【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、クリヤラカットの後、先行技術と比較して継ぎ合わせ時間を削減できる紡績機およびその作動方法を提供することである。
【0006】
この目的は、特許請求の範囲の独立請求項の特徴を備える方法および紡績機によって達成された。
【0007】
本発明によると、このような作動方法は、第1に、糸欠陥の検出により、糸が繊維ストランドから分離して糸切れが生じるように紡績工程を中断することを特徴とする。
さらに、紡績工程の中断後、継ぎ合わせ工程を少なくとも部分的に紡績部により開始する。この継ぎ合わせ工程では、以下の段階を実行する。
【0008】
まず、渦室の出口開口と引き出し装置との間の領域で、紡績部の第1吸引ユニットを利用して、糸端に対する吸引作動を行う。
ここで、第1吸引ユニットは、たとえば、制御調節装置によって支援されたアドレス可能バルブを介して真空源に接続されており、起動または停止することができる。
糸端に対する吸引作動に続いて、第1吸引ユニットの領域で、糸欠陥を含む端部を分離する。たとえば、この場合は、カッターである紡績部の糸切断ユニットを利用する。
糸は、紡績工程時に糸を巻き取るボビンから、糸欠陥が糸切断ユニットよりも後ろに位置し糸から確実に分離できる程度の長さまで、前もって巻き戻される。
【0009】
分離工程の完了後、残った糸の糸端が、渦室を通じて紡績方向と逆方向に案内される。渦室では、この目的のために、紡績方向とは逆方向に作用する気流が生成されている。そして、このような気流は、渦室の出口開口を通じて渦室内に糸端を吸引する。
また、このような気流は、渦室または渦室の引き出しチャネルにつながる1つまたは複数の空気噴射ノズルを利用して生成される。これにより、糸端が渦室の入口開口を通じて渦室から再び取り出される。
それぞれの空気噴射ノズルは、糸形成要素の壁を貫通して糸の引き出し方向と逆方向で引き出しチャネルにつながる穿孔として設計されるのが好ましい。
【0010】
この領域で、たとえば、糸が保守員または保守ロボットにより把持され、後続して行われる糸端と繊維ストランドの端部との結合のために準備される(決められた長さまで切断する、糸端を梳く等)。
糸端が用意されたら、引き出し装置(ボビンを駆動する巻取装置、この巻取装置の上流にある独立した引き出しローラ対等を含み得る)を再び作動させる。
同時に、または、その直後に、渦室に向かって移動する糸端を、送出装置によって供給される繊維ストランドの端部に重ね合わせる。
送出装置は、この段階で再作動する(すなわち、中間的な停止を挟む)。送出工程は、たとえば、糸端が該糸端を検出する糸センサを通過した後に開始することができる。
【0011】
最後に、糸端と、この糸端が重ね合わされた繊維ストランドの端部とを、送出装置の作動により、接合した状態で渦室に引き込む。
重ね合わせによってできた糸端と繊維ストランドとの重複領域は、空気ノズルの有効範囲に到達する。このとき、空気ノズルは再び圧縮空気を受けている(これらの空気ノズルにより、供給された繊維素材の繊維が撚られる)。
この時点で、撚りのある所望の糸が渦室内で形成される。
これにより継ぎ合わせ工程が完了する。繊維ストランドを渦室に供給し、渦室内で生成された糸を引き出すことにより、実際の紡績工程を続行することができる。
【0012】
本発明の方法により、それぞれの紡績部で糸欠陥が除去され、このような糸欠陥の除去後に残った糸端が継ぎ合わされる。ここで、必要ならば、保守ロボットの追加適用を完全に省略することができる。
したがって、必要な糸処理操作装置を紡績部に加えて、継ぎ合わせ工程を独立して実行できるようにすると良い。
たとえば、渦室の入口開口の領域にある糸端を、紡績部に割り当てられた第2吸引ユニットで把持するのが好ましく、同じく紡績部に割り当てられた糸端準備装置に供給する(糸端準備装置は、繊維ストランドの端部と結合できるように糸端を準備する)ことができるのが好ましい。
