特許第6180542号(P6180542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6180542生物試料を調製するためのカートリッジと装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180542
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】生物試料を調製するためのカートリッジと装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/30 20060101AFI20170807BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20170807BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20170807BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G01N1/30
   G01N1/28 J
   G01N33/48 P
   G01N33/53 Y
   G01N33/53 M
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-547201(P2015-547201)
(86)(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公表番号】特表2015-537229(P2015-537229A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】IB2013058789
(87)【国際公開番号】WO2014091321
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年9月7日
(31)【優先権主張番号】61/736,697
(32)【優先日】2012年12月13日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンベルゲル‐フリードル ラインホルド
(72)【発明者】
【氏名】ファン へメルト フレーク
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ ストルペ アンヤ
(72)【発明者】
【氏名】プリンス メンノ ヴィレム ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ファン トーレン ヨハンネス アドリアヌス
【審査官】 竹中 康浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−037368(JP,A)
【文献】 特開2007−051881(JP,A)
【文献】 特開2009−187025(JP,A)
【文献】 特開2008−196943(JP,A)
【文献】 特開2008−175812(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/094577(WO,A1)
【文献】 特表2004−526955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/30
G01N 1/28
G01N 33/48
G01N 33/53
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物試料を処理するためのカートリッジであって、カートリッジ本体と、
a)試料を保持する基板によって閉じられることができる開口部を持つ反応チャンバと、
b)前記反応チャンバに少なくとも一つの試薬流体を供給するための流体入口システムと、
c)前記反応チャンバから流体を受けるための流体出口システムとを有し、
前記流体入口システム、基板がその開口部を閉じる前記反応チャンバ、及び前記流体出口システムが、環境との液体の交換に関して閉じられる、カートリッジ。
【請求項2】
前記反応チャンバの開口部が前記基板の平面によって閉じられるように設計される、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記基板が、接着、粘着、中で過小圧力が確立されることができる中間真空チャンバ、クランプ及び/又は電磁力によって、前記カートリッジ本体に取り付け可能である、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項4】
その開口部を閉じる基板より上の前記反応チャンバの高さが約200μm未満である、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記基板と前記カートリッジ本体の間に少なくとも一つのスペーサ素子が配置される、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項6】
流体ルーティングのための制御素子、及び/又は、前記流体入口システムから前記反応チャンバを通って前記流体出口システムへ圧力駆動流体フローを誘導するためのポンプ素子を有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記ポンプ素子が流体フローを誘導するように動かされる及び/又は変形されることができる、請求項6に記載のカートリッジ。
