(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(B)成分が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルアミンからなる群より選ばれる1種以上のノニオン性界面活性剤である請求項1記載の水硬性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、(A)成分を用いた水硬性組成物において、(B)成分を添加することにより、水中不分離性を低下させることなくコンクリート粘性が低減できることを見出した。本発明で選定した所定のHLBを有する(B)成分は、(A)成分により形成される紐状ミセル内に十分に侵入し、その結果、水硬性組成物の粘性を低減させているものと推察される。併せて、本発明では、(A)成分と(B)成分の質量比を所定条件とすることで、(B)成分の紐状ミセルへの侵入量が適切となり、紐状ミセルを適度に細分化して、棒状或いは球状ミセルに変化させることで粘性が低減すると考えられる。
【0015】
[水硬性組成物]
<(A)成分>
(A)成分の一つは、カチオン性界面活性剤(A1)及びアニオン性芳香族化合物(A2)の組み合わせである。また、(A)成分の他の一つは、炭素数10以上、26以下の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級カチオン基(a1)と芳香族アニオン基(a2)とを含む4級塩型カチオン性化合物(A3)である。なお、カチオン性界面活性剤(A1)からは、芳香族アニオン基(a2)を有する4級塩型カチオン性化合物は除かれる。
【0016】
紐状ミセル形成の観点から、(A)成分は、炭素数10以上、26以下の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級カチオン基(a1)と芳香族アニオン基(a2)とを含む4級塩型カチオン性化合物(A3)が好ましい。
【0017】
カチオン性界面活性剤(A1)としては、4級塩型カチオン性界面活性剤が好ましく、4級塩型のカチオン性界面活性剤としては、構造中に、10個以上、26個以下の炭素原子を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖アルキル基を、少なくとも1つ有しているものが好ましい。例えば、アルキル(炭素数10以上、26以下)トリメチルアンモニウム塩、アルキル(炭素数10以上、26以下)ピリジニウム塩、アルキル(炭素数10以上、26以下)イミダゾリニウム塩、アルキル(炭素数10以上、26以下)ジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられ、具体的には、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、タロートリメチルアンモニウムクロライド、タロートリメチルアンモニウムブロマイド、水素化タロートリメチルアンモニウムクロライド、水素化タロートリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルエチルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルエチルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルプロピルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド、1,1−ジメチル−2−ヘキサデシルイミダゾリニウムクロライド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられ、これらを2種以上併用してもよい。水溶性と増粘効果の観点から、具体的には、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(例えば花王(株)製コータミン60W)、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド等が好ましい。また、上記のアルキル基の炭素数の異なるカチオン性界面活性剤を2種類以上併用することができる。
【0018】
また、本発明のスラリーレオロジー改質剤をコンクリート等に適用する場合、塩害による鉄筋の腐食やコンクリート劣化を防止する観点から、塩素等のハロゲンを含まない4級アンモニウム塩を用いることができる。
【0019】
塩素等のハロゲンを含まない4級塩として、アンモニウム塩やイミダゾリニウム塩等が挙げられ、具体的にはヘキサデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、オクタデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、オクタデシルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、タロートリメチルアンモニウムメトサルフェート、タロージメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、1,1−ジメチル−2−ヘキサデシルイミダゾリニウムメトサルフェート、ヘキサデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムアセテート、オクタデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムアセテート、ヘキサデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムプロピオネート、オクタデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムプロピオネート、タロージメチルヒドロキシエチルアンモニウムアセテート、タロージメチルヒドロキシエチルアンモニウムプロピオネート、等が挙げられる。塩素等のハロゲンを含まない4級アンモニウム塩は、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸で3級アミンを4級化することで得ることができる。
【0020】
好ましいカチオン性界面活性剤(A1)としては、下記一般式(A1−1)で表されるカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0022】
〔式中、R
lは炭素数10以上、26以下のアルキル基又はアルケニル基、好ましくはアルキル基、R
2は炭素数1以上、22以下のアルキル基又は炭素数2以上、22以下のアルケニル基、R
3及びR
4は、それぞれ、炭素数1以上、3以下のアルキル基である。X
-は陰イオン基(アニオン性芳香族化合物由来の陰イオン基を除く)を表す。〕
【0023】
一般式(A1−1)において、R
lは、好ましくは炭素数12以上、より好ましくは炭素数14以上、また。好ましくは炭素数22以下、より好ましくは20以下である。また、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ、メチル基が好ましい。X
-は塩素イオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオンから選ばれる陰イオン基が好ましい。
【0024】
また、アニオン性芳香族化合物(A2)として、芳香環を有するカルボン酸及びその塩、ホスホン酸及びその塩、スルホン酸及びその塩が挙げられ、具体的には、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸、安息香酸、m−スルホ安息香酸、p−スルホ安息香酸、4−スルホフタル酸、5−スルホイソフタル酸、p−フェノールスルホン酸、m−キシレン−4−スルホン酸、クメンスルホン酸、メチルサリチル酸、スチレンスルホン酸、クロロ安息香酸等であり、これらは塩を形成していていも良く、これらを2種以上併用してもよい。ただし、重合体である場合は、重量平均分子量(例えば、ゲルーパーミエーションクロマトグラフィー法/ポリエチレンオキシド換算)500未満であることが好ましい。
【0025】
カチオン性界面活性剤(A1)とアニオン性芳香族化合物(A2)のモル比は、カチオン性界面活性剤(A1)/アニオン性芳香族化合物(A2)で、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.40以上、更に好ましくは0.80以上であり、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.0以下である。