たとえば、糸端準備装置は、第2吸引ユニットの吸引経路に配置して、吸引作動後に糸端の部分が糸端準備装置の領域に自動的に位置するようにすることができる。
さらに、第2吸引ユニットおよび/または糸端準備装置は、紡績部に直接割り当てるか、または紡績部に沿って移動する保守ロボットに統合することができる。
極端な例では、すべての紡績部をこの方法で同時に再開することができる。
さらに、糸欠陥が検出された場合、保守ロボットが到達するまでの通常の待ち時間がなくなるため、糸欠陥の除去を直接開始することができる。または、少なくともその待ち時間を、糸欠陥の除去と渦室への糸端の再供給に利用することができる。
【0013】
さらに、特に糸監視ユニットによって糸欠陥が検出された場合の紡績工程が、繊維ストランドを供給する1つの送出装置と引き出し装置との移送速度を減速することで中断されると良い。このような減速は、減速の完了後に繊維ストランドから糸が分離することで形成された糸端が、渦室の出口開口と引き出し装置との間に配置されるように生じる。
先行技術では、紡績工程の中断後、ボビンがその慣性により急停止できないため、既存の糸端が必然的にボビンに巻き取られる。これに対し、本発明の方法では、巻き取りを効果的に防ぐことができる。
【0014】
エアジェット紡績機は、一般に、送出装置と引き出し装置との移送速度に関する特定の基本パラメータを、要求される糸製造のために観察する必要があることを特徴とする。
たとえば、高品質な糸の製造では、渦室の内部で繊維素材に所望の撚りをかけるために、送出装置と引き出し装置とが特定の限界値を超えなければならない。
上述の移送速度を徐々に落とした場合、すなわち、数秒以内で落とした場合、渦室に移送される繊維素材が少なすぎるか、または渦室から糸を引き出す速度が繊維素材の送出に比べて速すぎるために、糸の製造を行えないポイントに到達するのが好ましい。
この時点で、糸端が形成され、その糸端が引き出し装置の残存移送速度に応じて巻取装置の方向に移動する。
【0015】
紡績工程の中断の範囲内における移送速度は、個別の送出装置の停止後に糸端が渦室の出口開口と引き出し装置との間に位置するように、ゼロまで減速すると良い。
したがって、渦室内での糸の形成を、個別の移送速度を唐突に減速せずに、徐々に中断することが必要である。
それぞれの糸端は、個別の移送速度を相対的に調整することにより形成される。
このとき、糸の製造は、糸が後続の繊維素材から分離するように中断される。
この時点での移送速度は実際の糸製造工程時よりも大幅に遅いため、引き出し装置もまた、規定の端部位置が実現されるように、すなわち糸端が引き出し装置のボビンの表面ではなく上述した位置に配置されるように、選択的に減速させることができる。
減速した移送速度でも製造された糸がボビンに均一に巻き取られるように、糸を縦走させる既存の装置の速度を減速する(または中央で停止させる)と好適である。
これで、上述した継ぎ合わせ工程を実行するために、糸端を上述した位置で第1吸引ユニットにより把持することができる。
【0016】
第1吸引ユニットを利用して糸を吸引した後、糸欠陥を含む糸の端部を切断する前に、第1吸引ユニットと引き出し装置との間の領域に延在している糸の部分を糸操作部で把持し、出口開口の方向に部分的に移動して、糸ループを形成すると特に良い。
ただし、糸操作部を省略し、渦室内の低圧を利用して出口開口を介して糸端を吸引するだけでもよい。
ただし、旋回自在に設置されたレバー等として設計し得る糸操作部は、再供給を支援できることがわかっている。
第1吸引ユニットを利用して糸端を適切に吸引した後、このようなレバーを糸端(または、引き出し装置と第1吸引ユニットの吸引開口との間にある糸端の部分)に接触するように旋回させる。
さらなる旋回作動により、いわゆる、糸ループが形成され、糸端が引き出し装置から渦室の出口開口の領域を経由して延在するようになる。
