【実施例】
【0026】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0027】
図1および
図2は、本発明の実施例に係るシール構造としてインバータ用防水シールを示している。当該実施例に係るシール構造は、合わせ部に開口12を設けた平面分割ケース11と前記開口12に挿通した冷却管や配線等の挿通部品21との間をシールするものであって、ケース11の開口周縁部12aと挿通部品21との間に介装されるゴム状弾性体製のパッキン31を有している。
【0028】
ケース11は、符号11A,11Bをもって示すように平面分割構造(二つ割り構造)とされ、その合わせ部に、冷却管や配線等の挿通部品21を挿通するための開口12が半割り状態で設けられている。組立ての手順としては、一対のケース11A,11Bの間にパッキン31を挟んだ状態で一対のケース11A,11Bを閉じ合わせ(矢印C)、次いで一対のケース11A,11Bによって保持された状態のパッキン31の内周側へ軸方向一方(図では下方)から冷却管や配線等の挿通部品21を挿通する(矢印D)。
【0029】
挿通部品21は、例えばパイプ状の部品であって、円筒状の外周面を備えている。挿通部品21の先端には図示するような大径部(段差部)22が設けられることがある。
【0030】
パッキン31は、所定のゴム状弾性体によって一体の成形品として成形されている。パッキン31は
図2に示すようにケース11の開口周縁部12aに保持される。パッキン31は、その内周部31aがリップ形状(シールリップ部)34とされている。パッキン31の内周部31aにはリップ形状34と並んでビード35が設けられている。パッキン31は、ビード35が挿通部品21によって押し拡げられることによりパッキン31の外周部31bがケース11の開口周縁部12aに押し付けられる構造とされている。パッキン31は、その機能からしてグロメットと称されることがあり、その構造からしてリップパッキンと称されることもある。
【0031】
また、パッキン31は、ケース11の開口周縁部12aに挿入される断面略長方形状を呈する環状のパッキン本体32を備え、このパッキン本体32の内周側に比較的薄肉の連結部33が径方向内方へ向けて一体成形され、この連結部33の内周側にリップ形状34が軸方向一方(図では上方)へ向けて一体成形されている。ケース11の開口周縁部12aに対するパッキン本体32の挿入作業の容易性を考慮すると、ケース11の開口周縁部12aに対するパッキン本体32のつぶし代は可及的に小さいことか望ましい。またパッキン本体32における挿入方向外周端部にテーパー状の面取りを設けることも考えられる。
【0032】
リップ形状34は、連結部33に一体成形されたリップ基端部34aに対しリップ先端部34bが軸方向一方(図では上方)に変位した軸方向の方向性を備える形状とされ、リップ基端部34aの内径が挿通部品21の外径より大きく設定されるとともにリップ先端部34bの内径が挿通部品21の外径より小さく設定され、これによりリップ先端部34bが挿通部品21の外周面に密接することによりシール機能を発揮する。
【0033】
パッキン31全体の内周面であって連結部33およびリップ基端部34aの内周側に位置して環状のビード35が設けられている。ビード35はパッキン31の内周面の軸方向一部を環状に隆起した形状とされ、その内径を挿通部品21の外径より少々小さく設定されている。したがってその内周側へ挿通部品21が挿通されるとビード35は挿通部品21によって押し拡げられ、これによりパッキン31全体の外周部31bすなわちパッキン本体32の外周部をケース11の開口周縁部12aに向けて径方向外方へ押し付ける。この機能を発揮するためビード35は、パッキン本体32の外周部がケース11の開口周縁部12aと接触する部位と同じ高さ位置(軸方向位置)に設けられている。またビード35は挿通部品21の外周面に密接することにより二次的なシール機能を発揮する。
【0034】
また、パッキン31全体の外周面であってパッキン本体32の外周側に位置して環状の鍔部36が設けられている。この鍔部36は、ケース11の開口周縁部12aにおいてケース11の厚み方向一方の平面11aを被覆し、
