(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3ルーメンの終端の開口が、前記操作ワイヤによって屈曲する前記カテーテル本体の先端部の屈曲中心よりも、前記カテーテルの基端部側に位置している請求項1記載のカテーテル装置。
前記操作ワイヤの操作により前記カテーテル本体の先端部を屈曲させるときの、同先端部の前記第3ルーメンの直進方向に対する最大屈曲角度が、30〜120°とされている請求項1又は2記載のカテーテル装置。
前記カテーテル本体の前記開口よりも先端部側の外周には、前記第3ルーメンの延長線上に沿って伸びるガイド凹部が形成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載のカテーテル装置。
【背景技術】
【0002】
従来、胆管、膵管、尿管、気管、血管等の管状器官にガイドワイヤを挿入し、このガイドワイヤを介してカテーテル等の医療用チューブを挿入し、該チューブを通して、ステントや血管閉塞具を留置したり、造影剤や制癌剤、栄養剤等の薬液を注入したりすることが行われている。
【0003】
ところで、所定の管状器官から枝分かれした複数の分岐管のうち、特定の分岐管を選択して、ガイドワイヤを挿入したい場合があるが、目的の分岐管の配置箇所や形状等によっては、挿入しにくいことがあった。例えば、十二指腸下部の乳頭からは膵管及び胆管が分岐しているが、膵管は乳頭から比較的まっすぐに伸びているのに対し、胆管は乳頭から急角度で曲がって伸びているため、カテーテル等を介して乳頭からガイドワイヤを挿入していくと、通常は膵管内に挿入されて胆管には導入しにくい。
【0004】
このため、胆管にガイドワイヤを挿入するために、以前から次のような方法が行われている。
【0005】
第1に、内視鏡を通して、カテーテル又はEST(内視鏡的乳頭切開術)用ナイフを備えたチューブを十二指腸内に挿入し、その先端部を乳頭内に挿入して進行させた後、造影剤を投与して、X線透視下でカテーテル先端部が膵管又は胆管のどちらに挿入されたかを確認する方法がある。
【0006】
第2に、内視鏡を通してカテーテル先端部を乳頭内若しくは乳頭手前まで挿入した後、同カテーテルを通してガイドワイヤを進行させて、X線透視下でガイドワイヤが膵管又は胆管のどちらに挿入されたかを確認する方法がある。
【0007】
第3に、内視鏡を通して乳頭から膵管内にガイドワイヤを挿入しておき、同じく内視鏡を通してカテーテル先端部を乳頭内に挿入した後、膵管内に挿入したガイドワイヤを操作して、同ガイドワイヤを撓ませて膵管を押し下げることにより、胆管入口を広げて、カテーテルを通してガイドワイヤを挿入する方法である。
【0008】
第4に、ニードルナイフを収容したカテーテルやEST用ナイフを備えたチューブを、内視鏡を通して挿入して、乳頭括約筋や膵管口をニードルナイフやEST用ナイフで切開する方法がある。
【0009】
例えば、下記特許文献1には、上記第4の方法に用いられるものであって、シース本体を有しており、該シース本体には、導電性ワイヤが挿通されるワイヤルーメンと、ガイドワイヤが挿通される多目的ルーメンと、補強ワイヤが挿通される補強ルーメンとを設けた、内視鏡用高周波切開装置が記載されている。また、導電性ワイヤは、シース本体の外側に配置されており、同ワイヤが操作部を介して引張られると、シース本体の先端部が屈曲して、弓状のナイフ部が形成されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記第1の方法では、カテーテル先端部が膵管又は胆管が挿入されたことを確認するだけで、胆管内へのガイドワイヤの挿入性を高めるものではなく、また、膵管に造影剤が投与されると膵炎の原因となることがある。
【0012】
上記第2の方法では、必ずしもガイドワイヤを胆管内に挿入できるわけではなく、また、X線透視下で手探りでガイドワイヤを進行させるため、力加減によってはワイヤ進行時に管内壁が穿孔したり、管内壁を刺激して膵炎の原因となることもある。
【0013】
