(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二移送手段から移送される缶蓋の移送速度に基づいて、前記第一移送手段から移送される缶蓋の移送速度を決定し、決定された移送速度になるように前記第一駆動手段を制御する演算制御部を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の缶蓋移送装置。
前記第一移送手段と前記第二移送手段との間で移送されている缶蓋に対し処理を行う処理装置を備えることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の缶蓋移送装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明を実施するための形態(本実施形態)を説明する。はじめに、本実施形態に係る缶蓋移送装置の構成について説明し、次いで、これらの構成による作用効果を説明する。
【0015】
以下の説明において、同じ部材を表すものについては、原則として同じ符号を付しているが、特にそれらを分けて説明する場合には、異なる符号を付することもある。例えば、「ローラ10a」及び「ローラ10b」はいずれもローラであるが、これらを総称して「ローラ10」として示すことがある。他の部材についても同様である。
【0016】
<構成>
図1は、本実施形態に係る缶蓋移送装置100の正面図である。また、
図2は、本実施形態に係る缶蓋移送装置100の上面図である。缶蓋移送装置100は、四本のガイド棒30(
図2参照。
図1では二本のみ図示している)により囲まれて形成される空間Sを通じて、円形状の缶蓋200を缶蓋輸送ライン(図示しない)から缶の本体(図示しない)の上面に移送するものである。缶蓋200は、缶蓋移送装置100の上方から缶蓋移送装置100に供給され、缶蓋移送装置100の下方から外部(図示しない缶)に向けて排出されるようになっている。
【0017】
缶蓋移送装置100においては、缶蓋200が一枚ずつ切り離され、缶蓋200に付着した異物等が除去されるようになっている。具体的には、詳細は後記するが、缶蓋移送ラインを通って缶蓋移送装置100に供給された缶蓋200は、空間S内を落下する。そして、落下した缶蓋200は、ローラ10a,10bの端部に引っかかることで積層され、上側缶蓋群201として集合する。
【0018】
その後、ローラ10a,10bが回転すると、上側缶蓋群201を構成する缶蓋200が一枚ずつ分離され、空間S内をさらに落下する。そして、今度はローラ20a,20bの端部に引っかかることで積層され、下側缶蓋群202として集合する。本実施形態においては、上側缶蓋群201から下側缶蓋群202までの落下時、上側缶蓋群201の最も下に位置する缶蓋200の下面201aと、下側缶蓋群202の最も上に位置する缶蓋200の上面202aとの間に、
図1及び
図2では図示しないエアノズル90(
図3参照)から空気が噴射される。これにより、缶蓋200の表裏に付着した異物が除去されるようになっている。
【0019】
缶蓋移送装置100は、缶蓋200が通る空間Sを形成する四本のガイド棒30と、空間Sの途中で缶蓋200を保持する一組のローラ10(10a,10b;第一移送手段)と、ローラ10の鉛直方向下方に設けられる一組のローラ20(20a,20b;第二移送手段)と、を備えている。ローラ10は、ギヤ11a(後記する)等が収容された筐体50に対向して備えられている。また、ローラ20は、ギヤ21b(後記する)等が収容された筐体51に対向して備えられている。
【0020】
ここで、ローラ10は、供給された缶蓋200を保持するとともに、当該保持された缶蓋200を一枚ずつ下方に移送させる第一移送手段である。また、ローラ20は、ローラ10(第一移送手段)の鉛直方向下方にローラ10(第一移送手段)とは別体に設けられ、ローラ10(第一移送手段)から移送された缶蓋200を保持するとともに、当該保持された缶蓋200を一枚ずつ下方に移送させる第二移送手段である。さらに、四本のガイド棒30は、ローラ10(第一移送手段)とローラ20(第二移送手段)との間において移送される缶蓋200を案内するガイド部材である。