【請求項8】
試薬で充填される少なくとも一つの試薬貯蔵部を有し、前記貯蔵部が好適には密封される、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項9】
外部検出器によって位置特定されることができる少なくとも一つのマーカ、及び/又は外部検出器によって識別されることができる少なくとも一つの識別子を有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項10】
試薬及び/又は反応の状態についての少なくとも一つのインジケータを有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物試料を調製するための、特に組織試料若しくは細胞の集合を染色するためのカートリッジに関する。さらに、これはかかるカートリッジを処理するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
US2012/230886 A1は、生物試料を保持する顕微鏡スライド上に置かれることができる、チャネルを底部側に持つオーバーレイデバイスを開示する。チャネルの両端における開口部は、一端において当該チャネルへの試薬の入口と、もう一端においてその出口を可能にする。顕微鏡スライドはこのようなオーバーレイデバイスとともに、オーバーレイデバイスの各開口部によって受けられる入口ポートと出口ポートを持つアライメント固定部の中に置かれ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複数試薬を伴う複雑なプロトコルに従って完全な試料スライドを均一な方法で調製することができる、試薬との、例えば染色剤との生物試料のよりロバストで、単純で、及び/又は使いやすい調製を可能にする手段を持つことが好都合であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これらの課題は請求項1に記載のカートリッジ、請求項11に記載の装置、並びに請求項14及び15に記載の使用によって対処される。好適な実施形態は従属請求項に開示される。
【0005】
第一の態様によれば、上記課題は、生物試料を調製するための、例えば顕微鏡検査のために組織若しくは細胞の試料を染色するための、カートリッジによって対処される。カートリッジは以下の構成要素とともにカートリッジ本体を有する:
a)(反応チャンバに面する側に)試料を保持する基板によって閉じられることができる開口部を持つ反応チャンバ;
b)前述の反応チャンバに少なくとも一つの試薬流体を供給するための流体入口システム;
c)反応チャンバから流体を受けるための流体出口システム。
【0006】
上述の構成要素は、流体入口システム、基板がその開口部を閉じる反応チャンバ、及び流体出口システムが(流体力学的に)相互接続され、環境との液体の交換に関して実質的に閉じられるように、設計されるものとする。言い換えれば、流体入口システム、反応チャンバ、及び流体出口システムは、基板が反応チャンバを閉じるときに(液体に関して)環境に対して閉じられる流体システムを共同で構成する。
【0007】
"カートリッジ"という語は、中に媒体が保存、輸送、及び/又は処理のために収容されることができる内部空洞を持つ要素若しくはユニットを示すものとする。これは通常、単一試料のために一度だけ使用される交換可能な使い捨て部品である。好適には、カートリッジはワンピース部品であるか、及び/又は(実質的に)一体(モノリシック)材料から成る。これは例えば相互に永久的に取り付けられる一つ若しくは複数の射出成形部品から(実質的に)成り得る。概念的に、カートリッジは基板を有しても有さなくてもよい。後者の場合、"カートリッジ本体"は典型的には"カートリッジ"と同一である。
【0008】
"反応チャンバ"という語はカートリッジ内の空洞を示すものとし、この空洞に隣接するカートリッジの壁は概念的に反応チャンバに属するものとする。
【0009】
"流体システム"とは一般に、媒体(特に流体)が輸送され経由することができる任意の空洞システム(チャネル、チャンバ、弁若しくは同様のものなど)を示すものとする。
【0010】
流体出口システムによって受けられる流体は特に、事前に流体入口システムによって反応チャンバに導入されている試薬流体を有し得る。従って流体出口システムは、使用試薬及び/又は他の廃棄化学物質が保存され得る廃棄物貯蔵部であり得るか、若しくはそれを有し得る。
【0011】
流体入口システム、反応チャンバ、及び流体出口システムは随意に、基板が反応チャンバを閉じるときに環境に対して完全に閉じられ得る、すなわち流体(液体若しくは気体)の交換に関して閉じられ得る。好適には、しかしながら一部の気体媒体の交換は、例えば環境への通気接続を介して可能であり、これは設計を単純化し背圧上昇を回避する。
【0012】
上記カートリッジは閉じたシステムの中で、すなわちカートリッジとその上に試料が供される基板のみを有するシステム内で、生物試料の調製を可能にするという利点を持つ。環境に対するこのシステムの閉鎖は、環境による試料の汚染だけでなく試料による環境の汚染のいかなる危険も回避する。これは試料の扱いを著しく容易にする。さらなる利点は、試薬消費量の削減、マイクロチャネル内の増大した対流に起因する高速反応、及び重要試薬を含むカートリッジの工業生産による再現性改善であり得る。
