(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180532
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】貴金属オキサラート錯体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/41 20060101AFI20170814BHJP
C07C 55/07 20060101ALI20170814BHJP
B01J 31/22 20060101ALI20170814BHJP
C07F 15/00 20060101ALN20170814BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20170814BHJP
【FI】
C07C51/41
C07C55/07
B01J31/22 Z
!C07F15/00 F
!C07B61/00 300
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-534959(P2015-534959)
(86)(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公表番号】特表2016-500664(P2016-500664A)
(43)【公表日】2016年1月14日
(86)【国際出願番号】EP2013069787
(87)【国際公開番号】WO2014053351
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2016年7月25日
(31)【優先権主張番号】102012019560.5
(32)【優先日】2012年10月5日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/710,226
(32)【優先日】2012年10月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512069429
【氏名又は名称】ヘレーウス プレシャス メタルズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Precious Metals GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】リヒャート ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン エーヴァイナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター レスィヒ
(72)【発明者】
【氏名】イェアク フクス アラメダ
【審査官】
早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−279475(JP,A)
【文献】
特開昭63−022047(JP,A)
【文献】
特開2003−183291(JP,A)
【文献】
特表2007−512318(JP,A)
【文献】
Chem. Ber.,1966年,99,3402−3407
【文献】
Chem. Ber.,1966年,99,3408−3418
【文献】
Inorganica Chimica Acta,2004年,357,853−858
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/41
C07C 55/07
C07F 15/00
B01J 31/22
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金前駆体とシュウ酸及び/又はシュウ酸塩を反応させる白金オキサラート錯体の製造方法において、前記白金前駆体が酸化白金水和物(ヒドロキソ白金(IV)酸)又はその塩であり、生成物に相応する白金オキサラート錯体を自己触媒として添加することを特徴とする前記製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の白金オキサラート錯体の製造方法において、反応を0〜56℃の温度で実施することを特徴とする前記製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法において、
第一工程において、白金前駆体及び白金オキサラート錯体の水性溶液又は懸濁液を製造し、
第二工程において、前記第一工程からの前記水性溶液又は懸濁液を反応温度に温度処理し、かつ
