(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
柄に刃が取り付けられた彫刻刀であって、先端側に反り返った部分を有し、当該反り返った部分は、刃先の近くにある位置と、刃先から退避する位置の間を移動可能であり、
前記反り返った部分は、前記柄に対して前後方向に移動可能に拘束され、前記反り返った部分は前記柄から抜け落ちず、
使用者が操作して前記反り返った部分を移動させることが可能な操作部を有し、
前記操作部は、前記反り返った部分を移動させる際に、使用者によって移動方向に押し引きされる部位であり、
前記反り返った部分を移動させることが可能な操作部が使用時の姿勢を基準として裏側だけにあることを特徴とする彫刻刀。
保護部材の保護部材本体部は、刃が固定される本体部と係合して先端部を前記本体部に沿って前後方向にのみ移動可能に拘束されていることを特徴とする請求項6に記載の彫刻刀。
刃が固定される本体部を有し、前記本体部の彫刻作業時に上面となる部位であって、前記本体部の先端部分に、柄尻側から刃先側に行くほど上側に反り返った押圧部があることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の彫刻刀。
保護部材を有し、前記平面視略コ又は略Uの字形状部は前記保護部材の先端部であって反り返った部分であることを特徴とする請求項1,3,9,10,11,12のいずれかに記載の彫刻刀。
前記平面視略コ又は略Uの字形状部は環状の部位の先端部分によって構成されていることを特徴とする請求項1,3,6,9,10,11,12,13のいずれかに記載の彫刻刀。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、特許文献1のガードや、特許文献2の保護カバーを設けると、木等の彫刻対象物に対して彫刻刀の刃が当たる角度が制約されてしまうので、使用者によっては彫刻刀の使用感が悪化してしまう。すなわち、保護カバーが装着されておらず、刃がむき出しの状態の方が使用し易いと感じる熟練した使用者も多い。
【0008】
そして、このような熟練した使用者は、ガード又は保護カバーを外した状態で彫刻刀を使用することが多くなる。ところが、彫刻作業が終了し、彫刻刀を収容ケース等に収容する際に、取り外したガード又は保護カバーの存在を失念してしまうことも多い。その結果、当該彫刻刀は、ガード又は保護カバーを装着していない状態で保管される。よって、次の機会に当該彫刻刀を初心者が使用しようとすると、ガード又は保護カバーが装着されていないので、刃がむき出し状態の彫刻刀を使用せざるを得なくなる。
【0009】
そこで本発明は、使用者が必要に応じて刃の周囲に配置される保護部材を使用するか否かを選択することができ、さらに保護部材を紛失する恐れがない彫刻刀を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、柄に刃が取り付けられた彫刻刀であって、刃先の周囲に配置可能な平面視略コ又は略Uの字形状部を有し、前記略コ又は略Uの字形状部は、刃先の近くにある位置と、刃先から退避する位置の間を
前記柄に対して移動可能であり、前記略コ又は略Uの字形状部は、前後方向に移動可能に拘束され、前記略コ又は略Uの字形状部は
前記柄から抜け落ちず、使用者が操作して前記略コ又は略Uの字形状部を移動させることが可能な操作部を有し、前記略コ又は略Uの字形状部を移動させることが可能な操作部が使用時の姿勢を基準として裏側だけにあることを特徴とする彫刻刀である。
すなわち、柄に刃が取り付けられた彫刻刀であって、刃先の周囲に配置可能な平面視略コ又は略Uの字形状部を有し、前記略コ又は略Uの字形状部は、刃先の近くにある位置と、刃先から退避する位置の間を移動可能であり、前記略コ又は略Uの字形状部は、前後方向に移動可能に拘束され、前記略コ又は略Uの字形状部は抜け落ちず、使用者が操作して前記略コ又は略Uの字形状部を移動させることが可能な操作部を有し、前記略コ又は略Uの字形状部を移動させることが可能な操作部が使用時の姿勢を基準として裏側だけにあることを特徴とする彫刻刀である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、刃が固定される本体部と、刃の周囲に配置可能な保護部材とを有する彫刻刀であって、前記保護部材は、本体部に取付けられた状態で、保護部材として機能する位置と、刃から退避する位置の間を、本体部に沿って移動可能であり、保護部材が前後方向に移動可能に拘束され、保護部材は本体部から抜け落ちず、使用者が操作して保護部材を移動させることが可能な操作部を有し、
前記保護部材は操作部を有し、前記操作部は、保護部材を移動させる際に、使用者によって移動方向に押し引きされる部位であり、前記保護部材を移動させることが可能な操作部が使用時の姿勢を基準として裏側だけにあることを特徴とする彫刻刀である。
すなわち、刃が固定される本体部と、刃の周囲に配置可能な保護部材とを有する彫刻刀であって、前記保護部材は、本体部に取付けられた状態で、保護部材として機能する位置と、刃から退避する位置の間を、本体部に沿って移動可能であり、保護部材が前後方向に移動可能に拘束され、保護部材は本体部から抜け落ちず、使用者が操作して保護部材を移動させることが可能な操作部を有し、前記保護部材を移動させることが可能な操作部が使用時の姿勢を基準として裏側だけにあることを特徴とする彫刻刀である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、刃が固定される本体部と、刃先の周囲に配置可能な平面視略コ又は略Uの字形状部とを有する彫刻刀であって、前記略コ又は略Uの字形状部は、本体部に取付けられた状態で、刃先の周囲に配置される位置と、刃先から退避する位置の間を、本体部に沿って移動可能であり、前記略コ又は略Uの字形状部は、前後方向に移動可能に拘束され、前記略コ又は略Uの字形状部は本体部から抜け落ちず、使用者が操作して前記略コ又は略Uの字形状部を移動させることが可能な操作部を有し、前記略コ又は略Uの字形状部を移動させることが可能な操作部が使用時の姿勢を基準として裏側だけにあることを特徴とする彫刻刀である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、柄に刃が取り付けられた彫刻刀であって、先端側に反り返った部分を有し、当該反り返った部分は、刃先の近くにある位置と、刃先から退避する位置の間を移動可能であり、前記反り返った部分は、
前記柄に対して前後方向に移動可能に拘束され、前記反り返った部分は
前記柄から抜け落ちず、使用者が操作して前記反り返った部分を移動させることが可能な操作部を有し、
前記操作部は、前記反り返った部分を移動させる際に、使用者によって移動方向に押し引きされる部位であり、前記反り返った部分を移動させることが可能な操作部が使用時の姿勢を基準として裏側だけにあることを特徴とする彫刻刀である。
すなわち、柄に刃が取り付けられた彫刻刀であって、先端側に反り返った部分を有し、当該反り返った部分は、刃先の近くにある位置と、刃先から退避する位置の間を移動可能であり、前記反り返った部分は、前後方向に移動可能に拘束され、前記反り返った部分は抜け落ちず、使用者が操作して前記反り返った部分を移動させることが可能な操作部を有し、前記反り返った部分を移動させることが可能な操作部が使用時の姿勢を基準として裏側だけにあることを特徴とする彫刻刀である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記操作部が柄尻側にあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の彫刻刀である。
【0015】
請求項6に記載の発明は、保護部材本体部と保護部材本体部の先に形成された先端部を有する保護部材があり、前記先端部は反り返っていて平面視略コ又は略Uの字形状部を構成しており、保護部材本体部は、前記先端部よりも長いことを特徴とす
る請求項1乃至5のいずれかに記載の彫刻刀である。
【0016】
請求項7に記載の発明は、保護部材の保護部材本体部は、刃が固定される本体部と係合して先端部を前記本体部に沿って前後方向にのみ移動可能に拘束されていることを特徴とする請求項6に記載の彫刻刀である。
【0017】
請求項8に記載の発明は、刃が固定される本体部を有し、前記本体部の彫刻作業時に上面となる部位であって、前記本体部の先端部分に、柄尻側から刃先側に行くほど上側に反り返った押圧部があることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の彫刻刀である。
【0018】
請求項9に記載の発明は、柄に刃が取り付けられた彫刻刀であって、刃先の周囲に配置可能な平面視略コ又は略Uの字形状部を有し、前記略コ又は略Uの字形状部は、刃先の近くにある位置と、刃先から退避する位置の間を
前記柄に対して移動可能であり、前記略コ又は略Uの字形状部は、前後方向に移動可能に拘束され、前記略コ又は略Uの字形状部は
前記柄から抜け落ちず、使用者が操作して前記略コ又は略Uの字形状部を移動させる操作部を有し、前記操作部が柄尻側にあることを特徴とする彫刻刀である。
すなわち、柄に刃が取り付けられた彫刻刀であって、刃先の周囲に配置可能な平面視略コ又は略Uの字形状部を有し、前記略コ又は略Uの字形状部は、刃先の近くにある位置と、刃先から退避する位置の間を移動可能であり、前記略コ又は略Uの字形状部は、前後方向に移動可能に拘束され、前記略コ又は略Uの字形状部は抜け落ちず、使用者が操作して前記略コ又は略Uの字形状部を移動させる操作部を有し、前記操作部が柄尻側にあることを特徴とする彫刻刀である。
【0019】
請求項10に記載の発明は、柄に刃が取り付けられた彫刻刀であって、刃先の周囲に配置可能な平面視略コ又は略Uの字形状部を有し、前記略コ又は略Uの字形状部は、刃先の近くにある位置と、刃先から退避する位置の間を