【0026】
4級塩型カチオン性化合物(A3)は、炭素数10以上、26以下の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級カチオン基(a1)の1種以上を有する。4級カチオン基(a1)において、前記炭化水素基の炭素数は12以上、更に14以上が好ましく、そして、22以下、更に18以下が好ましい。
【0027】
4級カチオン基として、長鎖アルキル(炭素数10以上、26以下)ヒドロキシエチルジメチルアンモニウム基やモノ長鎖アルキル(炭素数10以上、26以下)トリメチルアンモニウム基が挙げられる。4級カチオン基(a1)は、4級塩型カチオン性化合物に由来することができ、当該化合物としては、具体的には、テトラデシルヒドロキシエチルジメチルアンモニウム、ヘキサデシルヒドロキシエチルジメチルアンモニウム、オクタデシルヒドロキシエチルジメチルアンモニウム、オレイルヒドロキシエチルジメチルアンモニウム、タローヒドロキシエチルジメチルアンモニウム、水素化タローヒドロキシエチルジメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、オレイルトリメチルアンモニウム、タロートリメチルアンモニウム、水素化タロートリメチルアンモニウム、ヘキサデシルジヒドキシエチルメチルアンモニウム、オクタデシルジヒドキシエチルメチルアンモニウム、オレイルジヒドキシエチルメチルアンモニウム、タロージヒドキシエチルメチルアンモニウム、水素化タロージヒドキシエチルメチルアンモニウム、ヘキサデシルピリジニウム、1,1−ジメチル−2−ヘキサデシルイミダゾリニウム等が挙げられる。これらのうち、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、タロートリメチルアンモニウム、水素化タロートリメチルアンモニウム、がより好ましい。
【0028】
また、4級塩型カチオン性化合物(A3)は芳香族アニオン基(a2)の1種以上を含有する。アニオン基としてスルホン基やカルボキシル基等が挙げられ、芳香族基としてベンゼン環等が挙げられる。芳香族アニオン基(a2)は、アニオン性芳香族化合物に由来することができ、該化合物としては、具体的には、パラトルエンスルホネート、サリシレート、メタキシレンスルホネート、クメンスルホネート、スチレンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ベンゾエート等が挙げられる。これらのうち、パラトルエンスルホネートが好ましい。
【0029】
4級塩型カチオン性化合物(A3)では、増粘する温度領域を広くできる点で、4級塩型カチオン性化合物(A3)の4級カチオン基(a1)として炭化水素基の長さが異なる4級カチオン基が2種以上存在することが好ましく、そのためには、4級カチオン基の炭化水素基の長さが異なる4級塩型カチオン性化合物(A)を2種以上併用しても、1つのカチオン基に長さが異なる炭化水素基が2つ以上結合した4級カチオン基を有する4級塩型カチオン性化合物(A)を使用しても、炭化水素基の長さが異なる4級カチオン基を2つ以上有する4級塩型カチオン性化合物(A)を使用しても、更にこれらの組み合わせでも、何れでもよい。これらのうちで、水への溶解性とレオロジー改質の効果の点から、4級カチオン基の炭化水素基の長さが異なる4級塩型カチオン性化合物(A)を2種以上併用するのが好ましい。
【0030】
4級塩型カチオン性化合物(A3)としては、下記一般式(A3−1)で表される化合物〔以下、カチオン性化合物(A3−1)という〕が挙げられる。
【0032】
〔式中、R
llは炭素数10以上、26以下のアルキル基、R
l2は炭素数1以上、22以下のアルキル基又は炭素数2もしくは3のヒドロキシアルキル基、R
l3及びR
l4は、それぞれ、炭素数1以上、3以下のアルキル基又は炭素数2もしくは3のヒドロキシアルキル基であり、少なくとも一方は炭素数2又は3のヒドロキシアルキル基である。X
1-はアニオン性芳香族化合物、好ましくはパラトルエンスルホン酸に由来するアニオン基を表す。〕
【0033】
一般式(A3−1)中、R
llは、好ましくは炭素数12以上、より好ましくは14以上、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下のアルキル基である。また、R
l2、R
l3及びR
l4の少なくとも一方は炭素数2又は3のヒドロキシアルキル基であることが好ましい。R
12が炭素数2もしくは3のヒドロキシアルキル基でない場合、R
l2は、メチル基が好ましい。
【0034】
カチオン性化合物(A3−1)は、原料としてアミンとアニオン性芳香族化合物を、アニオン性芳香族化合物/アミン=0.93以上、1.02以下のモル比で用いて得られた化合物である。アミンとアニオン性芳香族化合物との反応は、バッチ式或いは連続式で行うことができるが、何れの場合も、前記モル比は、カチオン性化合物(A3−1)を製造するために用いた全てのアミンとアニオン性芳香族化合物のモル数に基づいて算出する。また、カチオン性化合物(A3−1)は、アミンの反応率99以上、100%以下でアミンとアニオン性芳香族化合物とを前記モル比で反応させて得られた化合物が好ましい。ここで、アミンの反応率とは、4級化率を意味する。
【0035】
カチオン性化合物(A3−1)の製造方法においては、カチオン性化合物(A3−1)が、原料として更にエポキシ化合物を用いて得られた化合物であること、すなわち、原料としてアミンとアニオン性芳香族化合物とエポキシ化合物とを用いて得られた化合物であって、アニオン性芳香族化合物/アミンのモル比が0.93以上、1.02以下である化合物であることが好ましい。この場合も、アミンの反応率は99以上、100%以下が好ましい。従って、カチオン性化合物(A3−1)は、アミンに、該アミンに対してモル比で0.93以上、1.02以下のアニオン性芳香族化合物の存在下で、エポキシ化合物を付加させる工程(I)を有する製造方法により得られた化合物が好ましい。
【0036】
エポキシ化合物を付加させる場合も含め、本発明では、原料アミンに対するアニオン性芳香族化合物のモル比は、アニオン性芳香族化合物/原料アミンで、好ましくは0.93以上、より好ましくは0.94以上、更に好ましくは0.95以上、より更に好ましくは0.98以上であり、そして、好ましくは1.02以下、より好ましくは1.01以下、更に好ましくは1.00以下である。このモル比が0.93以上であれば、紐状ミセル成分が生成しやすくなるので、適度なスラリー粘度が得られ、1.02以下であれば、アニオン性芳香族化合物が多すぎないため、緩和時間が早くなることなく、適度なスラリー粘度が得られる。
【0037】
アミンは、一般式(A3−1)中の4級カチオン基の由来となる化合物であり、具体的には、ドデシルジメチルアミン、テトラデシルジメチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン、オクタデシルジメチルアミン、ベヘニルジメチルアミン、ヘキサデカン酸アミドプロピルジメチルアミン、オクタデカン酸アミドプロピルジメチルアミン、ヘキサデカン酸アミドエチルジメチルアミン等が挙げられ、好ましくはヘキサデシルジメチルアミン、オクタデシルジメチルアミン、及びベヘニルジメチルアミンから選ばれるアミンであり、更に好ましくはヘキサデシルジメチルアミン及び/又はオクタデシルジメチルアミンである。
【0038】
カチオン性化合物(A3−1)は、一般式(A3−1)中のR
11が炭素数16のアルキル基である化合物(A−C
16)と炭素数18のアルキル基である化合物(A−C
18)とを含有することが好ましく、これらの比が、製品安定性と性能の温度依存性の観点から、モル比で(A−C
16)/(A−C
18)=20/80以上が好ましく、40/60以上がより好ましく、45/55以上が更に好ましく、そして、80/20以下が好ましく、60/40以下がより好ましく、55/45以下が更に好ましく、より更に好ましくは50/50である。また、カチオン性化合物(A3−1)は、一般式(A3−1)中のR
11が、炭素数16のアルキル基及び炭素数18のアルキル基以外の炭素数のアルキル基である化合物の割合が、スラリーに対する粘性付与効果の観点から、カチオン性化合物(A3−1)の全量中好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは1モル%以下である。前記モル比や前記割合を満たすようにアミンの種類、組成を選定することが好ましい。
【0039】
芳香族アニオン性化合物は、一般式(A3−1)中のX
