特許第6180513号(P6180513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180513
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】酸素分離器及び酸素生成方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/047 20060101AFI20170807BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20170807BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20170807BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   B01D53/047
   B01J20/18 D
   B01J20/34 E
   C01B13/02 A
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-509530(P2015-509530)
(86)(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公表番号】特表2015-517398(P2015-517398A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】IB2013053172
(87)【国際公開番号】WO2013164728
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2016年4月20日
(31)【優先権主張番号】61/642,502
(32)【優先日】2012年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヒルビッヒ ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ケルバー アヒム ゲラルド ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】バン ダー スルイス ポール
(72)【発明者】
【氏名】クレー マレイケ
(72)【発明者】
【氏名】ケウラー ウィルヘルムス コーネリス
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−194919(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/052803(WO,A1)
【文献】 特開2005−270953(JP,A)
【文献】 特開2000−239004(JP,A)
【文献】 特開2007−190314(JP,A)
【文献】 特開2007−319727(JP,A)
【文献】 特開昭61−197018(JP,A)
【文献】 特開平01−099627(JP,A)
【文献】 特表2008−523981(JP,A)
【文献】 特開昭58−156325(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/116623(WO,A1)
【文献】 特開2009−006277(JP,A)
【文献】 特開2008−273821(JP,A)
【文献】 特開2008−194594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02−53/12
B01J 20/00−20/34
C01B 13/00−13/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素含有ガスから酸素を分離する方法であって、
少なくとも、第1及び第2の酸素分離期間に行うステップと、
前記第1酸素分離期間と前記第2の酸素分離期間との間の冷却期間に行うステップと、
を含み、
前記第1及び前記第2の酸素分離期間に行うステップは、それぞれ、酸素含有ガスを、酸素分離吸着剤を含む酸素分離デバイスの一次側に導くステップと、前記酸素分離デバイスの前記一次側と二次側との間に圧力差を作ることによって、前記酸素分離デバイスから出る酸素を豊富に含むガスの流れを生成するステップとを含み、
前記冷却期間に行うステップは、
フラッシング収着質を、前記酸素分離デバイスを通り抜けるように導くステップと、
冷却収着質を、前記酸素分離デバイスを通り抜けるように導くステップと、
を含み、
前記フラッシング収着質は、前記酸素分離吸着剤に対し、吸着エネルギーe1を有し、
前記冷却収着質は、前記酸素分離吸着剤に対し、吸着エネルギーe2を有し、
前記吸着エネルギーe2は、前記吸着エネルギーe1よりも低く、
前記フラッシング収着質を、前記酸素分離デバイスを通り抜けるように導くステップ、及び/又は、前記冷却収着質を、前記酸素分離デバイスを通り抜けるように導くステップは、前記酸素分離吸着剤の温度が規定値を超えるとき行われる、
方法。
【請求項2】
前記フラッシング収着質は、窒素を含み、及び/又は、前記冷却収着質は、酸素又は希ガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フラッシング収着質及び/又は前記冷却収着質は、酸素分離期間の間及び/又は冷却期間の間に生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フラッシング収着質を、前記酸素分離デバイスを通り抜けるように導くステップと、前記冷却収着質を、前記酸素分離デバイスを通り抜けるように導くステップとは、請求項1に記載の方法が実施されないオフ期間により隔てられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸素分離吸着剤は、3wt‰よりも多い量のフラッシング収着質でロードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酸素含有ガスの流れを酸素分離デバイス内へと導くための一次側におけるガス注入口と、酸素を豊富に含むガスの流れを前記酸素分離デバイスから外に導くための二次側におけるガス排出口とを有し、酸素分離吸着剤を含む少なくとも1つの酸素分離デバイスと、
