【文献】
Masako Mizuno et al.,Determination of Hydrogen Concentration in Austenitic Stainless Steel by Thermal Desorption Spectroscopy,Materials Transactions ,1994年,Vol.35 No.10,703-707
【文献】
広畑優子,昇温脱離法(TDS)による水素の定量分析,J. Vac.Soc.Jpn,1999年 7月 3日,Vol.42 No.10,5-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00〜1/44、17/00〜19/00、25/00〜25/72、27/60〜27/92、30/00〜30/96、31/00〜31/22、33/00〜33/46
【発明を実施するための形態】
【0013】
試料の水素含有量を検出するためのシステム及び方法が開示されている。試料は高強度鋼又はチタン合金などの構造材料の試料であってもよい。任意選択により、試料は化学的に処理されていてもよく、或いは例えば電気メッキ工程を利用して、チタン‐カドミウム被覆又は亜鉛ニッケル被覆などの耐食性被覆材料でメッキされていてもよい。そのため、試料内部の拡散性水素などの水素量を知り、これによって試料の水素脆化電位を知ることが好ましい。
【0014】
本明細書では試料の水素含有量の検出について言及しているが、本開示のシステム及び方法は試料中の他の核種の存在及び/又は濃度を検出するために使用しうることも考慮されている。さらに、本明細書では水素脆化電位について言及しているが、本開示のシステム及び方法は、様々な理由により、水素脆化電位の決定のためだけでなく、水素(又は他の核種)含有量の検出に使用しうる。
【0015】
図1を参照するに、試料中の水素含有量を検出するための本開示システムの一実施形態は、概して10で指定されているが、加熱脱着チャンバ12、試料導入チャンバ14、検出器16、第1真空ポンプ18、第2真空ポンプ20及びキャリアガス源22を含みうる。任意選択のプロセッサ24は、システム10を動作させ、温度及び圧力を監視し、検出器16からデータを受信して処理するために提供されることもある。
【0016】
したがって、試料を加熱して試料から水素を脱着することができるよう、例えば試料導入チャンバ14を経由して、試料は加熱脱着チャンバ12に導入されてもよい。キャリアガス源22はキャリアガスを加熱脱着チャンバ12に供給して、脱着された水素を検出器16に運ぶことができ、脱着された水素はそこで測定される。バックグラウンド水素は、検出器16で行われる測定を損なう可能性があるが、加熱脱着チャンバ12に試料を導入する前にポンプ18、20を使用して、加熱脱着チャンバ12及び試料導入チャンバ14を評価することによって、最小化することができる。
【0017】
加熱脱着チャンバ12は、真空(すなわち、実質的に気密な)を維持できる硬い耐熱性の筐体であってもよい。例えば、加熱脱着チャンバ12は10
−8トール以下の内圧に耐えるように構築された容器であってもよい。しかしながら、本開示の範囲を逸脱することなく、より高い圧力(例えば、10
−7トール、10
−6トール、10
−5トール、10
−4トール、10
−3トール、10
−2トール又はさらに高い圧力)で動作するように構成された加熱脱着チャンバ12が使用されることがある。
【0018】
加熱脱着チャンバ12の大きさは、とりわけ、本開示のシステム10を使用して評価されるよう意図されている最大試料サイズによって決定される。例えば、加熱脱着チャンバ12は、ASTM F519試験方法で要求されている同一試料を受け入れられるだけ十分に大きくてもよい。その結果、同一試料を使用して、ASTM F519試験方法の結果と本開示システム10を使用して得られる測定値との間の相関関係が決定されうる。
【0019】
加熱脱着チャンバ12は、耐熱性があり、真空圧に耐えることができる十分に硬い材料で構築されてもよい。加熱脱着チャンバ12の構築に好適な材料の例には、鋼鉄(例えば、軟鋼又はステンレス鋼)、真鍮及びアルミニウムなどの金属、セラミック材料、複合材料及び高分子材料などの非金属が含まれる。
