(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保護基に対する脱保護化は、前記第1の炭化水素系イオン伝導体の前駆体を含むナノファイバーのウェブを酸処理して実施される請求項10記載の高分子電解質膜の製造方法。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料の酸化によって生じる化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換させる電池であって、高いエネルギー効率性と、汚染物排出の少ない、環境にやさしい特徴によって、次世代エネルギー源として脚光を浴びている。
【0003】
通常、燃料電池は電解質膜を挟んでその両側にアノード(酸化極)とカソード(還元極)がそれぞれ形成された構造を成し、それらの構造を膜-電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)と称する。
【0004】
燃料電池は、電解質膜の種類によってアルカリ電解質燃料電池、高分子電解質燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell:PEMFC)等に分けられるが、そのうち、高分子電解質燃料電池は、100未満の低い作動温度、速い始動と応答特性、並びに優れた耐久性等の長所により、携帯用、車両用及び家庭用の電源装置として脚光を浴びている。
【0005】
このような高分子電解質燃料電池の代表例としては、水素ガスを燃料とする水素イオン交換膜燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell:PEMFC)等が挙げられる。
【0006】
高分子電解質燃料電池での反応を要約すれば、まず、水素ガス等の燃料がアノードへ供給されると、アノードには水素の酸化反応によって水素イオン(H+)と電子(e-)が生成される。生成された水素イオン(H+)は、高分子電解質膜を介してカソードに伝達され、生成された電子(e-)は外部回路を介してカソードに伝達される。カソードにおいては、酸素が供給され、酸素が水素イオン(H+)及び電子(e-)と結合して、酸素の還元反応によって水が生成される。
【0007】
高分子電解質膜は、アノードで生成された水素イオン(H+)がカソードに伝達される通路であるので、基本的に、水素イオン(H+)の伝導度に優れなければならない。又、高分子電解質膜は、アノードへ供給される水素ガスと、カソードへ供給される酸素とを分離する分離能に優れる必要があり、その他にも、機械的強度、寸法安定性、耐化学性等に優れる必要があるとともに、高電流密度で抵抗の損失(ohmic loss)が小さいなどの特性が求められる。
【0008】
現在用いられている高分子電解質膜としては、フッ素系樹脂としてパーフルオロスルホン酸樹脂(以下、「フッ素系イオン伝導体」という)がある。ところが、フッ素系イオン伝導体は、機械的強度が弱く、長期間用いると、ピンホールが生じ、それによってエネルギー転換効率が低下するという課題がある。機械的強度を補強するために、フッ素系イオン伝導体の膜厚を増加させて用いる試みがあるが、この場合、抵抗損失が増加し、且つ高価の材料の使用が増えてしまい、経済性が落ちるという課題がある。
【0009】
前記のとおりのフッ素系イオン伝導体の短所を改善するため、最近、炭化水素系イオン伝導体の開発が活発に行なわれている。しかしながら、燃料電池の運転条件である湿潤/乾燥状態で高分子電解質膜は膨脹と収縮を繰り返すことから、構造的に含水率の高い炭化水素系高分子電解質膜は、低い寸法安定性と引張強度に起因して膜の長期耐久性が落ちるという短所がある。
【0010】
これらの課題を解決するために、前記炭化水素系イオン伝導体に補強材の概念の支持体を導入し、機械的強度を向上させた強化膜型の高分子電解質膜が提案されている。前記支持体としては、主に、イオン伝導性のない疎水性の炭化水素系高分子の支持体が用いられる。この疎水性の支持体により、寸法安定性が改善し、その結果として含湿時にも引張強度等の機械的物性を確保することができるだけでなく、膜抵抗と、性能増加のための膜厚とを最小化することができる。
【0011】
一方、前記炭化水素系イオン伝導体を強化膜型に製造するためには、前記炭化水素系イオン伝導体を溶媒に溶解させて含浸溶液を製造した後、前記多孔性支持体を前記含浸溶液に一定時間浸漬させるか、または前記含浸溶液を前記多孔性支持体の表面に塗布する方法を用いることになる。しかしながら、前記方法の場合、支持体の含浸性が低いか、または前記含浸或いは塗布工程の後に前記溶媒を蒸発させて除去する過程で、前記炭化水素系イオン伝導体と前記多孔性支持体との親和性が低下し、前記多孔性支持体の内部に、空洞(cavity)などの欠陥(defect)が生じることもある。このような空洞によって当該部分の膜が押し付けられる現象により、クラック、及び膜-電極の脱離等が生じることになる。そのため、前記含浸または塗布工程を数回繰り返すことになるのであるが、これによって前記高分子電解質膜の厚さが増加し、厚さが不均一になる。
【0012】
さらに、多孔度の低い支持体を用いる場合、支持体自体が抵抗になるため、電池の性能が落ちるという課題がある。これに対し、多孔度を最大化したナノウェブ構造の支持体を導入した強化膜が提案されている。しかし、このような強化膜は、優れた性能や物性にもかかわらず、高加湿運転条件(60〜100%)よりも低加湿運転条件(60%未満)で性能が低下する。
【0013】
従って、炭化水素系イオン伝導体を含む強化膜の製造時に、寸法安定性に影響を与えない範囲内で、前記炭化水素系イオン伝導体の前記多孔性支持体への含浸性を向上させることで、抵抗の最小化及び電池性能の最大化を実現できる技術が大いに求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、寸法安定性、膜抵抗及びイオン伝導性が改善し、燃料電池への適用時に低加湿下でも性能を向上させ得る高分子電解質膜を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、前記高分子電解質膜の製造方法を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、前記高分子電解質膜を含む膜-電極アセンブリ及び燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一実施例による高分子電解質膜は、不規則かつ不連続的に配列された第1の炭化水素系イオン伝導体のナノファイバーのウェブを含む多孔性支持体、及び前記多孔性支持体の気孔内に充填された第2の炭化水素系イオン伝導体を含み、前記第1の炭化水素系イオン伝導体は下記化学式1のとおりの第1の炭化水素系イオン伝導体の前駆体内における保護基Yの少なくとも一部が脱保護化したものである:
