(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180516
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】熱交換器検査用管板歩行ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
B25J5/00 C
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-511474(P2015-511474)
(86)(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公表番号】特表2015-515935(P2015-515935A)
(43)【公表日】2015年6月4日
(86)【国際出願番号】US2013034210
(87)【国際公開番号】WO2013191784
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2016年1月8日
(31)【優先権主張番号】13/775,354
(32)【優先日】2013年2月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/645,220
(32)【優先日】2012年5月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ペトロスキー、ライマン、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ホーキンス、フィリップ、ジェイ
【審査官】
臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭53−110120(JP,A)
【文献】
特開昭54−006272(JP,A)
【文献】
特開昭55−048593(JP,A)
【文献】
特開平02−176071(JP,A)
【文献】
特開平10−217160(JP,A)
【文献】
特開2003−053288(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第02626515(FR,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第02674938(FR,A1)
【文献】
米国特許第04168782(US,A)
【文献】
米国特許第04476368(US,A)
【文献】
米国特許第07314343(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/00
B23P 1/02
F16L 55/18
F22B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器の保守点検のための管板歩行ロボットであって、
a)第1のレール(1)及び第2のレール(2)と、
b)第1のレール(1)を第2のレール(2)に接続する中央ヒンジ(3)であって、遠隔場所からの指令を受けて該中央ヒンジを中心として第1のレールまたは第2のレールの一方または両方が少なくとも部分的に回転できるように構成された、中央ヒンジ(3)と、
c)第1のレール(1)に搭載され第1のレールに沿って移動するように構成された第1のキャリッジ(4)及び第2のレール(2)に搭載され第2のレールに沿って移動するように構成された第2のキャリッジ(5)であって、それらの動きは該遠隔場所からの指令を受けて行われる第1のキャリッジ(4)及び第2のキャリッジ(5)と、
d)第1のキャリッジ(4)上にあって該遠隔場所からの指令を受けて作動する第1の固定機構(6)であって、管板(19)の表面の、第1のレール(1)の長さ方向に離隔した2つの細管孔に係合することによって、第1のキャリッジ(4)を管板(19)の表面に固定させる第1の固定機構(6)であって、と、
e)第2のキャリッジ(5)上にあって該遠隔場所からの指令を受けて作動する第2の固定機構(6)であって、管板(19)の表面の、第2のレール(2)の長さ方向に離隔した2つの細管孔に係合することによって、第2のキャリッジ(5)を管板(19)の表面に固定させる第2の固定機構(6)と、
f)管板歩行ロボットに接続されたツール支持具(7)とから成り、
