特許第6180596号(P6180596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6180596
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】基地局、干渉抑圧装置及び干渉抑圧方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/10 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   H04B7/10 A
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-138657(P2016-138657)
(22)【出願日】2016年7月13日
【審査請求日】2016年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】藤井 輝也
(72)【発明者】
【氏名】太田 喜元
【審査官】 岡 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−273513(JP,A)
【文献】 特許第4141604(JP,B2)
【文献】 特開2014−93598(JP,A)
【文献】 Khurram Shabih Zaidi et al.,Wireless Backhaul for Broadband Communication Over Sea,2013 IEEE 11th Malaysia International Conference on Communications,2013年11月28日,pp.298-303
【文献】 松浦 一樹 他,900MHz帯ラジオダクト干渉キャンセラ,2016年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会講演論文集1,2016年 9月,p.141,B-1-141
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/10
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末と無線通信する基地局であって、
通信端末と無線通信するための第1アンテナと、
前記第1アンテナの位相中心点を通過する仮想鉛直線上の上方向又は下方向に所定距離だけ離れた位置に位相中心点を有する第2アンテナと、
前記第1アンテナで受信した第1受信信号から干渉信号を分離して検出する第1干渉信号検出手段と、
前記第2アンテナで受信した第2受信信号から前記干渉信号を分離して検出する第2干渉信号検出手段と、
前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算するウェイト計算手段と、
前記第2受信信号に前記ウェイトを乗算した信号を前記第1受信信号から減算する信号演算手段と、を備えることを特徴とする基地局。
【請求項2】
請求項1の基地局において、
前記第1干渉信号検出手段は、前記通信端末が使用しない周波数帯域を選択的に通過させる第1帯域フィルタにより、前記第1受信信号から前記干渉信号を分離して検出し、
前記第2干渉信号検出手段は、前記通信端末が使用しない周波数帯域を選択的に通過させる前記第1帯域フィルタと同じ通過特性を有する第2帯域フィルタにより、第2受信信号から前記干渉信号を分離して検出することを特徴とする基地局。
【請求項3】
請求項2の基地局において、
前記第1帯域フィルタ及び第2帯域フィルタそれぞれが選択的に通過させる周波数帯域は、前記通信端末の通信用に設定された所定の通信帯域内において前記通信端末が使用していない周波数帯域、又は、前記通信帯域の外側の周波数帯域であることを特徴とする基地局。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの基地局において、
前記ウェイト計算手段は、前記第1受信信号から検出された干渉信号と前記第2受信信号からから検出された干渉信号とに対して相関検出を行うことにより、前記ウェイトを計算することを特徴とする基地局。
【請求項5】
請求項4の基地局において、
前記ウェイト計算手段は、前記第1受信信号から検出された干渉信号s2と前記第2受信信号から検出された干渉信号s2’とに基づき、下記の式(1)を用いて前記ウェイトwを計算することを特徴とする基地局。
【数1】
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかの基地局において、
前記ウェイト計算手段は、
ウェイトの実振幅をwe及び位相をφとしたとき、前記第1受信信号から検出された干渉信号s2と前記第2受信信号から検出された干渉信号s2’とに対して下記の式(2)に示す電力差ΔPを計算し、
前記ウェイトw(実振幅:we、位相:φ)の下記式(3)及び式(4)の範囲に対して離散的な幅(Δwe,Δφ)で、前記電力差ΔPの最小値を検索し、
前記電力差ΔPの値が最小値になったときのwを、前記ウェイトとして決定することを特徴とする基地局。
【数2】
【数3】
【数4】
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの基地局において、