第三工程において、シュウ酸及び/又はシュウ酸塩を添加することを特徴とする前記方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の方法において、自己触媒を、白金前駆体溶液中の白金に対して1×10-4〜5×10-2モル当量の量で添加することを特徴とする前記方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の方法において、シュウ酸及び/又はシュウ酸塩が、シュウ酸、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸アンモニウム及びシュウ酸カリウム及びそれらの混合物からなる群から選択されていることを特徴とする前記方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の方法において、反応を30〜45℃の温度で実施することを特徴とする前記方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の方法において、シュウ酸を、白金前駆体中の白金に対して1.8〜2.8モル当量の量で添加することを特徴とする前記方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の方法において、
1)酸化白金水和物(ヒドロキソ白金(IV)酸)の水中懸濁液を製造し、
2)白金オキサラート錯体の水中溶液を製造し、
3) 1)からの懸濁液及び2)からの溶液を一緒にし、生じる混合物を反応温度に温度処理し、
4)酸化白金水和物(ヒドロキソ白金(IV)酸)中の白金に対して0.4〜1.4モル当量のシュウ酸の第1ポーションを添加し、及び
5)酸化白金水和物(ヒドロキソ白金(IV)酸)中の白金に対して0.1〜1.4モル当量のシュウ酸の第2ポーションを添加し、及び
6)任意に、酸化白金水和物(ヒドロキソ白金(IV)酸)中の白金に対して1.8〜2.8モル当量のシュウ酸の全量が添加されるまで、工程5)を1乃至複数回繰り返す
ことを特徴とする前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属オキサラート錯体の製造に関する。貴金属オキサラート錯体は、以下では、簡略化のために、貴金属オキサラートとも称される。本発明は、特に、貴金属前駆体及びシュウ酸及び/又はシュウ酸塩からの貴金属オキサラート錯体の製造に関する。
【0002】
貴金属前駆体及びシュウ酸及び/又はシュウ酸塩からの貴金属オキサラート錯体の製造は、長い間知られている。白金オキサラート錯体の製造は、通常は、酸化白金水和物(ヒドロキソ白金(IV)酸、ジヒドロゲンヘキサヒドロキソ白金酸塩(IV)、ヒドロキソ白金酸)と、シュウ酸との60℃の温度での反応により行われる(K. Krogmann, P. Dodel, Chem. Ber. 1966, 99, 3408−3418)。
【0003】
EP 0 254 935 A1は、大きい粒径を有するシュウ酸銀の製造方法を記載する。この方法によれば、銀塩及びシュウ酸又はシュウ酸塩は、5を超えないpH値で反応せしめられる。この反応は0〜80℃の温度、好ましくは40〜60℃の温度で実施される。
【0004】
貴金属前駆体及びシュウ酸及び/又はシュウ酸塩からの貴金属オキサラート錯体の製造は、熱及びCO
2が形成される発熱反応である。この場合に、温度は、貴金属オキサラート錯体の分解点を超えて上昇することがあり、それによって同時に更なるCO
2が放出される。この関連において、例えばSano, Isamu, Bulletin, 15 (1940), 196頁〜、「On the Catalytic Decomposition of Oxalic Acid by Colloidal Platinum」及びSzabo, Z.G.及びBiro−Sugar, E., Zeitschrift fuer Elektrochemie Bd. 50, Nr. 8, 1956, 869−874頁, 「Kinetik der thermischen Zersetzung von Silberoxalat」を参照のこと。
【0005】
したがって、安全技術的理由から、大工業規模での反応の実施の際には、反応の間の熱の発生を原因とする生成物の分解が生じないことを考慮しなくてはならない。
【0006】
したがって、本発明の課題は、大工業規模で実施できる、貴金属オキサラート錯体の製造方法を提供することである。
【0007】
したがって、制御された反応実施を可能にする方法が開発されることが望ましい。合成の際に発生するガス量及び熱量が反応器から確実に排出できることが確実にされるべきである。
