特許第6180520号(P6180520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6180520ロチゴチンを含有した経皮吸収製剤(Transdermalcompositioncomprisingrotigotine)
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  • 特許6180520-ロチゴチンを含有した経皮吸収製剤(Transdermalcompositioncomprisingrotigotine) 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180520
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ロチゴチンを含有した経皮吸収製剤(Transdermalcompositioncomprisingrotigotine)
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/381 20060101AFI20170807BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20170807BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170807BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20170807BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20170807BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20170807BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20170807BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   A61K31/381
   A61P25/16
   A61P43/00 111
   A61K47/10
   A61K47/12
   A61K47/32
   A61K47/34
   A61K9/70 401
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-520068(P2015-520068)
(86)(22)【出願日】2013年7月5日
(65)【公表番号】特表2015-522012(P2015-522012A)
(43)【公表日】2015年8月3日
(86)【国際出願番号】KR2013006001
(87)【国際公開番号】WO2014007579
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2016年6月17日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0073295
(32)【優先日】2012年7月5日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513013779
【氏名又は名称】エスケー ケミカルス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086759
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 喜平
(74)【代理人】
【識別番号】100109128
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 功
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(74)【代理人】
【識別番号】100100608
【弁理士】
【氏名又は名称】森島 なるみ
(74)【代理人】
【識別番号】100142099
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 真一
(74)【代理人】
【識別番号】100152803
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100154184
【弁理士】
【氏名又は名称】生富 成一
(74)【代理人】
【識別番号】100123548
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 晃二
(74)【代理人】
【識別番号】100169535
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】キム,へ―ミン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ヨン―ユン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ウォン―ノ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨ―ジン
(72)【発明者】
【氏名】オー,ジュン―ギョ
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジョン―ソプ
(72)【発明者】
【氏名】キム,フン―テク
【審査官】 伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−528413(JP,A)