【0020】
アルミニウムはステンレス鋼と比べて水素含有量がおおよそ7桁小さいことに留意すべきである。したがって、いかなる特定の理論にも限定されることなく、低水素アルミニウムで加熱脱着チャンバ12を構築することは、バックグラウンド水素の低減に寄与し、その結果として、本開示システム10の全体性能を改善すると考えられている。好適なアルミニウム加熱脱着チャンバ12、又はそのコンポーネントは、ワシントン州ポートタウンゼントのAtlas Technologies社から入手することができる。
【0021】
加熱素子26は、試料から水素を脱着するため、加熱脱着チャンバ12(又は少なくとも加熱脱着チャンバ12内に配置される試料)を加熱するために提供される。例えば、加熱素子26は一又は複数の加熱ランプ(例えば、ハロゲン加熱ランプ)を含んでもよく、加熱ランプは電力線28を経由して電気エネルギーが供給される。加熱ランプの使用は具縦的に開示されているが、当業者は、本開示の範囲を逸脱することなく、加熱脱着チャンバ12内の試料を加熱するために、様々な加熱素子26(例えば、加熱カートリッジ)が使用されることを理解されたい。
【0022】
例えば熱電対などの温度センサ30は、加熱脱着チャンバ12内で生成される熱を検出するために提供される。温度センサ30は、通信線32を経由してプロセッサ24と通信してもよい。したがって、プロセッサ24は、温度センサ30から受信した温度信号に基づいて、加熱脱着チャンバ12内の試料を所望の温度(例えば、少なくとも150℃)まで加熱するため加熱素子26を制御してもよい。
【0023】
任意選択により、紫外線ランプ34は加熱脱着チャンバ12内に提供されうる。紫外線ランプ34は電力線36を経由して電気エネルギーが供給され、約200〜400ナノメートルの範囲の波長を有する光を発することができる。
【0024】
いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、紫外線は水分子(バックグラウンド水素源)を励起し、これにより水分子が加熱脱着チャンバ12の壁に結合することを防止するものと考えられている。そのため、紫外線ランプ34は、本明細書でさらに詳細に説明されているように、バックグラウンド水素を最小化するために加熱脱着チャンバ12が浄化されているときに、作動されてもよい。
【0025】
真空ゲージ38、40は、加熱脱着チャンバ12内の圧力を監視するため、加熱脱着チャンバ12に結合されることがある。例えば、真空ゲージ38は10
−4トール〜10
−10トールの圧力を測定するように構成されたイオンゲージであってもよく、真空ゲージ40は約1アトム〜10
−4トールの圧力を測定するように構成された熱電対ゲージであってもよい。プロセッサ24が加熱脱着チャンバ12内の圧力を制御できるように、真空ゲージ38、40は任意選択によりプロセッサ24と通信を行ってもよい。
【0026】
試料導入チャンバ14は、加熱脱着チャンバ12に選択的に結合された負荷ロックチャンバであってもよい。したがって、試料導入チャンバ14は真空(例えば、10
−4トール以下)を維持できる硬い筐体であり、試料を受け入れられる大きさ及び形状となることがある。
【0027】
真空ゲージ15は、試料導入チャンバ14内の圧力を監視するため、試料導入チャンバ14に結合されることがある。例えば、真空ゲージ15は約1アトム〜10
−4トールの圧力を測定するように構成された熱電対ゲージであってもよい。プロセッサ24が試料導入チャンバ14内の圧力を制御できるように、真空ゲージ15は任意選択によりプロセッサ24と通信を行ってもよい。
【0028】
試料導入チャンバ14が使用される場合、試料は最初に試料導入チャンバ14に導入され、試料導入チャンバ14上で真空引きが行われてもよい。次に、試料は加熱脱着チャンバ12に移送されるように、試料導入チャンバ14は加熱脱着チャンバ12(例えば、バルブ42によって)に流体結合されてもよい。例えば、試料導入チャンバ14が加熱脱着チャンバ12に流体結合されると、プッシュロッド(図示せず)又は同種のものが使用可能となり、試料を試料導入チャンバ14から加熱脱着チャンバ12まで移送することができる。