一方、上記第3の方法では、膵管内に挿入されたガイドワイヤを操作して膵管を押し下げることにより、胆管入口を広げるようにしているが、膵管を押し下げるようにガイドワイヤを撓ませて操作することが難しく、また、この操作がうまくいかずにガイドワイヤが膵管奥方に進行して穿孔してしまうおそれがあると共に、長時間ガイドワイヤを操作することにより、身体に影響を及ぼすおそれがある。
【0014】
また、例えば、上記特許文献1の内視鏡用高周波切開装置を利用して、上記第4の方法を行う場合、シース本体部の先端部を屈曲させて、弓状のナイフ部で乳頭括約筋を導電性ワイヤで切開すると、出血や合併症等が生じるリスクが高まる可能性があった。
【0015】
したがって、本発明の目的は、管状器官の分岐部において目的の分岐管にガイドワイヤを容易に挿入することができるカテーテル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明のカテーテル装置は、第1ルーメン、第2ルーメン及び第3ルーメンからなる、少なくとも3つのルーメンを有するカテーテル本体を有し、前記第1ルーメンは、前記カテーテル本体の基端部から先端部に至るまで伸びており、前記第2ルーメンは、前記カテーテル本体の先端部より基端部側に外部への挿出孔を有しており、前記第2ルーメンに操作ワイヤが挿入され、該操作ワイヤの先端部は、前記第2ルーメンの挿出孔を通して外部に挿出され、前記カテーテル本体の先端部に設けた固着部で固着されており、前記操作ワイヤを前記カテーテル本体の基端部側で押し引きすることにより、前記カテーテル本体の先端部が、前記挿出孔と前記固着部との間で屈曲するように構成されており、前記第3ルーメンは、前記カテーテル本体の、前記挿出孔と前記固着部との間に位置する部分で終端となって開口するか、又は、前記挿出孔と前記固着部との間に位置する部分で前記カテーテル本体の先端部に対して分岐する枝管を通って伸び、その先端で開口していることを特徴とする。
【0017】
本発明のカテーテルにおいては、前記第3ルーメンの終端の開口又は前記枝管の分岐部が、前記操作ワイヤによって屈曲する前記カテーテル本体の先端部の屈曲中心よりも、前記カテーテルの基端部側に位置していることが好ましい。
【0018】
本発明のカテーテルにおいては、前記操作ワイヤの操作により前記カテーテル本体の先端部を屈曲させるときの、同先端部の前記第3ルーメンの直進方向に対する最大屈曲角度が、30〜120°とされていることが好ましい。
【0019】
本発明のカテーテルにおいては、前記第3ルーメンが、前記カテーテル本体の、前記挿出孔と前記固着部との間に位置する部分で終端となって開口しており、前記カテーテル本体の該開口よりも先端部側の外周には、前記第3ルーメンの延長線上に沿って伸びるガイド凹部が形成されていることが好ましい。
【0020】
本発明のカテーテルにおいては、前記カテーテル本体の先端部は、全体として軸方向に対して所定方向に屈曲するように付形され、同先端部は、軸方向に垂直な断面を軸方向に見たときに、前記付形方向に対して斜めに交差する面によって軸方向にカットされて縮径した形状をなすことが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、管状器官に挿入し、その分岐部に至ったとき、第3ルーメンの開口から挿出されたガイドワイヤ又は枝管を一方の分岐管に挿入し、その状態で操作ワイヤを押し引きしてカテーテル本体の先端部を屈曲させると、カテーテル本体の先端部が、屈曲方向にある管状器官の壁に押し付けられるので、一方の分岐管に挿入されたガイドワイヤ又は枝管が、カテーテル本体の先端部の屈曲方向とは反対方向の壁に押し付けられ、それによって分岐部の入口を押し広げることができる。その結果、カテーテル本体の先端部を他方の分岐管の入口に指向させて、管状器官の分岐部において、第1ルーメンを通して挿入したガイドワイヤを、目的とする他方の分岐管に挿入しやすくなり、作業性を向上させることができる。
【0022】