前記少なくとも1つの酸素分離デバイスの前記一次側と前記二次側との間に圧力差を作る圧力調節デバイスと、
を含む、酸素分離器であって、
前記酸素分離器は、
2つの酸素生成期間の間に、前記酸素分離吸着剤の温度が規定値を超えるとき、フラッシング収着質を、前記少なくとも1つの酸素分離デバイスを通り抜けるように導き、2つの酸素生成サイクルの間に、前記酸素分離吸着剤の温度が規定値を超えるとき、冷却収着質を、前記少なくとも1つの酸素分離デバイスを通り抜けるように導く制御ユニットを含み、
前記フラッシング収着質は、前記酸素分離吸着剤に対し、吸着エネルギーe1を有し、前記冷却収着質は、前記酸素分離吸着剤に対し、吸着エネルギーe2を有し、前記吸着エネルギーe2は、前記吸着エネルギーe1よりも低い、酸素分離器。
【請求項7】
前記酸素分離吸着剤の温度を検出するセンサを含む、請求項6に記載の酸素分離器。
【請求項8】
前記フラッシング収着質を収容する容器及び/又は前記冷却収着質を収容する容器を含む、請求項6に記載の酸素分離器。
【請求項9】
前記酸素分離吸着剤は、Li−LSXゼオライトを含む、請求項6に記載の酸素分離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素分離の分野に関する。より具体的には、本発明は、特に在宅ケアの分野における治療への応用のための酸素分離に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素療法は、治療法として酸素を投与する。酸素は、細胞代謝に必要不可欠であり、翻っては、組織酸素化があらゆる生理作用に必要不可欠であるため、慢性及び急性患者ケアの両方において様々な目的で広く使用されている。酸素療法は、肺への酸素供給を増加し、これにより、特に患者が低酸素症及び/又は低酸素血症に苦しんでいるときに、身体組織への酸素の可用性を増加することによって患者のためになるように使用されるべきである。酸素療法は、病院内又は在宅ケアでの応用の両方において使用される。酸素療法の主な在宅ケアへの応用は、重度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)を患っている患者に対するものである。
【0003】
酸素は、幾つかの方法で投与される。酸素投与の好適な方法は、いわゆるオンデマンド酸素生成を使用する方法である。これについては、市販されているソリューション、即ち、いわゆる酸素濃縮器又は分離器が、広く知られている。これらの酸素濃縮器の多くは、酸素含有ガスから酸素を分離し、これにより、酸素がオンデマンドで、即ち、使用の直前に供給される。
【0004】
当技術分野において知られているこのような酸素濃縮器又は酸素分離器の課題は、対応する酸素分離吸着剤の酸素分離能力の温度依存に対処することである。
【0005】
米国特許出願公開第2006/0048644A1号から、圧力スイング吸着システムが知られている。このような圧力スイング吸着システムは、空気供給源と、空気供給を受け取って圧縮し、圧縮された空気供給を提供する圧縮器と、圧縮空気供給を濃縮ガス成分に分解するモレキュラーシーブ材料をチャンバ内に持つ6個未満のモレキュラーシーブチャンバとを含み、当該システムは、約30%よりも大きい濃縮ガス成分の回収率を有する。周囲空気よりも高い温度を有する圧縮空気を取り扱うために、この文書に係る圧縮空気は、対応するモレキュラーシーブへの供給前に、圧縮空気を冷却する熱交換として機能するマルチチャンバキャニスタの長さに沿って進む。
【0006】
しかし、酸素分離デバイスの酸素分離性能を、特に温度影響に関して、また、特に非常に高温において酸素分離器を格納する又は使用することに関して、向上させる必要が依然としてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、製造費を削減でき、実行するのが簡単で、及び/又は、分離効率に関して有利である、酸素分離器並びに酸素含有ガスから酸素を分離する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載される酸素含有ガスから酸素を分離する方法によって達成される。この目的は更に、請求項8に記載される酸素分離器によって達成される。好適な実施形態は、従属項に規定される。
【0009】
酸素含有ガスから酸素を分離する方法は、少なくとも、第1及び第2の酸素分離期間に行うステップと、第1酸素分離期間と第2の酸素分離期間との間の冷却期間に行うステップと、を含み、当該第1及び第2の酸素分離期間に行うステップは、それぞれ、酸素含有ガスを、酸素分離吸着剤を含む酸素分離デバイスの一次側に導くステップと、酸素分離デバイスの一次側と二次側との間に圧力差を作ることによって、酸素分離デバイスから出る酸素を豊富に含むガスの流れを生成するステップとを含み、当該冷却期間に行うステップは、フラッシング収着質を、酸素分離デバイスを通り抜けるように導くステップと、冷却収着質を、酸素分離デバイスを通り抜けるように導くステップと、を含み、フラッシング収着質は、酸素分離吸着剤に対し、吸着エネルギーeを有し、冷却収着質は、酸素分離吸着剤に対し、吸着エネルギーeを有し、吸着エネルギーeは、吸着エネルギーeよりも低い。
【0010】
本明細書において使用される酸素含有ガスとの用語は、少なくとも部分的に気体酸素を含む、又は、酸素から構成される任意のガスを指す。したがって、酸素を豊富に含むガスとは、具体的には、酸素含有ガスに比べて酸素の濃度が高いガスを意味し、究極の場合は、純酸素である。
【0011】
酸素分離デバイスとの用語は、具体的には、酸素分離器の能動部品を指す。酸素分離デバイスは、例えば酸素分離吸着剤を含み、当該酸素分離吸着剤は、酸素含有ガス又は酸素含有ガスの酸素以外の規定の所定の構成物質と相互作用し、したがって、酸素含有ガスの酸素以外の少なくとも1つの構成物質との相互作用によって、酸素含有ガスから酸素を分離する。この結果、このような酸素分離デバイス、又は、その酸素分離吸着剤は、具体的には吸着プロセスといった収着プロセスによって、酸素含有ガスから酸素を分離することができる。したがって、酸素分離デバイスは、吸着床としてデザインされるか、又は、シーブベッドを含む。
【0012】
