(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180629
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】自動車用装飾グリル
(51)【国際特許分類】
B60R 19/52 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
B60R19/52 K
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-522796(P2016-522796)
(86)(22)【出願日】2014年9月27日
(65)【公表番号】特表2016-537235(P2016-537235A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】EP2014002625
(87)【国際公開番号】WO2015055278
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2016年4月13日
(31)【優先権主張番号】102013017131.8
(32)【優先日】2013年10月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】マイアー,ハンス−ペーテル
【審査官】
須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102012013699(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0182174(US,A1)
【文献】
国際公開第2013/027480(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0204680(US,A1)
【文献】
特開2012−236494(JP,A)
【文献】
特表2015−508729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾要素前壁(22)と、そこから突出するそれぞれの装飾要素側壁(24)をそれぞれ含む複数の装飾要素(10、20)と、それぞれ隣接する装飾要素(20)を互いに連結するための複数の連結要素(26)とを有する自動車の車首用の装飾グリルであって、前記装飾要素(10、20)が一列に配置されるとともに、前記一列の装飾要素(10、20)が、前記隣接して配置された一列の装飾要素(10、20)の前記装飾要素(10、20)に対して横にオフセットされ、
前記装飾要素(20)の前記装飾要素側壁(24)が、割り当てられた前記装飾要素側壁(24)の縦側面(30)に設けられる開放領域(34)を具備する、
装飾グリル。
【請求項2】
前記装飾要素(20)が、実質的に丸み付けされた桶型の基本輪郭を有することを特徴とする、請求項1に記載の装飾グリル。
【請求項3】
前記連結要素(26)が、割り当てられた装飾要素側壁(24)の縦側面(30)と連結され、それぞれの前記連結要素(26)の間に付随する前記開放領域(34)が設けられることを特徴とする、請求項1または2に記載の装飾グリル。
【請求項4】
前記開放領域(34)が、前記装飾要素側壁(24)のそれぞれの下部縦側面(30)内に設けられることを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の装飾グリル。
【請求項5】
前記開放領域(34)が、前記装飾要素側壁(24)の付随する前記縦側面(30)内の前記装飾要素前壁(22)まで延びることを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の装飾グリル。
【請求項6】
前記開放領域(34)が、少なくとも実質的に台形状の凹部として形成されることを特徴とする、請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の装飾グリル。
【請求項7】
前記装飾要素(20)が壁状に互いにオフセットして配置され、前記連結要素(26)によって互いに離間されることを特徴とする、請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の装飾グリル。
【請求項8】
前記連結要素(26)と前記装飾要素側壁(24)とのそれぞれの前側面(40、42)が共通の面に配置されることを特徴とする、請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の装飾グリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の自動車用装飾グリルに関する。
【背景技術】
【0002】
装飾グリルはラジエータグリルとも呼ばれ、少なくともフロントエンジンと水冷式エンジンを有する自動車の場合は、一般に車首で、通常は背後にエンジンラジエータが配置された吸入口を覆う役割を果たす。その際、例えばエンブレムの周囲に配置され、対応する保持フレームに固定される一体構造、又は多体構造の装飾グリルが使用される。
【0003】
特許文献1から、自動車のフロント領域に配置され、還流する気流を所望のとおりに誘導し、ある程度は所望のとおりに気流中の圧力比を調整するように形成された格子状の縦及び横の薄板を具備する自動車用の装飾グリルが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許第40 01 447 C1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、簡単に低コストで製造できる自動車用の代替装飾グリルを製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を有する装飾グリルによって解決される。本発明の好適な発展形態を有する有利な実施形態は従属クレームから明らかになる。
