特許第6180736号(P6180736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6180736ワイヤーボンディング用の超音波トランスデューサ、ならびに超音波トランスデューサを使ってワイヤーボンドを形成する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180736
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ワイヤーボンディング用の超音波トランスデューサ、ならびに超音波トランスデューサを使ってワイヤーボンドを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   H01L21/60 301G
【請求項の数】41
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-524781(P2012-524781)
(86)(22)【出願日】2010年8月10日
(65)【公表番号】特表2013-506271(P2013-506271A)
(43)【公表日】2013年2月21日
(86)【国際出願番号】US2010044976
(87)【国際公開番号】WO2011019692
(87)【国際公開日】20110217
【審査請求日】2013年8月6日
【審判番号】不服2015-10351(P2015-10351/J1)
【審判請求日】2015年6月3日
(31)【優先権主張番号】61/233,237
(32)【優先日】2009年8月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506395943
【氏名又は名称】クリック アンド ソッファ インダストリーズ、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】デアンジェリス、ドミニク、エー.
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ、ゲリー、ダブリュー.
【合議体】
【審判長】 飯田 清司
【審判官】 小田 浩
【審判官】 加藤 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/122499(WO,A2)
【文献】 特開昭59−230472(JP,A)
【文献】 特開昭63−242479(JP,A)
【文献】 特開昭59−230473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーボンディング機械のトランスデューサに連結されたボンディングツールを使ってワイヤーボンドを形成する方法であって、
前記トランスデューサは単一のドライバを含むものであり、この方法は、
(1)前記ドライバに第1の周波数で電気エネルギーを印加する工程と、
(2)前記第1の周波数で電気エネルギーを印加すると同時に、前記ドライバに第2の周波数で電気エネルギーを印加する工程であって、前記第1の周波数および前記第2の周波数は互いに異なるものである、前記印加する工程と
を有し、
前記ドライバは積層された複数の圧電素子を含み、当該複数の圧電素子の各々は、積層方向と直交する第1の電極面と、この第1の電極面と反対側の面に設けられた第2の電極面とを有し、各電極面には、一体の圧電素子にノッチ/溝が設けられ、このノッチ/溝により前記各電極面と平行な方向に分離された少なくとも2つの領域が形成されているものであり、
前記(1)及び(2)の工程は、前記少なくとも2つの領域を通して前記複数の圧電素子の各々に少なくとも2つの電気通路で電気エネルギーを印可することで、前記トランスデューサに連結されたボンディングツールの先端部にスクラブ運動を生じさせるものである
方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、工程(1)は、約115kHzである前記第1の周波数で前記ドライバに電気エネルギーを印加する工程を含むものである方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、工程(2)は、約120kHzである前記第2の周波数で前記ドライバに電気エネルギーを印加する工程を含むものである方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、工程(1)は、約115kHzである前記第1の周波数で電気エネルギーを前記ドライバに印加する工程を含み、工程(2)は、約120kHzである前記第2の周波数で電気エネルギーを前記ドライバに印加する工程を含むものである方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、工程(1)は、前記複数の圧電素子の各々の前記少なくとも2つの領域のうち第1の領域に前記第1の周波数で電気エネルギーを印加する工程を含み、工程(2)は、前記複数の圧電素子の各々の前記少なくとも2つの領域のうち第2の領域に前記第2の周波数で電気エネルギーを印加する工程を含むものである方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記第1の周波数および前記第2の周波数で前記ドライバに前記電気エネルギーが印加されることにより、前記ボンディングツールの先端部による非直線的スクラブが生じるものである方法。
【請求項7】
ワイヤーボンディング機械のトランスデューサに連結されたボンディングツールを使ってワイヤーボンドを形成する方法であって、
前記トランスデューサはドライバを含むものであり、
前記ドライバは、前記トランスデューサを駆動して、上記ボンディングツールの先端部にボンディング面と平行なXY面内のスクラブ運動を生じさせるものであり、
この方法は、
(1)前記ドライバに第1の周波数で電気エネルギーを印加して前記ボンディングツールの先端部を上記XY面内の第1の方向に駆動する工程と、
(2)前記ドライバに第2の周波数で電気エネルギーを印加して前記ボンディングツールの先端部を上記XY面内の第2の方向に駆動する工程であって、前記第1の方向は前記第2の方向とは異なるものである、前記駆動する工程と
を有し、
前記ドライバは、複数の圧電素子からなる単一の積層のみを含むものである
方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記ドライバへの前記第1の周波数での電気エネルギー印加は、前記ドライバへの前記第2の周波数での電気エネルギー印加と同時に行われるものである方法。
【請求項9】
請求項7記載の方法において、前記ドライバへの前記第1の周波数での電気エネルギー印加は、前記ドライバへの前記第2の周波数での電気エネルギー印加と同時に行われないものである方法。
【請求項10】
請求項7記載の方法において、工程(1)は、約115kHzである前記第1の周波数で前記ドライバに電気エネルギーを印加する工程を含むものである方法。
【請求項11】
請求項7記載の方法において、工程(2)は、約120kHzである前記第2の周波数で前記ドライバに電気エネルギーを印加する工程を含むものである方法。
【請求項12】
請求項7記載の方法において、工程(1)は、約115kHzである前記第1の周波数で電気エネルギーを前記ドライバに印加する工程を含み、工程(2)は、約120kHzである前記第2の周波数で電気エネルギーを前記ドライバに印加する工程を含むものである方法。
【請求項13】
請求項7記載の方法において、工程(1)で前記電気エネルギーが印加されることにより、前記ワイヤーボンディング機械のX軸に実質的に沿った前記ボンディングツール先端部のスクラブが生じ、工程(2)で前記電気エネルギーが印加されることにより、前記ワイヤーボンディング機械のY軸に実質的に沿った前記ボンディングツール先端部のスクラブが生じるものである方法。
【請求項14】
請求項7記載の方法において、前記複数の圧電素子の各々は、第1の電極面と、この第1の電極面と反対側の面に設けられた第2の電極面とを有し、各電極面には、一体の圧電素子にノッチ/溝が設けられ、このノッチ/溝により前記各電極面と平行な方向に分離された少なくとも2つの領域が形成されているものであり、
