特許第6180744号(P6180744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6180744油脂含有レーヨン繊維、その製造方法、及び繊維構造物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180744
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】油脂含有レーヨン繊維、その製造方法、及び繊維構造物
(51)【国際特許分類】
   D01F 2/08 20060101AFI20170807BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20170807BHJP
   D03D 15/00 20060101ALI20170807BHJP
   D04B 1/14 20060101ALI20170807BHJP
   D04B 21/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   D01F2/08
   D02G3/04
   D03D15/00 E
   D04B1/14
   D04B21/00 B
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-12303(P2013-12303)
(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公開番号】特開2014-141765(P2014-141765A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2016年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002923
【氏名又は名称】ダイワボウホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591264267
【氏名又は名称】ダイワボウレーヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】鍛治畑 裕行
(72)【発明者】
【氏名】若槻 淳子
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−285779(JP,A)
【文献】 特開2012−012484(JP,A)
【文献】 特開2008−303245(JP,A)
【文献】 特開2000−229118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00− 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーヨン繊維内に油脂及び酸化防止剤を含有する油脂含有レーヨン繊維であり、
前記レーヨン繊維内のセルロースと前記油脂とは非相溶状態で、且つ前記油脂は前記セルロース中に微分散されており、
前記油脂は、脂肪酸及びそのグリセリンエステルから選ばれる少なくとも一つの脂肪酸成分を含み、
前記酸化防止剤は、α型トコフェロール及びトコトリエノールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、γ型トコフェロール及びトコトリエノールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、α型トコフェロール、γ型トコフェロール及びトコトリエノールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、α型トコフェロールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、γ型トコフェロールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、又はトコトリエノールを必須成分として55質量%以上含む酸化防止剤であることを特徴とする油脂含有レーヨン繊維。
【請求項2】
前記酸化防止剤は、トコトリエノールを60質量%以上含む酸化防止剤である請求項1に記載の油脂含有レーヨン繊維。
【請求項3】
前記油脂は、椿油及びオリーブオイルからなる群から選ばれる一種以上である請求項1又は2に記載の油脂含有レーヨン繊維。
【請求項4】
前記油脂の配合量が、セルロースに対して0.5〜15質量%の範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載の油脂含有レーヨン繊維。
【請求項5】
前記酸化防止剤の配合量が、油脂に対して0.03〜15質量%の範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の油脂含有レーヨン繊維。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の油脂含有レーヨン繊維の製造方法であって、
油脂と酸化防止剤と乳化剤を混合してエマルジョン液を調製し、
セルロースを含むビスコース原液に、前記エマルジョン液を混合して紡糸用ビスコース液を調製し、
前記紡糸用ビスコース液をノズルより押し出して紡糸し、凝固再生して油脂含有レーヨン繊維としており、
前記油脂は、脂肪酸及びそのグリセリンエステルから選ばれる少なくとも一つの脂肪酸成分を含み、
前記酸化防止剤は、α型トコフェロール及びトコトリエノールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、γ型トコフェロール及びトコトリエノールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、α型トコフェロール、γ型トコフェロール及びトコトリエノールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、α型トコフェロールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、γ型トコフェロールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、又はトコトリエノールを必須成分として55質量%以上含む酸化防止剤であることを特徴とする油脂含有レーヨン繊維の製造方法。
【請求項7】
前記エマルジョン液中において、前記酸化防止剤の配合量が油脂に対して0.03〜15質量%の範囲である請求項6に記載の油脂含有レーヨン繊維の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の油脂含有レーヨン繊維を含む繊維構造物。
【請求項9】
前記油脂含有レーヨン繊維を10〜90質量%含み、
他の繊維として、ポリエステル繊維、ポリアクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン系弾性繊維、コットン及びウールからなる群から選ばれる少なくとも一つの繊維を複合した請求項に記載の繊維構造物。
【請求項10】
前記繊維構造物が、紡績糸、編物、織物及び不織布からなる群から選ばれる形態を有する請求項8又は9に記載の繊維構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の油脂を含有するレーヨン繊維、その製造方法及び繊維構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
再生セルロースを用いたレーヨン繊維は、例えばビスコース法、銅アンモニア法、溶剤紡糸法等様々な方法で製造されることが知られている。レーヨン繊維は基質がセルロースであるため、それ自体肌に優しい性質を有する。従来から、レーヨン繊維の性質をさらに発揮させるため、様々な提案がされている。例えば、脂肪酸(油脂分)を練り込んだ再生セルロース繊維に関する提案として、オレイン酸又はオレイン酸の金属塩を練り込む提案(特許文献1)、γ−リノレン酸乳化液を練り込む提案(特許文献2〜3)、ドコサヘキサエン酸(DHA)乳化液を練り込む提案(特許文献4)、γ−リノレン酸の乳化物を練り込む提案(特許文献5)、オレイン酸又はその塩を練り込み、セル状領域を形成したレーヨン繊維の提案(特許文献6)、脂肪酸又はその塩と脂溶性の酸化防止剤を練り込み、セル状領域を形成したレーヨン繊維の提案(特許文献7)、こめ油、γ−オリザノール、フェルラ酸を含む乳化液を練り込む提案(特許文献8)、オリーブオイル乳化液を練り込む提案(特許文献9)、相変化材料をマイクロカプセルに封入して添加したセルロース系繊維の提案(特許文献10)等がある。また、特許文献11には、スクワラン等の油分を含むレーヨン繊維等の含油繊維を原料繊維として用いた化粧・美容用不織布が提案されている。
