(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の位置に二次元または三次元の方向へ移動自在に配置され、中空の金属材の第1の端部側に位置する第1の部分を把持し、送り方向を変更しながら前記金属材を送る第1のマニピュレータと;
前記金属材の第2の端部側に位置する第2の部分を把持し、前記第1の位置よりも前記第2の端部側に位置する第2の位置に二次元または三次元の方向へ移動自在に配置される第2のマニピュレータと;
前記金属材の前記第1の部分と前記第2の部分との間の一部または全部を加熱して高温部を形成する加熱手段と、前記加熱手段よりも前記第2の端部側の位置から前記高温部を冷却する冷却手段と、を備え、前記第1の位置と前記第2の位置との間に配置される高温部発生機構と;
を備え、
前記第1のマニピュレータと前記第2のマニピュレータとが、前記高温部に曲げモーメントを付与し、
前記加熱手段が、前記金属材の前記送り方向の変更に応じて配置角度を変更可能である
ことを特徴とする曲げ部材の製造装置。
第1の位置に二次元または三次元の方向へ移動自在に配置されて、閉じた断面を有する中空の金属材を、その送り方向を変更しながら送ることができる送り手段と、前記金属材の前記送り方向について前記第1の位置よりも下流の第2の位置に配置されて、送られる前記金属材の一部または全部を加熱し高温部を形成する加熱手段と、前記金属材の送り方向について前記第2の位置よりも下流の第3の位置に配置されて、前記高温部を冷却する冷却手段と、前記金属材の送り方向について前記第3の位置よりも下流の第4の位置に二次元または三次元の方向へ移動自在に配置されて、送られる前記金属材の少なくとも一箇所を把持することによって、前記送り手段とともに、前記高温部に曲げモーメントを与えて、前記金属材を所望の形状に曲げ加工する曲げ手段とを備え、前記金属材を素材とする曲げ部材の製造装置であって、
前記加熱手段が、前記送り方向の変更に応じて配置角度を変更する機能を有する
ことを特徴とする曲げ部材の製造装置。
中空の金属材の第1の端部側に位置する第1の部分を送り手段で把持し、前記金属材の第2の端部側に位置する第2の部分を曲げ手段で把持した状態で、前記送り手段によって送り方向を変更しながら送る送り工程と;
高温部発生機構に設けられ前記送り方向の変更に応じて配置角度を変更することが可能である加熱手段により、前記金属材の前記第1の部分と前記第2の部分との間の一部分または全部を加熱して高温部を形成する加熱工程と;
前記送り手段と前記曲げ手段とを二次元または三次元方向に移動させることで前記高温部に曲げモーメントを付与する曲げ工程と;
前記高温部を前記高温部発生機構に設けられた冷却手段で冷却する冷却工程と;
を有する
ことを特徴とする曲げ部材の製造方法。
第1の位置に二次元または三次元の方向へ移動自在に配置されて、中空の金属材を、その送り方向を変更しながら送ることができる送り手段と、前記送り方向について前記第1の位置よりも下流の第2の位置に配置されて、送られる前記金属材の一部または全部を加熱して高温部を形成する加熱手段と、前記送り方向について前記第2の位置よりも下流の第3の位置に配置されて、前記高温部を冷却する冷却手段と、前記送り方向について前記第3の位置よりも下流の第4の位置に二次元または三次元の方向へ移動自在に配置されて、送られる前記金属材の少なくとも一箇所を把持することによって、前記送り手段とともに、前記金属材における前記加熱された部分に曲げモーメントを与えて、前記金属材を所望の形状に曲げ加工する曲げ手段とを備え、前記金属材を素材とする曲げ部材の製造装置を用いた曲げ部材の製造方法であって、
前記送り方向の変更に応じて、前記加熱手段の配置角度を変更する
ことを特徴とする曲げ部材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願人は、曲げ加工装置を改良した曲げ加工の製造装置を、特願2008−276494号により開示した。
閉じた断面形状を有する長尺の金属材が、その長手方向へ送られるとともに、第1の位置において支持される。金属材は、金属材の送り方向について第1の位置よりも下流の第2の位置において部分的に加熱される。金属材の第2の位置において加熱された部分は、上記送り方向について第2の位置よりも下流の第3の位置において、冷却される。これにより、金属材は、第2の位置と第3の位置との間に存在する部分に、高温部を形成される。
【0011】
金属材は、金属材の送り方向について第3の位置よりも下流の領域で、把持手段によって把持される。把持手段は、金属材の先端部の内部に挿入して配置されるか、あるいは、金属材の先端部の外面に当接して配置される。
【0012】
把持手段の位置が、第3の位置よりも前記送り方向の上流側の空間を含むワークスペース内において、二次元または三次元の方向へ変更される。これにより、高温部は、曲げモーメントを付与されて曲げ加工される。
【0013】
図20(a)〜
図20(d)は、この製造装置を用いて曲げ部材13を製造する状況を経時的に示す説明図である。
素材である金属材9の送り方向は、この製造装置のみならず特許文献1〜5により開示されたいずれの技術においても、金属材9の軸方向であって、曲げ加工の間は変更されない。このため、曲げ加工を行うための装置の設置スペースが広大化するとともに、曲げ加工装置が大型化する。この理由を、以下に具体的に説明する。
図20(a)〜
