合された導電性接着剤で形成された接着剤層8aのみからなる電磁波シールド層8'を設けてシールドフィルム本体9'とした点で
図2(a)のものと異なる。金属層8bは、接着剤層8aに比べて導電率が高いので、
図2(a)のように金属層8bを設けた場合は、等方導電性接着剤を使用する必要性が低く、このため、電磁波シールド層8を薄くすることができる。なお、電磁波シールド層8の構成はこれに限定されるものではないが、導電性と可撓性のよいものが好ましい。
【0050】
図4は、以上のようにして得られたシールドFPCの横断面図である。本発明のシールドFPCには、
図1(c)のシールドフィルム本体9に代えて
図2(b)のように電磁波シールド層8'を導電性接着剤で形成される接着剤層8aだけで形成したシールドフィルム本体9'も当然含まれる。また、シールドフィルム本体9を構成する各材料や形成方法も上述のとおり各種のものが含まれる。
【0051】
さらに、片面シールドのものに限らず、
図4(b)及び
図4(c)のような両面シールドのものも含まれる。
図4(b)の両面シールドFPC10Aにおいて、ベースフィルム2'は、接着剤層8aがグランド回路3bと接続されるようにするため、グランド回路3b上下の絶縁フィルム4及びベースフィルム2'側には絶縁除去部4a及び絶縁除去部2a'が設けられており、グランド回路3bの上下面の非絶縁部3cにおいて接着剤層8aと接続される。ここでは、ベースフィルム2'とプリント回路3(信号回路3a及びグランド回路3b)と絶縁フィルム4とが基体フィルム5'を構成する。
【0052】
図4(c)の両面シールドFPC10Bは、
図4(b)の例と同様グランド回路3b上下の絶縁フィルム4及びベースフィルム2'側には絶縁除去部4a及び絶縁除去部2a'が設けられているが、さらにグランド回路3bに貫通孔3d'を設けて、グランド回路3b'としたものであり、接着剤層8aが両面からこの貫通孔3d'内にも入り込み、界面sで合流する。そして、グランド回路3'はその上面の非絶縁部3c及び貫通孔内面3c'において接着剤層8aと接続される。ここでは、ベースフィルム2'とプリント回路3'(信号回路3a'及びグランド回路3b')と絶縁フィルム4とが基体フィルム5''を構成する。
【実施例】
【0053】
次に、本発明の実施例について行った評価試験の結果を比較例とともに説明する。
【0054】
(試験片について)
図6に示す比較例1、2及び、実施例1〜18に記載した特徴を持つシールドフィルム1(セパレートフィルム6a、離型層6b、保護層7、電磁波シールド層8(導電性接着剤層8a、金属層8b))を用いる。なお、それぞれの試験片は、長さ200mm、幅50mmの長方形状のものを使用する。
実施例1〜18でのセパレートフィルム6aのPETにはマット加工が施されており、実施例1〜12ではサンドマットとし、実施例13及び実施例16ではエッチングマットとし、実施例14及び実施例17ではコーティングマットとし、実施例15及び実施例18では練り込みマットとした。また、比較例1、2でのセパレートフィルム6aのPETは、マット加工がされていないクリアタイプとする。
また、比較例1、2及び、実施例1〜18における表面粗さ(Ra(μm))の測定方法としては、接針式表面粗さ測定計で測定する。これは、探針で、物体の表面をなぞり、物体の表面の凹凸にあわせて、針が上下動する。そして、その針の動きを測定することで、物体の表面の粗さを測る方法である。
また、離型層6bの種類は、比較例1、実施例1〜8、及び、実施例13〜15においては、メラミン離型剤(Aタイプ)を使用し、比較例2、実施例9〜12、及び、実施例16〜18においては、アクリル離型剤(Bタイプ)を使用し、付着量としてそれぞれ1.2g/m
2に統一している。なお、この離型層の付着量の測定方法としては、まず、離型剤の固形分濃度を赤外線水分計を用い測定する。次に、剥離剤をコーティングした後、離型剤の使用量を加工数量m
2で割り、Wet付着量を求める。次に、Wet付着量と離型剤の固形分濃度より、Dry付着量を求め、このDry付着量を本試験における離型剤の付着量としている。
【0055】
(1)保護層に対するセパレートフィルムの剥離試験
(試験方法)
プレス前(加熱・加圧前)の剥離強度の測定においては、比較例1、2及び、実施例1〜18に係るシールドフィルム1の導電性接着剤層8aの面に両面テープを張り付け、その両面テープの片面を、試験機(PALMEK製 PFT-50S 剥離強度テスター)の台座に張り合わせてシールドフィルム1を固定する。そして、
