(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
投影レンズと、この投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された光源と、この光源からの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、このリフレクタからの反射光の一部を上記投影レンズへ向けて上向きに反射させるための上向き反射面を有し、該上向き反射面の前端縁が上記後側焦点またはその近傍を通るようにして配置されたミラー部材と、を備えてなる車両用灯具において、
上記上向き反射面の前端縁の中央部が、上記投影レンズのメリジオナル像面に沿って延びるように形成されており、
上記前端縁の左端部および/または右端部が、上記メリジオナル像面に対して前後方向に変位するようにして形成されている、ことを特徴とする車両用灯具。
上記上向き反射面において上記メリジオナル像面よりも前方側に位置する部分が、前方へ向けて斜め下向きに延びるように形成されている、ことを特徴とする請求項2記載の車両用灯具。
上記前端縁の左端部および/または右端部の上記メリジオナル像面からの前後方向の変位量が、上記前端縁の中央部から左右方向に離れるに従って大きくなるように設定されている、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の車両用灯具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ミラー部材を備えたプロジェクタ型の車両用灯具において、ミラー部材の上向き反射面は、その前端縁が投影レンズの後側焦点またはその近傍を通るように形成されるが、その際、この前端縁が投影レンズのメリジオナル像面に沿って延びるように形成された構成とすれば、カットオフラインを鮮明に形成することができる。そしてこれにより対向車や前走車のドライバにグレアを与えてしまうおそれをなくすことができる。
【0007】
しかしながら、カットオフラインが鮮明になりすぎると、道路わきに存在する歩行者等を視認しにくくなってしまう、という問題がある。
【0008】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、プロジェクタ型の車両用灯具において、対向車や前走車のドライバにグレアを与えてしまうことなく、道路わきの歩行者等の視認性を高めることができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、ミラー部材の構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0010】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
投影レンズと、この投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された光源と、この光源からの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、このリフレクタからの反射光の一部を
上記投影レンズへ向けて上向きに反射させるための上向き反射面を有し、該上向き反射面の前端縁が上記後側焦点またはその近傍を通るようにして配置されたミラー部材と、を備えてなる車両用灯具において、
上記上向き反射面の前端縁の中央部が、上記投影レンズのメリジオナル像面に沿って延びるように形成されており、
上記前端縁の左端部および/または右端部が、上記メリジオナル像面に対して前後方向に変位するようにして形成されている、ことを特徴とするものである。
【0011】
上記「光源」の種類は特に限定されるものではなく、また、この「光源」は、投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置されていれば、その具体的な位置や向き等は特に限定されるものではない。
【0012】
上記「ミラー部材」は、その「上向き反射面の前端縁」が投影レンズの後側焦点またはその近傍を通るようにして配置されていれば、その「上向き反射面」の具体的な形成範囲やその表面形状等は特に限定されるものではない。
【0013】
上記「上向き反射面の前端縁」における「中央部」と「左端部および/または右端部」との具体的な境界位置は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用灯具は、ミラー部材を備えたプロジェクタ型の灯具として構成されているが、上記ミラー部材は、その上向き反射面の前端縁の中央部が、投影レンズのメリジオナル像面に沿って延びるように形成されるとともに、その前端縁の左端部および/または右端部が、上記メリジオナル像面から前後方向に変位するようにして形成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0015】
