特許第6180537号(P6180537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180537
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】把手付き容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 23/10 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   B65D23/10 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-541585(P2015-541585)
(86)(22)【出願日】2014年10月7日
(86)【国際出願番号】JP2014076789
(87)【国際公開番号】WO2015053257
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2016年4月5日
(31)【優先権主張番号】特願2013-210493(P2013-210493)
(32)【優先日】2013年10月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】春原 慎
【審査官】 藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−217075(JP,A)
【文献】 特開平06−156501(JP,A)
【文献】 実開平04−084117(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0056053(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 23/00 −25/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口するネック部と、筒状の胴部と、前記ネック部と前記胴部とを繋ぐ肩部と、を有する容器本体と、該容器本体に外周面に固定される把手部材と、を備える把手付き容器において、
前記容器本体が、前記肩部と前記胴部との境界部分に設けられて前記胴部の円周方向の一部を内側に窪ませた凹部を備えると共に、この凹部を画成する壁面部に前記把手部材が固定されており、
前記把手部材は、前記壁面部に沿って設けられる取り付け板を含む取付部と、該取り付け板の一方面側に前記容器本体の周方向に沿ってアーチ状に突設される把手部と、で構成され
前記壁面部が前記容器本体の径方向外側に凸となる曲面構造になっていると共に、前記取り付け板が前記壁面部に沿った曲面形状となっている
ことを特徴とする把手付き容器。
【請求項2】
請求項1に記載の把手付き容器において、
前記取付部が、前記取り付け板の他方面側に一体的に設けられて前記容器本体に係合保持される一対の係合部を含む
ことを特徴とする把手付き容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の把手付き容器において、
前記壁面部は、前記ネック部を上側として前記容器本体を載置した状態で斜め上方を向くように傾斜し、
前記把手部は、前記壁面部の表面に対して略垂直方向に突出して設けられている
ことを特徴とする把手付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把手付き容器に関し、特に、樹脂材料からなり容量が10リットル以上である大型の把手付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、ミネラルウォータ用リフィラブルボトル等として、5ガロン程度(約20リットル)の大型容器が世界中で採用されている。このような大型容器は、一般的に樹脂材料で形成されており、空の状態であれば軽量であるため持ち運びは比較的容易である。しかしながら、ミネラルウォータが充填された状態では、容器はかなりの重量となり持ち運びが大変である。また例えば、ウォーターサーバーに対して容器を載置する際には、容器を持ち上げた後、さらに、開口が下向きとなるように反転させる必要があり、取り扱いが非常に大変である。
【0003】
このような大型容器の運搬や取り扱いを容易にするために、容器本体(プラスチックボトル)の外周部に、胴部の軸方向(上下方向)に沿って延びる把手を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−198863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような把手を設けることで、容器の取り扱い性は大きく改善される。しかしながら、胴部の軸方向(上下方向)に沿って設けられた把手では、容器の運搬自体はかなり楽に行うことができるものの、例えば、容器の反転等の特定の動作を行う場合には、やはり取り扱いが難しいという問題がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、容器の取り扱い性を向上することができる把手付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、開口するネック部と、筒状の胴部と、前記ネック部と前記胴部とを繋ぐ肩部と、を有する容器本体と、該容器本体に外周面に固定される把手部材と、を備える把手付き容器において、前記容器本体が、前記肩部と前記胴部との境界部分に設けられて前記胴部の円周方向の一部を内側に窪ませた凹部を備えると共に、この凹部を画成する壁面部に前記把手部材が固定されており、前記把手部材は、前記壁面部に沿って設けられる取り付け板を含む取付部と、該取り付け板の一方面側に前記容器本体の周方向に沿ってアーチ状に突設される把手部と、で構成され、前記壁面部が前記容器本体の径方向外側に凸となる曲面構造になっていると共に、前記取り付け板が前記壁面部に沿った曲面形状となっていることを特徴とする把手付き容器にある。