-を構成し、スルホン酸基やカルボキシル基等のアニオン基と、ベンゼン環等の芳香族基とを有する化合物が挙げられる。具体的には、パラトルエンスルホン酸、サリチル酸、安息香酸、メタキシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等が挙げられる。これらのうち、パラトルエンスルホン酸が好ましい。また、これらの化合物は、例えばパラトルエンスルホン酸ナトリウムなど塩の形態のものを用いることができる。
【0040】
カチオン性化合物(A3−1)において、一般式(A3−1)中のR
13及びR
44のヒドロキシアルキル基は、アミンへのエポキシ化合物の付加により生成させることができる。エポキシ化合物1分子の付加の後、連続して付加が行われ、例えばジエチレングリコール、ポリエチレングリコールのような連鎖を有している化合物が含まれていてもよい。
【0041】
エポキシ化合物としては、炭素数2又は3のものが挙げられ、反応性の観点から、具体的にはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン等が挙げられる。
【0042】
また、原料として用いられるアミンに対するエポキシ化合物のモル比は、カチオン性化合物(A3−1)の製造効率と製造コストの観点から決定することでき、エポキシ化合物/アミンで、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.2以上であり、そして、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.5以下である。このモル比が1.0以上であれば紐状ミセルが十分に形成されスラリーへの粘性付与効果が良好となり、3.0以下であれば紐状ミセルの緩和時間が適切となり、同様に粘性付与効果が良好となる。
【0043】
カチオン性化合物(A3−1)が、原料として更にエポキシ化合物を用いて得られた化合物である場合、カチオン性化合物(A3−1)は、下記工程(I)及び工程(II)を有する製造方法により得られた化合物であり、工程(I)及び工程(II)で用いるアニオン性芳香族化合物の合計が、工程(I)で用いたアミンに対してモル比で0.93以上、1.02以下であることが好ましい。
工程(I):アニオン性芳香族化合物の存在下で、アミンにエポキシ化合物を付加させる工程
工程(II):工程(I)で得られた反応生成物に、更にアニオン性芳香族化合物を添加する工程
【0044】
工程(I)は、原料アミンに、所定量のアニオン性芳香族化合物の存在下で、エポキシ化合物を付加させる工程である。エポキシ化合物の付加反応は、公知の方法に準じて行うことができる。例えば、反応温度は、好ましくは30℃以上、より好ましく50℃以上、そして、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃である。また、反応時間は、好ましくは0.05時間以上、より好ましくは0.1時間以上、そして、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下である。エポキシ化合物の付加反応の終結は、原料として用いたアミンの残存量を定量することにより確認できる。原料アミンの残存量は電位差滴定を用いた逆滴定により求めることができる。
【0045】
本発明では、工程(I)で得られた反応生成物に、更にアニオン性芳香族化合物を添加する工程(II)を有することが、エポキシ化合物の付加反応を高められる、すなわち4級化反応が進むので、粘弾性発現に優れるレオロジー改質剤が得られることから好ましい。ただし、工程(II)を行う場合、工程(I)及び工程(II)で用いるアニオン性芳香族化合物の合計は、工程(I)で用いた原料として用いたアミンに対してモル比で0.93以上、1.02以下である。すなわち、工程(I)で仕込んだアミンを基準にして、工程(I)で用いたアニオン性芳香族化合物と工程(II)で更に添加するアニオン性芳香族化合物との合計モル比が0.93以上、1.02以下となるように、工程(I)で得られた反応生成物に、更にアニオン性芳香族化合物を添加する。
【0046】
工程(I)におけるアミンに対するアニオン性芳香族化合物のモル比は、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.92以上、そして、好ましくは0.98以下、より好ましくは0.96以下であり、工程(II)における工程(I)で用いたアミンに対するアニオン性芳香族化合物のモル比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、そして、好ましくは0.12以下、より好ましくは0.06以下である。
【0047】
また、工程(I)におけるアミンに対するアニオン性芳香族化合物のモル比(M1)と工程(II)における工程(I)で用いたアミンに対するアニオン性芳香族化合物のモル比(M2)との比率(M2)/(M1)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、そして、好ましくは0.13以下、より好ましくは0.07以下である。
【0048】
カチオン性化合物(A3−1)は、水溶液やスラリー中で会合体を形成し増粘させる機能を有する4級カチオン基と芳香族アニオン基の両方を有する4級塩型化合物であることから、4級カチオン性化合物と芳香族アニオン性化合物という2種の薬剤を別々に計量・添加する必要がなく、1種の薬剤の計量・添加で同様の増粘状態が得られるため作業性に優れる。
【0049】
カチオン性化合物(A3−1)は、その製造方法上、ハロゲン元素が含まれないため、使用する場所に金属が存在していた場合でも、その腐食を促進する恐れがない。
【0050】
カチオン性化合物(A3−1)は、増粘する温度領域を広くする観点から、一般式(A3−1)中のR
11の炭素数が異なる4級カチオン基を2種以上有することが好ましい。更に、レオロジー改質剤の水への溶解性とレオロジー改質の効果を高める観点から、4級カチオン基のアルキル基(R
11)の長さが異なるカチオン性化合物(A3−1)を2種以上用いることが好ましい。
【0051】
<(B)成分>
(B)成分は、HLBが5以上、16以下のノニオン性界面活性剤(ただし、ソルビタンと脂肪酸のモノエステル構造を持つものは、エステルの脂肪酸由来部分の基の炭素数が18である場合は、エステルの脂肪酸由来部分の基は不飽和結合を1個有し、且つエチレンオキサイドの平均付加モル数が6以下である)である。
【0052】
(B)成分のHLBは、粘性低減の観点から、5以上、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは9以上であり、16以下、好ましくは15以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。ここで、(B)成分のHLBは、グリフィンのHLBにより定義されるものである。
【0053】
(B)成分としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンからなる群より選ばれる1種以上のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0054】
(B)成分としては、粘性低減の観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルアミンからなる群より選ばれる1種以上のノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0055】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、粘性低減の観点から、エチレンオキサイド平均付加モル数が好ましくは10以上、より好ましくは20以上、そして、好ましくは60以下、より好ましくは40以下のものが挙げられる。尚、ヒマシ油は、ひま(トウゴマ)の種子から採った不乾性の油であって、リシノール酸のグリセリンエステルが主成分で、このものに水素を反応させて不飽和結合が飽和結合に変換された硬化ヒマシ油が得られ、更にエチレンオキサイドを反応させることによってポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が得られる。
【0056】
また、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、粘性低減の観点から、エチレンオキサイド平均付加モル数が好ましくは5以上、より好ましくは10以上、そして、好ましくは40以下、より好ましくは30以下のものが挙げられる。また、脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸及びステアリン酸が挙げられる。
