(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180617
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】対象体探索装置および金属の対象体および/または磁化可能な対象体の位置特定方法
(51)【国際特許分類】
G01V 3/10 20060101AFI20170807BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
G01V3/10 H
G01B7/00 103M
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-505744(P2016-505744)
(86)(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公表番号】特表2016-519299(P2016-519299A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】EP2014052938
(87)【国際公開番号】WO2014161689
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2015年10月2日
(31)【優先権主張番号】102013205910.8
(32)【優先日】2013年4月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マークス ハール
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ヴィンターハルター
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ アルブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ツィーボルト
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー グロスマン
【審査官】
北川 創
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−527603(JP,A)
【文献】
特開昭59−116569(JP,A)
【文献】
特開2007−022712(JP,A)
【文献】
特開昭55−066774(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0222437(US,A1)
【文献】
スイス国特許発明第00532254(CH,A5)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 3/08 − 3/10
G01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属および/または磁性の対象体(105)の位置を特定する方法(300)であって、
センサ(100)には、互いに誘導結合されている、2つの送信コイル(110,115)と1つの受信コイル(120)とが含まれている、方法(300)において、
前記方法(300)は、少なくとも以下のステップ、すなわち、
・ あらかじめ設定した交流電圧の第1対を前記送信コイル(110,115)に供給し(305,310)、前記送信コイル(110,115)を通る電流(I1(1),I2(1))および前記受信コイル(120)の第1電圧(Usec(1))をサンプリングする(315,320,325)ステップと、
・ あらかじめ設定した交流電圧の第2対を前記送信コイル(110,115)に供給し(330,335)、前記送信コイル(110,115)を通る電流(I1(2),I2(2))および前記受信コイル(120)の第2電圧(Usec(2))をサンプリングする(340,345,350)ステップと、
・ 前記求めた電流(I1(1),I2(1),I1(2),I2(2))および電圧(Usec(1),Usec(2))に基づき、前記送信コイル(110,115)と前記受信コイル(120)との間の結合係数(K1,K2)を求めるステップ(355)と、
・ 前記結合係数(K1,K2)に基づいて前記対象体(105)を特定するステップとを有し、
前記結合係数(K1,K2)が、以前に行った測定の結合係数と異なる場合に前記対象体(105)が特定される、
ことを特徴とする方法(300)。