[化学式1]
【0018】
前記化学式1において、
mは0.01〜0.1であり、
p及びqは0〜4の整数であり、但しpとqは同時にゼロではなく、
M及びM’はそれぞれ独立して水素原子、金属陽イオン及びアンモニウム陽イオンからなる群より選ばれ、
Xは下記化学式2の2価の有機基で、
Yは保護基であって下記化学式3の2価の有機基である。
【0019】
[化学式2]
[化学式3]
前記化学式2及び3において、
Ar
1及びAr
2はそれぞれ独立して炭素数6〜18のアリーレン基であり、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して水素原子或いは炭素数1〜5のアルキル基であるか、または互いに連結されてZ及びZ’とともにヘテロ環を形成しており、
X
1は、単一結合であるか、若しくは炭素数1〜5のアルキレン基及び炭素数1〜5のフルオロアルキレン基からなる群より選ばれ、
Z及びZ’はそれぞれ独立して酸素または硫黄原子である。
【0020】
前記化学式1において、Xは、下記化学式2a〜2cの作用基からなる群より選ばれるものでありうる:
【0021】
また、前記化学式1において、Yは下記化学式3aの作用基でありうる:
[化学式3a]
【0022】
前記高分子電解質膜において、前記第1の炭化水素系イオン伝導体は結晶性を有するものでありうる。
【0023】
さらに、前記第1の炭化水素系イオン伝導体のスルホン化度は、1〜40モル%でありうる。
【0024】
さらに、前記支持体は多孔度が80〜95体積%でありうる。
【0025】
さらに、前記第2の炭化水素系イオン伝導体は、下記化学式4の化合物でありうる:
[化学式4]
前記化学式4において、
nは0.01〜0.1であり、
p及びqは0〜4の整数であり、但しpとqは同時にゼロではなく、
M及びM’はそれぞれ独立して水素原子、金属陽イオン及びアンモニウム陽イオンからなる群より選ばれ、
V及びWはそれぞれ独立して下記化学式5の2価の有機基であり、
[化学式5]
X
1は、単一結合であるか、または炭素数1〜5のアルキレン基及び炭素数1〜5のフルオロアルキレン基からなる群より選ばれる。
【0026】
前記化学式4において、前記V及びWはそれぞれ独立して下記化学式2a〜2cの作用基からなる群より選ばれるものでありうる:
【0027】
さらに、前記高分子電解質膜において、前記第2の炭化水素系イオン伝導体は、高分子電解質膜の総重量に対して50〜99重量%含まれうる。
【0028】
本発明における他の一実施例による高分子電解質膜の製造方法は、下記化学式1の第1の炭化水素系イオン伝導体の前駆体について、電界紡糸(electro-spinning)した後に熱処理を施し、第1の炭化水素系イオン伝導体の前駆体を含むナノファイバーのウェブを製造する段階;前記第1の炭化水素系イオン伝導体内の保護基を脱保護化し、第1の炭化水素系イオン伝導体を含むナノファイバーのウェブを含む多孔性支持体を製造する段階;及び、前記多孔性支持体に含まれた気孔内に第2の炭化水素系イオン伝導体を充填する段階を含む:
[化学式1]
【0029】
前記化学式1において、
mは0.01〜0.1であり、
p及びqは0〜4の整数であり、但しpとqは同時にゼロではなく、
M及びM’はそれぞれ独立して水素原子、金属陽イオン及びアンモニウム陽イオンからなる群より選ばれ、
Xは、下記化学式2の2価の有機基であり、
Yは保護基であって下記化学式3の2価の有機基であり、
[化学式2]
[化学式3]
【0030】
前記化学式2及び3において、
Ar
1及びAr
2はそれぞれ独立して炭素数6〜18のアリーレン基であり、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であるか、或いは互いに連結され、Z及びZ’とともにヘテロ環を形成し、
X
1は、単一結合であるか、または炭素数1〜5のアルキレン基及び炭素数1〜5のフルオロアルキレン基からなる群より選ばれ、
Z及びZ’は、それぞれ独立して酸素または硫黄の原子である。
【0031】
前記製造方法において、前記第2の炭化水素系イオン伝導体は、下記化学式4の化合物でありうる:
[化学式4]
【0032】
前記化学式4において、
nは0.01〜0.1であり、
p及びqは0〜4の整数であり、但しpとqは同時にゼロではなく、
M及びM’はそれぞれ独立して水素原子、金属陽イオン及びアンモニウム陽イオンからなる群より選ばれ、
V及びWはそれぞれ独立して下記化学式5の2価の有機基であり、
[化学式5]
X
1は、単一結合であるか、または炭素数1〜5のアルキレン基及び炭素数1〜5のフルオロアルキレン基からなる群より選ばれる。
【0033】
前記保護基に対する脱保護化は、前記第1の炭化水素系イオン伝導体の前駆体を含むナノファイバーのウェブを酸処理して行われうる。
【0034】
本発明における他の一実施例による膜-電極アセンブリは、互いに対向して位置するアノード電極及びカソード電極、及び、前記アノード電極とカソード電極との間に位置する前記高分子電解質膜を含む膜-電極アセンブリが提供される。
【0035】
本発明におけるさらに他の一実施例による燃料電池は、前記膜-電極アセンブリを含む。
【発明の効果】
【0036】
本発明における高分子電解質膜は、疎水性の支持体によって寸法安定性が改善し、含湿時に改善された機械的物性を示し、膜抵抗が減少することで膜厚を最小化することができ、炭化水素系イオン伝導体が前記多孔性支持体の内部に均一且つ密に充填され、イオン伝導性及び接合性が改善され、低加湿下にも電池の性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下では、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、本発明の実施例について詳述する。しかしながら、本発明は幾多の相異する形態に具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0039】
本明細書に記載の用語「ナノ」とは、ナノスケールをいい、1μm以下の大きさを含む。
【0040】
本明細書に記載の用語「直径」とは、繊維の中心を通る短軸の長さをいい、「長さ」とは繊維の中心を通る長軸の長さをいう。
【0041】
強化複合膜として高分子電解質膜の製造時に、ポリエーテルケトン系結晶性高分子を用いる炭化水素系イオン伝導体でもって電界紡糸(electro-spinning)によりナノウェブ構造の支持体を製造した後、同じ構造の高分子が導入されたイオン伝導体を含浸して強化複合膜を製造するならば、イオン伝導性の付与によって伝導度が向上し、支持体と同種の高分子を用いることによって化学的に接合性が改善し、性能の向上、特に低加湿下においても電池の性能向上を期待することができる。しかし、ポリエーテルケトン系結晶性高分子は有機溶媒に不溶性なので、電界紡糸が困難である。また、有機溶媒に溶解性であるイオン伝導体で支持体を製造すると、含浸時にイオン伝導体溶液に溶解し、強化膜の製造が不可能になる。