【0008】
かかる第1の態様では、取付部が取り付け板を含むことで、容器本体の周方向に沿って把手部を設けても、把手部材の容器本体に対する取付強度を十分に確保できる。これにより、容器の取り回し性が向上する。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様の把手付き容器において、前記取付部が、前記取り付け板の他方面側に一体的に設けられて前記容器本体に係合保持される一対の係合部を含むことを特徴とする把手付き容器にある。
【0010】
かかる第2の態様では、把手部材の容器本体に対する取付強度がさらに向上する。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様の把手付き容器において、前記壁面部は、前記ネック部を上側として前記容器本体を載置した状態で斜め上方を向くように傾斜し、前記把手部は、前記壁面部の表面に対して略垂直方向に突出して設けられていることを特徴とする把手付き容器にある。
【0012】
かかる第3の態様では、容器の取り回し性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、容器本体の周方向に沿って把手部を配置することで容器の取り回し性を向上することができる。例えば、ミネラルウォータ用リフィラブルボトル等として使用される比較的大型の容器においては特に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る把手付き容器の正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る把手付き容器の背面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る把手付き容器の側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る把手付き容器の上面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る把手付き容器の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1〜5に示すように、本実施形態に係る把手付き容器1は、例えば、容量が5ガロン(約20リットル)程度のミネラルウォータ用リフィラブルボトルとして使用されるものであり、容器本体10と、把手部材20とで構成されている。
【0017】
容器本体10は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂で形成され、上端に開口部11を有するネック部12と、筒状の胴部13と、ネック部12と胴部13とを繋ぎネック部12側から内径が徐々に拡開する肩部14と、胴部13の一端を密封する底部15と、胴部13と底部15とを繋ぐヒール部16と、で構成されている。また肩部14と胴部13との境界部分には、容器本体10の円周方向の一部を切り欠いた凹部17が形成されている。この凹部17は、図3に示すように、容器1の側面視で、容器中心軸側に凸となる段状構造を有している。具体的には、凹部17は、肩部14から下方に傾斜して延び把手部材20が取り付けられる急傾斜壁面18と、それより径方向に延びて胴部13に連接する緩傾斜壁面19、とからなる。
【0018】
そして、この凹部17を画成する急傾斜壁面18に把手部材20が取り付けられている。このように把手部材20を凹部17に配置することで、容器本体10の中心軸の近傍に把手部材20を配することが可能になる。この急傾斜壁面18は、ネック部12を上側として容器本体10を載置した状態で、斜め上方を向くように傾斜している。すなわち急傾斜壁面18は、容器本体10の底面に対して所定角度θ1で傾斜して設けられている(図3参照)。また、急傾斜壁面18は、容器本体10の中心側を凹とする曲面となっている(図4参照)。すなわち急傾斜壁面18は、容器1の上面視にて、胴部13より大きい曲率を有して中央部が、容器本体10の径方向外側に凸となる曲面構造になっている。
【0019】
また把手部材20が設けられる側の肩部14の長さL1は、ウォーターサーバーへの載置安定性を考慮し、凹部17がない肩部14の長さL2の1/3以上となっている。また、把手部材20を胴部13の中間高さより下方に設けると、作業者は把手部材20を掴むために屈む必要性が生じる。そのため、把手部材20が組み付く急傾斜壁面18の鉛直方向の長さを、胴部13の全高の1/3以下、より好ましくは1/4以下としている。
【0020】
把手部材20は、容器本体10に取り付けられる取付部21と、作業者が実際に握る部分である把手部22と、で構成されている。取付部21は、急傾斜壁面18に沿って設けられる取り付け板23を備える。この取り付け板23には、図示は省略するが、容器本体10側に突出して設けられて容器本体10に係合保持される一対の係合部が一体的に設けられている。すなわち係合部は、容器1の上面視にて、把手部22との接合部近辺の反対側に、容器中心方向に突出するように取り付け板23に設けられている。
【0021】