【請求項2】
前記送信コイル(110,115)と前記受信コイル(120)との間の前記誘導結合が金属の対象体および/または磁性の対象体(105)によって影響を受けない配置構成と、以前に求めた前記電圧(Usec(1),Usec(2))および前記結合係数(K1,K2)とを関連付ける、
請求項1に記載の方法(300)。
【請求項3】
前記交流電圧の第1対の電圧は互いにそれぞれ±5°未満位相シフトしており、
前記交流電圧の第2対の電圧は互いにそれぞれ±5°未満位相シフトしている、
請求項1又は2に記載の方法(300)。
【請求項4】
定数A,B,C1およびC2を選択し、
・ 前記交流電圧の第1対における前記第1送信コイルの電圧が、Aであり、
・ 前記交流電圧の第1対における前記第2送信コイルの電圧が、B+C1であり、
・ 前記交流電圧の第2対における前記第1送信コイルの電圧が、A+C2であり、
・ 前記交流電圧の第2対における前記第2送信コイルの電圧が、Bであり、
・ さらに、
A/B=前記第2送信コイルの結合係数/前記第1送信コイルの結合係数
が成り立ち、C1はAの3〜7%であり、C2はBの3〜7%である、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法(300)。
【請求項5】
1回目に前記結合係数(K1,K2)を求め、2回目に前記受信コイル(120)の極性を反転した後に前記結合係数(K1,K2)を求め、対毎に互いに減算する(355)、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法(300)。
【請求項6】
前記減算の前に前記1回目および2回目に求めた前記結合係数(K1,K2)にスケーリングを行う、
請求項5に記載の方法(300)。
【請求項7】
前記送信コイル(110,115)を通る電流(I1(1),I1(2))および前記受信コイル(120)の前記第1電圧(Usec(1))を同時にサンプリングし、前記送信コイル(110,115)を通る電流(I1(1),I1(2))および前記受信コイル(120)の前記第2電圧(Usec(2))を同時にサンプリングする、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法(300)。
【請求項8】
コンピュータプログラムが、処理装置(160)上で動作する場合に、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法(300)を実行するためのプログラムコード手段を有する、
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のコンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ読み出し可能データ担体。
【請求項10】
金属および/または磁性の対象体(105)の位置を特定するためのセンサ(100)において、
該センサ(100)には、少なくとも以下の要素、すなわち、
・ 互いに誘導結合されている2つの送信コイル(110,115)および受信コイル(120)と、
・ 前記送信コイル(110,115)に交流電圧を供給するための駆動制御装置(125,130,145,150)と、
・ 前記送信コイル(110,115)を流れる電流(I1(1),I2(1),I1(2),I2(2))および前記受信コイル(120)の電圧(Usec(1),Usec(2))を求めるためのサンプリング装置(140)とが含まれており、
処理装置(160)が設けられており、かつ、当該処理装置(160)は、求めた前記電流(I1(1),I2(1),I1(2),I2(2))および前記電圧(Usec(1),Usec(2))に基づいて、前記送信コイル(110,115)と前記受信コイル(120)との間の結合係数(K1,K2)を求めるように構成されており、
前記処理装置(160)はさらに、前記結合係数(K1,K2)に基づいて前記対象体(105)を特定するように構成されており、
前記処理装置(160)は、前記結合係数(K1,K2)が、以前に行った測定の結合係数と異なる場合に前記対象体(105)を特定するように構成されている、
ことを特徴とするセンサ(100)。
【請求項11】
前記サンプリング装置(140)を用いて、前記電圧(Usec(1),Usec(2))または前記電流(I1(1),I2(1),I1(2),I2(2))のうちの1つを択一的にサンプリングするために、前記サンプリング装置(140)の出力側にアナログ・デジタル変換器(155)が接続されており、前記サンプリング装置(140)の入力側に選択手段(175)が設けられている、
