特許第6180774号(P6180774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6180774ロータリーシールおよびシェーピングフォーマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180774
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ロータリーシールおよびシェーピングフォーマー
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3204 20160101AFI20170807BHJP
   F16L 41/02 20060101ALN20170807BHJP
【FI】
   F16J15/3204 201
   !F16L41/02
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-77387(P2013-77387)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-202245(P2014-202245A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】井原 洋
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−166362(JP,A)
【文献】 特開2006−234101(JP,A)
【文献】 特開2000−238694(JP,A)
【文献】 特開2009−172796(JP,A)
【文献】 特開2006−177453(JP,A)
【文献】 実開昭63−188393(JP,U)
【文献】 特開2008−001208(JP,A)
【文献】 特開2002−011804(JP,A)
【文献】 特開2010−036420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3204
F16L 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧エアーの流路が設けられた回転軸を回転可能に支持する円筒状のシールケースを備えたロータリーシールであって、
前記シールケースが、個々に交換可能なシールリングを複数重ね合わせて形成されており、
前記シールリングのそれぞれの内周に、前記回転軸の流路に高圧エアーを供給するための凹部が形成されており、
前記シールリングが重ね合わされることにより形成されるリップシール保持部にリップシールが配置されており、
前記シールケースの内側に、さらに、前記回転軸を覆い前記回転軸と一体に回転するスリーブが設けられていると共に、前記スリーブの一端には溝加工が施されており、
前記スリーブの端部と前記回転軸の端部とが、エンドプレートを介して固定されており、
前記スリーブの溝加工に前記エンドプレートに設けられた係止部が差し込まれることにより、前記回転軸と前記スリーブとが前記エンドプレートを介して固定されて、一体に回転するように構成されていることを特徴とするロータリーシール。
【請求項2】
生タイヤ基体およびビードコアを内側から保持する一対のビードロック手段と、
前記ビードロック手段を軸方向に移動可能に支持する回転軸と、
前記回転軸を回転可能に支持するロータリーシールと
を備え、
前記ロータリーシールが、請求項1に記載のロータリーシールであることを特徴とする生タイヤ成形用のシェーピングフォーマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーシールおよび前記ロータリーシールを備えたシェーピングフォーマーに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤ、例えばラジアルタイヤの製造においては、第1成形工程および第2成形工程と2つの成形工程を有する2ステージ成形法が広く用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
具体的には、まず第1成形工程において、成形ドラムを用いて円筒状の生タイヤ基体を成形する。
【0004】
次に、第2成形工程において、成形された生タイヤ基体をシェーピングフォーマーに移し替え、生タイヤ基体の外側に別途成形されたトレッドリングを待機させた後、生タイヤ基体をトロイド状に膨張変形させて生タイヤ基体の外周面にトレッドリングの内周面を張り合わせ、さらに、生タイヤ基体およびトレッドリングを回転させながらステッチローラで押圧して両者を密着させることにより、生タイヤの成形を行う。
【0005】
上記した生タイヤの成形において、シェーピングフォーマーは、図7に示すように、生タイヤ基体BおよびビードコアCを内側から保持する一対のビードロック手段11と、このビードロック手段11を軸方向に移動可能に支持する回転軸(主軸)12と、回転軸12内部で同軸方向に伸びる中心軸13とを備えている。
【0006】
上記シェーピングフォーマー1の回転軸12は、本体フレーム17の内部に設けられたロータリーシール2により、一端が回転可能に支持されており、内部に高圧エアーを通すための流路が設けられている。さらに、上記流路の一端はロータリーシール2の内側で開口しており、ロータリーシール2を経由して流路内に供給された高圧エアーはブラダーやピストンなどを作動させる。
【0007】