図20(d)に示すように、送り装置10は金属材9をその軸方向へ送る。加熱および冷却装置11は金属材9を急速に加熱および冷却する。把持手段12は、例えば多関節型の産業用ロボット14により支持される。把持手段12は、破線矢印で示すように、二次元または三次元の方向へ移動する。金属材9の高温部は曲げモーメントを与えられる。このようにして、曲げ部材13は製造される。
【0014】
把持手段12は、曲げ部材13を製造するために、不可避的に広い範囲で移動するため、把持手段12を支持する産業用ロボット14のマニピュレータの長さ(以下、「アーム長」という)は長くなければならない。このため、曲げ加工装置が大型化する。
【0015】
また、把持手段12は、広範な速度域で移動する必要がある。これに伴って、産業用ロボット14のマニピュレータは高速から低速まで広範な速度域で動作する。このため、産業用ロボット14のマニピュレータの動作速度の変化が大きくなるので、産業用ロボット14のマニピュレータの動作時の振動が発生し易くなるとともに、曲げ部材13の寸法精度が低下する。産業用ロボット14のマニピュレータの振動は、動作速度を低く設定することによって抑制されるが、製造装置の生産性が低下する。
【0016】
さらに、この製造装置では、金属材9の供給装置の設置スペースを広く確保する必要もある。
本発明の第1の目的は、(a)例えば特願2008−276494号により提案した曲げ加工装置における把持手段の動作範囲を抑制することによって、製造装置の小型化および設備コストを抑制すること、及び(b)把持手段の移動速度を抑制することによって、把持手段を支持する産業用ロボットのアームの動作速度の変化および動作時の振動を、いずれも抑制することである。
【0017】
本発明の第2の目的は、装置全体の小型化を図りながら、寸法精度が優れた曲げ部材を高い生産性でかつ低コストで製造することができる曲げ部材の製造方法および製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、第1の位置に二次元または三次元の方向へ移動自在に配置され、中空の金属材の第1の端部側に位置する第1の部分を把持し、送り方向を変更しながら前記金属材を送る第1のマニピュレータと、前記金属材の第2の端部側に位置する第2の部分を把持し、前記第1の位置よりも前記第2の端部側に位置する第2の位置に二次元または三次元の方向へ移動自在に配置される第2のマニピュレータと、前記金属材の前記第1の部分と前記第2の部分との間の一部または全部を加熱して高温部を形成する加熱手段と、前記加熱手段よりも前記第2の端部側の位置から前記高温部を冷却する冷却手段と、を備え、前記第1の位置と前記第2の位置との間に配置される高温部発生機構とを備え、前記第1のマニピュレータと前記第2のマニピュレータとが、前記高温部に曲げモーメントを付与し、前記加熱手段が、前記金属材の前記送り方向の変更に応じて配置角度を変更可能であることを特徴とする曲げ部材の製造装置である。
【0019】
本発明では、前記高温部発生機構が、前記金属材の前記送り方向の変更に応じて配置角度を変更可能であってもよい。
【0020】
本発明では、前記第1のマニピュレータが、前記金属材を前記金属材の軸方向にねじる機能を備えてもよい。
【0021】
本発明では、前記第2のマニピュレータが、前記金属材を前記金属材の軸方向にねじる機能を備えてもよい。
【0022】
本発明では、前記高温部発生機構が、前記第1の部分に接近する位置へ配置位置を変更されてもよい。
【0023】
別の観点からは、本発明は、第1の位置に二次元または三次元の方向へ移動自在に配置されて、閉じた断面を有する中空の金属材を、その送り方向を変更しながら送ることができる送り手段と、前記金属材の前記送り方向について前記第1の位置よりも下流の第2の位置に配置されて、送られる前記金属材の一部または全部を加熱し高温部を形成する加熱手段と、前記金属材の送り方向について前記第2の位置よりも下流の第3の位置に配置されて、前記高温部を冷却する冷却手段と、前記金属材の送り方向について前記第3の位置よりも下流の第4の位置に二次元または三次元の方向へ移動自在に配置されて、送られる前記金属材の少なくとも一箇所を把持することによって、前記送り手段とともに、前記高温部に曲げモーメントを与えて、前記金属材を所望の形状に曲げ加工する曲げ手段とを備え、前記金属材を素材とする曲げ部材の製造装置であって、前記加熱手段が、前記送り方向の変更に応じて配置角度を変更する機能を有することを特徴とする曲げ部材の製造装置である。
【0024】
また、さらに別の観点からは、本発明は、中空の金属材の第1の端部側に位置する第1の部分を送り手段で把持し、前記金属材の第2の端部側に位置する第2の部分を曲げ手段で把持した状態で、前記送り手段によって送り方向を変更しながら送る送り工程と、高温部発生機構に設けられ前記送り方向の変更に応じて配置角度を変更することが可能である加熱手段により、前記金属材の前記第1の部分と前記第2の部分との間の一部分または全部を加熱して高温部を形成する加熱工程と、前記送り手段と前記曲げ手段とを二次元または三次元方向に移動させることで前記高温部に曲げモーメントを付与する曲げ工程と、前記高温部を前記高温部発生機構に設けられた冷却手段で冷却する冷却工程とを有することを特徴とする曲げ部材の製造方法である。
【0025】
本発明では、前記高温部発生機構は、前記第1の部分に接近する位置へ配置位置を変更されてもよい。
【0026】