【0021】
ローラ10は、空間Sをやや窄めるように配置されている。即ち、四本のガイド棒30により囲まれて形成される空間Sに少し入り込んで、ローラ10が配置されている。これにより、ローラ10の上方から缶蓋200が落下してくると、缶蓋200がローラ10に接触して引っかかり(即ち保持され)、これにより、缶蓋200の落下が停止されるようになっている。また、ローラ20も同様に配置され、これにより、落下してきた缶蓋200がローラ20に接触して引っかかり(即ち保持され)、これにより、落下が停止されるようになっている。
【0022】
ローラ10は、支持材42により支持されたモータ収容箱40にそれぞれ収容されたモータ(第一駆動手段としてのステッピングモータ;図示しない)によって、回転可能になっている。具体的には、当該モータに接続された駆動ギヤ12が回転することにより、駆動ギヤ12に噛合するギヤ11aが回転し、これにより、ギヤ11aに接続されたローラ10aが回転するようになっている。また、詳細は
図4を参照しながら後記するが、ギヤ11aは、駆動ギヤ12との噛合部分とは反対の位置で、ギヤ11bに噛合している。そのため、前記のモータが駆動すれば、ローラ11aとローラ11bとが、反対方向に協調して回転するようになっている。
【0023】
また、ローラ20も、ローラ10と同様にして、回転可能になっている。具体的には、支持材62により支持されたモータ収容箱60にはモータ(第二駆動手段としてのステッピングモータ;図示しない)が収容され、モータに接続された駆動ギヤ22が回転することにより、駆動ギヤ22に噛合するギヤ21bが回転されるようになっている。これにより、ギヤ21bに接続されたローラ20bが回転するようになっている。また、詳細は
図4を参照しながら後記するが、ギヤ21bは、駆動ギヤ22との噛合部分とは反対の位置で、ギヤ21aに噛合している。そのため、前記のモータが駆動すれば、ローラ21aとローラ21bとが、反対方向に協調して回転するようになっている。
【0024】
また、ローラ10は弾力性の部材(例えばポリウレタン、ポリプロピレン、超高分子ポリエチレン等の弾性樹脂やゴム部材等)により構成されている。さらに、ローラ10の表面には、缶蓋200の厚さとほぼ同じ間隔で、溝が形成されている(
図3参照)。これにより、例えばローラ10に接触して保持されている缶蓋200は、ローラ10が回転すると、ローラ10の溝に引っかかるとともに弾性体であるローラ10に食い込む。その後、さらにローラ10が回転し続けると、缶蓋200はそのまま下方に移送される(即ち落下)ようになっている。このとき、ローラ10表面に形成されている溝は缶蓋200の厚さとほぼ同程度になっているため、より確実に、一枚ずつの缶蓋200が下方に移送されるようになっている。ローラ20も同様の構成になっている。
【0025】
次に、缶蓋移送装置100の構成について、側面図である
図3を参照しながら説明する。
図3は、本実施形態に係る缶蓋移送装置100の側面図である。
図3は、
図1に示した缶蓋移送装置100を右方向から左方向に見たときの側面図である。
【0026】
缶蓋移送装置100には、前記のように、空気を噴出するエアノズル90(処理装置)が備えられている。エアノズル90は、缶蓋移送装置100の正面側であって、上側缶蓋群201の最も下に位置する缶蓋200の下面201a(
図3では図示せず)と、下側缶蓋群202の最も上に位置する缶蓋200の上面202aとに空気を噴射可能な位置に備えられている。エアノズル90の先端にはスリット(図示しない)が形成され、これにより、空間S内を移送中の缶蓋200の両面に対して噴射しつつ、下面201aから上面202aまでの広範囲に空気を噴射可能になっている。即ち、エアノズル90からは、左右方向視で、断面扇型形状に空気を噴射可能になっている。
【0027】
ここで、モータ収容箱40に収容されているモータ(図示しない)により、ローラ10aを回転させる機構について、詳細に説明する。なお、ローラ21bについても同様にして回転されるため、説明の簡略化のために、ローラ10aの回転機構についてのみ、以下では説明する。