前記第1受信信号及び前記第2受信信号に前記干渉信号が含まれているか否かを判定する干渉有無判定手段を備え、
前記ウェイト計算手段は、
前記第1受信信号及び前記第2受信信号のそれぞれに前記干渉信号が含まれている場合は、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを決定し、
前記第1受信信号及び前記第2受信信号の少なくとも一方に前記干渉信号が含まれていない場合は、前記ウェイトをゼロに設定することを特徴とする基地局。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかの基地局において、
前記第2アンテナは前記第1アンテナと異なる指向性を有することを特徴とする基地局。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの基地局において、
前記干渉信号は、ダクト現象によって飛来する無線信号であることを特徴とする基地局。
【請求項10】
通信端末と無線通信する基地局で受信される受信信号に含まれる干渉信号を抑圧する干渉抑圧装置であって、
通信端末と無線通信するための第1アンテナで受信した第1受信信号から干渉信号を分離して検出する第1干渉信号検出手段と、
前記第1アンテナの位相中心点を通過する仮想鉛直線上の上方向又は下方向に所定距離だけ離れた位置に位相中心点を有する第2アンテナで受信した第2受信信号から前記干渉信号を分離して検出する第2干渉信号検出手段と、
前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算するウェイト計算手段と、
前記第2受信信号に前記ウェイトを乗算した信号を前記第1受信信号から減算する信号演算手段と、を備えることを特徴とする干渉抑圧装置。
【請求項11】
請求項10の干渉抑圧装置において、
前記第1干渉信号検出手段は、前記通信端末が使用しない周波数帯域を選択的に通過させる第1帯域フィルタにより、前記第1受信信号から前記干渉信号を分離して検出し、
前記第2干渉信号検出手段は、前記通信端末が使用しない周波数帯域を選択的に通過させる前記第1帯域フィルタと同じ通過特性を有する第2帯域フィルタにより、前記第2受信信号から前記干渉信号を分離して検出することを特徴とする干渉抑圧装置。
【請求項12】
請求項11の干渉抑圧装置において、
前記第1帯域フィルタ及び第2帯域フィルタそれぞれが選択的に通過させる周波数帯域は、前記通信端末の通信用に設定された所定の通信帯域内において前記通信端末が使用していない周波数帯域、又は、前記通信帯域の外側の周波数帯域であることを特徴とする干渉抑圧装置。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれかの干渉抑圧装置において、
前記ウェイト計算手段は、前記第1受信信号から検出された干渉信号と前記第2受信信号から検出された干渉信号とに対して相関検出を行うことにより、前記ウェイトを計算することを特徴とする干渉抑圧装置。
【請求項14】
請求項13の干渉抑圧装置において、
前記ウェイト計算手段は、前記第1受信信号から検出された干渉信号s2と前記第2受信信号からから検出された干渉信号s2’とに基づき、下記の式(1)を用いて前記ウェイトwを計算することを特徴とする干渉抑圧装置。
【数5】
【請求項15】
請求項10乃至12のいずれかの干渉抑圧装置において、
前記ウェイト計算手段は、
ウェイトの実振幅をwe及び位相をφとしたとき、前記第1受信信号から検出された干渉信号s2と前記第2受信信号から検出された干渉信号s2’とに対して下記の式(2)に示す電力差ΔPを計算し、
前記ウェイトw(実振幅:we、位相:φ)の下記式(3)及び式(4)の範囲に対して離散的な幅(Δwe,Δφ)で、前記電力差ΔPの最小値を検索し、
前記電力差ΔPの値が最小値になったときのwを、前記ウェイトとして決定することを特徴とする干渉抑圧装置。
【数6】
【数7】
【数8】
【請求項16】
請求項10乃至15のいずれかの干渉抑圧装置において、
前記第1受信信号及び前記第2受信信号に前記干渉信号が含まれているか否かを判定する干渉有無判定手段を更に備え、
前記ウェイト計算手段は、
前記第1受信信号及び前記第2受信信号のそれぞれに前記干渉信号が含まれている場合は、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算し、
前記第1受信信号及び前記第2受信信号の少なくとも一方に前記干渉信号が含まれていない場合は、前記ウェイトをゼロに設定することを特徴とする干渉抑圧装置。
【請求項17】
請求項10乃至16のいずれかの干渉抑圧装置において、
前記干渉信号は、ダクト現象によって飛来する無線信号であることを特徴とする干渉抑圧装置。
【請求項18】
通信端末と無線通信する基地局で受信される受信信号に含まれる干渉信号を抑圧する干渉抑圧方法であって、
通信端末と無線通信するための第1アンテナで受信した第1受信信号から干渉信号を分離して検出することと、
前記第1アンテナの位相中心点を通過する仮想鉛直線上の上方向又は下方向に所定距離だけ離れた位置に位相中心点を有する第2アンテナで受信した第2受信信号から前記干渉信号を分離して検出することと、