すなわち、上向き反射面の前端縁の中央部が上記メリジオナル像面に沿って延びるように形成されていることにより、カットオフラインにおける左右方向の中央部が鮮明に形成されることとなる。そしてこれにより対向車や前走車のドライバにグレアを与えてしまうおそれをなくすことができる。
【0016】
一方、上向き反射面の前端縁の左端部および/または右端部が上記メリジオナル像面から前後方向に変位するようにして形成されていることにより、カットオフラインの左端部および/または右端部が不鮮明になってその上方近傍の空間にも光が照射されることとなる。そしてこれにより道路わきに存在する歩行者等を視認しやすくすることができる。
【0017】
その際、ミラー部材を備えたプロジェクタ型の灯具においては、配光パターンにおけるカットオフラインの下方近傍領域を、上向き反射面の前端縁の上方近傍を通過した光と上向き反射面の前端縁近傍領域で上向きに反射した光とによって形成するようになっている。
【0018】
したがって、上向き反射面の前端縁における左端部および/または右端部が上記メリジオナル像面に対して前方側に変位している場合には、本来上向き反射面の前端縁の上方近傍を通過してカットオフラインの左端部および/または右端部の下方近傍領域を形成すべき光が減少することとなるので、カットオフラインの左端部および/または右端部においてカットオフラインの上下両側での明るさのコントラストが大幅に緩和されることとなる。そしてこれにより道路わきに存在する歩行者等をより視認しやすくすることができる。
【0019】
一方、ミラー部材の上向き反射面の前端縁における左端部および/または右端部が上記メリジオナル像面に対して後方側に変位している場合には、本来ミラー部材の上向き反射面の前端縁近傍領域で上向きに反射してカットオフラインの左端部および/または右端部の下方近傍領域を形成すべき光が減少することとなるので、カットオフラインの左端部および/または右端部においてカットオフラインの上下両側での明るさのコントラストが大幅に緩和されることとなる。そしてこれにより道路わきに存在する歩行者等をより視認しやすくすることができる。
【0020】
このように本願発明によれば、プロジェクタ型の車両用灯具において、対向車や前走車のドライバにグレアを与えてしまうことなく、道路わきの歩行者等の視認性を高めることができる。
【0021】
上記構成において、上向き反射面の前端縁の左端部および/または右端部が、上記メリジオナル像面に対して前方側に変位している構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0022】
すなわち、上述したように、上向き反射面の前端縁の左端部および/または右端部が上記メリジオナル像面に対して前方側に変位している場合には、カットオフラインの上方近傍の空間を照射する光が、上向き反射面で反射してから投影レンズに入射する光によって得られることとなるので、投影レンズに直接入射する光によってカットオフラインの上方近傍の空間を照射するようにした場合に比して、その照射光が明るくなりすぎないようにすることが容易に可能となる。
【0023】
その際、上向き反射面において上記メリジオナル像面よりも前方側に位置する部分が、前方へ向けて斜め下向きに延びるように形成された構成とすれば、この部分で上向きに反射した光を投影レンズに入射させることが容易に可能となる。
【0024】
上記構成において、ミラー部材として、その上向き反射面の前端縁の左端部および右端部の各々が上記メリジオナル像面から前後方向に変位するようにして形成された構成となっている場合において、その前端縁の左端部および右端部のうち自車線側に位置する端部(すなわちカットオフラインにおける対向車線側の端部を形成する部分)の方が、対向車線側に位置する端部(すなわちカットオフラインにおける自車線側の端部を形成する部分)よりも上記メリジオナル像面からの前後方向の変位量が大きい値に設定された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0025】
すなわち、一般にロービーム用配光パターンのカットオフラインは、自車線側よりも対向車線側の方が低い位置にあるので、対向車線側の道路わきに存在する歩行者等を視認しやすくするためには、カットオフラインから上方側により離れた位置まで光を照射することが必要となる。そこで、自車線側に位置する端部の前後方向の変位量を相対的に大きい値に設定して、カットオフラインにおける対向車線側の端部においてカットオフラインから上方側により離れた位置まで光を照射するようにすれば、自車線側および対向車線側いずれにおいても道路わきに存在する歩行者等を視認するために必要にして十分な光を確保することが容易に可能となる。