【0029】
そのため、試料を加熱脱着チャンバ12に導入するため試料導入チャンバ14を使用すると、試料を加熱脱着チャンバ12に直接導入する場合よりも、加熱脱着チャンバ12への試料導入時に、加熱脱着チャンバ12に導入される外気(バックグラウンド水素源)の量を最小化することができる。
【0030】
第1真空ポンプ18は、バルブ44,46によって、加熱脱着チャンバ12及び試料導入チャンバ14の双方に選択的に結合されることがある。したがって、バルブ44,46を選択的に開放及び閉鎖することにより、第1真空ポンプ18を作動させて、加熱脱着チャンバ12又は試料導入チャンバ14のいずれかを真空引きすることができる。
【0031】
第1真空ポンプ18は低真空ポンプであって、加熱脱着チャンバ12及び試料導入チャンバ14の初期の真空引きに使用されてもよい。1つの具体的な実装では、第1真空ポンプ18は、加熱脱着チャンバ12及び試料導入チャンバ14の双方で少なくとも約10
−3トールの真空引きを行うことができる。
【0032】
一実施例として、第1真空ポンプ18は機械的に作動する容積移送式ポンプであってもよい。オイルはバックグラウンド水素源となりうるため、第1真空ポンプ18は任意選択により、隔膜ポンプ、蠕動ポンプ又はスクロールポンプなどの、オイルを使用しないポンプとなることがある。
【0033】
第1真空ポンプ18によって作り出される真空を監視するため、真空ゲージ48は、第1真空ポンプ18を試料導入チャンバ14及び加熱脱着チャンバ12に結合する流体ライン50上に装着されることがある。例えば、真空ゲージ48は約1アトム〜10
−4トールの圧力を測定するように構成された熱電対ゲージであってもよい。プロセッサ24が第1真空ポンプ18によって生成される真空を制御できるように、真空ゲージ48は任意選択によりプロセッサ24と通信を行ってもよい。
【0034】
第2真空ポンプ20はバルブ52によって加熱脱着チャンバ12に選択的に結合可能で、第1真空ポンプ18と加熱脱着チャンバ12との間に直列に連結されてもよい。バルブ54は第2真空ポンプ20と第1真空ポンプ18との間に配置されうる。したがって、バルブ52、54により、第2真空ポンプ20は単独で、あるいは第1真空ポンプ18と組み合わせて加熱脱着チャンバ12の真空引きを行うように作動されうる。
【0035】
第2真空ポンプ20は高真空ポンプであってもよく、加熱脱着チャンバ12内の真空引きに使用されてもよい。1つの具体的な実装では、第2真空ポンプ20は、加熱脱着チャンバ12で少なくとも約10
−9トールの真空引きを行うことができる。
【0036】
一実施例として、第2真空ポンプ20は高真空クライオポンプ又はターボ分子ポンプであってもよく、いずれも概してバックグラウンド水素(又は水素含有化合物)を生成しない。しかしながら、他の高真空ポンプも本開示の範囲を逸脱することなく使用されうる。
【0037】
したがって、第1真空ポンプ18は、試料が試料導入チャンバ14に配置された後に、試料導入チャンバ14内で真空引きを行うように作動させることが可能で、その結果、試料と共に加熱脱着チャンバ12に導入される外気の量を最小化することができる。第1真空ポンプ18及び第2真空ポンプ20は、加熱脱着チャンバ12内で高真空引きを行うように作動させることが可能で、その結果、加熱脱着チャンバ12内のバックグラウンド水素(又は水素含有化合物)の量を著しく最小化することができる
【0038】
検出器16は、加熱脱着チャンバ12内の標的核種(例えば、水素)の含有量を測定することができる任意の分析装置又はシステムであってもよい。検出器16は、加熱脱着チャンバ12の中に延伸して、検出器16を加熱脱着チャンバ12に、具体的には加熱脱着チャンバ12内のガス状流体に結びつけるサンプリングプローブ56を含みうる。
【0039】
検出器16は質量分析器であってもよい。標的核種(例えば、水素)はキャリアガス内の検出器16に移送されるため、質量分析器は、例えば高温の粘性流動状態の(したがって、高真空ではない)システム条件下でサンプリングを行うことができる。
【0040】