請求項10に記載のセンサ(100)。
【請求項12】
さらに、前記受信コイル(120)の極性を反転させるための選択手段(175)が含まれている、
請求項10または11に記載のセンサ(100)。
【請求項13】
前記駆動制御装置にはデジタル・アナログ変換器(145,150)が含まれている、
請求項10から12までのいずれか1項に記載のセンサ(100)。
【請求項14】
さらに、あらかじめ定めた電圧を前記受信コイル(120)に供給するための第1基準電圧源(180)が含まれている、
請求項10から13までのいずれか1項に記載のセンサ(100)。
【請求項15】
さらに、あらかじめ定めた電圧を前記送信コイル(110,115)のそれぞれに供給するための第2基準電圧源(185)が含まれている、
請求項10から14までのいずれか1項に記載のセンサ(100)。
【請求項16】
請求項10から15までのいずれか1項に記載されたセンサを少なくとも1つ有する測定装置。
【請求項17】
前記測定装置は、媒体に取り囲まれた対象体を検出するための位置特定装置である、
請求項16に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置特定装置とも称される対象体探索装置に関する。本発明は特に、温度補償された対象体探索装置、および、対象体探索装置を温度補償する方法に関する。
【0002】
従来の技術
金属の対象体または磁化可能な対象体の位置特定するための対象体探索装置は、送信コイルを用いて電磁場を形成し、受信コイルを用いて当該電磁場が上記対象体によって変化させられていたか否かを検査する。
【0003】
国際公開第2010/133328号には、2つの送信コイルおよび1つの受信コイルを有する金属検出器が記載されている。これらの送信コイルには、位相シフトした交流電流が加えられ、上記送信コイルと誘導結合されている受信コイルの出力信号が評価される。上記送信コイルの電流ないし電圧は、受信信号が消去されるように、受信信号に依存して変更される。つぎに送信コイルの電圧ないし電流の比から、送信コイルおよび受信コイルの領域に金属の対象体が存在するか否かを推定することできる。
【0004】
しかしながら、対象体探索装置の送信コイルまたは受信コイルを通る電流の変化は、温度の影響によっても左右され得る。例えば、送信コイル用の電流源または電圧源または受信コイル用の測定増幅器は、温度ドリフトの影響を受け得るのである。また、使用される複数のコイルの幾何学的な関係も温度変化によって変化され得る。
【0005】
このドリフトは、対象体がもはや明確には探索できないかまたは求めた箇所とは異なる箇所にあるほどに大きくなり得る。
【0006】
したがって本発明の課題は、金属または磁性の対象体の位置を特定するためのセンサへの温度の影響を求める方法と、対応するコンピュータプログラム製品と、対応するセンサを提供することである。本発明の課題はさらに、測定装置を、特に位置特定装置とも称される対象体探索装置を提供することである。
【0007】
本発明では、独立請求項に記載された方法、コンピュータプログラム製品、センサ、および測定装置によって上記の課題が解決される。従属請求項には有利な実施形態が示されている。
【0008】
発明の開示
金属および/または磁性の対象体の位置を特定するためのセンサには、互い誘導結合されている少なくとも2つの送信コイルと、1つの受信コイルとが含まれている。このセンサへの温度の影響を求める本発明の方法において、あらかじめ設定した交流電圧の第1の対を送信コイルに供給し、これらの送信コイルを流れる電流と、受信コイルの第1電圧とをサンプリングし、特にこれらを同時に、すなわち、特にあらかじめ設定した交流電圧の第1の対を加えた際にサンプリングする。引き続いてあらかじめ設定した交流電圧の第2の対を送信コイルに供給し、これらの送信コイルを流れる電流と、受信コイルの第2電圧とをサンプリングし、特にこれらの電流ないし電圧を同時に、すなわち、特にあらかじめ設定した交流電圧の第2の対を加えた際にサンプリングする。つぎに求めた電流および電圧に基づいて、送信コイルと受信コイルとの間の結合係数を求め、この結合係数に基づいて対象体を特定する。対象体を特定するとは、特にこの対象体の姿勢ないし位置を識別することであり、また場合によってはこの対象体の種類を識別することである。