【文献】 特表2005−535687(JP,A)
【文献】 特表2010−532390(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/044336(WO,A1)
【文献】 国際公開第97/037659(WO,A1)
【文献】 特開2009−029768(JP,A)
【文献】 特開2008−266198(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/139411(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/381
A61K 9/70
A61K 47/10
A61K 47/12
A61K 47/32
A61K 47/34
A61P 25/16
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロチゴチンを結晶防止剤と混合する段階を含むロチゴチンの結晶防止方法であって、
前記結晶防止剤がオレイン酸であり、
前記ロチゴチンと前記結晶防止剤を10:0.1〜10の重量比で混合して、前記ロチゴチンの結晶化を抑制し、
但し、ロチゴチンをポリビニルピロリドンと混合することは含まない、前記方法
【請求項2】
ロチゴチンと結晶防止剤を有効成分として含む経皮吸収製剤であって、
前記結晶防止剤がオレイン酸であり、
前記ロチゴチンと前記結晶防止剤が10:0.1〜10の重量比で混合されて、前記ロチゴチンの結晶化が抑制され、
但し、ポリビニルピロリドンを含まない、前記経皮吸収製剤
【請求項3】
ロチゴチンを結晶防止剤と混合することを含む経皮吸収製剤の製造方法であって、
前記結晶防止剤がオレイン酸であり、
前記ロチゴチンと前記結晶防止剤を10:0.1〜10の重量比で混合して、前記ロチゴチンの結晶化を抑制し、
但し、ロチゴチンをポリビニルピロリドンと混合することは含まない、前記方法
【請求項4】
前記ロチゴチンをさらにエタノールと混合する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
チゴチン、結晶防止剤、及び粘着剤を含む薬剤含有粘着剤層と、
前記薬剤含有粘着剤層を支持する基材を含む経皮治療システムであって、
前記結晶防止剤がオレイン酸であり、
前記薬剤含有粘着剤層が、前記ロチゴチン、前記結晶防止剤、及び前記粘着剤を、10:0.1〜10:40〜96.5の重量比で含み、前記ロチゴチンの結晶化が抑制され、
但し、ポリビニルピロリドンを含まない、前記経皮治療システム
【請求項6】
前記粘着剤は、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤及びエチレンビニルアセテート粘着剤からなる群より選ばれた粘着剤であることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ゴム系粘着剤はスチレン系粘着剤であることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記結晶防止剤は、前記薬剤含有粘着剤層の総重量に対して、0.1重量%より多く、37重量%以下含まれることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2012年07月05日に出願された大韓民国特許出願第10-2012-0073295号に基づく優先権を主張するものであり、前記明細書全体は本出願の参考文献である。
【0002】
本発明は、ロチゴチン結晶を防止する方法に関するものであり、より詳しくはロチゴチンを脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及びこれの誘導体からなる群より選ばれた一つ以上の結晶防止剤と混合する段階を含むロチゴチン結晶析出防止方法、ロチゴチン及び結晶防止剤を含む経皮吸収製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
(-)-5,6,7,8-テトラヒドロ-6-[プロピル-[2-(2-チエニル)エチル]アミノ]-1ナフタレノールであるロチゴチンは、非エルゴリン系ドーパミン作動薬(non-ergoline dopamine agonist)として、パーキンソン病(Parkinson's disease(PD))及び下肢不安症候群(restless legs syndrome(RLS))の治療のために使用される。
【0004】
このようなロチゴチンはパッチ剤形で市販されている。パッチ形態の経皮組成物は米国特許、特許番号US7413747Bに開示されている。さらに、市販されているパッチはシリコーン粘着剤を使用し、これはEP1033978Bに掲載されている。しかし、市販されるパッチは常温保管条件でロチゴチンの結晶が析出されるので、産業的流通に必要な保管期間の確保が難しい短所がある。これを解決するためにWO2011/076879特許ではポリビニルピロリドンなどの高分子を添加したロチゴチン経皮投与組成物を開示している。
【0005】
市販中のロチゴチン経皮投与組成物製品はポリビニルピロリドンを含んでいるが、ポリビニルピロリドンは薬剤貯蔵層の粘度を高める役割もする。従って、塗布が均一にならないこともあって、均一に薬剤貯蔵層を混合するのにも難しさがある。従って、前記問題点を代替して、結晶を防止することができる法策が引き続き研究されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、本発明者らはロチゴチンパッチ剤の保管安定性を向上させるための方法に関して研究を重ねていくうちに、ロチゴチンを脂肪アルコール、脂肪酸などと混合してパッチ剤を製造する場合、ロチゴチンの結晶が発生しないことを発見して本発明を完成した。