【0003】
特許文献1〜7で用いた脂肪酸は融点が14℃以下であるために常温で液体であり、容易に乳化することが可能である。また、特許文献8で用いているこめ油及び特許文献9で用いているオリーブオイルも不飽和脂肪酸を多く含むために低融点であり、容易に乳化可能である。特許文献10では、油脂あるいは脂肪酸をマイクロカプセル化して添加している。特許文献11で油分として用いているスクワランは、常温で液体であり、容易に乳化することが可能である。
【0004】
上述したように、20℃以下で液体(融点が20℃以下)の油脂は、流動性が高く、肌になじみやすい性質を有し、乳化は比較的容易である。しかしながら、20℃以下で液体の油脂は二重結合を含む不飽和脂肪酸の含有量が多く、酸化が生じやすい。そのため、特に20℃以下で液体の油脂を繊維中に含有させる場合には、油脂の酸化を防止する必要がある。そこで、油脂の酸化を防止するため、油脂に酸化防止剤を添加する技術が提案されている。例えば、特許文献2〜5には、酸化防止剤として3,5−ジ−ブチルヒドロキシトルエン、イオウ系酸化防止剤、トコフェロール類を脂肪酸と併用することが記載されている。また、油脂としてこめ油を用いた特許文献8では、フェルラ酸を0.5〜2重量%含有させること、特許文献7では脂溶性の酸化防止剤を脂肪酸に含有させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53−143722号公報
【特許文献2】特開2002−161428号公報
【特許文献3】特開平09−296322号公報
【特許文献4】特開平09−296321号公報
【特許文献5】特開平08−337918号公報
【特許文献6】特開2007−138324号公報
【特許文献7】特開2008−285779号公報
【特許文献8】特開2007−314914号公報
【特許文献9】特開2008−303245号公報
【特許文献10】特表2009−544866号公報
【特許文献11】特開2010−195735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、油脂は時間の経過とともに酸化され、臭気が発生することがある。また、油脂に対する酸化防止効果を得るため、酸化防止剤を添加すると、酸化防止剤自身の酸化影響により、臭気や着色が発生することもある。
【0007】
本発明は、従来の問題を解決するため、油脂を酸化安定性が良好な状態でレーヨン繊維を構成するセルロース内に分散させるとともに、臭気及び/又は着色の発生を抑制した油脂含有レーヨン繊維、その製造方法及び繊維構造物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の油脂含有レーヨン繊維は、レーヨン繊維内に油脂及び酸化防止剤が含有された油脂含有レーヨン繊維であり、上記レーヨン繊維内のセルロースと上記油脂とは非相溶状態で、且つ上記油脂は上記セルロース中に微分散されており、上記油脂は、脂肪酸及びそのグリセリンエステルから選ばれる少なくとも一つの脂肪酸成分を含み、上記酸化防止剤は、α型トコフェロール及びトコトリエノールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、γ型トコフェロール及びトコトリエノールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、α型トコフェロール、γ型トコフェロール及びトコトリエノールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、α型トコフェロールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、γ型トコフェロールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、又はトコトリエノールを必須成分として55質量%以上含む酸化防止剤であることを特徴とする。
【0009】
本発明の油脂含有レーヨン繊維の製造方法は、油脂と酸化防止剤と乳化剤を混合してエマルジョン液を調製し、セルロースを含むビスコース原液に、上記エマルジョン液を混合して紡糸用ビスコース液を調製し、上記紡糸用ビスコース液をノズルより押し出して紡糸し、凝固再生して油脂含有レーヨン繊維としており、上記油脂は、脂肪酸及びそのグリセリンエステルから選ばれる少なくとも一つの脂肪酸成分を含み、上記酸化防止剤は、α型トコフェロール及びトコトリエノールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、γ型トコフェロール及びトコトリエノールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、α型トコフェロール、γ型トコフェロール及びトコトリエノールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、α型トコフェロールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、γ型トコフェロールを必須成分として80質量%以上含む酸化防止剤、又はトコトリエノールを必須成分として55質量%以上含む酸化防止剤であることを特徴とする。

【0010】
本発明の繊維構造物は、上記油脂含有レーヨン繊維を含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油脂含有レーヨン繊維は、脂肪酸成分を含む油脂をα型トコフェロール、γ型トコフェロール及びトコトリエノールからなる群から選ばれる少なくとも一つのビタミンE成分を55質量%以上含む酸化防止剤と併用してレーヨン繊維中に含有させることにより、肌への馴染みが良好なレーヨン繊維とすることができる。また、酸化防止剤とともに油脂が繊維中に分散されて多数存在することにより、油脂の酸化安定性が向上し、油脂自体のもつ機能が発揮され、ソフトな風合いの繊維となるとともに、油脂の酸化に伴う繊維強度の低下も防止できる。また、α-トコフェロール、γ-トコフェロール及びトコトリエノールからなる群から選ばれる少なくとも一つのビタミンE成分を55質量%以上含む酸化防止剤と油脂を併用することにより、臭気や着色の発生を抑制できる。
【0012】
本発明の製造方法は、油脂と酸化防止剤と乳化剤を混合して調製したエマルジョン液を、セルロースを含むビスコース原液に混合して紡糸用ビスコース液とすることにより、酸化されやすい油脂であっても、酸化安定性が良好な状態で繊維中に分散して含有させることができる。
【0013】
本発明の繊維構造物は、肌に優しく、ヌメリ感があり、ソフトな風合いとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、椿油にdl-α-トコフェロールを添加した場合の過酸化物価の経時変化を示すグラフである。
図2図2は、椿油にトコトリエノールを添加した場合の過酸化物価の経時変化を示すグラフである。
図3図3は、椿油にγ-トコフェロールを添加した場合の過酸化物価の経時変化を示すグラフである。
図4図4は、オリーブオイルにトコトリエノールを添加した場合の過酸化物価の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のレーヨン繊維は、レーヨン繊維内に油脂及び酸化防止剤が含有された油脂含有レーヨン繊維である。
【0016】
