特許第6180718号(P6180718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6180718ヨウ化リチウム水溶液の製造方法及びその利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180718
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ヨウ化リチウム水溶液の製造方法及びその利用
(51)【国際特許分類】
   C01D 3/12 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   C01D3/12
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-213076(P2012-213076)
(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-65638(P2014-65638A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年6月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227652
【氏名又は名称】日宝化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大高 佑介
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−261224(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102030345(CN,A)
【文献】 特開2006−117488(JP,A)
【文献】 特開平11−269671(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/096446(WO,A1)
【文献】 特開2013−103851(JP,A)
【文献】 特開2006−315904(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0303708(US,A1)
【文献】 特開平07−242414(JP,A)
【文献】 特開昭61−048403(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/096447(WO,A1)
【文献】 化学大辞典9,共立出版株式会社,1979年11月10日,縮刷版、第23刷,第426頁
【文献】 実験化学講座16 無機化合物,丸善株式会社,1993年 1月20日,第4版,第206頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D1/00−17/00
化学書資料館
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離ヨウ素の発生を抑える安定剤の存在下において、リチウム化合物とヨウ化水素酸とを反応させる反応工程を包含し、
上記リチウム化合物は、炭酸リチウムであり、
pH調整工程を上記反応工程の後にさらに包含し、
上記反応工程前に、予め上記安定剤を上記ヨウ化水素酸に添加し、該安定剤を添加したヨウ化水素酸を暗所にて静置し、
上記反応工程では、上記安定剤を含んだ上記ヨウ化水素酸を投入することにより、上記反応工程後におけるヨウ化リチウム水溶液のpHを3よりも小さくしておき、
上記pH調整工程では、pH調整剤として、リチウム化合物を用いて、上記反応工程によって得られるヨウ化リチウム水溶液のpHを3〜10に調整する工程であり、
上記pH調整剤として用いられるリチウム化合物は、水酸化リチウムであることを特徴とするヨウ化リチウム水溶液の製造方法。
【請求項2】
上記安定剤がリン系化合物、硫黄系化合物、及びヒドラジン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載のヨウ化リチウム水溶液の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヨウ化リチウム水溶液の製造方法によりヨウ化リチウム水溶液を製造する製造工程と、
上記製造工程で得られたヨウ化リチウム水溶液から水分を除去する工程と、を包含することを特徴とするヨウ化リチウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ化リチウム水溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨウ化リチウムは、水溶液として吸収式冷凍機用の吸収液に用いられるほか、酢酸製造用の助触媒などに用いられている。また、リチウム二次電池、色素増感太陽電池、有機ELなどの電子材料分野への用途が盛んに開発されている。
