【課題を解決するための手段】
【0006】
特に、この目的は、物体上、特に基板上に少なくとも2つの成分から作製される層、特に薄層を堆積させるための装置によって実現される。この装置は以下、
その中に物体を配置することができる、または物体が配置されている堆積チャンバと、
特に堆積チャンバ内に配置することができる、または配置される堆積させようとする材料を有する少なくとも1つのソース(「配置することができる」とは、「設けることができる」を意味すると理解することもできる)と、
それにより堆積させようとする材料の少なくとも1つの成分の少なくとも濃度を、制御された形で堆積が起こるように少なくとも1つの成分の所定量を選択的に結合させることによって、その成分の気相中で、したがって物体上、特に基板上へのその成分の堆積前に修正することができるように実施される、堆積プロセスを制御するための少なくとも1つの装置とを備える。
【0007】
堆積プロセスを制御するための装置は、少なくとも1つの成
分の結合速度と
関連する少なくとも1つの制御パラメータを修正することによって、
選択的に結合させる少なくとも1つの成分
の量を制御または修正することができるように
構成される。導入部で既に述べた通り、堆積させるための装置
における当該成分の結合速度により、単位時間当たりに反応性または内側表面によって気相から抽出される選択的に結合さ
せる成分の量が表される。この結合速度は、結合表面の結合能力および/またはサイズによって決まる。
【0008】
本発明の本質的核心は、上記装置を用いると(また上記方法を用いると)、多成分から作製される層の、特に基板上への堆積中の層組成の制御または調整が可能であることにある。受容体(すなわち、例えば、蒸発の場合には蒸発チャンバ、またはカソードスパッタリングの場合にはスパッタチャンバ)内では、制御装置は規定のパラメータで作動し、堆積チャンバはしたがって、堆積が選択的に、または制御された形で起こるように実施される。というのは、堆積させようとする材料の少なくとも1つの成分の濃度が、早期の「捕捉」によって選択的に修正されるからである。したがって、「制御された形で」とは、物体上への堆積の速度を規定するために、堆積させようとする材料の成分がその濃度(成分のうちの少なくとも1つ)について選択的に影響を受けることを意味する。基板上への堆積前に要望通り選択的に複数の成分に影響を与える、すなわち、例えば、それら成分の濃度を修正することももちろん可能である。上記装置を用いると(また上記方法を用いると)、例えば、物体上に、特に基板上に少なくとも1つの層を堆積させることができ、したがって、例えば、積層または多層体を製造することができる。本発明による目的は、特に、化合物からの蒸発の場合に有用である。一方、同時蒸発で、個々の元素の蒸発速度の他に、追加のパラメータによって堆積の速度を制御することが可能であることも有利である。本発明は、あらゆるコーティング方法に、特にPVD法において、そこでは特に、スクープ、るつぼ、浸出セル、線状ソース等からの熱的方法で適用可能である。PVDによる層堆積を伴う他の方法が、電子ビーム蒸着、マグネトロンスパッタリング、イオンビームアブレーション、またはレーザビームアブレーションである。しかしながら、薄層の堆積のための他の方法(例えば、CVD、化学気相堆積)との適用も考えられる。これらの層は、非常に多様な物体上に、特に基板上に、この方法を用いて堆積させることができる。堆積の速度は、以下詳細に説明するように、様々なパラメータによって制御または調整することができる。本発明による目的は、したがって、長期にわたって安定なプロセスにとって、特に、出発原料のそれぞれ一瞬にして入手可能な組成から所望の層組成が数パーセントしか逸脱しない場合に適している。したがって、処理システムの構造およびプロセス制御は、これまで可能であったよりもかなり簡単に設計することができる。
【0009】
以下では、大半の部分で、例えば、モリブデンには「Mo」またはセレンには「Se」と特定の元素記号を示す。
【0010】