前記柄に対して移動可能であり、前記略コ又は略Uの字形状部を刃先の近くにある位置で固定可能であり、前記略コ又は略Uの字形状部を刃先から退避する位置でも固定可能であり、使用者が操作して前記略コ又は略Uの字形状部を移動させることが可能な操作部を有し、前記略コ又は略Uの字形状部を移動させることが可能な操作部が使用時の姿勢を基準として裏側だけにあることを特徴とする彫刻刀である。
すなわち、柄に刃が取り付けられた彫刻刀であって、刃先の周囲に配置可能な平面視略コ又は略Uの字形状部を有し、前記略コ又は略Uの字形状部は、刃先の近くにある位置と、刃先から退避する位置の間を移動可能であり、前記略コ又は略Uの字形状部を刃先の近くにある位置で固定可能であり、前記略コ又は略Uの字形状部を刃先から退避する位置でも固定可能であり、使用者が操作して前記略コ又は略Uの字形状部を移動させることが可能な操作部を有し、前記略コ又は略Uの字形状部を移動させることが可能な操作部が使用時の姿勢を基準として裏側だけにあることを特徴とする彫刻刀である。
【0020】
請求項11に記載の発明は、柄に刃が取り付けられた彫刻刀であって、刃先の周囲に配置可能な平面視略コ又は略Uの字形状部を有し、前記略コ又は略Uの字形状部は、刃先の近くにある位置と、刃先から退避する位置の間を
前記柄に対して移動可能であり、前記略コ又は略Uの字形状部を刃先の近くにある位置で固定可能であり、前記略コ又は略Uの字形状部を刃先から退避する位置でも固定可能であり、使用者が操作して前記略コ又は略Uの字形状部を移動させる操作部を有し、前記操作部が柄尻側にあることを特徴とする彫刻刀である。
すなわち、柄に刃が取り付けられた彫刻刀であって、刃先の周囲に配置可能な平面視略コ又は略Uの字形状部を有し、前記略コ又は略Uの字形状部は、刃先の近くにある位置と、刃先から退避する位置の間を移動可能であり、前記略コ又は略Uの字形状部を刃先の近くにある位置で固定可能であり、前記略コ又は略Uの字形状部を刃先から退避する位置でも固定可能であり、使用者が操作して前記略コ又は略Uの字形状部を移動させる操作部を有し、前記操作部が柄尻側にあることを特徴とする彫刻刀である。
【0021】
請求項12に記載の発明は、刃が固定される本体部と、刃の周囲に配置可能な平面視略コ又は略Uの字形状部とを有する彫刻刀であって、前記略コ又は略Uの字形状部は、前記本体部に取付けられた状態で、刃の周囲に配置される位置と、刃から退避する位置の間を、前記本体部に沿って移動可能であり、前記本体部の彫刻作業時に上面となる部位であって、前記本体部の先端部分に、柄尻側から刃先側に行くほど上側に反り返った押圧部があることを特徴とする彫刻刀である。
【0022】
請求項13に記載の発明は、保護部材を有し、前記平面視略コ又は略Uの字形状部は前記保護部材の先端部であって反り返った部分であることを特徴とする請求項1,3,9,10,11,12のいずれかに記載の彫刻刀である。
【0023】
請求項14に記載の発明は、前記平面視略コ又は略Uの字形状部は環状の部位の先端部分によって構成されていることを特徴とする請求項1,3,6,9,10,11,12,13のいずれかに記載の彫刻刀である。
【0024】
また関連する第1の態様は、使用者によって把持される本体部と、本体部に固定される刃と、刃の周囲に配置可能な保護部材とを有する彫刻刀であって、前記保護部材は、本体部に取付けられた状態で、保護部材として機能する位置と、刃から退避する位置の間を、本体部に沿って移動可能であることを特徴とする彫刻刀である。
【0025】
本態様では、保護部材が本体部に取付けられた状態で、保護部材として機能する位置と、刃から退避する位置の間を本体部に沿って移動可能である。すなわち、彫刻刀を使用するときに、保護部材が刃の近くにあると使用しづらいと感じる使用者は、保護部材を本体部に沿って移動させるだけで刃から保護部材を退避させることができる。その際、保護部材が本体部に取り付けられた状態を維持するので、彫刻刀を使用している間に保護部材を紛失する事態を回避できる。また、本体部に沿って保護部材を保護部材として機能する位置まで移動させるだけで刃の近くに保護部材を配置して使用者の身体を刃から守ることができる。
【0026】
関連する第2の態様は、保護部材には、本体部に対する保護部材の移動方向と直交する方向に突出する又は窪む保護部材側係合部が設けてあり、本体部には保護部材側係合部と係合する本体部側係合部が設けてあり、保護部材に作用する、保護部材側係合部と本体部側係合部の係合を解除する方向の力に抗する付勢手段があることを特徴とする第1の態様の彫刻刀である。
【0027】
第2の態様では、保護部材には、本体部に対する保護部材の移動方向と直交する方向に突出する又は窪む保護部材側係合部が設けてあり、本体部には保護部材側係合部と係合する本体部側係合部が設けてある。よって、保護部材に設けた保護部材側係合部と本体部に設けた本体部側係合部とが係合すると、本体部に対する保護部材の移動が阻止される。
また、付勢手段によって両係合部の係合を解除する方向の力に抗することができるので、両係合部の係合が不用意に外れることがない。すなわち、保護部材が使用者の意図しないタイミングで本体部に対して移動することがない。よって、彫刻刀の使用中に保護部材が本体部から外れたり、保護部材の先端が押圧されて本体部内に収納されることがなく、安全である。さらに、付勢手段の付勢力に抗して両係合部の係合を解除することにより、本体部に沿って保護部材を容易に移動させることができるようになる。すなわち、保護部材として機能する位置に保護部材を配置して彫刻刀を安全に使用したい場合と、刃から保護部材を退避させて使用したい場合とを容易に切り替えることができる。なお付勢手段は、保護部材自身の弾性力であってもよい。
【0028】
関連する第3の態様は、本体部は、保護部材の一部又は全部を収容する内部空間と、当該内部空間と連通し且つ保護部材の移動方向に延びる長孔状の開口とを有しており、保護部材には前記開口から突出する操作部が設けてあり、前記付勢手段の付勢力は、開口側から内部空間側に向かって保護部材の操作部を押し込もうとする力に抗することを特徴とする第2の態様の彫刻刀である。
【0029】
第3の態様では、保護部材の一部又は全部が本体部に設けられた内部空間内に収容される。すなわち、保護部材が刃から退避する際には、保護部材のより多くの部分が内部空間内に収容される。よって、保護部材なしの状態で彫刻刀を使用したい使用者は、保護部材のより多くの部分を本体部の内部空間に収容すると、彫刻作業中に保護部材が手に触れることがなく、従来の保護部材が設けられていない彫刻刀と同じ使用感で本発明を実施した彫刻刀を使用することができる。
また、本体部には内部空間と連通し且つ保護部材の移動方向に延びる長孔状の開口が設けられており、保護部材にはこの開口から突出する操作部が設けられている。そして、使用者が開口から突出する操作部を付勢手段の付勢力に抗して押圧すると、保護部材側係合部と本体側係合部の係合が外れ、本体部に沿って保護部材を移動させることができるようになる。
すなわち、操作部を付勢手段の付勢力に抗する力で押圧しない限り、保護部材側係合部と本体部側係合部の係合が解除されることがない。よって、本体部に対して保護部材の位置を確実に固定することができ、その結果、使用者の意図しない保護部材の移動を防止することができ、安全である。
【0030】
関連する第4の態様は、本体部には保護部材の一部又は全部を収容する溝が設けてあり、前記溝は開口を有しており、前記開口の幅は溝内部の幅よりも狭く、保護部材には前記開口から突出する操作部が設けてあり、前記保護部材側係合部の幅は、前記溝内部の幅よりは小さく且つ開口の幅よりは大きく、前記開口の所定位置には保護部材側係合部よりも幅が広い溝である本体部側係合部が形成されており、前記付勢手段の付勢力は、開口側から溝内部側へ保護部材の操作部に作用する力に抗し、さらに付勢手段は、保護部材側係合部を本体部側係合部に係合させるように保護部材側係合部を付勢することを特徴とする第2の態様の彫刻刀である。
【0031】
第4の態様では、本体部に設けた溝に保護部材の一部又は全部が配置され、保護部材は溝に沿って移動可能である。すなわち、保護部材側係合部の幅が、溝内部の幅よりは小さく且つ開口の幅よりは大きいので、保護部材側係合部が開口の縁に当接して保護部材は溝内に留まり、保護部材は開口から外へ飛び出さない。
ここで、開口の所定位置には保護部材側係合部の幅よりも幅が広い溝である本体部側係合部が設けてあり、さらに保護部材側係合部を本体部側係合部に係合させるように保護部材側係合部を付勢する付勢手段が設けてあるので、溝に沿って保護部材が移動すると、やがて保護部材側係合部が本体部側係合部に嵌って係合する。その結果、保護部材は本体部に対して移動不能状態となり、本体部に対する保護部材の位置が固定される。
このとき、付勢手段の付勢力は、開口側から溝内部側へ保護部材の操作部に作用する力に抗する。
また、保護部材を、付勢手段の付勢力に抗して開口側から溝内部側に押圧すると、保護部材側係合部が本体部側係合部から溝内部側へ移動し、保護部材側係合部と本体部側係合部の係合が解除される。その結果、保護部材は溝(本体部)に沿って移動可能になる。すなわち、使用者が保護部材を意図して押圧しなければ、保護部材側係合部が本体部側係合部から外れることがない。よって、使用者の予期しないタイミングで本体部に対する保護部材のロックが解除されることがなく、保護部材の不用意な移動が防止され、安全である。
【0032】
関連する第5の態様は、前記開口は、溝内部と外部とを仕切る一対の平板状の部材が間隔を開けて配置されて構成されており、前記平板状の部材の溝側の面に本体部側係合部が設けられていることを特徴とする第4の態様の彫刻刀である。
【0033】
第5の態様では、開口を構成する一対の平板状の部材の溝側の面に本体部側係合部が設けられているので、付勢手段で付勢された保護部材側係合部が本体部側係合部に確実に係合する。すなわち、保護部材側係合部が開口より外側に出て本体部側係合部との係合が外れることがない。よって、本体部に対して保護部材が確実に固定される。また、本体部側係合部が開口の外側から見えず、彫刻刀の外観がよくなる。
【0034】