【0028】
駆動ギヤ12は、前記のように、モータ収容箱40に収容されたモータにより駆動されるが、駆動ギヤ12の回転中心とモータとは回転軸部材41により接続され、これにより、モータの回転力が駆動ギヤ12に伝達されるようになっている。そして、モータが駆動することで、駆動ギヤ12が回転するようになっている。
【0029】
また、筐体50には、駆動ギヤ12に噛合するギヤ11aが内蔵され(
図1も併せて参照)、このギヤ11aの回転中心には、筐体50を貫通する回転軸部材13aを介して、筐体50の外部にローラ10aが接続されている。従って、ローラ10aは、ギヤ11aの回転に連動して回転するようになっている。
【0030】
ここで、
図1においても示したように、駆動ギヤ12とギヤ11aとは噛合している。従って、モータにより駆動ギヤ12が回転されれば、それに伴って、駆動ギヤ12の回転方向とは逆方向に、ギヤ11aも回転することになる。前記のように、ギヤ11aにはローラ10aが接続されているため、ギヤ11aの回転に伴い、ローラ10aが回転する。従って、モータが回転することにより、これらの機構によって、ローラ10aが回転するようになっている。
【0031】
次に、ローラ10bの回転について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、
図3のA−A線断面図(筐体50,51の内部構造)を示す図である。なお、ローラ21aについても同様にして回転されるため、説明の簡略化のために、ローラ10bの回転機構についてのみ、以下では説明する。
【0032】
図4に示すように、筐体50の内部において、ギヤ11aとギヤ11bとが噛合している。ここで、ギヤ11bとローラ10b(
図1参照、
図4では図示しない)とは、回転軸部材13b(13)を介して接続されている。従って、ギヤ11aが回転すれば、ギヤ11aの回転方向とは逆方向に、ギヤ11b及びローラ10bが一定に回転することになる。
【0033】
また、ギヤ11aの歯数と、ギヤ11bの歯数とは、同数になっている。従って、ギヤ11aの回転角度と、それに伴って反対方向に回転するギヤ11bの回転角度とは、同じ角度になる。従って、モータ収容箱40内のモータにより駆動ギヤ12が回転すれば、ギヤ11aとギヤ11bとは、いずれも同じ回転角度で回転するようになっている。これにより、ギヤ11aに接続されたローラ10aと、ギヤ11bに接続されたローラ10bとは、同様に、それぞれ同じ回転角度で回転するようになっている。
【0034】
本実施形態に係る缶蓋移送装置100においては、前記の各手段の他に、種々のセンサが設けられている。具体的には、ローラ10の下方には、ローラ10からの落下により移送される缶蓋200の移送速度(例えば単位時間あたりに落下する缶蓋200の枚数)を測定する第一速度センサが設けられている。同様に、ローラ20の下方には、ローラ20からの落下により移送される缶蓋200の移送速度(例えば単位時間あたりに落下する缶蓋200の枚数)を測定する第二速度センサが設けられている。
【0035】
また、ローラ10上に保持された缶蓋200の枚数を測定する第一枚数測定センサが設けられている。このセンサにより、ローラ10上に過剰量の缶蓋200が蓄積されることが防止される。さらには、ローラ20上に保持された缶蓋200の枚数を測定する第二枚数測定センサが設けられている。このセンサにより、ローラ20上に保持される缶蓋200からなる下側缶蓋群202の高さを測定することができるようになっている。さらには、このセンサにより、測定された上側缶蓋群202の高さに基づき、上側缶蓋群201の下面201aと下側缶蓋群202の上面202aとの間の距離を測定することができるようになっている。
【0036】
駆動ギヤ12に接続されたモータ、及び、駆動ギヤ22に接続されたモータの駆動制御は、前記の各センサの測定結果に基づき、図示しない演算制御部により行われるようになっている。演算制御部は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、I/F(インターフェイス)、HDD(Hard Disk Drive)、センサ回路、制御回路等を備え、ROMに格納されている所定の制御プログラムがCPUによって実行されることにより具現化される。