ロータリーシール2は、図8(a)に示すような一体物のシールケース21を備えており、図8(b)に示すようなスペーサー26を内側に設けることによって高圧エアーを通すための空間が形成され、端部がリップシール(Wリップシール)24によってシールされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−36420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のロータリーシール2では、長期間使用した場合、回転軸12の回転に伴って高圧エアーの漏れが発生して、適切なエアーの供給ができなくなるおそれがあった。
【0010】
また、シールケース21内部が、回転軸12との接触などにより摩耗したりして損傷する恐れがあった。このような損傷が生じた場合にはシールケース21ごと交換する必要があるため、メンテナンス時間の長期化による製造効率の低下や設備コストの上昇などを招く。
【0011】
そこで本発明は、長期間使用した場合であっても高圧エアーの漏れの発生を適切に防止することができ、メンテナンスも容易なロータリーシールおよび前記ロータリーシールを備えたシェーピングフォーマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、
高圧エアーの流路が設けられた回転軸を回転可能に支持する円筒状のシールケースを備えたロータリーシールであって、
前記シールケースが、個々に交換可能なシールリングを複数重ね合わせて形成されており、
前記シールリングのそれぞれの内周に、前記回転軸の流路に高圧エアーを供給するための凹部が形成されており、
前記シールリングが重ね合わされることにより形成されるリップシール保持部にリップシールが配置されており、
前記シールケースの内側に、さらに、前記回転軸を覆い前記回転軸と一体に回転するスリーブが設けられていると共に、前記スリーブの一端には溝加工が施されており、
前記スリーブの端部と前記回転軸の端部とが、エンドプレートを介して固定されており、
前記スリーブの溝加工に前記エンドプレートに設けられた係止部が差し込まれることにより、前記回転軸と前記スリーブとが前記エンドプレートを介して固定されて、一体に回転するように構成されていることを特徴とするロータリーシールである。
【0015】
請求項に記載の発明は、
生タイヤ基体およびビードコアを内側から保持する一対のビードロック手段と、
前記ビードロック手段を軸方向に移動可能に支持する回転軸と、
前記回転軸を回転可能に支持するロータリーシールと
を備え、
前記ロータリーシールが、請求項1に記載のロータリーシールであることを特徴とする生タイヤ成形用のシェーピングフォーマーである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、長期間使用した場合であっても高圧エアーの漏れの発生を適切に防止することができ、メンテナンスも容易なロータリーシールおよび前記ロータリーシールを備えたシェーピングフォーマーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態のロータリーシールの構成を示す図である。
図2】本発明の一実施の形態のロータリーシールのシールケースを示す図である。
図3】本発明の一実施の形態のロータリーシールのシールリングを示す図である。
図4】本発明の他の実施の形態のロータリーシールの構成を示す図である。
図5】本発明の一実施の形態のロータリーシールのスリーブを示す図である。
図6】本発明の一実施の形態のロータリーシールのエンドプレートを示す図である。
図7】シェーピングフォーマーの一部切欠正面図である。
図8】従来のロータリーシールのシールケースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態に基づいて本発明を説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
はじめに、本発明の一実施の形態に係るロータリーシールについて図1図3を参照しながら説明する。図1(a)は本実施の形態のロータリーシールの断面図であり、図1(b)は正面図である。また、図2(a)は本実施の形態のロータリーシールのシールケースの外観図であり、図2(b)は内側を示す図である。
【0020】
本実施の形態のロータリーシール2は、図1(a)および図1(b)に示すように、回転軸12と、回転軸12を回転可能に支持するシールケース21とを備えている。なお、図1(a)および図1(b)における符号13は中心軸であり、12Aは回転軸12に形成されたガス流路である。
【0021】
シールケース21は、シールリング21aを複数重ね合わせることにより形成されており、隣り合ったシールリング21aに形成されるリップシール保持部にリップシール24が備えられている。
【0022】
シールリング21aは、図3(a)に示すように、内周に沿って切欠き21bと、凹部21cとが形成されているリング状の部材である。
【0023】
凹部21cは、シールリング21aの内周に沿って形成されており、回転軸12をシールケース21に挿入した際には、回転軸12のガス流路12Aと連結されて、ガス流路12A内に高圧流体として高圧エアーを供給するガス供給口となる。
【0024】
切欠き21bは、シールリング21aの内周に沿って凹部21cの両側に形成されており、シールリング21aを重ね合わせることによりリップシール保持部が形成され、このリップシール保持部にリップシール24が嵌め込まれる。
【0025】
また、本実施の形態に係るロータリーシール2は、シールケース21の端部にエンドプレート23が取り付けられることにより、シールケース21の内部が塞がれている。