g)管板歩行ロボットが管板に沿って移動する際に、管板歩行ロボットは専ら第1の固定機構または第2の固定機構の1つによって管板から支持される、管板歩行ロボット。
【請求項2】
第1のキャリッジ(4)が第1のレール(1)に摺動可能に搭載され、かつ、第2のキャリッジ(5)が第2のレール(2)に摺動可能に搭載されている、請求項1記載の管板歩行ロボット。
【請求項3】
さらに、第1のキャリッジ(4)と第1のレール(1)に接続され、第1のキャリッジを第1のレールに沿って中央ヒンジ(3)の方へ、または中央ヒンジ(3)から離れる方向へ摺動させる動力を供給する第1の駆動機構を具備する、請求項2記載の管板歩行ロボット。
【請求項4】
さらに、第2のキャリッジ(5)と第2のレール(2)に接続され、第2のキャリッジを第2のレールに沿って中央ヒンジ(3)の方へ、または中央ヒンジ(3)から離れる方向へ摺動させる動力を供給する第2の駆動機構を具備する、請求項3記載の管板歩行ロボット。
【請求項5】
第1のレール(1)及び第2のレール(2)が、中央ヒンジ(3)を中心として、第1のレールと第2のレールの間の相対角度が0度乃至180度となる範囲で回転する、請求項1に記載の管板歩行ロボット。
【請求項6】
第1のレール(1)と第2レール(2)が延びる面でツール支持具(7)が中央ヒンジ(3)から横方向に延び、かつ、ツール支持具(7)が第1のレール(1)と第2レール(2)の間の相対角度の半分である変位角度で中心ヒンジ(3)に接続され、第1のレール及び第2レールの間の角度が変化してもツール支持具は該変位角度を維持する、請求項1に記載の管板歩行ロボット。
【請求項7】
第1及び第2の固定機構(6)がグリッパである、請求項1に記載の管板歩行ロボット。
【請求項8】
グリッパ(6)が遠隔操作による可動式のフィンガである、請求項7に記載の管板歩行ロボット。
【請求項9】
グリッパ(6)がカムロックである、請求項7に記載の管板歩行ロボット。
【請求項10】
ツール支持具(7)が中央ヒンジ(3)に接続されている、請求項1に記載の管板歩行ロボット。
【請求項11】
請求項1に記載の管板歩行ロボットを動作させる方法であって、
第1の固定機構(6)を介して第1のキャリッジ(4)を管板(19)に係合させる一方、第2のキャリッジ(5)を管板から離脱させることにより、第2のキャリッジを第2のレール(2)に沿って第1の所望の位置に移動させるか、または第1のキャリッジを第1のレールに沿って移動させることにより、第2のキャリッジを第1の所望の場所に移動させ、
次いで、第2の固定機構(6)を介して第2のキャリッジを管板に係合させる一方、第1のキャリッジを管板から離脱させることにより、第1のキャリッジを第1のレールに沿って第2の所望の位置に移動させるか、または第2のキャリッジを第2のレールに沿って移動させることにより、第1のキャリッジを第2の所望の場所に移動させることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の管板歩行ロボットの、管板(19)に平行な平面内での向きを選択する方法であって、
第1の固定機構(6)を介して第1のキャリッジ(4)を管板に係合させる一方、第2のキャリッジ(5)の第2の固定機構(6)を管板から離脱させ、中央ヒンジ(3)を中心として第2のキャリッジを回転させることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の管板歩行ロボットの、管板(19)に平行な面内での向きを選択する方法であって、
第2の固定機構(6)を介して第2のキャリッジ(5)を管板に係合させる一方、第1のキャリッジ(4)の第1の固定機構(6)を引き抜いて、中央ヒンジ(3)を中心として第1のキャリッジを回転させることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の管板歩行ロボットを動作させる方法であって、
第1のレール(1)と第2のレール(2)が実質的に平行となるように中央ヒンジを回転させ、
第1の固定機構(6)を介して第1のキャリッジ(4)を管板(19)に係合させる一方、第2のレール(2)に沿う第2のキャリッジ(5)の位置を変更させるか、または、第1のレール(1)に沿う第1のキャリッジ(4)の位置を第1の所望の場所に変更させ、
