(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、ブームの旋回角度の検出のためにポテンショメータを用いる場合、ポテンショメータを取り付けるためのコストが増加してしまい、さらに、旋回台の下部にポテンショメータを取り付けるためのスペースが必要となる。
【0006】
そこで、ポテンショメータを用いずに、旋回するブームが所定の旋回位置にあることを検出するリミットスイッチなどのセンサを用いることが考えられる。しかしながら、ブームが所定の旋回位置にあることをセンサで検出することによって所定の格納位置で自動的にブームを停止させるためには、格納位置よりも旋回方向の手前にブームがあることを検出するセンサを設けなければならない。すなわち、ブームが格納位置に到達したことをセンサが検出してからブームの旋回を停止させると、タイムラグによって、格納位置からオーバーランして停止してしまう。そのため、ブームの旋回位置を検出するセンサは停止位置よりも手前に配設しなければならず、さらに、ブームは右旋回と左旋回を行うため、右旋回用と左旋回用とにそれぞれ、格納位置の手前にセンサを配設する必要がある。そのため、センサの配設数が増え、コストが増加してしまう。また、オーバーランする距離から少しでもセンサを配設する位置が異なってしまうと、ブームの停止位置に誤差が生じてしまうことになる。
【0007】
そこで、本発明は、コストやスペースの増加を抑えつつ、ブームを自動格納する際の停止精度を向上させることが可能なブーム自動格納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るブーム自動格納装置は、基台に対して旋回自在に設けられた旋回台上に立設されたブームと、ブームが立設された旋回台を、基台に対して旋回駆動させるブーム旋回駆動手段と、ブーム旋回駆動手段によって旋回する旋回台とともに旋回するブームが、所定の格納位置に到達したことを検出するブーム格納位置検出手段と、ブームを所定の格納位置に自動的に格納するブーム自動格納手段と、を備えたブーム自動格納装置であって、ブーム自動格納手段は、ブームを自動格納させるための操作を受け付けるブーム自動格納操作手段と、ブーム自動格納操作手段がブームを自動格納させるための操作を受け付けた場合、旋回台を旋回させるブーム旋回開始手段と、ブーム旋回開始手段によって旋回するブームがブーム格納位置検出手段によって所定の格納位置に到達したことを検出されたときに
旋回台を停止させる制御を開始し、旋回台の旋回を停止させるブーム旋回停止手段と、
ブーム旋回停止手段が旋回台を停止させる制御を開始してからブームの旋回が所定の格納位置を過ぎて停止または所定の格納位置の手前で停止する停止位置が求められ、所定の格納位置から停止位置までのずれ量に応じた補正旋回時間を設定するための補正旋回時間設定手段と、ブーム旋回停止手段によって停止した旋回台を
補正旋回時間設定手段で設定された補正旋回時間さらに旋回させることによって、ブームの停止位置を所定の格納位置に補正するブーム格納位置補正手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
これにより、ブームを自動格納するときに、所定の旋回位置に停止させたブームを、所定時間もう一度旋回させることにより、ブームの停止位置を格納位置に補正することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、停止させたブームを所定時間再度旋回させることにより、ブームの停止位置を補正して格納位置に停止させることができるので、新たな検出部品を追加するコストや、部品を取り付けるスペースを増加させることなく、ブーム自動格納時の停止精度を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図5は、本発明の一実施形態を示すものである。
本発明のブーム自動格納装置を備えたクレーン装置1は、
図1に示すように、走行する車両2に搭載されるものである。なお、ブーム自動格納装置は、車載式のクレーン装置に限らず、高所作業機や自走式クレーンなどに用いてもよい。