【0003】
ヨウ化リチウムの水溶液の製造方法としては、炭酸リチウムと水とのスラリーにヨウ化水素ガスを吹き込む製造方法(非特許文献1)、アルゴン雰囲気下、蒸留精製したヨウ化水素酸と炭酸リチウムとを反応させる製造方法(非特許文献2)、及び激しい攪拌下において、炭酸リチウムと水とのスラリーに、ヨウ素を溶解含有するヨウ化リチウム水溶液と硫化水素とを連続的に加えながら反応させる製造方法(特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−148708号公報(1989年6月12日公開)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本化学会編,「新実験化学講座」,8巻,p.462〜463,1997年,丸善株式会社
【非特許文献2】日本化学会編,「第4版実験化学講座」,16巻,p.206,1993年,丸善株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヨウ化水素酸は、ヨウ化リチウム水溶液を製造する方法において好ましい原料であるが、空気や光で容易に分解してヨウ素を遊離する不安定な材料である。市販のヨウ化水素酸は、遊離ヨウ素のために淡黄色から褐色に着色している。これら遊離ヨウ素により着色したヨウ化水素酸を用いてヨウ化リチウム水溶液を製造した場合、生成物であるヨウ化リチウムにおいても遊離ヨウ素による着色が認められる。
【0007】
又、ヨウ素は金属に対する腐食性が強く、ヨウ素を含有しているヨウ化リチウム水溶液を保管あるいは乾燥する際には、特殊な材質の容器あるいは装置を必要とし、それらは一般的に高価である。
【0008】
又、上記非特許文献1及び2の製造方法では、高価なヨウ化水素ガスをリチウム化合物との反応に用いるか、又は蒸留精製された遊離ヨウ素の含有量の少ないヨウ化水素酸をリチウム化合物との反応に用いる必要がある。又、特許文献1の製造方法では、毒性の強い硫化水素が用いられる。さらに、上記先行技術文献には、リチウム化合物とヨウ化水素酸の反応工程において生じる遊離ヨウ素について除去することは記載されていない。よって、例えば蒸留精製されたヨウ化水素酸を用いても結果として得られるヨウ化リチウム水溶液には遊離ヨウ素を多く含む虞がある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みて成された発明であり、ヨウ化水素酸を用いて、遊離ヨウ素の含有量が少なく、かつ着色の少ないヨウ化リチウム水溶液を製造する方法を提供する。本発明はまた、ヨウ化水素酸を用いて、遊離ヨウ素の含有量が少なく、かつ着色の少ないヨウ化リチウム水溶液を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係るヨウ化リチウムの製造方法は、遊離ヨウ素の発生を抑える安定剤の存在下において、リチウム化合物とヨウ化水素酸とを反応させる反応工程を包含することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヨウ化水素酸を用いて、遊離ヨウ素の含有量が少なく、かつ着色の少ないヨウ化リチウム水溶液が得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0013】
本発明に係るヨウ化リチウム水溶液の製造方法は、遊離ヨウ素の発生を抑える安定剤の存在下において、リチウム化合物とヨウ化水素酸とを反応させる反応工程を包含する。
【0014】
反応工程においては、安定剤の存在下、リチウム化合物の水溶液とヨウ化水素酸を用いて反応を行なう。よって、ヨウ化水素ガス又は硫化水素ガスとリチウム化合物水溶液とを用いる反応工程に比べて、定量的に収率よくリチウム化合物とヨウ化水素酸とを反応させることができる。
【0015】
さらに、ヨウ化水素酸の蒸留精製といった工程を行なうことなく、簡便に遊離ヨウ素を減少させることができるため、大量のヨウ化リチウム水溶液を製造するのに適している。よって、従来技術に比べ工業的に有利であるといえる。
【0016】
〔安定剤〕
本発明に係る製造工程において用いる安定剤としては、遊離ヨウ素の発生を抑えるものであればよく、例えば、遊離ヨウ素の還元剤が挙げられる。遊離ヨウ素の還元剤としては、例えば、次亜リン酸、亜リン酸等のリン系化合物、亜硫酸、チオ硫酸、硫化水素等の硫黄系化合物、又は硫酸ヒドラジン等のヒドラジン化合物等が挙げられる。
【0017】