【0007】
従って、本発明の目的は、ロチゴチンを脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及びこれの誘導体からなる群より選ばれた一つ以上の結晶防止剤と混合する段階を含むロチゴチンの結晶防止方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、ロチゴチンと、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及びこれの誘導体からなる群より選ばれた一つ以上の結晶防止剤とを有効成分として含む経皮吸収製剤を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、ロチゴチンを脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及びこれの誘導体からなる群より選ばれた一つ以上の物質と混合する段階を含む経皮吸収製剤製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及びこれの誘導体からなる群より選ばれた一つ以上の結晶防止剤、ロチゴチン及び粘着剤を含む薬剤含有粘着剤層、並びに前記薬剤含有粘着層を支持する基材を含む経皮治療システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明は、ロチゴチンを脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及びこれの誘導体からなる群より選ばれた一つ以上の結晶防止剤と混合する段階を含むロチゴチンの結晶防止方法を提供する。
【0012】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、ロチゴチンと、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及びこれの誘導体からなる群より選ばれた一つ以上の結晶防止剤とを有効成分として含む経皮吸収製剤を提供する。
【0013】
さらに、本発明の他の目的を達成するために、本発明は、ロチゴチンを脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及びこれの誘導体からなる群より選ばれた一つ以上の物質と混合する段階を含む経皮吸収製剤製造方法を提供する。
【0014】
さらに、本発明の他の目的を達成するために、本発明は、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及びこれの誘導体からなる群より選ばれた一つ以上の結晶防止剤、ロチゴチン及び粘着剤を含む薬剤含有粘着剤層、並びに前記薬剤含有粘着剤層を支持する基材を含む経皮治療システムを提供する。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明は、ロチゴチンを脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及びこれの誘導体からなる群より選ばれた一つ以上の結晶防止剤と混合する段階を含むロチゴチン結晶防止方法を提供する。
【0017】
本発明のロチゴチンの結晶防止方法は、ロチゴチンを脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及びこれの誘導体からなる群より選ばれた一つ以上の結晶防止剤と混合する段階を含むことを特徴とする。
【0018】
ロチゴチン((-)-5,6,7,8-テトラヒドロ-6-[プロピル-[2-(2-チエニル)エチル]アミノ]-1ナフタレノール)は下記化学式1のような構造を有し、非エルゴリン系ドーパミン作動薬(non-ergoline dopamine agonist)として、パーキンソン病(Parkinson's disease(PD))及び下肢不安症候群(restless legs syndrome(RLS))の治療のために使用される。
【0019】
【化1】
【0020】
本発明の結晶防止剤は、ロチゴチンの結晶化を抑制する物質であって、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドまたはその誘導体から選ばれ得る。好ましくは本発明の結晶防止剤の脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドは、炭素の個数が一つ以上であるものを含み、40個以下のものを含み得る。さらに、これらの群には炭素間の二重結合を含まないか、または一つ以上を含むことができる。より好ましくは、本発明の結晶防止剤は、オレイン酸、オレインアルコール、カプリル酸またはヘキサン酸からなる群より選ばれたものでもあり得る。
【0021】
脂肪アルコールは8乃至22個の炭素が鎖状に結合したアルコールを意味する。本発明の脂肪アルコールは、例えば、capryl alcohol、2-ethyl hexanol、Lauryl alcohol、Tridecyl alcohol、Myristyl alcohol、oleyl alcohol、linoleyl alcoholでもあって、好ましくは、オレイルアルコール(oleyl alcohol)でもあり得る。
【0022】