【0026】
上記構成において、上向き反射面の前端縁の左端部および/または右端部の上記メリジオナル像面からの前後方向の変位量が、前端縁の中央部から左右方向に離れるに従って大きくなるように設定すれば、車両正面方向からの左右開き角度が大きくなるに従ってカットオフラインから上方により離れた位置まで光を照射することができる。そしてこれにより、対向車や前走車のドライバにグレアを与えてしまうおそれをなくした上で道路わきに存在する歩行者等の視認性向上を図ることが一層容易に可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0029】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す側断面図であり、
図2は、その平面図である。また、
図3は、この車両用灯具10の主要構成要素を示す斜視図である。
【0030】
これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、投影レンズ12と、この投影レンズ12の後側焦点Fよりも後方側に配置された光源14と、この光源14を上方側から覆うように配置され、該光源14からの光を投影レンズ12へ向けて反射させるリフレクタ16と、このリフレクタ16からの反射光の一部を上向きに反射させるための上向き反射面20aを有するミラー部材20とを備えた構成となっている。
【0031】
その際、光源14およびリフレクタ16はミラー部材20に支持されており、投影レンズ12は、レンズホルダ18を介してミラー部材20に支持されている。
【0032】
この車両用灯具10は、ヘッドランプの一部として組み込まれた状態で用いられる灯具ユニットであって、ヘッドランプに組み込まれた状態では、その投影レンズ12の光軸Axが車両前後方向に対して0.5〜0.6°程度下向きの方向に延びた状態で配置されるようになっている。
【0033】
光源14は、白色発光ダイオードの発光チップであって、横長矩形状の発光面を有している。そして、この光源14は、その発光面を光軸Ax上において上向きにした状態で配置されている。
【0034】
リフレクタ16の反射面16aは、光軸Axと同軸の長軸を有するとともに光源14の発光中心を第1焦点とする略楕円面状の曲面で構成されている。その際、この反射面16aは、その光軸Axに沿った鉛直断面形状が後側焦点Fのやや前方に位置する点を第2焦点とする楕円形状に設定されており、その離心率が鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されている。そしてこれにより、リフレクタ16は、光源14からの光を、鉛直断面内においては後側焦点Fのやや前方に位置する点に収束させるとともに、水平断面内においてはその収束位置をかなり前方へ移動させるようになっている。
【0035】
ミラー部材20の上向き反射面20aは、該ミラー部材20の上面にアルミニウム蒸着等による鏡面処理を施すことにより形成されている。この上向き反射面20aは、光軸Axよりも左側(灯具正面視では右側)に位置する左側領域20aLが光軸Axを含む水平面で構成されており、光軸Axよりも右側に位置する右側領域20aRが、短い斜面を介して左側領域20aLよりも一段低い水平面で構成されている。このミラー部材20の上向き反射面20aは、その前端縁22が後側焦点Fを通るようにして配置されている。
【0036】
これにより、
図1に示すように、ミラー部材20は、その上向き反射面20aにおいて、リフレクタ16の反射面16aから投影レンズ12へ向かう反射光の一部を上向きに反射させて投影レンズ12に入射させ、これを下向き光として投影レンズ12から出射させるようになっている。そして、この投影レンズ12からの出射光により、左配光のロービーム用配光パターン(これについては後述する)を形成するようになっている。
【0037】
なお、
図3において破線のハッチングで示すように、上向き反射面20aは、その前端縁22から後方側に一定距離離れた位置までの範囲内の領域に形成されている。
【0038】
図2に示すように、ミラー部材20における上向き反射面20aの前端縁22は、その中央部22Cが投影レンズ12のメリジオナル像面(同図において断面形状を2点鎖線で示す曲面)Mに沿って延びるように形成されており、また、その左端部22Lおよび右端部22Rは、その各々がメリジオナル像面Mに対して前方側に変位するようにして形成されている。
【0039】