また、別の観点からは、本発明は、第1の位置に二次元または三次元の方向へ移動自在に配置されて、中空の金属材を、その送り方向を変更しながら送ることができる送り手段と、前記送り方向について前記第1の位置よりも下流の第2の位置に配置されて、送られる前記金属材の一部または全部を加熱して高温部を形成する加熱手段と、前記送り方向について前記第2の位置よりも下流の第3の位置に配置されて、前記高温部を冷却する冷却手段と、前記送り方向について前記第3の位置よりも下流の第4の位置に二次元または三次元の方向へ移動自在に配置されて、送られる前記金属材の少なくとも一箇所を把持することによって、前記送り手段とともに、前記金属材における前記加熱された部分に曲げモーメントを与えて、前記金属材を所望の形状に曲げ加工する曲げ手段とを備え、前記金属材を素材とする曲げ部材の製造装置を用いた曲げ部材の製造方法であって、前記送り方向の変更に応じて、前記加熱手段の配置角度を変更することを特徴とする曲げ部材の製造方法である。
【0027】
これらの本発明によれば、素材である金属材の入側(材料の供給側)の送り方向がその軸方向には限定されず変更自在である。すなわち、金属材の入射角度が変更自在であるとともに、この金属材の入射角度の変更に応じて加熱手段および冷却手段の配置角度が変更される。これにより、例えば産業用ロボットにより構成される曲げ手段の動作範囲が狭く抑制される。
【0028】
このため、アーム長がより短い産業用ロボットを選定できるために装置のコンパクト化および設備コストの抑制が図られる。また、この産業用ロボットの動作速度が抑制されるので、動作速度の変化および動作時の振動の抑制が図られる。これらにより、寸法精度が優れた曲げ部材が高い生産性でかつ低コストで製造される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、装置全体の設置スペースの小型化を図りながら、特に特願2008−276494号により提案した発明における把持手段の動作範囲を可及的抑制することによって装置のコンパクト化および設備コストの抑制と、把持手段の動作速度を可及的抑制することによる動作速度の変化および動作時の振動の抑制とを図ることができる。このため、本発明によれば、寸法精度が優れた曲げ部材を高い生産性でかつ、設備コストの上昇を可及的に抑制しながら、製造できる。
【0030】
このため、本発明によれば、例えば自動車用の、屈曲した形状を有する金属製の強度部材、補強部材または構造部材を、優れた寸法精度で、かつ低コストで供給できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以降の説明では、本発明における「閉じた断面を有する中空の金属材」が鋼管である場合を例にとる。本発明は、鋼管以外の、閉じた断面を有する中空の金属材にも等しく適用される。
【0033】
図1(a)〜
図1(d)は、本発明の製造装置20により曲げ部材21を製造する状況を、経時的に示す説明図である。製造装置20は、送り手段22と、鋼管25を加熱及び冷却して高温部を発生する高温部発生機構23と、曲げ手段24とを備える。
【0034】
[送り手段22]
送り手段22は、第1の位置Aに二次元または三次元の方向へ移動自在に配置される。送り手段22は、鋼管25をその送り方向を変更しながら送る。送り手段22は、後述する曲げ手段24とともに、鋼管25の高温部に曲げモーメントを与えることによって、鋼管25を所望の形状に曲げ加工する。
【0035】
送り手段22は、第1のマニピュレータ27により支持される。これにより、送り手段22の省スペース化が図られるとともに、材料供給装置の省スペース化も図られる。第1のマニピュレータ27は、垂直多関節型のマニピュレータであるか、または、例えば特開2008−272883号公報等により開示された双腕型のマニピュレータの一方のマニピュレータであることが望ましい。
【0036】
図2は、双腕型の産業用ロボット26の二本の垂直多関節型の第1のマニピュレータ27により送り手段22を支持し、第3のマニピュレータ28により曲げ手段24を支持するとともに、6軸の垂直多関節型の産業用ロボット29の第2のマニピュレータ29aにより高温部発生機構23を支持する状況を示す説明図である。
【0037】
図2に示す双腕型の産業用ロボット26は、7軸の第1のマニピュレータ27と、同じく7軸の第3のマニピュレータ28とを有する。第1のマニピュレータ27、及び第3のマニピュレータ28は、それぞれ、固定面に対して垂直な軸回りに旋回可能な旋回軸を有する基台(図示しない)に設けられる。産業用ロボット26は、全体として15軸の自由度を有する。
【0038】
産業用ロボット26は、各マニピュレータ27,28により支持される送り手段22及び曲げ手段24を、いずれも、並進3軸及び回転3軸の6自由度で動作させる。これにより、産業用ロボット26は、3次元形状の複雑な形状の曲げ部材を加工することができる。さらに、産業用ロボット26は、各マニピュレータ27,28が7軸を有するので、上述の6自由度に加えてマニピュレータ27、28をコンパクトに折り畳むことができ、これにより、素材である鋼管25の供給を小さなスペースで行うことができる。
【0039】
なお、垂直多関節型のマニピュレータとは、第1軸〜第6軸を有する。第1軸は、上腕を水平面内で旋回させる。第2軸は、上腕を前後に旋回させる。第3軸は、前腕を上下に旋回させる。第4軸は、前腕を回転させる。第5軸は、手首を上下に旋回させる。第6軸は、手首を回転させる。さらに、必要に応じて、第1軸〜第6軸に加えて、上腕を旋回させる第7軸を有してもよい。各軸はACサーボモーターにより駆動される。
【0040】
この垂直多関節型の産業用ロボットの軸数は6または7である必要はなく、5軸であってもよい。要するに、垂直多関節型の産業用ロボットは、加工に必要な動作を行うことができる軸数を有していればよい。
【0041】