糸欠陥を含む糸部分を糸切断ユニットによって除去すると、残った糸端は、既に出口開口の領域に直接配置されているため、渦室に確実に吸い込まれる。
機械的な糸操作部の代替または追加として、気流を利用して第1吸引ユニットから糸端を動かす糸操作部を適用できることももちろん明白である。
ここでは、第1吸引ユニットの外部でのみ機能し、このような第1吸引ユニットから糸端を引き出す気流を適用することができる。
また、第1吸引ユニット内で気流を生成し、糸欠陥を除去した後にこのような気流で糸端を第1吸引ユニットから押し出すことも可能である。
継ぎ合わせ工程時に糸端を渦室の出口開口の方向に移動するために、生成された気流が、その始点に関係なく、渦室の出口開口の方向で効果を有すると良い。
【0017】
渦室を介して逆供給する前に、糸欠陥を含む糸部分を分離した後に第1吸引ユニットの領域にある残った糸の糸端を、気流を利用して渦室の出口開口の領域に吹き込むと特に良い。
たとえば、このような気流は、第1吸引ユニットの構成部分として、または、渦室の出口開口の領域に配置された独立した構成要素として設計された送風装置により生成することができる。
いずれの場合も、このような気流は、糸端を出口開口の方向に選択的に移動する役割を果たす。出口開口の領域では、糸端が空気噴射ノズルによって生成された吸引気流によって把持され、糸形成要素の引き出しチャネルに吸引され、そこから渦室の入口開口の領域に吹き込まれる。
【0018】
渦室の内部に延在し糸が通過する引き出しチャネルが、渦室を通じて糸端を逆供給する前および/または最中に、入口開口の方向に向かう気流を受けると特に良い。
これにより、糸の逆供給が継ぎ合わせ工程中に積極的に支援され、糸端が入口開口の上流の領域に確実に到達する。
たとえば、このような気流は、糸端を出口開口に案内する前に渦室内で低圧を生成することにより生成することができる。
糸端が引き出しチャネルに吸引された直後、引き出しチャネル内で圧縮空気を追加または代替で生成し、糸端を渦室の入口開口の方向に効果的に押し出すことができる。
たとえば、このような気流の生成は、紡績方向とは逆方向で引き出しチャネルにつながる1つ以上の噴射ノズルを利用して実現することができる。
【0019】
さらに、糸欠陥を含む糸の端部を切断する前に、渦室の内部に延在し出口開口に通じる糸形成要素を移動して、引き出し装置と渦室の出口開口との間の距離を減らすと良い。
結果として、糸欠陥の切断後に、渦室内の低圧で糸を十分に吸引することができる。
この目的のために、糸形成要素は、軸方向で移動可能に設けられるのが好ましい。
【0020】
また、第2吸引ユニットの吸引ノズルを、糸端を把持する前に、スタンバイ位置から第1継ぎ合わせ位置に移動すると良い。このような第1継ぎ合わせ位置では、吸引ノズルの吸引開口が、渦室の入口開口の領域に配置される。
吸引ノズルは、第1継ぎ合わせ位置において、吸引ノズルの吸引開口が紡績ノズル(渦室を囲む装置)の入口開口を囲む領域に気密の態様で接触する場所を占めることができる。
その後、吸引ノズルが低圧を受けると、紡績方向と逆方向に向かう気流が渦室内で発生し、したがって引き出しチャネルの内部でも発生する。このような気流は、糸端の出口開口への供給と、糸端の吸引ノズルの領域への逆供給とを実現または支援する。
そして、吸引ノズルは、駆動装置を利用して、その紡績位置(吸引ノズルが紡績ノズルと接触しない)から第1継ぎ合わせ位置まで旋回することができるのが好ましい。
【0021】
また、糸端(まだ渦室の外に位置している)を繊維ストランドの端部に重ねる前に、第2吸引ユニットの吸引ノズルを、第1継ぎ合わせ位置から第2継ぎ合わせ位置に移動すると良い。このような第2継ぎ合わせ位置では、吸引ノズルの吸引開口が、繊維ストランドを送出する送出装置のフロントローラ対とこのフロントローラ対の紡績方向上流に位置する送出装置の送出部との間に配置される。