【0013】
一般に、基板は調製される生物試料を保持するのに適した材料の任意の(固体)物体であり得る。最も好適には、基板は例えば顕微鏡スライドである場合は板状形状を持つ。このような板状基板の使用を可能にするために、カートリッジの反応チャンバの開口部は好適には(基板の)平面によって閉じられるように設計される。
【0014】
基板がカートリッジ本体に取り付けられることができる(若しくは取り付けられる)方法には複数の可能性があり、取り付けは反応チャンバを通る流体フロー中に生じる力を抑えるために十分に強くなければならない。
【0015】
一実施形態において、基板は接着及び/又は粘着によって、すなわち材料ボンディングによってカートリッジ本体に取り付けられ得る。
【0016】
別の実施形態において、中間真空チャンバが基板とカートリッジ本体の間に設けられ、その中に過小圧力(underpressure)、すなわち周囲圧力(通常1 bar)を下回る圧力が確立され得る。従って周囲圧力は基板をカートリッジ本体に押し付ける。過小圧力は例えば機器に真空チャンバを接続するダクトを介して印加され得る。真空チャンバは通常、反応チャンバとは異なり、反応チャンバに流体力学的に接続されない。
【0017】
さらに別の実施形態において、基板は例えば機械的ばねを介してクランプによって、及び/又は例えば(電)磁石によって生成される電磁力によって、カートリッジ本体に取り付けられ得る。
【0018】
基板が反応チャンバの開口部を閉じるとき、反応チャンバの空洞の内部形状が完全に決定される。好適な実施形態において、この形状は基板より上のこの反応チャンバ空洞の高さが約200μm未満、好適には100μm未満、若しくは最も好適には約50μm未満であるようになっている。平面が反応チャンバの開口部を閉じる基板の場合、結果として得られる空洞は立方体の形状を持ち、ここで高さは定義により基板と立方体の反対側との間の距離である。反応チャンバ空洞のより一般的な形状について(例えば明確に定義されたフローパターンが得られるように入口及び出口ゾーンが設計されるとき)、高さは上記空洞に完全に収まる最大球の直径として定義され得る。
【0019】
約200μm若しくはさらに100μm未満の反応チャンバの比較的低い高さは、チャンバを通って流れる試薬流体がフロー中の対流によって基板上の試料と密接に接触し、その結果少量の試薬のみを要しながら染色のような所望の反応の速度を増すという利点を持つ。
【0020】
基板とカートリッジ本体の間に、これらの構成要素間の所望の距離を保証するために、少なくとも一つのスペーサ素子が随意に配置され得る。スペーサ素子は例えば、例えば接着剤若しくは粘着剤などの軟接続材料に埋め込まれる、明確に定義された直径のビーズを有し得る。
【0021】
(基板上の)反応チャンバによってカバーされる面積は最大約1cmまで、好適には5cmまでであり得、従ってこのサイズの試料の収容を可能にする。
【0022】
カートリッジは好適には流体ルーティング及び/又は駆動を可能にする少なくとも一つの制御素子(例えば弁)を有し得る。付加的に又は代替的に、これは流体入口システムから反応チャンバを通って流体出口システムへ流体の圧力駆動フローを誘導するための少なくとも一つのポンプ素子を有し得る。この文脈において、"圧力駆動"という語は、明確に定義された圧力が制御可能に生成されることができるカートリッジ内の少なくとも一つの素子若しくは位置(例えばポンプ素子)があることを示すものとし、この圧力が流体フローを誘導する。従って、圧力を制御する能力は流体フローを特に反応チャンバ内で制御する能力を示唆する。この制御可能性は他のフローメカニズム(例えば重力駆動フロー)に対する利点である。さらに、圧力駆動フローは試料に作用する高いせん断力を誘導し、従って流れる試薬と試料との間の密接な接触を可能にするという利点を持つ。
【0023】
上述のポンプ素子は例えば、流体フローを誘導するように動かされる及び/又は変形されることができる素子として実現され得、上記ポンプ素子は好適には流体入口システム、反応チャンバ、及び/又は流体出口システムに隣接して位置付けられる。このようなポンプ素子は例えば流体フローを誘導することができる変形可能若しくは可動膜であり得るか、若しくはそれを有し得る。この膜は流体入口及び/又は流体出口システム内の壁を構成し、当該膜に作用する力はたわみを、従って隣接する流体システム内の流体のフローを生じる。可動及び/又は変形可能ポンプ素子は上記流体に直接接する必要なくカートリッジ内の流体フローを制御するための単純な手段を提供する。同様の柔軟膜は、フローを異なる方向にルーティングする及び/又は流体システムの所定部分を閉鎖するための弁としても組み込まれることができる。好適には、上記類の二つ以上のポンプ素子(若しくは弁)が存在し得る。さらに、ポンプ素子及び/又はポンプ素子を有するシステムは、他の構成要素、特に(適切に制御される)弁によって一方向流体フローへ変換される振動圧力を誘導する蠕動ポンプとして動作し得る。
【0024】