本発明に用いられる油脂は、脂肪酸及びそのグリセリンエステルから選ばれる少なくとも一つの脂肪酸成分を含む。上記脂肪酸としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸が挙げられ、上記脂肪酸のグリセリンエステルとしては、飽和脂肪酸のグリセリンエステル、飽和脂肪酸の混合グリセリンエステル、不飽和脂肪酸のグリセリンエステル、不飽和脂肪酸の混合グリセリンエステル、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の混合グリセリンエステル等が挙げられる。一般に脂肪酸は、炭素数が増加すると融点が上昇し、同じ炭素数の場合、飽和脂肪酸に比べて不飽和脂肪酸の融点は低い傾向にある。脂肪酸成分を含有し、20℃において液体の天然由来の油脂は融点が20℃以下であるものが多く、常温で固体状の油脂に比べて流動性が高く、肌になじみやすい。一方、20℃において固体の油脂、特に天然由来の油脂は、融点が20℃以上であるものが多く、常温で液状の油脂に比べて、肌に良い効果を与えることができ、常温で液体の油脂にはない機能が付与できる点で好ましい。本発明において、20℃において液体である油脂(以下、「液状油脂」ともいう)とは、油脂の融点が20℃以下であることを意味し、20℃において固体である油脂(以下、「固状油脂」ともいう)とは、油脂の融点が20℃以上であることを意味する。
【0017】
本発明に用いられる油脂に含まれる脂肪酸成分は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸及びそれらのグリセリンエステルのいずれであってもよい。脂肪酸の炭素数としては、特に限定されないが、例えば、炭素数16〜22であることが好ましい。上記不飽和脂肪酸としては、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エルシン酸等から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。上記飽和脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ペヘニン酸等から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0018】
上記液状油脂は、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸を含むことが好ましく、飽和脂肪酸の含有量が10〜40質量%、不飽和脂肪酸の含有量が60〜90質量%であることがより好ましい。飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸を含むと、それぞれの脂肪酸の持つ様々な効果を享受できる点で好ましい。
【0019】
通常、油脂の融点は、油脂に含まれる脂肪酸の融点に依存する。例えば、複数の脂肪酸を含む油脂であれば、油脂として測定したときの融点をいい、その融点が20℃以下であれば20℃において液体である油脂(液状油脂)に含まれ、融点が20℃を超えると20℃において固体である油脂(固状油脂)に含まれる。
【0020】
上記液状油脂が天然由来の油脂である場合、飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸のグリセリンエステルとして存在していることがある。グリセリンエステルとして存在することにより、各々の脂肪酸の有する機能を幅広く発揮することができる。また、融点について、油脂の融点が低いことにより、流動性が高くなり肌になじみやすくなる。具体的には、天然由来の液状油脂の融点は、−30〜20℃であることが好ましい。より好ましくは、−25〜15℃である。
【0021】
上記天然由来の液状油脂としては、例えば、オリーブ果実より得られるオリーブオイル(通常、パルミチン酸9〜18%、パルミトレイン酸0〜3%、ステアリン酸2〜4%、オレイン酸60〜80%、リノール酸4〜16%、リノレン酸0〜1%を含む)、ブドウ種子より得られるグレープシードオイル(通常、パルミチン酸6〜8%、ステアリン酸3〜10%、オレイン酸18〜20%、リノール酸67〜71%、リノレン酸0〜1%を含む)、トウモロコシ胚芽より得られるコーンオイル(通常、パルミチン酸9〜12%、ステアリン酸1〜3%、オレイン酸25〜33%、リノール酸50〜60%、リノレン酸0〜2%を含む)、大豆種子より得られる大豆油(通常、パルミチン酸10〜12%、ステアリン酸2〜5%、オレイン酸20〜25%、リノール酸50〜57%、リノレン酸5〜9%を含む)、米糠より得られる米油(通常、ミリチリン酸0〜1%、パルミチン酸16〜17%、ステアリン酸1〜2%、オレイン酸40〜44%、リノール酸35〜37%、リノレン酸0〜2%、アラキジン酸0〜1%を含む)、ワタの種子より得られる綿実油(通常、ミリチリン酸0〜3%、パルミチン酸20〜30%、ステアリン酸1〜5%、オレイン酸15〜30%、リノール酸40〜52%、アラキジン酸0〜1%を含む)、くるみの種子より得られるくるみ油(通常、パルミチン酸6〜8%、ステアリン酸1〜3%、オレイン酸14〜21%、リノール酸57〜72%リノレン酸10%を含む)、落花生の種子から得られる落花生油(通常、パルミチン酸10〜12%、ステアリン酸2〜5%、オレイン酸40〜49%、リノール酸30〜37%、リノレン酸0〜2%、アラキジン酸1〜2%、エイコセン酸0〜2%、ベヘン酸0〜4%、リグノセリン酸0〜2%を含む)、アブラナの種子より得られる菜種油(通常、ローエルシックタイプではパルミチン酸3〜6%、ステアリン酸1〜3%、オレイン酸46〜59%、リノール酸21〜32%、リノレン酸9〜16%、アラキジン酸0〜1%、エルシン酸1〜5%を含む)、ツバキ科のヤブツバキの種子から得られる椿油(通常、パルミチン酸8%、ステアリン酸2%、オレイン酸79〜85%、リノール酸3〜9%、リノレン酸0〜1%を含む)等が挙げられる。
【0022】
中でも好ましい液状油脂は椿油である。椿油はツバキ科カメリア属植物の種子から得られる植物性油脂であり、常温(20℃)で液状の油脂である。日本では伊豆大島や長崎五島を中心に栽培されているツバキ節のヤブツバキの種子から生産されている。また、同じくツバキ節のトウツバキ種子から生産されるトウツバキ油の他、サザンカ節のサザンカやユチャ、チャ節のチャノキ等の種子から得られるものが挙げられる。椿油の成分は、オレイン酸を含む不飽和脂肪酸のグリセリンエステルが主成分で、他にトコロフェノール、サポニンも微量に含まれる。椿油を用いることにより、オレイン酸の有する角質層保護、乾燥肌改善効果を繊維に付与することができる。
【0023】
椿油の脂肪酸組成は、椿油の産地、収穫時期、気候条件等によって原料品質が変動するが、飽和脂肪酸が10〜30質量%、不飽和脂肪酸が70〜90質量%であることが好ましい。上記範囲内にあると、各脂肪酸成分の機能を有効に発揮することができる。
【0024】
また、好ましい液状油脂はオリーブオイルである。オリーブオイルはモクセイ科オリーブ属オリーブ種植物の果実から得られる植物性油脂であり、常温(20℃)で液状の油脂である。オリーブオイルの成分は、オレイン酸を含む不飽和脂肪酸のグリセリンエステルが主成分で、他にトコロフェノール、βカロテン、ポリフェノールも微量に含まれる。オリーブオイルを用いることにより、オレイン酸の有する角質層保護、乾燥肌改善効果を繊維に付与することができる。
【0025】
オリーブオイルの脂肪酸組成は、産地、収穫時期、気候条件等によって原料品質が変動するが、飽和脂肪酸が20〜40質量%、不飽和脂肪酸が60〜80質量%であることが好ましい。上記範囲内にあると、各脂肪酸成分の機能を有効に発揮することができる。
【0026】
上記固状油脂は、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸を含むことが好ましく、飽和脂肪酸が30〜55質量%、不飽和脂肪酸が45〜70質量%であることがより好ましい。飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸を含むと、それぞれの脂肪酸の持つ様々な効果を享受できる点で好ましい。例えば、飽和脂肪酸は腐敗しにくく、非常に安定性が良く、高いモイスチャー効果があるので、皮下組織で水分を保留する性質により保湿効果を有しており、好ましい。
【0027】