前記(1)及び(2)の工程は、前記少なくとも2つの領域を通して前記複数の圧電素子の各々に少なくとも2つの電気通路で電気エネルギーを印可するものである方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、工程(1)は、前記複数の圧電素子の各々の前記少なくとも2つの領域のうち第1の領域に前記第1の周波数で電気エネルギーを印加する工程を含み、工程(2)は、前記複数の圧電素子の各々の前記少なくとも2つの領域のうち第2の領域に前記第2の周波数で電気エネルギーを印加する工程を含むものである方法。
【請求項16】
請求項7記載の方法において、前記第1の周波数および前記第2の周波数で前記ドライバに前記電気エネルギーが印加されると、前記ボンディングツールの先端部による非直線的スクラブが生じるものである方法。
【請求項17】
請求項15記載の方法において、前記ドライバは、前記第1の周波数で電気エネルギーが印加されると前記第1の方向に変形するように構成された少なくとも1つの圧電素子と、前記第2の周波数で電気エネルギーが印加されると前記第2の方向に変形するように構成された前記少なくとも1つの圧電素子とを含み、前記第1の方向および前記第2の方向は互いに異なるものである方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記第1の方向は、前記ワイヤーボンディング機械のX軸に沿ったものであり、前記第2の方向は、前記ワイヤーボンディング機械のY軸に沿ったものである方法。
【請求項19】
請求項17記載の方法において、前記第1の方向は、前記ワイヤーボンディング機械のX軸に沿ったものであり、前記第2の方向は、XY剪断方向に沿ったものである方法。
【請求項20】
請求項17記載の方法において、前記第1の方向は、前記ワイヤーボンディング機械のY軸に沿ったものであり、前記第2の方向は、XY剪断方向に沿ったものである方法。
【請求項21】
ワイヤーボンディング操作に使用するトランスデューサであって、
(a)ボンディングツールを支持するように構成された細長い本体部分と、
(b)前記細長い本体部分に振動をもたらす単一のドライバであって、当該ドライバは積層された複数の圧電素子を含み、当該複数の圧電素子の各々は、第1の電極面と、この第1の電極面と反対側の面に設けられた第2の電極面とを有し、各電極面には、一体の圧電素子にノッチ/溝が設けられ、このノッチ/溝により前記各電極面と平行な方向に分離された少なくとも2つの領域が形成されているものであり、
前記()及び()の工程は、前記少なくとも2つの領域を通して前記複数の圧電素子の各々に少なくとも2つの電気通路で電気エネルギーを印可するものである
トランスデューサ。
【請求項22】
請求項21記載のトランスデューサにおいて、第1の周波数の電気エネルギーは、前記複数の圧電素子の各々の前記少なくとも2つの領域のうち第1の領域に印加されるように構成され、第2の周波数の電気エネルギーは、前記複数の圧電素子の各々の前記少なくとも2つの領域のうち第2の領域に印加されるように構成されるものであるトランスデューサ。
【請求項23】
請求項22記載のトランスデューサにおいて、前記第1の周波数および前記第2の周波数で前記ドライバに前記電気エネルギーが印加されることにより、前記ボンディングツールの先端部による非直線的スクラブが生じるものであるトランスデューサ。
【請求項24】
請求項22記載のトランスデューサにおいて、前記第1の周波数は約115kHzであり、前記第2の周波数は約120kHzであるトランスデューサ。
【請求項25】
請求項22記載のトランスデューサにおいて、前記第1の領域に前記第1の周波数で電気エネルギーが印加されることにより、前記第1の方向に前記ボンディングツール先端部のスクラブが生じ、前記第2の領域に前記第2の周波数で電気エネルギーが印加されることにより、前記第2の方向に前記ボンディングツール先端部のスクラブが生じ、前記第1の方向は前記第2の方向とは異なるものであるトランスデューサ。
【請求項26】
請求項25記載のトランスデューサにおいて、前記第1の方向は、前記ワイヤーボンディング機械のX軸に沿って延長し、前記第2の方向は、前記ワイヤーボンディング機械のY軸に沿って延長するものであるトランスデューサ。
【請求項27】
請求項25記載のトランスデューサにおいて、前記第1の方向は、当該トランスデューサの長手方向の軸と実質的に平行に延長し、前記第2の方向は、当該トランスデューサの長手方向の軸と実質的に垂直に延長するものであるトランスデューサ。
【請求項28】
請求項25記載のトランスデューサにおいて、前記第1の方向は、前記第2の方向に実質的に直交するものあるトランスデューサ。
【請求項29】
請求項21記載のトランスデューサにおいて、前記本体部分にはドライバ開口部が形成され、前記複数の圧電素子は前記ドライバ開口部内に配置されるものであるトランスデューサ。
【請求項30】
ワイヤーボンディング操作に使用するトランスデューサであって、
(a)ボンディングツールを支持するように構成された細長い本体部分と、
(b)前記細長い本体部分に振動をもたらすドライバであって、このトランスデューサを駆動して、上記ボンディングツールの先端にボンディング面と平行なXY面内のスクラブ動作を生じさせるものであり、
当該ドライバは、複数の圧電素子からなる単一の積層のみを含むものであり、電気エネルギーが印加されると上記XY面内の第1の方向に変形するように構成された少なくとも1つの圧電素子と、電気エネルギーが印加されると上記XY面内の第2の方向に変形するように構成された少なくとも1つの圧電素子とを含み、前記第1の方向および前記第2の方向は互いに異なるものである、前記ドライバと
を有するトランスデューサ。
【請求項31】
請求項30記載のトランスデューサにおいて、前記第1の方向に変形するように構成された前記少なくとも1つの圧電素子は、第1の周波数で電気エネルギーが印加されると前記第1の方向に変形し、前記第2の方向に変形するように構成された前記少なくとも1つの圧電素子は、第2の周波数で電気エネルギーが印加されると前記第2の方向に変形し、前記第1の周波数は前記第2の周波数とは異なるものであるトランスデューサ。
【請求項32】
請求項30記載のトランスデューサにおいて、前記第1の方向は、ワイヤーボンディング機械のX軸に沿ったものであり、前記第2の方向は、前記ワイヤーボンディング機械のY軸に沿ったものであるトランスデューサ。
【請求項33】
請求項30記載のトランスデューサにおいて、前記第1の方向は、ワイヤーボンディング機械のX軸に沿ったものであり、前記第2の方向は、XY剪断方向に沿ったものであるトランスデューサ。
【請求項34】
請求項30記載のトランスデューサにおいて、前記第1の方向は、ワイヤーボンディング機械のY軸に沿ったものであり、前記第2の方向は、XY剪断方向に沿ったものであるトランスデューサ。
【請求項35】
請求項31記載のトランスデューサにおいて、前記第1の周波数は約115kHzであり、前記第2の周波数は約120kHzであるトランスデューサ。
【請求項36】
請求項31記載のトランスデューサにおいて、
(1)前記第2の周波数で電気エネルギーが印加されることなく、前記第1の周波数で電気エネルギーが印加されることにより、前記第1の方向に前記ボンディングツール先端部のスクラブが生じ、
(2)前記第1の周波数で電気エネルギーが印加されることなく、前記第2の周波数で電気エネルギーが印加されることにより、前記第2の方向に前記ボンディングツール先端部のスクラブが生じ、前記第1の方向は前記第2の方向とは異なるものであり、
(3)前記第1の周波数および前記第2の周波数で電気エネルギーが印加されることにより、前記ボンディングツール先端部の非直線的スクラブが生じるものである
トランスデューサ。
【請求項37】
請求項36記載のトランスデューサにおいて、前記スクラブの前記第1の方向は、前記ワイヤーボンディング機械のX軸に沿って延長し、前記スクラブの前記第2の方向は、前記ワイヤーボンディング機械のY軸に沿って延長するものであるトランスデューサ。
【請求項38】
請求項36記載のトランスデューサにおいて、前記スクラブの前記第1の方向は、当該トランスデューサの長手方向の軸と実質的に平行に延長し、前記スクラブの前記第2の方向は、当該トランスデューサの長手方向の軸と実質的に垂直に延長するものであるトランスデューサ。
【請求項39】
請求項36記載のトランスデューサにおいて、前記スクラブの前記第1の方向は、前記スクラブの前記第2の方向に実質的に直交するものであるトランスデューサ。
【請求項40】
請求項30記載のトランスデューサにおいて、前記第1の方向および前記第2の方向は、互いに実質的に直交するものであるトランスデューサ。