【0042】
これに対し、本発明では、有機溶媒に溶解が可能になるように保護基を有しているポリエーテルケトン系の高分子について電界紡糸して支持体を製造し、その後に後処理を施して保護基を除去して、有機溶媒に不溶性を示す結晶性のポリエーテルケトン高分子の支持体を製造する。このようにすることで、改善した寸法安定性とともに、含湿時にも向上した機械的物性を示すことができ、膜抵抗の減少により膜厚を最小化することができ、またイオン伝導体が前記多孔性支持体の内部に均一で密に含浸され、イオン伝導性及び接合性が改善し、低加湿下でも改善された電池の性能を表せることを特徴とする。
【0043】
すなわち、本発明の一実施例による高分子電解質膜は、不規則かつ不連続的に配列された第1の炭化水素系イオン伝導体のナノファイバーのウェブを含む多孔性支持体、及び前記多孔性支持体の気孔内に充填された第2の炭化水素系イオン伝導体を含む。
【0044】
前記高分子電解質膜において、前記多孔性支持体は、高分子電解質膜の機械的強度を増進させ、水分による体積の膨脹を抑えることで、寸法安定性を増進させる役割を果たすものであり、下記化学式1のとおりの第1の炭化水素系イオン伝導体の前駆体を含む溶液を電界紡糸(electro-spinning)して高分子前駆体のナノファイバーウェブを製造し、製造されたナノファイバーウェブの前駆体分子内の保護基Yの少なくとも一部、好ましくは全部を脱保護化することで製造されうる。すなわち、前記多孔性支持体は、電界紡糸によって3次元的に不規則かつ不連続的に配列された高分子ナノファイバーのウェブを含み、前記ウェブを構成する高分子ナノファイバーは、下記化学式1のとおりの第1の炭化水素系イオン伝導体の前駆体内における保護基Yの少なくとも一部が脱保護化された第1の炭化水素系イオン伝導体を含む:
[化学式1]
【0045】
前記化学式1において、mは0.01〜0.1でありうる。
さらに、前記化学式1において、-(SO
3M)p及び-(SO
3M’)qはそれぞれイオン性基であり、前記p及びqは0〜4の整数でありうる。但し、pとqは同時にゼロではない。
又、前記M及びM’は、それぞれ独立して水素原子、金属陽イオン及びアンモニウム陽イオンからなる群より選ばれうる。好ましくは水素原子でありうる。
【0046】
一方、前記化学式1においてXは、下記化学式2における2価の有機基でありうる:
[化学式2]
【0047】
前記化学式2において、X
1は単一結合、または炭素数1〜5のアルキレン基及び炭素数1〜5のフルオロアルキレン基からなる群より選ばれるものでありうる。
【0048】
好ましくは、本発明による高分子電解質膜の効果改善面において、前記Xは化学式2a〜2cの作用基のいずれか一つでありうる:
【0049】
又、前記化学式1において、Yは保護基であり、下記化学式3の2価の有機基でありうる:
[化学式3]
【0050】
前記化学式3において、Ar
1及びAr
2はそれぞれ炭素数6〜18のアリーレン基でありうる。詳しくは、フェニレン基、ナフタレン基またはビフェニレン基等でありうる。これらのうちでもフェニレン基であるのが好ましいのであり得る。
【0051】
又、前記化学式3において、R
1及びR
2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であるか、または互いに連結されてZ及びZ’とともにヘテロ環を形成しうる。
【0052】
又、前記化学式3において、Z及びZ’は、それぞれ独立して酸素または硫黄の原子でありうる。このうちでも酸素原子であるのが好ましいのであり得る。
【0053】
好ましくは、前記化学式1において、Yは、下記化学式3aの2価の有機基でありうる:
[化学式3a]
【0054】
前記の構造を有する第1の炭化水素系イオン伝導体の前駆体は、DMAc、DMF、NMP等の通常の有機溶媒に対して可溶性を示すが、その後、酸処理工程により、前記化学式1におけるYが脱保護されれば結晶性を示し、前記の有機溶媒に対して不溶性を示す。その結果、前記第1の炭化水素系イオン伝導体を含む多孔性支持体は、通常の有機溶媒に不溶性であるので、優れた耐化学性を示すだけでなく、疎水性を有し、高湿の環境における水分による歪みの恐れがない。
【0055】
前記化学式1における前駆体は、ブロックまたはランダム共重合体でありうる。
【0056】
前記化学式1の第1の炭化水素系イオン伝導体の前駆体は、通常の重合体製造方法と同様に、芳香族活性ジハライド化合物と2価フェノール化合物の芳香族求核置換反応、またはハロゲン化芳香族フェノール化合物の芳香族求核置換反応によって製造されうる。
【0057】
例えば、下記化学式4における第1の炭化水素系イオン伝導体のランダム共重合体は、SDCDS(3,3−disulfonated-4,4-dichlorodiphenyl sulfone)、DCDPS(4,4-Dichlorodiphenyl ketone)、及び、フェノール,4,4-(1,3-ジオキソラン-2-イリデン)ビス−(Phenol,4,4’-(1,3-dioxolan-2-ylidene)bis-)を重合反応させることで製造されうる。
【0058】
一方、ブロック共重合体の場合、SDCDS(3,3-Disulfonated-4,4-dichlorodiphenyl sulfone)重合反応して第1の高分子を製造するとともに、DCDPS(4,4-Dichlorodiphenyl ketone)と、フェノール,4,4-(1,3-ジオキソラン-2-イリデン)ビス-とを重合反応させて第2の高分子を製造した後、前記製造された第1及び第2の高分子を改めて重合反応させて製造されうる。
【0059】
ここで、前記反応はアルカリ性化合物の存在下で実施されるのが好ましいことがある。前記アルカリ性化合物は、詳しくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは炭酸水素ナトリウム等でありうる。これらのうちの1種単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0060】
又、前記反応は溶媒の中で実施されうるが、ここで、前記溶媒として、詳しくはN,N-ジメチルアセトアミド(dimethyl acetamide)、N,N-ジメチルホルムアミド(dimethyl formamide)、N-メチル(methyl)-2-ピロリドン(pyrrolidone)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)、スルホラン(sulfolane)、または1,3-ジメチル(dimethyl)-2-イミダゾリジノン等の非プロトン性極性溶媒が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0061】