なお、産業用ロボットの手首の先端には、送り手段22、高温部発生機構23、曲げ手段24を把持するための適当な効果器(エンドエフェクタ)が設けられる。効果器については、後述する。
【0042】
このように、第1のマニピュレータ27が、鋼管25の第1の端部の側に位置する第1の部分を把持する。
[高温部発生機構23]
高温部発生機構23は、鋼管25の送り方向について第1の位置Aよりも下流の第2の位置Bに配置される。高温部発生機構23は、加熱手段と冷却手段とを有する。加熱手段は、鋼管25の一部または全部を加熱する。冷却手段は、鋼管25の送り方向について第2の位置Bよりも下流の第3の位置Cに配置される。冷却手段は、鋼管25における加熱手段により加熱された部分を冷却する。
【0043】
説明を簡略化するため、この説明では、高温部発生機構23を一体的に示すが、加熱手段および冷却手段が独立した装置であることはいうまでもない。
加熱手段は、送られる鋼管25の一部または全部を加熱する。加熱手段として、鋼管25の周囲に離れて配置される加熱コイルを有する高周波加熱装置を用いる。高周波加熱コイルは当業者にとっては周知慣用であるので、加熱手段に関するこれ以上の説明は省略する。
【0044】
冷却手段は、鋼管25における加熱手段より加熱された部分を冷却する。冷却手段として、鋼管25の外面に離れて配置される冷却水噴射ノズルを有する水冷装置を用いる。このような冷却水噴射ノズルは当業者にとっては周知慣用であるので、冷却手段に関するこれ以上の説明は省略する。
【0045】
高温部発生機構23は、適当な移動機構により支持される。これにより、高温部発生機構23は、送り手段22による鋼管25の送り方向の変更に応じて、配置角度を変更する機能を有する。このため、製造装置20では、送り手段22による鋼管25の送り方向の変更に応じて、高温部発生機構23の配置角度を変更しながら、曲げ部材21を製造することができる。
【0046】
また、高温部発生機構23は、その配置位置を、送り手段22の位置に接近する位置へ変更しながら、曲げ部材21を製造することができる。すなわち、高温部発生機構23は、その配置位置を送り手段22に接近する位置へ変更する機能を有する。このため、製造装置20は、省スペース化が図られる。製品の形状にもよるが、例えば、高温部発生機構23を軸方向へ移動することにより、製造装置20の設置スペースを約1/2〜2/3に抑制することができる。
【0047】
高温部発生機構23は、第2のマニピュレータ29aにより支持される。これにより、製造装置20の省スペース化が図られる。具体的には、第3のマニピュレータ29aは、垂直多関節型の第2の産業用ロボットのマニピュレータであることが望ましく、垂直多関節型の産業用ロボットの軸数は5以上であることが望ましい。
【0048】
このように、第2のマニピュレータ29aが、高温部発生機構23を支持する。高温部発生機構23は、鋼管25における第1の部分、及び鋼管25の第2の端部の側に位置する第2の部分の間の領域を加熱した後に冷却することによってこの領域の一部に部分的な高温部を形成する。
【0049】
[曲げ手段24]
曲げ手段24は、鋼管25の送り方向について第3の位置Cよりも下流の第4の位置Dに配置される。曲げ手段24は、二次元または三次元の方向へ移動自在に配置される。曲げ手段24は、送られる鋼管25の少なくとも一箇所を把持する。曲げ手段24は、送り手段22とともに、鋼管25の高温部に曲げモーメントを与え、鋼管25を所望の形状に曲げ加工する。
【0050】
曲げ手段24は、第3のマニピュレータ28により構成されることが、省スペース性を高めるために望ましい。具体的には、第3のマニピュレータ28は、垂直多関節型の第3の産業用ロボットのマニピュレータであるか、または、上述した双腕型の第1の産業用ロボットの他方のマニピュレータであることが望ましい。
【0051】
この第3のマニピュレータ28は、さらに、曲げ加工を行われた鋼管25を支持することができ、これにより、鋼管25の寸法精度の低下を抑制するように構成してもよい。これとは異なり、曲げ加工を行われた鋼管25を支持することによって鋼管25の寸法精度の低下を抑制する第4のマニピュレータを備えるようにしてもよい。この第4のマニピュレータは垂直多関節型の第4の産業用ロボットのマニピュレータであることが望ましく、垂直多関節型の産業用ロボットの軸数は5以上であることが望ましい。
【0052】
このように、第3のマニピュレータ28が、鋼管25の第2の端部の側に位置する第2の部分を把持する。
以下、効果器を説明する。
【0053】
図3(a)は、長尺のチャック30を模式的に示す説明図であり、
図3(b)は、短尺のチャック31を模式的に示す説明図であり、
図3(c)は、長尺のチャック32を模式的に示す説明図である。チャック30〜32は、いずれも、第1のマニピュレータ27によって鋼管25の第1の端部の側に位置する第1の部分を把持する場合における効果器、若しくは、第3のマニピュレータ28によって鋼管25の第2の端部の側に位置する第2の部分を把持する場合における効果器である。
【0054】
チャック30〜32は、いずれも、鋼管25の第1の部分又は第2の部分を把持するための筒状体からなる。
チャック30は、鋼管25の外部に配置される。チャック30は、鋼管25の外面25bに当接することによって鋼管25の先端部を把持する。チャック30は、その内径が後述する適宜機構によって拡大及び縮小自在に構成される。
【0055】
チャック31やチャック32は、いずれも、鋼管25の内部に挿入して設置される。チャック31、32は、鋼管25の内面に当接することによって鋼管25の先端部を把持する。チャック31、32は、その外径が後述する適宜機構によって拡大自在に構成される。