通常、固状油脂の融点は、油脂に含まれる脂肪酸の融点に依存する。例えば、複数の脂肪酸を含む油脂であれば、油脂として測定したときの融点をいい、その融解ピークがシングルピークの場合はその融点が20℃以上であれば20℃において固体である油脂に含まれ、融解ピークが複数現れる場合は、少なくとも一つの融解ピークが20℃以上であれば20℃において固体である油脂に含まれる。
【0028】
上記固状油脂が天然由来の油脂である場合、飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸のグリセリンエステルとして存在していることがある。グリセリンエステルとして存在することにより、各々の脂肪酸の有する機能を幅広く発揮することができる。また、融点について、融点の高い脂肪酸を含む場合であっても、ブロードな融解ピークを示して低融点側にシフトするので、エマルジョン化しやすい。具体的には、天然由来の固状油脂の融点は、20〜82℃であることが好ましい。より好ましくは、25〜60℃である。
【0029】
上記天然由来の固状油脂としては、例えば、ババスの種子より得られる融点22〜26℃のババス油(通常、カプリル酸4.1〜4.8%、カプリン酸6.6〜7.6%、ラウリン酸44.1〜45.1%、ミリスチン酸15.4〜16.5%、パルミチン酸5.8〜8.5%、ステアリン酸2.7〜5.5%、オレイン酸11.9〜16.1%、リノール酸1.4〜2.8%を含む);shoreastenopteraの種子より得られる融点34〜39℃のボルネオ脂(通常、パルミチン酸18%、ステアリン酸43.3%、オレイン酸37.4%、リノール酸0.2%、アラキジン酸1.1%を含む);カカオの種子より得られる融点32〜35℃のカカオ脂(通常、パルミチン酸24.4%、ステアリン酸35.4%、オレイン酸38.1%、リノール酸2.1%を含む);油ヤシの種子から得られる融点27〜50℃のパーム油(通常、ラウリン酸0〜1%、ミリスチン酸1〜2%、パルミチン酸39〜46%、ステアリン酸3〜5%、オレイン酸38〜44%、リノール酸8〜11%を含む);乳牛の乳から得られる融点25〜35℃のバター(通常、酪酸3.7%、ヘキサン酸2.3%、オクタン酸1.4%、デカン酸2.9%、ラウリン酸3.6%、ミリスチン酸、11.9%、ペンタデカン酸1.7%、パルミチン酸33.1%、ヘプタデカン酸1%、ステアリン酸10.0%、アラキジン酸0.2%、ベヘン酸0.1%、リグノセリン酸0.1%、デセン酸0.3%、ミリストレイン酸1.1%、パルミトレイン酸1.7%、ヘプタデセン酸0.3%、オレイン酸21.8%、エイコセン酸0.2%、リノール酸2.1%、リノレン酸0.5%、イコサトリエン酸0.1%、アラキドン酸0.1%を含む);アカテツ科のシアバターノキの種子の胚から得られる融点25〜45℃のシアバター(通常、オレイン酸38〜50%、ステアリン酸34〜45%、パルミチン酸3〜9%、リノール酸5〜8%、アラキジン酸1〜2%を含む);牛脂;ショートニング(植物油を原料とした食用油、マーガリンから水分と添加物を除いて純度の高い油脂にしたもの);ラード;馬油;シャー脂;ヤシ油などが挙げられる。
【0030】
特に、ヒトや動物の皮膚に接触して使用する場合は、上記固状油脂の融点は、体温近傍に融解ピークを有する固状油脂であることが好ましい。具体的には、固状油脂の融点は、30〜45℃であることが好ましい。融点が上記範囲内にあると、皮膚に接触した時に固状油脂が軟化または溶融するので、肌への馴染みが良好であり、風合いも柔軟となり、好ましい。
【0031】
上記固状油脂の融点において、融解ピークがブロードである方が油脂含有レーヨン繊維及び繊維構造物の雰囲気温度の変化に対して安定であり、肌への馴染みが良好であり、風合いも柔軟となり、好ましい。例えば、後述するDSC法により測定される融解ピークがシングルピークである場合、融解ピークにおける半価幅が大きいほどピークがブロードであるといえる。上記固状油脂の融解ピークにおける半価幅は、3〜20℃であることが好ましい。より好ましくは、5〜15℃である。また、後述するDSC法により測定される融解ピークが複数のピークを有する場合、融解ピークの数は、2〜8であることが好ましい。また、それぞれの融解ピークのうち、最低温度と最高温度の差は、10〜60℃であることが好ましい。このような複数の融解ピークを有する油脂であると、油脂含有レーヨン繊維及び繊維構造物の雰囲気温度の変化に対して安定であり、肌への馴染みが良好であり、風合いも柔軟となり、好ましい。本発明において、「融解ピークにおける半価幅」とは、DSC法により測定される融解ピーク(吸熱ピーク)の頂点Xから温度軸に下ろした垂線と、吸熱ピークのベースラインとの交点をYとしたときに、線分X−Yを二等分する点をMとし、Mを通り温度軸に平行な直線と吸熱曲線との交点をそれぞれN1及びN2としたときに、線分N1−N2の長さ(温度幅)をいう。
【0032】
中でも好ましい固状油脂はシアバター(shea butter)である。シアバターはアカテツ科のシアバターノキの種子の胚から得られる植物性油脂であり、常温(20℃)でワックス状の固体である。主にアフリカのナイジェリア、マリ、ブルキナファソ、ガーナで生産されている。食用でもあるが、近年ではハンドクリーム、石鹸、化粧品などに混合されることで広く知られている。シアバターの成分は、ステアリン酸とオレイン酸を含む脂肪酸のグリセリンエステルが主成分で、他にトコロフェノール、カロチノイド、トリテルペンも微量に含まれる。シアバターを用いることにより、ステアリン酸の有する皮脂の保護効果、抗酸化作用、皮脂分の補油効果、オレイン酸の有する角質層保護、乾燥肌改善効果を有する場合がある。
【0033】
シアバターの原料品質は産地、収穫時期、気候条件などにより変動するが、シアバターの脂肪酸組成は、飽和脂肪酸が30〜55質量%、不飽和脂肪酸が45〜70質量%であることが好ましい。上記範囲内にあると、各脂肪酸成分の機能を有効に発揮することができる。
【0034】
シアバターの融点は、ブロードな融解ピークを有しており、35〜40℃であることが好ましい。シアバターの融解ピークにおける半価幅は、5〜15℃であることが好ましい。
【0035】
また、上記油脂のうち、ヒトの皮脂の脂肪酸組成に近い油脂を用いると、肌への馴染みが良く、好ましい。このような油脂は、飽和脂肪酸としてパルミチン酸を油脂の脂肪酸組成の10質量%以上含むことが好ましい。より好ましくは、15〜35質量%含む。パルミチン酸は、皮脂腺の増殖を妨げる働きがあり、肌、髪、粘膜等の細胞活性させるビタミンAを安定化させる働きを有している。また、不飽和脂肪酸としてオレイン酸を油脂の脂肪酸組成の10質量%以上含むことが好ましい。より好ましくは、15〜55質量%含む。上記脂肪酸組成の範囲を満たす油脂としては、牛脂、ショートニング、ココアバター、バター、馬油、ボルネオ脂などが挙げられる。
【0036】
本発明の油脂含有レーヨン繊維において、上記油脂はセルロースに対して0.5〜15質量%の範囲で存在することが好ましい。より好ましくは、0.8〜14質量%であり、さらに好ましくは1〜10質量%の範囲である。上記範囲であれば、皮膚の乾燥、老化防止、オレイン酸による角質層保護、乾燥肌改善、リノール酸による新陳代謝促進、リノレン酸による皮膚の細胞機能正常化等の効果を期待できる。
【0037】
本発明で用いる酸化防止剤は、α型トコフェロール、γ型トコフェロール及びトコトリエノールからなる群から選ばれる少なくとも一つのビタミンE成分を55質量%以上含む。該酸化防止剤と油脂を併用することによって、油脂の酸化を防止することができ、ひいては油脂の酸化による繊維強度の低下を防止できるとともに、臭気及び/又は着色の発生を防抑制できる。
【0038】