図7に示すように、シールドフィルム1のセパレートフィルム6aの端部を試験機のチャックにセットし、セパレートフィルム6aの保護層7に対する剥離強度を測定する。ここで、剥離条件としては、
図7に示すように、剥離角度を170°とし、チャックによるセパレートフィルム6aの剥離速度を1000mm/minとしている。そして、試験回数としては5回行い、各回で得られた剥離強度値の最小値の平均を剥離強度の値(N/50mm)として算出する。
【0056】
一方、プレス後(加熱・加圧後)の剥離強度の測定においては、比較例1、2及び、実施例1〜18に係るシールドフィルム1の導電性接着剤層8aの面を、ポリイミド面と銅箔面とを有する銅張積層板のポリイミド面側にプレス機により熱圧着する。この際のプレス機での熱圧着条件としては、圧力が2〜5MPa、温度が140〜180℃、時間は3〜60分が好ましい。本測定では、設定温度を170℃とし、0.5MPaで60secの間荷重し、その後、3.0MPaで180secの間荷重することで熱圧着をしている。
そして、シールドフィルム1を熱圧着した銅張積層板の銅箔面側に両面テープを張り付け、その両面テープの片面を、
図7に示すように、試験機台(PALMEK製 PFT-50S 剥離強度テスター)に張り合わせてシールドフィルム1を固定する。あとは上記プレス前の剥離強度測定で説明した試験方法と同じように剥離強度の値(N/50mm)を算出する。
【0057】
(2)評価方法
上記保護層に対するセパレートフィルムの剥離試験の評価方法を説明する。セパレートフィルムの剥離試験において、プレス前の剥離強度が1N/50mmより小さい場合は、評価を「×」と判定する。プレス前の剥離強度の値が1〜20N/50mmであり、且つ、プレス後の剥離強度の値が1〜10N/50mmであれば、評価を「○(一重丸)」と判定する。ここで、「○」評価の条件として、プレス前の剥離強度の値を1〜20N/50mmにしたのは、剥離強度の値が1N/50mmより小さい値であると、薬液に浸漬した場合にセパレートフィルムが保護層から剥がれてしまい、一方、剥離強度の値が20N/50mmより大きい値であると、セパレートフィルムの保護層に対する接着力が強すぎて、セパレートフィルムを剥がす際に保護層まで剥がしてしまい保護層が破れてしまうからである。また、「○」評価の条件として、プレス後の剥離強度の値を1〜10N/50mmとしたのは、剥離強度の値が1N/50mmより小さい値であると、プレス後にセパレートフィルムが保護層から自然に剥がれてしまうことがあり、一方、剥離強度の値が10N/50mmより大きい値であると、人又は製造装置が保護層からセパレートフィルムを剥がす際の作業性が悪くなってしまうからである(保護層からセパレートフィルムを剥がす際に、無駄な力を入れずにスムーズに剥がすことができない)。更に、評価「○」の条件に加えて、プレス後のシールドフィルムにおいて、プレス後の剥離強度の値が1〜4N/50mmであれば、セパレートフィルムをよりスムーズに剥がせるとして、評価を「◎(二重丸)」と判定する。
【0058】
上記で説明した、比較例1、2及び、実施例1〜18に係る試験結果・判定を
図6に示している。
【0059】
図6に示すシールドフィルムの剥離試験の結果・判定から明らかなように、マット処理がされていないPETのクリアタイプを使用した比較例1、2のシールドフィルム1は、
プレス前、プレス後の剥離強度が1N/50mmより小さいため、離型剤の種類を変えたとしても(比較例1はメラミン離型剤、比較例2はアクリル離型剤)、薬液に浸漬したときにセパレートフィルム6aが保護層7から剥がれる、またはプレス後にセパレートフィルム6aが保護層7から自然に剥がれる可能性があるのに対して、PETにマット加工(実施例1〜12ではサンドマット、実施例13及び実施例16はエッチングマット、実施例14及び実施例17はコーティングマット、実施例15及び実施例18は練り込みマット)をした実施例1〜18のシールドフィルム1は、プレス前の剥離強度が1〜20N/50mm、プレス後の剥離強度が1〜10N/50mmであるため、離型剤の種類を変えたとしても(実施例1〜8及び実施例13〜15はメラミン離型剤、実施例9〜12及び実施例16〜18はアクリル離型剤)、薬液に浸漬したとき、またはプレス後にセパレートフィルム6aが保護層7から剥がれない。換言すれば、マット加工されていないセパレートフィルム6aに離型剤の種類を変えて塗布しても剥離強度をコントロールすることができず、薬液の浸入を許してしまうことがわかる。
【0060】