【0009】
この方法の根底にあるのは、対象体の影響下では、送信コイルおよび受信コイルの領域において、受信コイルの電圧も結合係数も共に変化するという着想である。
【0010】
受信コイルの電圧を変化させる温度の影響が問題となる場合、結合係数は変化しないままである。求めた電圧および求めた結合係数と、例えば一度求めたまたは固定にあらかじめ設定された基準値とを比較することにより、温度の影響を簡単かつ高い信頼性で求めることができる。これにより、例えば、受信コイル用の測定増幅器の温度ドリフト、送信コイル用の電圧源または電流源の温度ドリフトを求めるか、ないし補償することができる。したがって、上記方法により、温度補償された対象体測定ができるようにすることが可能である。
【0011】
対象体は、結合係数が、以前の測定の結合係数と異なる場合に、特に特定することができ、すなわち対象体として識別できるかないしは対象体として識別することができる。したがって、対象体の影響と、受信信号に対する温度の影響とを確実に区別することできる。
【0012】
有利な実施形態では、送信コイルと受信コイルとの間の誘導結合が金属または磁化可能な対象体によって影響を受けない配置構成と、以前に求めた複数の電圧および結合係数とを関連付ける。これによって保証することができるのは、温度の影響を求めるため、あらかじめ定めた磁気的な影響を有する基準対象体を使用する必要がないことである。
【0013】
一実施形態において、交流電圧の第1対の電圧は互いにそれぞれ±5°未満位相シフトしており、第2対の交流電圧も同様に互いにそれぞれ±5°未満位相シフトしている。
【0014】
特に有利な実施形態において、定数A,B,C1およびC2を選択し、交流電圧の第1対における第1送信コイルの電圧はAであり、
第2送信コイルの電圧はB+C1である。上記の交流電圧の第2対における第1送信コイルの電圧はA+C2であり、第2送信コイルの電圧はBである。被加数C1は、Aの約3〜7%であり、被加数C2は、Bの約3〜7%である。さらに、A/Bは、有利には第2送信コイルの結合係数と、第1送信コイルの結合係数との比に等しい。
【0015】
電圧および比の選択によって阻止することができるのは、受信コイルの電圧が、交流電圧の第1対においても第2対においても値ゼロをとることである。上で説明した電圧および電流の数学的およびプロセス技術的な処理は、これによって簡単に実行することができる。これによって特殊なケースの取り扱いないしは誤った測定の廃棄を不要にすることが可能である。
【0016】
別の一実施形態では、1回目に結合係数を求め、2回目に測定装置の構成を変えた後、特に受信コイルの極性を反転した後に結合係数を求め、互いに処理し、特にスケーリングし、対毎に互いに減算する。これによって簡単に、対象体を特定するための基礎となる測定結果への温度の影響をさらに小さくすることができる。
【0017】
本発明によるコンピュータプログラム製品が、処理装置上で動作するかまたはコンピュータ読み出し可能データ担体上に記憶される場合、このコンピュータプログラム製品には上記の方法を実行するためのプログラムコード手段が含まれている。
【0018】
金属の対象体または磁化可能な対象体の位置を特定するための本発明によるセンサには、互いに誘導結合されている少なくとも2つの送信コイルおよび受信コイルと、送信コイルに交流電圧を供給するための駆動制御装置と、送信コイルを流れる電流および受信
コイルの電圧を求めるためのサンプリング装置とを有しており、電圧の間に上記送信コイルにおいてあらかじめ設定した第1ないし第2の値の対を取る。ここでは処理装置が、求めた電流および電圧に基づいて、送信コイルと受信コイルとの間の結合係数を求め、またこれらの結合係数に基づいて対象体を特定するように構成されている。
【0019】
このようなセンサは、対象体の位置を特定するための通常の動作において、求めた温度の影響を考慮することができるため、この温度の影響によって発生する測定誤差を補償をすることができる。これによって対象体の温度補償された特定が可能になる。
【0020】
これにより、有利にも測定装置を、特に媒体に取り囲まれた対象体を検出するための位置特定装置を実現することができ、この装置は小型で性能がよくまた較正不要である。すなわち、個別の測定前にユーザはもはや較正を行う必要がないのである。
【0021】
一実施形態では、センサの複数の部分は、プログラム可能なマイクロコンピュータによって実現される。サンプリング装置を用いて受信