【0026】
このように、本実施の形態に係るロータリーシール2は、隣り合ったシールリング21aの間にリップシール24が形成されているため、回転軸12が回転した際に凹部21cから高圧エアーが漏れることを適切に防止することができる。
【0027】
また、長期間使用して回転軸12との接触により、リップシール24やシールリング21aに摩耗や損傷が生じても、シールケース21ごと交換する必要がなく、損傷したリップシール24やシールリング21aを交換するのみで対応することができるため、メンテナンスが容易であり、製造効率の低下や設備コストの上昇などを抑制することができる。
【0028】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の他の実施の形態について図4図5を参照しながら説明する。図4(a)は本実施の形態のロータリーシールの断面図であり、図4(b)は正面図である。また、図5(a)は本実施の形態のロータリーシールのスリーブの側面図であり、図5(b)は正面図である。
【0029】
本実施の形態に係るロータリーシール2は、図4(a)および図4(b)に示すように、回転軸12と、複数のシールリング21aを重ね合わせたシールケース21とを備えている点で、上記した第1の実施の形態に係るロータリーシールと共通している。
【0030】
但し、本実施の形態に係るロータリーシール2は、シールケース21の内側に、回転軸12を覆い、回転軸12と一体に回転するスリーブ22が設けられている点で第1の実施の形態とは異なる。
【0031】
図5(a)および図5(b)に示すように、スリーブ22は、筒状部材であり、筒状部材の内部空洞に回転軸12を挿入することにより、回転軸12がスリーブ22に覆われる。なお、スリーブ22の回転軸12への挿入に際しては、図4(a)に示すように、スリーブ22と回転軸12の間にOリング25が配置されている。
【0032】
また、スリーブ22の外面には周方向に沿った凸部22bが設けられている。スリーブ22は、この凸部22bと、リップシール24の凹部21cとが軸方向において重なるようにして、シールケース21内に挿入される。
【0033】
また、凸部22bが形成されていないスリーブ22の表面22aは、セラミック溶射などにより表面加工が施されており、スリーブ22が回転軸12と共にシールケース21内に挿入された際にシールケース21のリップシール24と接触する。
【0034】
また、スリーブ22の凸部22bには、複数の貫通孔22cが設けられており、それぞれの貫通孔22cが回転軸12のガス流路12Aと連結している。これにより、シールリング21aの凹部21cから供給された高圧エアーが、スリーブ22の凸部22b、貫通孔22cを経由して、回転軸12のガス流路12Aに供給される。このとき、シールケース21のリップシール24とスリーブ22の表面22aとが接触することにより、高圧エアーの漏れが適切に防止される。
【0035】
また、スリーブ22の一端には、溝加工22dが施されている。この溝加工22dに、図6に示すようなエンドプレート23の係止部23aが差し込まれる。これにより、回転軸12とスリーブ22とが、エンドプレート23を介して固定され、一体に回転するため、回転軸12の摩耗をより抑制することができる。
【0036】
上記した第1の実施の形態においては、高圧流体の漏れを適切に防止できる一方、回転軸12がロータリーシール2のリップシール24に直接接触しているため、回転軸12の表面処理が摩耗しやすく、回転軸の交換頻度が高くなることが避けられなかった。
【0037】
これに対して、本実施の形態に係るロータリーシール2によれば、回転軸12がスリーブ22により覆われており、スリーブ22とリップシール24とが接触することによりエアー漏れを防止しているため、回転軸12自身の摩耗を防止することができる。そして、摩耗したスリーブ22の表面22aに再度表面加工を施すだけでシール性能を回復させることができるため、より容易にメンテナンスができ、回転軸の交換頻度も高くならない。
【0038】
なお、スリーブ22は炭素鋼(S55Cなど)などの金属製が好ましく、表面22aに対する表面処理はセラミック溶射の他にタングステンカーバイト溶射などを用いることもできる。
【0039】
また、スリーブ22の表面22aやリップシール24の摩耗を低減するという観点から、接触部分に潤滑剤を塗布してもよい。ここで用いられる潤滑剤としては、PTFEを含むグリス、例えば、オメガグリス22(登録商標、株式会社アルファ・テック社製)などを用いることができる。
【0040】
また、上記のロータリーシールは、シェーピングフォーマーのロータリーシールとして好適に使用することができ、高圧流体の漏れを確実に防止して安定した生タイヤの成形を行うことができる。
【0041】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 シェーピングフォーマー
2 ロータリーシール
11 ビードロック手段
12 回転軸
12A ガス流路
13 中心軸
17 本体フレーム
21 シ−ルケース
21a シールケースリング
21b 切欠き
21c 凹部
22 スリーブ
22a スリーブの表面
22b 凸部
22c 貫通孔
22d 溝加工
23 エンドプレート
23a 係止部
24 リップシール
25 Oリング
B 生タイヤ基体
C ビードコア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8