【0037】
<作用>
次に、前記の構成を有する缶蓋移送装置100における、各部材の作用について説明する。なお、以下で説明するモータの駆動制御は、前記の演算制御部により行われる。
【0038】
缶蓋200は、図示しない缶蓋移送ラインを通じて、缶蓋移送装置100上方から空間Sに供給され、ローラ10の端部に引っかかってローラ10上に保持される。このとき、ローラ10は回転していない。缶蓋200は次々と供給されるため、保持された缶蓋200は積層されて、上側缶蓋群201が形成される。なお、前記の第一枚数測定センサが用いられ、ローラ10上に積層される缶蓋200の枚数が過剰にならないよう、モータの駆動が制御される。
【0039】
この状態で、前記した機構によりローラ10が僅かに回転すると、上側缶蓋群201の最も下に位置する缶蓋200は、弾力性のあるローラ10に食い込むことになる。そして、この状態でさらにローラ10が回転すると、それに伴って缶蓋200は下方に移動する。そして、缶蓋200とローラ10との接触が解かれると(缶蓋200がローラ10から離れると)、缶蓋200は、ローラ10の回転によってある程度の初速を有してローラ10からの落下が開始され、下方に移送される。
【0040】
前記したように、エアノズル90からは、上側缶蓋群201の下面201aと下側缶蓋群202の上面202aとの間に向けて、空気が噴射されている。従って、噴射されている空気を受けながら、缶蓋200が一枚ずつ落下することになる。そして、落下した缶蓋200は、今度はローラ20の端部に引っかかって保持される。このとき、ローラ20は回転していない。上側に位置するローラ10の回転はモータ収容箱40内のモータ(ステッピングモータ)により、停止と駆動とを繰り返しながら、次々と行われる。従って、ローラ10から落下した缶蓋200は積層されて、下側缶蓋群202が形成される。
【0041】
そして、上側缶蓋群201の最下面201aと下側缶蓋群202の
最上面202aとの距離が、缶蓋200の直径よりも短い距離になると、ローラ10と同様の機構により、ローラ20の回転が開始される。本実施形態では、ローラ20の回転角度は、ローラ10の回転角度と同様に設定されている。そのため、ローラ10の回転により缶蓋200が一枚落下すると、それに合わせてローラ20も回転し、缶蓋200が缶(図示しない)の上面に供給される。従って、上側缶蓋群201の最下面201aと、下側缶蓋群202の最上面202aとの距離(即ち缶蓋200の落下距離)は制御され、略一定になる。また、下側缶蓋群202を構成する缶蓋200の枚数も制御され、略一定になる。これらの制御が繰り返され、定常運転が行われる。
【0042】
缶蓋運搬装置100の定常運転時、上側缶蓋群201の最下面201aと下側缶蓋群202の最上面202aとの距離を略一定にするために、ローラ20からの缶蓋200の移動速度に基づき、ローラ10からの缶蓋200の移送速度が適宜調整される。即ち、前記の演算制御部は、ローラ20(第二移送手段)から移送される缶蓋200の移送速度に基づいて、ローラ10(第一移送手段)から移送される缶蓋200の移送速度を決定し、決定された移送速度になるようにローラ10(第一移送手段)を制御する。
【0043】
具体的には、例えば、ローラ20からの移送速度(第二速度センサにより測定される)が速すぎ、最下面201aと最上面202aとの距離(第二枚数測定センサにより測定される)を略一定に維持できない場合、演算制御部は、ローラ10からの移送速度を速める制御を行う。即ち、演算制御部は、前記距離を略一定に維持することができる、ローラ10からの移送速度を算出する。そして、演算制御部は、算出された移送速度になるように、第一速度センサにより測定される移送速度に基づいて、モータに対してフィードバック制御が行われる。
【0044】
このようにして、本実施形態に係る缶蓋移送装置100においては、缶蓋200が一枚ずつ分離されて移送されつつ、缶蓋200に付着し得る異物の除去が行われる。