たとえば、上流の送出部には、引き伸ばしユニットとして設計された送出装置の一部であるエプロンローラ対が含まれる。
吸引ノズルを旋回させ、それによって糸端をこの段階で添付することにより、糸端が渦室に進入するときに引き出しローラによって確実に案内される。
したがって、糸端の繊維ストランドの端部への重ね合わせは、フロントローラ対の領域で行われる。これにより、糸と繊維ストランドとの間の所望の接触が確実に行われてから、糸と繊維ストランドとがさらなる糸製造のために渦室に接合した状態で進入する。
【0022】
渦室の紡績方向上流に配置された送出装置のフロントローラ対の少なくとも1つのローラが、吸引ノズルがスタンバイ位置から第1継ぎ合わせ位置に移動する前に、紡績位置から継ぎ合わせ位置に移動すると良い。このような継ぎ合わせ位置で、フロントローラ対の両ローラは相互に離間している。
これにより、フロントローラ対の2つのローラ間に空き領域が作成され、吸引ノズルをその第1継ぎ合わせ位置に旋回させることができる。
該当するローラは、(駆動装置を利用して)回転軸を中心に旋回するように設計することができる。
【0023】
吸引ノズルを第2継ぎ合わせ位置に移動してから、まだ渦室の外に位置し吸引ノズルにより固定されている糸端を繊維ストランドの端部に重ね合わせるまでの間に、継ぎ合わせ位置にあるフロントローラ対のローラを、両ローラが相互に接触する紡績位置に移動すると特に良い。
これにより、上述した糸端と繊維ストランドとの間の重ね合わせ領域の案内を、渦室への進入時に確実に実行することができる。
また、紡績位置にある個別の可動部品の移動は、糸欠陥を検出した後に、時間制御された態様で実行することができる。
さらに、紡績部は、対応するセンサを含み得る。これらのセンサは、糸端が所定の基準点に存在することを監視して、各手順段階をそれぞれのセンサ信号により個別に開始または完了できるようにする。
【0024】
また、紡績工程時に引き出し装置によって引き出された糸をボビンに巻き付けるときに糸切れ(すなわち、巻き付け時の糸の意図せぬ分離)が発生した場合、既に、ボビン上にある糸の糸端を、対応する紡績部の操作装置または保守ロボットによってボビン表面で手動で把持し、第1吸引ユニットの領域に移動して、その後上述した継ぎ合わせ処理を行うと良い。
言い換えると、本発明の方法は、糸欠陥の検出後に糸を紡績部により継ぎ合わせるだけでなく、さらなる展開を可能にする。
さらに、糸切れが発生した後、対応する紡績部の要素により継ぎ合わせ工程を実行することができる。
ただし、糸切れは、クリヤラカットに比べて発生頻度が比較的少ないため、保守ロボットを後続の紡績工程のために作動させ、その保守ロボットにより少なくとも糸端をボビンから取り上げて(たとえば、ボビンが回転しているときに表面に吸引する)第1吸引ユニットに案内することもできる。
【0025】
また、渦室の上流にある送出装置を利用してケンスから繊維ストランドを取り出す際、紡績工程時の満レベルをセンサで監視し、このような満レベルが特定の量を下回ったときに、糸が繊維ストランドから分離し糸端が形成されるように紡績工程を中断し、ケンスを満ケンスと交換できるようにすると良い。
このとき、満ケンスの繊維ストランドの端部を、まだ送出装置に位置している繊維ストランドの端部と(手動により、または対応する操作装置を利用して)結合するのが好ましい。その後、または同時に、糸端を第1吸引ユニットで吸引し、紡績部によって自律的に実行される本発明の継ぎ合わせ工程を開始する。
したがって、この場合、紡績部を起動するための保守ロボットの適用も省略することができる。
【0026】
また、紡績工程時に、引き出し装置の下流に配置されたボビンに糸を巻き付けると良い。
このとき、ボビンの満レベルをセンサで監視し、特定の満量を超えたときに、糸が繊維ストランドから分離し糸端が形成されるように紡績工程を中断する。紡績工程の中断後、糸端は、第1吸引ユニットの領域に位置する。