前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算することと、
前記第2受信信号に前記ウェイトを乗算した信号を前記第1受信信号から減算することを含むことを特徴とする干渉抑圧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局、干渉抑圧装置及び干渉抑圧方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、通信端末から送信された無線信号を受信するときの受信信号に含まれる干渉信号を抑圧することにより、通信端末との間で良好な通信品質を得る基地局が知られている。例えば、既知信号(例えばCDMA方式におけるパイロットシンボル)から干渉レプリカ信号を生成し、生成した干渉レプリカ信号を受信信号から減算する基地局が知られている(例えば、特許文献1参照)。この基地局では、隣接する基地局からの干渉信号や、同じ基地局セル内に存在している受信希望対象以外の通信端末からの干渉信号を抑圧することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、基地局で受信する受信信号には、上記無線通信ネットワークで送受信される無線信号以外の予測が難しい他の干渉信号が含まれる場合がある。例えば、以下に示すような気象条件(天候)により電波が遠くに届く「ダクト」と呼ばれる現象が発生し、そのダクトに起因した干渉信号が受信信号に含まれる場合がある。図8(a)に示す通常時においては、海上の上方の大気の屈折率(図中の修正屈折指数M)は高度が高くなるに従って単調に変化し、図8(b)に示すように第1の陸地800のアンテナ801から送信されたおおよそ1200MHz以下の周波数帯の電波805は海806を挟んで遠方に位置する第2の陸地810のアンテナ811に届くことはない。ところが、海上の気象条件(天候)が特定の条件になると、図9(a)に示すように海上の上方の大気の屈折率(図中の修正屈折指数M)が特定の高度の上空で反転するダクト状の層(反転層)900が発生し、その層900内を電波が伝搬することにより、図9(b)に示すように第1の陸地800のアンテナ801から送信された上記所定の周波数帯の電波802が海を挟んで遠方に位置する第2の陸地810のアンテナ811に届くダクト現象が発生する。この現象により、例えば日本の九州地方では海を挟んで隣国である中華人民共和国(中国)や大韓民国(韓国)から干渉波(以下「ダクト干渉波」という。)が飛来し、それと同じ周波数を用いている我が国の無線システムに甚大なる通信障害を引き起こすことがある。上述したダクト現象は、春先から秋(4月頃〜10月頃)の夜間に気象条件によって不定期に発生する。このダクト現象は前述のようにおおよそ1200MHz以下の周波数帯で観測される。例えば、九州地方のタクシー無線等に使用される業務用無線システムであるMCA(マルチチャネルアクセスシステム)の周波数帯(930MHz〜940MHz)では、中国や韓国からと思われるダクト干渉が観測される。このダクト現象による電波は、特に山間部などの標高の高い場所に設置されているMCAの基地局において強いダクト干渉となり、通信端末の上り回線(端末→基地局)の通信品質を大幅に低下させてしまう。尚、ダクト干渉波830は、おおよそ図10に示すように垂直方向面における水平方向Hからの角度(垂直角度)θが0°である水平方向から基地局のアンテナ840に到来する。
【0004】
本発明は、発生時間が不定期で垂直面内の特定の方向から到来する干渉波に起因した干渉信号を適応的に抑圧することができる基地局、干渉抑圧装置及び干渉抑圧方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る基地局は、通信端末と無線通信する基地局であって、通信端末と無線通信するための第1アンテナと、前記第1アンテナの位相中心点を通過する仮想鉛直線上の上方向又は下方向に所定距離だけ離して位置に位相中心点を有する第2アンテナと、前記第1アンテナで受信した第1受信信号から干渉信号を分離して検出する第1干渉信号検出手段と、前記第2アンテナで受信した第2受信信号から前記干渉信号を分離して検出する第2干渉信号検出手段と、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算するウェイト計算手段と、前記第2受信信号に前記ウェイトを乗算した信号を前記第1受信信号から減算する信号演算手段と、を備える。
前記基地局において、前記第1干渉信号検出手段は、前記通信端末が使用しない周波数帯域を選択的に通過させる第1帯域フィルタにより、前記第1受信信号から前記干渉信号を分離して検出し、前記第2干渉信号検出手段は、前記通信端末が使用しない周波数帯域を選択的に通過させる前記第1帯域フィルタと同じ通過特性を有する第2帯域フィルタにより、前記第2受信信号から前記干渉信号を分離して検出してもよい。ここで、前記第1帯域フィルタ及び第2帯域フィルタそれぞれが選択的に通過させる周波数帯域は、前記通信端末の通信用に設定された所定の通信帯域内において前記通信端末が使用していない周波数帯域であってもよいし、前記通信帯域の外側の周波数帯域であってもよい。