関連する第6の態様は、本体部側係合部は、保護部材が保護部材として機能する位置に配置された際に保護部材側係合部と係合する位置に設けてあることを特徴とする第2乃至第5の態様のいずれかの彫刻刀である。
【0035】
第6の態様では、保護部材が保護部材として機能する位置に配置された際に、保護部材側係合部と本体部側係合部とが係合するので、保護部材が刃の近くに配置された状態で本体部に対して保護部材を固定することができる。そのため、刃の近くに配置されて使用者の身体を刃から守る保護部材が、不用意に移動することがない。その結果、使用者は安心して彫刻刀を使用することができる。
【0036】
関連する第7の態様は、本体部側係合部は、保護部材が保護部材として機能する位置に配置された際に保護部材側係合部と係合する位置に設けてあり、保護部材には操作部と反対側に隆起する保護部材側隆起部が設けてあり、本体部には、前記保護部材側隆起部と係合する本体部側隆起部が設けてあり、保護部材が刃から退避した位置に移動する際に、保護部材側隆起部の最も隆起する部位が、本体部側隆起部の最も隆起する部位に押圧されながら通過して係合することを特徴とする第2乃至第5の態様のいずれかの彫刻刀である。
【0037】
第7の態様では、保護部材に操作部と反対側に隆起する保護部材側隆起部を設け、本体部には本体部側隆起部を設けた。そして、保護部材を本体部に沿って刃から退避する位置まで移動する際に、保護部材側隆起部の最も隆起する部位が本体部側隆起部の最も隆起する部位に押圧されながら通過して係合し、その結果本体部に対する保護部材の移動が防止される。
また、保護部材側隆起部の最も隆起する部位が本体部側隆起部の最も隆起する部位を通過できる程度の力で操作部を刃先側へ押圧すると、保護部材側隆起部と本体部側隆起部の係合を解除することができる。
その際、保護部材を本体部の内部空間側又は溝内部側へ押圧変形させずに済むので、保護部材の耐久性が向上する。
【0038】
関連する第8の態様は、本体部側係合部は、保護部材が刃から退避した位置に配置された際に、保護部材側係合部と係合可能な位置に設けられていることを特徴とする第2乃至第7の態様のいずれかの彫刻刀である。
【0039】
第8の態様では、保護部材が刃から退避した位置に配置された際に、保護部材側係合部が本体部側係合部に係合する。よって、保護部材が不要な使用者が彫刻刀を使用している間に、保護部材が刃側に移動することがなく、良好な使用感が得られる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の彫刻刀は、保護部材が本体部に取付けられた状態で、保護部材として機能する位置と、刃から退避する位置の間を本体部に沿って移動可能である。よって、彫刻刀を使用するときに、保護部材が刃の近くにあると使用しづらいと感じる使用者は、保護部材を本体部に沿って移動させるだけで刃から保護部材を退避させることができる。その際、保護部材が本体部に取り付けられた状態を維持するので、彫刻刀を使用している間に保護部材を紛失する事態を回避できる。また、使用者の身体を刃から守りたいときには、本体部に沿って保護部材を保護部材として機能する位置まで移動させるだけで刃の近くに保護部材を配置することができる。すなわち、保護部材として機能する位置に保護部材を配置することによって、使用者は安全に彫刻刀を使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら説明する。
図1〜
図3に示すように彫刻刀1は、本体部2、保護部材3、刃4で構成されている。
図1等では刃4として平刀を示しているが、平刀以外の印刀,丸刀,三角刀等の種々の刃でもよい。以下、順に各構成を説明する。
【0043】
本体部2は、彫刻刀1の筐体として機能する上半割部2aと下半割部2bの2つの半割状の部材が組み合わされて構成される。描写の都合上、
図1〜
図3と
図4〜
図6では各部材の上下の向きが逆になっている。本体部2の横断面は、円筒形や楕円筒形等の使用者が持ち易い形状であり、上半割部2aの横断面は、本体部2の断面の略半分程度を占める。
【0044】
図6,
図10に示すように、上半割部2aの内部には、平坦部69が設けられている。平坦部69には刃先側から柄尻側に渡って下半割部2b側に突出する中央突出部65が設けられている。中央突出部65は、平坦部69から突出しており、突出高さは部位毎に相違している。すなわち中央突出部65には、刃先側から順に平坦部65a,傾斜部65b,平坦部65c,傾斜部65d,平坦部65eが形成されている。このうち、柄尻側の平坦部65eの突出高さが最も高く、次いで平坦部65a,平坦部65cの順に高く構成されている。平坦部65aと平坦部65cは、傾斜部65bによって接続されている。また、平坦部65cと平坦部65eは、傾斜部65dによって接続されている。よって、傾斜部65bと傾斜部65dの傾斜の向きは相違している。
【0045】
中央突出部65の最も刃先側にある平坦部65a上には、挿入部11が設けられている。挿入部11は、直方体形状を呈しており、平坦部65aから隆起している。挿入部11の下面11b(下半割部側の面)には、係合凸部17が隆起している。係合凸部17は、下面11bに形成された薄板状の部位である。また、挿入部11の刃先側の側面には、開口11aが形成されている。開口11aは、刃先側から柄尻側へ延びる穴であり、刃4を固定する穴である。
【0046】
また、挿入部11の柄尻側の側面11cには、
図6,
図13に示す縦溝18が形成されている。縦溝18の底面18aの下部にはくぼみ18b(
図13)が設けられている。その結果、縦溝18には係合部18cが形成されている。すなわち係合部18cは、挿入部11の柄尻側(縦溝18の底面18a)に設けられ、くぼみ18bの上方に形成された縁である。
【0047】
次に、中央突出部65の最も柄尻側の平坦部65eには、下半割部2b側に開口する穴14が設けられている。穴14は平坦部65eに形成されたくぼみである。穴14の刃先側の側面には係合凹部15dが設けられている。すなわち、穴14は側面視して略L字形状を呈している。その結果、穴14の刃先側には係合凹部15dの上に縁部13が形成される。また、穴14の左右両側と柄尻側の開口縁には側壁15a〜15cが立設されている。
中央突出部65は、以上説明した構成を備えている。
【0048】
中央突出部65(
図10)の左右両側の平坦部69には、刃先側から順に係合突起12,複数の突起16,突起16aが配置されている。また、中央突出部65の左右両側には溝76が設けられている。溝76は、中央突出部65に沿って刃先側から柄尻側に延びている。
【0049】
図12(a),
図12(b)に示すように係合突起12は下方(下半割部2b側)に向かって延びており、また係合突起12の先端部12aは刃先側へ突出している。さらに、係合突起12は弾性を有しており、柄尻側(後方側)へ押圧されると若干弾性変形することができる。
【0050】
また、
図6,
図10に示すように上半割部2aの係合突起12よりも柄尻側(後方側)には、複数の突起16が前後方向に並んで配置されている。突起16は、前方側(刃先側)から後方側(柄尻側)へ延びる直方体形状を呈している。さらに、列を成す複数の突起16よりも柄尻側には突起16aが配置されている。突起16aは、突起16よりも左右方向の幅が広い直方体形状を呈している。
そして、上半割部2aには、中央突出部65の左右両側に沿って刃先側から順に係合突起12,複数の突起16,突起16aが配置されている。
【0051】
構成上、彫刻刀1として特に必須ではないが、上半割部2aの表面には弾性部材34が設けられている。弾性部材34は、弾性を有する素材(合成ゴム等)で構成された薄板状の部材である。弾性部材34は、使用者が彫刻刀1を使用する際に、指先に掛かる圧力を軽減する機能を発揮する。弾性部材34を設けることによって、使用者は長時間に渡って楽に彫刻作業を続けることができるようになる。
【0052】
次に本体部2の下半割部2bについて説明する。
下半割部2bは、上半割部2aと組み合わされて一体化されて本体部2を構成するものである。下半割部2bの横断面は、上半割部2aと同様に本体部2の断面の略半分程度を占める。
【0053】
半割状の下半割部2bの横断面は、中央部分がくぼみ、左右両側がせり上がった形状を呈している。
図3,
図11に示すように、下半割部2bの中央部には刃先側から柄尻側に渡って延びる平坦部66が設けられている。平坦部66の左右両側には刃先側から柄尻側に渡って上半割部2a側に隆起する側壁29が設けられている。まず、平坦部66について説明し、続いて側壁29について説明する。
【0054】
平坦部66は、下半割部2bの刃先側から柄尻側に渡って設けられている。平坦部66の刃先側の端部付近には、上半割部2a側に開口する係合凹部20が設けられている。係合凹部20の開口の形状は刃先側から柄尻側に延びる長方形形状であり、係合凹部20の内部には直方体の空間が形成されている。
【0055】
係合凹部20の柄尻側の平坦部66には上半割部2a側に向かって突出する係合突起22が設けられている。係合突起22の先端には刃先側(前方)へ突出する係合部22aが設けられている。
【0056】
さらに係合突起22よりも柄尻側の平坦部66には、開口26が設けられている。開口26は、下半割部2bの内外を貫通する長孔である。すなわち開口26は、刃先側から柄尻側に向かって延びる長孔である。
【0057】
開口26よりもさらに柄尻側の平坦部66には、係合突起23が設けられている。係合突起23は、係合突起22と同様に上半割部2a側に突出している。また、係合突起23の先端には、刃先側へ突出する係合部23aが設けられている。
平坦部66には以上のような構成が設けられている。
【0058】
次に、下半割部2bの側壁29について説明する。
図3,
図11に示すように一対の側壁29が、平坦部66の左右両側に対向配置されている。側壁29は、下半割部2bの刃先側から柄尻側に延びる壁である。
【0059】
側壁29には、凹部21,縁部28,収容部67,ガイド部19,ガイド壁68が設けられている。