1つの具体的な構成では、検出器16は大気圧イオン化質量分析器(すなわち、大気圧下でサンプリングが可能な質量分析器)であってもよい。好適な大気圧イオン化質量分析器の一実施例は、英国ウォリントンのHiden Analytical Ltd.社から市販されているHPR‐20 QIC TMSガス分析器である。1つの変形例では、検出器16は10
−4トールを超える圧力下でサンプリング可能な質量分析器であってもよい。別の変形例では、検出器16は10
−3トールを超える圧力下でサンプリング可能な質量分析器であってもよい。さらに別の変形例では、検出器16は10
−2トールを超える圧力下でサンプリング可能な質量分析器であってもよい。
【0041】
キャリアガス源22は、キャリアガス源であって、流体ライン58によって加熱脱着チャンバ12に流体結合されていてもよい。キャリアガス源22から加熱脱着チャンバ12へのキャリアガスの流れを制御するため、バルブ60が設けられることがある。
【0042】
キャリアガスは不活性ガス又は不活性ガスの混合ガスであってもよい。例えば、キャリアガスはアルゴン又はヘリウムでよいが、本開示の範囲を逸脱することなく、キャリアガスとして使用されうる他の不活性ガスを含む、別のガスであってもよい。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、自由水素であろうが他の元素との水素化合物であろうが、実質的に水素を含まないキャリアガスの選択は、大幅により正確な測定結果をもたらすことができる。
【0043】
任意選択により、システム10は流体ライン62によって加熱脱着チャンバ12と流体結合されている較正ガス源60を含みうる。較正ガス源60は、キャリアガス(例えば、アルゴン)内の標的核種(例えば、水素)の既知の濃度を有する較正ガスを含みうる。
【0044】
したがって、バルブ64、66、68を選択的に開閉することによって、較正ガス源60から加熱脱着チャンバ12まで流体ライン62を経由して較正ガスを通過させることができる。較正ガスは検出器16で分析されるように、加熱脱着チャンバ12からサンプリングプローブ56まで通過し、これによって検出器16の較正を容易にすることができる。
【0045】
したがって、本開示システム10は、試料内の水素含有量を検出するように使用可能である。第1ポンプ18及び第2ポンプ20は紫外線ランプ34と共に、加熱脱着チャンバ12内のバックグラウンド水素を最小化するため使用可能である。試料導入チャンバ14は、大量の外気(バックグラウンド水素源)を導入することなく、加熱脱着チャンバ12への試料導入に使用可能である。加熱脱着チャンバ12に配置される試料は、試料から水素を脱着させるため、加熱素子26によって加熱可能である。キャリアガス源22は、脱着された水素を検出器16に移送するため、キャリアガスを加熱脱着チャンバ12に供給することができる。検出器16は、質量分析器であってもよく、キャリアガス流の中で脱着された水素の含有量を測定することができる。
【0046】
図2を参照するに、概して200で指定されている、試料中の水素含有量を検出するための方法が開示されている。しかしながら、開示されている方法200は、本開示の範囲を逸脱することなく、試料中の水素以外の核種の含有量の検出にも使用されうる。
【0047】
ステップ202では、方法200は加熱脱着チャンバを提供するステップによって開始されうる。例えば、加熱脱着チャンバは、上記でさらに詳細に記載されている加熱脱着チャンバ12(
図1)であってもよい。
【0048】
ステップ204では、バックグラウンド水素を最小化するため、加熱脱着チャンバはパージされてもよい。パージのステップは、加熱脱着チャンバ内のバックグラウンド水素を最小化するため、加熱脱着チャンバ内で高真空引きすることを含みうる。任意選択により、加熱脱着チャンバの壁から何らかの水素又は水素含有化合物(例えば、水)を分離するため、加熱脱着チャンバ内で(例えば、
図1に示す紫外線ランプ34によって)紫外線が放射されてもよい。
【0049】