次いで、第2の固定機構(6)を介して第2のキャリッジ(4)を管板(19)に係合させる一方、第1のキャリッジを管板から離脱させて、その位置を第2の所望の場所に変更させることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、「Tubesheet Walker for Heat Exchanger Inspections」と題する2012年5月10日に出願された米国仮特許出願第61/645220号に基づく優先権を主張し、その開示内容を参照により編入する。
【0002】
本発明はロボットシステムに関し、特に原子力発電所の蒸気発生器内の伝熱管を保守点検するためのロボットに関連する。
【背景技術】
【0003】
加圧水型原子力発電システムにおいては、原子核反応によって発生した熱は、炉心を循環する一次冷却材によって吸収され蒸気発生器内で蒸気の発生に利用される。蒸気発生器は、典型的には、半球状の端部を有する直立円筒形圧力容器である。管板と呼ばれる横方向に延びる板が円筒形部の下端に配置され、該管板が蒸気発生器を、管板下方の下側半球部及び管板の底面から円筒部に貫入するU字形細管の内部より成る一次側と、管板上方にあって細管を取り囲む二次側とに分ける。一次側は垂直壁によって入口部と出口部に二等分される。厚い炭素鋼板である管板には、U字形細管の端部が挿入される孔が並んでいる。蒸気発生器の細管の数は約4,000乃至15,000の範囲である。各U字形細管の一端を管板の一次側入口部に連通する孔に挿入し、他端を一次側出口部に連通する孔に挿入する。一次冷却材は、圧力下で一次側入口部に導入され、U字形細管を通って循環し、出口部から出て行く。蒸気発生器の二次側に導入された水は、U字形細管の周りを循環し、一次冷却材から伝わる熱によって蒸気に変換される。蒸気は、その後、タービン駆動発電機を作動させる等の有用な機械的仕事を行うために利用される。
【0004】
蒸気発生器の運転中に細管が劣化することがあるが、それが望ましくないのは何よりも、一次冷却材が放射性であるため、蒸気発生器二次側へ漏洩するとタービンに接触する蒸気を汚染するからである。一般的に、劣化した細管の交換は実際的ではない。その代わりに、蒸気発生器を定期的に検査して、劣化した細管を修理するか、両端を施栓する。蒸気発生器に数千の細管があることを考慮すると、少数の細管を施栓しても熱伝達効率にはっきり分かる程の影響はない。
【0005】
原子力発電所の蒸気発生器内には放射線の危険性があるため、蒸気発生器の伝熱管のほとんどの部分の保守点検を遠隔操作で行うことにより、作業員を有害な放射線に曝さないようにする必要がある。その結果、伝熱管の修理・保守点検を遠隔操作で行うロボットシステムが多数開発されてきた。これらのロボットシステムは通常、送達用ロボットアームを含んでおり、該アームによって送り届けられるように特別に設計された幾つかのツールのうちの任意のものと組み合わせて用いる。
【0006】
原子力発電所の蒸気発生器の保守点検は過去20年で劇的に変化した。過去には、古くなった蒸気発生器の細管の多くが劣化し、有意な数の箇所の施栓やスリーブ補修を行うか、あるいは蒸気発生器全体の交換を必要とした。保守点検による発電所の運転停止は長期間に亘り、蒸気発生器の補修は細管の施栓を避けながら様々な点検・修理作業を遂行できる精巧なロボットマニピュレータとツールを必要とした。
【0007】
現在、ほとんどの電力会社は蒸気発生器を交換したことがあるか、または少数の細管の施栓により最小限の修理で済ませている、かの何れかである。蒸気発生器の細管の作業の大半は渦電流による検査であり、施栓の必要はほとんどないか、または全くない。運転停止期間全体の長さを決めることになる発電所の保守点検及び燃料交換のための停止時間は減少しており、蒸気発生器の保守点検に割り当てる時間が有意に減少している。現代の保守点検のタイムテーブルに合うように蒸気発生器を保守点検するための既存のロボットシステムの改良に対する明らかなニーズが存在する。現在の保守点検用ロボットは一般的に重く(100ポンドを超える)、高度に精緻であるため、輸送、設置、取付けのための時間及び作業員の放射線被曝量の増加が避けられない。また、ほとんどの蒸気発生器のチャンネルヘッドの所与の部分にロボットを複数台取り付けるには、現在のロボットは大きすぎる。
【0008】