脂肪酸は長い脂肪族鎖にカルボキシル基が付いているものを意味し、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸をすべて含む。本発明の脂肪酸は例えば、Myristoleic acid、Palmitoleic acid、Sapienic acid、Oleic acid、Elaidic acidでもあって、好ましくはオレイン酸でもある。
【0023】
脂肪酸エステルは脂肪酸の水素をアルキル群に置換したものを意味し、本発明の脂肪酸エステルは例えば、isopropyl palmitate、isopropyl laurate、isooctyl palmitate、isooctyl stearate、lauryl stearate、butyl stearate、methyl n-caprylate、methyl n-caprate、methyl laurate、methyl stearate、methyl oleateでもある。
【0024】
脂肪酸アミドは脂肪酸の水素をアミド群に置換したものを意味し、本発明の脂肪酸アミドは例えば、oleamide、stearamide、erucamide、behenamide、N-oleylpalmitamide、N-stearylerucamideでもある。
【0025】
前記結晶防止剤はロチゴチンの結晶化を効果的に遮断して、長期保管安定性が高いロチゴチン含有パッチ剤を製造できるようにする。脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどがロチゴチンと混合される場合に、ロチゴチンの結晶化が遮断されるということは、本発明で最初に公開されるものである。
【0026】
ロチゴチンと混合される結晶防止剤の量は特に制限はされないものの、好ましくはロチゴチンと結晶防止剤の重量比は10:0.1乃至40でもあって、さらに、好ましくは10:0.1乃至30でもあり、最も好ましくは10:0.3乃至20でもある。結晶防止剤が、0.1重量部未満で添加される場合、ロチゴチンの結晶化される可能性が高くなり、40重量部を越える場合、ロチゴチンの皮膚透過率が落ちて治療効果が劣ることもあり得る。
【0027】
本発明の方法は、ロチゴチンが有効成分として含まれた多様な剤形に適用が可能であり、好ましくはパッチ剤、液剤、軟膏剤などに適用できる。
【0028】
一方、本発明は、ロチゴチン及び結晶防止剤を有効成分として含む経皮吸収製剤を提供する。
【0029】
本発明の経皮吸収製剤は有効薬剤成分として、ロチゴチンを含み、皮膚貼付方式で簡便に薬剤を人体内に投与することができて、薬効を長時間保つことができる。さらに、結晶防止剤を有効成分として含み、ロチゴチンが結晶化されないので長時間安定的に保管が可能である。
【0030】
本発明の経皮吸収製剤の有効成分であるロチゴチン及び結晶防止剤に関しては前述した通りである。
【0031】
一方、本発明の経皮吸収製剤は、ロチゴチン及び結晶防止剤の他に粘着剤を追加して含め得る。
【0032】
粘着剤は、本発明の経皮吸収製剤を皮膚に持続的に接触させて有効成分の吸収が円滑になされるようにするもので、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、エチレンビニルアセテート粘着剤、スチレン系粘着剤及びシリコン系粘着剤などを含むことができる。より好ましくはスチレン系粘着剤でもある。“スチレン系粘着剤”はスチレン系ブロックコポリマーを基本物質とする粘着剤である。前記スチレン系ブロックコポリマーはこれに限定はされないが、スチレンーイソプレン(styrene-isoprene)、スチレンーブタジエン(styrene-butadiene)、スチレンーイソプレンースチレン(styrene-isoprene-styrene)、スチレンーブタジエンースチレン(styrene-butadiene-stydene)、スチレンーイソプレンースチレンーイソプレン(styrene-isoprene-styrene-styrene)及びスチレンーブタジエンースチレンーブタジエンーからなる群より選ばれる一つ以上のブロックコポリマーでもある。
【0033】
本発明の粘着剤の好ましい含量は、ロチゴチン10重量部当り40乃至500重量部の比率で含まれることが好ましい。
【0034】
本発明の経皮吸収製剤は、皮膚透過促進剤、賦形剤、刺激緩和剤または担体を追加して含むことができる。
【0035】
前記皮膚透過促進剤は、薬剤の皮膚透過を促進するためのものであって、例えば、hydrophilic organic solvent、aprotic solvent、fatty acid、fatty alcohol、fatty acid ester、pyrrolidone、essential oil、surfactant、phospholipidsなどを使用することができる。
【0036】
本発明の経皮吸収製剤に含まれる担体は、生体的合成担体であり、これに限定はされないが非経口投与用担体でもあって、非経口投与用担体は水、適合したオイル、食塩水、水性グルコース及びグリコールなどを含むことができる。その他の薬学的に許容される担体には下記の文献に記載されているところを参考にすることができる(Remington's Pharmaceutical Sciences、19th ed.、Mack Publishing Company、Easton、PA、1995)。生体適合性担体の濃度はこれに限定はされないが、約2-70重量%の範囲でもある。
【0037】
本発明の経皮吸収製剤は、パッチ剤、液剤、軟膏剤などに剤形化が可能であり、好ましくはパッチ剤に剤形化することができる。
【0038】
さらに、本発明は、ロチゴチンを脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及びこれの誘導体からなる群より選ばれた一つ以上の結晶防止剤と混合する段階を含む経皮吸収製剤製造方法を提供する。