上記酸化防止剤は、α型トコフェロール、γ型トコフェロール及びトコトリエノールからなる群から選ばれる少なくとも一つのビタミンE成分(以下において、必須成分と記す。)を55質量%以上含む酸化防止剤であればよく、特に限定されない。油脂に対する酸化防止効果により優れるという観点から、γ型トコフェロールを55質量%以上含むことが好ましく、γ型トコフェロールを80質量%以上含むことがより好ましい。また、油脂の酸化を効果的に防止しつつ、臭気及び着色の発生を抑制する効果により優れるという観点から、トコトリエノールを55質量%以上含むことが好ましく、トコトリエノールを60質量%以上含むことがより好ましい。トコトリエノールとしては、α型、β型、γ型、δ型のいずれのトコトリエノールを含んでもよく、油脂に対する酸化防止効果により優れるという観点から、α型トコトリエノール及び/又はγ型トコトリエノールを20質量%以上含むことが好ましく、α型トコトリエノール及びγ型トコトリエノールを合計で50質量%以上含むことが好ましい。また、油脂の酸化を防止しつつ、着色の発生を抑制する効果に優れるという観点から、α型トコフェロールを55質量%以上含むことが好ましく、α型トコフェロールを80質量%以上含むことがより好ましい。上記必須成分のビタミンE成分を55質量%以上含む酸化防止剤としては、例えば、γ型トコフェロールの場合は、J−オイルミルズ社製「γ70」、エーザイフードケミカル社製「ガンマブライト90」、トコトリエノールの場合は、オリザ油化社製「オリザトコトリエノール−70」、「オリザトコトリエノール−90」、エーザイフードケミカル社製「トコリット(登録商標)92」などが挙げられる。
【0039】
上記酸化防止剤は、必須成分に加えて、他の成分を含んでもよい。上記他の成分としては、例えば、脂溶性の酸化防止剤及び水溶性の酸化防止剤のいずれを用いてもよい。油脂との相溶性の観点から、他の成分は、脂溶性酸化防止剤であることが好ましい。
【0040】
上記脂溶性酸化防止剤としては、例えばβ型トコフェロール、δ型トコフェロール、β−カロチン及びユビキノール(CoQ10)等の天然の酸化防止剤、並びにBHT(ジブチルヒドロキシルトルエン)及びBHA(ブチルヒドロキシアニソール)等の合成酸化防止剤が挙げられる。中でも、皮膚に対する低刺激性の観点から、天然酸化防止剤であることが好ましい。
【0041】
上記水溶性酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸、イソアスコルビン酸;カテキン、アントシアニン、タンニン、クエルセチン(ルチン、クエルシトリン等の各種配糖体、酵素処理イソクエルシトリン等の酵素処理及び化学処理を加えたものを含む)、ミリシトリン、ミリセチン、イソフラボン等のフラボノイド;クロロゲン酸、エラグ酸、クルクミン等のフェノール酸;リンゴポリフェノール、カカオマスポリフェノール等のポリフェノール;アスタキサンチン、ルテイン等の水に可溶なカルテノイドから選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。また、上記水溶性の酸化防止剤を含む植物抽出物は、例えば、茶、ローズマリー、葡萄、柿やヤマモモ等の抽出物であってもよい。上記植物抽出物は、特に制限されないが、例えば、上記植物を粉末にした後、水や含水アルコール等の溶媒を用いて抽出する植物の溶媒抽出液やそれを濃縮若しくは乾燥したもの等が挙げられる。また、アントシアニンを含む市販の葡萄果汁や、ブドウ果皮色素等を用いてもよい。
【0042】
上記酸化防止剤は、油脂の酸化をより効果的に防止しつつ臭気や着色の発生をより効果的に抑制するという観点から、油脂に対して0.03〜15質量%添加されることが好ましい。また、上記酸化防止剤が、γ型トコフェロール及びトコトリエノールからなる群から選ばれる少なくとも一つのビタミンE成分を55質量%以上含む場合は、油脂の酸化をより効果的に防止しつつ臭気や着色の発生をより効果的に抑制するという観点から、油脂に対して0.04〜8質量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.06〜3.0質量%添加されることがより好ましい。
【0043】
上記酸化防止剤の油脂に対する効果は活性酸素法(AOM)で確認することができる。活性酸素法(AOM)は、試料(例えば、油脂と酸化防止剤の混合物)を98℃に加温し、同時に試料中に空気を吹き込むことで酸化を促進し、短時間で油脂の安定性を評価する試験方法であり、一定時間ごとに試料の過酸化物価(POV)を測定して酸化の進行度を確認する。POVは、油脂酸化の経時変化を調べるのに適している。
【0044】
POV測定の原理は以下のとおりである。POVとは、油脂が空気中の酸素を取り込んで生成するハイドロパーオキサイド(過酸化物)を、下記化学式(1)で示すようにヨウ化カリウム(KI)と反応させ、遊離したヨウ素(I2)を下記化学式(2)で示すようにチオ硫酸ソーダ溶液で滴定し、試料1kgに対するミリ当量数(単位:meq/kg)で表したものである。
【0045】
【化1】
【0046】
【化2】
【0047】
POVは、具体的には、以下のように測定する。
(1)試料3gを精密に量り採り、共栓三角フラスコに入れてクロロホルムと氷酢酸の混合液(体積比2:3)35mlを加えて溶解する。均一に溶解しないときは、さらにクロロホルムと氷酢酸の混合液(体積比2:3)を適当に加える。
(2)次いで、フラスコ内の空気を窒素ガス又は二酸化炭素を通じながら飽和ヨウ化カリウム溶液1mlを加え、直ちに共栓をして約1分間混ぜた後、デンプン試液を指示薬として、0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し、過酸化物価(POV)を次式により算出する。
過酸化物価(meq/kg)=(a/S)×10
S:試料の採取量(g)、a:0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液の滴定量(ml)
(3)AOM安定性を、POVが100に達するまでに要した時間(hr)とPOVが200に達するまでに要した時間(hr)で表示する。それぞれの数値は小さいほど、短時間で油脂の酸化が進行していることを意味する。
【0048】
繊維中に均一に微分散されることで油脂の特性が発揮できるという観点から、上記油脂含有レーヨン繊維において、上記油脂を含有する粒子の平均粒子径が0.02〜0.8μmであることが好ましい。より好ましくは、上記油脂を含有する粒子の平均粒子径が0.04〜0.5μmであり、0.06〜0.25μmであることがさらに好ましい。
【0049】
上記油脂含有レーヨン繊維内の上記油脂を含有する粒子の平均粒子径は、脱油処理後の上記油脂含有レーヨン繊維を用いて測定することができる。具体的には、脱油処理後の上記油脂含有レーヨン繊維における空隙部の平均孔径を測定することで、上記油脂含有レーヨン繊維内の上記油脂を含有する粒子の平均粒子径を確認することができる。脱油処理後の上記油脂含有レーヨン繊維における空隙部は、脱油処理により微分散していた油脂が抜けることにより形成されるものであるため、脱油処理後の上記油脂含有レーヨン繊維における空隙部の平均孔径を測定することで、上記油脂含有レーヨン繊維内の上記油脂を含有する粒子の平均粒子径を確認することができる。上記油脂含有レーヨン繊維の脱油処理後の空隙部の平均孔径は、脱油処理後の繊維の断面写真(走査型電子顕微鏡写真、倍率3000倍)を用いて測定する。具体的には、脱油処理後の繊維の断面写真(走査型電子顕微鏡写真、倍率3000倍)を画像処理により倍率9010倍に拡大し、印刷した紙面上から任意の繊維の断面をサンプリングし、その繊維断面における繊維の外周から3μm内部までの間に存在する空隙部の直径を計測し、計測した100個の空隙部の直径を平均して空隙部の平均孔径とする。なお、楕円状の空隙部は長径及び短径を計測して算出した面積から真円直径に換算し、空隙部の直径とする。上記において、脱油処理は、下記のように行う。
(I)試料約2.3gを精秤し、底部に小さい穴の空いた試料管に詰める。
(II)底部の穴を塞ぎ、抽出溶媒としてメタノール10mlを試料管に注加し、一定時間静置し浸透させてからプレス装置によりメタノール処理液を抽出する。
(III)同じ試料を使用して上記の操作(II)による抽出を20回繰り返した後、試料管から取り出した試料を水洗し、105℃、2時間で乾燥して脱油処理後の繊維を得た。
【0050】
本発明の油脂含有レーヨン繊維は、特に限定されないが、下記のように製造することが好ましい。油脂をエマルジョン化して得られたエマルジョン液を、セルロースを含むビスコース原液に添加して紡糸用ビスコース液を調製し、得られた紡糸用ビスコース液を紡糸して油脂含有レーヨン繊維を得ることができる。
【0051】