前記の化学式1における前駆体の脱保護化によって形成された第1の炭化水素系イオン伝導体は、詳しくはスルホン化度が1〜40モル%、好ましくは5〜40モル%でありうる。前記範囲のスルホン化度を有するとき、寸法安定性が低下することなく、優れたイオン伝導度を表すことができる。
【0062】
さらに、多孔性支持体が、最適化した直径を有するナノファイバーによって製造されて、最適化した多孔度及び厚さを有し、製造が容易で、含湿後も優れた機械的物性を示すためには、前記第1の炭化水素系イオン伝導体が30,000〜500,000g/molの重量平均分子量を有するのが好ましい。もしも、前記第1の炭化水素系イオン伝導体の重量平均分子量が30,000g/mol未満であれば、多孔性支持体の多孔度及び厚さを容易に制御することができるが、多孔度、及び含湿時における機械的物性が低下しうる。一方、前記第1の炭化水素系イオン伝導体の重量平均分子量が500,000g/molを超えた場合、製造工程が円滑に行われず、多孔度が低下しうる。
【0063】
本発明による多孔性支持体は、前記のような第1の炭化水素系イオン伝導体を含むナノファイバーのウェブを含み、前記ナノファイバーのウェブは、電界紡糸によって製造されたナノファイバーが3次元的に不規則かつ不連続的に配列された高分子ナノファイバーの集合体である。
【0064】
詳しくは、前記ナノファイバーは多孔性支持体の多孔度及び厚さを考慮し、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,JSM6700F,JEOL)を用いて50本の繊維直径を測定し、その平均を計算したとき、0.01〜5μmの平均直径を有するのが好ましいことがある。仮に、前記ナノファイバーの平均直径が0.01μm未満であれば、多孔性支持体の機械的強度が低下する可能性があり、前記ナノファイバーの平均直径が5μmを超えれば、多孔度が減少するとともに厚さが厚くなりうる。
【0065】
さらに、前記多孔性支持体は、前記のとおりの直径を有するナノファイバーの任意配列によって形成されることで、均一に分布された多数の気孔を含みうる。このように均一に分布された多数の気孔からなる前記多孔性支持体は、優れた多孔度と、イオン伝導体の物性を補完できる特性(寸法安定性等)を有することになる。詳しくは、前記多孔性支持体に形成される気孔の直径である孔径が0.05〜30μmの範囲内であるように形成しうる。ところが、前記孔径が0.05μm未満であるように形成されれば、高分子電解質膜のイオン伝導度が低下する可能性があり、前記孔径が30μmを超えれば、高分子電解質膜の機械的強度が低下しうる。
【0066】
又、前記多孔性支持体の気孔の形成程度を表す多孔度は80〜95%でありうる。このように高い多孔度を有することによって、前記多孔性支持体の比表面積が大きくなるため、第2の炭化水素系イオン伝導体の含浸が容易になり、その結果として優れたイオン伝導度を表しうる。仮に、前記多孔性支持体の多孔度が80%未満であれば、十分なイオン伝導度が得られ難く、前記多孔性支持体の多孔度が95%を超えれば、機械的強度及び形態安定性が低下しうる。
【0067】
前記多孔度(%)は、下記数式1のように、前記多孔性支持体における全体体積比の空気体積の比率によって計算することができる。
[数式1]
多孔度(%)=(空気体積/全体体積)×100
【0068】
ここで、前記多孔性支持体の全体体積は、長方形の多孔性支持体のサンプルを製造し、横、縦及び厚さを測定して計算した。前記多孔性支持体の空気体積は、前記多孔性支持体サンプルの質量を測定した後、密度から逆算した高分子体積を前記多孔性支持体の全体体積から差し引いて得られる。
【0069】
また、前記多孔性支持体は5〜50μmの平均厚さを有しうる。前記多孔性支持体の厚さが5μm未満であれば、高分子電解質膜の機械的強度及び寸法安定性が低下する恐れがある反面、厚さが50μmを超えれば、抵抗の損失が増加し、軽量化及び集積化が困難になりうる。より好ましい多孔性支持体の厚さは、10〜30μmの範囲である。
【0070】
一方、前記多孔性支持体の気孔内には、第2の炭化水素系イオン伝導体が充填されて含まれる。
【0071】
前記第2の炭化水素系イオン伝導体は、高分子電解質膜の主機能である水素イオン伝導機能を果たすものであり、前記イオン伝導体としては水素イオンの伝導機能に優れるとともに、価格の面で有利な炭化水素系高分子が用いられうる。特に、前記多孔性支持体の気孔内にイオン伝導体を充填する充填工程の容易性を考慮すれば、有機溶媒に対して溶解性である炭化水素系高分子を用いるのが好ましいのであり得る。前記有機溶媒に対して溶解性である炭化水素系高分子としては、スルホン化したポリイミド(sulfonated polyimide,S-PI)、スルホン化したポリアリールエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone,S-PAES)、スルホン化したポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone,SPEEK)、スルホン化したポリベンズイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole,SPBI)、スルホン化したポリスルホン(sulfonated polysulfone,S-PSU)、スルホン化したポリスチレン(sulfonated polystyrene,S-PS)、スルホン化したポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)又はこれらの混合物等を用いうるが、これらに限定されない。ここで、有機溶媒に対して「溶解性」とは、常温で溶ける特性をいう。
【0072】
好ましくは、前記イオン伝導体は下記化学式4における第2の炭化水素系イオン伝導体でありうる:
[化学式4]
【0073】
前記化学式4において、M、M’、p及びqは前述の定義のとおりである。
前記nは0.01〜0.1でありうる。
また、前記V及びWは、それぞれ独立して下記化学式5における2価の有機基でありうる:
[化学式5]
前記化学式5において、X
1は前述の定義のとおりである。
【0074】
前記の第2の炭化水素系イオン伝導体は、高分子電解質膜の総重量に対して50〜99重量%で含まれうる。前記イオン伝導体の含量が50重量%未満であれば、高分子電解質膜の水素イオン伝導度が低下するおそれがあり、前記イオン伝導体の含量が99重量%を超えれば、高分子電解質膜の機械的強度及び寸法安定性が低下しうる。