【0013】
車両2は、シャシフレーム3の前部及び後部のそれぞれに左右一対の車輪を有してエンジンを動力源として走行する。車両2には、シャシフレーム3の前側に設けられ、車両2の走行に関する操作を行うための運転室4と、運転室4の後方に設けられた荷台5を備えている。
【0014】
クレーン装置1は、
図2に示すように、車両2のシャシフレーム上に固定される基台10と、基台10の左右両側に設けられたアウトリガ20と、基台10の上面に旋回自在に設けられた旋回台30と、旋回台30に対して起伏自在に設けられたブーム40と、ブーム40の先端側から垂下されるワイヤロープ50と、ワイヤロープ50の巻き込みまたは繰り出しを行うためのウインチ51とを備えている。
【0015】
アウトリガ20は、ジャッキシリンダによって下方に伸長させて下端を接地させることにより、クレーン作業時に車両2の転倒を防止するとともに、車両2を安定的に支持する。
【0016】
旋回台30は、
図2および
図3に示すように、旋回台30と基台10との間に配設されたボールベアリング式やローラーベアリング式の旋回サークル31によって基台10に対して旋回自在に設けられ、油圧式の旋回モータ33(
図4参照)を駆動させることで旋回する。また、旋回台30の上面には、上下方向に延びる旋回ポスト32が設けられ、旋回ポスト32の上端側にブーム40の基部が接続している。また、旋回台30には、ブーム40の旋回位置を検出するためのブーム旋回位置検出装置60が設けられている。
【0017】
ブーム旋回位置検出装置60は、コストが大幅に増加するポテンショメータなどは用いず、
図4に示すように、基台10の上面に固定された導電リング部材70と、旋回台30の下面に設けられた接触子80とを備えた旋回位置検出回路を用いた構成となっている。なお、以下においては、導電リング部材70の前後方向および左右方向は、車両2の前後方向および左右方向と同方向として説明する。
【0018】
導電リング部材70は、旋回サークル31と同心の円形に形成された導電体71を有するリング状部材である。導電体71は、所定幅に形成された4つの絶縁区間72によって、導電体71a、71b、71c、71dに4分割された構造をなしている。導電体71aは、導電リング部材70の前方右側に位置し、導電体71bは、導電リング部材70の後方右側に位置し、導電体71cは、導電リング部材70の後方左側に位置し、導電体71dは、導電リング部材70の前方左側に位置する。そして、導電体71aと導電体71dとの間に絶縁区間72aが設けられ、導電体71aと導電体71bとの間に絶縁区間72bが設けられ、導電体71bと導電体71cとの間に絶縁区間72cが設けられ、導電体71cと導電体71dとの間に絶縁区間72dが設けられている。
【0019】
接触子80は、旋回台30の下面であってブーム40の先端方向側に、導電リング部材70上を摺動自在に設けられおり、旋回台30の旋回とともに、導電リング部材70の周方向に移動する。すなわち、ブーム40が車両2の右方向を向いた状態では、接触子80は、導電リング部材70の右側部分の上方に位置する。また、接触子80は、導電リング部材70との一定の接触幅を有するカーボンブラシ等が用いられており、接触子80と導電リング部材70との接触幅は、絶縁区間よりも広く設定されている。
【0020】
そして、接触子80が、ブーム40の旋回にともなって導電リング部材70上を摺動して導電体71a〜71dに接触すると、接触子80が接触した導電体71a〜71dに対応した検出信号La〜Ldが、旋回位置検出信号出力手段61を介して、後述するブーム自動格納用コントローラ101に出力される。また、例えば、ブーム40が車両2の後方向を向いた状態では、接触子80は絶縁区間72cを跨いで、絶縁区間72cの両側に設けられた導電体71bと導電体71cとに同時に接触し、対応する検出信号Lbと検出信号Lcとが同時に出力される。これにより、ブーム旋回位置検出装置60は、ブーム40の旋回位置が、前方向、右前方向、右方向、右後方向、後方向、左後方向、左方向、左前方向のいずれであるかを検出することができる。なお、本実施形態では、導電リング部材70の導電体71は4分割されているが、これに限らず、必要に応じて分割数を変更することができる。