この段階で、このような糸端は、紡績部の第1吸引ユニットによって吸引することが可能な所定の位置を占めている。
続いて、本発明の継ぎ合わせ工程を実行し、このような工程において上述した糸端を繊維ストランドに重ね合わせ、糸端と繊維ストランドとを接合した状態で渦室に案内する。
次に、継ぎ合わせ工程後に渦室から出てきた糸端を、保守ロボットにより、または紡績部に割り当てられた糸切断ユニットにより切断し、このような切断後に紡績部によって製造された糸を中間的に格納する。
中間的な格納は、その間に製造された糸を保守ロボットの糸格納部またはそれぞれの紡績部に割り当てられた糸格納部に吸引することによって実行することができる。
中間的な格納時に、満巻のボビンを空のボビンに交換し、その空のボビンに(好ましくはロボットにより)糸を巻き付ける。
ボビン交換の完了後は、紡績工程を通常どおり続行することができ、糸の糸欠陥を再び監視する。
【0027】
また、継ぎ合わせ工程後に渦室から出てきた糸を切断するステップ、糸の切断後に紡績部によって製造された糸を中間的に格納するステップ、満巻のボビンを空のボビンに交換するステップ、および/または中間的に格納された糸を空のボビンに巻き付けるステップを、保守ロボットにより実行すると良い。
または、紡績部に処理操作装置を割り当てて、このような装置で上述したステップの1つまたは複数を独立して担うこともできる。
【0028】
また、紡績工程時に引き出し装置の下流に配置されたボビンで糸を巻き取り、ボビンの満レベルをセンサで監視する、本発明のエアジェット紡績機の作動方法が、以下のステップを含んでいると良い。
満レベルの特定の値が検出されたときに、まず、紡績工程を糸が繊維ストランドから分離するように中断する。
次に、紡績部を巡回する保守ロボットにより、紡績部に継ぎ糸を提供する。この継ぎ糸は、第1吸引ユニットによって吸引する。
第1吸引ユニットで糸端を固定した後、本発明の継ぎ合わせ工程を実行し、このような継ぎ合わせ工程の完了後に、撚りのある糸を再び渦室から引き出す。
渦室から出てきた糸を切断する。ここで、ボビン側の糸端を満巻のボビンで巻き取り、渦室から出てきた糸を糸格納部を利用して中間的に格納する。
ボビンの交換後、格納された糸の端部を空のボビンに巻き付ける。これにより、糸格納部が再び空になる。
このプロセスが完了した後、実際の紡績工程を続行することができる。
【0029】
この継ぎ合わせの際、継ぎ糸を保守ロボットにより第1吸引ユニットに提供し、ならびに/または継ぎ合わせ工程後に渦室から出てきた糸を切断するステップ、糸の切断後に紡績部により製造された糸を中間的に格納するステップ、満巻のボビンを空のボビンに交換するステップ、および/もしくは中間的に格納された糸を空のボビンに巻き付けるステップを保守ロボットにより実行するとさらに良い。
または、この場合、1つ以上のステップを紡績部に割り当てられた処理操作装置を利用して実行してもよい。
【0030】
さらに、上述した1つ以上のステップを実現できるエアジェット紡績機が提案される。
このエアジェット紡績機は、保守ロボットを追加適用しなくても、クリヤラカット、すなわち、糸欠陥の除去を自律的に実行し、続いて、継ぎ合わせ工程(紡績部に提供された繊維ストランドの端部への糸端の添付)を実行するように設計されるのが好ましい。
紡績部は、渦室の出口開口と引き出し装置との間で糸を吸引できる第1吸引ユニットを含む。
具体的には、第1吸引ユニットは、糸欠陥の検出後に紡績工程を中断することによって形成された糸端を吸引する役割を果たす。
第1吸引ユニットは、低圧源に作動可能に接続される。このような低圧源の起動、または、このような低圧源への第1吸引ユニットの接続は、糸欠陥を検出した後に行われる。
したがって、実際の紡績工程中に糸が第1吸引ユニットにより損傷することはない。
さらに、紡績部は、カッター等の糸切断ユニットを含む。この糸切断ユニットにより、第1吸引ユニットによる吸引後に渦室の出口開口と引き出し装置との間に存在する糸を切断することができる。