凹部21は、側壁29の刃先側の端部付近に設けられた上半割部2a側に開口する穴である。また、側壁29の刃先側の端面には穴21bが設けられている。穴21bと凹部21は内部で連通している。そのため、側壁29の刃先側の縁には柱状の係合片21aが形成されている。
【0060】
側壁29における上半割部2a側の面には、縁部28と収容部67とが設けられている。縁部28と収容部67は、側壁29の凹部21よりも柄尻側に形成されている。縁部28は、下半割部2bの左右方向の最も外側に配置されており、さらに最も上半割部2a側に配置される部位である。収容部67は、縁部28の内側に配置され、刃先側から柄尻側へ延びる細長い平坦な部位である。すなわち、収容部67は、縁部28の内側に形成され、縁部28よりも凹んだ部位である。縁部28と収容部67は同じ長さを有しており、共に刃先側から柄尻側へ延びているが、柄尻側の端部には至っていない。縁部28は刃先側に配置された凹部21と連続している。
【0061】
次に、ガイド壁68は、側壁29における刃先側の端部から柄尻側に向かって延びており、平坦部66と収容部67の間で傾斜面を形成している。ガイド壁68の柄尻側の端部の壁面は、停止壁27を構成する。
【0062】
ガイド壁68よりも柄尻側には、ガイド壁68よりも平坦部66からの高さが低いガイド部19が設けられている。ガイド部19は、ガイド壁68に続いて柄尻側に延びる左右幅の狭い平面である。ガイド部19の柄尻側の終端には停止壁31が形成されている。すなわちガイド部19は、停止壁27と停止壁31の間に形成された細長い平面である。
【0063】
ガイド部19上には上半割部2a側に突出する前方突起24と後方突起25とが設けられている。前方突起24は、後方突起25よりも刃先側に設けられている。前方突起24の刃先側には直立壁24aが設けてあり、柄尻側には傾斜壁24bが設けてある。そして、直立壁24aは、停止壁27と所定の間隔を置いて対向している。この直立壁24aと停止壁27とで刃先側係合部56が構成される。後方突起25の刃先側には傾斜壁25aが設けてあり、柄尻側には傾斜壁25bが設けてある。後方突起25の傾斜壁25bは、停止壁31から所定の間隔を置いて対向している。そして後方突起25の傾斜壁25bと停止壁31とで柄尻側係合部57が構成されている。
【0064】
次に保護部材3について説明する。
図7(a)に示すように保護部材3は、板ばね部7,保護部材本体部8,先端部9を有している。
図7(b)に示すように保護部材3は、保護部材本体部8,先端部9,板ばね部7が接続された環状構造を呈している。
【0065】
先端部9は、底面視(又は平面視)すると略コの字形を呈しており、保護部材3の刃先側(
図7(b)で見て左側)に配置される。また、先端部9は、上半割部2a側(
図7(a)で見て上方側)に反り返った形状を呈している。
【0066】
保護部材本体部8は、略への字形に曲がった横断面を有する細長い2つの長尺部材8a,8bで構成されている。すなわち長尺部材8a,8bは、
図7(c)に示すような長手方向に延びる折れ曲がり部35a,35bを有している。折れ曲がり部35a,35bを設けることによって長尺部材8a,8bの強度が向上する。また、長尺部材8a,8bには傾斜面64a,64bが設けられている。傾斜面64a,64bは、下方を向く傾斜面であって、刃先側から柄尻側へ延びる面である。長尺部材8a,8bの刃先側の端部は、各々先端部9と接続されている。
【0067】
板ばね部7は、平板部36と、一対のリブ37と、操作部38とで構成されている。平板部36の下面には2つのリブ37及び操作部38が設置されている。操作部38には基部33と、突起6と、左右両側に突出する保護部材側係合部5が設けてある。
【0068】
リブ37は、直交する2辺を有しており、そのうちの1辺が平板部36の下面に固着されている。基部33は、平板部36と一体に成形されており、平板部36の下面側へ突出する直方体の角を丸くしたような形状を呈する部位である。基部33の刃先側の側面33aにはリブ37の1辺が固着されている。すなわち、各リブ37の直交する2辺が各々平板部36の下面と基部33の側面33aに固着されている。
【0069】
基部33の左右の側面33b,33cには、各々保護部材側係合部5が装着されている。
図3に示すように保護部材側係合部5の下半割部2b側の刃先側には傾斜面5aが形成されている。
【0070】
突起6は、基部33の下面33dの中央に突設されている。すなわち、突起6は保護部材側係合部5と直交する方向に突出する突起である。突起6の左右方向の幅は基部33の幅と一致しており、親指の先で操作し易い幅である。突起6と基部33を側面視すると略T字形状を呈している。
【0071】
板ばね部7の平板部36は、保護部材本体部8の長尺部材8a,8bの柄尻側の端部付近と接続されている。また、長尺部材8a,8bの刃先側の端部は先端部9と接続されているので、保護部材3は環状構造を呈する。よって、保護部材3は孔10を形成する。
図7(b)に示すように保護部材本体部8の両長尺部材8a,8bの間隔は、刃4の幅よりも大きい。また、孔10は、刃先側から柄尻側へ延びている。
【0072】
以上説明した上半割部2aと下半割部2bが、間に保護部材3を配置して組み合わされる際には、以下のように各部が係合する。説明の都合上、最初に上半割部2aと下半割部2bの結合についてのみ説明し、その後に保護部材3との関係を説明する。
【0073】
上半割部2aと下半割部2bとを結合する際には、最初に
図12(a)に示す上半割部2aの刃先側の2つの係合突起12を、下半割部2bの2つの凹部21に各々挿入し、さらに
図12(b)に示すように係合突起12の先端部12aを凹部21の前方側に形成した係合片21aに係合させる。すなわち、凹部21の係合片21aと係合突起12の先端部12aとを係合させることによって上半割部2aと下半割部2bとが刃先側で回動可能に固定される。
【0074】
次に、係合突起12と凹部21の結合部分を支点として上半割部2aの後方側(柄尻側)と下半割部2bの後方側(柄尻側)とを接近させる。すなわち、係合突起12と凹部21の結合部分を中心に両半割部を相対回転させ、両半割部の柄尻部分同士を接近させる。その結果、上半割部2aの係合凸部17が下半割部2bの係合凹部20に嵌り、上半割部2aの複数の突起16(
図6)が下半割部2bの縁部28の内側面28aに沿って順次密着する。そして、
図13に示すように上半割部2aの縦溝18の係合部18cに下半割部2bの係合突起22が係合する。その際、係合突起22の係合部22aは、縦溝18の底面18aに当接して後方(柄尻側)に撓む。そして係合部22aが係合部18c(凹部)に入り込むと係合突起22の撓みが解消される。その結果、係合突起22と係合部18cとが結合される。
【0075】
さらに
図14に示すように上半割部2aの縁部13に下半割部2bの係合突起23の係合部23aが係合する。すなわち、係合突起23の係合部23aが縁部13に当接し、縁部13によって柄尻側へ押圧されて係合突起23が柄尻側へ撓みながら穴14内に入る。その際、係合突起23は側壁15a〜15cに導かれながら穴14内に入る。そして係合部23aが縁部13を過ぎると係合部23aへの押圧力がなくなり、係合部23aは係合凹部15dに係合する。その結果、上半割部2aと下半割部2bとが結合される。
【0076】
このとき、上半割部2aの複数の突起16と突起16aが、下半割部2bの収容部67に配置される。すなわち、下半割部2bの縁部28は、上半割部2aの平坦部69(
図6)における突起16よりも左右方向の外側の部位と当接すると共に、突起16と突起16aの外側の側面が下半割部2bの縁部28の内側面28aに接触する。すなわち、各突起16,突起16aと縁部28は、上半割部2aと下半割部2bを結合する際のガイド機能を有している。
【0077】
また、上半割部2aの中央突出部65の柄尻側の部位(側壁15a,15c)が、下半割部2bの側壁29の内側面29aと密着する。また、下半割部2bの平坦部66の柄尻側の部位である中央壁30と、上半割部2aの柄尻側の側壁15a〜15cの略コの字形の端面とが当接する。
【0078】
上半割部2aと下半割部2bとが結合すると、上半割部2aの係合凸部17が下半割部2bの係合凹部20にちょうど嵌るため、上半割部2aと下半割部2bは、互いに前後方向へ移動することができず、前後方向の両半割部の位置は、係合凸部17と係合凹部20の係合によって固定される。
【0079】
また、下半割部2bの縁部28の内側面28aに沿って上半割部2aの複数の突起16が密着配置される上に、内側面29a(下半割部2b)と側壁15a,15c(上半割部2a)とが密着するので、上半割部2aと下半割部2bの左右方向の位置が固定される。
【0080】
さらに上半割部2aの係合突起12,縦溝18,縁部13が、各々下半割部2bの凹部21,係合突起22,係合突起23と係合するので、上半割部2aと下半割部2bとが強固に締結される。すなわち、両半割部の前方側(刃先側),中央部,後方側(柄尻側)の各部が確実に係合するので、両半割部は容易には外れない。
【0081】
上半割部2aと下半割部2bとが結合して本体部2が構成されると、本体部2内には下半割部2bのガイド壁68と、上半割部2aの中央突出部65,平坦部69,溝76とで仕切られた空間が形成される。この空間は本体部2内において刃先側から柄尻側へ延びている。そして、保護部材3が本体部2内に収納される際には、保護部材3はこの空間内を移動する。その際溝76には保護部材3の保護部材本体部8が係合する。その結果、溝76は、保護部材3の刃先側と柄尻側とを往復移動する際のガイド機能を発揮することができる。
【0082】
上半割部2aと下半割部2bは、実際には間に保護部材3を配置してから結合する。結合して一体化した上半割部2aと下半割部2bの間には、内部空間32が形成される。内部空間32は、上半割部2aの中央突出部65,平坦部69と、下半割部2bの側壁29によって形成される。内部空間32は、保護部材3を収容可能な空間である。また内部空間32は、本体部2の長手方向(前後方向)に延びている。
