(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の回転子積層鉄心への永久磁石の樹脂封止方法において、前記下型を上昇させることによって、前記回転子積層鉄心を前記下型及び前記上型によって押圧することを特徴とする回転子積層鉄心への永久磁石の樹脂封止方法。
請求項1又は2記載の回転子積層鉄心への永久磁石の樹脂封止方法において、前記上型に前記磁石挿入孔に樹脂部材を押し込むポットが設けられていることを特徴とする回転子積層鉄心への永久磁石の樹脂封止方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1及び
図2に模式的に示すように、本発明の一実施の形態に係る永久磁石の樹脂封止装置10は、複数の鉄心片が積層され中央に軸孔11を備えた回転子積層鉄心12に形成された複数(本実施の形態では8個)の磁石挿入孔13に挿入された永久磁石14を、樹脂部材の一例である熱硬化性樹脂15を磁石挿入孔13に注入して固定する装置である。
【0016】
永久磁石の樹脂封止装置10は、回転子積層鉄心12を搭載する搬送トレイ16と、搬送トレイ16に搭載された回転子積層鉄心12を載置し、回転子積層鉄心12を下から加熱すると共に昇降する第1の加熱手段(図示せず)が設けられた下型17と、回転子積層鉄心12の上に搭載されて回転子積層鉄心12を上から加熱する第2の加熱手段(図示せず)及び熱硬化性樹脂15の原料(タブレットと呼ぶ)18を入れる複数(本実施の形態では8個)のポット19を有し、更に底部にはポット19からの熱硬化性樹脂15を磁石挿入孔13に導く流路20を備え、下型17の上昇に伴って上昇する上型21とを備えている。
【0017】
永久磁石の樹脂封止装置10は、更に、上型21の上方にあって下降限位置にある上型21とは、原料18を挿入するための作業空間Sとなる隙間G(
図5参照)を有して固定配置される固定架台22と、固定架台22を貫通し、上昇した上型21のポット19に投入された熱硬化性樹脂15を加圧する複数(本実施の形態では8個)のプランジャー23と、上昇時の上型21を上昇限位置に保持するストッパー24とを有する。搬送トレイ16は、回転子積層鉄心12の下面25が当接する矩形板状のトレイ部26と、トレイ部26の中心部に立設され、回転子積層鉄心12の軸孔11に嵌入する直径固定型で棒状のガイド部材27とを有している。以下、これらについて詳細に説明する。なお、各部品は組立て及び交換を考慮して、基本的にねじ締結されている。
【0018】
図1、
図3及び
図4に示すように、矩形板状の固定架台22は取付けフレーム28の上部に設けられた上固定プレート29に取付けられており、下型17は取付けフレーム28の下部に設けられた下固定プレート30と上固定プレート29とを連結する4本のガイドポスト31に沿って上下動する昇降プレート32に載置されている。なお、固定架台22の内部には加熱手段が設けられており、プランジャー23を予め加熱して熱硬化性樹脂15の押し出しを容易にすると共に、固定架台22と下型17との熱膨張差を無くして、プランジャー23とポット19との合口のずれを無くすようにしている。
【0019】
昇降プレート32は下固定プレート30に設けられた下型昇降手段33により上下動するようになっている。複数のプランジャー23は上固定プレート29に設けられたプランジャー駆動手段34により同時に上下動するようになっている。
【0020】
図3及び
図4を参照して、永久磁石の樹脂封止装置10について更に詳細に説明する。
型鋼等で構成された取付けフレーム28の上部、下部にはそれぞれ、矩形状の上固定プレート29、下固定プレート30が垂直間隔をあけて水平に配置されている。上固定プレート29及び下固定プレート30は、それぞれの4隅を4本のガイドポスト31により連結されている。
【0021】
4本のガイドポスト31の上下方向中間位置には、ガイドポスト31に沿って上下に摺動し、下型17が搭載された矩形状の昇降プレート32が水平に配置されている。昇降プレート32を駆動する下型昇降手段33は、下固定プレート30上に取付けられたサーボモータ34aと、サーボモータ34aにより駆動され、下固定プレート30上に取付けられた減速機付きウォームジャッキ35と、減速機付きウォームジャッキ35の上側に突出した出力軸35aに継手を介して設けられた皿バネ35bと、皿バネ35bの上端に設けられ、昇降プレート32の下面に当接して配置されたロードセル36とを備えている。ロードセル36により、上型21に対する下型17の押圧を計測することができる。
【0022】