【0057】
また、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、粘性低減の観点から、エチレンオキサイド平均付加モル数が0超、好ましくは2以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは10以下のものが挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの脂肪酸としては、炭素数8以上、20以下の脂肪酸、更にラウリン酸及びオレイン酸から選ばれる脂肪酸が挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステルとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、それぞれ、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステルの何れでもよく、これらの混合であってもよい。ただし、ソルビタンと脂肪酸のモノエステル構造を持つもの、すなわち、ソルビタンモノ脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルについては、エステルの脂肪酸由来部分の基の炭素数が18である場合は、エステルの脂肪酸由来部分の基は不飽和結合を1個有し、且つエチレンオキサイドの平均付加モル数が6以下である。従って、ソルビタンモノ脂肪酸エステルについては、エステルの脂肪酸由来部分の基の炭素数が18である場合は、エステルの脂肪酸由来部分の基は不飽和結合を1個有する。ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルについては、エステルの脂肪酸由来部分の基の炭素数が18である場合は、エステルの脂肪酸由来部分の基は不飽和結合を1個有し、且つエチレンオキサイドの平均付加モル数が6以下、0超である。
【0058】
また、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルとしては、粘性低減の観点から、エチレンオキサイド平均付加モル数が好ましくは5以上、より好ましくは10以上、そして、好ましくは60以下、より好ましくは40以下のものが挙げられる。また、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの脂肪酸としては、炭素数8以上、20以下の脂肪酸、更にラウリル酸及びオレイン酸から選ばれる脂肪酸が挙げられる。
【0059】
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、粘性低減の観点から、エチレンオキサイド平均付加モル数が好ましくは2以上、より好ましくは5以上、そして、好ましくは60以下、より好ましくは40以下のものが挙げられる。また、アルキル基の炭素数は、同様の観点から、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
【0060】
また、ポリオキシエチレンアルキルアミンとしては、粘性低減の観点から、エチレンオキサイド平均付加モル数が好ましくは2以上、より好ましくは4以上、そして、好ましくは40以下、より好ましくは20以下のものが挙げられる。また、アルキル基の炭素数は、同様の観点から、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
【0061】
<水硬性粉体>
水硬性粉体は、水と混合することで硬化する粉体であり、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)が挙げられる。これらの中でも、水硬性組成物の必要な強度に達するまでの時間を短縮する観点から、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、耐硫酸性ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントから選ばれるセメントが好ましく、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメントがより好ましい。
【0062】
また、水硬性粉体には、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等が含まれてよく、また、非水硬性の石灰石微粉末等が含まれていてよい。水硬性粉体として、セメントと高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等とが混合されたシリカヒュームセメントや高炉セメントを用いてもよい。
【0063】
<骨材>
本発明の水硬性組成物は、骨材を含有することが好ましい。骨材は、細骨材や粗骨材等が挙げられ、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。用途によっては、軽量骨材を使用してもよい。なお、骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。
【0064】
<分散剤>
本発明の水硬性組成物は、分散剤を含有することが好ましい。分散剤は、水硬性粉体用分散剤であり、水硬性組成物の必要な強度に達するまでの時間を短縮する観点から、ナフタレン系重合体及びポリカルボン酸系共重合体から選ばれる分散剤が好ましい。
【0065】
ナフタレン系重合体としては、ナフタレンスルフォン酸塩ホルムアルデヒド縮合物(例えば花王株式会社製マイテイ150)、メラミン系重合体としてはメラミンスルフォン酸塩ホルムアルデヒド縮合物(例えば花王株式会社製マイテイ150−V2)、フェノール系重合体としては、フェノールスルフォン酸ホルムアルデヒド縮合物(特開昭49−104919号公報に記載の化合物等)、リグニン系重合体としてはリグニンスルフォン酸塩(ボレガード社製ウルトラジンNA、日本製紙ケミカル株式会社製サンエキス、バニレックス、パールレックス等)等を用いることができる。
【0066】
ポリカルボン酸系共重合体としては、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体(例えば特開平8−12397号公報に記載の化合物等)、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールとマレイン酸等のジカルボン酸との共重合体等を用いることができる。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるカルボン酸の意味である。
【0067】
ポリカルボン酸系共重合体としては、下記の一般式(1)で表される単量体(1)と下記の一般式(2)で表される単量体(2)とを重合して得られる共重合体〔以下、ポリカルボン酸系共重合体(I)という〕を用いることができる。
【0069】
〔式中、
R
1、R
2:水素原子、又はメチル基
l:0以上2以下の数
m:0又は1の数
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
n:AOの平均付加モル数であり、5以上150以下の数、
R
3:水素原子、又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【0071】
〔式中、
R
4、R
5、R
6:水素原子、メチル基、又は(CH
2)
m1COOM
2
M
1、M
2:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、アルキルアンモニウム、又は置換アルキルアンモニウム
m1:0以上2以下の数
を表す。なお、(CH
2)
m1COOM
2はCOOM
1と無水物を形成していてもよい。〕
【0072】
一般式(1)中、AOは、水硬性組成物の流動性の観点から、好ましくは炭素数2又は3、より好ましくは炭素数2のアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)である。
【0073】
nは、水硬性組成物の24時間後の強度向上の観点から、好ましくは9以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは50以上、より更に好ましくは70以上の数である。nは、水硬性組成物の初期流動性の観点から、好ましくは150以下、より好ましくは130以下の数である。
【0074】