【0083】
上半割部2aと下半割部2bを結合する前に、下半割部2b上に保護部材3を配置する。その際、保護部材3の長尺部材8a,8bの傾斜面64a,64bが下半割部2bのガイド壁68上に配置される。長尺部材8a,8bはガイド壁68に沿って摺動可能である。
【0084】
また、保護部材3の保護部材側係合部5が、ガイド部19上に配置される。すなわち、保護部材3の左右両側に設けられた保護部材側係合部5が、対向配置された2つのガイド部19上に同時に載置される。
【0085】
保護部材側係合部5の前後方向の幅は、
図9に示す刃先側係合部56における前方突起24の直立壁24aと停止壁27の間隔や、
図8に示す柄尻側係合部57における後方突起25の傾斜壁25bと停止壁31の間隔よりも若干小さい。よって、保護部材側係合部5は、停止壁27と前方突起24の間や、後方突起25と停止壁31の間にも配置可能である。また、保護部材側係合部5は、ガイド部19に沿って移動可能である。
【0086】
保護部材3の突起6は、下半割部2bの開口26に配置される。すなわち、使用者は、突起6を彫刻刀1の外部から操作可能である。また、突起6の幅は開口26の幅よりも小さく、突起6は長孔状の開口26に沿って移動することができる。
【0087】
本体部2に装着された保護部材3は、内部空間32内で次のような動作を行う。
すなわち、保護部材3の保護部材本体部8(長尺部材8a,8b)が、下半割部2bのガイド壁68と上半割部2aの中央突出部65の間に配置されて前後方向(刃先方向及び柄尻方向)にのみ移動可能に拘束される。すなわち、保護部材3は、本体部2に沿って前後方向(刃先方向及び柄尻方向)に移動することができる。
【0088】
ガイド部19の刃先側には停止壁27が設けてあり、柄尻側には停止壁31が設けてある。そのため、保護部材3の保護部材側係合部5は、停止壁27と停止壁31の間で往復移動が可能である。
【0089】
今、仮に保護部材3の保護部材側係合部5がガイド部19上における前方突起24と後方突起25の間にあり、保護部材3を刃先側(前方)へ移動させる場合には、保護部材側係合部5がガイド部19に沿って刃先側へ移動し、やがて前方突起24の傾斜壁24bに達する。そして保護部材側係合部5の傾斜面5aが前方突起24の傾斜壁24bに沿って移動し、その結果、保護部材側係合部5が前方突起24上に乗り上げ、保護部材3の板ばね部7(付勢手段)が弾性変形する。すなわち、保護部材3の保護部材本体部8(長尺部材8a,8b)は、内部空間32内で上下方向に固定されており、板ばね部7のみが本体部2に対して上下方向に変位可能である。
【0090】
そして、さらに保護部材3が刃先側へ移動すると、保護部材側係合部5が前方突起24を通過し、板ばね部7の弾性力によって保護部材側係合部5は直立壁24aに沿ってガイド部19上に移動する。その結果、保護部材側係合部5は直立壁24aと停止壁27の間(刃先側係合部56)に配置され(
図16)、保護部材3は刃先側係合部56と係合して本体部2に対して前後に移動できなくなる。すなわち、本体部2に対して保護部材3の先端部9が突出した状態で保護部材3の位置が固定され、
図1,
図4,及び
図8に示すように刃4の刃先4aの近くに保護部材3(先端部9)が配置される。
【0091】
図1に示すように保護部材3が本体部2に装着されると、保護部材本体部8の上下方向の中央付近に刃4が配置される。また、保護部材3の先端部9は反り返っており、先端部9は刃4の上面側(彫刻刀使用時に上面となる側)に配置される。その結果、保護部材3の先端部9は、刃4(刃先4a)から上方向に離れる。よって、刃先4aの近くに保護部材3(先端部9)を配置した際に、刃先4aを彫刻対象物に当てて、彫刻することができる。
【0092】
このとき彫刻刀1の使用者は、保護部材3の孔10を介して刃先4aを目視することができる。また、保護部材3を透明な素材で構成すると、彫刻対象物(彫刻部位)も保護部材3越しに視認することができ、彫刻し易くなる。
【0093】
図1に示される状態で彫刻作業を行うと、刃4の刃先4aが保護部材3の先端部9で保護されているので、使用者は刃先4aに誤って触れて負傷する事態を回避することができる。また、保護部材側係合部5が停止壁27(
図9)に当接することによって、保護部材3の刃先側への移動(本体部2からの抜け落ち)が防止される。さらに保護部材側係合部5が前方突起24の直立壁24aに当接することによって、保護部材3の後方への移動(本体部2内への収納)が防止される。よって、刃4の刃先4aが、使用者が意図しないタイミングでむき出し状態になることがなく、使用者は安心して彫刻刀1を使用することができる。
【0094】
保護部材3の先端部9から、刃4の刃先4aまでの距離を小さく設定するほど刃先4aが使用者の指等に触れにくくなるが、この場合には刃先4aを彫刻対象物に当てることができる角度範囲が狭くなり、彫刻作業がしにくくなる。逆に、保護部材3の先端部9から、刃4の刃先4aまでの距離を大きく設定すると、刃先4aを彫刻対象物に当てることができる角度範囲が拡がって彫刻作業がし易くなるが、刃先4aが使用者の指等に触れ易くなる。よって、彫刻刀1の良好な使用感を保ちながら、刃先4aが使用者の指等に触れにくくすることができるように、先端部9から刃先4aまでの距離を設定する。この距離の設定は、保護部材3の先端部9の反り返り方(反り返り度合い)で調整することができる。
【0095】
また、
図1に示す例では、刃先4aの先端よりも保護部材3の先端部9の方が若干突出している状態を描写しているが、この両者の突出量の差を小さくしたり、逆に大きくすることによって保護部材3の先端部9から刃先4aまでの距離を調整することもできる。この調整は、保護部材側係合部5と刃先側係合部56の前後方向の係合位置を変えることによって実現可能である。
【0096】
すなわち、下半割部2bの刃先側係合部56が刃先側へ配置されるほど保護部材3の刃先側への突出量が大きくなる。よって、使用者の好みに合わせて、刃先側係合部56の設置位置を決定し、下半割部2bを製造するのが好ましい。また、保護部材3における保護部材側係合部5の前後方向の設置位置が変わると、保護部材3の先端部9の刃先側への突出量も変わる。例えば、保護部材側係合部5の位置を先端部9側へ移動させた状態で保護部材3を製造すると、保護部材側係合部5が刃先側係合部56と係合した際に、保護部材3の先端部9は柄尻側(後方側)へ後退する。
【0097】
次に、保護部材3が突出していると彫刻作業がしづらいと感じる使用者が彫刻刀1を使用する場合について説明する。
この場合には保護部材3が不要であるので、保護部材3の全体又は大半の部分を本体部2内に収納する。まず使用者は、保護部材3の突起6(操作部38)を押圧し、保護部材側係合部5を前方突起24の直立壁24aと係合しない位置まで変位させる。そして、突起6をそのまま後方(柄尻側)へスライド移動させると、保護部材側係合部5は前方突起24を越えて後方へ移動することができる。保護部材側係合部5が直立壁24aを越えると、突起6の押圧は解除しても差し支えない。すなわち、保護部材側係合部5は、前方突起24上を摺動して後方へ移動し、やがて傾斜壁24bに沿ってガイド部19に接近する。その際、板ばね部7(付勢手段)の変形量も少なくなり、保護部材側係合部5が傾斜壁24bよりも後方へ移動すると、板ばね部7は元の形状(姿勢)に戻る。
【0098】
そして、使用者が突起6をそのまま柄尻側へ引くと、保護部材側係合部5は後方突起25の前方側の傾斜壁25aに沿って移動する。その際、板ばね部7は弾性変形するが、保護部材側係合部5が後方側の傾斜壁25bに沿って移動すると、板ばね部7は元の形状に戻り、保護部材側係合部5が停止壁31に当接して柄尻側係合部57と係合し(
図15)、保護部材3は停止する。このとき保護部材3は、
図2,
図5,及び
図9に示すように本体部2内に収納されている。
【0099】
保護部材側係合部5が柄尻側係合部57と係合すると、本体部2内に収納された保護部材3は、不用意に本体部2内から突出移動することがない。また、保護部材3を刃先側へ移動させる際には、使用者は突起6を若干押し込む程度で保護部材側係合部5と後方突起25(柄尻側係合部57)の係合を解除することができる。すなわち、後方突起25の柄尻側には傾斜壁25bが設けてあるので、保護部材側係合部5の傾斜面5aが後方突起25の傾斜壁25bに沿い易く、保護部材側係合部5は円滑に後方突起25を通過することができる。
【0100】
彫刻刀1は、上面を指で押さえて彫刻対象物に押し付けるようにして使用される。ところが突起6は、彫刻刀1の下面側に設けられているので、彫刻作業の邪魔にならない。すなわち使用者は、保護部材3を備えた彫刻刀1の上面側を指で力強く押圧して彫刻することができる。
【0101】
ここで保護部材3において、突起6を押し込んで保護部材側係合部5を変位させる構成の代わりに、保護部材3を別の形態に構成することもできる。すなわち、保護部材3を左右方向から押圧して復元可能に変形させ、保護部材側係合部5同士を接近させる。そして両保護部材側係合部5を平行なガイド部19の内側に一時的に変位させる。その結果、両保護部材側係合部5は、ガイド部19上に設けられた前方突起24又は後方突起25を通過することができる。保護部材3を押圧する力を解除すると、保護部材側係合部5同士の間隔は元に戻り、保護部材側係合部5はガイド部19上に配置される。
【0102】
次に、
図17,
図18を参照しながら彫刻刀の柄尻側の構成の変形例を説明する。
図17,
図18に示す形態では、ガイド部19上に後方突起25は設けられていない。代わりに、上半割部2aの中央突出部65に隆起部39を設ける。隆起部39は、中央突出部65の傾斜部65dと平坦部65eの境界部分に設けられている。隆起部39は、傾斜部65dの柄尻側端部と滑らかに連続しており、平坦部65eよりも若干下半割部2b側に突出して平坦部65eの刃先側端部と滑らかに連続している。
【0103】
一方、保護部材3には隆起部3aが設けられている。隆起部3aは、突起6とは反対側に設けられている。すなわち、保護部材3が本体部2内に配置された際に、上半割部2a側に向かって隆起するように隆起部3aは設けられている。隆起部3aは、