例えば、第1ルーメンを通して挿入されたガイドワイヤを、乳頭を通して胆管に挿入したいとき、第3ルーメンから挿出されたガイドワイヤ又は枝管を膵管に挿入しておき、その状態で操作ワイヤを押し引きしてカテーテル本体の先端部を屈曲させると、カテーテル本体の先端部が屈曲して乳頭の上面に押し付けられ、膵管に挿入されたガイドワイヤ又は枝管が乳頭の下面に押し付けられるので、乳頭の入口を広げることができ、カテーテル本体の先端部を膵管の上方に位置する胆管に指向させやすくなり、第1ルーメンを通して挿入したガイドワイヤを胆管に導入しやすくすることができる。
【0023】
また、ガイドワイヤ又は枝管は、その基部側をカテーテル本体に挿入又は連結されて、その先端部がカテーテル本体から挿出又は分岐して伸びており、カテーテル本体とガイドワイヤ又は枝管とが基部側で一体となっているので、それぞれを独立して挿入し操作する場合に比べて、操作が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明のカテーテル装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図2】同カテーテル装置を示しており、(a)は要部拡大斜視図、(b)は(a)とは異なる方向から見たときの要部拡大斜視図である。
【
図3】同カテーテル装置を示しており、(a)は要部拡大側面図、(b)は(a)のE−E矢示線における断面図、(c)は(a)のD−D矢示線における断面図である。
【
図4】同カテーテル装置の動作を示しており、(a)は操作ワイヤを先端側に押した状態の説明図、(b)はを操作ワイヤを手元側に引張った状態の説明図である。
【
図5】同カテーテル装置の使用方法の一例を示しており、ガイドワイヤを膵管に挿入した状態を示す説明図である。
【
図6】同カテーテル装置の使用方法において、膵管に挿入されたガイドワイヤに沿ってカテーテル本体を進行させてその先端部を乳頭に挿入する状態を示す説明図である。
【
図7】同カテーテル装置の使用方法において、操作ワイヤを引っ張ってカテーテル本体の先端部を屈曲させた状態を示す説明図である。
【
図8】同カテーテル装置の使用方法において、
図7の状態から更にカテーテル本体の先端部を屈曲させて、胆管の入口に指向させた状態を示す説明図である。
【
図9】同カテーテル装置の使用方法において、カテーテル本体の第1ルーメンを通して挿入されたガイドワイヤの先端を胆管に挿入した状態を示す説明図である。
【
図10】本発明のカテーテル装置の第2実施形態を示しており、(a)は要部拡大側面図、(b)は(a)のF−F矢示線における断面図、(c)は(a)のG−G矢示線における断面図である。
【
図11】同カテーテル装置を示しており、(a)は要部拡大斜視図、(b)は(a)とは異なる方向から見たときの要部拡大斜視図である。
【
図12】同カテーテル装置において、操作ワイヤを操作して、カテーテル本体の先端部を屈曲させる際の状態を示す説明図である。
【
図13】本発明のカテーテル装置の第3実施形態を示しており、(a)は要部拡大側面図、(b)は(a)のH−H矢示線における断面図、(c)は(a)のI−I矢示線における断面図である。
【
図14】同カテーテル装置の使用方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、
図1〜9を参照して、本発明のカテーテル装置の第1実施形態について説明する。このカテーテル装置は、特に乳頭から分岐する胆管にガイドワイヤを挿入するのに適したものである。
【0026】
図1〜4に示すように、この実施形態におけるカテーテル装置10は、第1ルーメン21、第2ルーメン22及び第3ルーメン23からなる、少なくとも3つのルーメンを有するカテーテル本体20と(
図3参照)、同カテーテル本体20の第2ルーメン22に挿入される操作ワイヤ40と、前記カテーテル本体20の基端部に装着され、操作ワイヤ40を押し引きする操作具50とを備えている。
【0027】