【0039】
本発明の製造方法は、ロチゴチンを脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及びこれの誘導体からなる群より選ばれた一つ以上の結晶防止剤と混合する段階を含むことを特徴とする。ロチゴチン及び結晶防止剤に関しては前述の通りである。
【0040】
本発明の製造方法は、ロチゴチン及び前記結晶防止剤混合物に粘着剤を混合する段階を含む製造方法でもある。
【0041】
本発明の製造方法によれば、ロチゴチンが結晶析出されず、長期安定性が大きく向上された経皮吸収製剤を製造することができる。
【0042】
一方、本発明は、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及びこれの誘導体からなる群より選ばれた一つ以上の結晶防止剤、ロチゴチン及び粘着剤を含む薬剤含有粘着剤層、並びに薬剤含有粘着剤層を支持する基材を含む経皮治療システムを提供する。
【0043】
本発明の経皮治療システムは、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及びこれの誘導体からなる群より選ばれた一つ以上の結晶防止剤、ロチゴチン及び粘着剤を含む薬剤含有粘着剤層、並びに前記薬剤含有粘着剤層支持する基材を含むことを特徴とし、ロチゴチンの皮膚吸収を通じてパーキンソン病痴呆、下肢不安症候群などの疾患に治療効果がある。
【0044】
本発明の薬剤含有粘着剤層は、有効薬剤であるロチゴチン、ロチゴチンの結晶析出を防止する結晶防止剤、及び粘着剤を含むことを特徴とする。本発明におけるロチゴチン、結晶防止剤及び粘着剤に関しては前述した通りである。
【0045】
本発明の薬剤治療システムにおいて、結晶防止剤の含量は、特に制限はされないが、好ましくは薬剤含有粘着剤層の総重量に対して、0.1重量%より多く、37重量%以下に含まれることができる。0.1重量%以下に添加される場合、ロチゴチンが4週内に結晶化される可能性が高く、37重量%を超過する場合、ロチゴチンの皮膚透過率が落ちる。
【0046】
本発明の薬剤含有粘着剤層のロチゴチン、結晶防止剤及び粘着剤の比率は特に制限はされないが、好ましくはロチゴチン、結晶防止剤及び粘着剤の重量比は10:0.1乃至40:40乃至500でもある。より好ましくは結晶防止剤の比率は0.3乃至20でもある。
【0047】
粘着剤が前記比率より低い場合、粘着力が落ちて薬剤含有粘着剤層が皮膚によく付着せず、前記比率より高い場合には皮膚付着が強すぎて薬剤伝達システムを皮膚に付着した後、脱着する際に刺激的があったり、薬剤放出が遅延することがある。
【0048】
本発明の経皮治療システムは、薬剤含有粘着剤層を支持する基材を含むことを特徴とする。このような基材には、公知のパッチ剤などに使用される基材を使用することができ、前記本発明の基材は、薄くて柔軟性があって薬剤含有粘着剤層と反応性がなく、皮膚との反応性もなく、アレルギー反応を引き起こさないことが好ましい。本発明の基材には例えば、不織布、ポリエチレンテレフタレート、軟質ポリビニルクロライド、ポリウレタン、ポリエステル、シリコーンコーティングフィルムを使用することができる。好ましくはシリコーンコーティングフィルムまたはポリエチレンテレフタレート(PET)でもある。
【0049】
本発明の経皮治療システムのロチゴチンの含量は、患者の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態、疾患程度などによって異なることがある。例えば、皮膚に1日1回または複数回適用して、0.5乃至100mgの活性物質を投与するように含めることができる。
【0050】
本発明の一実施例では、ロチゴチン、エタノール、ヘキサン、ポリイソブチレン及び結晶防止剤を混合して薬剤含有粘着剤層を製造し、これをシリコーンコーティングフィルムに塗布後、PETフィルムで覆って経皮治療システムを製造し、加速試験条件で2週、または4週間保管して安定性を試験した。その結果、結晶防止剤が含まれていない対照群ではロチゴチンの結晶が析出されたのに対して、本発明の経皮治療システムでは結晶が析出されないことを確認した。
【0051】
本発明の他の一実施例では、経皮治療システムに含まれる結晶防止剤の含量を多様にして、結晶防止剤の含量変化によるロチゴチンの安定性を測定した。その結果、結晶防止剤が薬剤含有粘着剤層の総重量に対して、0.1重量%より多く、37重量%以下に含まれる範囲で、ロチゴチン結晶が析出されないことを確認した。前記重量%からロチゴチン結晶防止剤の重量比は10:0.1乃至10:40が適当であることが分かった。より好ましくは10:0.1乃至10:30である。
【発明の効果】
【0052】
本発明は、ロチゴチンの結晶化を防止する方法、ロチゴチン及び結晶防止剤を有効成分として含む経皮吸収製剤、これの製造方法及び結晶防止剤、ロチゴチン及び粘着剤を含む薬剤含有粘着剤層及び基材を含む経皮治療システムを提供する。本発明の方法及びシステムは、ロチゴチンの析出を防止し、長期保管安定性を増加させるため、ロチゴチン含有パッチ剤などの製造に効果的に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、本発明の結晶防止剤の種類別に結晶防止効果を実験した結果の写真である(比較例1:結晶防止剤未添加群、実施例1−1:Oleic acid添加群、実施例1−2:Caprylic acid添加群、実施例1−3:Hexanoic acid添加群)。