また、前記基地局において、前記ウェイト計算手段は、前記第1受信号から検出された干渉信号と前記第2受信信号から検出された干渉信号とに対して相関検出を行うことにより、前記ウェイトを計算してもよい。ここで、前記ウェイト計算手段は、前記第1受信信号から検出された干渉信号s2と前記第2の受信信号から検出された干渉信号s2’とに基づき、下記の式(1)を用いて前記ウェイトwを計算してもよい。
【数1】
また、前記基地局において、前記ウェイト計算手段は、ウェイトの実振幅をwe及び位相をφとしたとき、前記第1受信信号から検出された干渉信号s2と前記第2受信信号から検出された干渉信号s2’とに対して下記の式(2)に示す電力差ΔPを計算し、前記ウェイトw(実振幅:we、位相:φ)の下記式(3)及び式(4)の範囲において離散的な幅(Δwe,Δφ)で、前記電力差ΔPの最小値を検索し、前記電力差ΔPの値が最小値になったときのwを、前記ウェイトとして決定してもよい。
【数2】
【数3】
【数4】
また、前記基地局において、前記第1受信信号及び前記第2受信信号に前記干渉信号が含まれているか否かを判定する干渉有無判定手段を更に備え、前記ウェイト計算手段は、前記第1受信信号及び前記第2受信信号のそれぞれに前記干渉信号が含まれている場合は、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるように前記ウェイトwを計算し、前記第1受信信号及び前記第2受信信号の少なくとも一方に前記干渉信号が含まれていない場合は、前記ウェイトwをゼロに設定してもよい。
また、前記基地局において、前記第2アンテナは前記第1アンテナと異なる指向性を有するものであってもよい。
また、前記基地局において、前記干渉信号は、ダクト現象によって飛来する無線信号であってもよい。
【0006】
本発明の他の態様に係る干渉抑制装置は、通信端末と無線通信する基地局で受信される受信信号に含まれる干渉信号を抑圧する干渉抑圧装置であって、通信端末と無線通信するための第1アンテナで受信した第1受信信号から干渉信号を分離して検出する第1干渉信号検出手段と、前記第1アンテナの位相中心点から上方向又は下方向に所定距離だけ離して同じ水平面内の位相中心点を有する第2アンテナで受信した第2受信信号から前記干渉信号を分離して検出する第2干渉信号検出手段と、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算するウェイト計算手段と、前記第2受信信号に前記ウェイトを乗算した信号を前記第1受信信号から減算する信号演算手段と、を備える。
前記干渉抑圧装置において、前記第1干渉信号検出手段は、前記通信端末が使用しない周波数帯域を選択的に通過させる第1帯域フィルタにより、前記第1受信信号から前記干渉信号を分離して検出し、前記第2干渉信号検出手段は、前記通信端末が使用しない周波数帯域を選択的に通過させる前記第1の帯域フィルタと同じ通過特性を有する第2帯域フィルタにより、前記第2受信号から前記干渉信号を分離して検出してもよい。ここで、前記第1帯域フィルタ及び第2帯域フィルタそれぞれが選択的に通過させる周波数帯域は、前記通信端末の通信用に予め設定された通信帯域内において前記通信端末が使用していない周波数帯域であってもよいし、前記通信帯域の外側の周波数帯域であってもよい。
また、前記干渉抑圧装置において、前記ウェイト計算手段は、前記第1受信信号から検出された干渉信号と前記第2受信信号から検出された干渉信号とに対して相関検出を行うことにより、前記ウェイトを計算してもよい。ここで、前記ウェイト計算手段は、前記第1受信信号から検出された干渉信号s2と第2受信信号から検出された干渉信号s2’とに基づき、前記式(1)を用いて前記ウェイトwを計算してもよい。
また、前記干渉抑圧装置において、前記ウェイト計算手段は、ウェイトの実振幅we及び位相φとしたとき、前記第1受信信号から検出された干渉信号s2と前記第2受信信号から検出された干渉信号s2’とに対して前記式(2)に示す電力差ΔPを計算し、前記ウェイトw(実振幅:we、位相:φ)の前記式(3)及び式(4)の範囲において離散的な幅(Δwre,Δφ)で、前記電力差ΔPの最小値を検索し、前記電力差ΔPの値が最小値になったときのwを、前記ウェイトとしてもよい。
また、前記干渉抑圧装置において、前記第1受信信号及び前記第2受信信号に前記干渉信号が含まれているか否かを判定する干渉有無判定手段を更に備え、前記ウェイト計算手段は、前記第1受信信号及び前記第2受信信号のそれぞれに前記干渉信号が含まれている場合は、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算し、前記第1受信信号及び前記第2受信信号の少なくとも一方に前記干渉信号が含まれていない場合は、前記ウェイトをゼロに設定してもよい。
また、前記干渉抑圧装置において、前記第2アンテナは前記第1アンテナと異なる指向性を有するものであってもよい。
また、前記干渉抑圧装置において、前記干渉信号は、ダクト現象によって飛来する無線信号であってもよい。
【0007】