安定剤は次亜リン酸であることが、特に好ましい。次亜リン酸を使用することによって、金属イオンを混入させることなく、効率よく遊離ヨウ素を還元することができる。
【0018】
安定剤によって、遊離ヨウ素の発生が抑えられるので、遊離ヨウ素に起因するヨウ化リチウム水溶液の着色を少なくできる。例えば、安定剤が遊離ヨウ素の還元剤である場合、遊離ヨウ素がヨウ素イオンに還元されることで、ヨウ化リチウム水溶液の遊離ヨウ素に起因する着色を少なくできる。
【0019】
安定剤の使用量は、安定剤の種類によって異なるが、例えば、次亜リン酸の場合、反応に使用するヨウ化水素酸に対して、好ましくは0.001〜10重量%、より好ましくは0.005〜1重量%、さらに好ましくは0.01〜0.1重量%の範囲内であることが好ましい。次亜リン酸の使用量が当該範囲内であることで、次亜リン酸の使用量を少なくすることができ、市販品を初め、従来の製造方法で得られるヨウ化水素酸中に存在する遊離ヨウ素を好適に還元することができる。
【0020】
また、安定剤は反応系中に予め添加しておいてもよく、反応工程以前に安定剤をヨウ化水素酸に添加することによって、遊離ヨウ素を還元しておいてもよい。
【0021】
〔反応工程〕
本発明に係るヨウ化リチウム水溶液の製造方法が包含する反応工程では、リチウム化合物及びヨウ化水素酸を反応させる。
【0022】
リチウム化合物は、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウム、酢酸リチウム、又はシュウ酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも一つであることが特に好ましい。これらリチウム化合物は、単独で用いることも、2種以上を混合して用いることもできる。又、リチウム化合物としては、水酸化リチウム、又は炭酸リチウムが副生成物を除去しやすいことから好ましい。
【0023】
反応工程おいては、ヨウ化水素酸中の遊離ヨウ素の量が、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、さらに好ましくは0.1重量%未満であることが好ましい。遊離ヨウ素の量が、0.1重量%未満であるヨウ化水素酸を用い、さらに安定剤を添加することで、遊離ヨウ素に起因するヨウ化リチウム水溶液における着色を特に少なくすることができる。
【0024】
反応工程においては、50〜60重量%の範囲内のヨウ化水素酸が好ましく用いられる。
【0025】
反応工程においてリチウム化合物及びヨウ化水素酸を反応させる方法としては、例えば、リチウム化合物の水溶液に、予め安定剤を添加したヨウ化水素酸を滴下する方法であってもよい。当該リチウム化合物の水溶液は無機成分を除去した水にリチウム化合物を溶解させたものであることがより好ましい。又、水に、リチウム化合物水溶液と予め安定剤を添加したヨウ化水素酸とを同時に滴下して製造することもできる。当該水は無機成分を除去した水であることがより好ましい。無機成分を除去した水としては、イオン交換水、純水、超純水が例として挙げられる。当該リチウム化合物の水溶液を調製することによって不純物として無機成分を含まないヨウ化リチウム水溶液、さらにはヨウ化リチウム粉末を製造することができる。
【0026】
無機成分を除去した水に対するリチウム化合物の量は、20〜60重量%の範囲とすることが好ましい。当該範囲内とすることで、効率よくリチウム化合物を溶解させることができ、ヨウ化水素酸と効率的に反応させることができる。また、リチウム化合物水溶液に、攪拌下において、ヨウ化水素酸を滴下すれば、急激な反応による発熱を防止することができる。
【0027】
リチウム化合物と反応させるヨウ化水素酸の使用量は、リチウム化合物に対して0.5〜1.5モル当量の範囲とすることが好ましい。当該範囲内とすることで、ヨウ化リチウムを収率よく製造することができる。
【0028】
反応工程は、遊離ヨウ素の発生を抑制する観点から、窒素ガス又はアルゴンガスのような不活性ガス条件下で行なうことが好ましい。
【0029】
反応工程における反応器内の温度は、0〜100℃の範囲内であることが好ましい。製造の容易さから、10〜50℃の範囲内であることが特に好ましい。
【0030】
〔pH調整工程〕
本発明に係るヨウ化リチウム水溶液の製造方法は、pH調整工程を反応工程の後にさらに包含することがより好ましい。pH調整工程は、反応工程の後にヨウ化リチウム水溶液のpHを調整する工程である。
【0031】
反応工程において、反応の効率を高めるためにヨウ化水素酸を過剰に投入した場合、反応工程後におけるヨウ化リチウム水溶液のpHは酸性となっている。よってpH調整工程において、過剰に存在するヨウ化水素酸を中和することが好ましい。
【0032】