【0021】
ブーム40は、複数のブーム部材(ベースブーム40a、セカンドブーム40b、サードブーム40c、トップブーム40d)からなり、ベースブーム40a、セカンドブーム40b、およびサードブーム40cの内部に先端側に隣り合うセカンドブーム40b、サードブーム40c、トップブーム40dが収納可能なテレスコープ式に構成されている。最基端側のベースブーム40aは、基端部が旋回台30の上面に設けられた旋回ポスト32に揺動自在に連結されている。ベースブーム40aと旋回ポスト32のブラケットとの間には、油圧式の起伏シリンダ41が連結されており、起伏シリンダ41の伸縮動作によってブーム40を起伏させる。また、ベースブーム40aの内部には、油圧式の伸縮シリンダ(図示せず)が設けられ、伸縮シリンダの伸縮によってブーム40を伸縮させる。
【0022】
ワイヤロープ50は、先端側にフックブロック52が設けられ、フックブロック52がトップブーム40dの先端から垂下される。また、ウインチ51は、ワイヤロープ50が巻き掛けられるドラムを有し、ドラムは油圧式のウインチモータ51aによって正逆回転可能に構成されている。
【0023】
また、クレーン装置1は、ブーム40の起伏・伸縮・旋回や、ワイヤロープ50の巻き込み・繰り出しなどを隔操作可能なクレーン遠隔操作装置200を備えている。クレーン遠隔操作装置200には、各種操作を行うためのスイッチが設けられており、送信アンテナによって各種操作に対応した信号を送信する。
【0024】
このような構成されたクレーン装置1は、ブーム40を所定の格納位置に自動的に格納するためのブーム自動格納装置100を備えている。以下に、ブーム自動格納装置100の構成および動作について説明する。
【0025】
ブーム自動格納装置100は、
図4に示すように、導電リング部材70と接触子80から構成されるブーム旋回位置検出装置60と、ブーム旋回位置検出装置60による検出信号を出力する旋回位置検出信号出力手段61と、ブームの自動格納を制御するためのブーム自動格納用コントローラ101と、ブーム自動格納の操作を行うためのクレーン遠隔操作装置200と、ブーム自動格納用コントローラ101から入力した制御信号に応じて旋回モータ用油圧回路の作動油の給排をコントロールする旋回モータ用コントロールバルブ33aと、旋回モータ用コントロールバルブ33aがコントロールする作動油の給排によって駆動および停止する旋回モータ33と、ブーム自動格納用コントローラ101から入力した制御信号に応じてウインチモータ用油圧回路の作動油の給排をコントロールするウインチモータ用コントロールバルブ51bと、ウインチモータ用コントロールバルブ51bがコントロールする作動油の給排によって駆動および停止するウインチモータ51aと、を備えている。
【0026】
ブーム自動格納用コントローラ101は、ECU(Electronic Control Unit)であり、ブーム40を格納位置へ向けて旋回させる制御、およびブーム40の停止位置を格納位置へと補正する制御等を行う。
【0027】
ブーム自動格納用コントローラ101の入力側には、旋回位置検出信号出力手段61が接続されるとともに、クレーン遠隔操作装置200がアンテナを介して無線接続されている。ブーム自動格納用コントローラ101には、旋回位置検出信号出力手段61からの旋回位置検出信号、クレーン遠隔操作装置200からのフック格納操作信号や左旋回操作信号、右旋回操作信号が入力されるようになっている。
【0028】
また、ブーム自動格納用コントローラ101の出力側には、旋回モータ用コントロールバルブ33aとウインチモータ用コントロールバルブ51bとが接続されている。ブーム自動格納用コントローラ101から、旋回モータ用コントロールバルブ33aに向けてブーム旋回制御信号、ブーム旋回停止制御信号、および油圧制御信号が出力され、ウインチモータ用コントロールバルブ51bに向けてフック格納制御信号が出力されるようになっている。
【0029】