【請求項41】
請求項30記載のトランスデューサにおいて、前記本体部分にはドライバ開口部が形成され、前記複数の圧電素子は前記ドライバ開口部内に配置されるものであるトランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2009年8月12日付けで提出された米国仮特許出願第61/233,237号(この参照によりその内容が本明細書に組み込まれる)に対する利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、ワイヤーボンディング機械の動作に関し、より具体的には、ワイヤーボンドの形成に関連する改善された超音波トランスデューサおよび超音波トランスデューサを操作する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体装置の処理およびパッケージングでは、ワイヤーボンディングが、パッケージ内の2つの位置間(半導体ダイのダイパッドとリードフレームのリードとの間など)の電気的相互接続を提供する主な方法であり続けている。より具体的にいうと、ワイヤーボンダー(ワイヤーボンディング機械とも呼ばれる)を使って、電気的に相互接続すべき各位置間にワイヤーループが形成される。ワイヤーボンディング機械は、導電性バンプの形成にも使用できる(それらのバンプは、ワイヤーループに関連して使用しても、しなくてもよい)。
【0004】
例示的な従来のワイヤーボンディングシーケンスとしては、次のものがある。(1)ボンディングツールから延出したワイヤーの端部にイニシャルボール(free air ball)を形成する。(2)前記ボールを使って、半導体ダイのダイパッド上に第1のボンドを形成する。(3)前記ダイパッドとリードフレームのリードとの間で望ましい形状にワイヤーを延長する。(4)前記リードフレームの前記リードに前記ワイヤーをステッチボンディングする。(5)前記ワイヤーを切断する。(a)ワイヤーループの端部および(b)ボンディング位置(例えば、ダイパッド、リード)を接合する際は、超音波エネルギー、熱音響(サーモソニック)エネルギー、熱圧縮エネルギーを含む種々の接合エネルギーを使用できる。
米国特許第5,595,328号(「SELF ISOLATING ULTRASONIC TRANSDUCER」(自己絶縁型超音波トランスデューサ))、第5,699,953号(「MULTI RESONANCE UNIBODY ULTRASONIC TRANSDUCER」(複合共振ユニボディ超音波トランスデューサ))、第5,884,834号(「MULTI−FREQUENCY ULTRASONIC WIRE BONDER AND METHOD」(多周波超音波ワイヤーボンダーとその方法))、および第7,137,543号(「INTEGRATED FLEXURE MOUNT SCHEME FOR DYNAMIC ISOLATION OF ULTRASONIC TRANSDUCERS」(超音波トランスデューサ動的絶縁用の一体型屈曲マウント方式))は超音波トランスデューサに関するもので、この参照によりこれら全体が本明細書に組み込まれる。超音波ボンディングエネルギーは、通常、超音波トランスデューサを使って付与され、そのトランスデューサにボンディングツールが取り付けられる。そのトランスデューサには、通常、圧電素子(例えば、圧電性結晶、圧電セラミック)のスタックなどのドライバが含まれる。ドライバに与えられた電気エネルギーは、機械的なエネルギーに変換され、ボンディングツールの先端部にこするようなスクラブ運動(scrubbing motion)をもたらす。このボンディングツール先端部のスクラブ運動は、通常、トランスデューサの長手方向の軸に沿った直線的な動きである。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 米国特許第5699953号明細書
【特許文献2】 米国特許第5595328号明細書
【特許文献3】 米国特許第5884834号明細書
【特許文献4】 米国特許第7137543号明細書
【特許文献5】 米国特許第5890643号明細書
【特許文献6】 米国特許第5816476号明細書
【特許文献7】 米国特許第6286747号明細書
【特許文献8】 米国特許第5578888号明細書
【特許文献9】 米国特許第6995498号明細書
【特許文献10】 米国特許第6672503号明細書
【特許文献11】 米国特許第5469011号明細書
【特許文献12】 米国特許第7002283号明細書
【特許文献13】 米国特許第7441689号明細書
【特許文献14】 米国特許第6299051号明細書
【特許文献15】 米国特許第6244498号明細書
【特許文献16】 米国特許第6116490号明細書
【特許文献17】 米国特許第5890643号明細書
【特許文献18】 米国特許第5832412号明細書
【特許文献19】 米国特許第5795419号明細書
【特許文献20】 米国特許第5699950号明細書
【特許文献21】 米国特許第5884835号明細書
【特許文献22】 米国特許第5603445号明細書
【特許文献23】 米国特許第5494207号明細書
【特許文献24】 米国特許第7611039号明細書
【特許文献25】 米国特許第6648205号明細書
【特許文献26】 米国特許第6190497号明細書
【特許文献27】 米国特許出願公開第2010/0127599号明細書
【特許文献28】 米国特許出願公開第2009/0248364号明細書
【特許文献29】 米国特許出願公開第2007/0283985号明細書
【特許文献30】 米国特許出願公開第2006/0022016号明細書
【特許文献31】 米国特許出願公開第2006/0000870号明細書
【特許文献32】 米国特許出願公開第2005/0122003号明細書
【特許文献33】 米国特許出願公開第2004/0251780号明細書
【特許文献34】 米国特許出願公開第2004/0250621号明細書
【特許文献35】 米国特許出願公開第2004/0007065号明細書
【特許文献36】 米国特許出願公開第2003/0134223号明細書
【特許文献37】 国際公開第2008/122499号
【特許文献38】 特開平06−045411号公報
【特許文献39】 特開平06−005666号公報
【特許文献40】 特開平10−154722号公報
【特許文献41】 特開2005−252978号公報
【特許文献42】 特開平06−204302号公報
【特許文献43】 特開平06−204302号公報
【特許文献44】 特開昭63−118715号公報
【特許文献45】 特開昭63−239834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ワイヤーボンディング機械に関連して使用するためのトランスデューサを改善し、またトランスデューサを使ってワイヤーボンドを形成する方法を改善することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な一実施形態によれば、トランスデューサに連結されたボンディングツールを使ってワイヤーボンドを形成する方法が提供される。この方法は、(1)前記トランスデューサのドライバに第1の周波数で電気エネルギーを印加する工程と、(2)前記第1の周波数で電気エネルギーを印加すると同時に、前記ドライバに第2の周波数で電気エネルギーを印加する工程であって、前記第1の周波数および前記第2の周波数は互いに異なるものである、前記印加する工程とを含む。
【0008】
本発明の別の例示的一実施形態によれば、トランスデューサに連結されたボンディングツールを使ってワイヤーボンドを形成する別の方法が提供される。この方法は、(1)前記トランスデューサのドライバに第1の周波数で電気エネルギーを印加して前記ボンディングツールの先端部を第1の方向に駆動する工程と、(2)前記ドライバに第2の周波数で電気エネルギーを印加して前記ボンディングツールの先端部を第2の方向に駆動する工程であって、前記第1の方向は前記第2の方向とは異なるものである、前記駆動する工程工程とを含む。
【0009】
本発明の別の例示的一実施形態によれば、ワイヤーボンディング操作に使用するトランスデューサが提供される。前記トランスデューサは、ボンディングツールを支持するように構成された細長い本体部分を含む。前記トランスデューサは、前記細長い本体部分に振動をもたらすドライバも含んでおり、当該ドライバは複数の圧電素子を含み、当該複数の圧電素子の各々は、互いに電気的に絶縁された少なくとも2つの領域に分離される。