酸素分離吸着剤は更に、酸素含有ガスから、酸素以外又は酸素より優れた少なくとも1つの物質を吸収(sorb)し、したがって吸着し又は吸収(absorb)する物質と理解される。
【0013】
更に、本明細書において使用される酸素分離デバイスの一次側との用語は、酸素含有ガスが酸素分離デバイスへと導かれる方向に向けられる酸素分離デバイスの側又は一部を指す。その一方で、本明細書において使用される酸素分離デバイスの二次側との用語は、反対側、即ち、生成された純酸素又は酸素が豊富に含まれるガスがある側に向かう酸素分離デバイスの側又は一部を指す。
【0014】
更に、酸素分離期間とは、酸素を豊富に含むガスを生成することを目的とする期間、したがって、酸素分離器をオンにしたことに応えて酸素分離プロセスを開始することと、酸素分離器をオフにしたことに応えて酸素分離プロセスを終了することとの間の期間と理解される。酸素分離器のオン及びオフは、したがって、例えばボタンを押すことによる、酸素分離器がオンモード及びオフモードに設定されるべきであるというユーザの指示と理解される。したがって、当該期間は、酸素を豊富に含むガスの流れを生成することを含むが、状況によっては、酸素分離の間に吸着された物質を脱着するために、再生ガスを、酸素分離デバイスのその二次側からその一次側を通り抜けるように導くことによって、酸素分離吸着剤を再生することも含む。酸素分離期間は、酸素分離ステップとしての加圧及びフィードフェーズで開始し、再生ステップとしての除圧及びパージフェーズで終了する、酸素生成の完全なサイクルとしても理解される。当然ながら、当業者には、2つの酸素分離デバイスが使用される場合、第2の酸素分離デバイスは、第1の酸素分離デバイスに対し、半サイクル分、遅延されることは明らかであろう。
【0015】
更に、フラッシング収着質は、規定の吸着エネルギーeで酸素分離吸着剤に結合する、ガスといった物質と理解される。対応して、冷却収着質は、具体的には、吸着エネルギーeで酸素分離吸着剤に結合する収着質を意味する。吸着エネルギーに関して、eは、eよりも低く、これにより、冷却収着質が酸素分離吸着剤に結合して、フラッシング収着質を置換すると冷却効果がもたらされる。
【0016】
したがって、酸素含有ガスから酸素を分離する方法は、特に、当該方法を行うために使用される酸素分離器が、少なくとも一時的に高温で格納される、又は、高温で使用される場合に、向上された分離効率を提供する。特に、本発明に係る方法は、酸素分離デバイスの酸素純度といった性能に対する高作業温度及び酸素分離吸着剤の格納温度の影響に対処する。
【0017】
詳細には、本発明に係る方法は、物質を酸素分離吸着剤に少なくとも部分的に結合する又は吸着することによって、したがって、酸素分離吸着剤に、規定の吸着エネルギーを有する物質(フラッシング収着質)を完全に又はある程度だけロードすることによって、酸素分離吸着剤は、フラッシング収着質を、低結合エネルギー又は吸着エネルギーを有する冷却収着質によって置換することによって冷却されるという研究成果に基づいている。これは、この場合では、強力に結合されるフラッシング収着質を除去することは、冷却収着質との弱い結合を形成することよりも多くのエネルギーを必要とするため、酸素分離吸着剤の瞬間的な冷却をもたらす。したがって、エネルギー差が、冷却効果をもたらす。
【0018】
冷却効果によって、酸素分離効率は、著しく向上される。これは、酸素分離吸着剤の吸着特性は、主に、その温度に強く依存することによる。詳細には、温度性能は、等温線から推定される。ほんの例示的な値として、酸素分離吸着剤としてのLi−LSXゼオライト材料から窒素及び酸素の温度依存等温線を使用して、必要な酸素分離吸着剤の最小量の増加M%(ΔT)が、シーブ温度の空気から、85%以上濃縮された純度を有する毎分1リットルの酸素流量を得るために必要である量について、計算される。室温動作(〜23℃)と比較して、ΔT=+20℃の酸素分離吸着剤の温度増加は、約40%のM%(ΔT=20℃)の(最小)必要材料の増加をもたらす。ΔT=+30℃の酸素分離吸着剤の温度増加は、約65%のM%(ΔT=30℃)をもたらす。ΔT=40℃では、約2倍の量の吸着剤が必要である。
【0019】
結果として、酸素分離デバイス内といった所与の量の吸着剤材料を有する場合、大抵の場合、特異的特性は、規定温度範囲内でのみ確実である。温度範囲が超過したままにされる場合、規定特性は、変動し、これは、特定の状況下では、酸素分離能力の望ましくない劣化、したがって、酸素を豊富に含むガスの品質の劣化につながる。
【0020】
これは、特に、携帯可能な酸素分離器について言えることである。これは、この種のデバイスは、酸素分離吸着剤の量が限られているため、高温での作業に非常に敏感なためである。例えば酸素分離デバイスは、たった200gの質量に相当する300cmのLiシーブ材料を含む。このような限られた量の酸素分離吸着剤は、通常、費用、サイズ及び重量に関して利点を提供し、したがって、当該システムの快適さを提供する。特に、携帯可能なデバイスについては、本発明に係る方法は、酸素純度仕様を満たすことを確実に実現するために、高い質量の酸素分離吸着剤を提供しないようにする。
【0021】
上記は、酸素濃縮器が、通常の室温よりもかなり高い温度で単に格納され、約室温(T〜25℃)においてオンにされる場合についても言えることである。この理由としては、周囲ガスの容量に対するゼオライトといった酸素分離吸着剤の高い熱容量と、特に、酸素分離吸着剤がシーブビード(sieve bead)としてデザインされる場合に、酸素分離デバイス内の低い熱伝導性がある。したがって、通常の動作条件(通常の空気フィードフロー)下のシステムの動作であっても、迅速な冷却をもたらさないが、酸素分離材料を流れるガス流の数分の範囲内にある。
【0022】
これに対し、本発明に従って、フラッシング収着質及び冷却収着質を、特に、それらの吸着エネルギー又は吸着エネルギー比によって適切に選択することによって、酸素分離吸着剤は、効果的かつ瞬間的に冷却される。これは、酸素分離吸着剤の温度の高速低下、及び、酸素分離性能の高速増加をもたらす。つまり、本発明によれば、高温での格納後であっても、酸素分離吸着剤を迅速に冷却し、また、所望の酸素分離仕様、又は、酸素純度を迅速に提供することが可能となる。したがって、特に酸素分離器が高温で使用される場合、2つの作業期間の間の通常の作業手順の間に、本発明に係る方法を使用することが可能となる。