この時点で、当業者は、パージのステップ204で加熱脱着チャンバ内のバックグラウンド水素を最小化することにより、試料内の水素含有量のより正確な測定が得られることを理解するであろう。そのため、パージのステップ204は費用を考慮して制限されることがある。しかしながら、本開示の方法200の1つの具体的な実装では、パージのステップ204は、バックグラウンド水素を最大で約百万分の10(10ppm)まで、例えば最大で約百万分の1(1ppm)又は最大で約10億分の10(10ppb)まで低減することができる。
【0050】
ステップ206では、試料は加熱脱着チャンバに導入される。例えば、試料は、高強度鋼などの高強度構造材料の断片であってもよい。任意選択により、試料はチタン‐カドミウム被覆又は亜鉛ニッケル被覆などでメッキされてもよい。
【0051】
導入ステップ206はパージのステップ204の後に実施されることが、
図2に示されている。例えば、加熱脱着チャンバはパージされ、試料は試料導入チャンバ(例えば、
図1のチャンバ14)を経由してパージされた加熱脱着チャンバに導入されてもよい。しかしながら、パージのステップ204は、本開示の範囲を逸脱することなく、導入ステップ206の後、又は導入ステップ206の前後両方で実施されてもよい。
【0052】
ステップ208では、加熱脱着チャンバ内の試料は加熱され、これによって試料から水素を脱着することができる。例えば、加熱ステップ208は、加熱脱着チャンバ内の加熱素子26(
図1)を作動させることによって実施されうる。
【0053】
ステップ210では、試料から脱着される水素と混合するため、加熱脱着チャンバへキャリアガス(例えば、アルゴン)が導入されうる。キャリアガスは加熱脱着チャンバ内の圧力を高め、これによって加熱脱着チャンバ内のフロー(例えば、粘性流動形態を作り出すこと)を可能にする。例えば、流動しているキャリアガスは、過熱脱着チャンバ内の圧力を約10
−2トール以上まで高めることができる。したがって、キャリアガスは試料から脱着された水素を検出器(
図1の検出器16)まで運ぶことができる。
【0054】
ステップ212では、脱着された水素とキャリアガスの混合ガスの水素含有量が測定される。例えば、測定ステップ212は質量分析器によって実施され、これによって水素含有量の実際の測定値をもたらす。
【0055】
したがって、本開示の方法200は、試料内の水素(又は他の核種)の直接の測定値を得るために使用されることがある。
【0056】
図3を参照するに、試料中の水素含有量を検出するための本開示システムの一実施形態は、概して300で指定されているが、加熱脱着チャンバ302、検出器304、真空ポンプ306、キャリアガス源308及び一又は複数の加熱素子310を含みうる。試料プローブ312は加熱脱着チャンバ302内に封入されることがある。
【0057】
加熱脱着チャンバ302は、真空を維持できる硬い耐熱性の筐体であってもよい。例えば、加熱脱着チャンバ302は低水素アルミニウムから構築されうる。加熱脱着チャンバ302は、その中に試料プローブを受け入れられるように大きさと形状が決定されてもよい。
【0058】
加熱脱着チャンバ302は、加熱脱着チャンバ302を封入するため、密閉フランジ314及び密閉フランジ314に密閉結合される密閉プレート316を含みうる。加熱脱着チャンバ302と検出器304、真空ポンプ306及びキャリアガス源308との結合を容易にし、一方で加熱脱着チャンバ302を十分に気密性の高い筐体として維持するため、密閉プレート316に貫通孔が形成されることがある。
【0059】
試料プローブ312は密閉プレート316に結合され、加熱脱着チャンバ302内に封入されてもよい。
【0060】
1つの具体的な表現では、試料プローブ312は内側開口部319を定義し、密閉プレート316に結合された第1端部320及び密閉された(例えば、キャップされた)第2端部322を含む中空管状体318を含みうる。例えば、試料プローブ312は、カドミウム電気メッキ工程に起因する水素脆化電位の電子計測のためASTM F326標準試験で使用される水浸プローブと類似した、長い4130ステンレス鋼管(例えば、直径0.5インチ)であってもよい。
【0061】