有利には、少なくとも2つの成分から作製される層を物体上に堆積するための本発明による装置において、堆積プロセスを制御するための装置は、少なくとも1つの成分の選択的に結合された量を成分の堆積プロセス中(にさえ)制御することができるように実施される。この方策により、層の堆積中にさえ、層組成に選択的に影響を及ぼすことが可能となる。さらに、堆積チャンバ内で発生する負圧の修正なしで少なくとも1つの成分の選択的に結合された量を制御することができるように、堆積プロセスを制御するための装置が実施されることは、本発明による装置において特に有利となり得る。この方策により、層の生成がかなり容易に、かつかなり速く起こり得るように負圧または真空を破壊することなく、堆積層の組成の制御または修正が有利に可能となる。加えて、生成される層の組成(純度)に悪影響を及ぼすことがある真空の破壊により異物が堆積チャンバに不所望にも侵入することを、防止することが可能である。
【0011】
別の好ましい実施形態において、制御装置は、(化学的に)反応性の材料で作製されるゲッタリング要素を少なくとも1つ有し、このゲッタリング要素は堆積チャンバ内に配置され、また(堆積させようとする材料の)少なくとも1つの成分の濃度を
、ゲッタリング要素に対するその成分
の化学的結合によって(したがって、基板上への層としての実際の堆積の前に)修正することができるように
構成される。言い換えれば、制御しようとする少なくとも1つの成分に対して化学的に反応性の材料を有する少なくとも1つのゲッタリング要素による、堆積させようとする材料の気体粒子(分子、原子および/またはイオン)の選択的または標的結合によって、堆積させようとする層(したがって、堆積層)の組成が、出発原料の組成と比較して気相中で修正される。層形成はそれに応じて、制御された形で調整することができる。
【0012】
好ましくは、制御装置は、好ましくは制御しようとする少なくとも1つの成分に対して(化学的に)不活性な材料で作製される少なくとも1つのゲッタリング要素を備えることもでき、このゲッタリング要素は堆積チャンバ内に配置され、また少なくとも1つの成分の濃度を
、ゲッタリング要素に対するその成分
の物理的結合によって修正することができるように
構成される。ここで、選択的結合は、例えば、凝縮または吸着(主にゲッタリング表面の温度による制御、以下参照)によって起こり得る。言い換えれば、1つまた複数の物体がチャンバ内に位置し、物体上には蒸気(またはプラズマでさえ)の成分が、化学的または物理的反応によって選択的に結合している(すなわち、例えば、意図的に選
択される)。これにより、チャンバ内の蒸気の組成と、層の組成との間に差異が生じる。ゲッタリング要素は、その上、したがって基板上へも堆積が規定の形で、したがって選択的に起こるように、規定の特性を伴って実施される。堆積させようとする材料は、環境の設計に応じて、実質的にはどこにでも、1つまたは複数のゲッタリング要素上にさえも堆積されることになる。したがって、堆積させようとする材料の特定の割合が、基板上への実際の堆積より前に「取り去られる」。言い換えれば、ゲッタリング要素(または随意複数のゲッタリング要素)は、蒸気および/またはプラズマの化学組成を修正す
る働きをする。したがって、基板上の層の組成は、可変的に微調整することができる。ゲッタリング材料上への気体粒子の結合は、可逆的であっても不可逆的であってもよい。反応性のゲッタリング材料を用いると、不可逆的な結合が通常実現されるが、ゲッタリン要素を、例えば、時々交換または再生しなければならない。
【0013】
好ましくは、ゲッタリング要素は、特にゲッタリング要素上で化学的結合を実現するために、銅および/またはモリブデン、またはそれぞれの化合物に適した別の元素から実施される。B
xC
y型の出発原料の蒸発の場合、蒸発チャンバ内のゲッタリング面の使用によって、割合yを低減させることができる。硫黄またはセレン化合物の結合には、銅が特に適している。したがって、本発明による装置では、特にCu
2S、In
2S
3、InS、GaS、Ga
2S
3、Al
2S
3、CuInS
2、CuGaS
2、CuAlS
2、CuIn
5S
8、Cu
2Se、In
2Se
3、GaSe、Ga
2Se
3、Al
2Se
3、CuInSe
2、CuGaSe
2、CuAlSe
2、CuIn
3Se
5、SnSe、SnSe
2、ZnSe、SnS、SnS
2、ZnS、Cu
2SnS
3、CdS、CdSe、CdTe、Cu
2ZnSnS
4、Cu
2ZnSnSe
4などの化合物、または他の化合物、特に他のセレン、硫黄もしくはテルル含有化合物を使用することができる。銅もモリブデンも共に、好ましくはSeまたはSまたはTeと結合する。したがって、物体または基板上に堆積された、または堆積させようとする層は、堆積層の正確な組成の制御が可能となるように、これらの元素に関して枯渇する。酸化化合物の堆積の場合にさえ、例えば、Tiから作製されるゲッタリング表面上における酸素の反応性結合によって、層の酸素含有量を制御することが、例えば可能である。