【0007】
装飾グリルは、それぞれ1つの装飾要素前壁と、前壁から突出する1つの装飾要素側壁とを含む複数の装飾要素を具備している。装飾要素は、それぞれ隣接する装飾要素を互いに連結する連結要素によって互いに離間して保持される。その際、装飾要素は一列に配置され、1つの列の装飾要素は、隣接して配置された列の装飾要素に対して横にオフセットされている。
【0008】
装飾グリルの有利な実施形態では、装飾要素が、好ましくは丸みを付けた桶形の基本輪郭を有しており、すなわち装飾要素には尖った縁、又は鋭い縁がない。このような実施形態によって、装飾要素前壁の平面図で見て、それぞれの装飾要素用ロッドの輪郭を形成することができる。
【0009】
装飾グリルの発展形態では、それぞれの装飾要素が、本発明の有利な実施形態では部分的に開口、切り込みなどを有する開放領域を備える桶状のそれぞれの周囲装飾要素側壁を具備するように構成されている。それぞれの装飾要素側壁をこのように部分的に開放して形成することによって、より簡単に金型温度制御が保証され、更には個々の装飾要素を互いにより小さい間隔で配置することができる対応する金型用のより大きいコアを使用することができる。それによって、フィリグリー様の装飾グリルを製造することができる。更に、付随する装飾要素を形成するためのそれぞれのコアはもはや装飾要素の内部空間に制限されることがなく、開放領域を通してそれぞれの装飾要素側壁をより大きくすることができるため、装飾要素自体のサイズを縮小することができる。更に、装飾要素側壁の開放領域によってコアの数を減らすことができる。
【0010】
本発明の更なる実施形態では、装飾要素のそれぞれの開放領域を、割り当てられた装飾要素側壁の縦側面に設けると有利であることが示される。開放領域を装飾要素前壁の平面図で見て下方の縦側面に設けると、開放領域が取り付けた装飾グリルを見る人からほとんど見えず、したがって装飾グリルの見かけの印象に悪影響を及ぼさないため有利である。
【0011】
本発明の別の実施形態では、連結要素は割り当てられた装飾要素側壁の縦側面と連結され、それぞれの連結要素の間には、それぞれの縦側面の内部に付随する開放領域が設けられている。それによって、それぞれの装飾要素間の間隔を特に小さくできる装飾グリルを製造するためのそれぞれの金型内のコアを作製することができる。
【0012】
本発明の有利な実施形態では、開放領域は装飾要素側壁の関連する縦側面内の装飾要素前壁まで延びている。言い換えると、本発明により開放領域は、開放領域と前壁との間に側壁の壁領域がないように形成されている。その結果、コアによって特に簡単に製造できる装飾要素のL形断面が生じる。
【0013】
更に、開放領域を装飾要素側壁のそれぞれの下方の縦側面に設けることが有利である。それによって、自動車の車首を正面から見る人には開放領域は見えない。
【0014】
別の有利な実施形態では、装飾要素は互いに壁状にオフセットして配置され、連結要素によって互いに離間するように構成されている。その際、特に吸気口は悪影響を受けず、遮断の度合いがやや大きくなるだけである。
【0015】
更に別の有利な実施形態では、それぞれの装飾要素側壁内の開放領域は、少なくとも実質的に台形の凹部として形成されている。それによって、装飾グリルの製造後、特に好適に装飾グリルを脱型することができる。
【0016】
最後に、本発明の更なる実施形態で、連結ウエブと装飾要素側壁のそれぞれの前面を共通の平面に配置すると有利であることが示されている。それによって、特に好適な金型分離、ひいては装飾グリルの製造を達成できる。
【0017】
次に図面を参照して装飾グリルの好適な実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1a】断面化した自動車の車首用装飾グリルの正面図である。
【
図1b】断面化し、やや斜視図化した自動車の車首用装飾グリルの背面図である。
【
図2】
図1aのII−II線で示す断面に沿った
図1aに記載の装飾グリルのそれぞれの装飾要素の部分断面図である。
【
図3a】装飾要素前壁と、装飾グリルの取り付け状態で装飾要素前壁から自動車の長手方向後方に突出するそれぞれの装飾要素側壁をそれぞれ含み、それぞれ隣接する装飾要素を互いに連結するための複数の連結要素を有し、装飾要素の装飾要素側壁がそれぞれ開放領域を設けている自動車の車首用の本発明による装飾グリルの実施形態の部分正面図である。
【
図3b】装飾要素前壁と、装飾グリルの取り付け状態で装飾要素前壁から自動車の長手方向後方に突出するそれぞれの装飾要素側壁をそれぞれ含み、それぞれ隣接する装飾要素を互いに連結するための複数の連結要素を有し、装飾要素の装飾要素側壁がそれぞれ開放領域を設けている自動車の車首用の本発明による装飾グリルの実施形態の部分背面斜視図である。
【
図4】
図3aのIV−IV線で示され、装飾グリルの主面に対して垂直に延び、又は取り付け状態では自動車の長手方向、及び自動車の高さ方向に延びる、装飾グリルの2つの装飾要素の断面の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1a及び1bは、それぞれ1つの装飾要素前壁12と、そこから車両の長手方向後方に突出するそれぞれ1つの装飾要素側壁14とを含む複数の桶状の装飾要素10を含む自動車の車首/フロント領域用の装飾グリルの部分正面図、及び背面斜視図を例示している。それぞれの装飾要素前壁12は前側、すなわち装飾要素側壁14とは反対側に例えばコーティング、具体的にはクロムめっきされているため、