任意選択により、試料プローブ312の本体318の外表面324の少なくとも一部はメッキ326を含みうる。例えば、メッキ326はチタン‐カドミウム材料又は亜鉛ニッケル材料であってもよい。当業者であれば、水素が試料プローブ312及びメッキ326の両方から脱着しうることを理解するであろう。したがって、試料プローブ312及び/又はメッキ326はシステム300によって分析される試料となることがある。
【0062】
加熱素子310は加熱脱着チャンバ302内に封入されることがあり、又試料プローブ312から水素を脱着するため試料プローブ312を加熱するように配置されることがある。例えば、加熱素子310はハロゲン加熱ランプなどの加熱ランプであって、加熱ランプは電力線328を経由して電気エネルギーが供給されることがある。
【0063】
熱電対などの温度センサ311は、加熱脱着チャンバ302内で加熱素子310によって生成される熱を検出するように提供されることがある。その結果、試料プローブ312の温度は、温度センサ211から受信した信号に基づいて加熱素子310を制御することによって、制御されうる。
【0064】
真空ポンプ306は、バルブ332によって、加熱脱着チャンバ302に選択的に結合されることがある。真空ポンプ306は加熱脱着チャンバ302で真空引きするように作動されることがある。
【0065】
任意選択により、真空ゲージ330は、加熱脱着チャンバ302内の圧力を監視するため、加熱脱着チャンバ302(又は加熱脱着チャンバ302に連通している流体ラインの1つ)に結合されることがある。その結果、加熱脱着チャンバ302内の圧力は、真空ゲージ330から受信した信号に基づいて真空ポンプ306を制御することによって、制御されうる。
【0066】
したがって、真空ポンプ306は、加熱脱着チャンバ302内で高真空引きを行うように作動させることが可能で、その結果、加熱脱着チャンバ302内のバックグラウンド水素の量を著しく最小化することができる。
【0067】
キャリアガス源308は、アルゴンなどのキャリアガス源であってもよく、加熱脱着チャンバ12に流体結合されていてもよい。第1流体ライン340は試料プローブ312の外側の加熱脱着チャンバ302にキャリアガスを送り込むことができ、第2流体ライン342は試料プローブ312の内側開口部319にキャリアガスを送り込むことができる。したがって、キャリアガスは試料プローブ312の外部へ脱着される水素及び/又は試料プローブ312の内部へ拡散される脱着水素をサンプリングするために使用されうる。流体ライン340を経由するキャリアガス源308からのキャリアガスの流れは、バルブ344、346によって制御されうる。
【0068】
検出器304は、質量分析器であってもよいが、上述のように加熱脱着チャンバ302と流体連通されていてもよい。第1流体ライン348は検出器304を試料プローブ312の外側の加熱脱着チャンバ302に結合し、第2流体ライン350は検出器304を試料プローブ312の内側開口部319に結合することができる。
【0069】
したがって、キャリアガスはキャリアガス源から加熱脱着チャンバ302へ通過し、ここで試料プローブ312から脱着された水素と混ざり合ってもよい。結果として得られる脱着された水素とキャリアガスとの混合ガスは、流体ライン348、350を経由して検出器304へ流れ込んでもよい。脱着された水素とキャリアガスとの混合ガスの検出器304までの流れは、バルブ352、354によって制御されうる。
【0070】
したがって、本開示システム300は、試料プローブ312内の水素含有量を検出するように使用可能である。水素(又は他の核種)含有量の絶対測定値が得られる。さらに、試料プローブ312はまた、カドミウム電気メッキ工程に起因する水素脆化電位を電子計測するためのASTM F326標準試験で使用される水浸プローブであってもよく、同一試料プローブ上で2つの異なる分析(例えば、開示されている方法及びASTM F326標準試験法)が実施可能であり、これにより結果の間の相関(例えば、ASTM F326標準試験法の不具合に対応する水素の絶対量の決定)が可能になる。
【0071】
試料の水素含有量を検出するための本開示のシステム及び方法について様々な実施形態が示され記載されているが、本明細書を読んだ当業者には、多数の変更例が想起されるであろう。本出願はそのような変更例も含んでおり、請求の範囲によってのみ限定される。