クレーン遠隔操作装置200には、フック格納スイッチや旋回スイッチが設けられている。フック格納スイッチは押しボタンスイッチであり、フック格納スイッチを押下操作するとフックブロック52の格納が開始される。また、旋回スイッチは左旋回と右旋回とを選択するスライドスイッチであり、フックブロック52の格納後に旋回スイッチを操作すると、ブーム40の格納が開始される。
【0030】
次に、ブーム40を自動的に格納する際の補正時間の設定について説明する。補正時間とは、ブーム40の旋回を停止させた後に再度旋回させる時間であり、設定された補正時間が経過するまでブーム40を再度旋回させることにより、ブーム40の停止位置を調整する。すなわち、ブーム40を自動で格納する場合、ブーム40は1回目の旋回を行って停止した後に2回目の旋回を行う。
【0031】
補正時間は、ブーム40の1回目の旋回の停止位置と格納位置とのずれ量に応じて設定する。すなわち、ブーム40の1回目の旋回時の停止位置が格納位置からずれる角度に応じた旋回時間を補正時間として設定する。本実施形態では、ブーム自動格納中の旋回台30は秒速5度(1秒当たり5度の旋回角度)となるように設定されており、例えば、ブーム40が格納位置から2.5度オーバーランして停止する場合は、「−0.5秒」と設定し、ブーム40が停止位置から2.5度手前で停止する場合は、「+0.5秒」とする。また、ブーム40の自動格納における1回目のブーム40の旋回が左旋回の場合と右旋回の場合とで、異なる補正時間を設定することができる。
【0032】
次に、
図5を用いて、ブーム40を格納位置に自動的に格納するための、ブーム自動格納制御処理を説明する。本実施形態において、ブーム40が車両2の前方向を向いた状態となる位置と、ブーム40が車両2の後方向を向いた状態となる位置との2カ所が、ブーム40の格納位置に設定されている。したがって、接触子80が導電体71aと導電体71dとに同時に接触する位置と、接触子80が導電体71bと導電体71cとに同時に接触する位置とのいずれかがブーム40の格納位置となる。
【0033】
まず、ステップS1において、ブーム自動格納用コントローラ101は、クレーン遠隔操作装置200のフック格納スイッチが操作されたか否かを判断する。具体的には、ブーム自動格納用コントローラ101は、クレーン遠隔操作装置200からフック格納スイッチが操作されたことを示すフック格納操作信号を入力したか否かを判断する。そして、フック格納操作信号を入力した場合にはステップS2に処理を移し、フック格納操作信号を入力しなかった場合にはENDに進み、ブーム自動格納制御処理を終了する。
【0034】
ステップS2において、ブーム自動格納用コントローラ101は、各油圧アクチュエータの油圧を下げるための油圧制御処理を行う。具体的には、ブーム自動格納用コントローラ101は、旋回モータ33やウインチモータ51a等の各油圧アクチュエータへの作動油の吐出量及び吐出方向を制御する油圧制御弁(図示せず)に対し、油圧を下げるための指令信号を出力する。これにより、旋回モータ33やウインチモータ51a等の駆動圧が減圧され、自動格納制御によって格納されるフックブロック52の過剰巻き込みや、自動格納制御によって旋回するブーム40に障害物等が衝突した場合の衝撃を減少させることができる。
【0035】
ステップS3において、ブーム自動格納用コントローラ101は、フックブロック52を格納するためのフック格納制御処理を行う。具体的には、ブーム自動格納用コントローラ101は、ウインチモータ用コントロールバルブ51bにフック格納制御信号を出力する。フック格納制御信号を入力したウインチモータ用コントロールバルブ51bによるウインチモータ用油圧回路の作動油の制御によってウインチモータ51aが駆動し、ウインチ51が、フックブロック52がトップブーム40dの先端に到達するまでワイヤロープ50を巻き込む。
【0036】
ステップS4において、ブーム自動格納用コントローラ101は、クレーン遠隔操作装置200の旋回スイッチが操作された否かを判断する。具体的には、ブーム自動格納用コントローラ101は、旋回スイッチの左旋回を選択した操作がされたことを示す左旋回操作信号と、旋回スイッチの右旋回を選択した操作がされたことを示す右旋回操作信号とのいずれかを入力したか否かを判断する。そして、左旋回操作信号または右旋回操作信号を入力した場合はステップS5へと処理を移し、左旋回操作信号と右旋回操作信号とのいずれも入力しない場合は、ステップS1の処理に戻る。