mが0の場合は、lは好ましくは1又は2である。mが1の場合は、lは好ましくは0である。共重合体の重合時の重合性の観点から、mは1が好ましい。mが0の場合は、単量体の製造の容易性の観点からR
3は水素原子が好ましい。mが1の場合は、単量体の製造の容易性の観点からR
3は炭素数1以上4以下のアルキル基が好ましく、さらに水溶性の観点からメチル基がより好ましい。
【0075】
単量体(1)として、例えば、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル及びアルケニルアルコールにアルキレンオキシドが付加したエーテル等を用いることができる。単量体(1)は、共重合体の重合時の重合性の観点から、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましい。
【0076】
ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステルとして、片末端封鎖されたアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を用いることができる。具体的には、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールアクリレート及びエトキシポリエチレングリコールメタクリレート等の1種以上を用いることができる。
【0077】
また、アルケニルアルコールにアルキレンオキシドが付加したエーテルとして、アリルアルコールのエチレンオキサイド付加物等を用いることができる。具体的には、メタリルアルコールのエチレンオキサイド付加物及び3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキサイド付加物等を用いることができる。
【0078】
単量体(2)としては、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、無水マレイン酸等から選ばれる1種以上を用いることができる。単量体(2)は、単量体(1)のmが1の場合は、共重合体の重合時の重合性の観点から、メタクリル酸又はその塩が好ましく、単量体(1)のmが0の場合は、共重合体の重合時の重合性の観点から、マレイン酸又はその塩、無水マレイン酸が好ましい。
【0079】
<その他の成分>
水硬性組成物は、本発明の効果に影響ない範囲で、更にその他の成分を含有することもできる。例えば、AE剤、遅延剤、起泡剤、増粘剤、発泡剤、防水剤、流動化剤、消泡剤等が挙げられる。
【0080】
<水硬性組成物の組成等>
本発明の水硬性組成物は、水中不分離性確保及び粘性低減の観点から、(A)成分の含有量が、水硬性組成物の水相100質量部に対して、0.75質量部以上、5.0質量部以下である。水中不分離性確保の観点から、(A)成分の含有量は、水硬性組成物の水相100質量部に対して、0.75質量部以上、好ましくは0.85質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上であり、そして、粘性低減の観点から、5.0質量部以下、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、更に好ましくは1.5重量部以下である。この含有量は(A)成分が、カチオン性界面活性剤(A1)及びアニオン性芳香族化合物(A2)の組み合わせである場合は、これらの合計の含有量である。なお、(A)成分の含有量は、特記しない限り、有効分換算の含有量であり、質量比も有効分換算の含有量に基づくものである。
【0081】
ここで、水硬性組成物の水相とは、水硬性組成物から水硬性粉体などの水に不溶である固体相を除いた、水を含む液体相である。本発明に係る水硬性組成物の水は、コンクリートの調製に当業界で通常用いられるものが使用でき、水道水などが挙げられる。水相は、使用時の温度において形成されるものを基準とすることができる。通常は、5℃以上、35℃での溶解状態を基準に、この範囲にある温度で形成されている液体相を水相とすることができる。
【0082】
本発明の水硬性組成物は、粘性低減と水中不分離性確保の観点から、(B)成分の含有量が、水硬性組成物の水相100質量部に対して、0.010質量部以上、1.5質量部以下である。粘性低減の観点から、(B)成分の含有量は、水硬性組成物の水相100質量部に対して、0.010質量部以上、好ましくは0.015質量部以上、より好ましくは0.020質量部以上であり、そして、水中不分離性確保の観点から、1.5質量部以下、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.50質量部以下である。なお、(B)成分の含有量は、特記しない限り、有効分換算の含有量であり、質量比も有効分換算の含有量に基づくものである。
【0083】
本発明の水硬性組成物は、水中不分離性確保と粘性低減の観点から、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比が、[(B)成分の含有量/(A)成分の含有量]で、0.0080以上、0.32以下である。水中不分離性確保と粘性低減の観点から、(B)成分の含有量/(A)成分の含有量の質量比は、粘度低減の観点から、0.0080以上、好ましくは0.0090以上、より好ましくは0.010以上、更に好ましくは0.020以上であり、そして、水中不分離性確保の観点から、0.32以下、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.10以下である。なお、(A)成分の含有量が、水硬性組成物の水相100質量部に対して、2.5質量部以上、5.0質量部以下の場合は、(B)成分の含有量/(A)成分の含有量の質量比は、0.032以上、好ましくは0.036以上、より好ましくは0.040以上であり、そして、0.32以下、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.10以下である。また、(A)成分の含有量が、水硬性組成物の水相100質量部に対して、0.75質量部以上、2.5質量部未満である場合は、(B)成分の含有量/(A)成分の含有量の質量比は、0.0080以上、好ましくは0.0090以上、より好ましくは0.010以上、そして、0.32以下、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.10以下である。
【0084】
本発明の水硬性組成物は、強度発現の観点から、水硬性粉体の含有量が、水硬性組成物の水相100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上であり、そして、粘性低減の観点から、好ましくは700質量部以下、より好ましくは600質量部以下、更に好ましくは500質量部以下である。
【0085】
本発明の水硬性組成物は、フレッシュコンクリートの流動性発現の観点から、分散剤の含有量が、水相100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.06質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上であり、そして、保持性確保の観点から、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.4質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
【0086】
<水硬性組成物の製造方法、圧送方法、粘度低減剤>
本発明により、上記(A)成分と、上記(B)成分と、水硬性粉体と、水とを混合する工程を有する、水硬性組成物の製造方法であって、
(A)成分を、水硬性組成物の水相100質量部に対して、0.75質量部以上、好ましくは0.85質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、そして、5.0質量部以下、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、更に好ましくは1.5重量部以下、(B)成分を、水硬性組成物の水相100質量部に対して、0.010質量部以上、好ましくは0.015質量部以上、より好ましくは0.020質量部以上、そして、1.5質量部以下、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.50質量部以下の割合で混合し、
(A)成分の量と(B)成分の量の質量比が、[(B)成分の量/(A)成分の量]で、0.0080以上、好ましくは0.0090以上、より好ましくは0.010以上、そして、0.32以下、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.10以下であり、