【0075】
通常、燃料電池の運転中に温度または湿度等の作動条件が変わると、イオン伝導体と多孔性支持体との接着性が低下しうる。しかし、本発明による高分子電解質膜は、イオン伝導体及び多孔性支持体のいずれもが炭化水素系高分子を含んで構成され、支持体に用いられる第1の炭化水素系イオン伝導体が、含浸に用いられる第2の炭化水素系イオン伝導体における親水性または疎水性の部分の少なくとも一部分と同じ構造となっている。そのため、支持体と含浸高分子との相溶性及び接着性が高く、また、支持体として用いられる第1の炭化水素系イオン伝導体にイオン伝導性が与えられるので、製造された高分子電解質膜は、支持体の抵抗が減少し、改善されたイオン伝導度を表す。
【0076】
又、本発明による高分子電解質膜は、高多孔性の支持体内に第2の炭化水素系イオン伝導体が均一で密に充填されることで、高いイオン伝導性と共に優れた機械的強度、詳しくは10MPa以上の優れた機械的強度を表す。このように、イオン伝導度及び機械的強度が増進することによって、高分子電解質膜全体の厚さを減少させうる。また、詳しくは80μm以下に減らすことができる。その結果、材料費を節減できるとともに、水素イオンの伝導速度が増加して抵抗損失が減少する。
【0077】
また、本発明による高分子電解質膜は、疎水性の支持体を含むことで、優れた寸法安定性を示しうる。詳しくは、水に膨潤させた際には、8%以下、好ましくは1%以下の優れた寸法安定性を示す。前記寸法安定性は、強化複合膜を水に膨潤させた際、膨潤前後の長さの変化により、下記数式2によって評価される物性である。
[数式2]
寸法安定性=[(膨潤後の長さ−膨潤前の長さ)/膨潤前の長さ]×100
【0078】
本発明の他の一実施例によれば、前記化学式1の第1の炭化水素系イオン伝導体の前駆体を電界紡糸し、第1の炭化水素系イオン伝導体の前駆体を含むナノファイバーのウェブを製造する段階(段階1);前記第1の炭化水素系イオン伝導体内の保護基を脱保護化して第1の炭化水素系イオン伝導体を含む多孔性支持体を製造する段階(段階2);及び、前記多孔性支持体に含まれた気孔内に第2の炭化水素系イオン伝導体を充填する段階(段階3)を含む高分子電解質膜の製造方法が提供される。
【0079】
以下、各段階別にみれば、段階1は、第1の炭化水素系イオン伝導体の前駆体(precusor)を含む前駆体溶液を電界紡糸し、高分子前駆体のナノファイバーウェブ(以下、「ウェブ前駆体」という)を製造する段階である。
【0080】
前記第1の炭化水素系イオン伝導体の前駆体は、分子内保護基を含むことで、有機溶媒に溶解性を示すが、その後、後続の酸処理によって脱保護化されると、結晶性を帯びることで有機溶媒に不溶性を示す。前記第1の炭化水素系イオン伝導体の前駆体は、化学式1の構造を有するものであり、前述のとおりである。
【0081】
前記第1の炭化水素系イオン伝導体の前駆体は、有機溶媒に溶解性を示すため、電界紡糸用溶媒の中に溶解させた溶液状にて用いられうる。
【0082】
この際、溶媒としては、詳しくはN,N’-ジメチルアセトアミド、N,N’-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1、3-ジメチル2-イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒;-ブチロラクトン、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、エチレングリコルモノメチルエーテル、エチレングリコルモノエチルエーテル、プロピレングリコルモノメチルエーテル、プロピレングリコルモノエチルエーテル等のアルキレングリコルモノアルキルエーテル、またはイソプロパノール等のアルコール系溶媒、水、またはこれらの混合物が挙げられる。この中でも、非プロトン性極性溶媒が、最も溶解性が高くて好ましい。
【0083】
ここで、前記前駆体は、前駆体溶液の総重量に対して5〜20重量%の濃度で含まれるのが好ましい。もしも、前記前駆体溶液の濃度が5重量%未満であれば、紡糸が円滑に行われないため、繊維の形成がなされないか、又は、均一な直径を有する繊維を製造することができない。一方、前記前駆体溶液の濃度が20重量%を超えれば、吐出圧力が急増することによって、紡糸がなされないか、又は、生産性が低下しうる。
【0084】
前記製造された前駆体溶液に対する前記紡糸工程は、通常の電界紡糸工程によって実施されうる。
【0085】
詳しくは、前駆体溶液が保管された溶液槽から、定量ポンプを用いて、紡糸部へと前記前駆体溶液を一定量で供給し、前記紡糸部のノズルを通じて前記前駆体溶液を吐出する。この後、飛散と同時に凝固したナノファイバー前駆体を形成し、更に、このように凝固したナノファイバー前駆体を離型フィルム(releasing film)付きコレクターで集束させた後、熱処理を施す。このようにしてナノファイバーウェブを製造することができる。
【0086】
この際、高電圧発生部によって印加された、前記紡糸部とコレクターとの間の電場の強さは、850〜3,500V/cmであるのが好ましい。仮に前記電場の強さが850V/cm未満であれば、連続的に前駆体溶液が吐出されないため、均一な厚さのナノファイバーを製造するのが困難である。また、紡糸後に形成されたナノファイバーがコレクターに円滑に集束し得ないため、ナノファイバーウェブの製造が困難になりうる。一方、前記電場の強さが3,500V/cmを超えると、ナノファイバーがコレクターに正確に据え付けられないため、正常な形態のナノファイバーウェブが得られない。
【0087】
前記の紡糸工程を通じ、均一な繊維直径、好ましくは0.01〜5μmの平均直径を有するナノファイバー前駆体が製造され、前記ナノファイバー前駆体はランダムに配列され、繊維集合体を形成するようになる。
【0088】
次に、前記ナノファイバーの集合体に対して熱処理を施し、ナノファイバーのウェブを製造する。
【0089】
この際、前記熱処理は100〜250℃で実施されうるのであり、好ましくは120〜150℃で実施されうる。熱処理時間は熱処理の温度によって変わりうるが、詳しくは1分〜1時間の間にて実施されうる。
【0090】
このような熱処理によって、ナノファイバー内に含まれた有機溶媒を揮発させることができ、また、高分子電解質膜の弾性率及び破断強度等の機械的物性は向上させうるとともに、水素またはメタノール等の燃料透過性は減少させうる。
【0091】
また、必要に応じて、電子線照射や線照射といった放射線照射等の手段により、高分子構造を架橋させることもできる。
【0092】
このように、高分子電解質膜を架橋させることで、燃料遮断性、燃料への膨潤を抑える効果、及び機械的強度を向上させることができる。
【0093】