図2および4に示すように、ミラー部材20の上向き反射面20aのうち、メリジオナル像面Mよりも前方側に位置する右前端部分(すなわち前端縁22の右端部22Rの後方近傍に位置する領域)20aR1において上向きに反射したリフレクタ16からの反射光は、投影レンズ12に入射した後、この投影レンズ12から上向き光として出射することとなる。
【0040】
同様に、ミラー部材20の上向き反射面20aのうち、メリジオナル像面Mよりも前方側に位置する左前端部分(すなわち前端縁22の左端部22Lの後方近傍に位置する領域)20aL1において上向きに反射したリフレクタ16からの反射光も、投影レンズ12に入射した後、この投影レンズ12から上向き光として出射することとなる。
【0041】
その際、これら左端部22Lおよび右端部22Rの各々のメリジオナル像面Mからの前方変位量は、前端縁22の中央部22Cから左右方向に離れるに従って徐々に大きくなるように設定されている。
【0042】
また、このメリジオナル像面Mからの前方変位量は、前端縁22の左端部(すなわち自車線側に位置する端部)22Lの方が、その右端部(すなわち対向車線側に位置する端部)22Rよりも大きい値に設定されている。
【0043】
図5(a)は、車両用灯具10から前方へ照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPLを透視的に示す図である。
【0044】
このロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH−Vを鉛直方向に通るV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V−V線よりも右側の対向車線側部分が下段カットオフラインCL1として形成されるとともに、V−V線よりも左側の自車線側部分が、この下段カットオフラインCL1から傾斜部を介して段上がりになった上段カットオフラインCL2として形成されている。
【0045】
このロービーム用配光パターンPLは、リフレクタ16で反射した光源14からの光によって投影レンズ12の後側焦点面上に形成された光源14の像を、投影レンズ12により上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成され、そのカットオフラインCL1、CL2は、ミラー部材20の上向き反射面20aの前端縁22の反転投影像として形成されるようになっている。その際、下段カットオフラインCL1は、前端縁22における左側領域20aLの部分の反転投影像として形成され、また、上段カットオフラインCL2は、前端縁22における右側領域20aRの部分の反転投影像として形成されるようになっている。
【0046】
このロービーム用配光パターンPLにおいて、下段カットオフラインCL1とV−V線との交点であるエルボ点Eは、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置している。これは光軸Axが車両前後方向に対して0.5〜0.6°程度下向きの方向に延びていることによるものである。
【0047】
下段カットオフラインCL1は、V−V線から右側20°までの角度範囲においては、水平に延びる明瞭なカットオフラインCL1Aとして形成されているが、右側20°を超えると、カットオフラインCL1Aから上方側に変位した不明瞭なカットオフラインCL1Bとして形成されている。
【0048】
これは、ミラー部材20の上向き反射面20aにおける前端縁22の左端部22Lがメリジオナル像面Mに対して前方側に変位しており、その上向き反射面20aの左前端部分20aL1において上向きに反射したリフレクタ16からの反射光が投影レンズ12から上向き光として出射することによるものである。
【0049】
その際、このカットオフラインCL1Bは、V−V線からの右側開き角度が大きくなるに従ってカットオフラインCL1Aの位置から徐々に斜め上方へ変位するようにして延びている。これは、前端縁22の左端部22Lのメリジオナル像面Mからの前方変位量が、前端縁22の中央部22Cから左方向に離れるに従って徐々に大きくなるように設定されていることによるものである。
【0050】
一方、上段カットオフラインCL2は、V−V線から左側20°までの角度範囲においては、水平に延びる明瞭なカットオフラインCL2Aとして形成されているが、左側20°を超えると、カットオフラインCL2Aから上方側に変位した不明瞭なカットオフラインCL2Bとして形成されている。
【0051】
これは、ミラー部材20の上向き反射面20aにおける前端縁22の右端部22Rがメリジオナル像面Mに対して前方側に変位しており、その上向き反射面20aの右前端部分20aR1において上向きに反射したリフレクタ16からの反射光が投影レンズ12から上向き光として出射することによるものである。