上記油脂と、上記酸化防止剤と、乳化剤を混合してエマルジョン液を調製する。上記酸化防止剤のエマルジョン液中に占める割合は、0.005〜6.0質量%であることが好ましい。より好ましくは0.01〜4.0質量%、さらに好ましくは0.02〜2.0質量%である。上記範囲内であると、油脂の酸化安定性が向上して、油脂自体のもつ機能が発揮され、ソフトな風合いの繊維となるとともに、油脂の酸化に伴う繊維強度の低下を防止できる。乳化方法としては転相乳化法、強制乳化方法等既知の乳化法を用いることができる。
【0052】
上記乳化剤としては、上記油脂と、上記酸化防止剤と混合してエマルジョン液を調製できるものであればよく、特に限定されない。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化ルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルスチレン化ルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンβ-ナフチルエーテル、ポリオキシアルキレンひまし油エーテル、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテル等が挙げられる。特に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルであることが好ましい。
【0053】
上記乳化剤の添加量は、油脂に対して7〜60質量%であることが好ましい。より好ましくは15〜50質量%であり、さらに好ましくは15〜35質量%である。乳化剤の添加量が7質量%以上であれば安定性が良好なエマルジョン液が得られやすい。また、乳化剤のトータル添加量が60質量%以下であれば、精練工程で泡が多く発生することを抑制し、精練異常になりにくい。
【0054】
上記エマルジョン液におけるエマルジョンの平均粒子径は、0.02〜1μmであることが好ましい。より好ましい平均粒子径は、0.05〜0.8μm、さらに好ましくは0.08〜0.6μm、さらにより好ましくは0.1〜0.4μmであり、特には0.3μm未満であるとよい。平均粒子径が上記範囲内にあると、油脂が微分散され、微小領域を多数含むレーヨン繊維が得られるので、好ましい。平均粒子径は、乳化剤の組成、乳化剤の添加量及び乳化条件によりコントロールすることができる。また、上記エマルジョン液は、エマルジョンの粒子径が3μm以上の粒子が3%以下であることが好ましい。より好ましくは、1%以下であり、さらに好ましくは0.1%以下である。エマルジョンの粒子径が上記範囲内にあると、油脂が微分散され、微小領域を多数含むレーヨン繊維が得られるので、好ましい。本発明において、エマルジョンの粒子径及び平均粒子径は、光散乱法で測定・算出したものをいう。
【0055】
紡糸液(ビスコース液)としては、セルロースが7〜10質量%、水酸化ナトリウムが5〜8質量%、二硫化炭素が2〜3.5質量%のビスコース原液を調製して用いるとよい。このとき、必要に応じて、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、二酸化チタン等の添加剤を使用することもできる。紡糸液(ビスコース液)の温度は19〜23℃に保持するのが好ましい。上記セルロースを含むビスコース原液に、上記で得られたエマルジョン液を混合して紡糸用ビスコース液(油脂含有用レーヨン繊維紡糸用ビスコース液)を調製する。
【0056】
上記油脂の添加量は、セルロースに対して0.5〜15質量%の範囲が好ましい。より好ましくは、0.8〜14質量%であり、さらに好ましくは1〜10質量%の範囲である。上記範囲であれば、皮膚の乾燥、老化防止、オレイン酸による角質層保護、乾燥肌改善、リノール酸による新陳代謝促進、リノレン酸による皮膚の細胞機能正常化等の効果を期待できる。上記酸化防止剤の添加量は、油脂に対して0.03〜15質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.04〜8.0質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.06〜3.0質量%の範囲である。
【0057】
紡糸浴(ミューラー浴)は、例えば、硫酸を95〜130g/リットル、硫酸亜鉛を10〜17g/リットル、硫酸ナトリウムを290〜370g/リットル含み、温度が45〜60℃であることが好ましい。より好ましい硫酸濃度は、100〜120g/リットルである。紡糸ノズルとしては、例えば、通常の円形ノズルを用いることができる。紡糸ノズルの選定は、目的とする生産量にもよるが、直径0.05〜0.12mmの円形ノズルを1000〜20000ホール有するものが好ましい。
【0058】
上記紡糸ノズルを用いて、紡糸用ビスコース液を紡糸浴中に押し出して紡糸し、凝固再生させる。紡糸速度は35〜70m/分の範囲が好ましい。また、延伸率は39〜50%が好ましい。ここで延伸率とは、延伸前の長さを100%としたとき、延伸後の長さが何%伸びたかを示すものである。倍率で示すと、延伸前が1、延伸後は1.39〜1.50倍となる。
【0059】
得られたレーヨン繊維糸条を所定の長さにカットし、精練処理を行う。精練工程は、通常の方法で、熱水処理、水硫化処理、漂白、酸洗い及び油剤付与の順で行うとよい。
【0060】
その後、必要に応じて圧縮ローラーや真空吸引等の方法で余分な油剤、水分を繊維から除去した後、乾燥処理を施してもよい。
【0061】
本発明の油脂含有レーヨン繊維は、繊度が0.3〜6.0dtexであることが好ましい。より好ましくは0.6〜4.0dtexであり、さらに好ましくは0.9〜3.3dtexである。繊度が0.3dtex未満であると、延伸時の単繊維切れが発生しやすい傾向にある。繊度が6.0dtexを越えると、衣料用途には使いにくい恐れがある。
【0062】
本発明の油脂含有レーヨン繊維は、長繊維状(例えば、トウ、フィラメント、不織布等)、短繊維状(例えば、湿式抄紙用原綿、エアレイド不織布用原綿、カード用原綿等)の形態で提供され、繊維構造物を形成することが好ましい。上記繊維構造物としては、例えば、トウ、フィラメント、紡績糸、中綿(詰め綿)、紙、不織布、織物、編物が好ましく、紡績糸、編物、織物及び不織布からなる群から選ばれる一種であることがより好ましい。
【0063】
本発明の繊維構造物は、上記レーヨン繊維が油脂を含むため、風合いが良好である。かかる風合いを詳細に説明すると、本発明の油脂含有レーヨン繊維を用いると、従来のレーヨン繊維に比べて繊維構造物にしたときに表面にヌメリ感があり、且つソフトな風合いが発現するので、肌に優しい風合いで商品に格段の高級感効果が発揮できる(以下において、風合い効果とも記す。)。また、本発明の油脂含有レーヨン繊維では油脂を繊維内に練り込んでいるので、本発明の風合い効果は、従来の繊維構造物の最終仕上げの段階で柔軟剤を付与する、いわゆる後加工仕上げと比較して抜群の洗濯耐久性を有する。
【0064】
本発明の繊維構造物として、例えば、紡績糸とした場合、上記油脂含有レーヨン繊維単独、又はその他の再生セルロース繊維、コットン、麻、ウール、アクリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン等の他の繊維と混紡、複合することが好ましい。このような紡績糸は、例えば織物や編物に加工されて衣料等に用いることができる。
【0065】
本発明の繊維構造物として、織物や編物とした場合、織物や編物の組織は特に限定されない。例えば、編物では、丸編み、横編み、経編み(トリコット)が、織物では、平織、綾織、繻子織が、本発明の風合い効果がよく発揮できることから好ましい繊維構造物の形態である。
【0066】
本発明の繊維構造物として、例えば、不織布とした場合、上記油脂含有レーヨン繊維単独、又はその他の再生セルロース繊維、コットン、麻、ウール、アクリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン等の他の繊維と混綿して用いることができる。不織布の形態としては、例えば、湿式不織布(湿式抄紙)、エアレイド不織布、水流交絡不織布、ニードルパンチ不織布等が挙げられる。このような不織布は、例えば、ウェットティッシュ、対人・対物用ワイパー等のウェットシート、水解シート等に用いることができる。また、化粧パフ、吸収体等の衛生シートに用いることができる。
【0067】