本発明の更に他の態様に係る干渉抑方法は、通信端末と無線通信する基地局で受信される受信信号に含まれる干渉信号を抑圧する干渉抑圧方法であって、通信端末と無線通信するための第1アンテナで受信した第1受信信号から干渉信号を分離して検出することと、前記第1アンテナの位相中心点を通過する仮想鉛直線上の上方向又は下方向に所定距離だけ離れた位置に位相中心点を有する第2アンテナで受信した第2受信信号から干渉信号を分離して検出することと、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算することと、前記第2受信信号に前記ウェイトを乗算した信号を前記第1受信信号から減算することとを含む。
また、前記干渉抑方法において、前記通信端末が使用しない周波数帯域を決定することを更に含み、前記通信端末が使用しない周波数帯域を選択的に通過させる第1帯域フィルタにより、前記第1受信信号から前記干渉信号を分離して検出し、前記通信端末が使用しない周波数帯域を選択的に通過させる前記第1の帯域フィルタと同じ通過特性を有する第2帯域フィルタにより、前記第2受信信号から前記干渉信号を分離して検出してもよい。ここで、前記第1帯域フィルタ及び第2帯域フィルタそれぞれが選択的に通過させる周波数帯域は、前記通信端末の通信用に予め設定された通信帯域内において前記通信端末が使用していない周波数帯域であってもよいし、前記通信帯域の外側の周波数帯域であってもよい。
また、前記干渉抑方法において、前記第1受信信号から検出された干渉信号と前記第2受信信号からから検出された干渉信号とに対して相関検出を行うことにより、前記ウェイトを計算してもよい。ここで、前記第1受信信号から検出された干渉信号s2と前記第2受信信号からから検出された干渉信号s2’とに基づき、前記式(1)を用いて前記ウェイトwを計算してもよい。
また、前記干渉抑方法において、ウェイトの実振幅をwe及び位相をφとしたとき、前記第1受信信号から検出された干渉信号s2と前記第2受信信号から検出された干渉信号s2’とに対して前記式(2)に示す電力差ΔPを計算し、前記ウェイトw(実振幅:we、位相:φ)の前記式(3)及び式(4)の範囲において離散的な幅(Δwe,Δφ)で、前記電力差ΔPの最小値を検索し、前記電力差ΔPの値が最小値になったときのw(実振幅:we、位相:φ)を、前記ウェイトとして決定してもよい。
また、前記干渉抑方法において、前記第1受信信号及び前記第2受信信号に前記干渉信号が含まれているか否かを判定することと、前記第1受信信号及び前記第2受信信号のそれぞれに前記干渉信号が含まれている場合は、前記第1受信信号から検出した干渉信号と前記第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトwを計算し、前記第1受信信号及び前記第2受信信号の少なくとも一方に前記干渉信号が含まれていない場合は、前記ウェイトwをゼロに設定することとを更に含んでもよい。
また、前記干渉抑方法において、前記第2アンテナは前記第1アンテナと異なる指向性を有するものであってもよい。
また、前記干渉抑方法において、前記干渉信号は、ダクト現象によって飛来する無線信号であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発生時間が不定期で垂直面内の特定の方向から飛来する干渉電波に起因した干渉信号を適応的に抑圧することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る基地局の全体構成の一例を示す概略構成図。
図2】本実施形態の基地局における基地局アンテナ及びキャンセルアンテナの他の配置例を示す説明図。
図3】(a)〜(c)は本実施形態の基地局におけるキャンセルアンテナ及び干渉抑装置によるダクト干渉信号のキャンセル効果の一例を示す説明図。
図4】本実施形態の基地局における干渉抑装置の一構成例を示すブロック図。
図5】(a)及び(b)はそれぞれデジタル帯域フィルタで選択的に通過させる周波数帯域fBPの例を示す説明図。
図6】本実施形態の基地局における干渉抑装置の他の構成例を示すブロック図。
図7】本実施形態の基地局における干渉抑装置の更に他の構成例を示すブロック図。
図8】(a)及び(b)はそれぞれダクトが発生していない通常時の海上の上層における屈折率の変化及び電波の伝わり方を示す図。
図9】(a)及び(b)はそれぞれダクトが発生している時の海上の上層における屈折率の変化及び電波の伝わり方を示す図。
図10】基地局のアンテナに飛来するダクト干渉波の方向の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、本実施形態では、タクシー等の車両に搭載された通信端末と無線通信を行うMCAシステムの業務用無線に用いられる基地局について説明するが、本実施形態の基地局は、携帯電話機やスマートフォン等の通信端末と無線通信を行うセルラー移動通信システムの基地局等の他の基地局であってもよい。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る基地局の全体構成の一例を示す概略構成図である。図1において、本実施形態に係る基地局10は、本体の基地局装置20と、干渉抑圧システム30と、通信端末(移動機、移動局)80からの電波(以下「希望波」又は「希望信号」ともいう。)s1RFを受信するための第1アンテナとしての基地局アンテナ40と、を備える。基地局アンテナ40は、MCAシステムの業務用無線の基地局で用いられている一般的なアンテナである。基地局アンテナ40にダクト干渉波s2RF(例えば、930MHz〜940MHzの干渉波)が到来しているときは、基地局アンテナ40により希望波s1RFとダクト干渉s2RFとが受信される。