また、一般的に、蒸気発生器用のロボットは位置がフィードバックされる複数のモータと共に3以上の自由度を有している。一般的に、ロボットの複雑さと相俟って、制御システムを購入し、維持するコストは高い。さらに、ほとんどのロボットは蒸気発生器内の定位置に固定して取り付けるので、すべての細管にアクセスして検査を行うにはロボットを移動する必要がある。
【0009】
本発明に係るロボットもそうだが、ほとんどの管板歩行ロボットは、管板の孔を利用して、幾つかのカムロック等のグリッパによりロボットを管板に固定させる。これらのロボットは2組のカムロックを用い、一方の組による把持と、他方の組による新しい場所への移動とを交互に繰り返すことによって、管板全域に亘ってロボットを推進させる。かかる設計によるロボットの典型が、「Miniature Manipulator for Servicing theInterior of Nuclear Steam Generator Tubes」と題する米国特許第7314343号明細書に記載されている。参照した設計においては、プロセス特有のツールを保持するベース部材、中央回転ジョイント、及び直線摺動ジョイントから成る「X」レイアウトが採用されている。さらに、必要に応じてロボットを管板に向かって上昇させるため、中央ジョイントは垂直方向に僅かに移動する。この設計の問題点は、多くの部品が入り組み、機構が比較的複雑だということである。また、一度に一方向にしか移動させることができず、したがって現在の向きとは異なる任意の方向に移動するには、ロボットは多数のアクションを遂行しなければならない。
【0010】
現在の技術水準の結果として、熱交換器の細管の検査を容易化する、簡単で小型軽量のロボットが望まれている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、熱交換器の保守点検のための改良された管板歩行ロボットを提供する。本発明に係るロボットは、当技術分野で公知のロボットに比して、保守が比較的容易であり、製造コストが安価であり、管板に沿って迅速に並進し、かつ小型軽量である等の、多数の利点を有している。
【0012】
一実施形態において、管板歩行ロボットは、2本のレールがアクチュエータによって開閉可能な中央ヒンジを介して接続されたものである。各レールにはキャリッジが搭載されており、各キャリッジを駆動機構により夫々のレールに沿って、中央ヒンジの方へ、または中央ヒンジから離れる方向に移動させることができる。各キャリッジはさらに、カムロック等の「グリッパ」固定機構を少なくとも2つ有する。グリッパを細管孔に挿入してロボットを管板に固定させるか、あるいはグリッパを引き抜くことによって管板から離脱させる。中央ヒンジにはさらにツール支持具が取り付けられており、該ツール支持具には保守点検ツールを保持する結合具が取り付けられている。
【0013】
本発明の上記及び他の目的、特性、及び特徴、並びに動作方法、関連構成要素の機能及び部品の組み合わせは、添付図面を参照して以下の説明及び添付の特許請求の範囲を考慮することで更に明らかとなろう。図面は全て本明細書の一部を形成し、同様の参照番号は様々な図面において対応する部分を表す。しかしながら、図面は例示及び記述目的のためだけのものであり、本発明の範囲を限定するものとしては意図されていないことが明瞭に理解されよう。本明細書及び特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「a」、「an」、「the」は、文脈によって明らかにそうではないと述べられていない限り、複数も含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のマニピュレータの例示的な一実施形態の概略図である。
【0015】
【
図2】例示的な垂直チューブ・シェル型蒸気発生器の一部破断斜視図である
【0016】
【
図3】以下に説明するマニピュレータが支持された管板の半球状部分の一部を例示する簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
例えば、上、下、左、右、上方、下方、前、後、及びそれらの派生語(これらに限定されない)のような、本明細書に用いる、方向を示す用語は、図面に示す要素の配向に関するものであり、明示的に言及しない限り特許請求の範囲を限定するものではない。
【0018】