【0052】
その際、このカットオフラインCL2Bは、V−V線からの左側開き角度が大きくなるに従ってカットオフラインCL2Aの位置から徐々に斜め上方へ変位するようにして延びている。これは、前端縁22の右端部22Rのメリジオナル像面Mからの前方変位量が、前端縁22の中央部22Cから右方向に離れるに従って徐々に大きくなるように設定されていることによるものである。
【0053】
下段カットオフラインCL1におけるカットオフラインCL1BのカットオフラインCL1Aからの上方変位量は、上段カットオフラインCL2におけるカットオフラインCL2BのカットオフラインCL2Aからの上方変位量よりも大きくなっている。これは、メリジオナル像面Mからの前方変位量が、前端縁22の左端部22Lの方が、その右端部22Rよりも大きい値に設定されていることによるものである。その際、H−Vを水平方向に通るH−H線からの上方突出量が、下段カットオフラインCL1のカットオフラインCL1
Bと上段カットオフラインCL2
のカットオフラインCL2Bとで略同じ値となるように、前端縁22の左端部22Lおよび右端部22Rの各々のメリジオナル像面Mからの前方変位量が設定されている。
【0054】
図5(b)は、従来の車両用灯具から前方へ照射される光により、上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPL´を透視的に示す図である。
【0055】
このロービーム用配光パターンPL´も、ロービーム用配光パターンPLと同様、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有しているが、これら各カットオフラインCL1、CL2は、V−V線から左右両側20°までの中央部のみならずその左右両端部も水平に延びる明瞭なカットオフラインとして形成されている。
【0056】
このため、対向車2や前走車4のドライバにグレアを与えてしまうおそれはないが、道路わきに存在する歩行者6L、6Rはその下半身部分しか光照射されないこととなる。
【0057】
これに対し、
図5(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPLにおいては、カットオフラインCL1、CL2における左右方向の中央部がカットオフラインCL1A、CL2Aとして鮮明に形成されているので、対向車2や前走車4のドライバにグレアを与えてしまうおそれはなく、一方、上段カットオフラインCL2の左端部がカットオフラインCL2Aから上方側に変位した不明瞭なカットオフラインCL2Bとして形成されるとともに、下段カットオフラインCL1の右端部がカットオフラインCL1Aから上方側に変位した不明瞭なカットオフラインCL1Bとして形成されているので、道路わきに存在する歩行者6L、6Rはその上半身部分まで光照射されることとなる。
【0058】
その際、このロービーム用配光パターンPLは、ロービーム用配光パターンPL´に比して、上段カットオフラインCL2の左端部の下方近傍領域(図中網線で示す領域)がカットオフラインCL2Aの位置よりも下方まで部分的に暗くなっており、また、下段カットオフラインCL1の右端部の下方近傍領域(図中網線で示す領域)がカットオフラインCL1Aの位置よりも下方まで部分的に暗くなっている。
【0059】
これは、上向き反射面20aの前端縁22の左端部22Lおよび右端部22Rがメリジオナル像面Mに対して前方側に変位している場合には、本来上向き反射面20aの前端縁22の上方近傍を通過してカットオフラインCL1、CL2の左端部および右端部の下方近傍領域を形成すべき光が減少することによるものである。
【0060】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0061】
本実施形態に係る車両用灯具10は、ミラー部材20を備えたプロジェクタ型の灯具として構成されているが、ミラー部材20は、その上向き反射面20aの前端縁22の中央部22Cが、投影レンズ12のメリジオナル像面Mに沿って延びるように形成されるとともに、その前端縁22の左端部22Lおよび右端部22Rが、いずれもメリジオナル像面Mから前方側に変位するようにして形成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0062】
すなわち、上向き反射面20aの前端縁22の中央部22Cがメリジオナル像面Mに沿って延びるように形成されていることにより、カットオフラインCL1、CL2における左右方向の中央部(すなわちカットオフラインCL1A、CL1B)が鮮明に形成されることとなる。そしてこれにより対向車2や前走車4のドライバにグレアを与えてしまうおそれをなくすことができる。