図5に示すように、前記カテーテル本体20の先端部は、十二指腸V1に挿入された内視鏡5の先端部の周壁に設けられた開口部5aから挿出されて、乳頭Nに挿入できるようにするため、その先端部が全体として軸方向に対して所定方向に屈曲するように付形されている。
図3(b)に示すように、カテーテル本体20の先端部を軸方向に見たとき、上記屈曲方向をAとすると、この実施形態では、同屈曲方向Aに対して直交する面26によって軸方向に沿って所定長さでカットされ、カテーテル本体の先端部に縮径部28が設けられている。そして、縮径部28の基端部は、テーパ状の段部27をなしている。
【0028】
前記第1ルーメン21は、カテーテル本体20の基端部から先端部の縮径部28を通って伸び、カテーテル本体先端で開口21aにより開口している(
図2参照)。この第1ルーメン21には、胆管V2(
図5参照)に挿入するためのガイドワイヤ1が挿通されるようになっている。
【0029】
前記第2ルーメン22も、同様にカテーテル本体20の基端部から先端部の縮径部28を通って伸び、カテーテル本体先端に至っている。また、第2ルーメン22には、前記段部27よりも基部寄り部分に外部への挿出孔22aが設けられ、更に、第2ルーメン22の先端に近接した部分に、挿入孔22bが形成されている(
図2(a)参照)。
【0030】
上記第2ルーメン22には、操作ワイヤ40が挿入され、その基端部は第2ルーメン22の基端開口から外部に挿出され、先端部は、前記挿出孔22aを通して外部に挿出されると共に、前記挿入孔22b内に挿入されて、第2ルーメン22の先端開口部に挿入された金属パイプ31に挿入され、かしめ、溶着、接着等の手段で固着されて固着部32をなしている(
図2(a)参照)。
【0031】
したがって、操作ワイヤ40の基端部を、カテーテル本体20の基端部側で押し引きすることで、カテーテル本体20の先端部の挿出孔22aと固着部32との間で操作ワイヤ40による張力がかかり、カテーテル本体20の先端部が屈曲するようになっている(
図4(b)参照)。具体的には、操作ワイヤ40を引くと、カテーテル本体20の先端部の屈曲角度が大きくなり、操作ワイヤ40を押すと、カテーテル本体20の屈曲角度が小さくなる。
【0032】
なお、前記操作ワイヤ40は、導電性の金属から形成されており、高周波電流等を通電することにより発熱して、乳頭括約筋や膵管口等の人体組織を切除可能となっている。この実施形態では、
図2(a)及び
図3(a)に示すように、操作ワイヤ40の先端部を挿入孔22bに挿入して金属パイプ31に固着させ、この金属パイプ31を第2ルーメン22の先端部に埋設して固着部32を構成しているが、操作ワイヤ40の先端部を、例えば、カテーテル本体20の先端部外周に接着剤や溶着等で直接固着してもよく、固着部の態様は特に限定されない。
【0033】
前記第3ルーメン23は、カテーテル本体20の基端部の、第1ルーメン21,第2ルーメン22が形成された部分から枝分れして伸びる分岐チューブ29の基端部に、その基端側の開口が形成されている。そして、第3ルーメン23は、カテーテル本体20の基端部に合流して先端部側に向けて伸び、カテーテル本体20の、挿出孔22aと固着部32との間に位置する、前記段部27で終端となって、そこに開口23aが形成されている。
【0034】
すなわち、
図2及び
図3に示すように、カテーテル本体20を軸方向に見たとき、第1ルーメン21及び第2ルーメン22は、カテーテル本体20の縮径部28を通ってその先端まで伸びており、第3ルーメン23は、段部27に形成された開口23aで終端となっている。
【0035】
また、
図4(b)に示すように、第3ルーメン23の開口23aは、操作ワイヤ40によって屈曲するカテーテル本体20の先端部の屈曲中心Cよりも、カテーテル本体20の基端部側に位置している。なお、カテーテル本体20の屈曲中心Cとは、カテーテル本体20の先端部の固着部32における接線L1と、カテーテル本体20の先端部の挿出孔22aにおける接線L2との交点を意味する(
図4(b)参照)。
【0036】
更に、