カートリッジは随意に、基板が試料とともに取り付けられるときに後の使用のために乾燥状態若しくは湿潤状態の試薬が中に供給される、少なくとも一つの試薬貯蔵部を有し得る。カートリッジはこのようにすぐに使えるように製造され、ユーザが(繊細及び/又は有毒である可能性のある)試薬を扱う若しくは触れる必要から解放し得る。試薬貯蔵部は好適には、それが中に配置される空洞(例えば反応チャンバ)に対して密封されるか、若しくは密封可能である。
【0025】
好適な実施形態において、上述の試薬貯蔵部は生物試料を調製するための少なくとも一つの染色剤及び/又は固定剤を有する。そしてカートリッジは顕微鏡検査のために生物試料を調製するために使用されることができる。
【0026】
基板は概念的にはカートリッジに属するか、若しくはカートリッジから分離した要素と考えられ得る。典型的には、基板なしのカートリッジは、別々に製造される、他の目的のためにも使用されることができる(例えば基板が顕微鏡スライドである場合)基板と組み合わされることができる、その独自の構成要素である。いずれにしても、基板は反応チャンバ内の若しくは以後の試料の目視検査を可能にするために透明であり得る。好適には、このような透明基板は約0.2mm未満の低い厚さを持ち、従って高分解能で顕微鏡での直接目視検査を容易にする。
【0027】
別の実施形態において、基板は少なくとも一つのマーカ、例えばその表面上にプリント若しくはエッチングされる(十字のような)サインを有し、上記マーカは任意の外部検出器によって位置特定されることができる。これはカートリッジ若しくは別の装置に対して基板上に供される試料の正確な位置特定及び/又はアライメントを可能にする。閉鎖時に反応チャンバの高さを制御するのに役立つ特徴が基板上に存在し得る。
【0028】
さらなる実施形態によれば、カートリッジは外部検出器によって識別されることができる少なくとも一つの識別子を有する。この文脈において"識別子"という語は、基板及び/又は基板によって保持される試料の識別及び/又は特性についての情報を含むシンボル若しくはコードをあらわす要素を示すものとする。識別子は例えばカートリッジと試薬、試料のタイプ(組織のタイプ、患者の名前など)についてのデータを含むRFIDタグ若しくは2Dバーコードであり得る。
【0029】
別のオプションの実施形態において、カートリッジは流体入口システム、反応チャンバ、及び/又は流体出口システム内の試薬及び/又は反応の状態を示すための少なくとも一つのインジケータを有し得る。インジケータは例えば温度若しくはpH値のようなパラメータに依存してその色を変化させる染料若しくはセンサであり得る。同様にカートリッジを使用する機器も、例えば試薬貯蔵部若しくは反応チャンバ内の光の透過若しくは反射をモニタリングすることによってカートリッジ内部の反応の進行をモニタリングする手段を含むことができる。
【0030】
本発明の別の態様によれば、従来技術に関する課題は、以下の構成要素を有する処理装置によって対処される:
a)上記類のカートリッジが結合されることができるインターフェース(すなわち基板によって閉じられることができる反応チャンバ、流体入口システム、及び流体出口システムを持つカートリッジ、基板を伴う当該チャンバと当該システムは、環境との液体の交換に関して閉じられる);
b)上述のインターフェースに結合されるときにカートリッジ内の試料の処理を制御するための少なくとも一つのアクチュエータ。
【0031】
本発明のこの実施形態にかかるカートリッジは、試料を調製するための必要試薬と試料全体のまわりに閉じたシステムを提供する。試料の調製がそれを適切な試薬にさらすだけではなくそれ以上の操作を要する場合、これらのステップは上記処理装置の(複数の)アクチュエータの助けによって実行され得る。
【0032】
カートリッジと処理装置は、カートリッジの流体システム(反応チャンバ、流体入口システム、及び流体出口システムを伴う)が装置内の流体システムに可逆的に接続されることができるように設計され得る。そしてこれら可逆的相互接続を介して所定試薬が装置によってカートリッジへ供給され得る。
【0033】
カートリッジと装置は、同じ発明概念、すなわち試料を保持する基板の取り付けによって閉じられるシステムにおける試料の調製、の異なる実施例である。従ってこれら実施例の一方について提供される説明と定義は他方の実施例にも当てはまる。
【0034】
処理装置の(複数の)アクチュエータは例えば、カートリッジがインターフェースに取り付けられるときにカートリッジの反応チャンバ内の温度を制御するための少なくとも一つの温度コントローラを有し得る。温度の制御は(生)化学反応を可能にする及び/又は試料を損傷から保護する若しくは試料を安定化させるために役立ち、又は必要ですらあることが多い。温度制御はプリセット温度の素子への接触を介して及び/又は放射による伝熱を介して達成され得る。
【0035】
付加的に若しくは代替的に、(複数の)アクチュエータは装置のインターフェースに取り付けられるカートリッジ内の流体フローを制御するための少なくとも一つの圧力コントローラを有し得る。圧力コントローラは例えば上記の通りカートリッジの可動及び/又は変形可能ポンプ素子に作用する素子を有し得る。最も好適には、流体入口システム及び流体出口システムにおいて圧力を協調的に制御する一つ以上のこうしたアクチュエータが存在し、従って中間反応チャンバ内の明確に定義されたフロー条件を可能にする。
【0036】