(A)成分を、水硬性組成物の水相100質量部に対して、2.5質量部以上、5.0質量部以下の割合で混合する場合、(A)成分の量と(B)成分の量の質量比は、[(B)成分の量/(A)成分の量]で、0.032以上、好ましくは0.036以上、より好ましくは0.040以上、そして、0.32以下、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.10以下である、
水硬性組成物の製造方法が提供される。この水硬性組成物の製造方法では、(A)成分、(B)成分を、それぞれ、水硬性組成物の水相100質量部に対して、前記所定の割合となるように混合するが、(A)成分、(B)成分、水硬性粉体の好ましい態様、その他の成分の好ましい態様は、水硬性組成物で述べたものを適用できる。また、(A)成分の量及び(B)成分の量は、それぞれ、有効分換算の含有量であり、質量比も有効分換算の含有量に基づくものである。
【0087】
本発明の水硬性組成物の製造方法として、
(A)成分が、カチオン性界面活性剤(A1)及びアニオン性芳香族化合物(A2)の組み合わせであり、
アニオン性芳香族化合物(A2)と(B)成分と水硬性粉体と水を混合して混合物(1)を得る工程(1)、
カチオン性界面活性剤(A1)と水を混合して混合物(2)を得る工程(2)、及び
混合物(1)と混合物(2)を混合する工程(3)、
を有する水硬性組成物の製造方法が挙げられる。
【0088】
本発明の水硬性組成物の製造方法では、水硬性組成物の製造工程の何れかで、骨材を混合することが好ましい。また、本発明の水硬性組成物の製造方法では、水硬性組成物の製造工程の何れかで、分散剤を混合することが好ましい。分散剤は、水硬性組成物の水相100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.06質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、そして、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.4質量部以下、更に好ましくは1質量部以下の割合となるように混合する。
【0089】
本発明の水硬性組成物の製造方法において、各成分の混合は、既存の装置は全て使用可能であり、例えば、傾胴ミキサー、パン型ミキサー、二軸強制ミキサー、オムニミキサー、ヘンシェルミキサー、V型ミキサー、及びナウターミキサーなどが挙げられる。
【0090】
本発明に係る水硬性組成物の打設の方法は、水硬性組成物をポンプで圧送する工程と、ポンプで圧送された水硬性組成物を打設する工程、を有する方法が挙げられる。
【0091】
本発明により、前記本発明の水硬性組成物は、打設場所まで運搬しその後型枠に流し込み打設を行う。運搬方法は、一般的に用いる方法が挙げられ特に限定されるものでは無いが、ポンプで圧送する方法、ミキサー車で運搬する方法、混合機からホッパーに流し込み移動させる方法等が挙げられる。粘性が低減できる観点から、ミキサ−車やホッパーで運搬できない場所に打設する場合などは、低い能力のポンプでも圧送出来る利点があり、特にポンプで圧送する運搬方法が好適である。
【0092】
本発明の水硬性組成物をポンプ圧送する場合は、所望の物性に調整され、練りあがった水硬性組成物を、適切に配設された配管にポンプで圧送することで実施できる。ミキサー車などで搬送後に、水硬性組成物をポンプ車などのポンプを用いて圧送することもできる。
【0093】
ポンプの種類は、一般的に用いるスクイーズ式とピストン式などが挙げられ、特に限定されるものではない。
【0094】
本発明により、前記(B)成分からなる水硬性組成物用粘度低減剤であって、水硬性組成物が前記(A)成分を含有する、水硬性組成物用粘度低減剤が提供される。
【0095】
本発明の態様を以下に示す。
<1> 下記(A)成分、下記(B)成分、水硬性粉体、及び水を含有する水硬性組成物であって、
(A)成分の含有量が、水硬性組成物の水相100質量部に対して、0.75質量部以上、5.0質量部以下であり、
(B)成分の含有量が、水硬性組成物の水相100質量部に対して、0.01質量部以上、1.5質量部以下であり、
(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比が、[(B)成分の含有量/(A)成分の含有量]で、0.0080以上、0.32以下であり、
(A)成分の含有量が、水硬性組成物の水相100質量部に対して、2.5質量部以上、5.0質量部以下の場合、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比は、[(B)成分の含有量/(A)成分の含有量]で、0.032以上、0.32以下である、
水硬性組成物。
(A)成分:カチオン性界面活性剤(A1)及びアニオン性芳香族化合物(A2)の組み合わせ、又は炭素数10以上、26以下の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級カチオン基(a1)と芳香族アニオン基(a2)とを含む4級塩型カチオン性化合物(A3)
(B)成分:HLBが5以上、16以下のノニオン性界面活性剤(ただし、ソルビタンと脂肪酸のモノエステル構造を持つものは、エステルの脂肪酸由来部分の基の炭素数が18である場合は、エステルの脂肪酸由来部分の基は不飽和結合を1個有し、且つエチレンオキサイドの平均付加モル数が6以下である)
【0096】
<2> 前記カチオン性界面活性剤(A1)が4級塩型カチオン性界面活性剤である、前記<1>記載の水硬性組成物。
【0097】
<3> 前記カチオン性界面活性剤(A1)が下記一般式(A1−1)で表されるカチオン性界面活性剤である、、前記<1>又は<2>記載の水硬性組成物。
【0099】
〔式中、R
lは炭素数10以上、26以下のアルキル基又はアルケニル基、好ましくはアルキル基、R
2は炭素数1以上、22以下のアルキル基又は炭素数2以上、22以下のアルケニル基、R
3及びR
4は、それぞれ、炭素数1以上、3以下のアルキル基である。X
-は陰イオン基(アニオン性芳香族化合物由来の陰イオン基を除く)を表す。〕
【0100】
<4> 前記アニオン性芳香族化合物(A2)が、芳香環を有するカルボン酸及びその塩、ホスホン酸及びその塩、並びにスルホン酸及びその塩から選ばれる1種以上のアニオン性芳香族化合物である、前記<1>〜<3>の何れか記載の水硬性組成物。
【0101】
<5> (A)成分が、カチオン性界面活性剤(A1)及びアニオン性芳香族化合物(A2)の組み合わせであり、カチオン性界面活性剤(A1)とアニオン性芳香族化合物(A2)のモル比が、カチオン性界面活性剤(A1)/アニオン性芳香族化合物(A2)で、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.40以上、更に好ましくは0.80以上であり、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.0以下である、前記<1>〜<4>の何れか記載の水硬性組成物。
【0102】
<6> (A)成分が、炭素数10以上、26以下の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級カチオン基(a1)と芳香族アニオン基(a2)とを含む4級塩型カチオン性化合物(A3)である、前記<1>〜<5>の何れか記載の水硬性組成物。
【0103】
<7> 4級塩型カチオン性化合物(A3)が、下記一般式(A3−1)で表される化合物〔以下、カチオン性化合物(A3−1)という〕である、前記<1>〜<6>の何れか記載の水硬性組成物。
【0105】
〔式中、R
llは炭素数10以上、26以下のアルキル基、R
l2は炭素数1以上、22以下のアルキル基又は炭素数2もしくは3のヒドロキシアルキル基、R
l3及びR
l4は、それぞれ、炭素数1以上、3以下のアルキル基又は炭素数2もしくは3のヒドロキシアルキル基であり、少なくとも一方は炭素数2又は3のヒドロキシアルキル基である。X
1-はアニオン性芳香族化合物残基を表す。〕
【0106】
<8> カチオン性化合物(A3−1)が、一般式(A3−1)中のR
11の炭素数が異なる化合物を2種以上含む、前記<1>〜<7>の何れか記載の水硬性組成物。
【0107】
<9> カチオン性化合物(A3−1)が、一般式(A3−1)中のR
11が炭素数16のアルキル基である化合物(A−C
16)と炭素数18のアルキル基である化合物(A−C
18)とを含み、化合物(A−C
16)と化合物(A−C