【0010】
本発明の別の例示的一実施形態によれば、ワイヤーボンディング操作に使用するトランスデューサが提供される。前記トランスデューサは、ボンディングツールを支持するように構成された細長い本体部分を含む。このトランスデューサは、前記細長い本体部分に振動をもたらすドライバも含み、当該ドライバは、電気エネルギーを受け取って前記ボンディングツール先端部に非直線的スクラブをもたらすように構成される。
【0011】
本発明の別の例示的一実施形態によれば、ワイヤーボンディング操作に使用するトランスデューサが提供される。前記トランスデューサは、ボンディングツールを支持するように構成された細長い本体部分を含む。このトランスデューサは、前記細長い本体部分に振動をもたらすドライバも含み、当該ドライバは、電気エネルギーが印加されると第1の方向に変形するように構成された少なくとも1つの圧電素子と、電気エネルギーが印加されると第2の方向に変形するように構成された少なくとも1つの圧電素子とを含み、前記第1の方向および前記第2の方向は互いに異なる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読むことにより最もよく理解される。一般的な慣行に従い、図面の種々の特徴は縮尺どおりでないことに留意されたい。むしろ種々の特徴の寸法は、明瞭性のため適宜変更または縮小されている。図面に含まれる図は以下のとおりである。
図1図1は、本発明の種々の例示的な実施形態を説明する上で有用な、ワイヤーボンディング機械のトランスデューサとその関連構成要素との斜視図である。
図2A図2A〜2Bは、本発明の例示的な一実施形態に係るトランスデューサに使用するための圧電素子の正面および背面斜視図である。
図2B図2A〜2Bは、本発明の例示的な一実施形態に係るトランスデューサに使用するための圧電素子の正面および背面斜視図である。
図2C図2Cは、図2A〜2Bの圧電素子の正面図である。
図2D図2Dは、本発明の例示的な一実施形態に係るトランスデューサに関連付けて使用するためのシム電極の正面図である。
図3A図3A〜3Cおよび図4Aは、本発明の例示的な諸実施形態に係るトランスデューサに使用するための圧電素子スタックのブロック図である。
図3B図3A〜3Cおよび図4Aは、本発明の例示的な諸実施形態に係るトランスデューサに使用するための圧電素子スタックのブロック図である。
図3C図3A〜3Cおよび図4Aは、本発明の例示的な諸実施形態に係るトランスデューサに使用するための圧電素子スタックのブロック図である。
図4A図3A〜3Cおよび図4Aは、本発明の例示的な諸実施形態に係るトランスデューサに使用するための圧電素子スタックのブロック図である。
図4B図4Bは、本発明の例示的な諸実施形態に係るトランスデューサを使ってワイヤーボンディングされる装置の一部のブロック図である。
図4C図4Cは、本発明の例示的な諸実施形態に係るトランスデューサに有用な圧電素子の複数のブロック図を含む。
図4D図4D〜4Jは、本発明の例示的な諸実施形態に係るトランスデューサに使用するための圧電素子スタックのブロック図である。
図4E図4D〜4Jは、本発明の例示的な諸実施形態に係るトランスデューサに使用するための圧電素子スタックのブロック図である。
図4F図4D〜4Jは、本発明の例示的な諸実施形態に係るトランスデューサに使用するための圧電素子スタックのブロック図である。
図4G図4D〜4Jは、本発明の例示的な諸実施形態に係るトランスデューサに使用するための圧電素子スタックのブロック図である。
図4H図4D〜4Jは、本発明の例示的な諸実施形態に係るトランスデューサに使用するための圧電素子スタックのブロック図である。
図4I図4D〜4Jは、本発明の例示的な諸実施形態に係るトランスデューサに使用するための圧電素子スタックのブロック図である。
図4J図4D〜4Jは、本発明の例示的な諸実施形態に係るトランスデューサに使用するための圧電素子スタックのブロック図である。
図5A図5A〜5Bは、本発明の例示的な一実施形態に係るトランスデューサに使用するための別の圧電素子スタックの図である。
図5B図5A〜5Bは、本発明の例示的な一実施形態に係るトランスデューサに使用するための別の圧電素子スタックの図である。
図6A図6A〜6Bは、本発明の付加的な例示的実施形態に係るトランスデューサに使用するための圧電素子スタックの付加的な構成を示す2つの図である。
図6B図6A〜6Bは、本発明の付加的な例示的実施形態に係るトランスデューサに使用するための圧電素子スタックの付加的な構成を示す2つの図である。
図7A図7A〜7Cは、本発明の例示的な諸実施形態に係るボンディングツール先端部のスクラブパターンを示す図である。
図7B図7A〜7Cは、本発明の例示的な諸実施形態に係るボンディングツール先端部のスクラブパターンを示す図である。
図7C図7A〜7Cは、本発明の例示的な諸実施形態に係るボンディングツール先端部のスクラブパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ワイヤーボンディングの操作に関連して使用するトランスデューサの動作および/または設計の各種改善に関する。本発明の特定の例示的実施形態によれば、ワイヤーボンディング機械の超音波トランスデューサは、2若しくはそれ以上のモードで同時に動作する(2若しくはそれ以上の電気エネルギー周波数がトランスデューサのドライバに同時に印加される)。複数の周波数を同時に適用すると、ボンディングツールの先端部に非直線的なスクラブ運動がもたらされる。この非直線的な振動パターンは、例えば円形パターン、楕円形パターン、またはメッシュ形状パターンといったリサジュータイプのパターンなどである。前記スクラブパターンは平面状(ボンディングの高さで実質的に平面状)または3次元状(ボンディングの高さで非平面状)にできる。
【0014】
上記のようなトランスデューサ用の例示的技術としては、圧電素子(例えば、結晶)の個々の電極を分割して、各素子に少なくとも2つ電気的に絶縁された領域を形成するものがある。例えば、圧電素子スタックは、前記分割により、特定の動作周波数における独立した振動モード形状に非常に近似した効率的な励起を提供することができる。例えば、ヨー曲げ(yaw bending)モードは、ボンディングツールの先端部でワイヤーボンディング機械のX軸に沿ったスクラブをもたらし、長手方向(longitudinal)モードは、ボンディングツールの先端部でワイヤーボンディング機械のY軸に沿ったスクラブをもたらす。前記トランスデューサは、これらの動作モード・周波数のうち任意の1つだけで動作することにより、1次元の独立した運動またはシーケンスに基づく運動を提供することもできる。
【0015】
本明細書で開示する本発明の特定の例示的実施形態により、多方向(すなわち非直線的な)振動のスクラブエネルギーがボンディングツールの先端部に印加され、溶接面に隣接した接合領域の変形または副次的損傷が結果的に軽減される。従来の技術と比べ、前記多方向スクラブ運動は、接合面のX方向とY方向双方におけるボール接合の均一性と、所与のボールサイズに関する単位面積あたりの剪断強度とを高める。また、この多方向スクラブ運動は、特にスクラブ方向へのパッドスプラッシュ損傷が起こりやすいワイヤーボンディング(例えば、アルミニウムパッドへの銅ワイヤーボンディング)への応用でも有益である。すなわち、多方向スクラブを使うと、ワイヤーボンド(例えば、ボールボンド)周囲のパッドスプラッシュをより均等に分布させることができる。
【0016】
また、本発明の特定の例示的な実施形態は、例えばワイヤーまたはリードフィンガーなど装置の幾何学的構造を位置合わせするため、複数の方向から選択される1方向へ、独立した1次元振動エネルギーを提供する。上記のような1次元振動エネルギーをボンディング位置に応じて望ましい方向へ提供し(例えば、ボンディング位置の形状に応じて方向を選択し)、ワイヤーまたはリードフィンガーなど装置の幾何学的構造との位置合わせを行うと、傾向としてより一貫したエネルギー送達が行え、また傾向として所与の装置により生じる共振振動の影響を軽減できる。
【0017】