別の実施形態によれば、処理装置は、カートリッジ内の試料を特徴付けるための、及び/又は装置のインターフェースに結合されるカートリッジの反応チャンバの検査を可能にするための、一つ以上の光学検査手段、例えば光学窓を有し得る。従ってカートリッジ内で起こる反応がリアルタイムにモニタリングされ得る。加えてこうした窓はカートリッジから試料を除去することなく染色反応後の試料の検査を可能にする。
【0037】
本発明はさらに、特にがん細胞における分子変化の識別に基づく患者層別化のためのオンコロジーアプリケーションのための、組織病理学、細胞病理学、免疫組織化学、及びin‐situハイブリダイゼーションにおける試料調製及び/又は特異的染色のための上記類のカートリッジ若しくは装置の使用に関する。調製は特に試料の脱ろう、再水和、抗原回復、変性、染色及び/又は固定を有し得る。試料は組織切片(新鮮凍結、ホルマリン固定、ホルマリン固定‐パラフィン包埋)及び/又は細胞凝集(スピンダウン、スタンプ、若しくは他の方法で固定化及び定着)を有し得る。
【0038】
本発明はさらに、組織病理学、細胞病理学、免疫組織化学、及びin‐situハイブリダイゼーションにおける生物試料の複合試料調製及び顕微鏡分析のための上記類のカートリッジ若しくは装置の使用に関する。
【0039】
本発明のこれらの及び他の態様は以降に記載の実施形態から明らかとなり、それを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の一実施形態にかかる装置に取り付けられるカートリッジを示す。
図2】カートリッジへの基板の固定のための一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
患者から採取した材料(例えば組織及び細胞)の病理学診断検査は、特にオンコロジーにおいて多くの治療決定の基礎である。生検からの標準薄スライスが顕微鏡スライド上に提示され、組織の形態学を視覚化する所定プロトコルに従って、例えばヘマトキシリン‐エオシン(H&E)によって染色される。さらに、疾患特異的バイオマーカのためのin situ染色が、組織上に存在するタンパク質への抗体の特異的結合、いわゆる免疫組織化学(IHC)に基づく標的薬剤のコンパニオン診断、並びに、染色体若しくは遺伝子の一部、又はメッセンジャーRNAへのヌクレオチドの設計シーケンスのハイブリダイゼーション(in‐situハイブリダイゼーション、ISH)のために使用され得る。評価は一般に明視野若しくは蛍光顕微鏡又はデジタルスキャナでなされる。スライドは診断が再評価される必要がある場合のバックアップとして検査後に長期間保存される必要がある。
【0042】
組織標本はパラフィン包埋生検から約2‐8ミクロンの薄片をカットすることによって得られる。ミクロトームひずみ(microtomic strain)から緩和するためにいわゆるクーペが水膜上の顕微鏡ガラススライド上に置かれ、その後乾燥させる。異なるアプリケーションに利用可能な複数の染色プロトコルがある。染色プロトコルは、試薬を含む異なる溶液にスライドをクーペとともに浸すことによってベンチ上で手動で実行され得る(典型的なプロトコルが以下に列挙される)。染色プロトコルは典型的には少なくとも2.5時間かかり、場合によっては一晩インキュベーションを要する。試薬のフローは(半)開放システムにおいては界面張力及び重力によって駆動され、これは制御及び流量を制限する。
【0043】
従来技術にかかる染色手順は以下の欠点に悩まされることが多い:
‐バッチ操作に起因する機器の非効率的使用
‐低使用における保存試薬の限られた保存期間に起因する試薬の非効率的使用
‐試薬とプロコルへの自由なアクセスに起因する失敗のリスク
‐開放システムに起因する液界面及び汚染のための高い保守努力
‐長いアッセイ時間と染色の不均一性につながる流体フローの限られた制御
‐標準化/外部承認の欠如
【0044】
これらの問題に対処するために、組織学的及び細胞学的染色プロトコルを実行する新たな方法が提案される。このアプローチの一実施形態によれば、試料は試料の導入後に密閉されるカートリッジの一部である基板上に置かれる。閉じられた"反応チャンバ"は約50ミクロンのオーダーの狭いギャップで作られる。カートリッジは随意に、好適には空気圧インターフェースを介して、反応チャンバの温度と試薬のフローを制御する装置若しくは機器上に置かれることができる。試薬は閉じたチャネル内の圧力駆動フローによって反応チャンバの中へ及び試料の上に送り出され得る。これはフロー条件の正確な制御を可能にし、試薬の量を制限し、洗浄及び試薬交換ステップを改善する。これはプロトコルのより迅速な実行と、より再現性のある結果につながる。試薬はカートリッジのボード上に置かれ得る。カートリッジは使い捨てであり得る。試料は随意に、試料チャンバ内に存在する光学窓のためにカートリッジから除去することなく検査されることができる。落射蛍光により、試料は基板(透明な場合)を通して検査されることができ;明視野の場合、透過測定を可能にするために基板の反対側にも窓が存在しなければならない。
【0045】
図1は上記原理の一実施形態にかかる処理装置150のインターフェース(平面上面)に取り付けられるカートリッジ100の側断面図を概略的に示す。
【0046】