複数のプランジャー23を駆動するプランジャー駆動手段34は、上固定プレート29上に固定された取付けブラケット37に設けられたサーボモータ38と、サーボモータ38により駆動される減速機付きウォームジャッキ39と、減速機付きウォームジャッキ39の下側に突出した出力軸に継手を介して設けられたロードセル39aと、ロードセル39aの下面に、皿バネ39bを介して当接して上下動するプッシュロッド40とを備えている。ロードセル39aによりプランジャー23の押し込み圧を測定している。
【0023】
図5〜
図7に示すように、ウォームジャッキ39のプッシュロッド40は上固定プレート29の中央部を貫通して設けられており、貫通部には摺動メタル41、41aが取付けられている。上昇限位置のプッシュロッド40は、上固定プレート29の下面にねじ締結された矩形状の断熱プレート42を貫通し、更に、断熱プレート42の下面にねじ締結された矩形状の取付けプレート43も貫通して配置されている。
【0024】
上固定プレート29の下面で、断熱プレート42の左右方向両側には、細長矩形状の断熱プレート44、45を介して吊り金具46、47がねじ締結によって垂下されている。対向して配置された吊り金具46、47の内側には対向する凹状の掛止溝48、49が水平に形成されており、掛止溝48、49にそれぞれ、固定架台22の両端部が嵌入している。吊り金具46、47の外側には、断熱ボード46a、47aが取付けられている。
【0025】
取付けプレート43の下面には、左右方向にスライド可能で、金型の段取りの際に使用される対となるシャタープレート50、51が設けられている。プッシュロッド40の先端の掛止部40aには、掛止部40aに掛止可能な馬蹄形(U字形)のシャンクホルダー52を介してシャンクバッキングプレート53が取付けられている。更に、シャンクバッキングプレート53の下面にはプランジャーホルダー54が設けられている。
【0026】
シャタープレート50、51の下面と固定架台22の上面との間には、プランジャーホルダー54の昇降をガイドするプランジャーガイド55が固定架台22に固定して設けられている。なお、シャンクバッキングプレート53及びプランジャーホルダー54には、8本のプランジャー23を接続金具54aを介して下方に付勢するバネ54bが設けられている。
【0027】
図8(A)に示すように、外形断面が略正方形に形成されたプランジャーガイド55は、内形が略円形に形成され、しかも、内周には、断面U字状で放射状に配置された突起部58が円周方向に等ピッチで形成されている。一方、
図8(B)に示すように、外形断面が略円形に形成されたプランジャーホルダー54の外周には、突起部58が上下に挿通する8個の断面U字状で放射状に配置された切欠き57が円周方向に等ピッチで形成されており、隣り合う切欠き57間にはプランジャー23が摺動する円孔56が円周方向に等ピッチで8個形成されている。かかる構成により、プランジャーホルダー54及びプランジャーガイド55の熱膨張を吸収して、製品の品質及び金型(上型21及び下型17)の動きに不具合が生じないようにしている。また、プランジャーガイド55の突起部58とプランジャーホルダー54の切欠き57を放射状に形成しているので、型締め時に、プランジャーガイド55の撓みを抑えることができる。
【0028】
図5及び
図6に示すように、固定架台22と上型21とは、4組設けられ、上端部にリング状の掛止部59を備えたパイプ状のスペーサー60及びスペーサー60内に配置され下端部に雄ねじ部61が形成されたボルト62によって連結されている。
固定架台22の上面でプランジャーガイド55の左右方向両側にはそれぞれ、バネ受けブロック63がねじ締結されており、各バネ受けブロック63内部に形成された2個の受け座64と上型21の上面との間にはコイルバネ65が配置されている。
【0029】
図8(C)に示すように、外形断面が略正方形状の固定架台22には、中央部に8本のプランジャー23が摺動する8個の円孔67が円周方向に等ピッチで形成されており、4隅付近には、スペーサー60が貫通する4個の円形の貫通孔68が形成され、更に、前後方向に配置された2個の貫通孔68間には、コイルバネ65が挿通する2個の円形の挿通孔69が間隔をあけて形成されている。固定架台22の4隅には、摺動ガイド部材の一例である、凹状の切欠き70が形成されたガイド部71が設けられている。
【0030】
図9(A)に示すように、上型21の上面の4隅には、固定架台22のガイド部71の切欠き70に挿通する外形断面が略矩形状のガイドポスト72がねじ締結により立設されている。上型21の中央部には、8個のプランジャー23が嵌入する8個のポット19が円周方向に等ピッチで設けられている。なお、ポット19は下端部にリング状の掛止部73を備えたパイプ状に形成されており、上型21に下方から着脱可能に取付けられている。
【0031】
図5〜
図7及び