ここで図1を参照すると、超音波トランスデューサ100の斜視図が示されている(図中、トランスデューサ100は軸「A」に沿って延在する細長い本体部分を有する)。トランスデューサ100は、ワイヤーボンディング機械のボンドヘッドにトランスデューサ100を取り付けるため使用される取り付けフランジ102aおよび102bを含む。圧電素子104a、104b、104c、および104d(例えば、圧電性結晶、圧電セラミック)は、トランスデューサ100の前記本体部分に形成された開口部内でスタック状に構成される。圧電素子104a、104b、104c、および104dのスタックは、トランスデューサ100のドライバである。これらの素子は、導電性のシム電極106a、106b、106c、および106dにより分離される。所与の周波数で端子108aおよび108bに電気エネルギーが印加されると(例えば、108aが正の端子で108bが負の端子)、シム電極106a、106b、106c、および106dに電気エネルギーが印加される。所与の周波数で電気エネルギーを与えると前記素子が伸縮することにより、ボンディングツール110の先端部110aが軸「A」(例えば、ワイヤーボンディング機械のY軸)に沿ってスクラブ運動する。ただし、一定の用途では、前記トランスデューサについて、従来の単一方向(Y軸)スクラブとは対照的に、多方向スクラブをより柔軟に選択できることが望ましい。他の用途では、ボンディング位置の形状または構成(例えば、ボンドパッド、リード)に応じ、スクラブ方向を変更することが望ましい。図1は、前記ドライバ(前記結晶のスタック)を収容する開口部を伴った「ユニボディ」スタイルのトランスデューサを例示しているが、本発明の開示は、「ホーン」スタイルのトランスデューサ(その場合、例えばドライバは、トランスデューサ本体の端部でボンディングツールの先端部から離して設けられる)など他のトランスデューサ設計に適用することもできる。
【0018】
図2Aは素子204aの正面斜視図であり、図2Bは素子204aの背面斜視図である。素子204aの正面は正の電極(例えば、銀、ニッケルなどの材料で形成された導電性の電極)で、素子204aの背面は負の電極である。図1に示した素子104a、104b、104c、および104dと対照的に、素子204aの正の電極はノッチまたは溝204a3により分割され、素子204aの負の電極はノッチまたは溝204b3により分割される。これにより、前記正の電極は、電気的に絶縁された2つの領域204a1および204a2に分割され、前記負の電極は、電気的に絶縁された2つの領域204b1および204b2に分割される。そのため、電気エネルギーは、電気的に絶縁された2つの経路(第1の経路は領域204a1および204b1の間、第2の経路は領域204a2および204b2の間)を通じて前記素子に付与される。以下説明するように、電気的に絶縁された領域へと前記圧電素子を分割することにより、電気エネルギーを複数の周波数で前記ドライバに随時印加できるようになるため、ボンディングツールの先端部に望ましいスクラブ運動が得られる。
【0019】
図2Cは、素子204aの正面図である。図2Dは、トランスデューサ開口部内のスタック中で隣接しあう圧電素子間に配置できる電極206aの正面図である。素子204aと同様、シム電極206aも、電気的に絶縁された2つの領域に分割される。図2Dでは、絶縁領域206a3により、導電領域206a1および導電領域206a2が分割されている。
【0020】
図3Aは、(図1に示したトランスデューサ100の開口部内の素子104a、104b、104c、および104dの構成と同様、)トランスデューサの開口部内に構成可能な圧電素子のスタックを例示した上面ブロック図である。このスタックには、図2A〜2Cの素子204aと、同様な3つの素子204b、204c、および204dが含まれる。素子204a、204b、204c、および204dは、それぞれ図示したように各素子の中央領域で分割された電極を有する。このスタックには、図2Dのシム電極206aのほか、シム電極206b、206c、206d、および206eも含まれる。この特定の構成では、正のシム電極のみが分割され(206aおよび206c)、負のシム電極は、すべて電気的に結合されている(例えばアースに)。図3Bおよび3Cは、図3Aのスタックをいかに電気信号に接続できるか示した2つの例である。特に図3Bを参照すると、第1の周波数f1が当該スタックの右側部分に電気的に連結され、第2の周波数f2が当該スタックの左側部分に電気的に連結されている。言うまでもなく、f1およびf2は、所与の用途、トランスデューサ、および望ましいスクラブに所望される任意の周波数であってよい。f1およびf2の例示的周波数は、115kHzおよび120kHzである。図3Bに示すように、周波数f1用の正の接続部(+f1)は、シム電極206aおよび206bの右側部分に電気的に連結される。同様に、周波数f1用の負の接続部(−f1)は、シム電極206b、206d、および206eに電気的に連結される。周波数f2用の正の接続部(+f2)は、シム電極206aおよび206bの左側部分に電気的に連結される。同様に、周波数f2用の負の接続部(−f2)は、シム電極206b、206d、および206eに電気的に連結される。これら2つの周波数f1、f2をそれぞれの圧電素子領域に同時に印加することにより、前記トランスデューサに連結されたボンディングツールの先端部に非直線的スクラブが適用される。
【0021】
図3Cは、図3Aの結晶スタックの別の例示的構成である。図3Bと対照的に、周波数f1およびf2(+f1/f2、−f1/f2)のどちらも、電極を通じて前記結晶の左側領域および右側領域の双方に適用される。これら電気信号は周波数f1およびf2で同時に印加されるが、望ましい結果を実現するため、当該信号の位相構成が変更される。例えば、望ましい結果を実現するため、前記圧電素子の双方の領域(左側および右側の領域)における周波数f1の信号は、互いに同位相にし、前記素子の双方の領域(左側および右側の領域)における周波数f2の信号は、互いに位相差を設ける(互いに180度位相をずらす)ことができる。図3Bと同様、この構成では、ボンディングツールの先端部で、リサジュータイプのスクラブ運動などの非直線的スクラブが得られる。
【0022】
図4Aは、トランスデューサに含まれる圧電素子の別の例示的構成を例示したものである。この例において、素子は、異なる方向に変形する(例えば、膨張し、ゆがみ、ねじれる)よう設けられる。この例において、素子404aおよび404b(図4A中、上方の2つの圧電素子)は、集合的に、ボンディングツールの先端部で第1の方向(例えば、Y方向(Y運動))にスクラブをもたらすよう変形し、素子404cおよび404d(図4A中、下方の2つの圧電素子)は、ボンディングツールの先端部で、前記第1の方向と異なる第2の方向(例えば、X方向(X運動))にスクラブをもたらすように構成されている。この圧電素子群に適用される周波数(周波数f1およびf2)は、異なるものであっても、同じものであってもよい。
【0023】
図4A〜4Jに関する(他の図面にも適用される)以下の説明では、所与の方向への圧電素子変形(例えば、膨張、ゆがみ)が必ずしもその方向のボンディングツール先端部のスクラブと等価ではないことを理解すべきである。むしろ、異なる方向に変形する圧電素子を使うと(例えば、分割された圧電素子、分割された圧電電極など他の特徴と組み合わせて)、望ましいトランスデューサ動作モードを効率的に実現できる。例えば、トランスデューサに(そのトランスデューサの単一ドライバに)固有の2つの共振周波数で電気エネルギーが印加されると、ボンディングツールの先端部に望ましい非直線的スクラブ運動がもたらされる。本明細書で図示および説明するように、前記2つの共振周波数の電気エネルギーは、前記ドライバの異なる部分(例えば、異なる方向に変形する素子)に印加できることを理解しなければならない。
【0024】
図示した例において、前記上方の2つの圧電素子は、集合的に、ボンディングツールの先端部で(図1に示した軸「A」に沿って)Yスクラブをもたらし、前記下方の2つの圧電素子は、集合的に、ボンディングツールの先端部で(図1に示した軸「A」に垂直に)Xスクラブをもたらす。この例では、素子404aがそれ自体で前記Yスクラブをもたらさず、素子404aおよび404bが集合的にトランスデューサの前記Yスクラブ振動モードを効率的に励起してもよいことを理解すべきである。また、スクラブ方向はXおよびY(この場合、XおよびY方向は互いに垂直)に限定されず、互いに異なるいかなる2方向であってもよいことを理解すべきである。言うまでもなく、従来のワイヤーボンディング用途の多くでは、ダイ上のボンドパッドとそれに対応するリードフレーム上のリードがX軸およびY軸の一方に沿って位置合わせされる傾向があるため、そのような構成が特に望ましい場合もある。