段階2は、前記ナノファイバーのウェブにおいて第1の炭化水素系イオン伝導体内の保護基を脱保護化し、第1の炭化水素系イオン伝導体を含む多孔性支持体を製造する段階である。
【0094】
前記脱保護化は、酸処理によって実施されうる。
【0095】
詳しくは、ナノファイバーのウェブを酸触媒の水溶液の中に浸漬することで、脱保護することが可能である。
【0096】
この際、酸触媒としては、塩酸、硝酸、フルオロスルホン酸、硫酸等の強無機酸、またはp-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等といった強有機酸等などを挙げることができる。高分子電解質膜の厚さ等に応じて、酸触媒の種類及び量、そして反応圧力等が適当に選ばれうる。詳しくは、前記酸触媒は、存在する水の0.1〜50重量の濃度で用いられるのが好ましい。
【0097】
段階3は、前記段階1で製造された多孔性支持体に含まれた気孔内に、第2の炭化水素系イオン伝導体を充填する段階である。
【0098】
前記第2の炭化水素系イオン伝導体の充填方法としては、第2の炭化水素系イオン伝導体を溶媒の中に溶解させて製造したイオン伝導体溶液に、前記多孔性支持体を浸漬保持する方法を用いることができる。または、スプレー工程、スクリーンプリンティング工程、ドクターブレード工程等、当業界において公知となった多様な塗布方法を用いて、前記イオン伝導体溶液を多孔性支持体に塗布する方法を用いることができる。前記浸漬保持工程を用いる場合は、常温で5〜30分間、2〜5回浸漬保持工程を行うのが好ましい。
【0099】
前記イオン伝導体溶液は、前記第2の炭化水素系イオン伝導体を有機溶媒の中に溶解させて製造することができる。このとき、前記有機溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidinone;NMP)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide;DMF)、またはジメチルアセトアミド(dimethylacetamide;DMA)を用いうるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0100】
前記第2の炭化水素系イオン伝導体は、前述のとおりのものである。
【0101】
前記第2の炭化水素系イオン伝導体は、強化複合膜の中に含まれるイオン伝導体の含量を考慮して、適当に決めるのが好ましい。詳しくは、前記イオン伝導体溶液の中に5〜40重量%で含まれうる。前記第2の炭化水素系イオン伝導体が、5重量%未満にて含まれる場合は、前記第2の炭化水素系イオン伝導体が多孔性支持体の気孔内に十分に充填されず、空き空間を形成することがある。前記第2の炭化水素系イオン伝導体が40重量%を超えると、イオン伝導体溶液の粘度が高すぎるため、多孔性支持体の気孔内に充填されないことがある。
【0102】
前記イオン伝導体溶液を充填した後は、イオン伝導体の溶液内の有機溶媒を除去し、多孔性支持体の気孔内にイオン伝導体を充填させる。そのため、本発明による高分子電解質膜の製造方法は、第2の炭化水素系イオン伝導体の充填後に有機溶媒を除去する工程をさらに含むことができ、前記有機溶媒の除去工程は60〜150の真空オーブンで2〜15時間乾燥する工程で行われうる。
【0103】
前記の製造方法によって製造された高分子電解質膜は、親水性部と疎水性部を同時に含む構造の炭化水素系イオン伝導体を用いて支持体を製造することで、イオン伝導性及び含浸層が改善される。その結果、従来の、イオン伝導性のない疎水性炭化水素系高分子の高分子電解質膜に比べ、燃料電池に適用するときに、低加湿の運転時にも著しく向上した性能を表すことができる。
【0104】
これによって、本発明の他の一実施例によれば、前述の高分子電解質膜を含む燃料電池用膜-電極アセンブリ及び燃料電池を提供する。
【0105】
詳しくは、前記膜-電極アセンブリは互いに対向して位置するアノード電極とカソード電極、及び前記アノード電極とカソード電極との間に位置する前述の高分子電解質膜を含む。
【0106】
図1は、本発明の一実施例による膜-電極アセンブリを概略して示した断面図である。
図1を参考にして説明すれば、本発明の一具現例による膜-電極アセンブリ100は、高分子電解質膜50及び前記高分子電解質膜50の両面にそれぞれ配置される前記燃料電池用電極20、20’を含む。前記電極は、電極基材40、40’と前記電極基材の表面に形成された触媒層30、30’を含み、前記電極基材40、40’と触媒層30、30’の間に電極基材での物質拡散を容易にするため、炭素粉末、カーボンブラック等の導電性微細粒子を含む微細気孔層(図示せず)を更に含むこともできる。
【0107】
前記膜-電極アセンブリ100において、高分子電解質膜50の一面に配置され、電極基材40を経て触媒層30に伝達された燃料から水素イオンと電子を生成させる酸化反応を引き起こす電極20をアノード電極(またはカソード電極)という。また、高分子電解質膜50の他の一面に配置されて前記高分子電解質膜50を介して供給された水素イオンと電極基材40’を経て触媒層30’に伝達された酸化剤から水を生成させる還元反応を引き起こす電極20’をカソード電極(またはアノード電極)という。
【0108】
前記アノード及びカソード電極20、20’の触媒層30、30’は、触媒を含む。前記触媒としては、電池の反応に参加し、通常、燃料電池の触媒に使用可能なものであれば如何なるものでも用いることができる。詳しくは、白金系触媒を用いることができ、前記白金系触媒としては、白金、ルテニウム、オスミウム、白金-ルテニウム合金、白金-オスミウム合金、白金-パラジウム合金、または白金-M合金(Mは、Ga、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Mo、W及びRhからなる群より選ばれる1種以上の転移金属)の中から選ばれる1種以上の触媒を用いることができる。具体的な例としては、Pt、Pt/Ru、Pt/W、Pt/Ni、Pt/Sn、Pt/Mo、Pt/Pd、Pt/Fe、Pt/Cr、Pt/Co、Pt/Ru/W、Pt/Ru/Mo、Pt/Ru/V、Pt/Fe/Co、Pt/Ru/Rh/Ni及びPt/Ru/Sn/Wからなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。これらの触媒は、触媒自体(black)に用いることもでき、担体に担持させて用いることもできる。この担体としては、黒鉛、デンカブラック(登録商標)、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノワイヤ、カーボンナノボ−ル、または活性炭素等の炭素系物質を用いることもでき、アルミナ、シリカ、ジルコニア、またはチタニア(酸化チタン)等の無機物の微粒子を用いることもできる。