したがって、糸欠陥を含む糸端の切断が糸切断ユニットによって実現する。
残った糸の糸端を、保守ロボットや保守員を介在させずに、紡績方向と反対の方向で渦室を介して逆供給するために、紡績部は、少なくとも1つの空気噴射ノズルを独自に備えている。
さらに、このような空気噴射ノズルは、入口開口に向かう空気が渦室または渦室に突出する糸形成要素の引き出しチャネルに供給されるように並べられる。糸は、このような引き出しチャネルを通過する。
空気噴射ノズル(複数が存在し得る)は、空気チャネルから糸形成要素の壁の少なくとも一部に延在する穿孔により形成されるのが好ましい。
穿孔は、糸の引き出し方向とは反対側の方向で糸形成要素の引き出しチャネルにつながる。そのため、引き出しチャネルから渦室を通って渦室の入口開口の領域に至る気流が空気噴射ノズルによって生成される。
空気噴射ノズルが糸端の逆方向での供給時に空気を受けると、気流が発生して渦室の出口開口の領域にある糸端を捕らえ、渦室内に吸い込み、最終的に渦室の入口開口の領域に吹き込む。
たとえば、その後、保守ロボットを使用するか手動により、以降の継ぎ合わせ工程に備えて糸端を準備することができる。
【0031】
また、上述した糸部分の切断に続いて、後続する継ぎ合わせ工程に備えて糸端を準備するために、エアジェット紡績機は、それぞれの紡績部に割り当てられた糸端準備装置を含むことができるのが好ましい。このような糸端準備装置は、後続する糸端と繊維ストランドの端部との接合に備えて糸端を準備するために、紡績部に割り当てることができる。
糸端準備装置は、1つまたは複数の紡績部で糸端の準備を行うことができる。
【0032】
さらに、エアジェット紡績機は、少なくとも、第2吸引ユニットを含むことができる。
このような第2吸引ユニットは、紡績部に割り当てることができ、上述した糸端の準備の前に渦室の出口開口の領域で糸端を吸引して糸端準備装置の有効範囲に移動することができる。
エアジェット紡績機の実施例によっては、糸端準備装置および/または第2吸引ユニットを、たとえば、エアジェット紡績機を巡回する保守ロボットに配置することができる。
また、紡績部自体に糸端準備装置および/または第2吸引ユニットを装備し、紡績部ごとに糸端準備装置および/または第2吸引ユニットが存在するようにしてもよい。
または、それぞれの紡績部で継ぎ合わせ工程を実行できるように、糸端準備装置および/または第2吸引ユニットを複数の紡績部、たとえば2つの紡績部に配置してもよい。
【0033】
さらに、第1吸引ユニットと引き出し装置との間に延在する糸部分を渦室の出口開口の方向に移動できるようにする糸操作部を紡績部に割り当てると良い。
これらの手段により、糸欠陥の除去後に残った糸端を、渦室の出口開口のできるだけ近くに移動できる。
これにより、上述した継ぎ合わせ工程時に糸を渦室の内部に配置された糸形成要素の引き出しチャネルを通じて紡績方向とは逆方向に移動するために必要な、糸端の渦室への吸引が促進される(紡績方向の糸端を、紡績ノズルに到達する前に、渦室に供給される繊維ストランドに接触させる必要がある場合)。
【0034】
糸操作部は、スイベルレバーを含むと特に良い。このようなスイベルレバーは、旋回軸を中心に回転可能であり、糸部分と接触できる接触部を有している。
スイベルレバーは、非作動位置(紡績工程時)では、糸と接触しない位置を占めるのが好ましい。
糸欠陥が検出された場合、まず、紡績工程の中断によって生成された糸端を、第1吸引ユニットによって把持し、保持する。
続いて、スイベルレバーを継ぎ合わせ位置に旋回させる。この位置において、スイベルレバーは、糸(引き出し装置と第1吸引ユニットとの間にある糸部分)と接触し、このような糸部分を紡績ノズルの出口開口の領域に移動する。
糸欠陥の切断後に渦室内で低圧を生成すると、糸端を吸引して渦室内に挿入することができる。