図9(B)に示すように、上型21の下面には、矩形板状のキャビティブロック74がねじ締結されており、キャビティブロック74の中央部には8本のプランジャー23が摺動する8個の下部ポット19a(
図5及び
図6参照)が装着可能な円孔75が円周方向に等ピッチで形成されている。キャビティブロック74の下面で円孔75の半径方向内側には、深さの浅い円形溝76が形成され、これによって、搬送トレイ16のガイド部材27の先端部が入り込むための空間が形成されている。
【0032】
キャビティブロック74の回転子積層鉄心12の押圧面12aには磁石挿入孔13からの空気を外部に逃がすベント溝(図示せず)が設けられている。一方、搬送トレイ16のトレイ部26の回転子積層鉄心12の搭載面12bには磁石挿入孔13からの空気を外部に逃がすベント溝(図示せず)が設けられている。ベント溝の深さは、例えば、30〜50μmとしている。なお、ポット19は磁石挿入孔13に符合する位置とは別位置に設けられており、ポット19の底部には磁石挿入孔13に連通する流路20が設けられている(
図2参照)。
【0033】
図7に示すように、取付けプレート43と固定架台22との間には、プランジャーガイド55を挟んで前後方向両側に、対向して断熱プレート77、78が図示しないブラケットを介して取り外し可能に設けられている。
【0034】
図5及び
図6に示すように、断熱ボード46a及び吊り金具46と、断熱ボード47a及び吊り金具47の左右方向外側には、ストッパー24を取付けるためのエアシリンダー79、80がブラケット81を介して設けられており、エアシリンダー79、80によりストッパー24が左右方向水平に進退するようになっている。従って、
図5及び
図6を比較して分かるように、上昇限位置にある上型21の左右方向の両端部の下面に4本のストッパー24が当接して、上型21の下方への移動が拘束される。
【0035】
図5及び
図6に示すように、固定架台22の中央下部及び上型21の中央上部には、固定架台22の下面と上型21の上面とが当接して、プランジャー23とポット19との芯が一致するように、対となる矩形状のガイドブロック82、83がそれぞれ、ねじ締結されている。ガイドブロック82の下面中央部には、上側に沿って縮径する円錐台状の溝部84が形成されており、一方、ガイドブロック83の上面中央部には、上側に沿って縮径し、溝部84に嵌入される突起部85が形成されている。位置決めは対応するテーパー面により行われる。
【0036】
図5及び
図6に示すように、シャンクバッキングプレート53の下面とプランジャーホルダー54により上部が保持され、固定架台22及び上型21を挿通可能な突き出しピン86が合計16本、プランジャー23の外側に設けられている。
【0037】
図7に示すように、昇降プレート32上には矩形板状の断熱プレート87を介して下型17が載置されており、下型17内には搬送トレイ16のトレイ部26の下面に当接するローラ88が前後方向に間隔をあけて3個、しかも、左右方向に2組配置されている。各ローラ88は、ローラ88直下に配置されたバネ89を介して上方に付勢されている。下型17は前後に設けられたL形のクランプ部材90によって、上型21との位置合わせが行え、図示しない締め付けボルトにより昇降プレート32に固定されるようになっている。
【0038】
図3、
図5及び
図6に示すように、昇降プレート32、断熱プレート87及び下型17を貫通して、上下動する4本の進退ロッド91が配置されており、各進退ロッド91には、ガイド機構を介して駆動用のエアシリンダー92が設けられている。昇降プレート32の4隅部は、軸受メタル93、94を備えた軸受部95により、ガイドポスト31に摺動可能に取付けられている。なお、
図3中の符号99、100はエリアセンサーを、
図4中の符号101はエリアセンサーを、符号102は操作ボックスを、符号103は制御盤を表している。
【0039】
次に、永久磁石の樹脂封止装置10を用いた本発明の一実施の形態に係る永久磁石の樹脂封止方法について、主として
図10を参照しながら説明する。
(a)前工程から送られてきた、永久磁石14が磁石挿入孔13に挿入され搬送トレイ16にセットされた回転子積層鉄心12を別途搬送手段等を用いて下型17上に搬送し、上型21(以下、キャビティブロック74も含む)に対して位置決めして固定する(回転子積層鉄心の供給作業)。
【0040】
(b)下型昇降手段33により昇降プレート32を介して下型17を少し上昇し、回転子積層鉄心12とキャビティブロック74とを密着させる。次いで、熱硬化性樹脂15の原料18を固定架台22と上型21との隙間G(実施の形態では80mm)から上型21のポット19に供給し、原料18を第2の加熱手段により約170℃近傍に加熱する(タブレットの供給作業)。
【0041】