【0045】
<効果>
以上の説明した本実施形態に係る缶蓋移送装置100によれば、缶蓋を一枚ずつ分離しながら迅速かつ歩留まりよく移送可能で、装置耐久性を向上可能な缶蓋移送装置を提供することができる。
【0046】
より具体的には、弾力性を有するローラ10を用い、四本のガイド棒30により囲まれて形成される空間S内を缶蓋200が落下することで、缶蓋200が一枚ずつ分離されている。そのため、缶蓋200に無理な力がかかることなく、缶蓋200を一枚ずつ分離することができる。従って、缶蓋200に傷や変形等が生じることを防止することができる。そのため、缶蓋200に対して傷や変形等が生じることにより発生し得る金属粉等の発生をより確実に防止することができる。従って、缶蓋200に対し、新たに発生した金属粉等が付着することがなく、缶蓋200に付着し得る異物量が増加することがない。また、缶蓋200に傷や変形等が生じることがないため、そのような缶蓋200によれば、缶の密閉性をより高めることができる。
【0047】
さらには、缶蓋200に無理な力を負荷し得る手段が無いため、缶蓋移送装置100に無理な力が負荷されることもなく、缶蓋移送装置100の耐久性を向上させることができる。また、缶蓋移送装置100において、缶蓋200の移送には、空間S内の落下運動を利用している。そのため、これによっても、缶蓋200に傷や変形等が生じることを防止することができる。
【0048】
また、
図3を参照しながら説明したように、エアノズル90は、上側缶蓋群201の最下面201aと下側缶蓋群202の最上面202aとに空気を噴射するようになっている。従って、上側缶蓋群201の最も下の缶蓋200の下面と、下側缶蓋群202の最も上の缶蓋200の上面とに付着し得る異物を除去することができる。さらには、エアノズル90から噴射されている空気の中を、缶蓋200が落下するようになっている。これにより、缶蓋200の表裏に付着し得る異物を、落下中に除去することができる。このように、缶蓋移送装置100においては、ローラ10に担持されているときと、落下中と、ローラ20に担持されているときとの3度に亘って、空気が噴射される。従って、缶蓋200に付着し得る異物をより確実に除去することができる。
【0049】
さらに、缶蓋200は落下するため、一方向から空気を噴射することで、落下中の缶蓋200に対して空気を表裏の両方に噴射することができる。そのため、空気を噴射するためのエアノズル90を複数設ける必要がなく、装置構成が簡便になる。さらには、落下中の缶蓋200に対して空気を噴射することで、缶蓋200の落下速度を遅くすることができる。これにより、特別な制御を行ったり、特別な手段を設けたりしなくても、缶蓋200に空気を噴射する時間を長くすることができ、缶蓋200からの異物の除去をよりいっそう確実に行うことができる。
【0050】
また、本実施形態では、
図1等に示すように、上側缶蓋群201の最下面201aと下側缶蓋群202の最上面202aとの距離が、缶蓋200の直径よりも短い、略一定の距離になっている。そのため、上側缶蓋群201から下側缶蓋群202に缶蓋200が落下する際、缶蓋200の表裏が反転することがない。従って、安定して缶蓋200を移送することができ、缶蓋200の移送の歩留まりを向上させることができる。
【0051】
さらに、
図4を参照しながら説明したように、例えば一組のローラ10を構成するローラ10a,10bは、駆動ギヤ12やギヤ11等を介し、一つのモータにより、同じ回転角度ずつ回転するようになっている。そのため、ローラ10aの回転とローラ10bの回転とを個別に制御することなく、ローラ10a,10bを同じ回転角度で回転させることができる。これにより、簡便な構成で同じ回転角度とすることができ、より確実に缶蓋200を一枚ずつ分離することができる。この点は、ローラ20についても同様である。
【0052】
また、例えばローラ10は、ステッピングモータにより回転制御される。従って、複雑な回路構成を必要とせず、精度よく、ローラ10を回転制御することができる。また、缶蓋200の移送時、ある程度初速を有して缶蓋200をローラ10から離すことができるため、缶蓋200の処理枚数を向上させることができる。この点は、ローラ20についても同様である。