pH調整工程において用いられるpH調整剤は、リチウム化合物であることが好ましい。リチウム化合物は、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウム、酢酸リチウム、又はシュウ酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも一つであることが特に好ましい。
【0033】
pH調整工程は、反応工程によって得られるヨウ化リチウム水溶液のpHを5〜9に調整する工程であることが好ましい。
【0034】
反応工程によって得られるヨウ化リチウム水溶液のpHを、好ましくは3〜10、より好ましくは4〜9、さらに好ましくは5〜7の範囲内に調整することで、品質の安定性、製品の安全性を向上させることができる。
【0035】
以上のようにして、本発明に係るヨウ化リチウム水溶液の製造方法によって得られるヨウ化リチウム水溶液も本発明の範疇である。
【0036】
本発明に係るヨウ化リチウム水溶液は、色調が、APHA No.(ハーゼン色数)150以下、より好ましくは、100以下、最も好ましくは50以下であるヨウ化リチウム水溶液であることが好ましい。
【0037】
また、本発明に係るヨウ化リチウム水溶液の遊離ヨウ素の含有量は、0.05重量%未満が好ましく、より好ましくは0.02重量%未満である。遊離ヨウ素の含有量を0.05重量%未満とすることで、遊離ヨウ素による着色のないヨウ化リチウム水溶液を得ることができる。本発明に係るヨウ化リチウム水溶液の製造方法によれば、遊離ヨウ素の含有量を0.05重量%未満とすることができる。
【0038】
<本発明に係るヨウ化リチウムの製造方法>
本発明に係るヨウ化リチウムの製造方法は、上述した本発明に係るヨウ化リチウム水溶液の製造方法を行なう製造工程と、製造工程で得られたヨウ化リチウム水溶液から水分を除去する水分除去工程と、を包含する。
【0039】
〔水分除去工程〕
本発明に係るヨウ化リチウムの製造方法が包含する水分除去工程は、製造工程で得られたヨウ化リチウム水溶液から水分を除去する工程である。
【0040】
ヨウ化リチウム水溶液から水分を除去することで、本発明に係る製造方法で得られたヨウ化リチウム水溶液から、ヨウ化リチウムの固体を得ることができる。従って、本発明に係るヨウ化リチウム水溶液の製造方法によって得られたヨウ化リチウム水溶液を、水溶液として用いる用途以外の用途に使用することができる。
【0041】
水分を除去する方法としては、例えば、ヨウ化リチウム水溶液を攪拌しながら、減圧下、加温することで水分を除去する方法が挙げられる。
【0042】
水分除去工程において加温する場合、加温の条件は、製造するヨウ化リチウム水和物の種類によって適宜設定すればよい。例えば、ヨウ化リチウム3水和物は、75℃以下の温度条件で得ることができる。ヨウ化リチウム無水和物を製造する場合には、120〜300℃で加温することが好ましい。又、ヨウ化リチウムの安定性の観点から、加温条件は390℃より低い温度であることが好ましい。
【0043】
水分除去工程における減圧条件は、0.4〜10kPaであることが好ましい。さらに効率的に水分を除去するためには0.4〜3kPaであることが好ましい。又、特にヨウ化リチウム無水物を効率的に製造する場合は、0.4〜2kPaであることが好ましい。
【実施例】
【0044】
遊離ヨウ素の含有量、およびヨウ化リチウム水溶液中のヨウ素イオン濃度は、以下の方法により測定した。
<遊離ヨウ素の含有量の測定方法>
試料の一部を100mlの三角フラスコに秤量し、0.01Mチオ硫酸ナトリウム水溶液(力価=1.004)を用いて滴定した。
<ヨウ化リチウム水溶液中のヨウ素イオン濃度の測定方法>
ヨウ化リチウム水溶液の一部を200mlのビーカーに秤量し、0.1M硝酸銀水溶液(力価=1.003)を用いて滴定した。
【0045】
〔実施例1〕
0.858重量%の遊離ヨウ素を含有する褐色の58重量%のヨウ化水素酸514.0gを秤量し、容量500mlの反応容器に仕込んだ。ここに31重量%の次亜リン酸水溶液(関東化学製)0.61gを加え、3日間暗所にて静置した。3日後、次亜リン酸を添加したヨウ化水素酸は薄黄色澄明となっていた。次亜リン酸を添加したヨウ化水素酸中の遊離ヨウ素濃度は0.018重量%であった。
【0046】