【0056】
これらのチャック30〜32は、軸方向に送られる鋼管25の先端部を適正に保持するこのため、製造装置20は、十分な加工精度で鋼管25に曲げ加工を行う。
チャック30〜32は、いずれも、管端部に形成されるシール面に接触する管端シール機構、または管内面に形成されるシール面に接触する内面シール機構を有する。これにより、チャック30〜32は、鋼管25の管端部または管内面に直接当接することによって鋼管25を封止する。チャック30〜32が鋼管25の内部への水の侵入を防止するため、高温部発生機構23による鋼管25の昇温が適正に行われる。このため、製造装置20は、十分な加工精度で鋼管25に曲げ加工を行うことができる。
【0057】
チャック30は、長尺の筒状体により構成される。このため、チャック30は、曲げ荷重Wを小さく抑制できるとともに、周辺に設置された装置との第1のマニピュレータ27及び第3のマニピュレータ28の干渉を、曲げ加工が鋼管25の先端部の近傍から開始される場合においても、防止できる。
【0058】
チャック31は、短尺の筒状体により構成される。鋼管25の焼入れを鋼管25の管端部から行うことが可能になる。製品の歩留りが向上する。
さらに、チャック32は、長尺の筒状体により構成される。このため、チャック32は、曲げ荷重Wを小さく抑制できるとともに、周辺に設置された装置との第1のマニピュレータ27及び第3のマニピュレータ28の干渉を、曲げ加工が鋼管25の先端部の近傍から開始される場合においても防止できる。さらに、チャック32は、鋼管25の焼入れをその管端部から行うことができるので、製品の歩留りを向上できる。
【0059】
図4は、チャック30、32が曲げ荷重Wを小さく抑制することができることを示す説明図である。
図4中の符号Wは曲げ荷重を示す。符号Mは鋼管25の曲げに必要なモーメントを示す。符号l1はチャック長さを示す。符号l2はチャック代を示す。さらに、符号l3は鋼管25の端部から曲げ加工の開始点までの距離を示す。
【0060】
曲げ荷重は、W=M/L=M/(l1+l3)として規定される。Lが長い程Wを小さくすることができる。一方、製品の歩留りを向上するために、鋼管25の端部近傍から曲げ加工を開始すること、すなわちl3を小さくすることが好ましい。曲げ加工機の許容荷重が制限される場合、l1を長くすることによってl3を短くすることができる。
【0061】
例えば、外径25mm、肉厚1.0mmの鋼管25に曲率半径200mmの条件で曲げ加工を行う場合に必要となるモーメントは、約36N・mとなる。
曲げ許容荷重が500Nであると、L=dの場合にはW=1440N>500Nとなり、またL=2dの場合にはW=720N>500Nとなる。いずれの場合にも曲げ加工を行うことができない。これに対し、L=3dの場合にはW=480N>500Nとなり、L=4dの場合にはW=360N>500Nとなり、さらに、L=5dの場合にはW=288N>500Nとなるので、いずれの場合にも曲げ加工を行うことができる。
【0062】
以上の理由により、上述した条件ではL≧3dの関係を満足することが望ましい。
図5(a)は、チャック33を抽出して示す説明図であり、
図5(b)は、チャック34を抽出して示す説明図である。
【0063】
チャック33は、鋼管25の外部に配置されて鋼管25の外面に当接することによって鋼管25の先端部を把持する。チャック34は、鋼管25の内部に挿入して設置されて鋼管25の内面に当接することによって鋼管25の先端部を把持する。
【0064】
チャック34は、チャック33よりも、鋼管25の中心位置を決定し易いとともに鋼管25の周方向の張力によって把持力も得易いために、望ましい。
図5(c)は、各種のチャック35〜43を示す説明図である。
【0065】
チャック35、36は、鋼管25の外部に配置され、かつ鋼管25の外面に当接する。
チャック37、38は、鋼管25の内部に挿入して設置され、かつ鋼管25の内面に当接する。
【0066】
チャック39、40は、鋼管25の外部に配置され、かつ鋼管25の外面に当接するとともに鋼管25の内部にも挿入して設置され、かつ鋼管25の内面に当接する。
チャック41〜43は、いずれも、角管用のチャックである。角管であっても充分な保持力を得て角管を確実に把持するために、チャック41〜43は角管の内部に挿入して設置され、かつ鋼管の内面及び内側角部のいずれにも当接することが、望ましい。
【0067】
以上の各種チャックは、いずれも、その中心軸が鋼管25の中心軸と略一致するように配置されることが、高い加工精度を得るために望ましい。
図6は、第1のマニピュレータ27又は第3のマニピュレータ28に用いるチャック44の一例を模式的に示す説明図である。
図6中の符号45はシリンダを示す。
【0068】
図6は、鋼管25がその前端部の近傍から焼入れながら曲げ加工される場合を示す。この場合、チャック44は、鋼管25の外径と略一致する寸法の外径を有する長尺のチャックであることが望ましい。
【0069】
図7は、第1のマニピュレータ27又は第3のマニピュレータ28に用いるチャック46の一例を模式的に示す説明図である。
図7は、鋼管25がその後端部の近傍まで焼入れながら曲げ加工を行われる場合を示す。この場合にも、チャック46は、鋼管25の外径と略一致する寸法の外径を有する長尺のチャックであることが望ましい。
【0070】
図8(a)〜
図8(c)は、いずれも、チャック48、49、48−1の外法の拡大機構を模式的に示す説明図である。チャック48、49、48−1は、いずれも、鋼管25の内部に挿入して設置されて、鋼管25の内面に当接することによって鋼管25の先端部を把持する。