上述したように、代替または追加で、気流を利用して第1吸引ユニットから糸端を移動する糸操作部を作動させることもできる。
この場合、糸操作部は、第1吸引ユニットの外部でのみ効果を発揮し該ユニットから糸端を引き離す気流を生成できるように配置することができる。
また、糸操作部または糸操作部の送風ユニットを第1吸引ユニットに入れ、そこで、糸端を第1吸引ユニットから押し出す気流を生成することもできる。
継ぎ合わせ工程時に糸端を渦室の出口開口に向けて移動するために、生成された気流が、その始点に関係なく、このような方向で効果を有すると良い。
【0035】
さらに、紡績部に送風ユニットを割り当て、渦室の外部で渦室の出力開口の方向に向けて気流を生成できるようにすると良い。
たとえば、この送風ユニットは、第1吸引ユニットの構成部分として設計するか、または、渦室の出口開口の領域に独立した部分として配置することができる。
この送風ユニットは、糸欠陥の除去後に残った糸を、このような糸が第1吸引ユニットまたは引き出し装置から解放された後に、渦室の出口開口の方向に吹き飛ばす。その後、糸は空気噴射ノズルによって生成された気流によって引き出しチャネルに吸引され、引き出しチャネル内の気流によって渦室の入口開口の領域に移動する。
【0036】
また、第1吸引ユニット、糸切断ユニット、および/または、糸操作部を、渦室を包含する収容部に固定すると良い。
この場合、これらの構成要素は構造単位を形成し、追加の保持装置や支持装置が不要になる。
さらに、糸切断ユニットは、第1吸引ユニットの吸引開口の上流に配置するか、または、吸引チャネル自体に配置することができる。
上述した収容部への固定は、直接行う必要はない。
第1吸引ユニット、糸切断ユニット、および/または糸操作部をまず相互に連結するか、または支持部に連結してから、収容部(または紡績機のフレーム構造)に連結し得ることも自明である。
【0037】
渦室が、糸用の引き出しチャネルを有する糸形成要素を含んでいると良い。このような糸形成要素は、渦室内に突出し、引き出しチャネルが出口開口につながっている。また、糸形成要素は、入口開口に対して相対的に移動可能である。
糸形成要素を軸方向に移動することで、糸欠陥の除去により生じた既存の糸端を糸形成要素の引き出しチャネルに吸引しやすくなるのが好ましい。これは、糸形成要素が延長しているときの引き出し構造と紡績ノズルとの間の距離が、実際の糸製造時の状態に比べて短くなるからである。
したがって、低圧が適用された渦室での糸の吸引作動が強化され、糸形成要素への糸端の挿入が促進される。
【0038】
また、第2吸引ユニットが移動可能に取り付けられた吸引ノズルを含んでいると良い。このような吸引ノズルは、スタンバイ位置と、吸引ノズルの吸引開口が渦室の入口開口の領域に位置する第1継ぎ合わせ位置との間を移動することができる。
吸引ノズルは、継ぎ合わせ工程時に入口開口から出ている糸端を吸引するために、入口開口を囲む紡績ノズルの領域に直接設定することができる(継ぎ合わせ位置)。
ただし、紡績工程時には、繊維ストランドの繊維素材を紡績ノズルに障害なく挿入できるようにする必要がある。
この段階で、吸引ノズルは、紡績位置に旋回し、繊維ストランドにぶつからない領域に配置される。
【0039】
吸引ノズルが第1継ぎ合わせ位置と第2継ぎ合わせ位置との間を移動できると特に良い。第2継ぎ合わせ位置において、吸引ノズルの吸引開口は、送出装置のフロントローラ対と該フロントローラ対の上流に位置する送出装置の送出部との間に配置される。
第2吸引ユニットによって吸引された糸も、フロントローラ対の2つのローラの間を通ってこの位置に到達する。
糸端の準備が完了した後、糸端を紡績方向で渦室に再び供給すると、繊維ストランドの端部が糸端に重ね合わされる。その後、糸端と繊維ストランドとが、相互に隣接して配置される両フロントローラによって案内される。