次に、攪拌装置、温度計、pHメーター、滴下ロートおよび固体投入口を備えた容量500mlの反応容器内を、窒素で十分に置換した。当該滴下ロートよりイオン交換水130.1gを反応容器内に投入した。攪拌下、当該固体投入口より炭酸リチウム50.0g(0.72モル)を投入した。当該滴下ロートに上記の方法で作製した次亜リン酸を添加したヨウ化水素酸306.2g(1.39モル)を仕込んだ。反応容器内の温度を25℃にした後、反応容器内の温度を25〜40℃の範囲内に保ちながら、滴下ロート内の次亜リン酸を添加したヨウ化水素酸を39分かけて滴下した。滴下終了後の反応溶液のpHは0.11であった。次いで、固体投入口より水酸化リチウムを投入し、反応容器内のpHを5.9に調整し、456.8gの無色澄明なヨウ化リチウム水溶液を得た。色差計(日本電色工業製SE6000)を用いてヨウ化リチウム水溶液の色調を測定したところAPHA No.は10であった。得られたヨウ化リチウム水溶液は室温において着色せずに安定に保存できた。ヨウ化リチウム水溶液中のヨウ素イオン濃度は37.406重量%であった。これをヨウ化リチウム濃度に換算するとヨウ化リチウムの収率は99.5%であった。また、ヨウ化リチウム水溶液中に遊離ヨウ素は検出されなかった。
【0047】
〔実施例2〕
実施例1で得られたヨウ化リチウム水溶液を用いて以下の操作を実施した。ヨウ化リチウム水溶液5mlを容量50mlのナス型フラスコに入れ、エバポレーターを用いて、3kPa/50℃で1時間かけて水を留去した後、3kPa/120℃で2時間かけて濃縮乾固して白色の結晶を得た。カールフィッシャー法で水分量を分析したところ、結晶中の水分は20.3重量%であり、結晶はヨウ化リチウム2水和物であった。得られたヨウ化リチウム2水和物の結晶を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(島津製作所製 ICPE−9000)を用いて標準添加法にてリンの含有量を分析したところ、リン濃度は296ppmであった。
【0048】
〔比較例1〕
攪拌装置、温度計、pHメーター、滴下ロートおよび固体投入口を備えた容量500mlの反応容器内を窒素で十分に置換した。当該滴下ロートよりイオン交換水130.1gを反応容器内に投入した。攪拌下、当該固体投入口より炭酸リチウム50.0g(0.67モル)を投入した。次に当該滴下ロートに安定剤を含まない56%ヨウ化水素酸(関東化学製)314.3g(1.38モル)を仕込んだ。反応容器内の温度を25℃にした後、反応容器内の温度を25〜40℃の範囲内に保ちながら、ヨウ化水素酸を55分かけて滴下した。滴下終了後の反応溶液のpHは−0.44であった。ついで固体投入口より水酸化リチウムを投入し、反応容器内のpHを6.1に調整し黄色澄明のヨウ化リチウム水溶液を465.6g得た。ヨウ化リチウム水溶液のヨウ素イオン濃度は37.943重量%であった。これをヨウ化リチウム濃度に換算するとヨウ化リチウムの収率は99.5%であった。当該ヨウ化リチウム水溶液を室温で遮光して保存すると24時間で褐色に変化した。上記色差計を用いて保存液の色調を測定したところ、APHA No.は2870(測定上限値)であった。
【0049】
〔比較例2〕
実施例2で得られたヨウ化リチウム水溶液を用いて以下の操作を実施した。ヨウ化リチウム水溶液5mlを容量50mlのナス型コルベンに入れ、エバポレーターを用いて、3kPa/50℃で1時間かけて水を留去した後、3kPa/120℃で2時間かけて濃縮乾固して褐色の結晶を得た。カールフィッシャー法で分析したところ、結晶中の水分は20.3重量%であり、結晶はヨウ化リチウム2水和物であった。得られたヨウ化リチウム2水和物の結晶を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(島津製作所製 ICPE−9000)で標準添加法にてリンの含有量を分析したところ、リン濃度は0.1ppm以下であり、ヨウ化水素酸の合成原料に由来するものと判断された。
【0050】
〔比較例3〕
攪拌装置、温度計、pHメーター、滴下ロートおよび固体投入口を備えた容量500mlの反応容器内を窒素で十分に置換した。当該滴下ロートよりイオン交換水130.0gを反応容器内に投入した。攪拌下、当該固体投入口より炭酸リチウム50.0g(0.676モル)を投入した。当該滴下ロートに0.858重量%の遊離ヨウ素を含む褐色の58重量%のヨウ化水素酸314.1g(1.400モル)を仕込んだ。反応容器内の温度を25℃にした後、反応容器内の温度を25〜40℃の範囲を保ちながら、滴下ロート内のヨウ化水素酸を38分かけて滴下した。滴下終了後、25〜30℃を保ちながら30分間攪拌し熟成を続けた。熟成終了後の反応溶液のpHは−0.71であった。ついで固体投入口より水酸化リチウムを投入し、反応容器内のpHを6.3に調整し褐色微濁のpH調整液を得た。pH調整液中の遊離ヨウ素濃度は0.164重量%であった。上記色差計を用いてpH調整液の色調を測定したところ、APHA No.は2870(測定上限値)であった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る製造方法は、例えばリチウム二次電池に用いられるヨウ化リチウムの製造に好適に利用することができる。