本発明の繊維構造物において、他の繊維と混用する場合は、上記油脂含有レーヨン繊維は10質量%以上含有させることが好ましい。より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上である。混用する場合の油脂含有レーヨン繊維の含有量の上限は、90質量%であることが好ましい。油脂含有レーヨン繊維が10質量%未満の場合は、上述したソフトな風合いが得られにくくなる傾向にある。また、90質量%を超える場合は、レーヨン繊維の比率が多くなるため、上述した風合い効果に加えて、吸湿性、放湿性、吸湿発熱性、及びドレープ性が高いが、レーヨン繊維本来の低強度、低乾燥性(乾きにくい)、保温性が低い、低ストレッチ性となる傾向にあり、かかる性能を補うには、他の繊維と複合することが好ましい。
【0068】
上記油脂含有レーヨン繊維に複合する他の繊維は、目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。例えば、強度を向上させるにはポリエステル繊維を複合することが好ましく、上記油脂含有レーヨン短繊維とポリエステル繊維を混紡する方法、あるいは上記油脂含有レーヨン繊維とポリエステル繊維を長繊維同士で合撚、交編、交織することで複合することが好ましい。また、汗や洗濯の低乾燥性改善にはポリエステル繊維を複合することが好ましい。保温性改善には、ポリアクリル繊維が好ましい。低ストレッチ性改善には、ポリウレタン系弾性繊維が好ましい。発色性アップや屈曲強度改善には、ポリアミド繊維が好ましい。また、コットン(綿)の硬い風合いを改善することやウールの暖かさを加味できるので、かかる繊維を用途、要求に合わせてそれぞれ複合することが好ましい。
【0069】
本発明の油脂含有レーヨン繊維は、混率20〜50質量%での他の繊維との混紡が好ましく用いられ、特にニット(編地)あるいは織布に加工して用いると、アウター衣料においては風合いが良好であり、ボトム、インナー衣料、靴下等においては保湿性、風合いが良好である。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。なお、下記において、単に%と表記した場合は、質量%を意味する。
【0071】
まず、測定方法について説明する。
【0072】
<融点>
液状油脂の場合は、示差走査熱量分析計(DSC)を使用し、フローガスとして窒素ガスを30ml/min速度で流し、−68℃から20℃まで昇温速度5℃/分で測定し、吸熱開始前の直線部延長線と吸熱中の直線部延長線の交点の温度を融点(℃)として求めた。なお、固状油脂の場合は、示差走査熱量分析計(DSC)を使用し、フローガスとして窒素ガスを30ml/min速度で流し、0℃〜90℃まで昇温速度5℃/分で測定し、吸熱ピークの極小点を融点(℃)として求めた。
【0073】
<平均粒子径>
エマルジョン液の平均粒子径は、(株)堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒子分布測定装置LA−950V2を使用して測定した。
【0074】
<活性酸素法>
活性酸素法(AOM)は、試料(油脂又は油脂と酸化防止剤の混合物)を98℃に加温し、同時に試料中に空気を吹き込むことで酸化を促進し、短時間で油脂の安定性を評価する試験方法であり、一定時間ごとに試料の過酸化物価(POV)を測定して酸化の進行度を確認した。POVは、具体的には、以下のように測定した。
(1)試料3gを精密に量り採り、共栓三角フラスコに入れてクロロホルムと氷酢酸の混合液(体積比2:3)35mlを加えて溶解した。均一に溶解しないときは、さらにクロロホルムと氷酢酸の混合液(体積比2:3)を適当に加えた。
(2)次いで、フラスコ内の空気を窒素ガス又は二酸化炭素を通じながら飽和ヨウ化カリウム溶液1mlを加え、直ちに共栓をして約1分間混ぜた後、デンプン試液を指示薬として、0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し、過酸化物価(POV)を次式により算出した。
過酸化物価(meq/kg)=(a/S)×10
S: 試料の採取量(g)、a :0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液の滴定量(ml)
(3)AOM安定性を、POVが100に達するまでに要した時間(hr)とPOVが200に達するまでに要した時間(hr)で表示した。それぞれの数値は小さいほど、短時間で油脂の酸化が進行していることを意味する。以下において、POVが100に達するまでに要した時間(hr)をPOV.100(hr)と記し、POVが200に達するまでに要した時間(hr)はPOV.200(hr)と記す。
【0075】
<臭気強度>
AOM試験において、試料の最大臭気強度を以下の5段階で官能評価した。
1:不快臭なし
2:わずかに不快臭あり
3:不快臭あり
4:やや強い不快臭あり
5:強い不快臭あり
【0076】
<着色状態>
AOM試験において、試料の着色状態を以下の5段階で官能評価した。
1:着色なし
2:黄褐色
3:褐色
4:赤褐色
5:濃褐色
【0077】
<粘性>
AOM試験後の試料の粘性を以下の3段階で官能評価した。
1:変化なし
2:増粘あり
3:強い増粘あり
【0078】
<ヨウ素価>
絶乾綿100gあたりに反応するヨウ素量をヨウ素価[I2(g)/綿(100g)]として、以下の手順により測定した。
(1)試料原綿の水分率を測定する。
(2)油脂量としておよそ0.1gとなるように原綿試料を精秤し、三角フラスコに入れる。
(3)シクロヘキサン20mlを加えて撹拌し、さらにウィス試薬(一塩化ヨウ素の酢酸水溶液)10mlとイオン交換水20mlを加える。
(4)ときどき撹拌しつつ、30分間常温暗所にて静置する。
(5)10質量%のヨウ化カリウム溶液20mlと、イオン交換水20mlを加えた後、0.1Nのチオ硫酸ナトリウムで滴定する。
(6)液の色が薄くなってきたらデンプン指示薬を加えて滴定を続け、デンプン指示薬の呈色が消失した時の0.1Nのチオ硫酸ナトリウム滴定量を終点として読み取る。
(7)試料を入れずに同様の試験を行い、空試験とする。
(8)次式によりヨウ素価を算出する。
繊維のヨウ素価[I2(g)/綿(100g)]=(空試験滴定量−滴定量)×1.269/絶乾綿質量
【0079】
<繊維の繊度>
繊維の繊度は、JIS L 1015に準じて測定した。
【0080】
<繊維の強度及び伸度>
繊維の強度(乾強度、湿強度)及び伸度(乾伸度及び湿伸度)は、JIS L 1015に準じて測定した。
【0081】
<促進試験>
原綿を80℃、70%RH(恒温恒湿器、ヤマト科学(株)社製の“IG420”型)の環境下で8日間放置した後に繊維物性を測定、処理前後の比較により繊維の経時促進状態の評価を行った。
【0082】
<洗濯耐久性>
繊維を中性洗剤(繊維製品新機能評価協議会標準洗剤)及びアルカリ洗剤を使用し、それぞれ10回洗濯を行った後、ヨウ素価を測定した。洗濯試験はJIS L 0217 103法に準じて実施した。
【0083】
<脱油処理後のレーヨン繊維における空隙部の平均孔径>
脱油処理後の繊維の断面写真(走査型電子顕微鏡写真、倍率3000倍)を用いて、脱油処理後のレーヨン繊維における空隙部の平均孔径を測定した。具体的には、脱油処理後の繊維の断面写真(走査型電子顕微鏡写真、倍率3000倍)を画像処理により倍率9010倍に拡大し、印刷した紙面上から任意の繊維の断面をサンプリングし、その断面上の空隙部の直径を計測し、計測した100個の空隙部の直径を平均して空隙部の平均孔径とした。なお、楕円状の空隙は長径及び短径を計測して算出した面積から真円直径に換算し、空隙部の直径とした。
[脱油処理]
(I)試料約2.3gを精秤し、底部に小さい穴の空いた試料管に詰めた。
(II)底部の穴を塞ぎ、抽出溶媒としてメタノール10mlを試料管に注加し、一定時間静置し浸透させてからプレス装置によりメタノール処理液を抽出した。
(III)同じ試料を使用して上記の操作(II)による抽出を20回繰り返した後、試料管から取り出した試料を水洗し、105℃、2時間で乾燥して脱油処理後の繊維を得た。
【0084】
(油脂に対する酸化防止剤の効果確認試験1)