図4(b)に示すように、操作ワイヤ40の操作によりカテーテル本体20の先端部を屈曲させるときの、同先端部の、第3ルーメン23の直進方向に対する最大屈曲角度θ(カテーテル本体20の軸心L3に対する前記L1の角度)は、30〜120°とされていることが好ましく、50〜90°であることがより好ましい。前記最大屈曲角度θが30°未満だと、ガイドワイヤ1を挿入すべき目的の分岐管が基部側の管状器官に対して急角度をなしている場合に、カテーテル本体20の先端部を挿入しにくくなり、同最大屈曲角度θが120°を超えると、カテーテル本体20の先端部に過度の曲げ応力が作用するため好ましくない。
【0037】
更に、
図3(b)に示すように、カテーテル本体20の、第3ルーメン23の終端の開口23aよりも先端部側の外周、すなわち、カテーテル本体先端部の縮径部28の、付形方向Aに直交する面26側には、第3ルーメン23の開口23aに連通して、第3ルーメン23の延長線上に沿って伸びるガイド凹部33が形成されている(
図2(b)参照)。このガイド凹部33は、第3ルーメン23に挿通され、その開口23aから挿出されるガイドワイヤ3を案内する部分となっている。
【0038】
また、カテーテル本体20の先端部には、軸方向に所定間隔をあけて複数のマーカー34が装着されている。この実施形態では、カテーテル本体20の先端寄りの位置や、前記第2ルーメン22の挿入孔22bに整合する位置、第3ルーメン23の開口23aの近傍の位置、前記第2ルーメン22の挿出孔22aに整合する位置に、それぞれマーカー34が配置されている。これらのマーカー34は、X線透視下における視認用や、内視鏡5(
図6,7参照)での視認用として用いることができる。
【0039】
上記カテーテル本体20の基端部の、第1ルーメン21,第2ルーメン22が形成された部分には、操作ワイヤ40を押し引き操作するための、操作具50が装着されている。
【0040】
図1及び
図4(a),(b)に示すように、この操作具50は、カテーテル本体20の基端部に接続され、軸方向に沿ったスライド溝51aが形成された操作具本体51と、該操作具本体51にスライド溝51aを介してスライド可能に取付けられるスライド部材53とを有している。前記操作具本体51の内部には、前記第1ルーメン21に連通する連通管55が設置されており、同連通管55の開口から、ガイドワイヤ1を第1ルーメン21内に挿入できるようになっている。
【0041】
操作ワイヤ40の基端部は、スライド部材53に連結されている。そして、操作具本体51に対してスライド部材53を手元側にスライドさせると、操作ワイヤ40が引張られて、操作ワイヤ40の先端部に固着部32を介して固着されたカテーテル本体20の先端部が、挿出孔22aと固着部32との間で屈曲する(
図4(b)参照)。一方、スライド部材53を手前側にスライドさせると、操作ワイヤ40の張力が緩んでカテーテル本体20の先端部が真直ぐな方向に戻るようになっている(
図4(a)参照)。したがって、スライド部材53を操作して操作ワイヤ40を押し引きすることにより、カテーテル本体20の先端部の屈曲角度を調整できるようになっている。
【0042】
なお、この実施形態においては、第1ルーメン21,第2ルーメン22,第3ルーメン23の3つのルーメンを形成したが、これ以上の数のルーメンを形成してもよい。また、カテーテル本体20の先端部の縮径部28にガイド凹部33を設けたが、縮径部28にガイド凹部33を形成しない構造としてもよい。
【0043】
次に上記構造からなるカテーテル装置10の使用方法の一例について説明する。
【0044】
図5に示すように、十二指腸V1の下部には、乳頭Nが設けられており、この乳頭Nから胆管V2及び膵管V3が分岐して伸びている。ここでは、乳頭Nを通して胆管V2内にガイドワイヤ1を挿入する際の手順について説明する。
【0045】
まず、周知の方法によって、内視鏡5を口腔から胃等を通して十二指腸V1まで移動させておく。この内視鏡5内の図示しないルーメンを通して、ガイドワイヤ3を挿入し、内視鏡5の先端部周壁に形成された開口5aを通して挿出させる。そして、X線透視下で位置を確認しながら、ガイドワイヤ3の先端部を乳頭Nに挿入し、そのまま進行させて膵管V3に挿入する。