【0014】
別の好ましい実施形態においては、ゲッタリング要素は堆積チャンバ内に要素自体として配置され、かつ/または堆積チャンバの少なくとも一部、特に堆積チャンバ壁の少なくとも一部を形成する。したがって、ゲッタリング要素は、堆積チャンバ内にそのために設けられた場所に配置することができ、したがってそこから容易に取り外し可能でもある。例えば、ゲッタリング要素は、随意形成蒸気ローブ(vapor lobe)内に配置することができ、したがって気相、ひいては層形成に影響を及ぼす。所望のゲッタリング材料(少なくとも部分的に)から蒸着チャンバの壁を形成すること、またはゲッタリング材料から作製される内壁(同じく少なくとも部分的に)を設けること(省スペース)も可能である。
【0015】
好ましくは、制御装置は、ゲッタリング要素の活性領域が可変となるように実施されるマスキング要素を少なくとも1つ備える。言い換えれば、蒸気に暴露されるゲッタリング要素の表面が可変である。マスキング要素は、例えば、ゲッタリング要素を部分的に覆う、または活性領域を拡大するように配置される。このマスキング要素(または随意複数のマスキング要素)が完全に反応した場合、ゲッタリング要素の全面が、例えば、機能することができる。このため、1つまたは複数のマスキング要素は不活性の材料から形成される(ゲッタリング機能が、原則として回避されるように)。ベローズ、可動カバー等の装置を、例えば、マスキング要素として設けることができる。1つまたは複数のマスキング要素によってここではそのサイズ修正することができるゲッタリング要素の活性表面(結合表面)はしたがって、堆積させようとする層の少なくとも1つの成分の選択的結合について結合速度を制御するために、変数制御パラメータとなる。
【0016】
有利な一実施形態においては、制御装置は、ゲッタリング要素の、かつ/または物体の、特に基板の活性領域の少なくとも活性領域の温度を制御することができるように実施される、温度制御または温度調整のための装置を少なくとも1つ有する。この装置は、例えば、ソース加熱装置および/または基板加熱装置として設けることができ、あるいはこれらを備えることができる。ゲッタリング要素の温度はゲッタ速度に影響を及ぼし、したがって堆積させようとする層の少なくとも1つの成分の選択的結合の結合速度を制御するための変数制御パラメータとなる。
【0017】
成分(すなわち、ゲッタリング要素上の気体粒子の特定量の)凝縮(この場合、物理的結合)の程度は、したがって基板上の層の組成は、ゲッタリング表面の温度によって制御することができる。あるいは、基板温度は、堆積の速度を制御するための異なるパラメータとして、または追加のパラメータとしてさえここでは適切である。この温度の変動を利用して、ゲッタ速度は、反応物の選択に応じて増加または減少する。温度上昇の結果、ゲッタリング機能を増大させることができ、またはより熱い表面から堆積チャンバへと戻る再放出のより高い確率さえ、したがってゲッタリング機能の低下さえももたらすことができる。しかしながら、いずれの場合も、堆積の速度および/または結合速度は、変数プロセスパラメータを利用して外から制御することができる。その後、生成プロセスにおいて、一定の保守間隔で表面を加熱によって再生させることができる。あるいは、熱処理可能な(temperable)表面(パネル、フィルム、メッシュ等)を、コーティングされていない未使用の表面と交換し、また置き換えることができる。さらに、結合させようとする成分の反応速度に、不活性でない(non−inert)ゲッタリング表面(この場合化学的結合)の温度が影響を及ぼすことができる。例えば、硫黄含有雰囲気中の銅表面の場合、銅の温度を上昇させることによって、硫黄腐食(例えば、銅表面上の硫黄結合の増加)の速度を加速させることができ、その結果、堆積プロセス中には、より少ない硫黄しか層に取り込むことはできない。
【0018】
好ましくは、制御装置は、
電極要素として構成された少なくとも2つ
のゲッタリング要素
を備え、これら2つのゲッタリング要素に対し、互いに異なる電位を印加する
ように構成さ
れ、それら
