特許第6180714号(P6180714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6180714-機器ケースの開閉部分の防水構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180714
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】機器ケースの開閉部分の防水構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20170807BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   F16J15/10 T
   H04M1/02 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-182211(P2012-182211)
(22)【出願日】2012年8月21日
(65)【公開番号】特開2014-40847(P2014-40847A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】辺見 耕太
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−086754(JP,A)
【文献】 実開昭56−014249(JP,U)
【文献】 特開2003−014126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00−15/10
H04M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーの外周面に形成されたパッキン装着溝にパッキンが装着され、前記カバーを機器のケースの開口部に挿入することにより前記パッキンが前記開口部の平坦な内面と前記パッキン装着溝の平坦な底面との間で圧縮される機器ケースの開閉部分の防水構造において、前記パッキンが、前記開口部の内面に摺動可能に密接される凸面をなすメインシール部と、前記パッキン装着溝の底面に密接される平坦な着座部と、この着座部と前記メインシール部との間の位置で幅方向両側をえぐった形状のくびれ部からなり、前記パッキン装着溝への装着状態において前記メインシール部が前記くびれ部を中心として首振り変位可能であることを特徴とする機器ケースの開閉部分の防水構造。
【請求項2】
メインシール部が、幅方向中間の嶺部と、この嶺部の両側の斜面を有することを特徴とする請求項1に記載の機器ケースの開閉部分の防水構造。
【請求項3】
メインシール部の幅が、着座部の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の機器ケースの開閉部分の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器のケースにおけるコネクタカバー部やバッテリカバー部などのような開閉部分の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やデジタルカメラなどの小型電子機器は、データ入出力や充電などのためのコネクタ接続部や、バッテリ挿入部を備えており、これらコネクタ接続部やバッテリ挿入部として機器ケースに開設された開口部にはカバーが着脱可能に嵌め込まれている。そして、このようなケース開口部とカバーとの隙間は、従来Oリングによって密封され、防水が図られている。
【0003】
図5は、このような従来の防水技術を示すもので、参照符号100は小型電子機器のケース、参照符号101はケース100に開設された開口部、参照符号200は開口部101に着脱可能に嵌め込まれるカバーである。
【0004】
カバー200は全体として板状をなすものであって、ケース100の開口部101に挿入可能な挿入部201を有する。この挿入部201は、挿入方向に対する投影形状が前記開口部101の開口形状と略相似であって、図6に示すように角を丸めた方形状を呈するものや、図7に示すように長円形状のものなどがあり、すなわち平面部と湾曲面部を周方向交互に有し、前記開口部101より一回り小さい。そしてこの挿入部201の外周面にはパッキン装着溝202が周設されており、この溝202にはOリング203が装着されている。
【0005】
Oリング203は断面が円形のゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなるパッキンであって、ケース100の開口部101にカバー200を嵌め込んだ状態において、開口部101の内面(内周面)とカバー200のパッキン装着溝202の底面との間に圧縮状態で介在することによって防水機能を奏するものである(例えば下記の特許文献1,2参照)。
【0006】