【0053】
<変形例>
以上、本実施形態に缶蓋移送装置100を説明したが、本発明に係る缶蓋移送装置は、前記の構成に何ら限定されるものでない。従って、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、適宜任意に変更して実施することができる。
【0054】
例えば、缶蓋200を移送する第一移送手段(本実施形態ではローラ10)及び第二移送手段(本実施形態ではローラ20)としては、必ずしも弾力性のローラである必要はない。例えば、キャタピラ等のベルト、羽根車、吸盤、磁石、振動を用いた移送等、様々な手段を適用することができる。また、前記したような、第一移送手段及び第二移送手段はいずれも一組のローラである必要はなく、いずれか片方のみを一組のローラとしてもよい。また、第一移送手段及び第二移送手段のいずれについても、一組のローラとしなくてもよい。
【0055】
また、第一移送手段や第二移送手段としてローラを用いる場合、図示のような溝をローラ表面に設けることは、必ずしも必要ではない。本発明の要旨を損なわなければ、平滑なローラであってもよいし、弾力性を有さないローラであってもよいし、溝に代えて突起を設けてもよいし、溝と突起とを併せて設けるようにしてもよい。
【0056】
さらに、ガイド部材も、図示のガイド棒30に限定されず、種類や数等、適宜変更することができる。
【0057】
また、第一移送手段や第二移送手段を駆動する第一駆動手段及び第二駆動手段は、必ずしもステッピングモータである必要はない。ここで、ステッピングモータとは、パルス信号が入力されることにより所定角度ずつ回転駆動するものである。従って、ステッピングモータを用いることにより、複雑な回路を用いることなく、正確に第一移送手段や第二移送手段を制御することができる。ただし、第一駆動手段や第二駆動手段としては、ステッピングモータ以外の種々のモータが適用可能であるし、第一移送手段や第二移送手段を駆動させることができれば、モータ以外の種々の手段が適用可能である。従って、第一移送手段や第二移送手段の種類や機構に応じて、適宜、第一駆動手段及び第二駆動手段の具体的な構成を決定すればよい。
【0058】
また、本実施形態では、ローラ10を駆動させるモータ(第一駆動手段)と、ローラ20を駆動させるモータ(第二駆動手段)とを別体に設けているが、一つのモータでローラ10とローラ20とを駆動させるようにしてもよい。具体的には、例えば、ローラ10,20を前記の実施形態(
図1参照)と同様に配置するとともに、ローラ10を構成するローラ10aと、ローラ20を構成するローラ20aとの両方に噛合する駆動ギヤ(図示しない)が設けられるようにしてもよい。即ち、
図1等に示す駆動ギヤ12等に代えて、ローラ10a及びローラ20aの両方に噛合する別の一つの駆動ギヤが設けられることになる。そして、第一駆動手段かつ第二駆動手段として機能するモータ(図示しない)により当該一つの駆動ギヤを回転させることで、一つのモータでローラ10及びローラ20の両方を回転させることができる。
このとき、前記の駆動ギヤとローラ10a、及び/又は、前記の駆動ギヤとローラ20aは、必ずしも直接噛合している必要はない。従って、これらの間に例えばギヤ等の変速手段を介在させることができ、これにより、ローラ10やローラ20の回転角度を独立して制御することができる。なお、設けられる駆動ギヤは、ローラ10を構成するローラ10bと、ローラ20を構成するローラ20bとの両方に噛合するものであってもよい。
【0059】
さらに、第一駆動手段による駆動力を第一移送手段に伝達する機構は、図示の例に何ら限定されるものではない。設置面積等に応じて適宜ギヤ等を組み合わせて、任意に決定することもできる。第二駆動手段による駆動力を第二移送手段に伝達する機構についても同様である。
【0060】