図17において保護部材側係合部5の上方に配置されている。
【0104】
図17に示す状態から保護部材3が柄尻側(
図17において右方)へ移動すると、やがて保護部材3の隆起部3aは上半割部2aの中央突出部65の傾斜部65d又は隆起部39と接触する。保護部材3がさらに柄尻側へ移動しようとすると、保護部材3は、ガイド部19と隆起部39によって上下方向に押圧される。
【0105】
すなわち、
図17に示すように側面視した場合において、保護部材側係合部5の下面(ガイド部19と接触している面)から隆起部3aの最も隆起している部位までの距離L1が、ガイド部19から隆起部39の最も隆起している部位までの距離L2よりも大きい。そのため、保護部材3が内部空間32の柄尻側端部へ移動する際に、保護部材3が隆起部39とガイド部19によって上下方向に押圧され、保護部材3は圧縮変形する。すなわち、このときには距離L1と距離L2とが一致する。さらに保護部材3の隆起部3aが隆起部39を通過すると、押圧が解除されて保護部材3が元の形状に戻り、隆起部3aと中央突出部65の平坦部65eの間に隙間ができる。
【0106】
そして、この状態では保護部材3が刃先側へ移動しようとしても、保護部材3の隆起部3aと本体部2側の隆起部39とが接触し、保護部材3は本体部2から抵抗を受ける。そのため、保護部材3は隆起部39を越えて刃先側へ移動することができない。すなわち、保護部材3は、刃4(刃先4a)から退避した位置で固定される。
【0107】
ここで、保護部材3を刃先側へ移動させる場合には、彫刻刀の使用者は突起6(操作部38)を刃先側へ押圧する。すなわち使用者は、保護部材3を圧縮変形させ、前述の距離L1と距離L2とを一致させることができる程度の力で突起6を刃先側に押圧する。その結果、保護部材3の隆起部3aと保護部材側係合部5は、本体部2側の隆起部39と接触し、隆起部39及びガイド部19から抵抗を受けながら刃先側へ移動する。やがて隆起部3aは隆起部39を通過し、隆起部3aは隆起部39及び傾斜部65dから離れ、保護部材3に作用する押圧力が解除されて保護部材3が元の形状に戻る。その後、保護部材3は、刃先側へ前方突起24の位置まで円滑に移動することができる。
【0108】
このように保護部材3側に隆起部3aを設け、本体部2(上半割部2a)側に隆起部39を設けると、保護部材3の板ばね部7の変形が軽減される。すなわち、保護部材3が刃4から退避する際に、板ばね部7は変形しない。その結果、板ばね部7の耐久性が向上する。
【0109】
以上説明したように、本発明を実施した彫刻刀1は、必要に応じて簡単な操作で保護部材3を本体部2から突出させたり、本体部2内に収納することができる。また、保護部材3を使用しない場合には、保護部材3の全体又は大半の部分を本体部2内に収納可能であるので、保護部材3を紛失する事態が生じない。
【0110】
次に、
図19〜
図22を参照しながら本発明の別の実施形態の彫刻刀について説明する。
図19〜
図22では、説明する都合上、便宜的に彫刻刀40を下面61が上になるように描写しているが、彫刻刀40は実際には下面61が下方を向く姿勢で使用される。
【0111】
彫刻刀40は、本体部41と保護部材42とで構成されている。
本体部41は、外郭を形成する筐体43と、筐体43の内部に配置される中子44とを有している。
【0112】
筐体43は、先端側(刃先側)の先端部43aと柄尻側の把持部43bとを有している。先端部43aは、略円筒形状を呈する部材である。また、先端部43aの円筒の側壁がカットされて開口45aが形成されている。すなわち、開口45aは筐体43の下面61側に、先端部43aの長手方向に延びるように形成されている。先端部43aの柄尻側の端部の外形は四角形を呈している。すなわち、先端部43aの横断面は円筒状から四角筒状に途中から滑らかに変化している。
【0113】
把持部43bは、四角筒形状を呈している。把持部43bの一つの側面(下面61)には、開口45bが設けられている。開口45bは、把持部43bの刃先側端部から柄尻側端部に至る途中の部位まで把持部43bの長手方向に延びている。開口45bの対向する各縁58,59には、各々前側切欠部47が設けられている。各縁58,59の前側切欠部47は対向している。
【0114】
また、各縁58,59には後側切欠部48が設けてある。後側切欠部48は、前側切欠部47よりも柄尻側に設けられている。各縁58,59の後側切欠部48も対向している。前側切欠部47と後側切欠部48は、いずれも開口45bの幅が部分的に広くなる部位である。先端部43aと把持部43bとが接続されると、開口45aと開口45bが連続する。開口45aと開口45bは、同じ幅を有する。そして、先端部43aと把持部43bとが接着によって結合されて筐体43が構成される。筐体43の内部には、開口45a,45bと連通する内部空間60が形成されている。
【0115】
中子44は略円柱形状を呈しており、一部が長手方向にカットされて平坦部44aが形成されている。平坦部44aは、中子44の長手方向に延びており、途中で傾斜部49を介して平坦部44bと連続している。平坦部44bは、平坦部44aよりも高さ方向の寸法が小さい。
【0116】
中子44の刃先側の端面には、刃4を装着する穴44cが設けてある。
【0117】
中子44は筐体43の内部空間60に収容される。図示していないが中子44の平坦部44aとは反対側の部位は、筐体43の内部空間60内で筐体43と接着されている。そして、中子44の平坦部44a,44bは、筐体43の開口45a,45b側に配置される。
【0118】
中子44と筐体43とが一体固着されると、中子44と筐体43の間には隙間46(溝)が形成される。また、中子44の平坦部44aから開口45a(刃先側の開口)までの距離は、比較的小さく、平坦部44bから開口45b(柄尻側の開口)までの距離は比較的大きい。すなわち、中子44の傾斜部49は、筐体43の先端部43aと把持部43bの接続部分に配置されている。
【0119】
次に、保護部材42について説明する。
図19に示す保護部材42は、描写の都合上、彫刻刀40の彫刻作業時における姿勢と上下を逆にして描写している。保護部材42は、保護部材本体50と板ばね部51とを有している。
【0120】
図19に示すように、保護部材本体50は、側壁部62a,62bを有している。側壁部62a,62bは、平板状の部材を弧状に湾曲させた形状を呈している。側壁部62a,62bの刃先側(前側)の部位は、細い先端部50aで接続されている。すなわち、側壁部62a,62bの刃先側の部位には、先端部50aと滑らかに連続する傾斜部63a,63bが設けられている。先端部50aの上側の縁(
図19で見て下側に描写した縁)は、側壁部62a,62bの上側の縁である縁部55a,55bと同一平面に配置されている。
【0121】
側壁部62a,62bの下側の縁である縁部70a,70b(
図19で見て上側に描写した縁)は、柄尻側から刃先側へいく途中まで(傾斜部63a,63bに至るまで)は縁部55a,55bと平行である。そして、傾斜部63a,63bにおいて側壁部62a,62bの高さ方向の幅が徐々に小さくなり、側壁部62a,62bは刃先側の端部に配置された細い先端部50aと連続する。先端部50aは断面が細く刃先側へ湾曲して半円形形状に突出する部位である。すなわち保護部材本体50の刃先側端部は、U字形状を呈している。
【0122】
側壁部62a,62bの縁部70a,70bの柄尻側端部には、薄板状の板ばね部51が一体固着されている。板ばね部51の下面51aの柄尻側には押圧部53が設けられている。押圧部53は、板ばね部51の下面51aから下方(
図19で見て上方)に隆起する部位である。
【0123】
押圧部53の柄尻側には傾斜部54が設けられている。また、板ばね部51の左右の側面には、各々左右方向に延びる突起である保護部材側係合部52が設けられている。保護部材側係合部52は、板ばね部51の左右方向の幅が部分的に拡がる部位である。そして、両保護部材側係合部52の先端同士の距離(すなわち、板ばね部51の部分的に拡がった部位の幅)は、筐体43の開口45a,45bの幅よりは大きく、開口45bにおける前側切欠部47及び後側切欠部48を設けた部位の幅よりは小さい。また、各保護部材側係合部52は、各々前側切欠部47及び後側切欠部48に係合可能な大きさ及び形状に形成されている。さらに、板ばね部51の保護部材側係合部52を設けていない部位の幅は、開口45bの幅よりは小さい。
【0124】
以上説明した本体部41に保護部材42を装着する。
まず、板ばね部51に形成した傾斜部54を、開口45aの刃先側から差し込み、保護部材42を順に本体部41の隙間46に挿入する。その際、保護部材42の縁部55a,55bが、中子44と筐体43の図示しない接続部に接触しながら、保護部材42は本体部41の隙間46内を移動する。よって保護部材42は、本体部41に対して回動せず、前後方向にのみ移動が可能である。また、保護部材42の板ばね部51を中子44の平坦部44aに押し付けた状態で保護部材42を本体部41の隙間46に挿入するが、このとき保護部材側係合部52が開口45aの裏面側の面と当接しており、板ばね部51は中子44側へ弾性変形している。
【0125】
保護部材42の傾斜部54は、やがて中子44の傾斜部49の位置に達する。傾斜部49よりも柄尻側では、隙間46の高さ(開口45bから平坦部44bまでの距離)が拡がる。そのため、板ばね部51が弾性変形していることには変わりはないが、板ばね部51と中子44(平坦部44b)とは接していないので抵抗が小さくなり、本体部41に対して保護部材42は円滑に前後方向に移動できるようになる。
【0126】
そして保護部材側係合部52が前側切欠部47の位置にきて前側切欠部47と係合する。すなわち、自身の弾性力(付勢力)によって板ばね部51が元の姿勢に戻り、保護部材側係合部52が前側切欠部47に係合する。その結果、保護部材42は本体部41に対して前後方向に固定される。また、押圧部53は開口45bより外側に突出している。