【0008】
前記課題は、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。本発明の更なる態様は、下位請求項によって定義される。
【0009】
本発明によれば、貴金属前駆体がシュウ酸及び/又はシュウ酸塩と反応せしめられ、そして、貴金属オキサラートが自己触媒として反応混合物へと導入される、貴金属オキサラート錯体の製造方法が提供される。
【0010】
本発明によれば、原料として、貴金属前駆体及びシュウ酸及び/又はシュウ酸塩が使用される。多くの出発材料が考えられ、ここで原料である貴金属前駆体及びシュウ酸及び/又はシュウ酸塩は、勿論のこと、最終生成物である貴金属オキサラートとは区別される。
【0011】
貴金属との概念は、特に典型的な貴金属であるPt、Pd、Ir、Rh、Os、Ru、Ag及びAuを含むが、しかし、半金属であるReも含む。好ましい貴金属は、銀、パラジウム及び白金であり、特に好ましいのは白金である。
【0012】
貴金属前駆体の例は、貴金属塩及び貴金属酸化物水和物である。貴金属塩の例は、貴金属ニトラート及び貴金属ラクタート又はそれらの混合物である。貴金属酸化物水和物及び1又は複数の貴金属塩からの混合物を使用することも考えられる。しかし、貴金属酸化物水和物、特に酸化白金水和物が好ましいことが判明し、これらはヒドロキソ白金(IV)酸とも称される(Gmelin, Verlag Chemie GmbH, Berlin 1940, 47−48頁を参照のこと)。どの塩が使用されるかは、貴金属の種類にも依存する。そして、例えば、硝酸銀から銀オキサラートが製造される。白金オキサラートの出発材料として、好ましくはヒドロキソ白金(IV)酸又はその塩、例えばK
2Pt(OH)
6、Na
2Pt(OH)
6等が使用される。基本的に遊離酸が好ましい。
【0013】
シュウ酸塩は、例えばシュウ酸ナトリウム、シュウ酸アンモニウム又はシュウ酸カリウム又はそれらの混合物であってよい。しかし、シュウ酸及び1又は複数のシュウ酸塩からの混合物を使用することもできる。ここでも、好ましい原料は、貴金属の種類に依存する。そして、例えばシュウ酸銀の製造には好ましくはシュウ酸アンモニウムが使用できる。しかし、基本的に、遊離シュウ酸の使用が特に好ましい。そして、白金オキサラートの製造のためにも特に好ましくはシュウ酸が使用される。
【0014】
本発明によれば、貴金属酸化物水和物及びシュウ酸からの原料組み合わせが特に好ましい、それというのは、貴金属オキサラートの他に単に二酸化炭素及び水だけが発生するからである。
【0015】
特に好ましくは、シュウ酸又はシュウ酸塩は、適した化学量論比で添加される。白金オキサラート錯体の製造の場合には、このことは、シュウ酸又はシュウ酸塩が、白金前駆体の形の白金に対して1.8〜2.8モル当量で添加されることを意味する。この反応では、種々のジオキサラト白金酸又は白金オキサラート錯体からの混合物が発生する。そのような混合物の詳細な説明は、K.Krogmann, P.Dodel, Chem. Ber. 1966, 99, 3402−3407及び3408−3418に見出される。
【0016】
どのような形でシュウ酸及び/又はシュウ酸塩が添加されるかは、製造すべき貴金属オキサラート錯体に依存する。好ましくは、水溶液の形又は固形の形で添加される。シュウ酸は好ましく、そして、好ましくは固形の形でシュウ酸二水和物として使用される。
【0017】
この反応は、貴金属オキサラート錯体の分解温度を下回る温度で実施される。具体的な場合の反応温度での安全マージンの決定のために、危険性評価が考慮され、前記評価は、重要な方法技術的パラメーター、装置技術的パラメーター、安全技術的考察並びに安全技術的データ、例えば貴金属オキサラート錯体の分解温度又は分解範囲を取り入れている。利用可能なデータに依存して、反応温度は分解温度に近似させることができる。
【0018】
したがって、反応は、好ましくは貴金属オキサラート錯体の分解温度を下回る温度で実施される。この場合に、反応温度及び分解温度の間の差は少なくとも1℃であり、好ましくはこの差は少なくとも5℃である。この分解温度は、分解開始の温度として定義されており、ここで、分解開始は長期示差熱分析を用いてガラスアンプル中で加熱速度0.05K/分でDIN 51007に応じた温度−示差−熱分析に応じて決定される。貴金属前駆体及びシュウ酸及び/又はシュウ酸塩の間の反応にとっては0℃〜56℃、特に好ましくは30℃〜52℃、特に好ましくは35〜45℃の温度範囲が好ましいことが判明した。
【0019】
