(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180713
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】機器ケースの開閉部分の防水構造
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20170807BHJP
H04M 1/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
F16J15/10 T
H04M1/02 C
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-182210(P2012-182210)
(22)【出願日】2012年8月21日
(65)【公開番号】特開2014-40846(P2014-40846A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】辺見 耕太
【審査官】
竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−193658(JP,A)
【文献】
実開平01−109656(JP,U)
【文献】
特開2004−180824(JP,A)
【文献】
実開平04−111962(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00−15/14
H04M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーの外周面に形成されたパッキン装着溝にパッキンが装着され、前記カバーを機器のケースの開口部に挿入することにより前記パッキンが前記開口部の平坦な内面と前記パッキン装着溝の平坦な底面との間で圧縮される機器ケースの開閉部分の防水構造において、前記パッキンが、前記開口部の内面に密接されるメインシール部と、このメインシール部の背面側に、凹溝部を介して幅方向両側に並んで形成され前記パッキン装着溝の底面に密接される一対の脚部からなり、この脚部の長さが当該パッキンの圧縮方向高さの1/2以上であり、前記脚部の内面が、前記凹溝部が背面側へ向けて開くように傾斜面をなすと共に、前記メインシール部で肉厚が最も大きく、前記メインシール部から前記脚部の先端へ向けて肉厚が減少することを特徴とする機器ケースの開閉部分の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器のケースにおけるコネクタカバー部やバッテリカバー部などのような開閉部分の
防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やデジタルカメラなどの小型電子機器は、データ入出力や充電などのためのコネクタ接続部や、バッテリ挿入部を備えており、これらコネクタ接続部やバッテリ挿入部として機器ケースに開設された開口部にはカバーが着脱可能に嵌め込まれている。そして、このようなケース開口部とカバーとの隙間は、従来Oリングによって密封され、防水が図られている。
【0003】
図6は、このような従来の防水技術を示すもので、参照符号100は小型電子機器のケース、参照符号101はケース100に開設された開口部、参照符号200は開口部101に着脱可能に嵌め込まれるカバーである。
【0004】
カバー200は全体として板状をなすものであって、ケース100の開口部101に挿入可能な挿入部201を有する。この挿入部201は、挿入方向に対する投影形状が前記開口部101の開口形状と略相似であって、
図7に示すように角を丸めた方形状を呈するものや、
図8に示すように長円形状のものなどがあり、すなわち平面部と湾曲面部を周方向交互に有し、前記開口部101より一回り小さい。そしてこの挿入部201の外周面にはパッキン装着溝202が周設されており、この溝202にはOリング203が装着されている。
【0005】
Oリング203は断面が円形のゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなるパッキンであって、ケース100の開口部101にカバー200を嵌め込んだ状態において、開口部101の内面(内周面)とカバー200のパッキン装着溝202の底面との間に圧縮状態で介在することによって防水機能を奏するものである(例えば下記の特許文献1,2参照)。
【0006】
しかしながら、従来の技術によると、
図6の(A)のようにカバー200を取り外して開口部101を開放した状態から、
図6の(B)のようにカバー200を開口部101へ嵌め込むといった作業が繰り返されることによって、Oリング203が、開口部101の内面及びパッキン装着溝202の底面との摩擦により捩れてしまい、Oリング203による密封性(防水性)が損なわれるおそれがあった。また、Oリング203は、パッキン装着溝202に巻装する際にも捩れを生じやすく、装着不良によって密封性(防水性)が損なわれるおそれがあった。
【0007】
このような捩れ対策としては、Oリング203の代わりに