しかしながら、従来の技術によると、図5の(A)のようにカバー200を取り外して開口部101を開放した状態から、図5の(B)のようにカバー200を開口部101へ嵌め込むといった作業が繰り返されることによって、Oリング203が、開口部101の内面及びパッキン装着溝202の底面との摩擦により捩れてしまい、Oリング203による密封性(防水性)が損なわれるおそれがあった。また、Oリング203は、パッキン装着溝202に巻装する際にも捩れを生じやすく、装着不良によって密封性(防水性)が損なわれるおそれがあった。
【0007】
このような捩れ対策としては、Oリング203の代わりに図8に示すようなDリング204を用いることが考えられる。Dリング204は断面がD字形をなすように成形されたゴム状弾性材料からなるパッキンであって、平坦な面204aがパッキン装着溝202の底面202aに密接するように装着し、カバー200を開口部101へ嵌め込んだ状態において、凸面204bがケース100の開口部101の内面に密接されるものである(例えば下記の特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−289103号公報
【特許文献2】特開2007−73269号公報
【特許文献3】WO2010/128606
【0009】
しかしながら、図8のようにDリング204を用いた場合は、つぶし代が同一である場合、圧縮に対する反力が図5のようなOリング203に比較して大きくなるため、カバー200を開口部101へ嵌め込むときの抵抗が大きくなるばかりでなく、早期に摩耗して密封性(防水性)が不安定になりやすい問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、パッキン装着溝内での防水用パッキンの捩れを発生しにくく、かつ摩耗を抑制することの可能な機器ケースの開閉部分の防水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係る機器ケースの開閉部分の防水構造は、カバーの外周面に形成されたパッキン装着溝にパッキンが装着され、前記カバーを機器のケースの開口部に挿入することにより前記パッキンが前記開口部の平坦な内面と前記パッキン装着溝の平坦な底面との間で圧縮される機器ケースの開閉部分の防水構造において、前記パッキンが、前記開口部の内面に摺動可能に密接される凸面をなすメインシール部と、前記パッキン装着溝の底面に密接される平坦な着座部と、この着座部と前記メインシール部との間の位置で幅方向両側をえぐった形状のくびれ部からなり、前記パッキン装着溝への装着状態において前記メインシール部が前記くびれ部を中心として首振り変位可能であることを特徴とするものである。また、上記構成において、前記メインシール部が、幅方向中間の嶺部と、この嶺部の両側の斜面を有することや、前記メインシール部の幅が、前記着座部の幅よりも小さいものとすることも好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る機器ケースの開閉部分の防水構造によれば、平坦な着座部でパッキン装着溝の底面に密接されることによってパッキンの装着状態が安定するので、カバーをケースの開口部に挿入したり、この開口部からカバーを開いたりする際にパッキン装着溝内でのパッキンの捩れを発生しにくく、着座部とメインシール部との間に形成されたくびれ部によって、ケースの開口部の平坦な内面と前記装着溝の平坦な底面の間での圧縮に対する反力が小さくなり、しかも、メインシール部がケースの開口部の平坦な内面との摺動によって幅方向への摩擦を受けても、くびれ部を中心にして摩擦を低減する方向へのメインシール部の首振り変形が容易に行われるので、摩擦抵抗が低減され、しかも摩耗が狭い範囲に集中することなく分散され、このため優れた密封性(防水性)を長期にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1本発明の第一の実施の形態を示す断面図である。
図2本発明の第一の実施の形態を示す装着状態の断面図である。
図3本発明の第二の実施の形態を示す断面図である。
図4本発明の第三の実施の形態を示す装着状態の断面図である。
図5】従来の技術に係る防水用パッキンを装着したカバーをケースの開口部に嵌め込む過程を示す説明図である。
図6】長円形のカバーを示す説明図である。
図7】方形の角を丸めた形状のカバーを示す説明図である。
図8】Dリングを用いた従来の技術を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る機器ケースの開閉部分の防水構造の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1及び図2は、本発明の第一の実施の形態を示すものである。
【0015】
すなわちこの実施の形態の防水用パッキン1は、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)で成形されたものであって、図1に示すように、メインシール部11と、このメインシール部11と反対側を向いた平坦な着座部12と、この着座部12とメインシール部11との間の位置で幅方向両側をえぐった形状のくびれ部13からなる。
【0016】