【0025】
図4Bは、例示的な半導体装置410(例えば、半導体ダイ410、リードフレーム410)の一部を例示したものである。装置410には、行に構成された第1の複数のボンディング位置410a(例えば、ボンドパッド410a、リード410a)と、全体としてボンディング位置410aの行に垂直な列に構成された第2の複数のボンディング位置410b(例えば、ボンドパッド410b、リード410b)とが含まれる。図4Bから明らかなように、ボンディング位置410a、410bの形状は正方形ではなく、長方形である。このような場合は、所与のボンディング位置の形状に応じて異なるスクラブ運動を使って、前記ボンディング位置410a、410b上にワイヤーボンドを形成することが望ましい。すなわち、ボンディング位置410aでワイヤーの一部を接合(することにより、例えば、ワイヤーループの第1のボンドまたは第2のボンドなどワイヤーループのワイヤーボンドを形成)する場合、ボンディングツールの先端部でY軸に沿ったスクラブ(図中の凡例を参照)をもたらすようトランスデューサを構成することが望ましい。同様に、ボンディング位置410bでワイヤーの一部を接合する場合、ボンディングツールの先端部でX軸に沿ったスクラブをもたらすようトランスデューサを構成することが望ましい。
【0026】
言うまでもなく、スクラブ方向を変更する理由は、前記ボンディング位置の形状だけにあるのではない。もう1つの例示的な理由は、ダイパッドのスプラッシュまたはその関連問題に関する。当業者であれば、半導体装置の製造元が装置小型化、ひいてはボンディング位置(例えば、隣接しあうダイパッド)同士の間隔縮小に努め続けることが理解されるであろう。ただし、ボンディング位置の間隔を縮小させると、パッドのスプラッシュで電気的短絡が起こる可能性を高めてしまう。そのようなパッドスプラッシュによる短絡のおそれは、例えば銅ワイヤーでワイヤーボンドを形成する場合、銅の加工硬化でさらに増大する。再び図4Bを参照すると、ボンディング位置410aにワイヤーの一部を接合する場合は、(ボンディング位置410aはX軸上で一行に構成されていることから)隣接するボンディング位置410aの方向にスクラブが生じないようにして、隣接するボンディング位置410aとのパッドスプラッシュのおそれを軽減するため、ボンディングツール先端部にY軸に沿ったスクラブをもたらすようトランスデューサを構成することが望ましい。同様に、ボンディング位置410bにワイヤーの一部を接合する場合は、(ボンディング位置410bはY軸上で一列に構成されていることから)隣接するボンディング位置410bの方向にスクラブが生じないよう、ボンディングツール先端部にX軸に沿ったスクラブをもたらすようトランスデューサを構成すると、隣接するボンディング位置410bとのパッドスプラッシュのおそれが軽減される。
【0027】
ここで図4Aの電気接続部を参照すると、第1の周波数f1用の正の接続は、素子404aおよび404bの正電極(図4A中、406aと示された電極)へと行われ、第1の周波数f1用の負の接続は、素子404aおよび404bの負電極へと行われている(前記負電極をアースに接合することにより)。同様に、第2の周波数f2用の正の接続は、素子404cおよび404dの正電極(図4A中、406cと示された電極)へと行われ、第2の周波数f2用の負の接続は、素子404cおよび404dの負電極へと行われている(前記負電極をアースに接合することにより)。言うまでもなく、図示したように双方の周波数用の負の接続部をまとめて接合し、接地してもよい(すなわち、必要に応じて、電極406b、406d、および406eへの接続部を1つに接合し、接地してもよい)。
【0028】
図4Aでは、周波数信号f1をf1T1、周波数信号f2をf2T2と示しており、ここで「T」は時間である。これは、周波数f1およびf2の電気信号を同時に印加できないためである。言うまでもなく、これらの信号は同時に印加可能であるが、本明細書で説明する例においては、後述するように以下の動作シーケンスで順次印加される。
【0029】
ここで、例示的かつ非限定的な動作シーケンスを図4Aについて説明する。この例示的応用では、従来のダイ(ボンドパッドがダイ外周で正方形構成)とそのダイを支持するリードフレーム(リードが正方形構成)との間でワイヤーループを接合するものと仮定する。このような例では、2方向のうち1つ、すなわちX軸またはY軸に沿ってワイヤーループを延長させることができる。X軸に沿ったワイヤーループのワイヤーボンド(例えば、前記第1のボンドおよび/または第2のボンド)はX軸に沿ったスクラブ(X運動)で形成され、Y軸に沿ったワイヤーループのワイヤーボンドはY軸に沿ったスクラブ(Y運動)で形成されることが望ましい。ここで図4Aを参照すると、Y軸に沿った第1のワイヤーループ群を形成する際、周波数f1の電気エネルギーは時間T1に印加される(f1T1)。上述のように、この電気エネルギーを印加することにより、ボンディングツール先端部にY軸スクラブが生じるという望ましい結果が得られる。前記第1のワイヤーループ群が形成された後、第2のワイヤーループ群がX軸に沿って形成される。この第2のワイヤーループ群を形成する際には、周波数f2の電気エネルギーが時間T2に印加される(f2T2)。上述のように、この電気エネルギーを印加することにより、ボンディングツール先端部にX軸スクラブが生じるという望ましい結果が得られる。この例についてはX軸およびY軸にそれぞれ沿った2つのワイヤーループ群に関連付けて説明したが、他の代替態様も考えられる。例えば、ワイヤーループ群を2つより多く形成してもよい(例えば、第1のワイヤーループ群はf1を使いY軸に沿って、次いでf2を使いX軸に沿って、さらに再びf1を使いY軸に沿って)。さらに、ツール先端部のスクラブ方向を単なるX軸またはY軸スクラブと異なるものにしてもよい。例えば、付加的な若しくは異なるスクラブが可能である(例えば、異なる方向に、同じまたは異なる周波数で変形して、付加的な若しくは異なるツール先端部スクラブ方向を生じる結晶を設けることにより)。
【0030】
さらに、単一ワイヤーボンド(例えば、ボールボンド、ステッチボンド)の形成中、1を超える方向に沿ったスクラブを採用することもできる。例えば、同じワイヤーボンドの形成中、X軸に沿ったスクラブに続けてY軸に沿ったスクラブを行ってもよい。言うまでもなく、他のスクラブ方向も考えられる。
【0031】
当然ながら、前記第1のスクラブおよび前記第2のスクラブの生成に使用する圧電素子の順序は、図4Aの例示と異なるものであってもよい。より具体的にいうと、図4Aでは、前記上方の2つの素子(404A、404B)が集合的にY軸スクラブを生じ、前記下方の2つの素子(404C、404D)が集合的にX軸スクラブを生じる。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。圧電素子のいかなる組み合わせを使って、望ましいスクラブを生成してもよい(例えば、前記第1および第3の素子で第1のスクラブを生成するとともに、前記第2および第4の素子で第2の異なるスクラブを生成することもできる)。同様に、前記トランスデューサにも種々の数の圧電素子を内設できる。
【0032】
また図4Aには示していないが、特定の結果が望まれる場合は、図4Aの構成の前記圧電素子電極を図3Aの素子204a、204b、204c、および204dのように分割できる。さらに、複数の周波数の電気エネルギーを(順次ではなく)同時に印加することもでき、その場合はT1=T2となる。さらに、複数の周波数の電気エネルギーを、特定の周波数間の位相シフトとともに、または位相シフトなしで、各結晶群に印加することもできる。
【0033】