特に、既に57℃の温度で分解する(図参照)白金オキサラート錯体にとっては、反応が好ましくは56℃までの、特に好ましくは52℃までの、特にとりわけ好ましくは45℃までの温度で実施されることが適切である。この反応は、0℃を上回る、30℃を上回る、特に好ましくは35〜42℃の温度で実施される。
【0020】
貴金属オキサラート錯体の分解温度は、本発明の意味合いにおいて、DIN51007(1994年6月)に応じて長期示差熱分析(DTA)を用いて決定することができる。この決定は、生成物溶液に相応する貴金属オキサラート錯体溶液に対して、閉鎖したガラスアンプル中で加熱速度0.05K/分で、0℃と測定されたピーク極小を上回る温度との間で行われる(図参照)。分解温度として、本発明によれば、開始ベース曲線からの測定曲線の最初の逸脱の温度(図参照、57℃)が理解される(5.2 DIN51007)。
【0021】
具体的な場合に、2934.5mgの10質量%白金オキサラート水溶液が使用された。この測定は、ガラスアンプル中で加熱速度0.05K/分で行われた。この図は、2℃と83℃の間の温度に依存する熱流W/gで示す。
【0022】
温度処理とは、本明細書では、反応混合物が所定の温度に調節されることを意味する。この温度処理は、例えば水を用いて行ってよい。
【0023】
好ましくは、まず貴金属酸化物水和物又は貴金属塩からの水性溶液又は懸濁液を製造する。白金オキサラート錯体の製造の場合には、好ましくはまず酸化白金水和物(H
2[Pt(OH)
6]又はヒドロキソ白金(IV)酸)からの水性懸濁液を製造する。好ましくは、水中の白金に対して5〜25質量%の懸濁液、特に好ましくは7〜15質量%の懸濁液が製造される。
【0024】
意外なことに、少量の貴金属オキサラート錯体を反応混合物に導入すると、自己触媒的に作用することが示された。貴金属オキサラート錯体の添加によって、反応の誘導期間(極めてゆっくりとした反応の開始相)は顕著に短縮される。そうして、制御された反応実施が可能になる。したがって、以下では、供給される貴金属オキサラート錯体は自己触媒と称される。本発明によれば、少量の自己触媒が添加される。好ましくは、自己触媒は、貴金属前駆体中の貴金属に対して1×10
-4〜5×10
-2モル当量の量で添加される。特に好ましくは、自己触媒は、貴金属前駆体中の貴金属に対して5×10
-4〜1×10
-2モル当量の貴金属量で添加され、特に好ましくは、自己触媒は、貴金属前駆体中の貴金属に対して5×10
-4〜7×10
-3モル当量の貴金属量で添加される。自己触媒は好ましくは水溶液において添加される。通常の濃度は5〜20質量%、例えば8〜15質量%である。
【0025】
適切には、自己触媒(「自己触媒」の概念の意味に相応して)としては、製造すべき生成物に相応する貴金属オキサラート錯体が使用される。すなわち、白金オキサラートの製造には、自己触媒として白金オキサラートが、銀オキサラートの製造には、自己触媒として銀オキサラート等が使用される。
【0026】
貴金属前駆体、自己触媒及びシュウ酸及び/又はシュウ酸塩の供給の順番は、あまり重要でない。自己触媒は、全量のシュウ酸及び/又はシュウ酸塩、一部のシュウ酸及び/又はシュウ酸塩と同時に、又はシュウ酸及び/又はシュウ酸塩の添加前に、反応溶液又は反応懸濁液へと添加されてよい。この場合に、貴金属前駆体からの溶液又は懸濁液は装入されるか又は後に添加されてよい。
【0027】
貴金属前駆体が装入され、そして自己触媒がシュウ酸と同時に添加される場合には、この添加は所望の反応温度を下回る温度で行われることが望ましい。好ましくは37℃までの、特に好ましくは32℃までの温度で添加される。形成される反応混合物は、引き続き、所望の反応温度へと加熱される。こうして加熱速度は、反応の開始に応じて適合される。
【0028】
しかし、まず溶液又は懸濁液中の貴金属前駆体を装入し、自己触媒を添加し、少なくとも大部分のシュウ酸又はシュウ酸塩を反応温度到達直後に添加することが好ましいことが判明した。
【0029】
シュウ酸又はシュウ酸塩は、1又は複数のポーションで添加してよい。このポーションは、同じ量であってもよいが、複数の異なる量のポーションを添加してもよい。ポーションが同じ量でない場合には、好ましくはまずより多量のポーションを添加し、引き続き1又は複数のより少量のポーション又は一段と少なくなるポーションを添加する。まず白金前駆体の形の白金に対して0.4〜1.4モル当量の第1ポーションを添加し、引き続き例えば複数の同じ量で、残りのシュウ酸又は残りのシュウ酸塩を添加することが好ましいことが判明した。これは例えば、例えば0.4〜1.4モル当量の唯一の更なる添加において、例えば0.2〜0.9モル当量の2回の更なる添加において、例えば0.1〜0.7モル当量の3回の更なる添加において、例えば0.1〜0.6モル当量の4回の更なる添加において、などで行われてよい。しかし、均一な連続的なシュウ酸又はシュウ酸塩の添加もまた考えられる。