図20は、前側切欠部47に保護部材側係合部52が係合した状態を示している。このとき、刃4(刃先4a)の周囲には保護部材42の先端部50aが配置されている。
【0127】
次に、板ばね部51の弾性力(付勢力)に抗して、押圧部53を開口45bの内(隙間46)に押し込み、保護部材側係合部52と前側切欠部47の係合を解除すると、保護部材42は本体部41に対して前後方向に移動が可能になる。前方(刃先側)への移動は、傾斜部49によって大きな抵抗を受けるので円滑ではないが、後方(柄尻側)への移動は円滑に行うことができる。
【0128】
図21は、保護部材側係合部52と前側切欠部47の係合を解除して保護部材42を柄尻側へ移動させる途中の状態を示している。保護部材側係合部52の幅が開口45bの幅よりも大きいため、板ばね部51は中子44側(本体部41の内側)に変形している。また、保護部材42の先端部50aが刃先4aよりも柄尻側へ移動し、刃先4aが若干露出している。
【0129】
さらに保護部材42を柄尻側へ移動させると、
図22に示すように保護部材側係合部52が後側切欠部48の位置にきて後側切欠部48と係合する。すなわち、自身の弾性力(付勢力)によって板ばね部51が元の姿勢に戻り、保護部材側係合部52が後側切欠部48に係合する。その結果、保護部材42は本体部41に対して前後方向に固定される。このとき、押圧部53は開口45bから突出している。また、保護部材42の大部分が本体部41内に収納され、保護部材42の先端部50aは、わずかに中子44より刃先側に配置されている。すなわち、刃先4aはむき出し状態となっている。
【0130】
逆に
図22に示す状態から、押圧部53を押圧して保護部材側係合部52と後側切欠部48の係合を解除すると、保護部材42を刃先側へ移動させることができる。なお、保護部材側係合部52を前側切欠部47よりも前方に移動させることも可能であるが、傾斜部49によって保護部材42の前方への移動が阻止され、保護部材42が本体部41から脱落するのが防止される。よって、不用意に保護部材42が本体部41から抜け落ちる事態を防止することができる。
【0131】
本実施例では、傾斜部49の位置と前側切欠部47の位置とが離れている例を示したが、保護部材42が傾斜部49を通過すると直ちに前側切欠部47に保護部材側係合部52が係合するように製造することもできる。
【0132】
また、図示したように筐体43に前側切欠部47と後側切欠部48(すなわち、凹部)を設け、保護部材42に保護部材側係合部52(すなわち、凸部)を設ける代わりに、筐体43に二組の対向する凸部を設け、保護部材42側に凹部を設けて、両者を係合させるように構成してもよい。
【0133】
次に、
図23〜
図25を参照しながら、
図19〜
図22の彫刻刀40の変形例を説明する。
図23に示す彫刻刀71は、
図20に示す彫刻刀40と比較して、本体部41に設けた開口45bの形態のみが相違している。よって、同じ構成には同じ符号を使用し、重複する説明は省略する。
【0134】
図23に示すように本体部41には、一対の細長い平板部74が連結部75で連結されて開口45bが形成されている。開口45bは、平板部74の対向する縁74b,74b(
図24)を有している。開口45bを内側から見た
図24に示すように、平板部74の裏面74aの縁74b,74bには一対の係合部72が設けられている。また、裏面74aには、係合部72と所定の距離をおいて一対の係合部73が設けられている。
【0135】
係合部72及び係合部73は、平板部74の裏面74a側の縁74bに設けられたくぼみである。すなわち、係合部73(72)は、
図23に示すように彫刻刀71の外側からは縁74bの部分しか見えない。
【0136】
このような本体部41に保護部材42を装着する。
図24に示すように保護部材42の保護部材側係合部52は、開口45bの平板部74の裏面74aに当接した状態で柄尻側へ移動する。そして、やがて保護部材側係合部52が係合部72の位置に到達し、
図25に示すように係合部72と係合する。
【0137】
このとき、裏面74aに当接して弾性変形していた板ばね部51は、自然状態に戻るか又は変形量が減少する。そして、保護部材42は本体部41に対して固定され、保護部材42の先端部50aは刃先4aの近くに配置されて保護部材としての機能を発揮する。
【0138】
また、押圧部53(操作部)を押し込むと、保護部材側係合部52が係合部72から離れ、係合が解除される。その結果、保護部材42は本体部41に対して移動可能になる。
図23は、保護部材42を柄尻側へ移動させ、保護部材側係合部52が係合部72と係合部73の間にある状態を示している。やがて保護部材側係合部52が係合部73と係合すると、保護部材42が本体部41に対して固定される。さらに、押圧部53を押し込むと、保護部材側係合部52が係合部73から離れ、保護部材42は刃先側へ移動することができる状態になる。
【0139】
以上の動作において、保護部材側係合部52は、開口45bより外側に出ることがない。すなわち、板ばね部51の付勢力によって保護部材側係合部52は係合部72又は係合部73に確実に係合させることができる。また、
図23に示す彫刻刀71では、係合部72及び係合部73は、縁74bの部分しか見えないので見栄えが良好である。
【0140】
次に、
図26〜
図33を参照しながらさらに別の本発明の彫刻刀の実施形態について説明する。
図26に示す彫刻刀77は、本体部78,保護部材79,刃4を有する。本体部78は、上半割部78aと下半割部78bの2つの半割状の部材が組み合わされて構成される。すなわち、上半割部78aと下半割部78bを横断面視すると、どちらも外形が略半円形状であり、内部には後述する各構成が配置されている。
【0141】
図28及び
図29(b)に示すように半割形状の上半割部78aは、中央部の天面98と、両側の縁103とを有する。縁103は、天面98と連続し天面98から垂下する部位であり、刃先側から柄尻側へのびて側壁を構成する。また、天面98における刃先側端部には、係合凸部87が設けられている。係合凸部87は、天面98から下半割部78b側へ隆起する部位であり、略直方体形状を呈している。係合凸部87の刃先側端面には刃4を挿入固定する挿入部102が設けられている。
【0142】
また、係合凸部87の下面(下半割部78b側の面)における刃先側には、係合突起88aが設けられている。さらに係合凸部87には刃先側から柄尻側へのびる段部89が形成されている。係合凸部87と縁103の間には溝104が形成されている。
【0143】
上半割部78aの天面98における係合凸部87の柄尻側には、凹部91,開口90,係合突起88b,内向き突起90aが設けられている。凹部91は、天面98に形成されたくぼみである。また
図29(a),(b)に示す開口90は、上半割部78aの天面98の中央部に長手方向(刃先側から柄尻側にのびる方向)に形成された孔である。すなわち開口90は、本体部78の内外を連通する孔である。そして係合突起88bは、天面98から起立(垂下)する突起である。さらに内向き突起90aは、上半割部78aの柄尻側端部の縁に形成された突起である。すなわち内向き突起90aは、柄尻側端部の縁から刃先側へ水平方向に突出する突起である。
図29(b)に示すように突起90aは、天面98側が開いたコの字状に突出している。
【0144】
上半割部78aの上面(露出面であって天面98の裏面)には、押圧部101が設けられている。押圧部101は、彫刻作業時に上側(作業者に見える側)にくる部位であり、刃先側端部付近に設けられている。押圧部101は、柄尻側から刃先側へいくほど上側(下半割部78bと反対側)へ反り返っている。
【0145】
次に、下半割部78bは、上半割部78aに対応する半割形状を呈する部材である。
図27に示すように下半割部78bの中央部には底面97が設けられている。底面97の両側には、刃先側から柄尻側へのびる縁105が連続形成されている。縁105は底面97に対して起立する壁である。すなわち底面97が縁105と連続し、下半割部78bは横断面視して略半割形状を呈している。
【0146】
下半割部78bの底面97には、係合凹部96が設けられている。係合凹部96内には係合孔93aが形成されている。係合孔93aは、底面97を貫通する孔である。また、下半割部78bの柄尻側には係合孔93b(
図28)と係合突起99(
図27)が設けてある。また、
図32(b)に示すように下半割部78bの底面97には、柄尻側から順に水平面94,傾斜面95,誘導面109が設けられている。
図32(a)に示すように水平面94上には、隆起部94aが形成されている。隆起部94aは、
図17,
図18に示す彫刻刀1における隆起部39と同じ作用効果を奏する突起状の部位である。
【0147】
図30(a)に示すように保護部材79は、主部79aと先端部79bとを有する。先端部79bは、平面視で保護部材79の先端側に設けられた略コの字形状を呈する部位である。また、主部79aの刃先側には一対の長尺部材84a,84bが設けられている。主部79aの中央付近には平板部83が設けられている。長尺部材84a,84bの柄尻側端部は、平板部83の刃先側端部と連続している。また、長尺部材84a,84bの刃先側端部は、各々先端部79bと連続している。その結果、先端部79bと一対の長尺部材84a,84bと平板部83の刃先側とで孔106(環状の部位)が形成される。
【0148】
平板部83には孔95が設けられている。孔95は平板部83を上下に貫通し、且つ、刃先側から柄尻側へのびる長孔である。平板部83の柄尻側端部には接続部82を介して操作部81が接続されている。操作部81は、略直方体形状のブロック状の部位である。操作部81の下部は、孔95の長手方向に沿って配置されている。すなわち操作部81は、平板部83と接続部82でのみ接続されている。接続部82は、操作部81と平板部83とを接続する部位であり、弾性変形が可能な部位である。
【0149】