コイルの電圧または複数のコイル電流のうちの1つを選択的にサンプリングするため、このサンプリング装置は、アナログ・デジタル変換器を含むことができ、また選択手段を設けることができる。上記コイル電流を求めるため、1つずつの測定抵抗を送信コイルに直列接続することができ、測定抵抗において降下する電圧は、送信コイルを流れる電流を示す。電流ないしは電圧を測定するため、アナログ・デジタル変換器は、プログラム可能なマイクロコンピュータに含めることができ、また選択手段は容易に実現することができる。これにより、プログラム可能なマイクロコンピュータの(場合によって内部的な)周辺装置の回路技術的なコストを少なく抑えることができる。これに相応してセンサの製造コストを低減することができる。
【0022】
同様に、駆動制御装置も複数の送信コイルのうちの少なくとも1つを駆動制御するためのデジタル・アナログ変換器を含み得る。複数の送信コイルの1つずつに固定的に対応付けられる2つのデジタル・アナログ変換器を設けることも可能である。
【0023】
オプションでは、あらかじめ設定した電圧を受信コイルに供給するための第1基準電圧源を設けることが可能である。受信コイルを用いて求めることが可能な受信
コイルの電圧は、これにより、第1基準電圧源の電圧に関連付けることができる。また1つずつのあらかじめ設定した電圧を複数の送信コイルに供給する第2基準電圧源を設けることも可能である。別の実施形態では、選択手段を用いて、第1基準電圧源の電圧または第2基準電圧源の電圧をアナログ・デジタル変換器に接続して、当該基準電圧の絶対値を求めることができる。これにより、当該基準電圧源の温度ドリフトが識別されないままになることを回避することができる。
【0024】
以下では、添付の図を参照して本発明をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】金属の対象体または磁化可能な対象体の位置を特定するためのセンサの回路図である。
【
図2】
図1のセンサのコイルの2つの実施形態を示す図である。
【
図3】
図1のセンサへの温度を影響を求めるための方法の流れ図である。
【0026】
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、金属の対象体105または磁化可能な対象体105の位置を特定するためのセンサ100の回路図が示されている。センサ100には、第1送信コイル110と、第2送信コイル115と、1つの受信コイル120とが含まれており、これらは互いに誘導結合されており、コイル110,115および120の有利な構成は、
図2に関連して以下に詳しく説明されている。送信コイル110および115には交流電圧が供給されているため、これらの送信コイルは電磁場を形成し、この電磁場が受信コイル120に作用を及ぼす。受信コイル120は、場合によっては対象体105によって影響を受けた電磁場を電圧に変換し、これを受信信号として供給する。この受信信号に基づき、コイル110,115および120の幾何学的な配置構成を考慮して対象体105の有無を推定することができる。
【0028】
増幅またはインピーダンス変換のため、第1送信コイル110には第1送信増幅器125が、第2送信コイル115には第2送信増幅器130が、また受信コイル120には受信増幅器
140が対応付けられている。
図1の回路図において、センサ100の一部分は、より有利にはデジタル技術で実施される。これらのデジタルの要素は、例えば、集積型のプログラム可能マイクロコンピュータに含まれ得る。
【0029】
選択的に、上記の要素のいくつかまたはすべてをディスクリートに、場合によってはアナログに構成することも可能である。第1送信増幅器125は、第1アナログ・デジタル変換器145によって駆動制御され、第2送信増幅器130は、第2アナログ・デジタル変換器150によって駆動制御される。受信増幅器
140の受信信号は、デジタル・アナログ変換器155に供給される。処理装置160は、アナログ・デジタル変換器145および150を駆動制御して、送信コイル110および115に交流電圧が加わるようにする。ここでこれらの交流電圧は一般的に異なる振幅を有しており、一般的には約10°程度の小さい位相シフトを有する。しかしながら、使用される周波数およびパルス形状は同じであり、有利なパルス形状として方形または少なくとも近似的な正弦波形状が使用される。
【0030】