【0030】
好ましくは、反応の間に溶液又は懸濁液は撹拌される。好ましい実施態様において、シュウ酸又はシュウ酸塩の添加は、撹拌条件、溶液又は懸濁液の濃度及び反応器寸法に応じて行われる。基本的に、シュウ酸又はシュウ酸塩が添加できる速度は、CO
2発生及び温度発生に基づいて良好に調節される。
【0031】
そのようにして製造される貴金属オキサラート錯体は、好ましくは貴金属触媒のための前駆体として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、2℃と83℃の間の温度に依存する熱流W/gを示す図である。
【0033】
実施例
以下の実施例は、説明のために利用され、限定するものととらえてはならない。
【0034】
測定方法、分析
定性分析は、NMR及びUV分光法を用いて行われた。
【0035】
UVスペクトルを、室温でUVスペクトルメーターSpecord
(R) 200(Analytic Jena AG社)を用いて1cmのキュベット(石英ガラスキュベットQS Suprasil
(R)(Heraeus Quarzglas GmbH))中で測定範囲190nm〜1100nmで解像度2nmを用いて測定した。
【0036】
核共鳴分光測定を、Bruker Avance 400 MHz−NMR−分光計(比較例1)で、そして、Bruker Avance 600 MHz−NMR分光計(実施例、比較例2、3)で実施した。
【0037】
白金含有量を、重量分析により決定した。
【0038】
出発材料として使用したのは、独自製造のヒドロキソ白金(IV)酸(H
2[Pt(OH)
6])(w(Pt):55.51%)、分析用シュウ酸二水和物EMSURE
(R) ACS, ISO, Reag. pH Eur(Merck KGaA社、型番100495)及び独自製造の白金オキサラート(w(Pt):11.72質量%)である。
【0039】
実施例1(40℃での白金オキサラートの製造、自己触媒あり、5個のポーションでのシュウ酸添加)
250mlの三ツ口丸底フラスコにおいて、10gのPt(50mmol)を、54.29mlの脱イオン水(VEW)中18.01gのH
2[Pt(OH)
6]の形で装入した。
【0040】
引き続き、室温(23℃)で撹拌しながら(250rpm)マグネットスラーラーを用いて0.04gのPtオキサラート(0.24mmol Pt)を自己触媒として添加した。淡い緑色の懸濁液が発生した。
【0041】
時間点:0分
この懸濁液を、室温から水浴中で20分のうちに40℃に加熱した。
【0042】
時間点:20分
この懸濁液が40℃の温度に達するとすぐに、各2.568g(20mmol)のシュウ酸二水和物の5つの同じポーションのうちの1つを添加した。この場合に、すぐにガス発生が確認され、これは60分間の期間にわたり続いた。270mlのCO
2を捕集した。
【0043】
時間点:80分
ガス形成の終了後に、2.568g(20mmol)のシュウ酸二水和物の更なるポーションを添加した。40mlのCO
2を捕集した。
【0044】
時間点:140分
ガス形成の終了後に、2.568g(20mmol)のシュウ酸二水和物の更なるポーションを添加した。10分後に、この溶液の色は緑色からターコイズブルーに変化した。60分のうちに300mlのCO
2を捕集した。
【0045】
時間点:200分
ガス形成の終了後に、2.568g(20mmol)のシュウ酸二水和物の更なるポーションを添加した。60分のうちに270mlのCO
2を捕集した。
【0046】
時間点:260分
ガス形成の終了後に、2.568g(20mmol)のシュウ酸二水和物の更なるポーションを添加した。110分のうちに300mlのCO
2を捕集した。40℃での更なる10分間の撹拌の間に、ガス発生はもはや観察されなかった。
【0047】
時間点:380分
加熱を停止した。この溶液を、室温に達するまで更に撹拌した。
【0048】
この混合物を0.2μmのメンブランフィルター(ザルトリウス濾過ユニット)を介して濾過した。この濾過を30分間行った。
【0049】
白金に対して99.82%の収率で13.40質量%のPt含有量を有する74.49gの生成物が得られた。
13C−NMR (151 MHz, 299.6 K, DMSO−d
6 キャピラリー): δ = 168.70; 167.16 ppm
UV−VIS:627 nm (A=0.399); 417nm (0.415)。