本明細書に用いる場合、2つ以上の部品又は構成要素が共に「結合されている」という記述は、それらの部品が直接に又は1つ以上の中間部品又は構成要素を介してつながれている又は共に動作することを意味するものである。
【0019】
本明細書に用いる、2つ以上の部品又は構成要素が相互に「係合する」という記述は、それらの部品が直接に又は1つ以上の中間部品又は構成要素を介して相互に力を作用させることを意味するものである。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態による、改良された管板歩行ロボットロボットの概略図である。以下でより詳細に説明するように、本発明は、保守が比較的容易であり、製造コストが安価であり、管板に沿って迅速に並進でき、かつ小型軽量であるという点で先行技術を改良したものである。
【0021】
管板歩行ロボットは、中央ヒンジ3に結合されている2つのレール1,2を含む。キャリッジ4がレール1に搭載され、また、キャリッジ5がレール2に搭載されている。非限定的な例であるが、レールに沿う方向の運動以外のキャリッジの任意の運動を制限する、例えばC字形すべり軸受32を用いて、各キャリッジを夫々のレールに搭載してもよい。キャリッジ4、5は、管板と係合してロボットを定位置に保持する少なくとも2つの「グリッパ」6を含む。中央ヒンジ3にはツール支持具7が取り付けられている。ツール支持具7には、様々な分析または保守ツール9を保持するように設計された結合具8が取り付けられている。ツールの例は、渦電流プローブ案内管や施栓用ツールである。
図1に示す導管34は、プローブ送達管である。
【0022】
各グリッパ6を管板の孔に挿入し、グリッパ・フィンガを広げることによって、対応するキャリッジを定位置に保持することができる。あるいは、各グリッパ6を孔から引き抜くことによって、対応するキャリッジを管板から離脱させることができる。一実施形態において、グリッパは米国特許第7314343号に開示されているようなカムロックである。ケーブル10を介してグリッパ6を遠隔操作することができる。別の実施形態では、キャリッジ上のグリッパをペアで動作させることができる。
【0023】
中央ヒンジ3はアクチュエータにより可動であり、例えばサーボモータまたは空気圧アクチュエータが中央ヒンジを開閉させる。アクチュエータもまた、ケーブル10を介して遠隔操作するようにしてもよい。一実施形態においては、ツール支持具7は、常に第1のレール1と第2のレール2の間の半分の角度位置にあるように中央ヒンジ3に係合されている。
【0024】
キャリッジ4、5は、キャリッジを夫々のレールに沿って移動させる駆動機構により個別に並進可能である。駆動機構は、例えばリニア駆動モータ、または対応するレールの実質的な全長に亘って延びるラック歯に作動的に接続された駆動ピニオンギヤを回転させる回転モータとすることができる。代わりにスクリューまたはベルトドライブ等の他の駆動機構を用いて、キャリッジを中央ヒンジの方へ、または中央ヒンジから離れる方向に、対応するレールに沿って推進させてもよい。キャリッジ駆動機構もまた、ケーブル10を介して遠隔操作可能である。
【0025】
本発明装置はさらに、本発明装置を管板に沿って正しく位置決めし、または移動させるために、管板に対するキャリッジと中央ヒンジの整列状態が遠隔操縦者に分かるように、各キャリッジと中央ヒンジの(例えばエンコーダ33のような)位置読出し機構を含む。本実施形態のロボットの様々な機構に対する遠隔操作は、ケーブル10を介して行われる。
【0026】
図2は、管群12を形成する複数のU字形細管13が、原子炉冷却材等の一次流体から水等の二次流体へ熱を伝えて二次流体を蒸発又は沸騰させるに必要な伝熱表面を提供する、例示的な蒸気発生器11を示す。蒸気発生器11は、垂直に配向した管状胴部14と、胴部の上端を閉鎖する上部包囲体または皿型ヘッド16と、胴部の下端を閉鎖するほぼ半球状のチャンネルヘッド17とを備えた容器より成る。胴部14の下部は直径が胴部の上部15よりも小さく、切頭円錐状の移行部18が胴部の上部と下部を連結している。チャンネルヘッド17に取り付けられた管板19は、U字形細管13の端部を受容する複数の孔20を有する。チャンネルヘッドを管群12のヘッダとして機能する2つの水室22及び23に分割するために、チャンネルヘッド17の中央には仕切板21が設けられている。水室23は一次流体入口水室であり、該水室と流体連通関係にある一次流体入口ノズル24を有する。水室22は一次流体出口水室であり、該水室と流体連通関係にある一次流体出口ノズル25を有する。一次流体は、管群12を流れた後、出口ノズル25から排出される。