【0063】
一方、上向き反射面20aの前端縁22の左端部22Lおよび右端部22Rがメリジオナル像面Mから前方側に変位するようにして形成されていることにより、カットオフラインCL1、CL2の左端部22Lおよび右端部22Rが不鮮明になってその上方近傍の空間にも光が照射されることとなる。そしてこれにより道路わきに存在する歩行者6L、6R等を視認しやすくすることができる。
【0064】
その際、上向き反射面20aの前端縁22は、その左端部22Lおよび右端部22Rがメリジオナル像面Mに対して前方側に変位しており、本来上向き反射面20aの前端縁22の上方近傍を通過してカットオフラインCL1、CL2の左端部および右端部の下方近傍領域を形成すべき光が減少するので、カットオフラインCL1、CL2の左端部および右端部においてその上下両側での明るさのコントラストが大幅に緩和することとなる。そしてこれにより道路わきに存在する歩行者6L、6R等をより視認しやすくすることができる。
【0065】
このように本実施形態によれば、プロジェクタ型の車両用灯具10において、対向車2や前走車4のドライバにグレアを与えてしまうことなく、道路わきの歩行者6L、6R等の視認性を高めることができる。
【0066】
特に本実施形態においては、上向き反射面20aの前端縁22の左端部22Lおよび右端部22Rがメリジオナル像面Mに対して前方側に変位しているので、カットオフラインCL1、CL2の上方近傍の空間を照射する光が、上向き反射面20aで反射してから投影レンズ12に入射する光によって得られることとなる。したがって、投影レンズ12に直接入射する光によってカットオフラインCL1、CL2の上方近傍の空間を照射するようにした場合に比して、その照射光が明るくなりすぎないようにすることが容易に可能となる。
【0067】
しかも本実施形態においては、上向き反射面20aの左端部22Lの方が右端部22Rよりもメリジオナル像面Mからの前方変位量が大きい値に設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0068】
すなわち、ロービーム用配光パターンPLのカットオフラインCL1、CL2は、自車線側よりも対向車線側の方が低い位置にあるので、対向車線側の道路わきに存在する歩行者6R等を視認しやすくするためには、対向車線側の下段カットオフラインCL1から上方側により離れた位置まで光を照射することが必要となる。そこで本実施形態のように、自車線側に位置する左端部22Lの前方変位量を相対的に大きい値に設定して、カットオフラインCL1B(すなわち下段カットオフラインCL1において対向車線側の端部に位置する部分)をカットオフラインCL1Aから上方側により離れた位置に形成することにより、自車線側および対向車線側いずれにおいても道路わきに存在する歩行者6L、6R等を視認するために必要にして十分な光を確保することが容易に可能となる。
【0069】
また本実施形態においては、前端縁22の左端部22Lおよび右端部22Rの各々のメリジオナル像面Mからの前方変位量が、前端縁22の中央部22Cから左右方向に離れるに従って大きくなるように設定されているので、車両正面方向からの左右開き角度が大きくなるに従ってカットオフラインCL1A、CL2Aから上方により離れた位置まで光を照射するようにすることができる。そしてこれにより、対向車2や前走車4のドライバにグレアを与えてしまうおそれをなくした上で道路わきに存在する歩行者6L、6R等の視認性向上を図ることが一層容易に可能となる。
【0070】
なお、このようにする代わりに、前端縁22の左端部22Lおよび右端部22Rの各々のメリジオナル像面Mからの前方変位量が一定の値に設定された構成とすることも可能である。
【0071】
上記実施形態においては、前端縁22の左端部22Lおよび右端部22Rの各々が、メリジオナル像面Mに対して前方側に変位しているものとして説明したが、左端部22Lおよび右端部22Rのうちの一方のみがメリジオナル像面Mに対して前方側に変位している構成とすることも可能である。
【0072】
上記実施形態においては、前端縁22が後側焦点Fを通るようにして配置されているものとして説明したが、前端縁22が後側焦点Fの近傍(例えば後側焦点Fの上方近傍や下方近傍)を通るようにして配置された構成とすることも可能である。
【0073】
上記実施形態においては、車両用灯具10が、左配光のロービーム用配光パターンPLを形成するように構成されているが、右配光のロービーム用配光パターンを形成するように構成されている場合、あるいは上端部に水平カットオフラインのみを有する配光パターンを形成するように構成されている場合においても、上記実施形態と同様の構成を採用することにより同様の作用効果を得ることができる。