【0012】
干渉抑圧システム30は、第2アンテナとしてのキャンセルアンテナ300と、干渉抑装置310とを備える。キャンセルアンテナ300は、基地局アンテナ40の位相中心点40aから上方向又は下方向に所定距離dだけ離れた位相中心点300aを有し、基地局アンテナ40とは垂直面内又は水平面内指向性が同じ、または異なる指向性のアンテナである。また、キャンセルアンテナ300の位相中心点300aは、基地局アンテナ40の位相中心点40aを通過する仮想鉛直線Lv上に位置している。すなわち、仮想鉛直線Lvに沿って上方又は下方から見た場合、水平面内の基地局アンテナ40の位相中心点40aとキャンセルアンテナ300の位相中心点300aは互いに一致している。キャンセルアンテナ300にダクト干渉波s2RF(例えば、930MHz〜940MHzの干渉波)が到来しているときは、キャンセルアンテナ300により希望波s1RFとダクト干渉s2RFとが受信される。
【0013】
なお、図示の例では、キャンセルアンテナ300として八木アンテナを用いているが、他のタイプのアンテナであってもよい。また、図示の例では、基地局アンテナ40の上方にキャンセルアンテナ300を配置しているが、キャンセルアンテナ300の装着が容易になるように図2に示すように基地局アンテナ40の下方にキャンセルアンテナ300を配置してもよい。
【0014】
干渉抑装置310は、基地局アンテナ40で受信した第1受信信号Xからダクト干渉信号s2を分離して検出する第1干渉信号検出手段としての第1ダクト干渉検出部320と、キャンセルアンテナ300で受信した第2受信信号Yからダクト干渉信号s2’を分離して検出する第2干渉信号検出手段としての第2ダクト干渉検出部330とを備える。
【0015】
更に、干渉抑装置310は、第1受信信号Xから検出したダクト干渉信号s2と第2受信信号Yから検出したダクト干渉信号s2’とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトwを計算するウェイト計算手段としてウェイト計算部340を備える。ウェイト計算部340で計算されるウェイトwは、実振幅と位相とで定義される複素振幅であり、第2受信信号Yから検出したダクト干渉信号s2’の振幅及び位相が第1受信信号Xから検出したダクト干渉信号s2と同じ振幅及び位相になるように、すなわちs2=w・s2’を満たすように算出される。このウェイトwは、後述の相関検出を用いた方法や電力差を用いた摂動方法など、各種方法で算出することができる。
【0016】
また、干渉抑装置310は、第2受信信号Yにウェイトwを乗算した信号w・Yを第1受信信号Xから減算する信号演算手段としての信号演算部350とを備える。この信号演算部350によりダクト干渉信号s2がキャンセルされた第1受信信号Xである信号Z(=X−w・Y)が基地局装置20に出力される。
【0017】
図3は、本実施形態の基地局10におけるキャンセルアンテナ300及び干渉抑装置310によるダクト干渉信号s2のキャンセル効果の一例を示す説明図である。図3(a)は、本実施形態の基地局10におけるダクト干渉波s2RFが水平方向(水平面からの角度θ=0°)から到来しているときの垂直面内の合成指向特性101の一例を示している。図3(b)は、本実施形態の基地局10におけるダクト干渉波s2RFが若干上方向(水平面からの角度θ=2°)から到来しているときの垂直面内の合成指向特性102の一例を示している。図3(c)は、本実施形態の基地局10におけるダクト干渉波s2RFが到来していないとき(ウェイトw=0)の垂直面内の指向特性103の一例を示している。
【0018】
図3(a)に示すように、ダクト干渉波s2RFが水平方向(水平面からの角度θ=0°)から到来しているときは、基地局10の垂直面内の合成指向特性101のヌル方向が水平方向になり、基地局アンテナ40で受信した受信信号Xに含まれる、水平方向からのダクト干渉波s2RFに起因したダクト干渉信号s2をキャンセルすることができる。
【0019】
また、図3(b)に示すように、ダクト干渉波s2RFが水平方向よりも上方向(図示の例では水平面からの角度θ=2°)から到来しているときは、基地局10の垂直面内の合成指向特性102のヌル方向がダクト干渉波s2RFの到来方向に変化する。このようにダクト干渉波s2RFの垂直面内の到来方向が変わっても適応的に垂直面内指向特性のヌル方向を変化させることができる。しかも、そのヌル方向を変化させるためにキャンセルアンテナ及びその給電回路を調整したり交換したりする必要がなく、オペレーションの煩雑さを回避することができる。
【0020】
また、図3(c)に示すように、ダクト干渉波s2RFが到来していないときは、ウェイトw=0であるため、元々の基地局10の垂直面内の指向特性103となることから基地局アンテナ40を介した通信端末80との通信に対する影響を小さくすることができる。
【0021】
次に、本実施形態の基地局10における干渉抑装置310の構成例について説明する。
〔干渉抑装置の構成例1〕