上記の図4Aについて説明したように、所与の圧電素子スタック中の圧電素子(ここで、前記スタックは図1のトランスデューサ100などのトランスデューサの単一ドライバである)は、異なる方向に変形するよう設けられる。図4Cは、4つの素子420、422、424、および426を例示したものである。素子420は、参照目的でのみ例示した非通電状態の圧電素子である。素子422は、Y方向に変形する(例えば、ワイヤーボンディング機械のY軸に沿ってY方向に膨張する)圧電素子であり、電気エネルギーの印加中はY方向に変形して変形領域422aおよび422bを含む。素子424は、X方向に変形する(例えば、ワイヤーボンディング機械のX軸に沿ってX方向に膨張する)圧電素子であり、電気エネルギーの印加中はX方向に変形して変形領域424aおよび424bを含む。素子426は、XY剪断方向に変形する(例えば、ワイヤーボンディング機械のXY剪断方向にゆがむ)圧電素子であり、電気エネルギーの印加中はXY剪断方向に変形して変形領域426aおよび426bを含む。また、素子426については例示的な極性と、それに対応するXY剪断変形方向(素子426内の矢印)も例示している。当業者であれば理解されるように、トランスデューサの単一ドライバ(例えば、単一の圧電素子スタック)内では、異なる方向に変形する圧電素子を組み合わせることができる。望ましい作用(例えば、ボンディングツール先端部の所与の非直線的スクラブ、特定のワイヤーボンドを形成する第1の方向および他のワイヤーボンドを形成する第2の方向の選択的な直線的スクラブ)をもたらすには、種々の特徴、例えばトランスデューサの設計、異なる方向に変形する圧電素子を含むドライバ、ドライバ圧電素子への多周波数の同時印加、多周波数の同時印加、分割された圧電素子電極などを変更することができる。
【0034】
図4D〜4Jは、異なる方向に変形する圧電素子を組み合わせた例示的な構成をいくつか例示したものである。図4D〜4J中、「Y」と示した圧電素子は、Y方向に変形するように構成された素子であり、「XY剪断」と示した圧電素子は、XY剪断方向に変形するように構成された素子である。別段の断りがない限り、図4D〜4Jに示した例のいずれでも周波数f1およびf2の電気エネルギーは、ボンディングツール先端部で望ましいスクラブを実現するため、必要に応じて同時に、別個に、および/または順次提供できる。図4D〜4Jに例示した圧電素子スタック構成を使用すると、例えば、ツール先端部の望ましい非直線的スクラブ、ツール先端部の選択的な直線的スクラブ(特定のボンディング位置用のX軸に沿ったスクラブおよび他のボンディング位置用のY軸に沿ったスクラブ、同じワイヤーボンドにおけるXY方向の一方、次いで他方に沿った順次スクラブ)などを実現することができる。
【0035】
図4Dは、素子434a(XY剪断方向に変形する圧電素子)、434b(Y方向に変形する圧電素子)、434c(Y剪断方向に変形する圧電素子)、および434d(XY剪断方向に変形する圧電素子)のスタックを含むトランスデューサに使用するドライバを例示したもので、素子434a、434bはシム電極436aにより分離され、素子434b、434cはシム電極436bにより分離され、素子434c、434dはシム電極436cにより分離され、シム電極436dは素子434dに隣接し、シム電極436eは素子434aに隣接する。f1、f2双方の正の接続部(+f1/f2)は、素子434aおよび434bの正電極(図4Dで436aと示されたシム電極)と、素子434cおよび434dの正電極(図4Dで436cと示されたシム電極)とに設けられる。f1、f2双方の負の接続部(−f1/f2)は、素子434a、434b、434c、および434dの負電極(図4Dで436b、436d、および436eと示されたシム電極)に設けられる。周波数f1およびf2の電気エネルギーは、ボンディングツール先端部で望ましいスクラブを実現するため、必要に応じて同時に、別個に、および/または順次提供できる。図4Dに例示した前記圧電素子スタック構成を使用すると、例えば、ツール先端部の望ましい非直線的スクラブ、ツール先端部の選択的な直線的スクラブ(特定のボンディング位置用のX軸に沿ったスクラブおよび他のボンディング位置用のY軸に沿ったスクラブ)などを実現することができる。
【0036】
図4Eは、圧電素子444a、444b、444c、および444dのスタックを含むトランスデューサに使用するためのドライバを例示したものであり、素子444a、444bはシム電極446aで分離され、素子444b、444cはシム電極446bで分離され、素子444c、444dはシム電極446cで分離され、シム電極446dは素子444dに隣接し、シム電極446eは素子444aに隣接する。素子444b、444cの電極は分割され、シム電極446bの電極は分割されている。f1、f2双方の正の接続部(+f1/f2)は、シム電極446a、446cに設けられる。f1、f2双方の負の接続部は、電極446d、446eの負電極、シム電極446bの左側部分、およびシム電極446bの右側部分に設けられ、これら負の接続部は必要に応じて接地される。このような例では、別個のアース線でシム電極446bが分割されることにより、前記圧電素子の両側から独立した電流が可能になる。
【0037】
図4Fは、圧電素子454a、454b、454c、および454dのスタックを含むトランスデューサに使用するためのドライバを例示したものであり、素子454a、454bはシム電極456aで分離され、素子454b、454cはシム電極456bで分離され、素子454c、454dはシム電極456cで分離され、シム電極456dは素子454dに隣接し、シム電極456eは素子454aに隣接する。素子454b、454cの電極は分割され、シム電極456bの電極は分割されている。f1、f2双方の正の接続部(+f1/f2)は、シム電極456a、456c、および分割された電極456bの右側部分に設けられる。f1、f2双方の負の接続部(−f1/f12)は、シム電極456d、456e、およびシム電極456bの左側部分に設けられ、これら負の接続部は必要に応じて接地される。このような例では、素子454cの前記右側電極双方(正および負)が短絡して、f1/f2双方の出力を実質的に排除する。
【0038】
以上説明した実施形態は、ドライバスタックに4つの圧電素子(例えば、圧電性結晶、圧電セラミック)を含むが、本発明は、これに限定されるものではない。実際、ドライバには、所与の用途の必要に応じていかなる数の素子を含めてもよい。図4G〜4Jでは、各ドライバスタックに8つの圧電素子が内設されている。図4G〜4Jでは、電極の分割された素子はなく、分割された電極もないが、本発明の特定の実施態様では、必要に応じて素子の電極が分割される場合も、また電極が分割される場合もあることを理解すべきである。
【0039】
図4Gは、圧電素子464a、464b、464c、464d、464e、464f、464g、および464hのスタックを含むトランスデューサに使用するためのドライバを例示したものである。素子464a、464bはシム電極466aで分離され、素子464b、464cはシム電極466bで分離され、素子464c、464dはシム電極466cで分離され、素子464d、464eはシム電極466dで分離され、素子464e、464fはシム電極466eで分離され、素子464f、464gはシム電極466fで分離され、素子464g、464hはシム電極466gで分離され、シム電極466hは素子464hに隣接し、シム電極466iは素子464aに隣接する。f1、f2双方の正の接続部(+f1/f2)は、シム電極466a、466c、466e、および466gに設けられる。f1、f2双方の負の接続部(−f1/f2)は、シム電極466b、466d、466f、466h、および466iに設けられ、これら負の接続部は必要に応じて接地される。
【0040】
図4Hは、圧電素子474a、474b、474c、474d、474e、474f、474g、および474hのスタックを含むトランスデューサに使用するためのドライバを例示したものである。素子474a、474bはシム電極476aで分離され、素子474b、474cはシム電極476bで分離され、素子474c、474dはシム電極476cで分離され、素子474d、474eはシム電極476dで分離され、素子474e、474fはシム電極476eで分離され、素子474f、474gはシム電極476fで分離され、素子474g、474hはシム電極476gで分離され、シム電極476hは素子474hに隣接し、シム電極476iは素子474aに隣接する。f1、f2双方の正の接続部(+f1/f2)は、シム電極476Aa、476c、476e、および476gに設けられる。f1、f2双方の負の接続部(+−f1/f2)は、シム電極476b、476d、476f、476h、および476iに設けられ、これら負の接続部は必要に応じて接地される。
【0041】