【0027】
二次流体を蒸気発生器に導く給水入口構造は、供給リング30と呼ばれるほぼ水平な部分から放水ノズル31が隆起している給水入口ノズル29を備える。給水入口ノズル29を介して供給される給水は、給水リング30を通過し、放水ノズル31から排出され、先行技術の一実施形態では、蒸気から分離された水と混ざり合い、管群の外側の環状部を下って再循環される。水は、その後、管板のすぐ上から管群12に流入し、管群の間を上昇する間に加熱されて、蒸気を発生させる。一次遠心分離機26を通った蒸気は、二次分離機27を通過して、皿型ヘッド16の中央に配設された蒸気出口ノズル28に到達する。
【0028】
図3は、
図2に示した管板19の簡略図である。管板の一例示位置にある
図1に示したマニピュレータの下面が示されているが、管板歩行ロボットを管板に固定させるべく、両方のキャリッジのグリッパ(視界から隠れている)が細管の中へ延びている。
【0029】
本発明の一動作モードにおいては、中央ヒンジ部をゼロ度よりも大きいある角度に設定するが、その角度は、キャリッジ上のグリッパを夫々の細管列の細管孔に係合できるように2本のレールを管板上の予め選択された細管列に整列させる角度である。細管列は、ツール支持具7を保守点検対象の細管の上に配置するための経路をマッピングするように選択される。グリッパを使用して、一方のキャリッジに管板を把持させつつ、他方のキャリッジを管板から離脱させ、対応するレールに沿って移動させる。あるいは、細管を把持するキャリッジをそのレールに沿って移動させることによって、管板から離脱させた他方のキャリッジを、細管を把持しているキャリッジに付随するレールに沿って移動させる。この動作モードにより、ツール、グリッパを引き抜いたキャリッジ、またはその両方を移動させ、特定の細管または細管列に整列させることができる。所望の位置に到達すると、グリッパを引き抜いていたキャリッジを、そのグリッパを挿入して広げることにより、管板と係合させ、先に固定したキャリッジを、対応するグリッパを引き抜いて管板から離脱させることにより、新たな地点へ移動させることができる。このように、キャリッジの係合と、レールに沿う移動とを交互に繰り返してロボットを管板上において「歩行」させることにより、ツールを管板の所望の場所に送達することができる。さらに、管板を把持するキャリッジを選択し、中央ヒンジを開くか、または閉じることによって、管板歩行ロボットの向き及び移動を、管板に平行な平面内で、時計回りまたは反時計回りの任意所望の方向に変更することができる。
【0030】
以上の基本動作モードに加えて、ロボットは中央ヒンジを閉じてキャリッジを同じ方向に整列させることにより、キャリッジのグリッパを平行な2列の細管に係合させることができる。この動作モードでは、中央ヒンジを開かずに、キャリッジの摺動とグリッパによる固定とを交互に繰り返すことによって、ロボットを迅速に並進させることが可能である。例えば、第1のキャリッジをグリッパにより管板に固定したら、第2キャリッジを対応するレールに沿って、中央ヒンジの方へ、または中央ヒンジから離れる方向に並進させることができる。次いで、第2のキャリッジをグリッパにより管板に固定させ、第1のキャリッジを、グリッパを引き抜いて管板から離脱させることができる。その後、第1のキャリッジを中央ヒンジの方へ、または中央ヒンジから離れる方向に並進させることにより、管板に固定するグリッパの位置を変更することができる。この動作モードにより、管板歩行ロボットは2本のレールの方向に沿って前方または後方の何れかに迅速に移動することが可能である。
【0031】
現時点において最も実用的であり、かつ好ましいと考えられる実施形態に基づいて、本発明の詳細を以上に説明したが、上記した詳細はあくまでも説明のためのものであり、本発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、付記の特許請求範囲に記載の範囲を逸脱しない変更および等価構成をも含むものである。例えば、可能な限りにおいて、本発明の任意の実施形態の1つまたは2つ以上の構成要件を他の実施形態の1つまたは2つ以上の構成要件と組み合わせることも可能である。