センサ100への温度の影響を求めるため、第1送信コイル110に直列接続された第1測定抵抗(シャント)165と、第2送信コイル115に直列接続された第2測定抵抗170とが設けられている。測定抵抗165ないしは170において降下する電圧は、送信コイル110ないしは115を流れる電流を示す。測定抵抗165ないしは170は、より有利には温度依存性が小さく、また素子の製造公差が小さい。
【0031】
受信コイル120の電圧および送信コイル110および115を流れる電流にはそれぞれ、専用の受信増幅器
140ないしはサンプリング装置を対応付けることが可能である。図示した有利な実施例では、その代わりに選択手段175が設けられており、この選択手段は、複数の異なる信号のうちのただ1つだけを受信増幅器
140の入力側に接続するために、処理装置160によって制御可能である。選択手段175にはより有利にはスイッチまたはこれに相当するスイッチ素子が含まれており、各時点においてこれらのスイッチ素子のうち1つよりも多くのスイッチ素子が閉じられることはない。これにより、第1測定抵抗165において降下する電圧、第2測定抵抗170において降下する電圧、または、受信コイル120における測定信号を択一的に受信増幅器
140の入力側に接続することができる。
【0032】
図示した有利な実施例において、
受信増幅器
140に接続されていない側の受信コイル120の端部は第1基準電圧源180に接続されており、また送信増幅器125ないしは130に接続されていない側の送信コイル110および115の端部は第2基準電圧源185に接続されている。
【0033】
基準電圧源180および185は、コイル110,115ないしは120をあらかじめ設定した動作点において動作させることができるようにするため、1つずつのあらかじめ定めた直流電圧を供給する。図示の実施例において、選択手段175は択一的に第2基準電圧源185と受信増幅器
140とを接続するためにも構成されている。1つの拡張では、第1基準電圧源180と受信増幅器
140とを接続するために選択手段175を構成することも可能である。
【0034】
処理装置160は、
送信増幅器125,130を用いて第1交流電圧を送信コイル110および115に加え、つぎに選択手段175および
受信増幅器
140を用いて、受信コイル120の入力信号と、送信コイル110および115を流れる電流とを求めるように構成されている。送信コイル110および115に加わる交流電圧は、より有利にはあらかじめ設定した振幅比およびあらかじめ設定した位相シフトを有する。これは、引き続いて第1交流電圧とは異なる第2交流電圧で繰り返される。
【0035】
つぎに求めた電流および電圧に基づき、第1送信コイル110と受信コイル120との間の第1結合係数K1と、第2送信コイル115と受信コイル120との間の第2結合係数K2とが求められる。記憶装置190には、少なくとも結合係数が格納されており、有利には以前求めた結合係数および受信信号が格納されている。これらの格納された値は、センサ100の構造によって決定することができ、また固定にあらかじめ設定することができる。別の実施形態では、これらの値は例えば上記の手法に基づいて一度求められ、コイル110ないし120の誘導的な影響領域に対象体105がない間に所定の複数の値が記憶装置190に格納される。
【0036】
受信コイル120の受信信号と、格納されている受信信号とが異なる場合、このことは、対象体105に起因するか、またはセンサ100の複数の部分への温度の影響に起因すると考えることができる。求めた結合係数K1およびK2と、格納した結合係数とが異ならない場合、センサ100は温度の影響を受けている。求めた温度の影響は、インタフェース195を介して出力することができる。これらの結合係数K1,K2が、以前に行った測定と異なっている場合、コイル110ないしは120の領域に対象体105が存在する。この場合に対象体105は、求めた受信信号および結合係数に基づき、送信コイル110および115および受信コイル120の幾何学形状に関連して、その大きさ、タイプおよび位置をより正確に特定することができる。この結果もインタフェース195を介して出力することができる。
【0037】
コイル110ないし120における電流および電圧の測定に対してつぎの式が成り立つ。すなわち、
U
sec(1)=K1・I1(1)+K2・I2(1) (式1)
U
sec(2)=K1・I1(2)+K2・I2(2) (式2)
ただし、
U
sec(1)は、第1交流電圧の間の受信コイル(120)の電圧(受信信号)であり、
U