【0037】
ステップS5において、ブーム自動格納用コントローラ101は、ブーム旋回制御信号を旋回モータ用コントロールバルブ33aに出力し、旋回モータ33を駆動させて旋回台30を左旋回または右旋回させる処理を行う。具体的には、ブーム自動格納用コントローラ101は、上記ステップS4において入力した信号が左旋回操作信号である場合は、旋回台30を左旋回させる信号を出力し、右旋回操作信号である場合は、旋回台30を右旋回させる信号を出力する。
【0038】
ステップS6において、ブーム自動格納用コントローラ101は、旋回するブーム40の位置が格納位置であるか否か、すなわち、ブーム40の旋回位置が、ブーム40が車両2の前方または後方を向いた状態の位置に到達したか否かを判断する。
【0039】
具体的には、ブーム自動格納用コントローラ101は、旋回位置検出信号出力手段61から検出信号Laと検出信号Ldとの同時入力、または検出信号Lbと検出信号Lcとの同時入力をしたか否かを判断する。そして、ブーム40の旋回位置が格納位置である場合(旋回位置検出信号出力手段61から検出信号Laと検出信号Ldとを同時に入力するか、検出信号Lbと検出信号Lcとを同時に入力した場合)はステップS7に処理を移し、ブーム40の旋回位置が格納位置ではない場合は格納位置となるまで本ステップを繰り返し実行する。
【0040】
このように、ブーム40が車両2の前方を向いた状態の位置と、ブーム40が車両2の後方を向いた状態の位置のうち、ブーム40が先に到達した側が格納位置となる。例えば、ブーム40が右側を向いた状態から左旋回を行うと、ブーム40が車両2の後方を向いた状態の位置よりも先に、ブーム40が車両2の前方を向いた状態の位置に到達するため、ブーム40が車両2の前方を向いた状態の位置が格納位置となる。したがって、作業者は、ブーム40を車両2の前方と後方のどちらを向いた状態に格納するかによって、左旋回と右旋回とを選択することになる。荷台5は車両2の後部となるため通常はブーム40が車両2の後方を向いた状態を格納位置とするが、荷台5に高さのある荷がある場合などは、ブーム40が車両2の前方を向いた状態を格納位置とすることができる。また、作業者が左旋回と右旋回とを間違えて旋回スイッチを操作した場合は、旋回スイッチを再度操作することで格納したい位置にブーム40を格納することができる。
【0041】
ステップS7において、ブーム自動格納用コントローラ101は、ブーム40の旋回を停止させるために、旋回モータ33の駆動を停止させるブーム旋回停止制御信号を出力する処理を行う。これにより、旋回台30の旋回が停止する。
【0042】
ステップS8において、ブーム自動格納用コントローラ101は、ブーム40の格納位置を補正するために、ブーム40を再度旋回させる処理を行う。具体的には、予め設定された補正時間に対応する値を、ブーム自動格納用コントローラ101が備える補正時間カウンタにセットするとともに、設定された補正時間に応じた方向に旋回台30を旋回させるブーム旋回制御信号を出力する。例えば、1回目の旋回(上記ステップS5における旋回)が左旋回であり、設定された補正時間が「−0.5秒」である場合は、補正時間カウンタに0.5秒に対応する値をセットするとともに、旋回台30を右旋回させるためのブーム旋回制御信号を出力する。
【0043】
ステップS9において、ブーム自動格納用コントローラ101は、補正時間が経過したか否かを判断する。具体的には、補正時間カウンタの値が「0」であるか否かを判断する。補正時間カウンタは、所定時間毎(例えば2ms毎)にカウントダウンされ、上記ステップS8において設定された補正時間が経過すると、補正時間カウンタは「0」となる。そして、補正時間が経過した場合はステップS10に処理を移し、補正時間が経過していない場合は、補正時間が経過するまで本処理を繰り返して行う。
【0044】