操作部81の刃先側には保護部材側係合部80が設けられている。すなわち操作部81の刃先側端部付近には切欠部80aが設けられており、切欠部80aよりも刃先側に保護部材側係合部80が形成されている。保護部材側係合部80は、上方に突出している。また、操作部81には壁81aが形成されている。壁81aは、操作部81における切欠部80aを挟んで保護部材側係合部80と対向する部位である。
【0150】
平板部83の下面及び側面は、スライド部86を構成する。スライド部86は、後述する空間107を仕切る内壁面と接触し、この内壁面と摺動する部位である。平板部83の下面側であって孔95を仕切る両側の縁部分(スライド部86の一部)には、突起86aが設けられている。突起86aは、
図17,
図18に示す彫刻刀1における保護部材3の隆起部3aと同じ作用効果を奏する部位である。
【0151】
長尺部材84a,84bは、刃先側から柄尻側へ真っ直ぐにのびる部位である。長尺部材84a,84bには傾斜部92が設けられている。傾斜部92は、操作部81の隆起方向と逆方向に起立(垂下)すると共に、孔106の内側方向を向いて傾斜する細長い板状の部位である。
図30(c)に示すように傾斜部92にはスライド係合部85が連続形成されている。スライド係合部85は、傾斜部92における刃先側から柄尻側にのびる端部と連続し且つ孔106の内側を向いて短くのびる部位である。
図30(a)に示すように保護部材79を平面視すると、傾斜部92及びスライド係合部85によって、孔106の一部の幅が狭くなっている。
【0152】
先端部79bは、
図30(a)に示すように平面視すると略コの字形状を呈しており、
図30(b)に示すように側面視すると、刃先側へいくほど操作部81の隆起方向に反り返るか、又は主部79aに対して傾斜している。
【0153】
以上説明した上半割部78a,下半割部78b,保護部材79は、次のように組み立てられる。すなわち、
図31に示すように上半割部78aと下半割部78bの間に保護部材79を配置し、上半割部78aと下半割部78bを結合する。すなわち上半割部78aの係合凸部87(
図27,
図28)を下半割部78bの係合凹部96(
図27)に嵌合し、上半割部78aの係合突起88aを下半割部78bの係合孔93aに係合させる。また、上半割部78aの係合突起88bを、下半割部78bの係合孔93b(
図28)に係合させる。さらに上半割部78aの内向き突起90a(
図28)に、下半割部78bの係合突起99(
図27)を係合させる。その結果、上半割部78aと下半割部78bは強固に固定され、本体部78が構成される。
【0154】
なお図示していないが、両半割部78a,78bには、
図10,
図11に示す彫刻刀1の上半割部2aの突起16と、下半割部2bの縁部28と同様の構成が設けられており、結合部の周囲の強度が確保されている。
【0155】
上半割部78aと下半割部78bを結合することにより、本体部78の刃先側端部には先端開口108が形成される。また本体部78内には、
図32(a)に示す空間107が形成される。空間107は、上半割部78aの開口90及び先端開口108において外部と連通している。この空間107に保護部材79が配置される。
【0156】
図32(b)に示すように下半割部78bの誘導面109(底面97)と、上半割部78aの天面98の間隔は、保護部材79の高さ寸法と略一致している。また、保護部材79の対向する長尺部材84a,84bの間には、本体部78(上半割部78a)の係合凸部87が配置されている。換言すると、保護部材79の先端部79bは、係合凸部87と縁103の間の溝104に配置されている。そのため、保護部材79は、誘導面109,天面98,及び係合凸部87で規制されながら刃先側と柄尻側とを結ぶ方向にのみ往復スライド移動が可能である。
【0157】
さらに保護部材79のスライド係合部85は、係合凸部87の段部89に沿って配置される。すなわち、保護部材79が本体部78に沿って移動する際には、スライド係合部85は段部89に沿って移動する。保護部材79は、本体部78内に収容されると、先端部79bが空隙100内に配置される。空隙100は、本体部78の先端部分の内部であって空間107の一部である。
【0158】
次に、彫刻刀77の動作を説明する。
図26(b)及び
図32(a)に示すように、保護部材79が本体部78内の空間107内に収容されている状態では、保護部材79の柄尻側端部が本体部78の水平面94(底面97)上に配置されている。このとき、保護部材79のスライド部86に設けた突起86aが、水平面94上に形成された隆起部94aよりも柄尻側に配置されている。
【0159】
そして
図26(b)及び
図32(a)に示す状態から作業者が操作部81を刃先側へ押圧操作すると、保護部材79は刃先側へ移動し、スライド部86の突起86aが水平面94上の隆起部94aを越えると
図32(b)に示す状態となる。すなわちスライド部86の突起86aが水平面94上の隆起部94aを越える際に、突起86aは隆起部94aで押圧される。換言すると、隆起部94aと本体部79(上半割部79b)の天面98の間の間隔(高さ)が部分的に狭くなっており、保護部材79における部分的に高さ方向の寸法が大きい突起86a部分が隆起部94aを越える際に、隆起部94aと突起86aとが互いに干渉する。その結果、保護部材79の刃先側への移動を阻止する抵抗力が生じる。
【0160】
彫刻刀77の使用者が、この抵抗力に抗して保護部材79を刃先側へ移動させるように操作部81を操作すると、突起86aが隆起部94aを乗り越え、その後は保護部材79は円滑に刃先側へ移動可能になる。そして保護部材79の先端部79bは、空隙100内から本体部78の外部に徐々に露出する。保護部材79側の突起86aと、本体部78側の隆起部94aは、保護部材79が本体部78内に収容される直前に係合できればよい。よってこの条件を満たすならば、突起86aと隆起部94aの設置位置は、
図32(a)等に示す位置に限定する必要はなく、任意に選定することができる。
【0161】
そして
図32(b)に示すように、保護部材79の保護部材側係合部80が、本体部78(上半割部78a)の柄尻側壁部91aに当接すると、彫刻刀77の使用者は操作部81を孔95内へ押し込む。その結果、操作部81は接続部82を中心に揺動し、保護部材側係合部80が孔95内に入り込むように操作部81が傾斜する。すなわち、接続部82が弾性変形し、保護部材側係合部80の一部又は全部が孔95内に入り込む。
【0162】
図32(b)に示す状態からさらに操作部81を刃先側へ押圧すると、
図32(c)に示すように保護部材79が刃先側へ移動し、保護部材側係合部80が柄尻側壁部91aを越える。このとき、彫刻刀77の使用者が操作部81を孔95内へ押し込む力を弱めると、接続部82の弾性力(復元力)によって保護部材側係合部80が天面98に押し付けられる。
【0163】
そして
図32(d)に示すように、保護部材側係合部80が凹部91の位置まで移動すると、保護部材79は接続部82の弾性力によって元の形状に復元し、柄尻側壁部91aが隙間80aに嵌まり、保護部材側係合部80が凹部91に係合する。その結果、保護部材79は本体部78に対して固定され、刃先側から柄尻側への移動が阻止される。
【0164】
上述の例に示すように、保護部材79における接続部82のみを弾性変形可能にしてもよいが、操作部81,平板部83,接続部82を樹脂材等で一体成形し、接続部82と連続する平板部83の一部も弾性変形可能にしてもよい。
【0165】
また、このとき、
図32(d)に示すように本体部78の空隙100(空間107における保護部材79の先端部79bを収容する空間)において、本体部78(上半割部78a)の天面98と保護部材79の主部79aの間に隙間が生じている。ここで、刃4の周囲に保護部材79(先端部79b)を配置した状態で、先端部79bが彫刻対象物等に押し付けられると、先端部79bは本体部78(上半割部78a)の天面98側へ押圧される。
【0166】
ところが
図33に示すように、保護部材79のスライド係合部85が、本体部78(上半割部78a)の係合凸部87の段部89に係合しているので、スライド係合部85が段部89に支持され、その結果、保護部材79(先端部79b)は空隙100内を天面98側へ移動しない。すなわち、保護部材79の先端部79bは、刃4の周囲に確実に配置された状態を維持し、ぐらつくことがなく、作業者は安心して彫刻作業を実施することができる。また、保護部材79は、スライド係合部85を設けることによって剛性が向上する。
【0167】
反り返った押圧部101に作業者が指を添えると、押圧部101は当該指の指先の曲面に沿って密着する。そのため、指先に押圧部101が引っ掛かり易くなり、指先に力を入れて彫刻作業がし易い。仮にこのときに保護部材79が彫刻対象物(図示せず)に当接しても、保護部材79の保護部材側係合部80が本体部78側の凹部91に係合しているので、保護部材79の先端部79bは空隙100内に収容されず、先端部79bが刃4の周囲に配置された状態(保護機能を発揮する状態)を維持することができる。
【0168】
逆に、保護部材79を使用しないで彫刻作業を実施したい場合には、次の手順で保護部材79を本体部78内に収容する。すなわち
図32(d)に示す状態で、作業者は接続部82の弾性力に抗して操作部81を押し下げ、
図32(c)に示すように保護部材側係合部80と凹部91の係合を解除する。そしてこの状態で操作部81を柄尻側へ引く。そして
図32(b)に示すように保護部材側係合部80が柄尻側壁部91aを越えると、保護部材79は接続部82の弾性力によって元の形状に復元する。
【0169】
さらに作業者が操作部81の壁81aに指をかけて柄尻側へ引くと、やがて保護部材79の突起86aが本体部78(下半割部78b)の水平面94上の隆起部94aに当接する。そして、突起86aが隆起部94aを乗り越える際に保護部材79の柄尻側への移動を阻止する方向に抵抗力が作用する。彫刻刀77の使用者が、この抵抗力を越える力で保護部材79(操作部81)を操作すると、保護部材79は
図32(a)に示す位置まで移動し、先端部79bが本体78内に収容される。