【0023】
上記は、更に、吸着剤材料が瞬間的、したがって、非常に迅速に冷却することによって、非常に限られた時間規模で実現される。この冷却ステップは更に、酸素分離吸着剤の外にある冷却デバイスとの相互作用に基づいておらず、対照的に、冷却効果は、例えば吸着剤材料床の表面及び内部から実現される。これは、冷却収着質が、酸素分離デバイス内に含まれているすべての吸着剤粒子と非常に均一に相互作用することによる。上記以外に、フラッシング収着質及び冷却収着質を、酸素分離吸着剤を通り抜けるように導くステップは、数秒の時間規模で実現され、更に一層迅速な冷却手順、したがって、生成された酸素の品質の迅速な増加を示す。ほんの例示的な値として、100gの酸素分離吸着剤について、所望の温度低下を達成するために、冷却収着質をその中を通り抜けるように導くには、5乃至10秒の時間規模が適切である。
【0024】
一実施形態によれば、フラッシング収着質は、窒素を含み、及び/又は、冷却収着質は、酸素又はアルゴン若しくはヘリウムといった希ガスを含む。これらの収着質材料は、入手が特に簡単で費用を節約でき、また更には、取扱いが簡単である。上記以外に、すべての収着質は、同じ吸着剤に結合し、酸素分離デバイス又はその酸素分離吸着剤の非常に簡単で費用を節約できる構成をもたらす。更に、これらの収着質は、複数の吸着剤において各自の吸着エネルギーを有し、当該エネルギーは、広い範囲で変化するので、例えば酸素によってほんの少量の窒素を置換しても、非常に効率的及び迅速な冷却効果が提供され、特に有利な酸素分離性能がもたらされる。
【0025】
更なる実施形態によれば、フラッシング収着質及び/又は冷却収着質は、酸素分離期間の間及び/又は冷却期間の間に生成される。本実施形態は、対応するフラッシング収着質及び/又は冷却収着質を有する、存在する可能性のある容器又はタンクを外部から再充填する必要なく、本発明に係る方法を行うために酸素分離器を構成することを可能にする。本実施形態によって、本発明に係る方法の特に費用を節約する性能を可能にする。更に、フラッシング収着質及び/冷却収着質が保存される必要がない、又は、空になる可能性がないため、非常に安全な方法が行われる。本実施形態は、フラッシング収着質が窒素を含み、及び/又は、冷却収着質が酸素を含む場合に特に適している。詳細には、酸素は、いずれの場合にも、本発明に係る方法によって生成される。したがって、生成された酸素は、容器へと導かれ、フラッシング収着質を適用するために、そこから使用される。当該容器は、選択した応用に生成された酸素を適用するために使用される容器と同じであっても、又は、別箇の容器であってもよい。更に、窒素は、酸素を生成するために標準的な作業手順の間に、酸素分離吸着剤にほとんど吸着される。したがって、例えば、酸素分離デバイスからガス容器に、酸素分離吸着剤の再生ステップに使用されるガスを導くことによって、この窒素を捕捉することによって、窒素は生成され、酸素分離吸着剤を冷却するために使用される。例えばフラッシング収着質及び/又は冷却収着質は、酸素分離器をオフにしたとき又はオフにした後に生成される。これは、例えば酸素分離器をオフにした後に、追加の酸素分離ステップを行うことによって実現される。
【0026】
更なる実施形態によれば、フラッシング収着質を、酸素分離デバイスを通り抜けるように導くステップは、本発明に係る方法に使用される酸素分離器をオフにした直後に行われる。本実施形態によれば、酸素分離吸着剤は、ユーザが酸素分離器はオフにされるべきであると指示した後、したがって、酸素分離期間後かつ(例えば酸素分離器をオフモードで格納するために)酸素分離器がオフモードに切り替えられる前の最後の手段として、例えば空気といった窒素でフラッシングされる。したがって、これは、例えばユーザが酸素分離器はオフにされなければならないことを指示した後、したがって、通常の酸素分離期間が終了した後の追加のステップにおいて実現される。したがって、この手段は、例えば圧力スイング吸着システムについて一般的に知られている手順に厳密に対抗する。これらの既知の手順によれば、例えば酸素分離期間の終わりにおいて、酸素分離吸着剤を窒素でロードする又は更には飽和させることは厳密に回避されるべきである。というのも、この手段は、後続のサイクルにおける酸素分離能力を減少するからである。このため、既知の手段は、しばしば、再生のために、酸素を、酸素分離デバイスを通り抜けるように導くステップを含む。しかし、本発明によれば、酸素分離器は、後続の酸素分離期間を始める前に、酸素分離吸着剤を冷却する準備が整っている。
【0027】
更なる実施形態によれば、酸素分離吸着剤には、3wt‰よりも多い量のフラッシング収着質がロードされる。本実施形態は、十分な量のフラッシング収着質があり、冷却収着質によって置換されることによって、十分な冷却効果を確実に生成する。したがって、酸素分離吸着剤を、フラッシング収着質で完全にロードしないことが有利である。これは、新しい酸素分離期間をすぐに開始すること、又は、フラッシング収着質を冷却収着質によって置換し、したがって、酸素分離吸着剤を冷却することが可能となる。どの手順が続くかは、対応する要件に依存する。本実施形態によれば、特に幅広い応用が提供され、保守管理及び快適さが特に向上される。
【0028】
更なる実施形態によれば、冷却収着質を、酸素分離デバイスを通り抜けるように導くステップは、本発明に係る方法に使用される酸素分離器をオンにした直後に行われる。具体的には、冷却収着質を、酸素分離デバイスを通り抜けるように導くステップは、オフタイム後に酸素分離デバイスをオンにするというユーザの指示に応えて、したがって、酸素分離器のオフタイムと酸素分離期間の開始との間の全く最初のステップとして行われる。本実施形態は、酸素生成期間の開始直前に、したがって、それが厳密に必要であるときに、酸素分離吸着剤を冷却することを可能にする。酸素分離能力、したがって、生成された酸素の品質は、本発明によれば、特に効果的に向上される。したがって、酸素分離期間が続く冷却期間の始まりは、具体的には、酸素分離器の長いオフタイムの後に、及び、高温での格納の後に、又は、高温で酸素分離方法を行う際の酸素分離手順の間の規定サイクルの前に、開始する。
【0029】
したがって、冷却期間、又は、後者の各ステップは、酸素分離器のオフ期間によって区切られ、したがって、次々にすぐに行われる必要がないことは明白である。