【0050】
比較例1(50℃での白金オキサラートの製造)
250mlの三ツ口丸底フラスコにおいて、10gのPt(50mmol)を、54.29mlの脱イオン水(VEW)中18.01gのH
2[Pt(OH)
6]の形で装入した。引き続き、撹拌しながら(250rpm)マグネットスラーラーを用いて12.93g(100mmol)のシュウ酸二水和物を添加した。乳白色の、黄白色の懸濁液が発生した。
【0051】
時間点:0分
この懸濁液を、19℃から水浴中で約1℃/10分で加熱した。
【0052】
時間点:180分
35℃の温度でこの溶液は緑色に変色し始めた。
【0053】
時間点:210分
38℃の温度でこの溶液はターコイズブルーになった。
【0054】
時間点:220分
39℃の温度でこの溶液は深青色になった。
【0055】
時間点:230分
この溶液は40℃の温度に達した。ガス発生が50分間の期間にわたり観察されることができ、そのなかで溶液は45℃の温度に達した。
【0056】
時間点:350分
50℃の温度に達した。ガス発生はもはや生じなかった。
【0057】
時間点:510分
加熱を停止した。この溶液を、室温に達するまで更に撹拌した。
【0058】
この混合物を0.2μmのメンブランフィルター(ザルトリウス濾過ユニット)を介して濾過した。この濾過を90分間行った。
【0059】
白金に対して99.23%の収率で20.75質量%のPt含有量を有する47.82gの生成物が得られた。
13C−NMR (100.6 MHz, 303 K, DMSO−d
6 キャピラリー): δ = 168.43; 166.72ppm
UV−VIS 664 nm (A=0.731);417nm (0.763)。
【0060】
比較例2(40℃での白金オキサラートの製造、自己触媒なし)
比較例1を繰り返したが、溶液を210分の期間にわたり23℃から40℃の温度に加熱した点で異なる。150分後に、この溶液は35℃の温度で緑色に変色した。190分後に、そして37℃の温度で、この溶液は青色に変色し始め、そして230分間後に、65分間の期間にわたりガス発生が観察できた。
【0061】
白金に対して99.19%の収率で12.25質量%のPt含有量を有する80.972gの生成物が得られた。
13C−NMR (151 MHz, 298 K, DMSO−d
6 キャピラリー): δ = 168.16; 166.67 ppm
UV−VIS 641.05 nm (A=0.342);417nm (0.374)。
【0062】
比較例3(40℃での白金オキサラートの製造、自己触媒なし、5個のポーションでのシュウ酸添加)
250mlの三ツ口丸底フラスコにおいて、10gのPt(50mmol)を、54.29mlの脱イオン水(VEW)中18.01gのH
2[Pt(OH)
6]の形で装入した。
【0063】
時間点:0分
この懸濁液を、20℃から水浴中で40分のうちに40℃に加熱した。
【0064】
時間点:40分
この懸濁液が40℃の温度に達するとすぐに、各2.568g(20mmol)のシュウ酸二水和物の5つの同じポーションのうちの1つを添加した。変色もガス発生も観察されなかった。更なる60分間後に、2.568g(20mmol)のシュウ酸二水和物の更なるポーションを添加した。今回も変色もガス発生も観察されなかった。
【0065】
時間点:160分
2.568g(20mmol)のシュウ酸二水和物の更なるポーションを添加した。10分間後に、この溶液は緑色に変色した。更なる30分間後に(200分に)、この溶液の色は緑色からターコイズブルーに変化した。
【0066】
時間点:220分
2.568g(20mmol)のシュウ酸二水和物の更なるポーションを添加した。10分後に、ガス発生が観察できた。
【0067】
時間点:280分
2.568g(20mmol)のシュウ酸二水和物の更なるポーションを添加した。ガス発生を、300分の時間点まで続けた。その後に、ガス発生はもはや観察されなかった。
【0068】
時間点:330分
加熱を停止した。この溶液を、室温に達するまで更に撹拌した。
【0069】
この混合物を0.2μmのメンブランフィルター(ザルトリウス濾過ユニット)を介して濾過した。この濾過を30分間行った。
【0070】
白金に対して99.45%の収率で12.85質量%のPt含有量を有する77.39gの生成物が得られた。
13C−NMR (151 MHz, 299.6 K, DMSO−d
6 キャピラリー): δ = 168.16; 166.66 ppm
UV−VIS 664nm (A=0.373); 417nm (0.403)。