【0071】
チャック48は、その円筒状の本体50の内部に、シャフト51及び開閉バー52を備える。シャフト51は、図示しないシリンダ等によって出し引き自在に配置される。開閉バー52は、シャフト51の先端に配置される。4つのチャック爪53が、開閉バー52の斜辺に、本体50の軸方向について位置決めされて配置される。シャフト51が本体50の軸方向へ移動することによってチャック爪53が径方向へ移動し、これにより、チャック48の外法が増加又は減少する。
【0072】
チャック49は、その円筒状の本体50の内部に、シャフト51及び円錐バー54を備える。シャフト51は、図示しないシリンダ等によって出し引き自在に配置される。円錐バー54は、シャフト51の先端に配置される。多数のセグメント55と、弾性体爪56とが、円錐バー54の斜辺に配置される。シャフト51が本体50の軸方向へ移動することによってセグメント55が径方向へ移動し、これにより、チャック49の外法が増加又は減少する。
【0073】
チャック48−1は、チャック48の変形例であって、チャック48の開閉バー52が先細形状を有する。先細形状の開閉バー52は、シャフト51との接合部の断面積を増加するので、開閉バー52の強度が高められる。
【0074】
チャック爪53は、アンクランプを確実に行うために、本体50の軸方向へ延設されるアリ溝を有することが望ましい。
チャック爪53、開閉バー52の材質は、オーステナイト系ステンレス鋼又は工具鋼が例示される。オーステナイト系ステンレス鋼は、非磁性体であるので誘導加熱され難いため好適であるが、耐摩耗性(耐傷付き性)及び耐焼き付き性が若干劣る。一方、工具鋼は、冷間での耐久性に優れる。工具鋼は、磁性体であり、誘導加熱の影響を受け易いものの、チャック爪53の近傍まで誘導加熱しなければ実用上問題ない。なお、本体50は、オーステナイト系ステンレス鋼等の非磁性体であることが望ましい。
【0075】
図9(a)は、本発明の製造装置20に用いるのに好適なチャック57の構成例を模式的に示す説明図であり、
図9(b)は比較例のチャック58を示し、
図9(c)は本発明例のチャック57を示す。
【0076】
図9(a)および
図9(c)に示すように、チャック58は、構成部材57a、57bと、絶縁部材59とを有する。構成部材57a、57bは、その周方向に複数(図示例は二つ)に分割される。絶縁部材59は、隣り合って配置される二つの構成部材57a、57bの間に配置される。絶縁部材59は、例えばポリテトラフルオロエチレン等からなる。
【0077】
図9(b)に示すように、チャック57の複数の構成部材57a、57bの間に絶縁部材59を介在させることによって、構成部材57a、57bを流れる電流が打ち消し合う。これにより、高周波加熱コイル33による誘導電流が構成部材57a、57bを一周してチャック58が加熱されることが防止される。
【0078】
図10は、本発明の曲げ加工装置に用いるのに好適な、スリット付きのスリーブ方式のチャック60の構成を示す説明図である。
チャック60は、その円筒状の本体50の内部に、シャフト51及び開閉バー52を有する。シャフト51は、図示しないシリンダ等によって出し引き自在に配置される。開閉バー52は、シャフト51の先端に配置される。開閉バー52の斜辺には、スリット62を有するスリーブ61と、シールリング63とが、本体50の軸方向について位置決めされて配置される。スリット付きのスリーブ61が、シャフト51が本体50の軸方向へ移動することによって弾性変形し、拡径又は縮径する。これにより、チャック60の外法が増加又は減少する。
【0079】
スリーブ61は、スリット62を複数有するので、金属製であっても小さな力で弾性変形することができるとともに誘導加熱により昇温され難い。
なお、スリーブ61が非磁性体により構成されることだけによっても、スリーブ61が誘導加熱されることを充分に防止できる。スリット62は、スリーブ61の強度が充分に確保される場合に設けることが望ましい。
【0080】
図11(a)は、本発明の曲げ加工装置に用いるのに好適な、液圧式のスリーブ方式のチャック70の構成を示す説明図であり、
図11(b)はその変形例70−1を示す説明図である。
【0081】
図示しない高圧ポンプを用いて発生させた高圧液体71の流路72が、チャック70の内部に形成される。また、弾性体からなるスリーブ73がチャック70の本体先端の外周に設けられる。スリーブ73は、流路72に高圧液体71を流すことによって膨出変形する。チャック70は、本体先端の外径を小さくすることができるので、小径の内径チャックにも用いることができる。スリーブ73は耐熱金属製であることが望ましい。
【0082】
チャック70−1では、シリンダ74が高圧液体71を発生する。シリンダ74の作動部の断面積A1が流路72の断面積A2よりも大きいことによって、流路72の圧力P2は、シリンダ74の作動圧P1が小さい場合にも、高められる。
【0083】
図12は、鋼管25の内部を正圧にする機構を示す説明図である。
鋼管25の管端のシール部材の材質が例えばゴムのような軟らかい材質であると、シール部材の耐久性が不足する場合がある。また、シール部材の材質が金属材料であると、鋼管25の内部への水の侵入を防止できない場合がある。
【0084】