ステップS10において、ブーム自動格納用コントローラ101は、ブーム40の旋回を停止させるために、旋回モータ33の駆動を停止させるブーム旋回停止制御信号を出力する処理を行う。これにより、旋回台30の旋回が停止する。本ステップの処理を終了するとステップS1の処理へ戻り、フック格納スイッチが非操作になればブーム自動格納制御処理を終了する。
【0045】
このように、本実施形態のブーム自動格納装置100によれば、ブーム40の自動格納処理において、ブーム40を格納位置まで旋回させて停止させた後に(1回目の旋回)、予め設定した補正時間が経過するまでブーム40をもう一度旋回させる(2回目の旋回)。2回目のブーム40の旋回は、1回目のブーム40の旋回において格納位置よりもオーバーランした場合は、1回目の旋回とは反対の方向となり、1回目のブーム40の旋回において格納位置よりも手前で停止した場合は、1回目の旋回と同じ方向となる。すなわち、1回目のブーム40の旋回で格納位置よりもオーバーランした場合は、補正時間逆旋回することにより格納位置に戻る。一方、1回目のブーム40の旋回で格納位置よりも手前で停止した場合は、補正時間延長して旋回することにより格納位置に到達する。これにより、ブーム40の自動格納において、ブーム40を高精度で格納位置に停止せることができる。
【0046】
さらに、ブーム40が格納位置に到達したときに停止させてから、2回目の旋回を時間制御で行うのみで、ブーム40の停止位置を格納位置に補正させることができるので、低コストで、ブーム40の停止精度を向上させることができる。すなわち、ブーム40を停止させる制御を行ってからブーム40が実際に停止するまでのタイムラグによるオーバーランを補正することができるので、ブーム40の格納位置よりも所定距離手前に離間した位置にブーム40が到達したことを検出する必要がない。そのため、ブーム40の旋回位置を検出するための部品点数を削減することができる。
【0047】
また、補正時間は、ブーム自動格納におけるブーム40の1回目の旋回が右旋回の場合と左旋回の場合とで個別に設定することができるとともに、2回目の旋回を、1回目の旋回と同方向と逆方向とのいずれにも設定することができる。これにより、ブーム40を停止させる制御を行ってからブーム40が実際に停止するまでのタイムラグによるオーバーランを補正することができる。また、導電リング部材70や接触子80の取り付け位置のずれや、車両2へのクレーン装置1の架装位置のずれによって、ブーム40が車両2の前方向または後ろ方向からよりも手前の旋回位置で停止したとしても、格納位置へと補正することができる。さらに、ブーム40を停止させる制御を行ってから実際に停止するまでの旋回距離が左旋回と右旋回とで異なる場合でも、対応する補正時間を右旋回と左旋回とでそれぞれ設定することにより正確な位置に格納することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、ブーム40の旋回位置を検出するための旋回位置検出手段として4分割旋回方向検出器であるブーム旋回位置検出装置60を用いているが、これに限らず、例えば、リミットスイッチや近接センサ等を用いてブーム40の旋回位置を検出してもよい。また、ブーム旋回位置検出装置60の導電リング部材70は4分割接点を有する導電体71を有するが、これに限らず、例えば6分割接点など接点数を増加させてもよいし、ブーム40の格納位置である前後部分のみが分割された2分割接点としてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、ブーム40の自動格納において、作業者が選択する旋回方向と、その時点でのブーム40の旋回位置とに応じて、ブーム40の格納位置が、ブーム40が車両2の前方向を向いた状態となる位置と、ブーム40が車両2の後方向を向いた状態となる位置とのいずれかに決定される。しかし、これに限らず、作業者が、格納位置を設定し、設定された格納位置に早く到達できる方向にブーム40が旋回するようにしてもよい。また、ブーム40の格納位置は1カ所のみとしてもよいし、ブーム自動格納におけるブーム40の1回目の旋回方向はいずれか一方向のみとしてもよい。