カートリッジ100は好適には例えば(例えば互いに永久的に取り付けられる二つ以上の部品の)射出成形によって作られ得るワンピースカートリッジ本体110から成る。カートリッジはその底部側(図中)に以下"反応チャンバ"116とよばれる空洞を持ち、これは約100μm未満の高さhを持つ実質的に平坦な立方体形状を持つ。x、y平面における反応チャンバの面積は最大数cmまでであり得る。反応チャンバ116の側壁は共通面で終わる突起若しくはリム117によって形成され、従って当該面において反応チャンバの底部開口部まわりに閉曲線を画定する。この反応チャンバ116の底部開口部は図示の実施例では基板140によって閉じられ封じられる。カートリッジ本体110と基板140の間の取り付けは例えばリム117の上の接着剤若しくは粘着剤によって実現され得る(代替的な可能性が図2に関して論じられる)。
【0047】
上述の基板140は例えば処理若しくは調製される生物試料1が供され得る顕微鏡スライドであり得る。試料1は基板140の上面に位置し、従って反応チャンバ116の内側に面する。基板140は概念的にはカートリッジ100に属するか、若しくはその独自の個別要素と考えられ得る。別の好適な実施形態において基板はアモルファスポリマーで作られ、随意に組織接着及び/又はバリア特性及び/又は反射防止特性のための所望の表面特性のためのコーティング層を備える。好適な実施形態において基板はカートリッジへヒンジを介して永久的に接続され得るカートリッジの一体部分である。
【0048】
カートリッジ100は反応チャンバに流体力学的に結合される流体入口システムをさらに有する。図示の実施例において、流体入口システムは試料1の処理のために必要な試薬(例えば染色剤)が保存される試薬貯蔵部113を有する。試薬貯蔵部113はチャネル115によって反応チャンバ116の第一端に接続される。試薬貯蔵部113の一つの側壁は試薬貯蔵部113の可動壁となる変形可能膜112によって形成され、流体システムを環境に対して閉じたままにしながら(試薬の流出に起因する)ボリューム変化を可能にする。膜112は弾性張力でつるされ得るか、又は試薬貯蔵部113の充填及び空状態の両方において弛緩するのに十分な領域を備え得る。
【0049】
別の膜114がチャネル115の一つの壁に配置される。この膜114の外側は導管111を介してカートリッジ100の底部側に接続される。
【0050】
カートリッジ100は反応チャンバの(第一端と反対の)第二端に接続される流体出口システムをさらに有する。流体出口システムは廃棄チャンバ123と、反応チャンバ116の第二端に当該チャンバを接続するチャネル125とを有する。廃棄チャンバ123の一つの壁は随意に変形可能膜122によって構成される。試薬貯蔵部113内の膜112と同様に、この変形可能膜122は流体システムを環境から分離したままにしながら廃棄チャンバ123の充填レベルを変化させることを可能にする。さらに、別の柔軟膜124が出口チャネル125内に配置され、当該膜の外側は導管121によってカートリッジの底部側に接続される。
【0051】
基板140が試料1とともにカートリッジの反応チャンバ116の開口部に取り付けられるとき、開口部のリム117は密封状態で基板に緊密に接触する(例えば粘着によって取り付けられる)ので、試料1のまわりに閉じた流体システムを形成する。この流体システムは流体入口システム、反応チャンバ、及び流体出口システムを有し、試薬貯蔵部113から反応チャンバ116を通って廃棄チャンバ123へ、試薬流体の制御可能な圧力駆動フローを可能にする。
【0052】
上述の流体フローの制御を可能にするために、カートリッジ100は基板140とともに処理装置若しくは機器150に当該装置のインターフェースにおいて結合される。図示の実施形態において、当該インターフェースは実質的に平面であり、その上に基板140とカートリッジ100が置かれることができる。
【0053】
カートリッジ100が機器上にあるとき、基板は装置150の温度コントローラ152より上に位置し、これによって反応チャンバ116内の温度が制御され得る。さらに、流体入口システムと流体出口システムの膜114及び124へ通じる導管111、121はそれぞれ空気圧コントローラ151及び153より上に位置する。装置150の右手側の空気圧コントローラ153が過大圧力(overpressure)を生成するとき、この圧力は導管111によって膜114へ伝えられ、これは入口チャネル115の中へ内側に膨張し、従って反応チャンバ116の方へ試薬のフローを作り出す。好適には、膜114は反応チャンバへ向けられる流体フローに振動圧力を変換するために弁(不図示)などの追加素子を有する蠕動ポンプの一部である。従って膜はアクチュエータの片側と反対側の間の圧力差に依存して一方若しくは他方の方向に曲げられるアクチュエータである。過小圧力(典型的には0.1‐0.2 bar)をかけることによって、膜は低圧側の方向に曲げられ、過大圧力(典型的には1.5から2.0 bar)をかけることによって反対方向に曲げられる。
【0054】
同様に、装置150の左手側の空気圧コントローラ151は導管121を介して膜124に作用することができ、これは廃棄チャンバ123への(廃棄)流体の(蠕動)フローを誘導する。
【0055】
従って膜114と124はポンプ素子として機能し、これにより流体のよく制御された圧力駆動フローが反応チャンバ116内に生成されることができる。