そこで、送り側チャック76が、鋼管25の内部を正圧にする機構として、用いられる。送り側チャック76は、圧縮空気または圧縮不活性ガスを供給するための流路75を開閉バーに内蔵する。圧縮空気または圧縮不活性ガスが、送り側チャック76の流路75を介して鋼管25の内部に供給され、出側チャック77が配置される側から、噴出する機構とすることが望ましい。これにより、鋼管25の内部が正圧に保たれるので、冷却装置14からの冷却水が鋼管25の内部に浸入することを完全に防止できる。
【0085】
鋼管25の内部に窒素ガス等の不活性ガスを供給することが、鋼管25の内部の酸化を抑制するために、望ましい。
以上説明したチャックは、例えば四角形等の多角形の横断面形状を有する被加工材の内面や、角部を有する異形の横断面形状を有する被加工材の内面を把持する場合には、被加工材の内周面の各角部にチャックが当接するようにして把持することにより、把持力を高めることができるとともに、被加工材の芯を確実に出すことができる。
【0086】
製造装置20は、以上のように構成される。次に、製造装置20により、曲げ部材21を製造する状況を説明する。
図1(a)に示すように、送り手段22により鋼管25を送りながら、高温部形成機構23により鋼管25を部分的に急速に加熱及び冷却し、鋼管25を曲げ手段24により把持する。
【0087】
この際、
図1(a)中に破線矢印で示すように、送り手段22の位置を二次元又は三次元で変更するとともに曲げ手段24の位置を二次元又は三次元で変更する。さらに、高温部発生機構23の配置角度を、送り手段22による鋼管25の送り方向の変更に応じて、変更する。このようにして、
図1(b)に示すように、鋼管25に一回目の曲げ加工を行う。
【0088】
これによれば、鋼管25の入側(材料の供給側)の送り方向がその軸方向には限定されず変更自在である。すなわち、鋼管25の入射角度が変更自在であるとともに、高温部発生機構23の配置角度がこの鋼管の入射角度の変更に応じて変更される。このため、第3のマニピュレータにより支持される曲げ手段24の動作範囲を抑制することが、可能になる。
【0089】
次に、
図1(b)に示すように、高温部発生機構23の配置位置を、送り手段22の位置に接近する位置へ変更し、さらに、
図1(c)および
図1(d)に示すように送り手段22の位置を二次元又は三次元で変更するとともに曲げ手段24の位置を二次元又は三次元で変更する。このようにして、鋼管25に二回目の曲げ加工を行う。
【0090】
このように、(i)第1のマニピュレータ27が鋼管25の第1の部分における軸方向、及び/又は、鋼管25に形成される高温部に曲げモーメントを付与することができる2次元又は3次元の方向へ断続的に動作し、(ii)第3のマニピュレータ28が鋼管25の第2の部分における軸方向、及び/又は、高温部に曲げモーメントを付与することができる2次元又は3次元の方向へ断続的に動作し、さらに、(iii)第2のマニピュレータ29aが、鋼管25の高温部における軸方向へ連続的又は断続的に動作する。
【0091】
これによれば、高温部発生機構23の配置位置を、送り手段22の位置に接近する位置へ変更してから第1のマニピュレータ27により支持される送り手段22の位置を変更して二回目の曲げ加工を行うことによって、高温部を鋼管25の軸方向へ移動させながら曲げモーメントを高温部に付与することができる。これにより、第3のマニピュレータ28により支持される曲げ手段24の動作範囲を抑制することができる。
【0092】
このため、製造装置20によれば、リーチ長の短い第3のマニピュレータ28を有する産業用ロボットにより曲げ手段24を支持することができるので、装置のコンパクト化及び設備コストの抑制と、この産業用ロボットの動作速度を可及的抑制することによる動作速度の変化及び動作時の振動の抑制とを図ることができ、これにより、寸法精度が優れた曲げ部材21を高い生産性でかつ低コストで製造することができるようになる。
【0093】
製造装置20において、曲げ加工時に、第1のマニピュレータ27に鋼管25をその軸回りにねじる方向への動作を行わせること、及び/又は、第3のマニピュレータ28に鋼管25をその軸回りにねじる方向への動作を行わせることによって、鋼管25をその軸周りに回転させ、相対的にねじり回転を行わせるようにしてもよい。これにより、ねじれ加工が可能になるので、ねじれ加工部を有する製品を得られるために望ましい。
【0094】
また、曲げ加工時の第1のマニピュレータ27及び第3のマニピュレータ28に、鋼管25をその軸周りに同じ方向へ回転させる動作を、同時に行わせることによって、第1のマニピュレータ27及び第3のマニピュレータ28の動作範囲を抑制でき、望ましくは最小化することができる。
【0095】
第2のマニピュレータ29aが、鋼管25の軸方向に沿って第1のマニピュレータ27から第3のマニピュレータ28へ向かう方向へ移動する場合であって、第1のマニピュレータ27に鋼管25をその軸回りにねじる方向への動作を行わせるときには、第2のマニピュレータ29a及び第3のマニピュレータ28を同期させることによって、それぞれの動作方向及び動作速度を一致させることが、得られる曲げ部材21の寸法精度を高めるために望ましい。
【0096】
このようにして、製造装置20の全体の設置スペースの小型化を図りながら、特に特願2008−276494号により提案した発明における把持手段24の動作範囲を可及的抑制することによって装置のコンパクト化及び設備コストの抑制と、把持手段24の動作速度を可及的抑制することによる動作速度の変化、動作時の振動の抑制及び生産タクトの短縮とを図ることができ、これにより、寸法精度が優れた曲げ部材21を高い生産性でかつ、設備コストの上昇を可及的に抑制して、製造することができるようになる。
【0097】