また、実施例1〜8の剥離強度の値から明らかなように、マット加工の粗さを1.000μm→0.853μm→0.679μm→0.489μm→0.352μm→0.308μm→0.253μm→0.200μmと変えることにより、剥離強度が、プレス前:19.87N/50mm(プレス後:9.92N/50mm)→プレス前:9.48N/50mm(プレス後:5.67N/50mm)→プレス前:7.12N/50mm(プレス後:4.89N/50mm)→プレス前:4.97N/50mm(プレス後:3.50N/50mm)→プレス前:3.42N/50mm(プレス後:2.78N/50mm)→プレス前:2.18N/50mm(プレス後:1.52N/50mm)→プレス前:1.55N/50mm(プレス後:1.15N/50mm)→プレス前:1.12N/50mm(プレス後:1.00N/50mm)というように小さくなっていることが分かる。これにより、マット加工の粗さを変えることにより、剥離強度をコントロールすることができることが分かる。なお、このことは、離型剤の種類を変えた実施例9〜12の結果を見ても同様である(マット加工の粗さの値を小さく変えていくことにより、剥離強度の値が小さくなっている)。
【0061】
また、離型剤にメラミン離型剤を使用した実施例1〜8と、離型剤にアクリル離型剤を使用した実施例9〜12とを見てみると、離型剤にアクリル離型剤を使用した場合、離型剤にメラミン離型剤を使用した場合に比べて、プレス前の剥離強度の値、及び、プレス後の剥離強度の値が高くなっているのが分かる。また、実施例13(エッチングマットで、表面粗さ0.418μm、メラミン離型剤)と実施例16(エッチングマットで、表面粗さ0.418μm、アクリル離型剤)との比較や、実施例14(コーティングマットで、表面粗さ0.362μm、メラミン離型剤)と実施例17(コーティングマットで、表面
粗さ0.362μm、アクリル離型剤)との比較や、実施例15(練り込みマットで、表面粗さ0.245μm、メラミン離型剤)と実施例18(練り込みマットで、表面粗さ0.245μm、アクリル離型剤)との比較を見てみると、離型剤にアクリル離型剤を使用した場合、離型剤にメラミン離型剤を使用した場合に比べて、プレス前の剥離強度の値、及び、プレス後の剥離強度の値が高くなっているのが分かる。これにより、剥離剤の種類を変えることによっても、剥離強度の値をコントロールすることができることが分かる。
【0062】
また、実施例1〜18を見てみると、表面粗さの範囲が、0.2μm〜1μmの範囲にあるときは、評価は「○」の判定を得ている。これは、表面粗さが0.2μmより小さい値であると、保護層(ハード層)表面にアンカー効果が発揮されるほどの凹凸にならず、セパレートフィルムの保護層に対する剥離強度のコントロールができないことによる。一方、表面粗さが1.0μmより大きい値であると、保護層(ハード層)表面の凹凸によるアンカー効果が強く働き(接着力が強くなる)、セパレートフィルムを保護層から剥がす際に、保護層までも剥がしてしまうことになり不都合であることによる。
また、実施例1〜18に係るシールドフィルム1は、保護層7からセパレートフィルム6aを剥がす際に、保護層自体を破かずに剥がすことができ、無駄な力を入れずにスムーズに剥がすことができることを意味している。
【0063】
また、実施例4〜8、実施例12〜18では、判定で評価「◎」を得ている。これにより、プレス後の剥離強度の値が1〜4N/50mmの間にある場合には、保護層からセパレートフィルムを剥がす際に、セパレートフィルムをよりスムーズに剥がせることがわかる。
【0064】
以上のように、本実施形態のシールドフィルム1は、一方面全体に凹凸部61が形成されたセパレートフィルム6aの当該凹凸部61が形成された面側に、離型層6bを介して樹脂をコーティングすることにより保護層7を形成し、さらに電磁波シールド層8を形成し、セパレートフィルム6aを保護層7から剥離しときの保護層7(ハード層7a)の表面粗さ(Ra)を0.2μm〜1.0μmとしている。これによると、セパレートフィルム6aが離型層6bを介して保護層7に接着した状態では、セパレートフィルム6a表面の凹凸部61、及び、セパレートフィルム6a表面の凹凸部61が転写されて形成された、表面粗さ(Ra)が0.2μm〜1.0μmの保護層7(ハード層7a)表面の凹凸部71によるアンカー効果によって、保護層7に対するセパレートフィルム6aの接着性を、後工程でシールドフィルム1を薬液に浸漬させたりしたときに薬液が保護層7とセパレートフィルム6aとの間に入り込まずに、セパレートフィルム6aが保護層7から剥離することを防止する程度に高めることができる。