sec(2)は、第2交流電圧の間の受信コイル(120)の電圧(受信信号)であり、
I1(1)は、第1交流電圧の間の第1送信コイル110を流れる電流であり、
I2(1)は、第1交流電圧の間の第2送信コイル110を流れる電流であり、
I1(2)は、第2交流電圧の間の第1送信コイル110を流れる電流であり、
I2(2)は、第2交流電圧の間の第2送信コイル110を流れる電流であり、
K1は、第1送信コイル(110)と受信コイル(120)との間の結合係数であり、
K2は、第2送信コイル(110)と受信コイル(120)との間の結合係数である。
【0038】
式1および式2の連立方程式を結合係数K1およびK2について解き、求めた電圧および電流に基づいてこれらの結合係数K1およびK2を求める。
【0039】
有利な実施形態において、第1交流電圧または第2交流電圧の間の第1送信コイル110および第2送信コイル115の交流電圧はそれぞれ、約±5°未満の位相差Δを有する。送信コイル110および115における電圧の振幅は、より有利には結合係数K1およびK2に依存して選択される。このために定数AおよびBが形成され、第1交流電圧の間、第1送信コイル110の電圧は(A)であり、また第2送信コイル115の電圧は(B+C1)である。第2交流電圧の間、第1送信コイル110の電圧は(A+C2)であり、また第2送信コイル115の電圧は(B)である。被加数C1およびC2は、有利には同じ大きさである。C1は有利にはAの約3〜7%であり、C2は有利にはBの約3〜7%である。比A/Bは、有利には比K2/K1に、すなわち結合係数K2
のK1による商に等しい。
【0040】
別の実施形態において上記受信信号は、すなわち受信コイル120の電圧は、受信コイル120の異なる極性の下で求められ、これに対し、送信コイル110および115における交流電圧は変化しないままである。したがって、第1送信コイル110の電圧はAであり、第2送信コイル115の電圧はBであり、これらの電圧間の位相差Δは、約±5°の範囲である。ここでA,BおよびΔを選択して、受信コイル110の極性を反転した場合に受信信号が変化しないようにする。
【0041】
図2には、
図1のセンサ100のコイル110ないし120の2つの実施例が示されている。これらのコイルは2つの面に分かれており、これらの面は、観察面に対して平行にずれている。上側に示した
図2Aの実施例において、第1送信コイルは第1面内に、また第2送信コイル115は第2面内にある。受信コイル120には第1の、D字型をしておりかつ第1面内にある部分205と、第2の、D字形をしておりかつ第2面内にある部分210とが含まれている。部分205および部分210ないしは送信コイル110および送信コイル115が互いに隣接する2つの方向の角度はαであり、この角度はより有利には90°ではない。
【0042】
図2Bには、
図2Aに類似した実施例が示されているが、受信コイル120の部分205ないしは210は巻数が異なる。
図2Aおよび
図2Bの実施例は、有利にも
図1のセンサ100に使用するのに適している。
【0043】
しかしながら、送信コイル110および115が受信コイル120に誘導結合されており、かつ、形成される電磁場が対象体105によって影響を及ぼされ得る電磁影響領域が存在するのであれば、コイル110,115および120の別の実施例ないしは配置も可能である。
【0044】
図3には、
図1に示した、金属または磁性の対象体の位置を特定するためのセンサに与える温度の影響を求める方法の流れ図が示されている。方法300は、特に処理装置160上で動作させるために構成されている。
【0045】
第1ステップ305では、第1交流電圧を第1送信コイル110に印加する。ステップ310では、第2交流電圧を第2送信コイル115に印加する。引き続き、ステップ315において第1送信コイル110を流れる電流I1(1)を求め、ステップ320において第2送信コイル115を流れる電流I2(1)を求め、ステップ325において受信コイル120における電圧を求める。
【0046】
同様にステップ330において第1送信コイル110に第3交流電圧を印加し、ステップ335において第2送信コイル115に第4交流電圧を印加する。その後、ステップ340において第1送信コイル110を流れる電流I1(2)を求め、ステップ345において第2送信コイル115を流れる電流I2(2)を求め、ステップ350において受信コイル120の電圧を求める。方法300の1つの変形実施例において、受信コイル120における電圧の算出よりも少ない頻度で、電流I1(1),I2(1),I1(2)およびI2(2)の算出を行うことも可能である。