【0030】
更なる実施形態によれば、フラッシング収着質を、酸素分離デバイスを通り抜けるように導くステップ、及び/又は、冷却収着質を、酸素分離デバイスを通り抜けるように導くステップは、酸素分離吸着剤の温度に依存して行われる。本実施形態は、必要な場合にのみ、酸素分離吸着剤を冷却することを可能にする。例えば温度センサによって検出される温度が、使用される酸素分離器又は酸素分離吸着剤の酸素分離仕様の制限内である場合、冷却は行われず、特に効果的な酸素生成を可能にする。しかし、例えば温度が、例えば高過ぎて、規定値を超える場合、酸素分離吸着剤は、必要な温度に迅速に到達するために、選択的に冷却される。本実施形態は、具体的には、例えば酸素分離吸着剤にフラッシング収着質を部分的にしかロードしないことと組み合わせて行われる。というのも、これは、特に、酸素生成ステップであっても冷却ステップであっても必要なステップから開始することを可能にするからである。更に、本実施形態は、酸素分離期間の開始の直前に、したがって、具体的には、酸素分離器をオンにしたとき又はした後に、冷却ステップを任意選択的に行うことと組み合わせて使用される。というのも、この場合、酸素分離吸着剤にある温度がリアルタイムで検出され、当該方法を特に効果的にするからである。本発明に係る方法による冷却ステップを作動させる例示的な温度は、40℃以上の範囲にある。したがって、規定温度は、使用される酸素分離吸着剤及び吸着される物質に依存して選択される。
【0031】
酸素を生成する方法の更なる利点及び技術的特徴については、酸素分離器の説明、図面及び図面の説明を参照されたい。
【0032】
本発明は更に、酸素含有ガスの流れを酸素分離デバイス内へと導くための一次側におけるガス注入口と、酸素を豊富に含むガスの流れを酸素分離デバイスから外に導くための二次側におけるガス排出口とを有し、酸素分離吸着剤を含む少なくとも1つの酸素分離デバイスと、少なくとも1つの酸素分離デバイスの一次側と二次側との間に圧力差を作る圧力調節デバイスとを含む、酸素分離器であって、当該酸素分離器は、2つの酸素生成期間の間に、フラッシング収着質を、酸素分離デバイスを通り抜けるように導き、2つの酸素生成サイクルの間に、冷却収着質を、酸素分離デバイスを通り抜けるように導く制御ユニットを含み、フラッシング収着質は、酸素分離吸着剤に対し、吸着エネルギーeを有し、冷却収着質は、酸素分離吸着剤に対し、吸着エネルギーeを有し、吸着エネルギーeは、吸着エネルギーeよりも低い、酸素分離器に関する。
【0033】
本明細書において使用される酸素分離器との用語は、具体的に、酸素含有ガスから酸素を分離可能なデバイスを指す。したがって、酸素分離器によって、酸素含有ガスから開始して、純粋又は基本的に純粋な酸素、したがって、酸素を豊富に含むガスが生成される。
【0034】
圧力調節デバイスとの用語は、酸素分離デバイスの一次側と二次側との間に圧力差を生成することが可能な任意のデバイスを指す。当該デバイスは、例えば、酸素分離デバイスの一次側に接続されているガス圧力デバイス、又は、酸素分離デバイスの二次側に接続されている真空ポンプである。
【0035】
酸素分離器は、特に、酸素分離期間の始まりにおいて、又は、酸素分離器をオンにした後に、酸素分離吸着剤の温度を迅速に冷却することを可能にする。詳細には、制御ユニットに、マイクロプロセッサといった制御システムが備えられる。当該制御システムは、フラッシング収着質又は冷却収着質を、酸素分離デバイスを通り抜けるように導く機能を果たす。これは、例えば充填されたガス容器及び導管の対応するバルブを制御することによって実現される。
【0036】
更に、単一の酸素分離デバイスが提供されていてもよいし、又は、2つ又は3つ以上の酸素分離デバイスが提供されていてもよい。詳細には、酸素分離器は、2つ以上の酸素分離デバイスを含む場合は、当技術分野において一般的に知られているように、圧力スイング吸着システム(PSAシステム)としてデザインされる。
【0037】
したがって、本発明に係る酸素分離器は、具体的には、高温での格納後、及び/又は、高温での酸素分離手順を有する酸素分離挙動を向上させる。
【0038】
一実施形態によれば、酸素分離器は、酸素分離吸着剤の温度を検出するセンサを含む。本実施形態は、必要な場合にのみ、酸素分離吸着剤を冷却することを可能にする。例えば温度が使用される酸素分離器又は酸素分離吸着剤の酸素分離仕様の制限内である場合、冷却は必要ではなく、特に効果的な酸素生成が可能となる。しかし、例えば、温度が、例えば高過ぎて、規定値を超える場合、酸素分離吸着剤は、必要な温度に迅速に到達するために、選択的に冷却される。
【0039】
更なる実施形態によれば、酸素分離器は、フラッシング収着質を収容する容器及び/又は冷却収着質を収容する容器を含む。本実施形態は、酸素分離器が自己充足であることを可能にし、したがって、固定されたデバイスへの任意の接続を不要とする。本実施形態は、電池又は発電機が設けられ、更に、空気が酸素含有ガスとして使用される場合に特に有利であることは明らかである。また、本実施形態は、携帯可能なデバイスに関して特に有利である。更に、本発明は、フラッシング収着質及び/又は冷却収着質が、酸素分離器を使用するステップの間に生成される場合に、特に有利である。
【0040】
更なる実施形態によれば、酸素分離吸着剤は、CECA社のSXSDM又はUOP社のOxySiv MDXという商標で購入可能であるものといった、Li−LSXゼオライトを含む。本実施形態によれば、特に高い吸着強度を有する酸素分離吸着剤が使用される。したがって、本実施形態によれば、特に効果的な冷却効果が使用され、本実施形態に係る酸素分離器の酸素分離挙動を特に効果的にする。Li−LSXゼオライトは、具体的には、Li置換された低シリカXゼオライト(LSX、Si/Al=1)である。これらは、例えば、イオン交換法を介して、Na−LSXゼオライトから調製される。したがって、ゼオライトXとは、1乃至1.5のSi/Al比を有するゼオライトを指す。
【0041】
酸素分離器の更なる利点及び技術的特徴については、酸素生成方法の説明、図面及び図面の説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明される実施形態を参照することにより明らかとなろう。
【0043】