メインシール部11は断面形状がなだらかな山形の凸面をなしており、すなわち幅方向中間の嶺部11aと、その両側の、勾配のなだらかな斜面11b,11cを有する。また、メインシール部11と着座部12の幅は互いにほぼ同一で、その間のくびれ部13の両側面13a,13bは、変形応力が部分的に集中することのないように、メインシール部11の両側面11d,11e及び着座部12の両側面12a,12bと連続した曲面をなしている。
【0017】
そしてこのパッキン1は、たとえば図2に示すようなカバー2の外周面に形成されたパッキン装着溝21に装着され、ケース3の開口部3aの内面3bとの間に適当に圧縮された状態で介在することによって防水機能を奏するものである。詳しくは、ケース3の開口部3aはたとえばコネクタ接続部やバッテリ挿入部として開設されたものであり、カバー2は、このコネクタ接続部やバッテリ挿入部を開閉するコネクタカバーあるいはバッテリカバーである。
【0018】
図2に示す装着状態において、パッキン1は、着座部12がカバー2におけるパッキン装着溝21の底面21aに適当な面圧で密接すると共に、メインシール部11がパッキン装着溝21から突出しており、カバー2をケース3の開口部3aに嵌め込むことによって、メインシール部11が、この開口部3aの内面3bに適当な面圧で密接するようになっている。
【0019】
以上の構成を備えるパッキン1によれば、パッキン装着溝21の底面21aには、平坦な着座部12が密接されるため、装着状態が安定し、したがってカバー2をケース3の開口部3aに嵌め込んだり、この開口部3aからカバー2を開いたりする際のパッキン1の捩れが防止される。このため捩れによる密封性(防水性)の低下を有効に防止することができる。
【0020】
また、このパッキン1は、着座部12とメインシール部11との間の位置に形成されたくびれ部13において幅方向の肉厚が減少し、剛性が適宜小さいものとなっているので、パッキン装着溝21の底面21aと、これに対向するケース3の開口部3aの内面3bとの間での圧縮に対する反力が小さくなる。したがって、前記内面3bに対するメインシール部11の面圧が低下し、このためカバー2をケース3の開口部3aに嵌め込んだり、この開口部3aからカバー2を開いたりする際の滑り抵抗を小さくして作業を容易にすることができる。
【0021】
また、たとえばカバー2を図2に矢印Xで示すようにケース3の開口部3aへ嵌め込む過程では、ケース3の開口部3aの内面3bに密接しているメインシール部11の嶺部11a(図1参照)に作用する摩擦力によって、メインシール部11が、剛性の小さいくびれ部13を中心にして、図2に矢印Fで示すように摩擦を低減する方向へ首振り変位する。このため摩擦抵抗が低減され、しかもメインシール部11は嶺部11aの両側の斜面11b,11cがなだらかな勾配で形成されているので、首振り変位によって摩耗の範囲が嶺部11aの両側の広い範囲へ分散される。したがって、狭い範囲に摩耗が集中することによる早期摩耗を防止して、密封性(防水性)を長期にわたって維持することができる。
【0022】
次に図3は、本発明に係る機器ケースの開閉部分の防水構造の第二の実施の形態を示すものである。この形態による防水用パッキン1も基本的には第一の実施の形態と同様、メインシール部11と、このメインシール部11と反対側を向いた平坦な着座部12と、この着座部12とメインシール部11との間の位置で幅方向両側をえぐった形状のくびれ部13からなる。
【0023】
このため第二の実施の形態も、第一の実施の形態と同様の効果が実現されるが、メインシール部11が円弧面状に膨出した凸面をなしている点で第一の実施の形態と相違しており、このため、メインシール部11が、ケース3の開口部3aの内面3bとの摩擦によって、くびれ部13を中心にして、矢印Fで示すように首振り変位しても、前記内面3bに対するつぶし代が殆ど変化しないので、摩耗の局部的な増大が抑制され、この点でも早期摩耗を有効に抑制することができる。
【0024】
また、図4は、本発明に係る機器ケースの開閉部分の防水構造の第三の実施の形態を示すものである。この形態による防水用パッキン1も基本的には第一の実施の形態と同様、メインシール部11と、このメインシール部11と反対側を向いた平坦な着座部12と、この着座部12とメインシール部11との間の位置で幅方向両側をえぐった形状のくびれ部13からなるものであって、メインシール部11の幅W11が、着座部12のW12よりも僅かに小さい点で第一の実施の形態と相違している。
【0025】
このように構成すれば、例えばパッキン1の着座部12の幅方向一側面12bがパッキン装着溝21の一方の内側面21bと接触しているような場合でも、その外周側に位置するメインシール部11の側面11eと前記パッキン装着溝21の内側面21bとの間には隙間δが存在するので、カバー2を図4に矢印Xで示すようにケース3の開口部3aへ嵌め込む過程で、くびれ部13を中心とするパッキン1のメインシール部11の首振り変位が良好に行われる。
【符号の説明】
【0026】
1 防水用パッキン
11 メインシール部
12 着座部
13 くびれ部
カバー
21 パッキン装着溝
ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8