これにより、糸端と繊維ストランドとが供給工程時に相互に接触したままとなり、渦室の内部で糸端と繊維ストランドとが気流を受けることができる。
【0040】
また、吸引ノズルが回転軸を中心に回転可能であると良い。
たとえば、このような回転は、駆動装置を利用して、吸引ノズルが第1継ぎ合わせ位置、第2継ぎ合わせ位置、または、紡績位置に任意に旋回できるように実行することができる。
たとえば、回転軸は、糸端準備装置を移動せずに吸引ノズルを旋回させることができるように、吸引ノズルの吸引開口と糸端準備装置との間に位置する(この場合、糸端準備装置は紡績機の軸受構造に連結することができる)。
また、吸引ノズルを軸受に回転可能に取り付け、このような軸受を低圧源に接続された空気チャネルに連結し、その途中に糸端準備装置を配置することもできる。
【0041】
また、2つの紡績部ごとに1つの共有糸端準備装置を配置すると良い。ここで、それぞれに独立した吸引ノズルを備える両紡績部の渦室は、このような糸端準備装置と作動可能に接続できる。
この場合、糸端準備装置は、割り当て先の紡績部の領域に移動不可な態様で固定し、対応する管接続を介して吸引ノズルに接続することができる。
たとえば、この接続では、両方の吸引ノズルを回転可能な軸受に設置し、それぞれを剛性に取り付けられた吸引チャネルにつなげて、このような吸引チャネルを糸準備装置に融合するか、または、このような吸引チャネルで糸準備装置を包含することができる。
この場合、回転可能な軸受は、移動可能な吸引ノズルと、剛性の管接続部品との間の交差部を形成することができる。
また、吸引ノズルまたは剛体の管接続に1つまたは複数の弁を設け、一方または両方の吸引ノズルを低圧源に任意で接続してそれぞれの紡績部での継ぎ合わせ工程を支援できるようにすることも考えられる。
【0042】
送出装置が入口開口の上流にフロントローラ対を有し、このようなフロントローラ対の少なくとも1つのローラが、紡績位置から、両ローラが相互に離間する継ぎ合わせ位置に移動できると特に良い。
継ぎ合わせ位置における2つのローラ間の距離は、紡績部に割り当てられた第2吸引ユニットの吸引ノズルが、フロントローラ対にぶつかることなく、紡績ノズルの入口開口の領域にある紡績位置まで移動できるように測定すべきである。
【0043】
渦室が紡績ノズルの構成部分であり、このような渦室が紡績位置から継ぎ合わせ位置へ好ましくは旋回作動により移動できるとさらに良い。
この種の移動は、特定の状況において、第2吸引ユニットの吸引ノズルを紡績ノズルに配置できるようにするために有利である。
この場合、紡績ノズルは、吸引ノズルがその第1継ぎ合わせ位置に旋回する前に、紡績位置から継ぎ合わせ位置に移動する。
この旋回作動は、吸引ノズルの旋回作動時に、フロントローラ対の2つのフロントローラのうち1つだけを旋回させればよいことを意味する。
吸引ノズルが第1継ぎ合わせ位置に移動する際に、紡績ノズルといずれかのフロントローラとがそれらの紡績位置にとどまっていると、紡績部の寸法によっては、フロントローラと吸引ノズルとがぶつかる可能性がある。
【0044】
また、糸格納部が引き出し装置の下流に配置されていると良い。
たとえば、糸格納部は、真空源に接続した吸引管として設計することができる。
具体的には、糸格納部は、紡績工程が中断されたときに、および/または継ぎ合わせ工程時に、所定の量の糸を中間的に格納する場所として機能する。これにより、糸と接触する部品の加速度またはブレーキ速度の違いにより、糸切れが直接的に引き起こされることがなくなる。
【0045】
エアジェット紡績機は、上述した1つまたは複数のステップに応じてエアジェット紡績機を駆動するように設計された制御管理装置を含んでいると良い。
個々のバリエーションとその利点については、上述および後述の説明を参照されたい。
本発明の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明を添付の図面と組み合わせることでさらに明らかとなる。