図1図1は、本発明に係る方法を実行する本発明に係る酸素分離器の一実施形態の概略図を示す。
図2図2は、本発明に係る方法の効果を視覚化した概略図を示す。
図3図3は、本発明に係る方法を実行する本発明に係る酸素分離器の更なる実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1に、酸素を生成する酸素分離器10が概略的に示されている。酸素分離器10は、例えばCOPD治療の分野における治療への応用に対し酸素を生成するために使用される。酸素分離器10は、例えば病院での使用のために固定装置としてデザインされても、例えば在宅ケアへの応用の分野において使用するために携帯可能なデバイスであってもよい。しかし、酸素分離器10は更に、例えば飛行機内又は溶接目的で、純酸素又は基本的に純粋な酸素が供給されなければならない任意の応用に使用されてよい。このような酸素濃縮器又は酸素分離器10は、EverGoと呼ばれるような酸素濃縮器に基づき、フィリップス・レスピロニクス社から購入可能である。
【0045】
酸素分離器10は、酸素含有ガスから酸素を分離可能な少なくとも1つの酸素分離デバイス12を含む。しかし、酸素分離器10は、平行に配置された少なくとも2つの酸素分離デバイス12、14を含むことが好適である。以下、本発明は、2つの酸素分離デバイス12、14について説明されるが、当業者であれば、本発明の特徴は、1つの酸素分離デバイス12だけを使用することによっても、又は、3つ以上の酸素分離デバイス12、14を使用することによっても、対応して提供されることは明らかであろう。各酸素分離デバイス12、14は、シーブベッドとして形成され、酸素分離吸着剤16、18が備え付けられる。酸素分離吸着剤16、18は、具体的には、特に酸素が限られた濃度で酸素分離吸着剤に接触する場合に大量に酸素を通過させるが、酸素含有ガス中にある他の成分又は少なくとも1つの他の成分と相互作用する又は当該成分を吸着させる。したがって、空気が酸素含有ガスとして使用される場合、酸素分離材料16、18は、窒素を吸着するが、酸素とはあまり相互作用しないことが好適である。適切な酸素分離材料16、18は、リチウムフージャサイト材料といったゼオライト材料を含む。しかし、例えば圧力スイング吸着法又は真空スイング吸着法といったスイングプロセスにおける使用のための当該技術分野において知られているあらゆる適切な酸素分離材料16、18を使用することが可能である。
【0046】
酸素含有ガスの流れを、その一次側における酸素分離デバイス12のガス注入口22に導くために、注入口導管20が設けられている。対応して、注入口導管24が、酸素含有ガスの流れを、その一次側における酸素分離デバイス14のガス注入口26に導くために設けられている。更に、酸素を豊富に含むガス、即ち、純酸素を、酸素分離デバイス12、14から導くための排出口導管28、30が、対応する酸素分離デバイス12、14のガス排出口32、34に接続されている。
【0047】
酸素分離デバイス12、14の注入口導管20、24は、酸素分離器10の注入口36に接続されている。注入口36には、ガス格納デバイス又は酸素分離器10の周囲の空気といった酸素含有ガスの供給源が接続される。更に、酸素分離デバイス12、14の一次側と二次側との間に圧力差を作る圧力調整デバイスが設けられていてもよい。図1では、酸素含有ガスを圧縮し、圧縮されたガスを、注入口導管20、24の一部である又は当該導管に接続される注入口導管42、44を通して酸素分離デバイス12、14へと送る圧縮器38が設けられている。酸素含有ガスの最初の清浄ステップを提供するために、圧縮器38の下流又は上流に、注入口フィルタ40が設けられていてよい。詳細には、特に固体粒子が酸素含有ガスから除去される。
【0048】
酸素含有ガスが酸素分離デバイス12、14内を断続的に導かれることを可能にするために、注入口バルブ46、48が、注入口導管42、44内に設けられている。本発明に係るバルブは、ガス流を可能にし、ガス流を抑制し、及び/又は、ガス流量を制限する任意のデバイスであってよい。したがって、バルブ48を閉じ、また、バルブ46を開くことによって、酸素含有ガスは、第1の酸素分離デバイス12内を導かれる。その一方で、バルブ48を開き、また、バルブ46を閉じることによって、酸素含有ガスは、第2の酸素分離デバイス14内を導かれる。対応して、バルブ50が、排出口導管28内に設けられ、バルブ52が、排出口導管30内に設けられている。酸素含有ガスを、第1の酸素分離デバイス12を通し導くことによって、バルブ50は開かれ、その一方で、バルブ52は閉じられる。対応して、酸素含有ガスを、第2の酸素分離デバイス14を通し導くことによって、バルブ52は開かれ、その一方で、バルブ50は閉じられる。
【0049】
バルブ50、52の下流において、排出口導管28、30は、生成された酸素又は酸素を豊富に含むガスを格納するために、酸素蓄積器54又はガスタンクに接続されている。酸素蓄積器54は、排出口ライン56に接続される。当該ライン内には、酸素が豊富に含まれたガスのストリームを制御するために、流量制御器58が設けられている。上記以外に、生成された酸素が豊富なガスの純度をモニタリングするために、純度センサ60が排出口ライン56内に設けられていてもよい。更に、生成された酸素が排出口64に導かれる前に、追加のフィルタ62が排出口ライン56内に設けられていてもよい。排出口64からは、患者といった所望の応用へと生成された酸素含有ガスが導かれる。更に、酸素分離器10の動作停止後、圧力を維持するために、バルブ53が、蓄積器54の下流の排出口ライン56内に設けられてもよい。
【0050】
第1の酸素分離デバイス12の排出口導管28及び第2の酸素分離デバイス14の排出口導管30は、バルブ50、52の上流で交差導管66によって接続される。当該交差導管66内には、オリフィス又は流量制御器といった流量調節器が設けられてよい。これにより、酸素分離デバイス12、14の再生目的で、例えば酸素分離デバイス12、14内で生成された酸素を豊富に含むガスの規定部が、更なる酸素分離デバイス14、12を通り戻るように導かれる。また、その逆も同様である。或いは、酸素を豊富に含むガスは、蓄積器54から来て酸素分離デバイス12、14を通り抜けるように導かれてもよい。この点に関し、酸素分離デバイス12、14の一次側において、再生ライン70、72が設けられている。各ラインは、バルブ74、76を含む。例えば、生成された酸素の純度が限られている場合、酸素が、再生目的で、その二次側からその一次側に、酸素分離デバイス12、14を通り抜けるように導かれると、流出物は、再生ライン70、72及び排気口78を通り選択的に導かれる。