図4Iは、圧電素子484a、484b、484c、484d、484e、484f、484g、および484hのスタックを含むトランスデューサに使用するためのドライバを例示したものである。素子484a、484bはシム電極486aで分離され、素子484b、484cはシム電極486bで分離され、素子484c、484dはシム電極486cで分離され、素子484d、484eはシム電極486dで分離され、素子484e、484fはシム電極486eで分離され、素子484f、484gはシム電極486fで分離され、素子484g、484hはシム電極486gで分離され、シム電極486hは素子484hに隣接し、シム電極486iは素子484aに隣接する。f1、f2双方の正の接続部(+f1/f2)は、シム電極486a、486c、486e、および486gに設けられる。f1、f2双方の負の接続部(−f1/f2)は、シム電極486b、486d、486f、486h、および486iに設けられ、これら負の接続部は必要に応じて接地される。
【0042】
図4Jは、圧電素子494a、494b、494c、494d、494e、494f、494g、および494hのスタックを含むトランスデューサに使用するためのドライバを例示したものである。素子494a、494bはシム電極496aで分離され、素子494b、494cはシム電極496bで分離され、素子494c、494dはシム電極496cで分離され、素子494d、494eはシム電極496dで分離され、素子494e、494fはシム電極496eで分離され、素子494f、494gはシム電極496fで分離され、素子494g、494hはシム電極496gで分離され、シム電極496hは素子494hに隣接し、シム電極496iは素子494aに隣接する。周波数f1の正の接続部(+f1)は、電極496aおよび496gに設けられる。周波数f2の正の接続部(+f2)は、シム電極496cおよび496eに設けられる。f1、f2双方の負の接続部(−f1/f2)は、シム電極496b、496d、496f、496h、および496iに設けられ、これら負の接続部は必要に応じて接地される。
【0043】
以上、本発明の特定の態様について、分割された電極(例えば、図2A〜2Cおよび3A〜3C)を有する圧電素子に関連付けて説明したが、前記圧電素子本体は分割されない。ただし、本発明の特定の例示的な実施形態では、圧電素子本体全体が2つ(若しくはそれ以上)に分割される場合もある。例えば、図5A〜5Bの例示では、各圧電素子が分割される(各素子中央の実線で示すように)。すなわち、素子304aは、304a1および304a2へと分割されるなどである。また、各素子の左側部分は「反転」される。例えば、素子部分304a1(および素子部分304b1、304c1、および304d1)は反転されている。そのため、図5Aの極性表示(「+」および「−」)を見ると、各圧電素子の右側部分が各圧電素子の左側部分と比べて反転されていることが明らかである。また図5Bは、図5Aのスタックの例示的な電気接続部を例示したもので、f1およびf2の正の接続部(+f1/f2)は2つのシム電極(306a、306c)に連結され、f1およびf2の負の接続部(−f1/f2)は他の電極(306b、306d、306e)に連結されて必要に応じ接地される。このように、この例では、どちらの周波数の電気エネルギーも同時に提供される。いずれの場合も、図5A〜5Bに例示した構成は、ボンディングツールの先端部に非直線的スクラブをもたらす。
【0044】
図6Aおよび6Bは本発明の別の例示的実施形態で、上述の概念のうち特定のものを組み合わせている。特に図6Aを参照すると、上方2つの圧電素子は分割されている(左側部分が反転されている)。第1の周波数f1(例えば、115kHz)が適用されるとツール先端部で第1の方向に(例えば、X軸に沿って)スクラブが生じる。下方2つの圧電素子は標準的な素子で(分割されておらず、各々の電極も分割されていない)、第2の周波数f2(例えば、120kHz)が適用されると、ツール先端部で第2の方向に(例えば、Y軸に沿って)スクラブが生じる。この構成は、例えばf1およびf2のモードが完全に分離される(いずれの場合も逆起電力が相殺される)という特定の利点がある。より具体的にいうと、上部が周波数f1で駆動されているときも、当該結晶の左側が当該圧電素子の右側と異なる位相で変形すると電荷が相殺されるため、下方の圧電素子はf1の逆起電力電荷を生じない。また、前記底部が周波数f2で駆動される場合は、その左側および右側が同位相で運動すると電荷が相殺されるため、上部2つの圧電素子におけるf2の逆起電力が相殺される。
【0045】
図6Bは、さらに別の例示的構成である。図6Bでは、上方の圧電素子が図6Aのように分割され、下方2つの圧電素子が(図2A〜2Cおよび3A〜3Cのように)分割された電極を有する。また、前記第3および第4の圧電素子間の電極も分割される(電気的に絶縁された領域を2つ有する)。言うまでもなく、図6Bは、本発明で開示するいくつかの変形形態の単なる1つである。
【0046】
図7A〜7Cは、本発明のトランスデューサ操作技術により生成されるボンディングツール先端部の非直線的スクラブパターンを例示したものである。上述のように、ボンディングツール先端部の非直線的スクラブを提供する本発明の種々の例示的な実施形態が描かれている。このようなスクラブパターンの一例がリサジュースクラブパターンであり、これには、円形のスクラブパターン、楕円形のスクラブパターン、またはメッシュ形状のスクラブパターンなどがある。言うまでもなく、他の非直線的スクラブパターンも考えられる。
【0047】
以上、主に4つまたは8つの圧電素子の圧電性スタックと、それに適用される2つの周波数(f1およびf2、またはf1/f2)とに関連付けて本発明を説明した。言うまでもなく、種々のスタック構成(より多い若しくは少ない圧電素子を伴う)と、種々の周波数(例えば、周波数f3の第3の信号を含めるなど、2より多くの電気信号)とが考えられる。
【0048】
本発明の種々の態様については、「分割された」圧電素子と、分割された圧電素子「電極」とに関連付けて説明した。言うまでもなく、これらの構造(例えば、前記圧電素子、前記圧電素子電極、前記シム電極)を物理的に変更(例えば、切削)して望ましい電気的絶縁を実現できる。ただし、この分割は、前記構造の初期製造時、当該構造に望ましい電気絶縁領域が設けられるなど、他の方法で実現することもできる。さらに、当業者であれば、圧電素子の「ポーリング」(例えば、2,000ボルトなど比較的高い電圧を印加するなどして素子に極性を与えること)は、当該素子または当該素子電極の分割前、分割中、分割後に実施できることが理解されるであろう。
【0049】
本発明については、主にボンディングツール先端部に非直線的スクラブを提供し、ボンディングツール先端部に選択的な直線的スクラブを提供するトランスデューサに関連付けて説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の特定の開示内容は、(1)非平面成分を有するスクラブ運動(例えば、当該運動の少なくとも一部がXY平面に含まれず、それに垂直なZ軸に沿う場合。図1の凡例等を参照)、および(2)(スクラブ運動を伴う若しくは伴わない)ボンディングツール先端部のねじれまたは回転運動その他に関連して使用することができる。
【0050】
本発明の特定の例示的な実施形態については、2分割された圧電素子(例えば、結晶、セラミックス)、2分割された圧電素子電極、および2分割されたシム電極(例えば、シム)に関連付けて説明したが、これらのいずれも、2若しくはそれ以上の領域に分割できることは言うまでもない。すなわち、圧電素子、圧電素子電極、およびシム電極は、所与の応用の必要に応じ、2若しくはそれ以上の電気絶縁領域に分割することができる。
【0051】
以上では、主にワイヤーボンディング機械に使用するための超音波トランスデューサに関連付けて本発明を例示および説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の説明(例えば、圧電素子構成、分割された素子、分割された素子電極、スタック構成を含む)は、超音波撮像、超音波センサー、超音波溶接機、超音波モーターなど、いくつかの用途のいずれかに使用する超音波トランスデューサに適用できる。
【0052】
本発明については、本明細書において具体的な実施形態を参照して例示および説明しているが、示した詳細事項に限定されることを意図したものではない。むしろ、本発明の範囲を逸脱しない請求項の均等物(等価物)の範囲内で、細部において種々の変更(修正)形態が可能である。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C