図1aに示す正面図では複数の装飾要素前壁12は装飾グリルの視覚的価値が高い前面を形成する。個々の装飾要素10は、装飾要素10が一種のブロック壁のようにオフセットされ、互いに離間して配置されるように、それぞれの連結要素16を介してそれぞれ隣接する装飾要素10と連結されている。
【0020】
特に
図2から分かるように、後方に突出するそれぞれの装飾要素側壁14は、それぞれの装飾要素前壁12に対応する角度をなして配置され、これを完全に囲むように形成されている。
【0021】
図1aから2に示す装飾グリルは、少なくとも実質的にプラスチック材料から成り、それぞれの桶形の装飾要素10、及びこれらの要素の間の空隙を作製するために非常に小さい複数のコアが必要であるため、製造が比較的困難である。このことは特に、金型の温度制御に関して問題である。更に、装飾要素、又は装飾グリルを形成するために個々の金型コアには金型によって生じる最小限の間隔が必要なため、それぞれの装飾要素は互いに十分な間隔を隔ててしか配置できない。
【0022】
図3aから4は、
図1aから2に示す装飾グリルと比べて構造上、装飾要素を互いにより狭く位置決め/配置することができ、また、装飾要素が桶形に形成され、温度制御された金型コアによって製造されるにも関わらず装飾要素の幅を縮小できるという特徴を有する装飾グリルの別の実施形態を示している。それによって、フィリグリー様の構造の装飾グリルを実現できる。
【0023】
図3a及び3bは、この場合は実質的に桶状の、例えば深鍋状の丸い輪郭を有する複数の装飾要素20を有する自動車の車首用装飾グリルの部分正面図、及び背面斜視図を示している。これらは、それぞれの装飾要素前壁22によって形成され、そこからそれぞれの装飾要素側壁24が、自動車の長手方向から見て後方に突出している。この場合、装飾グリルは全体がプラスチック製であり、それぞれの装飾要素20が一体形成されている。それぞれの連結要素26も装飾要素20と一体形成されており、この連結要素を介してそれぞれ隣接する装飾要素20が互いに連結されている。その際、装飾要素20はブロック壁状にオフセットされ、互いに間隔を隔てて配置され、それぞれの連結要素26は、装飾要素20のそれぞれの列の間隔R
1、R
2、R
3、R
nを定める。
【0024】
特に
図3aから分かるように、それぞれの装飾要素前壁22は前方に、又は車首の外側にいわゆるロッド様の外見、すなわち互いに連結された複数の長く延びる条片状要素を形成する。装飾要素側壁24とは反対側に配置された装飾要素前壁22のそれぞれの前側面にはコーティングなどが施され、特にクロムめっきされている。コーティングは、例えば具体的にはホットスタンピングによって施される。
【0025】
特に
図3bから分かるように、桶状の装飾要素20、又はそのそれぞれの装飾要素側壁24は、それぞれが弓状の壁領域32を介して互いに連結された上部縦側面28と下部縦側面30とをそれぞれ具備している。ここで、上部縦側面28、及び下部縦側面30とは、装飾グリルの自動車車首への取り付け状態でのこれらの配置であると理解されたい。したがって、それぞれの上部縦側面28は自動車の横方向に、又はほぼ水平に装飾要素20のそれぞれの上部領域内に延びており、その下方のそれぞれの下部縦側面30も同様に自動車の横方向に、ほぼ水平に延びている。縦側面28、30にはそれぞれの連結要素26も配置されている。
【0026】
しかし、それぞれの下部縦側面30は、下側が下部縦側面30に接合するそれぞれ隣接する連結要素26の間に、この場合は実質的に台形の凹部を形成する開放領域34を設けてそれぞれ形成されている。したがって、それぞれの下部縦側面30には、それぞれの装飾要素側壁24のそれぞれ付随する弓形の壁領域32、及びそれぞれ側方に取り付けられた連結要素26に接合するそれぞれの縁領域36、38だけが残される。
【0027】
図3aのIV−IV線で示される断面に沿った部分断面図であって、装飾要素20のうちの2つを通る断面を示す
図4から特に分かるように、それぞれの開放領域34はそれぞれの装飾要素前壁22まで下方に延びていることが分かる。言い換えると、それぞれの開放領域34の領域の断面では、それぞれの装飾要素20の実質的にL型の断面だけが残され、開放領域34内にあるそれぞれの装飾要素側壁24の下部縦側面30は完全に取り除かれている。
【0028】
開放領域34内のそれぞれの装飾要素側壁24をこのように除去することによって、例えば
図1aから2を参照して記載された装飾グリルよりも大きいスタンプを有する金型を使用することが可能になる。すなわち、それによって例えば装飾要素20の列R
1にあるそれぞれの上部縦側面28から第3の列R
3にある装飾要素20の上部縦側面28まで延びるスタンプを使用することができる。
【0029】
特に、
図3bから更に、連結要素26のそれぞれの前側面40と、装飾要素側壁24のそれぞれの前側面42とは、装飾要素前壁22によって形成される面と平行な共通の面に配置されることが分かる。それによって、この面の領域で特に好適な金型分離が可能になる。
【0030】
したがって、この場合は全体として、特に好適な金型温度制御に有用な、比較的大きいコアを使用することができる装飾要素が作製されることが分かる。更に、それぞれの装飾要素20間の間隔がより狭いフィリグリー様の装飾グリルを構成することができる。その際、それぞれの装飾グリルの吸気口は悪影響を受けず、閉塞度がやや大きくなるだけである。
【0031】
その際、装飾グリル全体を一体形成することができ、したがって車首の対応する開口を覆うことができる。同時に、複数の装飾グリルを複合して1つのフレームに保持することもでき、これらが例えば対応するエンブレムを囲むことができる。したがって、本明細書に記載した変形形態はそれぞれの装飾要素の平板な形態の配置のみを記載したものである。