油脂として下記表1に示す脂肪酸組成を有し、且つ融点が−11.6℃である精製椿油(五島産)を用い、酸化防止剤として下記表2に示す酸化防止剤と用い、下記表3〜4に示す配合割合で油脂と酸化防止剤を混合して、活性酸素法(AOM)に基づいて、過酸化物価(POV)を測定し、その結果を下記表3〜4及び図1〜3に示した。また、AOM試験における試料の臭気、外観、粘性を評価し、その結果を下記表3〜4に示した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
図1図3及び表3〜表4の結果から分かるように、椿油に酸化防止剤を添加すると、AOM安定性が、酸化防止剤を添加しない場合に比べて格段に高くなっていた。また、AOM安定性において、ミックストコフェロールと比較して、トコトリエノール、γ-トコフェロールの方が少量で同等の効果を達成できることが分かった。また、外観において、ほぼ同様の添加量の場合、ミックストコフェロールと比較して、着色開始時間が遅かった。AOM安定性と、臭気及び/又は外観との両立から見ると、dl-α-トコフェロール、トコトリエノール、γ-トコフェロールがミックストコフェロールより優れており、トコトリエノール、γ-トコフェロールがより優れており、トコトリエノールは、AOM安定性と、臭気、外観及び粘性のすべてにおいて優れていた。
【0090】
(油脂に対する酸化防止剤の効果確認試験2)
油脂として下記表5に示す脂肪酸組成を有し、且つ融点が0〜6℃であるオリーブオイル(スペイン産)を用い、酸化防止剤として上記表2に示す酸化防止剤と用い、下記表6に示す配合割合で油脂と酸化防止剤を混合して、活性酸素法(AOM)に基づいて、過酸化物価(POV)を測定し、その結果を下記表6及び図4に示した。また、AOM試験における試料の臭気、外観、粘性を評価し、その結果を下記表6に示した。
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
図4及び表6の結果から分かるように、オリーブオイルにトコトリエノールを55質量%以上含む酸化防止剤を添加すると、酸化防止剤を添加しない場合やミックストコフェロールを添加した場合に比べて、AOM安定性と、臭気及び外観との両立の面において優れていた。
【0094】
(実施例1)
<エマルジョン液の調製>
油脂に対する酸化防止剤の効果確認試験1における試験番号A3と同様の配合の椿油とdl-α-トコフェロールの混合液に、乳化剤を油脂に対して30質量%になるように添加してエマルジョン液を調製した。
【0095】
<紡糸用ビスコース液の調製>
得られたエマルジョン液を、油脂添加量がセルロースに対して1.5質量%になるように、原料ビスコースへ添加し、混合機にて攪拌混合を行い、紡糸用ビスコース液を調製した。温度は20℃に保った。原料ビスコースとしては、セルロース8.5質量%、水酸化ナトリウム5.7質量%、二硫化炭素2.7質量%を含むビスコース原液を用いた。
【0096】
<紡糸条件>
得られた紡糸用ビスコース液を、2浴緊張紡糸法により、紡糸速度60m/分、延伸率50%で紡糸して、繊度が約1.4dtexの椿油含有レーヨン繊維を得た。紡糸浴としては、硫酸100g/L、硫酸亜鉛15g/L、硫酸ナトリウム350g/L含むミューラー浴(50℃)を用いた。また、ビスコースを吐出する紡糸口金には、孔径0.06mmのホールを4000個有する円形ノズルを用いた。
【0097】
<精練条件>
上記で得られたビスコースレーヨンの糸条を、繊維長38mmにカットし、精練処理を行った。精練工程では、熱水処理後に水洗を行い、油剤を付与した後圧縮ローラーで余分な水分と油剤を繊維から落とし、その後、乾燥処理(60℃、7時間)を施して、実施例1の油脂含有レーヨン繊維を得た。
【0098】
(実施例2)
油脂に対する酸化防止剤の効果確認試験1における試験番号A5と同様の配合の椿油とトコトリエノールの混合液を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の油脂含有レーヨン繊維を得た。
【0099】
(実施例3)
油脂に対する酸化防止剤の効果確認試験2における試験番号B4と同様の配合のオリーブオイルとトコトリエノールの混合液を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の油脂含有レーヨン繊維を得た。
【0100】
(参考例1)
参考例1として、レギュラーレーヨン(ダイワボウレーヨン株式会社製)を用いた。
【0101】
比較例1
上記の試験番号A2と同様の配合の椿油とミックストコフェロールの混合液を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の油脂含有レーヨン繊維を得た。
【0102】
実施例1〜3と参考例1、比較例1のレーヨン繊維の繊度、乾強度、湿強度、乾伸度及び湿伸度を上記のように測定し、その結果を下記表7に示した。また、実施例1〜3と参考例1、比較例1のレーヨン繊維のヨウ素価を測定し、その結果を下記表7に示した。また、下記表7には、促進試験及び洗濯耐久性の結果も示した。
【0103】
【表7】
【0104】
表7から分かるように、促進試験による実施例の油脂含有レーヨン繊維の繊維強度低下率は、レギュラーレーヨンよりも低かった。この結果から、実施例の油脂含有レーヨン繊維において、油脂は酸化安定性が良好な状態でレーヨン繊維を構成するセルロース内に微分散していること、及び油脂に添加している酸化防止剤の効果により、レーヨン繊維の安定性が向上したものと推定される。また、中性洗剤で10回洗濯した場合、アルカリ洗剤で10回洗濯した場合のいずれの洗濯試験でも、実施例の油脂含有レーヨン繊維のヨウ素価はほぼ変化しないことから、洗濯しても油脂は脱落せずセルロース中に存在している、即ち実施例の油脂含有レーヨン繊維は洗濯耐久性に優れることが確認できた。
【0105】
実施例2及び参考例1のレーヨン繊維について、水流交絡不織布を作製して、吸放湿特性を以下の方法で評価した。
【0106】
[不織布の作製]
実施例2の繊維と、参考例1の繊維を準備した。各繊維100質量%をそれぞれセミランダムカードで解繊して目付約100g/m2のカードウェブを作製した。次いで、ノズル孔径0.13mmのオリフィスが1mm間隔で配置されたノズルから、ウェブ表面から3MPa、5MPa、ウェブ裏面から5MPaの水圧で水流を噴射した後、自然乾燥させて、水流交絡不織布を作製した。
【0107】
[吸放湿試験方法]
(1)水流交絡不織布を約2gとなるように切断し、定温乾燥機(105℃、2hr)を用いて絶乾状態にした試験片の質量(W0)を測定した。
(2)試料をデシケーター内で放冷した。
(3)吸湿時水分率を測定時は、試料を約92mmφのシャーレに折りたたんで入れ、40℃、90%RH条件に調整した恒温恒湿機で24時間静置し、静置後の試料質量(W1)を測定した。
(4)放湿時水分率を測定時は、試料を約92mmφのシャーレに折りたたんで入れ、20℃、60%RH条件に調整した恒温恒湿機で24時間静置し、静置後の試料質量(W2)を測定した。
(5)次式により吸湿時および放湿時の試料水分率を算出した。
吸湿時水分率(%)=(W1−W0)/W1×100
放湿時水分率(%)=(W2−W0)/W2×100
(6)上記試験結果から、吸放湿パラメーターΔMRを次式により算出し、吸放湿効果を評価した。ΔMRは値が大きいほど吸放湿効果が高いことを示す。
ΔMR(%)=吸湿時水分率−放湿時水分率
【0108】
【表8】
【0109】
本発明の油脂含有レーヨン繊維(実施例2)と、レギュラーレーヨン繊維(参考例1)との吸放湿特性の比較を行った結果、油脂練り込みによる吸放湿特性への影響は認められず、吸放湿特性はレギュラーレーヨンと変わらず良好であることが確認された。
【0110】
また、実施例1〜3の油脂含有レーヨン繊維の風合いを官能(触感)試験で評価したところ、ヌメリ感がありソフトな風合いであった。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の油脂含有レーヨン繊維は、例えば、紡績糸、編物、織物、不織布、トウ、フィラメント、中綿(詰め綿)、紙等の繊維構造物に用いることができる。また、本発明の繊維構造物は、衣料、化粧パフ、吸収体等の衛生材料、ウェットティッシュ、対人・対物ワイパー等のウェットシート、水解性シート、ドライワイパー、フィルター等に用いることができる。
図1
図2
図3
図4