【0056】
試薬貯蔵部113及び廃棄チャンバ123内の膜112及び122はそれぞれ異なる位置に固定され、従って最初は(外圧なし)異なる状態にあることが留意されるべきである。試薬貯蔵部113の膜112は、膜の初期状態において試薬流体が試薬貯蔵部113を完全に充填し得るようにチャネル115から離れて固定される。これと対照的に、廃棄チャンバ123内の膜122は、膜の初期状態において廃棄チャンバが実質的に空になるようにチャネル124の入口において固定される。
【0057】
さらに、流体入口システムは随意に、反応チャンバへ独立して空にされることができる複数の試薬貯蔵部を有し得る。
【0058】
図2はカートリッジ本体210への基板240(例えば顕微鏡スライド)の取り付けのための代替的アプローチを略側面図で図示する。カートリッジ200内の流体システムの詳細は図1と同様であり、従って明確にするために図面では省略される。
【0059】
図示の実施形態において、カートリッジ本体210への基板240の取り付けは基板240とカートリッジ本体210の間に真空チャンバ219を設けることによって実現される。この真空チャンバ219は(例えば粘着性の若しくは粘着された)同心リッジ217によって試料1のまわりに画定される。基板240とカートリッジ本体210の間のギャップ高さhは随意に、正確に定義された直径のスペーサ(例えばガラスビーズ)を導入することによって制御され得る(これらは粘着剤が使用される場合粘着剤の一部であり得る)。
【0060】
さらに、カートリッジの外側へ及び/又は圧力コントローラ(不図示)へ真空チャンバ219を接続する吸引チャネル218がカートリッジ本体210内に設けられる。従って例えば約0.1‐0.2 barの過小圧力が真空チャンバ219に印加されることができ、これはカートリッジ本体210への基板240の緊密な取り付けを生じる。
【0061】
基板とカートリッジ本体の間の取り付けの強度は、反応チャンバにおいて圧力駆動フローによって加えられる力よりも高くなければならない。真空を用いる場合、これは基板とカートリッジが固いという条件で、真空部における圧力と表面積の積が反応チャンバにおけるものと等しくなければならないことを意味する。粘着剤では、粘着剤の強度×粘着リッジの接触面が反応チャンバにおける液体の力に等しくなければならない。
【0062】
カートリッジ本体への基板のクランプはさらに別のオプションである。これはその中でカートリッジが処理される機器(図1の150)の一部であり得るばね荷重若しくは(電)磁石によってなされ得る。
【0063】
上記実施形態の本質的特徴は、試料(例えば組織若しくは細胞学材料)を保持する基板(の面外)に両方とも垂直な、ただ一つのマイクロ流体入口及び出口ポートを持つ閉じたチャンバに試料が導入されるという事実である。試薬は圧力駆動フローによって試料の上に送り出され、これは半開放システムよりも高いせん断速度を可能にする。増加したせん断速度は試薬のより迅速な供給と侵入、及びより効率的な洗浄を可能にし、これは短縮された時間で改良された染色品質をもたらす。
【0064】
このアプローチの一部となり得る多数の(オプションの)特徴があり、例えば:
‐試料は顕微鏡スライド、若しくは代替的にプラスチック基板のような個別の平面基板上に提示され得る。試料のサイズは典型的には約1cmから2cmのオーダーである。
‐基板の厚さは既存のソリューションと互換性があるように従来のスライドの厚さ(1mm)に等しくなり得るか、又は好適には高分解能で基板を通した検査を可能にし、カバースライドを時代遅れなものにするようもっと薄く(例えば約0.2mmより小さく)なり得る。
‐基板は染色後の光学検査を容易にするために試料の正確で再現性のある配置を可能にする特徴("マーカ")を含み得る。図1において、このような一つのマーカ141が概略的に示される。
‐図示の通り、基板はカートリッジへの導入後に例えば粘着若しくはクランプによって取り付けられる個別部品であり得る。代替的に、基板はカートリッジの一体部分であり得る。試料の導入を可能にし、試料導入後に閉じられ得るカートリッジ開口部若しくは蓋が存在し得る。試料を伴う基板は処理後に効率的な保存のためにカートリッジの残りの部分から除去され得る。
‐試薬は個別の密封された区画においてカートリッジ上に湿潤及び/又は乾燥状態で保存されることができ、特にアッセイ特異的な、高価な染色剤であり、随意に環境に有害な物質である。物流及び保存条件にさらなる柔軟性を可能にするために個別の試薬容器がカートリッジに取り付けられ得る。
‐試薬の廃棄物は、液体汚染が装置上で起こらず、洗浄が必要ないように、カートリッジのボード上で収集され得る。廃棄物容器は処分を容易にするために取り外し可能なエンティティとして設計され得る。
‐透過モードでの試料の光学検査、若しくは基板の代わりに特別窓を通した検査を可能にするために、カートリッジ内に一つ以上の追加窓が例えば基板の反対側に存在し得る。
‐検査中の改良された安定性とコントラストのため、試料を保存するために最終ステップにおいて固定剤が導入され得る。
‐流体駆動はカートリッジ内部の膜に作用する空気圧アクチュエータを介してなされ得る。このように機器との液体の直接接触は不可能である。
‐カートリッジは、タイプ及び/又は存在する試薬を認識するバーコード若しくはRFIDチップのような一つ以上の識別手段を含み得る。加えて、試料が個別の基板上に導入される場合、基板上にIDが存在し得る。