のゲッタリング要素により、異なる結合速度(ゲッタリング要素上の堆積)が随意可能となる。ゲッタリング要素およびチャンバ壁が異なる電位となるように、チャンバ壁に対してゲッタリング要素を接続することも可能である。このため、制御装置を備える追加の電極を設けることができる。このため、制御装置は、異なる電位の印加が可能となるように、適当なスイッチング要素を備えざるを得ない。したがって、外から蒸気組成を制御するさらなる能力により、例えば、チャンバ内の2つの銅表面を異なる電位に設定し得る。厚さが異なる堆積物を、互いに対して電位差を有する2つの表面上に構築することができる。この電位差の変動を、あるいは電極表面およびその配置を利用することによって、層組成を同じく積極的に制御し得る。あるいは、チャンバ壁に対して、またはプロセスチャンバ内の別の電極対してCu表面の電位を修正することもできる。
【0019】
ゲッタリング要素の、かつ/またはマスキング要素の移動および/または位置決めのための装置を少なくとも1つ有する制御装置が、有利に設けられ、この装置は、ゲッタリング要素および/またはマスキング要素を堆積チャンバ内で移動させることができ、したがってゲッタリング要素の、かつ/またはマスキング要素の位置を変化させることができるように実施される。したがって、例えば、ゲッタリング要素の活性領域を、(例えば、マスキング要素の背後および/または随意生じる蒸気ローブ内でゲッタリング要素を移動させることによって)変化させることができる。要素の交換のための移動を使用することも可能である。1つまたは複数のマスキング要素の移動により、1つまたは複数のゲッタリング要素の活性領域の修正が同様に可能となる。ゲッタリング要素のこの修正が、例えば、浸出セル(またはスパッタリングカソード等)の軸からの半径方向距離の関数である場合には、蒸発軸からの距離の関数としてゲッタリング機能を微調整することが考えられる。この関数は、原則的として、異なる蒸発種の蒸気ローブの、生じる可能性がある不均一性を取り除くために使用することができる。この作用は、層組成に関して大面積の均質コーティングを可能とするためにも使用し得る。
【0020】
好ましくは、ゲッタリング要素は、パネル要素またロッド要素として実施される。というのは、これらの要素は容易に置き換えることができ、また活性領域を適切な形で利用可能にするからである。ゲッタリング要素は、膜要素として、シート要素として、グリッド要素(格子面内の1つまたは2つの方向に異なるメッシュ間隔も有し、格子として一次元的に、またはメッシュもしくはスクリーンとして二次元的に)として、もしくは同様の要素として設けることもできる。
【0021】
ゲッタリング要素は、好ましくは少なくとも1つのソースを少なくとも部分的に包み込むように実施される。このため、シリンダ形状が、例えば、適切であり、またはゲッタリング要素はボックス要素として実施される。したがって、ゲッタリング要素は、蒸発部位(ソース)に極めて接近して機能する。
【0022】
好ましくは、装置を用いて下記化合物を堆積させることができる。
すべての多成分化合物、
特に、ローマ数字IからVIが相当する元素周期律表の族を指す、II−VI−、III−V−、III
2VI
3−、I−III−VI
2−、I−III
3−VI
5−、I−III
5−VI
8−、I
2−II−IV−VI
4−、化合物、
特に、酸素、硫黄、セレンまたはテルルを有する化合物すべて、
特に、Cu
2Se、In
2Se
3、GaSe、Ga
2Se
3、Al
2Se
3、CuInSe
2、CuGaSe
2、CuAlSe
2、CuIn
3Se
5、Cu
2S、In
2S
3、InS、GaS、Ga
2S
3、Al
2S
3、CuInS
2、CuGaS
2、CuAlS
2、CuIn
5Se
8、SnSe、SnSe
2、ZnSe、SnS、SnS
2、ZnS、Cu
2SnS
3、CdS、CdSe、Cu
2ZnSnS
4、Cu
2ZnSnSe
4、CdTeなどの化合物。
【0023】
言い換えると、ゲッタリング要素は、これらの化合物が堆積プロセスに、また物体上または基板上への層堆積に特に適しているように実施される。
【0024】
本発明はまた、少なくとも2つの成分から作製される層を物体上に堆積させるための装置にも及び、この装置は、物体を配置するための堆積チャンバと、堆積させようとする材料を有する少なくとも1つのソースと、堆積させようとする材料の少なくとも1つの成分の濃度を、少なくとも1つの成分の所定量を選択的に結合させ
て、物体上への堆積前に
気相のもとで修正すること