図9に示すようなDリング204を用いることが考えられる。Dリング204は断面がD字形をなすように成形されたゴム状弾性材料からなるパッキンであって、平坦な面204aがパッキン装着溝202の底面202aに密接するように装着し、カバー200を開口部101へ嵌め込んだ状態において、凸面204bがケース100の開口部101の内面に密接されるものである(例えば下記の特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−289103号公報
【特許文献2】特開2007−73269号公報
【特許文献3】WO2010/128606
【0009】
しかしながら、
図9のようにDリング204を用いた場合は、つぶし代が同一である場合、圧縮に対する反力が
図6のようなOリング203に比較して大きくなるため、カバー200を開口部101へ嵌め込むときの抵抗が大きくなるばかりでなく、早期に摩耗して密封性(防水性)が不安定になりやすい問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、パッキン装着溝内での
防水用パッキンの捩れを発生しにくく、かつ摩耗を抑制することの可能な
機器ケースの開閉部分の防水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係る機器ケースの開閉部分の防水構造は、カバーの外周面に形成されたパッキン装着溝にパッキンが装着され、前記カバーを機器のケースの開口部に挿入することにより前記パッキンが前記開口部の平坦な内面と
前記パッキン装着溝の平坦な底面との間で圧縮される機器ケースの開閉部分の防水構造において、前記パッキンが、前記開口部の内面に密接されるメインシール部と、このメインシール部の背面側に、凹溝部を介して幅方向両側に並んで形成され前記パッキン装着溝の底面に密接される一対の脚部からなり、この脚部の長さが当該パッキンの圧縮方向高さの1/2以上であり、前記脚部の内面が、前記凹溝部が背面側へ向けて開くように傾斜面をなすと共に、前記メインシール部で肉厚が最も大きく、前記メインシール部から前記脚部の先端へ向けて肉厚が減少することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る
機器ケースの開閉部分の防水構造によれば、パッキン装着溝の底面に、凹溝部によって幅方向両側に分離された一対の脚部が密接され、この脚部の長さを当該パッキンの圧縮方向高さの1/2以上と
すると共に、脚部の内面を、前記凹溝部が背面側へ向けて開くように傾斜面をなすと共に、前記メインシール部で肉厚が最も大きく、前記メインシール部から前記脚部の先端へ向けて肉厚が減少しているため、ケースの開口部の平坦な内面と前記装着溝の平坦な底面の間での圧縮に対する反力が小さくなり、摩擦抵抗の低減及び摩耗の抑制を図ることができる。しかも一対の脚部が互いに開くように変形を受けることによって装着状態が安定するので
、カバーをケースの開口部に嵌め込んだり、この開口部からカバーを開いたりする際のパッキンの捩れを発生しにくく、このため優れた密封性(防水性)を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
本発明の第一の実施の形態を示す断面図である。
【
図2】
本発明の第一の実施の形態を示す装着状態の断面図である。
【
図3】
本発明の第二の実施の形態を示す断面図である。
【
図4】
本発明の第三の実施の形態を示す断面図である。
【
図5】
本発明の第四の実施の形態を示す断面図である。
【
図6】従来の技術に係る防水用パッキンを装着したカバーをケースの開口部に嵌め込む過程を示す説明図である。
【
図8】方形の角を丸めた形状のカバーを示す説明図である。
【
図9】Dリングを用いた従来の技術を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る
機器ケースの開閉部分の防水構造の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず
図1及び
図2は、
本発明の第一の実施の形態を示すものである。
【0015】
すなわちこの実施の形態の防水用パッキン1は、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)で成形されたものであって、
図1に示すように、メインシール部11と、このメインシール部11の背面側に、凹溝部14を介して幅方向両側に並んで形成された一対の脚部12,13からなる。脚部12,13の長さAは、当該パッキン1の圧縮方向高さ(メインシール部11の先端から脚部12,13の先端までの高さ)Bの1/2以上となっている。
【0016】
メインシール部11は、断面形状が円弧状となる凸面をなしており、また、幅方向両側面1a,1bは互いに略平行であるのに対し、脚部12,13の内面12a,13aは、凹溝部14が背面側へ向けて開くように傾斜面をなしている。
【0017】
そしてこのパッキン1は、たとえば
図2に示すようなカバー2の外周面に形成されたパッキン装着溝21に装着され、ケース3の開口部3aの内面との間に圧縮状態で介在することによって防水機能を奏するものである。