また、移送中の缶蓋200に対して行う処理は、エアノズル90からの空気の噴射に何ら限られるものではない。例えば、ノズルから水を噴射したり、空気以外の気体を噴射したりして、缶蓋200に付着している異物の除去という処理を行うことができる。また、例えばUV照射装置を配置して紫外線を照射し、缶蓋200に対する殺菌という処理を行うこともできる。さらには、例えば湯水噴射装置や薬液噴射装置を配置して湯水や薬液を噴射することにより、缶蓋200に対して洗浄という処理を行うこともできる。これらのように、所望の処理に応じて処理装置を決定して配置すればよい。配置位置も図示の例に限定されず、任意である。
【0061】
さらに、本実施形態に係る缶蓋移送装置100においては、前記の制御が行われるようにしているが、前記の制御は一例であり、どのような制御を行うようにしてもよい。従って、例えば、上側缶蓋群201の最下面201aと下側缶蓋群202の最上面202aとの距離を略一定にする必要は必ずしもなく、適宜決定すればよい。また、当該距離が缶蓋200の距離よりも短くする必要も必ずしもなく、適否決定すればよい。また、第二移送手段としてのローラ20からの缶蓋200の移送枚数は、必ずしも一枚ずつでなくてもよく、その後の処理等によって、複数枚ずつ移動するようにしてもよい。
【実施例】
【0062】
次に、具体的な実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0063】
<評価方法と結果>
缶蓋移送装置100において、缶蓋200が一枚ずつ確実に分離されていることを検討した。具体的には、
図5に示すように、缶蓋移送装置100に備えられるエアノズル90の水平面に対する角度αを約5°、エアノズル90から缶蓋200までの距離をLとし、エアノズル90から噴射される空気の速度(風速)を一定にした状態で距離Lを種々変更して、缶蓋移送装置100を作製した。
【0064】
そして、隣接する缶蓋200の間に紙片を1枚ずつ挿入し、20枚の缶蓋200が積層されたものを作製した。次いで、これらを、エアノズル90から空気が噴射された状態で
図5の空間S内に通し、挿入した19枚の紙片の残存数を調べた。この試験は、2回行った。これらの結果を、A部及びB部における風速並びにA部における風圧と併せて、以下の表1に示す。
【0065】
【表1】
※ 「風圧」における「−」は、測定していないことを示す。
【0066】
<検討>
表1に示すように、エアノズル90から缶蓋200までの距離Lがどのような長さであっても、即ち、B部における風速がどのような速さであっても、缶蓋200間への紙片の残存数は少なく、隣接する缶蓋200同士が良好に分離されることがわかった。特に、B部における風速が12m/s以上の場合、紙片の残存は殆ど無く、缶蓋200同士は特に良好に分離されることがわかった。
【0067】
前記したように、エアノズル90からの空気の風速は一定であるため、距離Lが長くなればなるほど、缶蓋200が受ける風の速度は遅くなる。このことは、表1中、「A部における風速」及び「B部における風速」に示すとおりである。そのため、缶蓋200が一枚ずつ完全に分離されていないと、紙片の除去が行われにくくなり、紙片が残存しやすくなる。この点を考慮して表1の結果をさらに検討すると、缶蓋200が受ける風の風速が遅くなっても(具体的には、例えばB部における風速として10m/s以上程度)、紙片の除去は十分に行われている。このことは、缶蓋200が一枚ずつ十分に分離されたことによるものであると考えられる。
【0068】
さらには、
図5等に示すように、缶蓋移送装置100においては、缶蓋200を一枚ずつ分離して移送する構成として、缶蓋200及び缶蓋移送装置100の双方に無理な力が負荷される部材が使用されていない。そのため、缶蓋200を連続して、また、長時間運転しても、缶蓋200に傷がついたり、破損したりすることがない。従って、缶蓋移送装置100の耐久性を向上させつつも、表1に示すように、缶蓋200同士を良好に分離することができる。
【0069】
また、
図5に示すように、エアノズル90は一つのみ設けられている。缶蓋移送装置100においては、分離後の缶蓋200は一枚ずつ落下し、しかも、落下中の缶蓋200の周囲には、風を遮る障害物が少ない。そのため、エアノズル90が一つのみであっても、より良好に紙片を除去することができるといえる。