図2図2は、結晶防止剤の比率による結晶防止効果を実験した結果の写真である(比較例1:結晶防止剤未添加群、比較例2:結晶防止剤0.1%添加群、実施例2−1:Oleic acid 0.6%添加群、実施例2−2:Oleic acid 5.9%添加群、実施例2−3:Oleic acid 8.6%添加群、実施例2−4:Oleic acid 15.9%添加群)。
図3図3は、結晶防止剤の比率によるヒトの皮膚における透過度を実験した結果である。(比較例3:結晶防止剤37.0%添加群、実施例2−1:Oleic acid 0.6%添加群、実施例2−2:Oleic acid 5.9%添加群、実施例2−3:Oleic acid 8.6%添加群、実施例2−4:Oleic acid 15.9%添加群)。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0055】
ただし、下記実施例は本発明を例示するのみであって、本発明の内容は、下記実施例に限定されるものではない。
【0056】
<実施例1>
結晶防止剤を含有したパッチの製造及び結晶評価
下記表1により3種の結晶防止剤を添加したロチゴチン経皮剤を製造した。
【0057】
【表1】
【0058】
比較例1はロチゴチン300mgとethanol 600mgを混合してロチゴチンを完全に溶かした後、hexane 1gを添加して均一な溶液を作った。実施例1−1乃至1−3はロチゴチン300mgとethanol 300mg及び結晶防止剤300mgを混合してロチゴチンを完全に溶かした後、hexane 1gを添加して均一な溶液を作った。この溶液にstyrene系粘着剤を4.2gずつ投与して600rpm以上で10分間混合して経皮吸収製剤を製造した。製造された経皮吸収製剤を室温で放置して、気泡が抜けるようにした。気泡が除去されたのを確認して、ロチゴチンが単位面積(1cm2)当り0.4〜0.5mg含まれるように、気泡が抜けた混合物(経皮吸収製剤)をシリコーンコーティングフィルムに塗布して、ポリエステル(PET)filmで覆ってパッチを製造した。この製造した経皮投与システム(パッチ)を10cm2の円形に成型してペトリ皿に入れ、40℃、相対湿度60%の加速試験条件で保管し(2週、4週)、結晶析出を目で観察し、デジタルカメラで撮影した。
【0059】
実験の結果、図1に示した通り、結晶防止剤を添加しない比較例1では40℃、相対湿度60%の加速試験条件で3日間保管後結晶が析出されたものの、脂肪酸類の実施例1−1乃至1−3では2週、4週保管しても結晶が観察されなかった。従って、結晶防止剤を添加することにより、ロチゴチン経皮剤の保管性が向上することを確認した。
【0060】
<実施例2>
結晶防止剤の比率別パッチ製造及び結晶評価
結晶防止剤の比率によるロチゴチンの結晶程度を測定した。
【0061】
表2に記載された成分含量によりパッチを製造した。具体的には、実施例1と同一の方法でシリコーンコーティングフィルムにロチゴチン、オレイン酸及びStyrene系粘着剤(Durotak 87-6911(Henkel))が塗布された薬剤含有マトリックス層(ロチゴチン含量0.4〜0.5mg/cm2)を形成し、ポリエステル材質の支持フイルムで覆って経皮吸収製剤が塗布されたパッチを製造した。製造されたパッチを10cm2の円形に成型してペトリ皿に入れ、40℃、相対湿度60%の加速試験条件で保管して(2週)、結晶析出を目で観察し、デジタルカメラで撮影した。
【0062】
【表2】
【0063】
実験の結果、図2に示した通り、オレイン酸のような結晶防止剤を添加しない経皮吸収製剤(比較例1)は保管中に結晶が析出した。オレイン酸が全体のパッチ固形分に対して0.1%含有された比較例2も、同じく40℃、相対湿度60%の条件下では、保管4週後に活性物質の結晶を観察することができた。しかし、オレイン酸の比率が0.6%以上の経皮吸収製剤(表2の実施例2−1乃至2−4)では、4週またはそれ以上の保管期間でも、活性物質の結晶を観察することができなかった。従って、結晶防止剤が含まれた本発明の経皮吸収製剤は、常温流通でも結晶化しないため、保管便宜性が大きく向上することが確認された。
【0064】
<実施例3>
結晶防止剤の比率別パッチのIn vitroでの透過実験
【0065】
前記実施例2で製造した経皮吸収製剤に対する試験管内での皮膚透過度を、フランツセル(Franz cell、vertical diffusion cell、hanson research)を使用して評価した。製造した経皮吸収製剤をそれぞれ1cm2の大きさに成型した後、ヒトの皮膚(human cadavar skin)に固定して、経皮吸収製剤から皮膚を通過して拡散したフランツセル内部の検液を、時間毎に自動採取した。採取された検液は遠心分離を用いて前処理した後、高性能液体クロマトグラフィーにより分析した。
【0066】
その結果、図3に示した通り、結晶防止剤比率によるロチゴチンの皮膚透過度を確認することができる。オレイン酸の比率が全体処方の37%である経皮吸収製剤(比較例3)では、相対的に低いロチゴチンの皮膚透過度を示し、結晶防止剤の比率が低いほど相対的に速やかなロチゴチンの放出パターンを示した。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、ロチゴチンの結晶化を防止する方法、ロチゴチン及び結晶防止剤を有効成分として含む経皮吸収製剤、これの製造方法及び結晶防止剤、ロチゴチン及び粘着剤を含む薬剤含有粘着剤層、並びに基材を含む経皮治療システムを提供する。本発明の方法及びシステムはロチゴチンの析出を防止し、長期保管安定性を増加せることによりロチゴチン含有パッチ剤などの製造に効果的に適用することができ、産業上の利用可能性が高い。

図1
図2
図3