【0109】
また、前記触媒層30、30’は、触媒層と高分子電解質膜との接着力の向上、及び水素イオンの伝達のために、バインダー樹脂を更に含みうる。前記バインダー樹脂としては、強化複合膜の製造時に用いられたイオン伝導体と同じものを用いうる。
【0110】
前記電極基材40、40’としては、水素または酸素の供給が円滑に行われるよう、多孔性の導電性基材が用いられうる。その代表例として、カーボンペーパー(carbon paper)、カーボンクロス(carbon cloth)、カーボンフェルト(carbon felt)又は金属布(繊維状の金属布からなる多孔性のフィルムまたは高分子繊維で形成された布の表面に金属フィルムが形成されたものをいう)が用いうるが、これらに限定されない。また、前記電極基材には、フッ素系樹脂で撥水処理を施したものを用いるのが、燃料電池の駆動時に発生される水によって反応物の拡散効率が低下することを防ぐことができ、好ましい。前記フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリパーフルオロスルホニルフルオリドアルコキシビニルエーテル、フッ化エチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene)、ポリクロロトリフルオロエチレン又はこれらのコポリマーを用いることができる。
【0111】
前記膜-電極アセンブリは、高分子電解質膜であって、前記高分子電解質膜を用いることを除き、通常の燃料電池用膜-電極アセンブリ製造方法によって製造することができる。
【0112】
本発明の他の一実施例による燃料電池は、前記膜-電極アセンブリを含む燃料電池を提供する。
【0113】
詳しくは、前記燃料電池は燃料の酸化反応及び酸化剤の還元反応を通じて電気を発生させる少なくとも一つの電気発生部;燃料を前記電気発生部へ供給する燃料供給部;及び酸素や空気などの酸化剤を前記電気発生部へ供給する酸化剤供給部を含み、前記電気発生部は、前記膜-電極アセンブリ、及び前記膜-電極アセンブリの両側に燃料と酸化剤を供給するためのセパレーターを含む。本発明における燃料としては、気体または液体状の水素または炭化水素燃料を用いることができ、前記炭化水素燃料の代表例としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたは天然ガスが挙げられる。
【0114】
前記燃料電池において、本発明の一実施例による膜-電極アセンブリが用いられることを除き、前記電気発生部を構成するセパレーター、燃料供給部及び酸化剤供給部については、通常の燃料電池で用いられるものなので、本明細書での詳述は省略する。
【実施例】
【0115】
以下、本発明の属する技術分野において通常の知識を有した者が容易に実施することができるよう、本発明の実施例について詳述する。しかしながら、本発明は複数の他の形態に具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0116】
以下、比較例及び実施例において用いた物質は、次のとおりである:
【0117】
(製造例1:スルホン化したポリアリーレンエ−テルスルホン)
四つ口の丸フラスコ(4-neck round flask)とディーン・スターク・トラップ(Dean-Stark trap)を設置した後、BPとK
2CO
3をNMP及びトルエンとともに入れて機械式撹拌機(mechanical stirrer)で撹拌し、約2時間かけて温度を150℃までゆっくり上げた。150℃の温度でトルエンがディーン・スターク・トラップを通じて還流されるが、約4時間還流状態を維持した後、トルエンを除去した。乾燥したSDCDS(3,3-disulfonated-4,4-dichlorodiphenyl sulfone)とDCDPS(4,4-dichlorodiphenyl sulfone)をグローブボックスの中で計量し、NMPとともに反応器に入れた。温度を195℃までゆっくり上げ、16時間撹拌した。重合が終わると、水に沈殿させ100℃にて2時間で塩を除去しフィルタリングした。この後、得られた濾過物を乾燥して、スルホン化したポリアリーレンエーテルスルホンを製造した。
【0118】
(製造例2:スルホン化したポリエーテルエーテルケトン-エ−テルスルホンランダム共重合体)
四つ口の丸フラスコとディーン・スターク・トラップを設置した後、4,4-ビフェノール(BP)とK
2CO
3をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びトルエンとともに入れて機械式撹拌機で撹拌し、約2時間かけて温度を150℃までゆっくり上げた。150℃の温度でトルエンがディーン・スターク・トラップを通じて還流されるが、約4時間還流状態を維持した後、トルエンを除去した。乾燥したSDCDS(3,3-disulfonated-4,4-dichlorodiphenyl sulfone)、DCDPS(4,4-Dichlorodiphenyl ketone)、及び、フェノール,4,4-(1、3-ジオキソラン-2-イリデン)ビス-(Phenol,4,4’-(1,3-dioxolan-2-ylidene)bis-;Cas no.91998-26-4,YANJIN technology社製)をグローブボックスの中で計量し、NMPとともに反応器に入れた。温度を195℃までゆっくり引上げ、16時間撹拌した。重合が終わると、水に沈殿させて100℃にて2時間で塩を除去してフィルタリングした。この後、得られた濾過物を乾燥して、スルホン化したポリエーテルエーテルケトン-エーテルスルホンランダム共重合体を収得した。
【0119】
(製造例3:スルホン化したポリエーテルエーテルケトン-エ−テルスルホンブロック共重合体)
四つ口の丸フラスコとディーン・スターク・トラップを設置した後、BPとK
2CO
3をNMP及びトルエンとともに入れて機械式撹拌機で撹拌し、約2時間かけて温度を150℃までゆっくり上げた。150℃の温度でトルエンがディーン・スターク・トラップを通じて還流されるが、約4時間還流状態を維持した後、トルエンを除去した。乾燥したSDCDS(3,3-Disulfonated-4,4-dichlorodiphenyl sulfone)をグローブボックスの中で計量してNMPとともに反応器に入れた。温度を195℃までゆっくり上げ、16時間撹拌した。重合が終わると、水に沈殿させて100℃にて2時間で塩を除去してフィルタリングした。この後、得られた濾過物を乾燥して第1高分子を製造した。
【0120】
次に、SDCDSの代りに、同じ器具にて、DCDPS(4,4-Dichlorodiphenyl ketone)と、フェノール,4,4-(1,3-ジオキソラン-2-イリデン)ビス-とを用いることを除き、前記と同様の方法で実施して第2高分子を製造した。