把手部22は、取り付け板23の容器本体10とは反対側の面(一方面)にアーチ状に突出して設けられている。すなわち把手部22は、取り付け板23との間に所定の間隙を確保した状態で、その両端が取り付け板23に連結されている。本実施形態では、把手部22は取り付け板23の表面に対して略直交する方向に突出して設けられている。把手部22と取り付け板23との間の間隙領域(貫通孔)は、作業者の手が入り込みやすいよう、横長で略楕円形状に形成されている。なお把手部22と取り付け板23を含む取付部21とは一体成型により形成されている。
【0022】
また飲料水等で満充された時の容器(5ガロンサイズ)の重量は、最大で約20kgにも達するため、把手部材20と容器側の組付き部位には非常に大きな負荷がかかる。このため、把手部材20が変形しやすいと、係合部より容器本体10が脱落したり、取り付け板23の付け根から把手部22が折損してしまう可能性がある。そのため、本発明では、把手部材20の剛性を高めるため、把手部22の外周面に第1の凸状リブ22aを設け、把手部22の付け根近辺の内外面に第2の凸状リブ22bを設けている。なお、取り付け板23の水平断面は、中央部が把手部22側に凸となった曲面形状になっている。
【0023】
このような把手部材20は、プリフォームをブロー成形して容器本体10を形成する際、容器本体10と一体化される。すなわちブロー成形時に、取付部21を構成する係合部(図示なし)及び取り付け板23が容器本体10の急傾斜壁面18に係合保持されることで、把手部材20が容器本体10と一体化される。ブロー成形により容器本体10を形成する際、取り付け板23が上述のように曲面形状となっていることで、取り付け板23の中央部と両端部とでプリフォームの延伸倍率が略均一になる。このため、取り付け板23が単なる平板状の場合と比べて、容器本体10の取付部21に対応する部分の肉厚を十分に確保できる。したがって、把手部材20を容器本体10に強固に取り付けることができる。
【0024】
なお、容器本体10の成形方法は、特に限定されないが、好適な成形方法として、本件出願人による先願(特開2011‐037139号)にて開示されているような、2ブロー方式によるものが挙げられる。具体的には、最初に凹部17とほぼ同サイズ・同一形状のくぼみ部を備えた一次ボトルを一次ブロー型にて形成し、次いで、二次ブロー型内でくぼみ部に把手部材20を組付ける手法である。このようにすると、容器本体10の全体にわたり好適な肉厚分布を設けることが可能になるほか、1ブロー方式に比べて耐熱性も向上する。
【0025】
以上のように本実施形態の構成では、把手部材20の取付部21が取り付け板23を含むことで、容器本体10の周方向に沿って把手部22を設けても、把手部材20の容器本体10に対する取付強度を十分に確保できる。例えば、作業者が把手部22を掴んで容器1を持ち上げる際に、取付部21にかかる力が取り付け板23によって分散され、把手部材20が容器本体10から脱落するといった問題の発生を抑制することができる。
【0026】
そして、容器本体10の周方向に沿って把手部22を配置することで、容器1の取り回し性を向上することができる。例えば、ミネラルウォータ用リフィラブルボトル等として使用される比較的大型の容器においては特に効果的である。
【0027】
また本実施形態では、取付部21が、取り付け板23の他方面(容器本体10)側に一体的に設けられて容器本体に係合保持される一対の係合部を含んでいるため、把手部材20の容器本体10に対する取付強度をさらに向上することができる。
【0028】
さらに、上述のように容器本体10の急傾斜壁面18は、容器本体10の底面に対して所定角度θ1で傾斜して設けられている(図3参照)。また取り付け板23は、この急傾斜壁面18の表面に沿って形成され、把手部22は取り付け板23に略直交する方向に突出して設けられている。つまり、把手部22は急傾斜壁面18の表面に対して略直交する方向に突出して設けられ、容器本体10の底面に対して所定角度で上方に傾斜して設けられている。
【0029】
満充時に、容器1を把手部22で持ち上げる際、容器1の重心と支点(把手部22)とが異なるため回転モーメントが発生し、容器1が把手部22を支点として回転し容器本体10が傾斜状態となる。しかしながら、本願発明に係る容器1は、把手部材20が上述のように容器本体10の中心軸近傍に配されているため、胴部の側面に把手部材が配された従来容器に比べて回転モーメントが小さい。また、把手部22が所定角度で上方に傾斜しているため、重心―支点(把手部22の先端側)間を結ぶ直線と鉛直線との角度が、単なる水平状態の場合と比べて小さく、回転モーメントが更に小さくなる。したがって、容器1を安定して保持することができる。また、ウォーターサーバーに載置させるために、満充状態の容器1を反転させる際にも、胴部13の上下方向に把手部材20を設けた場合と比べて本発明の方が把持しやすいため、安定して容器1を保持できる。これにより、容器1の取り回し性がさらに向上する。また、把手部22は、図3に仮想線で示すように、肩部14と胴部13の延長線が交差する領域の範囲内に配置されていることが望ましい。この構成により、容器1を反転させウォーターサーバーに設置する際も、把手部材20がその載置台に接触することがない。よって、本発明の把手付き容器1を用いる場合もウォーターサーバーを変更する必要がなく、従来のウォーターサーバーと組み合わせて使用できる。
【0030】
以上本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0031】
1 把手付き容器
10 容器本体
11 開口部
12 ネック部
13 胴部
14 肩部
15 底部
16 ヒール部
17 凹部
18 急傾斜壁面
19 緩傾斜壁面
20 把手部材
21 取付部
22 把手部
22a 第1の凸状リブ
22b 第2の凸状リブ
23 取り付け板
図1
図2
図3
図4
図5