また、セパレートフィルム6a表面の凹凸部61、及び、セパレートフィルム6a表面の凹凸部61が転写されて形成された、表面粗さ(Ra)が0.2μm〜1.0μmの保護層7(ハード層7a)表面の凹凸部71を設けることにより、セパレートフィルム6aに離型剤を塗布する過程で自然に凹凸部61を有するセパレートフィルム6aに塗布された離型剤が分散されるため、離型剤が略均一に分散配置された状態の離型層6bを形成することができる。これにより、保護層7に対するセパレートフィルム6aの接着性を、セパレートフィルム6aを保護層7から剥がす際に、過剰に大きな接着力によって保護層7自体が破れてしまわない程度に抑制することができる。このように、セパレートフィルム6aの保護層7に対する接着力を適度にコントロールすることができるため、過剰に大きな接着力や過剰に小さな接着力で接着することによる不具合を防止することができる。
【0065】
また、本実施形態のシールドフィルム1では、セパレートフィルム6aの保護層7に対する剥離強度を、1N/50mm〜20N/50mmの範囲にしている。これによれば、セパレートフィルム6aの保護層7に対する接着力をより最適にすることができる。
【0066】
また、本実施形態のシールドフィルム1は、シールドフィルム1を基体フィルム5に加熱・加圧した後のセパレートフィルム6aの保護層7に対する剥離強度を、1N/50mm〜10N/50mmの範囲にしている。これによれば、セパレートフィルム6aの保護層7に対する接着力をより最適にすることができる。
【0067】
また、本実施形態のシールドフィルム1では、電磁波シールド層8が、導電性接着剤層8aを含むことにより、確実にグランド回路3bと電磁波シールド層8とを電気的に接続できる。
【0068】
また、本実施形態のシールドフィルム1では、電磁波シールド層8が、金属層8bを更に含み、導電性接着剤層8aに、異方導電性接着剤を使用することにより、導電性フィラーの量を少なくして、可撓性の優れたものにすることができる。
【0069】
また、本実施形態のシールドフィルム1では、導電性接着剤層8aに、等方導電性接着を使用することにより、導電性接着剤層8aを設けるだけで、グランド回路3bに対するグランド接続を可能とするとともに電磁波シールド効果を持たせることができる。
【0070】
また、本実施形態では、一層以上のプリント回路3を含む基体フィルム5の少なくとも片面上に、一方面全体に凹凸部61が形成されたセパレートフィルム6aの当該凹凸部61が形成された面側に、離型層6bを介して樹脂をコーティングすることにより保護層7を形成し、さらに電磁波シールド層8を形成したシールドフィルム1を設けたシールドフレキシブルプリント配線板10に関して、セパレートフィルム6aを保護層7から剥離したときの保護層7(ハード層7a)の表面粗さ(Ra)が、0.2μm〜1.0μmの範囲にしている。これによれば、基体フィルム5の片面上に、電磁波シールド層8と、保護
層7とを有するシールドフレキシブルプリント配線板10に関して、セパレートフィルム6aの保護層7に対する接着力を適度にコントロールすることができるため、過剰に大きな接着力や過剰に小さな接着力で接着することによる不具合を防止することができる。
【0071】
また、本実施の形態のシールドフレキシブルプリント配線板10は、プリント回路3を含む基体フィルム5がフレキシブルプリント配線板からなるため、可撓性の優れたものにすることができる。
【0072】
また、本実施の形態のシールドフレキシブルプリント配線板10は、プリント回路3を含む基体フィルム5がテープキャリアパッケージ用TABテープとすることができるため、柔軟で組み込み性に優れたシールドフレキシブルプリント配線板10を得ることができる。
【0073】
また、本実施形態に係るシールドフレキシブルプリント配線板10の製造方法では、マット処理により一方面全体に凹凸部61が形成されたセパレートフィルム6aにおける当該凹凸部61側の面に離型層6bと保護層7と電磁波シールド層8とを少なくとも積層したシールドフィルム1を、一層以上のプリント回路3を含む基体フィルム5の少なくとも片面上に載置し、シールドフィルム1及び基体フィルム5を積層方向に加熱・加圧した後、セパレートフィルム6aを保護層7から剥離することによって、表面粗さ(Ra)が、0.2μm〜1.0μmの保護層7を有するようにした。上記方法によれば、セパレートフィルム6aの保護層7に対する接着力を適度にコントロールすることができるため、過剰に大きな接着力や過剰に小さな接着力で接着することによる不具合を防止することができる。