【0121】
前記で製造された第1及び第2高分子をNMPとともに反応器に入れ、温度を150℃までゆっくり上げて12時間撹拌したのちフィルタリングし、得られた濾過物を乾燥して、スルホン化したポリエーテルエーテルケトン-エーテルスルホンブロック共重合体を収得した。
【0122】
(比較例1:高分子電解質膜の製造)
ポリアミック酸(polyamic acid)をジメチルホルムアミドに溶解させ、480poiseの紡糸溶液5Lを製造した。この際、CsHSO
4は、最終的に製造される多孔性支持体の総重量に対して5重量%の含量で含まれる量にて用いた。製造された紡糸溶液を溶液槽に移送した後、これを、定量ギアポンプを通じて、ノズルが20個で構成され、高電圧が3kVに印加された紡糸チャンバーへ供給して紡糸し、ナノファイバー前駆体のウェブを製造した。この際、溶液供給量は1.5ml/minであった。製造されたナノファイバー前駆体のウェブを350℃で熱処理を施し、多孔性支持体(多孔度:90体積%)を製造した。
【0123】
前記で製造された多孔性支持体を、前記製造例1で製造した50モル%スルホン化したポリアリーレンエーテルスルホン(sulfonated polyarylene ethersulfone,S-PAES)をDMAcに20重量%で溶解させて製造したイオン伝導体溶液の中に、2回にかけて30分間含浸させた後、減圧下で1時間放置し、80の真空で10時間乾燥して高分子電解質膜を製造した。このとき、ポリイミドナノファイバーの単位面積当たりの重量は6.8gsmであり、スルホン化したポリアリーレンエーテルスルホンの重量は65mg/cm
2であった。
【0124】
(比較例2:高分子電解質膜の製造)
前記比較例1において、ポリアミック酸の代りに、前記製造例1で製造した50モル%スルホン化したポリアリーレンエーテルスルホン(S-PAES)を用いることを除き、比較例1と同様の方法で実施した。
【0125】
しかしながら、S-PAESで製造された支持体に対するS-PAESの含浸工程中、支持体が有機溶媒に溶解されて高分子電解質膜の製造が不可能だった。
【0126】
(実施例1:高分子電解質膜の製造)
前記製造例3で製造した40モル%スルホン化したポリエーテルエーテルケトン-エーテルスルホンブロック共重合体を用いることを除き、前記比較例1と同様の方法で実施してナノ−ウェブ支持体(多孔度:90体積%)を製造した。そして、製造された支持体に対して、前記製造例1で製造した50モル%スルホン化したポリアリーレンエーテルスルホン(S-PAES)を含浸させた。この後、得られた膜を、95℃で2M硫酸に2時間浸漬して高分子電解質膜を製造した。
【0127】
得られた高分子電解質膜におけるスルホン酸基の密度は50mmol/gで、高分子電解質膜は膜厚25μm、面積当たりのプロトン伝導度Aは0.2S/cm
2であった。また、80℃、水溶液の中では寸法の変化がほぼ見られなかった。
【0128】
(実施例2:高分子電解質膜の製造)
前記製造例2で製造した5モル%スルホン化したポリエーテルエーテルケトン-エーテルスルホンランダム共重合体を用いることを除き、前記比較例1と同様の方法で実施してナノ−ウェブ支持体(多孔度:90体積%)を製造した。そして、製造された支持体に対して、前記製造例1で製造したナノ−ウェブ支持体に前記製造例1で製造した50モル%スルホン化したポリアリーレンエーテルスルホン(S-PAES)を含浸させた。この後、得られた膜を、95℃で2M硫酸に2時間浸漬して高分子電解質膜を製造した。
【0129】
得られた高分子電解質膜におけるスルホン酸基の密度は50mmol/gであり、高分子電解質膜は膜厚25μm、面積当たりのプロトン伝導度は0.2S/cm
2であった。また、80℃、水溶液の中では寸法の変化がほぼ見られなかった。
【0130】
(実施例3:高分子電解質膜の製造)
前記製造例3と同様の方法で実施して製造した5モル%スルホン化した20ポリエーテルエーテルケトン-エーテルスルホンブロック共重合体を用いることを除き、前記比較例1と同様の方法で実施してナノ−ウェブ支持体(多孔度:90体積%)を製造した。そして、製造された支持体に対して、前記製造例1で製造した50モル%スルホン化したポリアリーレンエーテルスルホン(S-PAES)を含浸させた。この後、得られた膜を、95℃で2M硫酸に2時間浸漬して高分子電解質膜を製造した。
【0131】
得られた高分子電解質膜のスルホン酸基の密度は50mmol/gであり、高分子電解質膜は膜厚25μm、面積当たりのプロトン伝導度Aは0.2S/cm
2であった。又、80℃、水溶液の中では寸法の変化がほぼ見られなかった。
【0132】
(実施例4:膜-電極アセンブリの製造)
前記実施例1で製造された高分子電解質膜に対し、デカール法を用いて電極層を形成して膜-電極アセンブリを製造した。この際、前記電極の触媒層は、Pt/炭素触媒を含む触媒層形成用組成物を離型フィルムに塗布したのち乾燥して触媒層を形成した。そして、触媒層がコーティングされた離型フィルムを、強化複合膜の両面に触媒層と強化複合膜が対面するよう配置した後、100〜200kg/cm
2の圧力と120℃の温度でホットプレスを行い、強化複合膜の両面に触媒層を転写させた。次に、触媒層が接合された強化複合膜の両面に、気体拡散層(gas diffusion layer,GDL)を設け、膜-電極アセンブリを製造した。この際、触媒のローディング量は0.4mg/cm
2であった。
【0133】
[試験例]
前記実施例1〜3及び比較例1、2で製造された高分子電解質膜に対し、物性の評価を行った。その結果を下記表1に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
前記表1に示すように、実施例1による高分子電解質膜は、支持体の高い親水性によって寸法安定性の改善程度は小さいが、イオン伝導度及び性能面では著しく向上した結果となった。さらに、実施例2の高分子電解質膜は、イオン伝導度及び寸法安定性、そして性能面で比較例1に比べて著しく改善した結果となった。また、実施例3は、実施例1に比べてイオン伝導性は多少低いが、寸法安定性面ではより改善した効果を表し、実施例2に比べては低加湿でより改善した性能を表した。
【0136】
前記の結果により、本発明による高分子電解質膜がイオン伝導度、寸法安定性及び性能、特に低加湿での性能改善効果に優れていることがわかる。
【0137】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、以下の請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の複数の変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。