【0051】
上記のような酸素分離器10は更に、制御ユニット80を含む。制御ユニット80は、以下に説明されるように、2つの酸素生成期間の間、酸素分離デバイス12、14を通って、フラッシング収着質及び冷却収着質を導く。したがって、制御ユニットは、例えばバルブ46、48、50、52、53、74、76及び圧縮器38に接続され、後者のデバイスを制御する。使用されるフラッシング収着質及び冷却収着質に依存して、対応する吸着剤が、一次側から二次側へ又は二次側から一次側へ、酸素分離デバイス12、14を通り抜けるように導かれる。
【0052】
更に、例示的にLi−LSXゼオライトを含むシーブベッドである酸素分離吸着剤16、18の温度を検出するセンサ82、84が設けられている。
【0053】
上記の酸素分離器10は、酸素含有ガスから酸素を分離する方法に使用される。当該方法は、次のステップを含む。少なくとも2回の酸素分離期間が行われる。これらの期間は、それぞれ、空気といった酸素含有ガスを、酸素分離デバイス12、14の一次側に導くステップを含む。酸素分離デバイス12、14は、酸素分離吸着剤16、18を含んでいる。これにより、酸素が豊富に含まれたガスの流れが生成され、例えば圧縮器38によって、酸素分離デバイス12、14の一次側と二次側との間に圧力差を作ることによって、酸素分離デバイス12、14から外へ導かれる。各期間の間、酸素分離器は、例えば40℃以上の温度といった高温のオフモードで格納される。
【0054】
上記の第1及び第2の酸素分離期間の間、フラッシング収着質が、酸素分離デバイス12、14内を導かれる。フラッシング収着質は、酸素分離吸着剤に対し、吸着エネルギーeを有する。フラッシング収着質は、窒素を含んでよく、例示的に空気が使用される。酸素分離デバイス12、14を通ってフラッシング収着質を導くステップは更に、酸素分離期間の終了時、したがって、ユーザが酸素分離器を動作停止させる又は動作停止を指示した後に、行われてもよい。また、酸素分離デバイス12、14を通ってフラッシング収着質を導くステップは、酸素分離吸着剤16、18のローディング挙動に依存して行われてもよい。詳細には、酸素分離吸着剤16、18には、3wt‰よりも多い量のフラッシング収着質がロードされる。したがって、窒素がフラッシング収着質として使用される場合、また、酸素分離デバイス12、14のうちの1つが、上記範囲内のローディング挙動、したがって、窒素吸着能力を有する酸素分離吸着剤を含む場合、フラッシング収着質を導くステップは、第2の酸素分離デバイス14に対してのみ行われる。1つの酸素分離デバイス12、14だけを通してフラッシング収着質を導くことに代えて、両方の酸素分離デバイス12、14に、フラッシング収着質が供給されてもよい。
【0055】
このステップは、例えば圧縮器38を使用することによって、窒素含有ガスとしての空気を、酸素分離デバイス12、14のどちらか一方又は両方を通して導くことによって実現される。一例として、バルブ46、47が開かれ、その一方で、バルブ74、50、52及び48は閉じられる。又は、バルブ48、74が開かれ、その一方で、バルブ46、76、50、52は閉じられる。これにより、窒素含有ガスは、酸素分離デバイス12、14の両方を通って連続的に導かれる。更なる手段として、酸素分離器10のオフ時間の間、酸素分離吸着剤16、18において窒素を吸着させるために、排気口78へのフィード側のバルブ74、76を開いて、空気流を酸素分離デバイス12、14内に、少なくとも数秒間の間、流れ込ませてもよい。この場合、空気の窒素含量は、より高熱の吸着度(adsorbance)を有するガス、したがって、フラッシング収着質として使用される。
【0056】
フラッシング収着質を、酸素分離デバイス12、14を通り抜けるように導くステップは更に、例えば、酸素分離器10をオフの間若しくはオフに切り替えた後、又は、ユーザが酸素分離器10をオフにするように指示した後、したがって、酸素分離器がオフモードになる前の最後の手段として、追加のフェーズを追加することによって実現される。詳細には、酸素含有ガスを、酸素分離デバイス12、14を通り抜けるように導くステップは、生成された酸素の純度が、70%以下といった規定レベルを下回るまで、延長される。それまで、バルブ50、52は開かれる。酸素純度は、酸素センサ60によって検出される。更には、酸素センサが、各排出口28、30に設けられていることが好適である。これは、通常、対応する酸素分離デバイス12、14は、異なるローディング段階にあるからである。したがって、1つのバルブ50、52が、更なるバルブ52、50に比べて早く閉じられる。
【0057】
上記の追加のフェーズ、又は、追跡サイクルは更に、PSAプロセスの規定時間サイクルを介して制御される。詳細には、酸素分離モードにある第1の酸素分離デバイス12についてのサイクルの25%の後、したがって、再生モードにある第2の酸素分離デバイス14のサイクルの75%の後、窒素飽和に関して、両酸素分離デバイスは、同等な段階に到達する。酸素分離デバイスをオフにする瞬間、したがって、すべてのバルブの閉鎖は、したがって、上記の酸素濃縮の次の又は酸素濃縮に加えての動作時間を介して実現される。
【0058】
更に、酸素分離器10をオフに切り替えるとき、空気は、酸素分離デバイス12、14全体を通り抜けるように導かれ、これにより、バルブ46、48及び74、76が開かれ、その一方で、バルブ50、52が閉じられるという行われる可能性のあった再生サイクルが中断される。
【0059】