18)とのモル比が(A−C
16)/(A−C
18)で、好ましくは20/80以上、より好ましくは40/60以上、更に好ましくは45/55以上であり、そして、80/20以下、好ましくは60/40以下、より好ましくは55/45以下であり、より更に好ましくは50/50である、前記<1>〜<8>の何れか記載の水硬性組成物。
【0108】
<10> カチオン性化合物(A3−1)の全量中、一般式(A3−1)中のR
11が炭素数16のアルキル基及び炭素数18のアルキル基以外の炭素数のアルキル基である化合物の割合が、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは1モル%以下である、前記<1>〜<9>の何れか記載の水硬性組成物。
【0109】
<11> (B)成分が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルアミンからなる群より選ばれる1種以上のノニオン性界面活性剤である、前記<1>〜<10>の何れか記載の水硬性組成物。
【0110】
<12> (B)成分が、エチレンオキサイド平均付加モル数が好ましくは10以上、より好ましくは20以上、そして、好ましくは60以下、より好ましくは40以下のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる選ばれる1種以上のノニオン性界面活性剤である、前記<1>〜<10>の何れか記載の水硬性組成物。
【0111】
<13> 更に、分散剤を含有する、前記<1>〜<12>の何れか記載の水硬性組成物。
【0112】
<14> 分散剤が、ナフタレン系重合体及びポリカルボン酸系共重合体から選ばれる分散剤である、前記<13>記載の水硬性組成物。
【0113】
<15> 分散剤が、下記の一般式(1)で表される単量体(1)と下記の一般式(2)で表される単量体(2)とを重合して得られる共重合体〔以下、ポリカルボン酸系共重合体(I)という〕である、前記<13>又は<14>記載の水硬性組成物。
【0115】
〔式中、
R
1、R
2:水素原子、又はメチル基
l:0以上2以下の数
m:0又は1の数
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
n:AOの平均付加モル数であり、5以上、好ましくは9以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは50以上、より更に好ましくは70以上、そして、150以下、好ましくは130以下の数、
R
3:水素原子、又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【0117】
〔式中、
R
4、R
5、R
6:水素原子、メチル基、又は(CH
2)
m1COOM
2
M
1、M
2:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、アルキルアンモニウム、又は置換アルキルアンモニウム
m1:0以上2以下の数
を表す。なお、(CH
2)
m1COOM
2はCOOM
1と無水物を形成していてもよい。〕
【0118】
<16> (A)成分の含有量が、水硬性組成物の水相100質量部に対して、0.75質量部以上、好ましくは0.85質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上であり、そして、5.0質量部以下、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、更に好ましくは1.5重量部以下である、前記<1>〜<15>の何れか記載の水硬性組成物。
【0119】
<17> (B)成分の含有量が、水硬性組成物の水相100質量部に対して、0.010質量部以上、好ましくは0.015質量部以上、より好ましくは0.020質量部以上であり、そして、1.5質量部以下、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.50質量部以下である、前記<1>〜<16>の何れか記載の水硬性組成物。
【0120】
<18> (A)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比が、[(B)成分の含有量/(A)成分の含有量]で、0.0080以上、好ましくは0.0090以上、より好ましくは0.010以上、更に好ましくは0.020以上であり、そして、0.32以下、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.10以下であり、
(A)成分の含有量が、水硬性組成物の水相100質量部に対して、2.5質量部以上、5.0質量部以下の場合は、(B)成分の含有量/(A)成分の含有量の質量比は、0.032以上、好ましくは0.036以上、より好ましくは0.040以上であり、そして、0.32以下、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.10以下である、
前記<1>〜<17>の何れか記載の水硬性組成物。
【0121】
<19> 水硬性粉体の含有量が、水硬性組成物の水相100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上であり、そして、好ましくは700質量部以下、より好ましくは600質量部以下、更に好ましくは500質量部以下である、前記<1>〜<18>の何れか記載の水硬性組成物。
【0122】
<20> 分散剤の含有量が、水相100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.06質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.4質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である、前記<13>〜<19>の何れか記載の水硬性組成物。
【0123】
<21> 下記(A)成分と、下記(B)成分と、水硬性粉体と、水とを混合する工程を有する、水硬性組成物の製造方法であって、
(A)成分を、水硬性組成物の水相100質量部に対して、0.75質量部以上、好ましくは0.85質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、そして、5.0質量部以下、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、更に好ましくは1.5重量部以下、(B)成分を、水硬性組成物の水相100質量部に対して、0.010質量部以上、好ましくは0.015質量部以上、より好ましくは0.020質量部以上、そして、1.5質量部以下、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.50質量部以下の割合で混合し、
(A)成分の量と(B)成分の量の質量比が、[(B)成分の量/(A)成分の量]で、0.0080以上、好ましくは0.0090以上、より好ましくは0.010以上、そして、0.32以下、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.10以下であり、
(A)成分を、水硬性組成物の水相100質量部に対して、2.5質量部以上、5.0質量部以下の割合で混合する場合、(A)成分の量と(B)成分の量の質量比は、[(B)成分の量/(A)成分の量]で、0.032以上、好ましくは0.036以上、より好ましくは0.040以上、そして、0.32以下、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.10以下である、
水硬性組成物の製造方法。
(A)成分:カチオン性界面活性剤(A1)及びアニオン性芳香族化合物(A2)の組み合わせ、又は炭素数10以上、26以下の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級カチオン基(a1)と芳香族アニオン基(a2)とを含む4級塩型カチオン性化合物(A3)
(B)成分:HLBが5以上、16以下のノニオン性界面活性剤(ただし、ソルビタンと脂肪酸のモノエステル構造を持つものは、エステルの脂肪酸由来部分の基の炭素数が18である場合は、エステルの脂肪酸由来部分の基は不飽和結合を1個有し、且つエチレンオキサイドの平均付加モル数が6以下である)
【0124】
<22> (A)成分が、カチオン性界面活性剤(A1)及びアニオン性芳香族化合物(A2)の組み合わせであり、
アニオン性芳香族化合物(A2)と(B)成分と水硬性粉体を混合して混合物(1)を得る工程(1)、