【0046】
この場合、ガイドワイヤ3は、単独で内視鏡5に挿入して、上記操作を行ってもよく、その場合には、ガイドワイヤ3の先端部を膵管V3に挿入した後、ガイドワイヤ3をその基端側からカテーテル装置10のカテーテル本体20の第3ルーメン23に挿入し、カテーテル装置10のカテーテル本体20をガイドワイヤ3に沿って進行させて内視鏡5に挿入する。
【0047】
或いは、カテーテル装置10のカテーテル本体20を予め内視鏡5に挿入しておき、カテーテル本体20の第3ルーメン23を通してガイドワイヤ3を挿入して、上記操作を行ってもよい。その場合、カテーテル本体20の縮径部28には、第3ルーメン23の延長線上に沿って伸びるガイド凹部33が設けられ、ガイドワイヤ3はこのガイド凹部33を通って延出されているので、ガイドワイヤ3の進路を定めやすくなる。
【0048】
次いで、
図6に示すように、上記ガイドワイヤ3に沿って、カテーテル装置10のカテーテル本体20を進行させ、内視鏡5の先端部周壁に形成された開口5aを通してカテーテル本体20の先端部を挿出させる。このとき、カテーテル本体20の先端部は、全体として屈曲された形状に予め付形されているので、その先端を乳頭Nに向けやすくなっている。更にガイドワイヤ3に沿ってカテーテル本体20を進行させると、カテーテル本体20の先端部を乳頭Nに挿入することができる。
【0049】
なお、カテーテル本体20の縮径部28には、第3ルーメン23の延長線上に沿って伸びるガイド凹部33が設けられ、ガイドワイヤ3はこのガイド凹部33を通って延出されているので、カテーテル本体20を進行させやすくなる。
【0050】
そして、操作具50の操作具本体51を把持固定して、同操作具本体51に対してスライド部材53を手元側にスライドさせると、
図7,8に示すように、操作ワイヤ40の基端部が引張られて、その先端部に固着部32を介して固着されたカテーテル本体20の先端部が屈曲する。
【0051】
このとき、この実施形態では、
図2(b)に示すように、段部27に形成された第3ルーメン23の出口側の開口23aが、屈曲中心Cよりも基部側に位置するので、第3ルーメン23を通して挿出されたガイドワイヤ3に対して、カテーテル本体20の先端部を効果的に屈曲させることができる。また、第3ルーメン3の直進方向に対する最大屈曲角度θ(
図4(b)参照)が30〜120°とされているので、管状器官の分岐部において、目的の分岐管を選択するときの自由度を高めることができる。
【0052】
こうして、カテーテル本体20の先端部を屈曲させると、膵管V3内に挿入されたガイドワイヤ3に対して、カテーテル本体20の先端部が上方に向けて大きく開くように屈曲するので、カテーテル本体20が乳頭Nの上方の壁に押し付けられ、ガイドワイヤ3がカテーテル本体20の先端部の屈曲方向と反対方向にある下方の壁に押し付けられる。その結果、乳頭Nの入口が押し広げられ、カテーテル本体20の先端部を胆管V2の入口に指向させやすくなり、胆管V2に容易に挿入することができる(
図8参照)。
【0053】
また、ガイドワイヤ3は、その基部側をカテーテル本体20の第3ルーメン23に挿入され、その先端部がカテーテル本体20から挿出して伸びており、カテーテル本体20とガイドワイヤ3とが基部側で一体となっているので、それぞれを独立して挿入して操作する場合に比べて、操作が簡単になる。
【0054】
一方、操作具50の連通管55の開口から、ガイドワイヤ1をカテーテル本体20の第1ルーメン21内に挿入しておき、上記操作によってカテーテル本体20の先端部が胆管V2に挿入されたら、カテーテル本体20の先端の開口21aから挿出させて、その先端部を胆管V2に挿入する。なお、カテーテル本体20の先端部を胆管V2の入口に指向させ、胆管V2に挿入していない状態で、ガイドワイヤ1をカテーテル本体20の先端の開口21aから挿出させて胆管V2に挿入してもよい。
【0055】