図3に示すように半割り状の開口12に平面上の位置ずれdが生じたときに、これに伴ってパッキン31の外周部31bおよびケース11の開口周縁部12a間に発生する径方向隙間を閉塞する。したがってこの鍔部36は、パッキン31の外周部おいてシール機能を発揮する。
【0035】
上記構成のシール構造においては、パッキン31の内周部31aがリップ形状34とされ、リップ形状34はその内周側へ挿通部品21を挿通するときにリップ先端部34bが挿通部品21によって押し拡げられ、このときパッキン31は主にせん断で変形する。したがってパッキン31の内周側へ挿通部品21を挿通するときの抵抗を小さく設定することが可能とされている。
【0036】
また、上記構成のシール構造においては、パッキン31の内周部31aにリップ形状34と並んでビード35が設けられ、ビード35はパッキン31の内周側へ挿通部品21を挿通したときに挿通部品21によって押し拡げられ、このときパッキン31全体の外周部31bすなわちパッキン本体32の外周部をケース11の開口周縁部12aに押し付ける。したがってパッキン31の外周部31bにおいてシール面圧を大きく設定することが可能とされている。また、パッキン本体32の外周部がケース11の開口周縁部12aで押し付けられるため、ビード(内周ビード部)35がより強く挿通部品21を押し付ける。したがってパッキン31のビード35においても、シール面圧を大きく設定することが可能とされている。
【0037】
したがってこれらのことから、パッキン31の内周側に挿通部品21を挿通するときの抵抗を小さく設定することができ、もって組付け性を良好とするとともに、併せてパッキン31の内周部および外周部においてシール面圧を大きく設定することができ、もってシール性を良好とすることができる。
【0038】
また、パッキン31の内周部31bにリップ形状34およびビード35が併設されているため、リップ形状34が密封流体に対する一次シールをなし、ビード35が二次シールをなす。したがってパッキン31に対し負圧が作用してリップ形状34が挿通部品21から離れることがあってもビード35が挿通部品21に接触したままとされるため、パッキン31全体としてシール機能を維持することができる。
【0039】
尚、パッキン31とケース11の開口周縁部12aとの間には、接合力およびシール性を高めるべく、液状ガスケットや接着剤を介在せしめることにしても良く、当該実施例の場合には、パッキン31の鍔部36とこれに対向するケース11の平面11aとの間およびパッキン本体32の外周面とこれに対向するケース11の開口周縁部(内周面)12aとの間に液状ガスケットや接着剤(いずれも図示せず)を介在させるのが好適である。
【0040】
また、上記実施例では、パッキン31がパッキン本体32の外周面をもってケース11の開口周縁部12aに保持されているが、ケース11の開口周縁部12aにざぐり部を設けて、パッキン31をこのざぐり部に装着するようにするとパッキン31がパッキン本体32の外周面のみならずパッキン本体32の厚み方向一方の端面をもってケース11の開口周縁部12aに保持されるため、ケース11がパッキン31を保持する作用が増大する。
【0041】
図4および
図5に示す他の実施例では、このような理由から、ケース11の開口周縁部12aに薄肉状の鍔部13が径方向内方へ向けて設けられることにより環状段差状のざぐり部14が設けられ、このざぐり部14にパッキン31が装着され、パッキン31がパッキン本体32の外周面およびパッキン本体32の厚み方向一方の端面をもってケース11の開口周縁部12aに保持されている。
【0042】
したがってこの構造によると、パッキン31を一層安定的に保持することができ、またパッキン31をケース11の開口周縁部12aに装着するに際してパッキン31が鍔部13に突き当てられるため、パッキン31の軸方向の位置決めを容易化することができる。
【0043】
また、この構造においてパッキン31とケース11の開口周縁部12aとの間に液状ガスケットや接着剤を介在させる場合には、パッキン31の鍔部36とこれに対向するケース11の平面11aとの間、パッキン本体32の外周面とこれに対向するケース11の開口周縁部(内周面)12aとの間、およびパッキン本体32の厚み方向一方の端面とこれに対向する鍔部13との間に液状ガスケットや接着剤(いずれも図示せず)を介在させるのが好適である。