詳しくは、ケース3の開口部3aはたとえばコネクタ接続部やバッテリ挿入部として開設されたものであり、カバー2は、このコネクタ接続部やバッテリ挿入部を開閉するコネクタカバーあるいはバッテリカバーである。
【0018】
図2に示す装着状態において、パッキン1は、脚部12,13の先端がカバー2におけるパッキン装着溝21の底面21aに適当な面圧で密接すると共に、メインシール部11がパッキン装着溝21から突出しており、カバー2をケース3の開口部3aに嵌め込むことによって、この開口部3aの内面に適当な面圧で密接するようになっている。
【0019】
以上の構成を備えるパッキン1によれば、パッキン装着溝21の底面21aには、凹溝部14によって幅方向両側に分離された一対の脚部12,13が密接されるものであり、しかもこの脚部12,13の長さAが、当該パッキン1の圧縮方向高さBの1/2以上となっているため、パッキン装着溝21の底面21aと、これに対向するケース3の開口部3aの内面との間での圧縮に対する反力が小さくなる。したがって、ケース3の開口部3aの内面に対するメインシール部11の面圧が低下し、このためカバー2をケース3の開口部3aに嵌め込んだり、この開口部3aからカバー2を開いたりする際の滑り抵抗を小さくして作業を容易にすることができる。またこのため、メインシール部11の摩耗も抑制されるので、摩耗による密封性(防水性)の低下を有効に防止できる。
【0020】
そしてこのとき、パッキン1の圧縮に対する反力は、脚部12,13を互いに開く方向へ変形させるように作用し、この脚部12,13の先端部がパッキン装着溝21の内側面21b,21cと当接するので、カバー2をケース3の開口部3aに嵌め込んだり、この開口部3aからカバー2を開いたりする際のパッキン1の捩れが防止される。このため捩れによる密封性(防水性)の低下を有効に防止できる。
【0021】
次に
図3は、本発明に係る
機器ケースの開閉部分の防水構造の第二の実施の形態を示すものである。この形態による防水用パッキン1も基本的には第一の実施の形態と同様、メインシール部11と、このメインシール部11の背面側に、凹溝部14を介して幅方向両側に並んで形成された一対の脚部12,13からなり、脚部12,13の長さAが当該パッキン1の圧縮方向高さBの1/2以上となっているものである。
【0022】
このため、第一の実施の形態と同様の効果が実現されるが、脚部12,13の内面12a,13aは互いに平行であると共に、メインシール部11の肉厚が脚部12,13の肉厚と略同一に形成されている点で、第一の実施の形態と相違しており、また全体として第一の実施の形態よりも肉厚が小さいものとなっている。したがって圧縮に対する反力を一層小さいものとして、滑り抵抗の低減及び摩耗の低減を図ることができる。
【0023】
また
図4は、本発明に係る
機器ケースの開閉部分の防水構造の第三の実施の形態を示すものである。この形態による防水用パッキン1も基本的には第一の実施の形態と同様、メインシール部11と、このメインシール部11の背面側に、凹溝部14を介して幅方向両側に並んで形成された一対の脚部12,13からなり、脚部12,13の長さAが当該パッキン1の圧縮方向高さBの1/2以上となっているものである。
【0024】
このため、第一の実施の形態と同様の効果が実現されるが、メインシール部11が山形の凸面形状に形成されており、高さB方向へ延びる脚部12,13の先端側の肉厚t1が相対的に厚く、メインシール部11の両側斜面11a,11bと凹溝部14によって脚部12,13の根元部の肉厚t2が相対的に薄く形成されている点で、第一の実施の形態と相違している。したがってこの場合には装着状態の安定性が良い。
【0025】
また
図5は、本発明に係る
機器ケースの開閉部分の防水構造の第四の実施の形態を示すものである。この形態による防水用パッキン1も基本的には第一の実施の形態と同様、メインシール部11と、このメインシール部11の背面側に、凹溝部14を介して幅方向両側に並んで形成された一対の脚部12,13からなり、脚部12,13の長さAが当該パッキン1の圧縮方向高さBの1/2以上となっているものである。
【0026】
このため、第一の実施の形態と同様の効果が実現されるが、メインシール部11が山形の凸面形状に形成されており、脚部12,13はメインシール部11の両側斜面11a,11bの延長方向へ延び、すなわち脚部12,13の内面12a,13aはメインシール部11の両側斜面11a,11bと平行に形成され、このため防水用パッキン1の断面形状が略V字形をなしている点で、第一の実施の形態と相違している。したがって脚部12,13が圧縮方向に対して斜めに延びることによって変形に曲げ成分を有することとなり、これによって挿入時の抵抗(摩耗)を少なくすることができる共に、脚部12,13が開くように曲げ変形することで装着状態の安定性が良く、捩れが有効に防止されるのである。
【符号の説明】
【0027】
1 防水用パッキン
11 メインシール部
12,13 脚部
14 凹溝部
2
カバー
21 パッキン装着溝
3
ケース
3a 開口部