で、ソースにおける材料の組成と、物体上における材料の組成との間に、選択的な結合に応じた差異を生じさせるように構成される、堆積プロセスを制御するための少なくとも1つの装置とを備え、堆積プロセスを制御するための装置は、反応性の材料から作製されるゲッタリング要素を少なくとも1つ有し、このゲッタリング要素は堆積チャンバ内に配置され、また少なくとも1つの成分の濃度を
、ゲッタリング要素に対するその成分
の化学的および/または物理的結合によって修正することができるように
構成され、反応性の材料は、銅および/またはモリブデン、あるいはそれらの1つまたは複数の化合物を含む
。この装置は、少なくとも1つの成
分の結合速度
に関連する少なくとも1つの制御パラメータを修正することによって、
選択的に結合させる少なくとも1つの成分
の量を制御することができるように
構成され、この目的のために、堆積プロセスを制御するための装置は、ゲッタリング要素の温度および/または活性結合表面および/または電位を修正することができるように
構成することができる。
【0025】
本発明はまた、少なくとも2つの成分から作製される層を物体上に堆積させるための方法にも及び、少なくとも1つの成分の濃度は、堆積プロセスを制御するための装置を用いて成分の所定量を選択的に結合させることによって
、物体上への堆積前に
気相のもとで修正され、選択的に結合さ
せる少なくとも1つの成分の量は、堆積プロセスを制御するための装置の
、その成分に
関する結合速度を修正することによって制御される。本発明
では、
選択的に結合させる少なくとも1つの成分
の量は、ゲッタリング要素の温度および/または活性結合表面および/または電位を修正することによって制御される。本発明による方法
の有利な実施形態においては、要望通り堆積層の組成を選択的に制御するために、電極要素として
構成される少なくとも2つのゲッタリング要素に、
互いに異なる電位が印加される。本発明による方法の別の有利な実施形態においては、要望通り堆積層の組成を選択的に制御するために、堆積チャンバの壁に対して少なくとも1つのゲッタリング要素に異なる電位が印加される。本発明による方法の別の有利な実施形態においては、要望通り堆積層の組成を選択的に制御するために、少なくとも1つの他の電極に対してゲッタリング要素に異なる電位が印加される。本発明による方法の別の有利な実施形態においては、少なくとも1つのゲッタリング要素および/またはゲッタリング要素のためのマスキング要素が堆積チャンバ内で移動され、したがって、ゲッタリング要素および/またはマスキング要素の位置は、要望通り堆積層の組成を選択的に制御するために変化させる。
【0026】
本発明はまた、物体上、特に基板上に少なくとも2つの成分から作製される層、特に薄層を、下記を備える装置を用いて堆積させるための方法に関し、装置は、
堆積チャンバと、特に堆積チャンバ内に配置することができる、または配置される、堆積させようとする材料を有する少なくとも1つのソースと、堆積プロセスを制御するための少なくとも1つの装置とを備え、この方法は下記ステップ、
堆積チャンバ内に物体、特に基板を配置するステップと、
それにより堆積させようとする材料の少なくとも1つの成分の少なくとも濃度を、制御された形で堆積プロセスが起こるように、少なくとも1つの成分の所定量を選択的に結合させることによって、その成分の気相中で、したがって物体上、特に基板上へのその成分の堆積前に修正することができるように、少なくとも1つの制御装置によって堆積プロセスを制御するステップとを備える。
【0027】
好ましくは、制御装置は、反応性の材料から作製されるゲッタリング要素を少なくとも1つ有し、このゲッタリング要素は堆積チャンバ内に配置される。好ましくは、追加のステップ、少なくとも1つの成分の濃度の修正のステップであって、(化学的に)反応性の材料から作製されるゲッタリング要素を用いた
、ゲッタリング要素
に対するその成分の化学的結合による修正のステップが設けられる。同様に、制御装置は好ましくは、不活性の材料から作製されるゲッタリング要素を少なくとも1つ有し、このゲッタリング要素は堆積チャンバ内に配置され、好ましくは、追加のステップ、少なくとも1つの成分の濃度の修正のステップであって、(化学的に)不活性の材料から作製されるゲッタリング要素を用いた
、ゲッタリング要素
に対するその成分の物理的結合による修正のステップが設けられる。
【0028】