このようにしてガイドワイヤ1を胆管V2に挿入後、カテーテル本体20を引き抜き、図示しない別のカテーテルをガイドワイヤ1に沿って胆管V2に挿入し、この別のカテーテルを通して造影剤等を投与したり、ステント等の治療具を留置したりすることができる。なお、別のカテーテルを挿入することなく、カテーテル本体20の第1ルーメンを通して造影剤等の投与や、ステント等の治療具の留置を行うこともできる。
【0056】
なお、この実施形態では、カテーテル本体20の先端部側の縮径部28に、第3ルーメン23の延長線上に沿って伸びるガイド凹部33が形成されているので、ガイド凹部33を設けていない場合と比べて、縮径部28の肉厚を薄くすることができ、それによりカテーテル本体20の先端部を屈曲させやすくすることができる。
【0057】
また、操作ワイヤ40を導電性の金属線で構成し、これに高周波電流を通電可能として、乳頭括約筋や膵管口等の人体組織を切除するナイフとして機能させることもできる。このとき、この実施形態では、カテーテル本体20の先端部が、膵管V3内に挿入されたガイドワイヤ3を足がかりに屈曲するので、操作ワイヤ40が乳頭Nや膵管V3の組織によって押し返されるのを制止して、それらを安定して切除することができる。
【0058】
図10〜12には、本発明のカテーテル装置の第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0059】
この実施形態におけるカテーテル装置10aは、カテーテル本体20の先端部に設けられた縮径部28aの形状が前記実施形態と異なっている。
【0060】
すなわち、前記実施形態の縮径部28は、付形方向Aに対して直交する面26によって軸方向にカットされて、付形方向Aに対する断面積の比率が一定であるのに対し(
図3(b)参照)、この実施形態の縮径部28aは、
図10(b)に示すように、カテーテル本体20の先端部の軸方向に垂直な断面を軸方向に見たときに、付形方向Aに対して斜めに交差する面26aによって軸方向にカットされており、付形方向Aに対する断面積の比率が変化するように構成されている。この実施形態では、ガイドワイヤ1が挿通される第1ルーメン21側の断面積が小さく、操作ワイヤ40が挿通される第2ルーメン22側の断面積が大きく、第1ルーメン21側の剛性が、第2ルーメン22側の剛性よりも低くなっている。
【0061】
その結果、操作具50の操作により操作ワイヤ40を押し引きして、カテーテル本体20の先端部を屈曲させると、
図12の想像線で示すように、カテーテル本体20の先端部を、その付形方向Aに対して、操作ワイヤ40が挿通される第2ルーメン22側にそれるように、斜めに屈曲させることができ、先端部を所望の方向、ここでは胆管V2の開口方向に屈曲させやすくすることができる。
【0062】
図13及び
図14には、本発明のカテーテル装置の第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0063】
この実施形態におけるカテーテル装置10bは、第3ルーメン23の終端の開口23aの位置が、前記実施形態と異なっている。
【0064】
すなわち、この実施形態における第3ルーメン23は、カテーテル本体20の、前記挿出孔22aと前記固着部32との間に位置する部分で、カテーテル本体20の先端部に対して二股状に分岐する枝管35を通って伸びており、その先端で開口するようになっている。なお、枝管35は、カテーテル本体20の先端部よりも長く伸びており、その先端の第3ルーメン23の開口23aは、第1ルーメン21の終端の開口21aよりも、前方に配置されている。
【0065】
この実施施形態では、枝管35が、カテーテル本体20の先端部よりも長く伸びているので、枝管35を通してガイドワイヤ3を膵管V3に挿入しやすくすることができる。
【0066】
また、
図14に示すように、この実施形態では、ガイドワイヤ3を挿入することなく、枝管35を膵管V3に挿入して、その状態でカテーテル本体20の先端部を屈曲させて胆管V2に指向させることもできる。