カチオン性界面活性剤(A1)と水を混合して混合物(2)を得る工程(2)、及び
混合物(1)と混合物(2)を混合する工程(3)、
を有する、前記<21>記載の水硬性組成物の製造方法。
【0125】
<23>
水硬性組成物の製造工程の何れかで、分散剤を混合する、前記<21>又は<22>記載の水硬性組成物の製造方法。
【0126】
<24>
水硬性組成物の製造工程の何れかで、骨材を混合する、前記<21>〜<23>の何れか記載の水硬性組成物の製造方法。
【0127】
<25> 前記<1>〜<20>の何れか記載の水硬性組成物をポンプ圧送する、水硬性組成物の圧送方法。
【0128】
<26> 前記<1>〜<20>の記載の水硬性組成物をポンプで圧送する工程と、ポンプで圧送された水硬性組成物を打設する工程を有する、水硬性組成物の打設方法。
【0129】
<27> 下記(B)成分からなる水硬性組成物用粘度低減剤であって、水硬性組成物が下記(A)成分を含有する、水硬性組成物用粘度低減剤。
(B)成分:HLBが5以上、16以下のノニオン性界面活性剤(ただし、ソルビタンと脂肪酸のモノエステル構造を持つものは、エステルの脂肪酸由来部分の基の炭素数が18である場合は、エステルの脂肪酸由来部分の基は不飽和結合を1個有し、且つエチレンオキサイドの平均付加モル数が6以下である)
(A)成分:カチオン性界面活性剤(A1)及びアニオン性芳香族化合物(A2)の組み合わせ、又は炭素数10以上、26以下の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級カチオン基(a1)と芳香族アニオン基(a2)とを含む4級塩型カチオン性化合物(A3)
【実施例】
【0130】
<モルタルの調製>
(1−1)使用材料
・セメント(C):普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製/住友大阪セメント(株)製=1/1、質量比)、密度3.16g/cm
3
・細骨材(S):城陽産、山砂、FM=2.67、密度2.56g/cm
3
・水相(W):水道水、セメント分散剤(AD)、(A)成分、(B)成分の混合系
・セメント分散剤(AD):花王(株)製高性能減水剤マイテイ3000H(有効分濃度20質量%の水溶液)
・A1−1:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド/オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライドを50/50(質量比)で併用した混合物の29質量%水溶液
・A2−1:パラトルエンスルホン酸ソーダの20質量%水溶液
・A3−1:下記合成例1で製造した、ジメチルヒドロキシエチルアルキルアンモニウムパラトルエンスルホネート〔(A)成分〕濃度が25質量%の水溶液
【0131】
<合成例1>
フラスコにへキサデシルジメチルアミン404g(1.48モル)、オクタデシルジメチルアミン444g(1.48モル)を仕込み、65℃に昇温した。前記アミン混合物中、炭素数18のアルキル基を有する化合物は50モル%であった。さらに、1,2−プロピレングリコール893gとイオン交換水1871g、p−トルエンスルホン酸の63.2質量%水溶液760g〔p−トルエンスルホン酸として2.81モル、前記の全アミン(以下単にアミンともいう。)に対するモル比0.95〕を仕込み、1時間攪拌し均一化させた。得られた混合水溶液の全量をオートクレーブに仕込み、85℃まで昇温し、攪拌後、系内を窒素置換した。エチレンオキサイド157g(3.56モル)を仕込み、3時間80〜90℃で反応させた。その後、65℃に冷却して反応器内の残圧を系外にブローし、65℃で400torr(53.3kPa)、15分間の脱気を行った。さらにp−トルエンスルホン酸の63.2質量%水溶液40g(p−トルエンスルホン酸として0.15モル、前記全アミンに対するモル比0.05)とシリコーン消泡剤(東レ・ダウコーニング(株)製、自己乳化型コンパウンド DK Q1−1183)0.12gを仕込んだ。更に、イタコン酸476.4g、デカン酸59.6g、ポリ(メタクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート)(重量平均分子量12万)の35質量%水溶液850.8gを仕込み0.5時間攪拌し均一化させ、混合水溶液A3−1を製造した。混合水溶液A3−1の組成は、ジメチルヒドロキシエチルアルキルアンモニウムパラトルエンスルホネート〔(A)成分〕25.0質量%、1,2−プロピレングリコール15.0質量%、イタコン酸8.0質量%、デカン酸1.0質量%、ポリ(メタクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート)5.0質量%であった。
【0132】
・(B)成分:表3に示すノニオン性界面活性剤を用いた。モルタルの調製には、ノニオン性界面活性剤をイオン交換水で10倍(質量比)に希釈して使用した。なお、表1、2中では、便宜的に(B)成分に該当しないノニオン性界面活性剤も(B)成分の欄に記載した。
【0133】
(1−2)モルタルの調製
モルタルの混練は、モルタルミキサー((株)ダルトン社製 万能混練攪拌機 形式:5DM−03−V)を用い、室温20℃で評価を行った。セメント(C)、細骨材(S)を投入し空練りを10秒行い、水(W)、セメント分散剤(AD)、ノニオン性界面活性剤〔(B)成分〕を添加し1分間攪拌した。なお、セメント分散剤(AD)の添加量は、モルタルフローが、目標24±1cmとなる量を採用した。いずれのモルタル配合でも、分散剤がモルタルの水相100質量部に対して1.0質量部で前記モルタルフローとなったため、各実施例、比較例では分散剤をこの量に固定して実施した。なお、このモルタルフローは、(A)成分、(B)成分を用いないモルタルについて、JIS R 5201に基づき、直ちにフローコーンに2層詰めし、フローコーンを正しく上の方に取り去り、コーンを取り去り5分後に測定したものである。A3−1を用いる場合は、その後、A3−1を添加し更に1分間攪拌し使用モルタルとした。また、A1−1とA2−1を用いる場合は、分散剤(AD)の添加時期にA2−1のみを添加し、1分間攪拌後、A1−1を添加する以外は上記と同様の方法でモルタルを得た。表1、2に各成分の具体的な配合量等を示す。表中、水(W)の質量は、A1−1、A2−1、A3−1、セメント分散剤(AD)を含めた質量として表記した。
【0134】
<評価>
(2−1)水中不分離性の評価
水中不分離性は、コンクリート用水中不分離性混和剤品質規格(JSCE−D 104−2007)付属書2 水中不分離性コンクリートの水中分離度試験方法と類似する以下の方法で、懸濁液の濁度を測定することで評価した。
300mlのビーカーにイオン交換水を200ml計量し、別の300mlビーカーに混練後のモルタルを80g秤量した。80gのモルタルを200mlのイオン交換水中に、約8gずつ10回に分けて1分間の間に投入した。投入後3分間静置した後、上澄みを100ml採取し、アズワン(株)製ラコムテスター濁度計TN−100を用いて濁度を測定した。結果を表1、2に示した。
濁度は小さい方が水中不分離性が良好であり、以下のように判定され、a、b、cが合格水準である。
a:濁度が100以下
b:濁度が100超、150以下
c:濁度が150超、200以下
d:濁度が200超、333以下
e:濁度が333超
【0135】
(2−2)ポンプ圧送性
ポンプ圧送性はモルタルの粘性に影響される。本例では、モルタルフロータイムでポンプ圧送性を評価した。
混練後のモルタルを、JIS R 5201に基づき、直ちにフローコーンに2層詰めし、フローコーンを正しく上の方に取り去り、フローの平均長さが20cmに達する時間(以下、モルタルフロータイムという)を計測しポンプ圧送性の指標とした。結果を表1、2に示した。
モルタルフロータイムは小さい方がポンプ圧送性が良好であり、以下のように判定され、a、bが合格水準である。
a:モルタルフロータイムが30秒以下
b:モルタルフロータイムが30秒超、45秒以下
c:モルタルフロータイムが45秒超
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
表1、2中、モルタル配合における分散剤、(A)成分の配合量(g)は、水溶液としての配合量(g)を示す。表1、2中、モルタル配合における(B)/(A)の質量比は、有効分換算の配合量に基づく質量比を示す。また、表1、2中、分散剤、(A)成分、(B)成分の水相100質量部に対する質量部は、それぞれ、有効分換算の質量部である。
【0139】
【表3】