既に説明した通り、蒸発材料、言い換えると、材料(蒸発している、また堆積させようとする材料の少なくとも1つの成分)の濃度を、物体上、特に基板上の層形成プロセスが制御または調整された形で進行させることがこのように可能であるために、ゲッタリング材料への気体粒子の物理的または化学的結合によって選択的に修正することができる。このため、好ましくは、制御装置の少なくとも1つのマスキング要素を用いることによる、ゲッタリング要素の活性領域の修正という追加のステップを設けることもできる。好ましくは、ゲッタリング要素の、かつ/または物体の、特に基板の少なくとも活性領域の温度を意味する、制御装置の温度制御または調整のための装置を用いることによる制御のステップを設けることもできる。ゲッタリング要素の活性領域の修正および/または活性領域の温度の、もしくは基板の温度の修正は同じく、基板上の層形成プロセスを選択的に進行させ、また層形成プロセスに意図的に影響を及ぼすための方策である。というのは、ゲッタリング要素の、かつ/または基板の異なる温度により、ゲッタリング要素上の成分の異なる結合が、また基板上への1つまたは複数の成分の異なる堆積も生じるからである。また、基板上への堆積プロセスを制御するために、2つのゲッタリング要素に異なる電位を印加する追加のステップも適切である(堆積させようとする材料の濃度がこのように影響を受ける、すなわち、気相中で修正されるという点で)。このため、制御装置は、電極要素として実施され、またそれに応じて接続することができる少なくとも2つのゲッタリング要素を備えている。ゲッタリング要素および壁、あるいはゲッタリング要素および追加の電極が異なる電位となるように、堆積チャンバ壁に、または追加の電極にゲッタリング要素を接続することもできる。
【0029】
好ましくは、追加のステップ、堆積チャンバ内のゲッタリング要素の、かつ/またはマスキング要素の移動(位置を修正する)ステップ、したがって、制御装置のゲッタリング要素および/またはマスキング要素を移動および/または位置決めするための装置を用いることによる、ゲッタリング要素の活性領域の修正ステップが設けられる。これにより、堆積させようとする材料に対する作用に適した場所におけるゲッタリング要素の、かつ/またはマスキング要素の所望の配置が、またゲッタリング要素の活性領域の修正のための位置決めが可能となる。そして最後に、以下の追加のステップ、ゲッタリング要素を用いることによって装置のソースを包み込むステップを設けることが有利となることがある。好ましくは、以下のステップ、下記化合物を堆積させるステップが設けられる(言い換えると、本発明による方法を用いてこれらの化合物すべてを選択的に堆積させることができる)。
すべての多成分化合物、
特に、II−VI−、III−V−、III
2VI
3−、I−III−VI
2−、I−III
3−VI
5−、I−III
5−VI
8−、I
2−II−IV−VI
4−化合物、
特に、酸素、硫黄、セレンまたはテルルを有する化合物すべて、
特に、Cu
2Se、In
2Se
3、GaSe、Ga
2Se
3、Al
2Se
3、CuInSe
2、CuGaSe
2、CuAlSe
2、CuIn
3Se
5、Cu
2S、In
2S
3、InS、GaS、Ga
2S
3、Al
2S
3、CuInS
2、CuGaS
2、CuAlS
2、CuIn
5S
8、SnSe、SnSe
2、ZnSe、SnS、SnS
2、ZnS、Cu
2SnS
3、CdS、CdSe、Cu
2ZnSnS
4、Cu
2ZnSnSe
4、CdTeなどの化合物。
【0030】
積層(多層体、例えば、基板とその上に堆積された1つまたは複数の層)を有する薄膜太陽モジュールまたは薄層太陽モジュールについての保護も同様に特許主張され、積層または積層のうちの少なくとも一層は上記の方法を用いて生成される、または生成された。
【0031】
本発明はさらに、黄銅鉱化合物、特にCu(In,Ga)(S,Se)
2を半導体層として好ましくは備える薄層太陽電池または薄層太陽モジュールの製造のための、少なくとも2つの成分から作製される層を物体上に堆積させるためのそのような装置およびそのような方法の使用に及ぶ。好ましくは、この使用は、CIS−もしくは(CIGSSe)薄層太陽電池の、またはCISもしくは(CIGSSe)薄層太陽モジュールの製造に役立つ。
【0032】
本発明の目的の様々な実施形態を個々に、または任意の組合せで実現することができることが理解されよう。特に、上記特徴および以下で説明する特徴は、指示された組合せだけでなく、他の組合せまたは単独で本発明の構成から逸脱することなく使用することができる。
【0033】
以下に、本発明を例示的な実施形態に関して説明するが、それら実施形態を図面を参照して詳細に説明する。