【0074】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0075】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0076】
図6は、本変形例に係る車両用灯具110を示す平面図であり、
図7は、本変形例のミラー部材120の光学的作用を示す側断面図である。
【0077】
これらの図に示すように、本変形例に係る車両用灯具110は、その基本的な構成については上記実施形態の場合と同様であるが、ミラー部材120の上向き反射面120aの構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0078】
すなわち、本変形例のミラー部材120における上向き反射面120aも、その前端縁122の中央部122Cは投影レンズ12のメリジオナル像面Mに沿って延びるように形成されているが、その前端縁122の左端部122Lおよび右端部122Rは、その各々がメリジオナル像面Mに対して後方側に変位するようにして形成されている。
【0079】
これにより、上向き反射面120aの前端縁122の左端部122Lおよび右端部122Rとメリジオナル像面Mとの間の空間に到達したリフレクタ16からの反射光を、上向きに反射させることなくそのまま投影レンズ12に入射させて、この投影レンズ12から上向き光として出射させるようになっている。
【0080】
その際、これら左端部122Lおよび右端部122Rの各々のメリジオナル像面Mからの後方変位量は、前端縁122の中央部122Cから左右方向に離れるに従って徐々に大きくなるように設定されている。
【0081】
また、このメリジオナル像面Mからの前方変位量は、前端縁122の左端部122Lの方が右端部122Rよりも大きい値に設定されている。
【0082】
本変形例の構成を採用した場合においても、
図5(a)にロービーム用配光パターンPLと略同様のロービーム用配光パターンを形成することができる。そしてこれにより、対向車2や前走車4のドライバにグレアを与えてしまうことなく、道路わきの歩行者6L、6R等の視認性を高めることができる。
【0083】
本変形例においては、本来ミラー部材120の上向き反射面120aの前端縁近傍領域で上向きに反射してカットオフラインCL1、CL2の左端部および右端部の下方近傍領域を形成すべき光を減少させることができる。したがって、本変形例においても、カットオフラインCL1、CL2の左端部および右端部においてその上下両側での明るさのコントラストを大幅に緩和させることができる。
【0084】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0085】
図8は、本変形例に係る車両用灯具210の要部を示す側断面図である。
【0086】
同図に示すように、本変形例に係る車両用灯具210は、その基本的な構成については上記実施形態の場合と同様であるが、ミラー部材220の上向き反射面220aの構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0087】
すなわち、本変形例のミラー部材220における上向き反射面220aも、その前端縁222の中央部222Cは投影レンズ12のメリジオナル像面Mに沿って延びるように形成されており、その前端縁222の右端部222Rはメリジオナル像面Mに対して前方側に変位するようにして形成されているが、上向き反射面220aにおいてメリジオナル像面Mよりも前方側に位置する右前端部分220aR1は、前方へ向けて斜め下向きに延びるように形成されている。
【0088】
同様に、上向き反射面220aの前端縁222の左端部(図示せず)も、メリジオナル像面Mに対して前方側に変位するようにして形成されており、また上向き反射面220aの左前端部分(図示せず)も、前方へ向けて斜め下向きに延びるように形成されている。
【0089】
本変形例においても、ミラー部材220の上向き反射面220aにおける右前端部分220aR1(および左前端部分)において上向きに反射したリフレクタ16からの反射光は、投影レンズ12に入射した後、この投影レンズ12から上向き光として出射するが、その上向き角度は上記実施形態の場合よりも小さくなる。
【0090】
本変形例の構成を採用することにより、右前端部分220aR1(および左前端部分)で上向きに反射した光を投影レンズ12に入射させることが容易に可能となる。
【0091】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0092】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。