図4は、本実施形態の基地局10における干渉抑装置310の一構成例を示すブロック図である。なお、前述の図1と同様な部分については同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0022】
本構成例の干渉抑装置310において、第1ダクト干渉検出部320は、基地局アンテナ40で受信された第1受信信号X(=s1+s2)に対して、通信端末80が使用しない周波数帯域fBPを選択的に通過させるデジタル帯域フィルタで帯域制限することにより、ダクト干渉信号s2を分離して検出する。また、第2ダクト干渉検出部330は、キャンセルアンテナで受信された第2受信信号Y(=s1’+s2’)に対して、通信端末80が使用しない周波数帯域fBPを選択的に通過させるデジタル帯域フィルタで帯域制限することにより、干渉信号s2’を分離して検出する。
【0023】
図5(a)及び(b)はそれぞれデジタル帯域フィルタで選択的に通過させる周波数帯域fBPの例である。デジタル帯域フィルタで選択的に通過させる周波数帯域fBPとしては、例えば図5(a)に示すように通信端末80との通信で予め設定された通信帯域内で通信端末80が実際に使用しない周波数帯域を選択する。また、デジタル帯域フィルタで選択的に通過させる周波数帯域fBPとしては、図5(b)に示すように通信帯域外の周波数帯域を決定してもよい。
【0024】
また、本構成例の干渉抑装置310において、ウェイト計算部340は、第1受信信号Xから検出された干渉信号s2と第2受信信号Yからから検出された干渉信号s2’とに対して相関検出を行うことにより、ウェイトwを計算する。より具体的には、ウェイトwは、第1受信信号Xから帯域制限して検出された干渉信号s2及び第2受信信号Yから帯域制限して検出された干渉信号s2’から、次の式(1)を用いて計算する。なお、式中の「< >」はアンサンブル平均を表し、「*」は複素共役を表している(以下同様)。
【数5】
【0025】
本構成例の干渉抑装置310では、通信端末80が使用しない周波数帯域fBPを選択的に通過させるデジタル帯域フィルタで帯域制限することにより、ダクト干渉信号s2,s2’を分離して検出しているため、ダクト干渉信号の検出処理が簡易になるとともに、通信端末80からの希望信号s1,s1’の影響を低減できる。
【0026】
〔干渉抑装置の構成例2〕
図6は、本実施形態の基地局10における干渉抑装置310の他の構成例を示すブロック図である。なお、前述の図1、4と同様な部分については同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0027】
本構成例の干渉抑装置310は、第1受信信号X及び第2受信信号Yにダクト干渉信号s2,s2’が含まれているか否かを判定し、その判定結果に基づいてウェイト計算部340での計算処理を制御するウェイト計算制御部360を備えている。ウェイト計算制御部360は、第1受信信号X及び第2受信信号Yにダクト干渉信号s2,s2’が含まれている場合は、前記ウェイトを計算するようにウェイト計算部340での計算処理をONにする。一方、第1受信信号X及び第2受信信号Yの少なくとも一方にダクト干渉信号s2,s2’が含まれていない場合は、ウェイト計算部340での計算処理をOFFにして消費電力を低減し、ウェイトwについてはゼロに設定する。
【0028】
本構成例において、ウェイト計算制御部360は、受信電力検出部361とダクト干渉有無判定部362と計算ON/OFF制御部363とウェイト設定部364とウェイト切替部365とを備える。
【0029】
受信電力検出部361は、第1受信信号Xから帯域制限して検出された干渉信号s2及び第2受信信号Yから帯域制限して検出された干渉信号s2’それぞれの受信電力p1,p2を、例えば次の式(6)及び(7)を用いて計算する。
【数6】
【数7】
【0030】
ダクト干渉有無判定部362は、干渉信号s2及び干渉信号s2’それぞれの受信電力p1,p2と、予め設定した受信電力閾値γthとを比較する。ここで、例えば、受信電力p1,p2がそれぞれ受信電力閾値γth以上であればダクト干渉ありと判定し、受信電力p1,p2の少なくとも一方が受信電力閾値γthよりも小さければダクト干渉なしと判定する。
【0031】
計算ON/OFF制御部363は、ダクト干渉有無判定部362でダクト干渉ありと判定された場合、ウェイトwを計算するようにウェイト計算部340での計算処理をONにする。ウェイト計算部340で計算されたウェイトwはウェイト切替部365に出力される。ダクト干渉有無判定部362でダクト干渉なしと判定された場合、計算ON/OFF制御部363は、ウェイト計算部340での計算処理をOFFにし、ウェイトwをゼロにするようにウェイト設定部364を制御する。ウェイト設定部364で設定されたウェイトw(=0)はウェイト切替部365に出力される。
【0032】
ウェイト切替部365は、ウェイト計算部340で計算されたウェイトwを受けた場合は、そのウェイトwの計算値を信号演算部350に出力し、ウェイト設定部364で設定されたウェイトw(=0)を受けた場合は、そのウェイトwの設定値(=0)を信号演算部350に出力する。
【0033】
〔干渉抑装置の構成例3〕
図7は、本実施形態の基地局10における干渉抑装置310の更に他の構成例を示すブロック図である。なお、前述の図1、4及び6と同様な部分については同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0034】