このため、本発明によれば、例えば自動車用の、屈曲した形状を有する金属製の強度部材、補強部材または構造部材を、優れた寸法精度で、かつ低コストで供給できる。
【実施例1】
【0098】
さらに、本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
図1により示す本発明に係る製造装置20と、特願2008−276494号により提案した発明に係る装置(比較例)とを用いて、角管(外寸法:50mm×25mm、肉厚1.0mm)のストレートパイプを素材として、
図13に示す形状の部品を製造した。送り速度は80mm/secとし、加熱温度は最高温度で930℃とした。
【0099】
本発明例では、送り手段22を6軸のマニピュレータを有する多関節型の産業用ロボットにより支持した。また、曲げ手段24を7軸のマニピュレータを有する多関節型の産業用ロボットにより支持した。さらに、高温部発生機構23を6軸のマニピュレータを有する多関節型の産業用ロボットにより支持した。高温部発生機構23の角度のみを、送り手段22の送り方向の変更に応じて、変更した。
【0100】
一方、比較例の装置における送り手段は、入り側の送り装置は、サーボモータによってボールネジを駆動するタイプとし、送り動作は角管の軸方向のみとするとともに、高温部発生機構の設置位置を固定した。さらに、曲げ手段を、7軸のマニピュレータを有する多関節型の産業用ロボットにより支持した。
【0101】
比較例の結果を
図14にグラフで示し、本発明の結果を
図15にグラフで示し、本発明例および比較例それぞれにおける曲げ手段を支持するロボット(出側ロボット)の横方向の速度を
図16にグラフで比較して示し、さらに、このロボットの軌跡を
図17にグラフで比較して示す。なお、
図14〜17のグラフでは、角管の送り方向をX軸で示し、それに垂直な曲げ方向(横方向)をy軸で示す。
【0102】
図14〜17のグラフから、(a)本発明により、曲げ手段を支持するロボットの動作範囲が約1/2に抑制されたこと、および(b)本発明により、曲げ手段を支持するロボットの動作速度の変化が約1/2になり、製品精度に悪影響のある振動が大幅に抑制されたことが明らかである。
【実施例2】
【0103】
本実施例は、実施例1よりもさらに、曲げ加工時に鋼管に発生する振動を抑制し、これにより、さらに高い寸法精度を有する曲げ部材を製造するためのものである。
本実施例では、本発明における上記条件1〜6を満足して、閉断面を有する中空の鋼管に曲げ加工を行って曲げ部材を製造する際に、第3のマニピュレータが2次元又は3次元の方向へ動作する際に第1のマニピュレータが軸方向へは動作しないこと、及び/又は、第1のマニピュレータが2次元又は3次元の方向へ動作する際に第3のマニピュレータが軸方向へは動作しないこととする。
【0104】
これにより、2次元又は3次元の方向へ動作する第3のマニピュレータによって第1のマニピュレータの軸方向への動作が阻害されることによって曲げ加工時の鋼管に発生する振動や、2次元又は3次元の方向へ動作する第1のマニピュレータによって第3のマニピュレータの軸方向への動作が阻害されることによって曲げ加工時の鋼管に発生する振動が、いずれも顕著に抑制される。
【0105】
図18(a)は実施例2で製造した曲げ部材の形状の概略を示す説明図であり、
図18(b)は第1のマニピュレータのみ鋼管の軸方向へ移動しながら曲げ部材を製造した時の第1〜第3のマニピュレータの変位、X方向加速度及びY方向加速度をまとめて示すグラフであり、
図18(c)は第1〜第3のいずれのマニピュレータをも鋼管の軸方向及び曲げ方向へ移動しながら曲げ部材を製造した時の第1〜第3のマニピュレータの変位、X方向加速度及びY方向加速度をまとめて示すグラフである。
【0106】
図18(b)に示すように、第1のマニピュレータのみ鋼管の軸方向へ移動しながら曲げ部材を製造すると、2次元又は3次元の方向へ動作する第3のマニピュレータによって第1のマニピュレータの軸方向への動作が阻害される。このため、曲げ加工時の鋼管に振動が発生して、第3のマニピュレータのX方向加速度およびY方向加速度がいずれも極めて大きくなり、製造される曲げ部材の寸法精度が低下する。
【0107】
これに対し、本実施例では、
図18(c)に示すように、まず、第1のマニピュレータ及び第3のマニピュレータにより鋼管を保持した状態で、第2のマニピュレータを動作して加熱および冷却手段23を鋼管の軸方向(X方向)に移動させる。そして、曲げ1〜4の部分では、曲げ加工時には第1のマニピュレータ及び第3のマニピュレータを曲げ加工方向(ここではY方向)に同時に移動させ、鋼管に曲げモーメントを与える。このとき、第2のマニピュレータは曲げられた鋼管の形状に沿って高温部発生機構23の位置及び方向を変更させる。
【0108】
このように、第1のマニピュレータ及び第3のマニピュレータにより保持された鋼管を軸方向に送ることなく、高温部発生機構23を鋼管の軸方向に移動させることによって、高温部発生機構23と鋼管との位置を軸方向へ相対的に移動させながら曲げ加工を行う。これにより、鋼管自体のX方向の加速度は実質的にゼロとなり、第1のマニピュレータ及び/または第3のマニピュレータにより曲げ応力を付与する際に、X方向への加速度の変動が抑制され、振動が低減される。
【0109】
即ち、本実施例では、実施例1と比較して、2次元又は3次元の方向へ動作する第3のマニピュレータによって第1のマニピュレータの軸方向への動作が阻害されなくなるため、曲げ加工時の鋼管の振動が抑制され、第1〜第3のマニピュレータのX方向加速度およびY方向加速度がいずれも極めて小さくなり、製造される曲げ部材の寸法精度が向上する。