‐カートリッジは試薬の状態と反応の状態についてのインジケータを含み得る。
‐カートリッジと装置は(例えば単純バッファ用に)装置上に試薬貯蔵部を持つことも可能にするように設計されることができ、当該試薬は閉鎖可能な相互接続(不図示)を介してカートリッジ内に輸送され得る。
【実施例1】
【0065】
以下、例示的な染色手順がより詳細に記載される。この手順では、50μmギャップ反応チャンバ及び(1日に2プロトコルを可能にするために)3.5時間のインキュベーション時間でKreatechプロトコル(Kreatech Diagnostics,アムステルダム)を用いてFISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)がプロトタイプカートリッジ上で実行された。これがFISHの成功につながるかどうかをチェックするために、同じインキュベーション時間を用いてマニュアルプロトコルも実行された。
【0066】
SKBR3細胞株由来の細胞をスライド上でサイトスピン(cytospin)し、−80℃で保存した。スライド上の細胞集合は次のように処理された:
‐4%ホルムアルデヒドで10分間固定;
‐PBSで洗浄;
‐脱塩(demi)HOで洗浄;
‐顕微鏡スライド上で完全乾燥;
‐テープをカートリッジに適用;
‐顕微鏡スライドをテープに適用。
【0067】
以下の表1は1日目に得られたカートリッジセットアップに実行されたステップを要約する(温度は機器によって設定される通りである)。
【表1】
‐94℃に達するまで約180秒かかる)
**‐反応チャンバを急冷し、気泡除去するためのポンプ)
***‐この温度に達するまで約2分かかる)
(RT=室温)
【0068】
この後、以下のステップが実行された:
‐顕微鏡スライドをカートリッジから除去;
‐テープを顕微鏡スライドから除去;
‐試料とガラスが完全に乾いていることを確認;
‐封入液を含むDAPIの小滴(10‐20μl)を適用;
‐カバーガラスを適用;
‐10分後、試料を画像化。
【0069】
実験は、得られる蛍光画像がFISH信号を示したことを証明した。
【0070】
要約すると、患者からの生物試料、特に組織切片の自動染色を可能にする、新たな装置の一実施形態が記載された。試料は新鮮凍結若しくはホルマリン固定、パラフィン包埋生検のミクロトーム切片の形で、又はスピンダウン細胞懸濁液として導入され得る。導入後、カートリッジはよく制御された狭いギャップとともに完全に閉じられた区画が試料周辺に画定されるように閉じられる。区画の片側は、閉鎖状態で試料の光学検査を可能にする薄い透明基板によって決定される。流体のアクセスは区画への入口及び出口ポートを介して提供される。区画内で試料の上で試薬と洗浄溶液を能動ポンプすることによって異なる処理プロトコルが実行されることができる。好適な実施形態において試薬はカートリッジのボード上に保存され、流体は空気圧で駆動される。平面の低コスト設計を可能にするために空気圧アクチュエータは好適には区画の隣に位置する。カートリッジは随意に金属要素とガラス基板要素とともに、射出成形及び/又は真空成形プラスチック部品と柔軟膜の組み合わせから構成され得る。例えば繊細な化学物質の保護を達成するために特定の光学特性が調節されることができ、カートリッジと試薬の所要保存期間を実現するために有機及び/又は無機バリア層が存在することができ、熱吸収及び/又は伝導素子が導入されることができる。
【0071】
本発明は、組織切片及び/又は細胞凝集(スピンダウン)の、免疫組織化学、近接ライゲーションアッセイ、padlockプローブアッセイ、並びにDNA及び/又はRNAへのin situハイブリダイゼーション、或いは明視野及び/又は蛍光ベース検査のための他の生物学的アッセイを実行するために、組織病理学、及び細胞病理学において応用されることができ、特にがん細胞における分子変化の識別に基づく患者層別化及びコンパニオン診断のためにオンコロジーアプリケーションのために応用され得る。
【0072】
本発明は図面と上記説明において詳細に図示され記載されているが、かかる図示と記載は例示若しくは説明であって限定ではないとみなされるものとする。本発明は開示の実施形態に限定されない。開示の実施形態への他の変更は、図面、開示及び添付の請求項の考察から、請求される発明を実施する上で当業者によって理解されもたらされることができる。請求項において"有する"という語は他の要素若しくはステップを除外せず、不定冠詞"a"若しくは"an"は複数を除外しない。単一のプロセッサ若しくは他のユニットは請求項に列挙される複数の項目の機能を満たし得る。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されるという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に若しくはその一部として供給される光学記憶媒体若しくは固体媒体などの適切な媒体上に保存/分散され得るが、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムなどを介して他の形式で分散されてもよい。請求項における任意の参照符号は範囲を限定するものと解釈されてはならない。
図1
図2