本構成例の干渉抑装置310において、ウェイト計算部340は、以下の(1)〜(3)に示すようにダクト干渉信号s2,s2’の電力差を用いた摂動方法を用いてウェイトwを計算することにより、ウェイトwの計算負荷を抑えている。
【0035】
(1)まず、ウェイトをwとしたとき、第1受信信号Xから帯域制限して検出された干渉信号s2と第2受信信号Yから帯域制限して検出された干渉信号s2’とに対して、次の式(2)に示す電力差ΔPを計算する。
【数8】
【0036】
(2)次に、ウェイトw(実振幅:we、位相:φ)の次の式(3)及び式(4)の範囲に対して離散的な幅(Δwe,Δφ)で、電力差ΔPの最小値を検索する。
【数9】
【数10】
【0037】
ここで、電力差ΔPの最小値を検索するときの実振幅weの範囲を規定するwemin及びwemaxはそれぞれ、例えば0dB及び100dBに設定し、その検索ステップ幅Δweは例えば0.1dBに設定する。また、電力差ΔPの最小値を検索するときの位相φの範囲を規定するφmin及びφmaxはそれぞれ、例えば0°及び360°に設定し、その検索ステップ幅Δφは例えば1°に設定する。
【0038】
(3)次に、電力差ΔPの値が最小値になったときのwを算出し、ウェイトwとして決定する。
【0039】
以上、本実施形態によれば、ダクト現象が発生してダクト干渉波が基地局10に到来したとき、基地局10の垂直面内の合成指向特性におけるヌル方向をダクト干渉波の到来方向に向けることができるため、ダクト干渉信号を抑することができる。また、ダクト干渉波の到来方向が変化した場合でも、その変化したダクト干渉波の到来方向の方向に合成指向特性におけるヌル方向を向けることができるため、ダクト干渉信号を抑することができる。このように発生時間が不定期で、垂直面内の特定の方向から到来するダクト干渉波に起因したダクト干渉信号を適応的に抑圧することができる。しかも、垂直面内の到来方向が変化してもその到来方向にヌル方向を変化させるためにキャンセルアンテナ及びその給電回路を調整したり交換したりする必要がなく、オペレーションの煩雑さを回避することができる。
また、本実施形態によれば、既存の基地局の構成にキャンセルアンテナ300及び干渉抑装置310を追加することでダクト干渉信号を抑することができるようになるため、既存の基地局における基地局装置及び基地局アンテナを変更する必要がない。
また、本実施形態によれば、ダクト干渉波が基地局10に到来していないときには、基地局10の指向特性を元の基地局アンテナ40の指向特性にすることができる。
【0040】
なお、上記各実施形態では、ダクト干渉信号を抑する場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。また、本発明は、基地局10の基地局アンテナ40で受信する受信信号にダクト干渉信号以外の到来方法が変化する可能性がある干渉信号が含まれる場合にも同様に適用することができ、同様な効果が得られるものである。
【0041】
また、本明細書で説明された処理工程並びに基地局における基地局装置及び干渉抑装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0042】
ハードウェア実装については、実体(例えば、基地局装置、干渉抑装置、通信端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0043】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0044】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0045】
10 基地局
20 基地局装置
30 干渉抑圧システム
40 基地局アンテナ
40a 位相中心点
80 通信端末
300 キャンセルアンテナ
300a 位相中心点
310 干渉抑圧装置
320 第1ダクト干渉検出部
330 第2ダクト干渉検出部
340 ウェイト計算部
350 信号演算部
360 ウェイト計算制御部
361 受信電力検出部
362 ダクト干渉有無判定部
363 計算ON/OFF制御部
364 ウェイト設定部
365 ウェイト切替部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特開2001−267942号公報
【要約】
【課題】発生時間が不定期で垂直面内の特定の方向から到来する干渉波に起因した干渉信号を適応的に抑圧することができる基地局、干渉抑圧装置及び干渉抑圧方法を提供する。
【解決手段】通信端末と無線通信するための第1アンテナで受信した第1受信信号から干渉信号を分離して検出し、第1アンテナの位相中心点を通過する仮想鉛直線上の上方向又は下方向に所定距離だけ離れた位置に位相中心点を有する第2アンテナで受信した第2受信信号から干渉信号を分離して検出する。第1受信信号から検出した干渉信号と第2受信信号から検出した干渉信号とが互いに同じ振幅及び位相になるようにウェイトを計算し、第2受信信号にウェイトを乗算した信号を第1受信信号から減算する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10