【0047】
引き続き、式1および式2に関連して上でより詳しく説明したように、ステップ355において結合係数K1およびK2を求める。別の実施例では、受信コイル120の極性を反転させるという違いを伴って、ステップ305ないし355を引き続いて新たに実行することも可能である。この際に送信コイル110および115における電圧は、より有利には変化しないため、送信コイル110および115の送信電流を求めるステップ315および320は、有利には1回だけ実行すればよい。上記の極性の反転は、選択手段175によって行うことができるかまたは、例えばリレーまたはブリッジ回路のような受信コイル120用の専用の極性反転装置を設けることができる。一実施例では、上記の極性反転装置を用いて、受信コイル120の各端部を、
受信増幅器
140かまたは第1基準電圧源
180のいずれかに択一的に接続することができる。この際には受信コイル120の片側または両側が残りの回路から分離されるようにすることも可能である。引き続いて2つの測定の求めた結合係数K1およびK2をスケーリングして、対で互いに減算する。すなわち、
K1’=K1(1)−K1(2) (式3)
K2’=K2(1)−K2(2) (式4)
であり、ただし、
K1(1)は、第1の実行の後の、第1送信コイル110と受信コイル120との間の第1結合係数K1であり、
K1(2)は、第2の実行の後の、第1送信コイル110と受信コイル120との間の第1結合係数K1であり、
K2(1)は、第1の実行の後の、第2送信コイル115と受信コイル120との間の第2結合係数K2であり、
K2(2)は、第2の実行の後の、第2送信コイル115と受信コイル120との間の第2結合係数K2である。
【0048】
上記の減算の前に結合係数K1およびK2にスケーリングを行うことも可能である。スケーリングおよび対の減算は、場合によっては結合係数の実部および虚部に対して別々に行うことも可能である。必要なスケーリング係数は、処理ユニットの不揮発性の記憶装置に格納することも可能であり、または、処理ユニットにより、複数の測定値に基づいて計算することも可能である。
【0049】
特に受信コイル120に誘導される電圧を測定するために電圧増幅器を使用する場合、この電圧は、受信コイル120が受信増幅器
140に接続される極性に依存し得る。このような挙動は、受信増幅器
140のインピーダンスと、第2基準電圧源185のインピーダンスとが異なる場合にはつねに発生する。受信コイル120の極性を反転し、2つの極性に対して結合係数K1およびK2を算出し、結合係数K1およびK2の対で互いに減算することにより、受信コイル120に誘導される電圧の、上記の極性への依存性を除去することができる。これにより、
受信増幅器
140ないしは第2基準電圧源185の温度に起因するインピーダンスの変化によって発生する、上記の誘導電圧に対する不可避的な温度の影響も除去することができる。
【0050】
異なる極性の下で求めた結合係数K1およびK2を減算する際には、受信コイル120の極性の符号に依存する障害的影響は2倍の大きさに増大する。このことは、特に誘導に起因する障害的影響に該当する。他方では、上記の結合係数K1およびK2下で求めた上記の極性に対して符号が不変である障害的影響は消去される。これには特に、容量に起因する障害的影響が含まれている。上記の減算により、結合係数K1’およびK2’は、温度の影響の代わりに対象体105をより良好に表すことができる。
【0051】
ステップ360では、受信コイル120の受信信号が、例えば
図1の記憶装置190から読み出すことの可能な、格納された値と異なることが特定される。その後、ステップ365では、求めた結合係数K1およびK2が、格納された結合係数と異なるか否かが特定される。異なる場合、ステップ370においてコイル110,115および120の領域に対象体105があることが推定される。その他の場合、ステップ375においてセンサ100への温度の影響が求められる。
【0052】
方法300は、引き続いてステップ305に戻り、新たに実行される。ステップ375において求めた温度の影響は、ステップ375において後に対象体105を特定する際に考慮することができるため、センサ100に与えるこの温度の影響を補償して、インタフェース195において供給される、対象体105を示す信号について温度の影響を除去することができる。