(c)原料18が加熱されて粘度が下がると、更に、下型昇降手段33により昇降プレート32を介して下型17を上昇して、搬送トレイ16にセットされた回転子積層鉄心12を上型21に押し付ける(この際、対となるガイドブロック82、83により芯出しされ、隙間G=0となる)と共に、プランジャ駆動手段34によりプランジャーホルダー54を介して8本のプランジャー23を下降することによって、流動化した原料18、即ち熱硬化性樹脂15をポット19から押し出し、ポット19と磁石挿入孔13を連結する流路20を介して熱硬化性樹脂15を磁石挿入孔13に充填する。
【0042】
上型21の第2の加熱手段及び下型17の第1の加熱手段により、熱硬化性樹脂15を、約170℃近傍を保持して約3分間加熱し続けることにより、熱硬化性樹脂15を硬化させることができ、永久磁石14を磁石挿入孔13に固定することができる。この際、永久磁石14は下面基準で積層されるため、回転子積層鉄心12の上端面と永久磁石14の上端面との間には僅かな段差が生じるようになっている。また、磁石挿入孔13内の空気はキャビティブロック74の押圧面12a及び搬送トレイ16のトレイ部26の搭載面12bに形成されたベント溝を介して外部に逃がすことができる。(型締め及び樹脂注入作業)。
【0043】
このように、熱硬化性樹脂15の原料18を加熱して(約170℃近傍)、溶かして回転子積層鉄心12の上面から磁石挿入孔13内に充填するので、熱硬化性樹脂15が磁石挿入孔13内に容易に入る。
【0044】
(d)
図6に示すように、4本のストッパー24を突出させて、上昇限位置にある上型21の左右方向の両端部の下面にストッパー24を当接させて、上型21の下方への移動を拘束した後、プランジャー駆動手段34によりプランジャーホルダー54を介して突き出しピン86を僅かのストローク(5mm程度)下降させると共に、下型昇降手段33により昇降プレート32を介して下型17を下降させる(型開き作業)。その後、搬送トレイ16を回転子積層鉄心12と共に、下型17から取り外し、回転子積層鉄心12が搬送トレイ16から取り外され、搬送トレイ16は別途搬送手段により後工程に送られる。
【0045】
(e)クリーナー96により、プランジャー23及びポット19のクリーニングを行う(プランジャーのクリーニング作業)。
(f)下型昇降手段33により昇降プレート32を介して下型17を上昇すると共に、エアシリンダー92を駆動し、進退ロッド91を上昇して、4本の進退ロッド91の上端により上型21を支持する(上型開き準備作業)。
【0046】
(g)4本のストッパー24を後退させた後、下型昇降手段33により昇降プレート32を介して下型17を下降させ、上型21を元の位置まで下降させ、更に、下型17を下降させる(上型開き作業)。
(h)4本の進退ロッド91を後退させ、固定架台22と上型21との隙間Gの原料18の挿入部を、クリーナー97によりクリーニングする(タブレット投入部のクリーニング作業)。
(i)クリーナー98により、上型21及び下型17をクリーニングする(金型のクリーニング作業)。
【0047】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の永久磁石の樹脂封止方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
キャビティブロック74を上型21の下面に着脱可能に設けたが、これに限定されず、必要に応じて、上型とキャビティブロックとを一体的に構成することもできる。
搬送トレイ16には、回転子積層鉄心12の軸孔11に嵌入する直径固定型のガイド部材27を設けたが、これに限定されず、必要に応じて、種々の回転子積層鉄心の軸孔のサイズに応じて直径が拡縮可能な直径拡縮型のガイド部材を用いることもできる。
【0048】
搬送トレイ16のトレイ部26の搭載面12b及びキャビティブロック74の押圧面12aにベント溝を形成したが、これに限定されず、必要に応じて、ベント溝を省略することもできる。
固定架台22の周囲には上型21の摺動ガイド部材を備え、しかも、プランジャーホルダー54はプランジャーガイド55によってガイドされるように構成したが、これに限定されず、必要に応じて、別の方法でガイドすることもできる。
各プランジャー23の上端にバネ54bを設けたが、これに限定されず、必要に応じて、バネを省略することもできる。
樹脂部材として熱硬化性樹脂15を用いたが、これに限定されず、例えば、モータ製品として発熱温度が低い場合には、熱可塑性樹脂を用いることもできる。
上型21の底部にはポット19からの熱硬化性樹脂15を磁石挿入孔13に導く流路20を設けたが、これに限定されず、必要に応じて、ポットを磁石挿入孔に符合する位置に設けることもできる。この場合には、熱硬化性樹脂15を磁石挿入孔13に導く流路が不要となる他、熱硬化性樹脂15の使用量を減らすことができる。