本発明に係る方法の更なるステップに関して、第1及び第2の期間の間に、冷却収着質も、酸素分離デバイス12、14を通り抜けるように導かれる。冷却収着質は、酸素分離吸着剤に対し冷却吸着剤の吸着エネルギーeを有する。この点につき、吸着エネルギーeは、フラッシング収着質の吸着エネルギーeよりも低い。これは、冷却収着質によるフラッシング収着質の交換、したがって、酸素分離収着質16、18に作用する冷却効果につながる。冷却収着質は、フラッシング吸着剤を脱着させるために、例示的に、十分な濃度の酸素又はヘリウム若しくはアルゴンといった希ガスを含む。例示的な値として、90%以上の範囲にある生成された酸素の濃度が十分である。更に、フラッシング収着質及び/又は冷却収着質は、酸素分離期間の間に生成されてもよい。一実施形態によれば、冷却収着質を、酸素分離デバイス12、14を通り抜けるように導くステップは、酸素分離サイクルを開始する前、したがって、酸素分離デバイスをオンに切り替えた直後、したがって、特に、高温での特定の格納時間の後、酸素分離器のオフタイム後の最初の手段として、行われる。
【0060】
例えば、先の工程の間に生成され、蓄積器54に格納されていた酸素が豊富なガスの少量部が、より低熱の吸収度(adsorbance)を有するガス、したがって、冷却収着質として使用される。このために、酸素を、酸素分離デバイス12及び/又は14を通って、例えば数秒間の間、導くために、バルブ50、52、74、76が開けられる。バルブ50、52及び53は、酸素分離器10のオフタイムの間、閉じられる。
【0061】
上記の酸素分離器10に行われる上記の方法において、例えば、酸素分離プロセスの始まりにおいて、ゼオライトビード温度が著しく低下することがある。これは、ビード温度を測定する適合サーモカップルを有する特別デザインされたシーブシリンダに行う単純な実験から推測される。これは、図2に示される。
【0062】
図2は、標準的な実験の結果を示す。この実験では、サーモカップルが、酸素分離デバイスのシリンダ内のシーブ材料内に、フィード側から約1cm離れて置かれている。使用されたLiシーブ材料(SXSDM)と、約22mmのシリンダの直径(155mmの長さ)とについて、この温度測定は、約5gのシーブ材料の挙動を特徴付ける。シーブ材料は、各実験の前に、窒素でフラッシュされた。図2に、窒素又は酸素をフィードガスとして使用して得られた結果が示される。
【0063】
詳細には、図2は、℃を単位とする温度T(T[℃])及び標準毎分当たりのリットルを単位とする流量f(f[Nl/min])に対する秒を単位とする時間t(t[s])を示すグラフである。グラフには、4つの曲線が示され、曲線Aは、シーブを通る酸素の流量に対するLiシーブ材料の温度を示し、曲線Bは、シーブを通る窒素の流量に対する温度を示し、曲線Cは、酸素の流量を示し、曲線Dは、窒素の流量を示す。例えば、所与の流量(曲線C及びD)に対するシーブ材料の約1cm内側における温度発達が見られる。したがって、シーブシリンダに対する酸素パージ(曲線A及びC)及び窒素パージ(曲線B及びD)の状況が示される。酸素がフィードとして使用された場合、フィード流量を開始後、数秒の時間規模で、温度が著しく下がる(>10℃)ことが顕著である。これは、冷却収着質を、酸素分離吸着剤16、18を通り抜けるように導くステップを示す。窒素をフィードとして使用する場合、温度は一定のままである。
【0064】
可能な温度低下の単純な推定は、次の通りである。少量のシーブ材料を有するシーブベッド、したがって、酸素による窒素の交換率が増加することによって温度が上昇したシーブベッドの入力部から出力部に向けて迅速な酸素輸送についてのみ、温度低下は、非常に早く、例えば数秒内である。ほんの例示的な値として、1、2バールの冷却収着質及び約4.5Nl/minの流量を使用することによって、約15Kの温度低下が、酸素によって窒素を交換することによって、10秒未満以内で達成される。
【0065】
図3に、本発明に係る酸素分離器10の更なる実施形態が概略的に示される。図3に関し、同一の参照符号が、図1と同一又は同等の特徴を指す。以下には主に相違点が説明される。
【0066】
図3によれば、酸素分離器10は、冷却収着質を収容する更なる容器86を含む。容器86は、冷却ライン88を介して、バルブ50、52の上流の排出口導管28、30に接続され、冷却ラインの中に、バルブ90が設けられている。バルブ50、52は、この場合、逆止め弁としてデザインされている。
【0067】
必要に応じて、対応する容器がフラッシング収着質用にあってもよい。フラッシング収着質用の更なる容器は、例えば酸素分離デバイス12、14のフィード側、特に、対応するバルブによって導管70、72に接続されて設けられてもよい。各容器は、以下に説明されるように充填されても、又は、着脱可能であり、したがって、対応する応用に対し使用される収着質を適応させる交換可能なデバイスとしてデザインされてもよい。
【0068】
具体的には、酸素分離ステップの間に、生成された酸素の一部が、容器86内に充填される。例えば、圧力センサ又は流量制御器を介して、容器86内の圧力によって検出される、酸素といった規定量の冷却収着質が容器86内にある場合、バルブ90は閉じられる。本発明に係る方法が、酸素蓄積器54について上記されたように行われ、容器86は、蓄積器54を交換し、バルブ90は、バルブ50、52を交換する。
【0069】
更に、容器86の充填のために、例えば、エネルギー消費量は無視できるほどであることに留意されなければならない。したがって、容器86をより迅速に充填するために、圧縮器38をより高い圧力で動作させることが好適である。更に、容器80の充填は、上記のPSAプロセスのサイクルの半分に比べてより長い時間規模で行われることが好適である。
【0070】
本発明は、図面及び上記説明において詳細に例示かつ説明されたが、当該例示及び説明は、例示的であって限定的に解釈されるべきではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形態様も、図面、開示内容及び添付の請求項を検討することにより、請求項に係る発明を実施する当業者には理解されかつ実施できるであろう。請求項において、「含む」との用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、また、「a」又は「an」との不定冠詞も、複数形を排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されるからといって、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。請求項における任意の参照符号は、範囲を限定しているものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3