特許第6180815号(P6180815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180815
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ボルテージレギュレータ
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   G05F1/56 320S
   G05F1/56 310F
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-130493(P2013-130493)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2015-5171(P2015-5171A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】津崎 敏之
【審査官】 東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−5847(JP,A)
【文献】 特開2005−51854(JP,A)
【文献】 特開2002−149245(JP,A)
【文献】 特開2011−191992(JP,A)
【文献】 特開2009−176008(JP,A)
【文献】 特開2009−193414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電圧を制御する負帰還回路を構成する定電圧制御回路と、出力電流を制御する負帰還回路を構成する過電流保護回路と、を備えたボルテージレギュレータであって、
前記定電圧制御回路は、
第一基準電圧と帰還電圧を比較する第一差動増幅回路と、前記第一差動増幅回路の出力電圧で制御される出力トランジスタを備え、
前記過電流保護回路は、
出力電流を測定するための抵抗と、前記抵抗の両端の電圧の差を測定する第二差動増幅回路と、前記第二差動増幅回路の出力電圧と第二基準電圧を比較するコンパレータと、前記コンパレータの検出信号によって制御されるスイッチと、を備え、
前記出力電流が過電流保護設定値以上流れた時に、前記第二差動増幅回路の出力電圧が前記スイッチを介して前記第一差動増幅回路に入力され、前記出力トランジスタの制御を、前記定電圧制御回路の前記帰還電圧による制御から、前記過電流保護回路の前記第二差動増幅回路の出力電圧による制御に切り替える、
ことを特徴とするボルテージレギュレータ。
【請求項2】
前記第一基準電圧と前記第二基準電圧は等しい電圧である、
ことを特徴とする請求項1に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項3】
前記第一差動増幅回路は、第一非反転入力端子と第二非反転入力端子と反転入力端子を有し、
前記第一非反転入力端子に前記帰還電圧が入力され、前記第二非反転入力端子に前記第二差動増幅回路の出力電圧または接地電圧が入力され、前記反転入力端子に前記第一基準電圧が入力される、
ことを特徴とする請求項1に記載のボルテージレギュレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定電圧を出力するボルテージレギュレータに関し、より詳しくは、出力端子に過電流が流れたときに、出力電流を小さく絞って回路を保護する過電流保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルテージレギュレータは、リチウムイオン2次電池やバッテリーなどの高い電源電圧を入力し、マイコンなどのデバイスへ電源電圧よりも低い電圧を出力する。仮に、何らかの理由によりボルテージレギュレータの出力端子がGND電圧(0V)にショートされた場合、ボルテージレギュレータは、出力トランジスタの抵抗値を下げるように制御するので、出力端子に大電流が流れる。ボルテージレギュレータは、出力端子に大電流が流れることから回路を保護するために、過電流保護回路が必要となる。
【0003】
図3は、従来のボルテージレギュレータのブロック図である。従来のボルテージレギュレータは、定電圧制御回路320と過電流保護回路321を備えている。
電源端子10と接地端子11の間に入力電圧源101が接続される。出力端子12と接地端子11の間に負荷抵抗103が接続される。電源端子10と出力端子12の間に、抵抗111と出力トランジスタ102が直列に接続される。
【0004】
定電圧制御回路320について説明する。差動増幅回路304は、反転入力端子に出力電圧Voutを分圧抵抗回路306により分圧した帰還電圧Vfbが入力され、非反転入力端子に基準電圧回路305の基準電圧Vrefが入力され、出力端子から電流I1を出力する。NPNトランジスタ308と抵抗307は、ソース接地増幅回路を構成する。出力トランジスタ102は、ゲートにソース接地増幅回路の出力電圧Vdrvが入力されことにより、出力電圧Voutを制御する負帰還が構成され、出力電圧Voutを設定電圧に制御する。
【0005】
過電流保護回路321について説明する。差動増幅回路312は、非反転入力端子に入力電圧源101の電圧Vinが入力され、反転入力端子に抵抗111に発生する電圧VRが入力される。差動増幅回路313は、非反転入力端子に差動増幅回路312の出力電圧が入力され、反転入力端子に基準電圧回路314の基準電圧Vref2が入力され、電流I2を出力する。電流I2は、NPNトランジスタ315とNPNトランジスタ316によりミラーされ電流I3となる。NPNトランジスタ316のコレクタは、差動増幅回路304の出力に接続される。
【0006】
ここで、出力端子12が接地端子11にショートされたような場合、帰還電圧Vfbは接地電圧Vssになっていくので、ソース接地増幅回路の出力電圧Vdrvが低下し、出力トランジスタ102がオンしていき、出力電流Ioutが増加する。従って、抵抗111による電圧降下により電圧VRは低くなるので、差動増幅回路312の出力電圧は高くなる。差動増幅回路312の出力電圧が基準電圧Vref2よりも電圧が高くなると、差動増幅器313はNPNトランジスタ315のコレクタに流す電流I2を増加する。従って、ミラー回路によりミラーされた電流I3が増加するので、NPNトランジスタ308のベース電流(I1−I3)は減少する。NPNトランジスタ308のベース電流が減少するため、ソース接地増幅回路の出力電圧Vdrvが上昇し、出力電流Ioutは減少する。このように、出力電流を制御する負帰還が構成され、出力電流Ioutは過電流保護設定電流に制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−31672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したような従来のボルテージレギュレータは、過電流保護回路の動作時に、出力電圧制御の負帰還と出力電流制御の負帰還が動作している。従って、出力電流制御の負帰還のゲインが出力電圧制御の負帰還のゲインより大きい場合は、出力電圧Voutが発振しやすいため、大きい容量の位相補償回路を必要とするので、チップ面積が増加してしまう。また、出力電流制御の負帰還のゲインが出力電圧制御の負帰還のゲインより小さい場合は、出力電圧制御の負帰還の影響が強いため、出力電流Ioutの過電流保護が効きにくい、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来の課題を解決するために、本発明の過電流保護回路を備えたボルテージレギュレータは、第一基準電圧と帰還電圧を比較する第一差動増幅回路と、第一差動増幅回路の出力電圧で制御される出力トランジスタを備えた定電圧制御回路と、出力電流を測定するための抵抗と、抵抗の両端の電圧の差を測定する第二差動増幅回路と、第二差動増幅回路の出力電圧と第二基準電圧を比較するコンパレータと、コンパレータの検出信号によって制御されるスイッチを備えた過電流保護回路と、を備え、出力電流が過電流保護設定値以上流れた時に、第二差動増幅回路の出力電圧がスイッチを介して第一差動増幅回路に入力され、出力トランジスタの制御を定電圧制御回路による制御から過電流保護回路による制御に切り替える構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明過電流保護回路を備えたボルテージレギュレータによれば、面積の大きな素子の位相補償回路を必要とせず、出力電流を過電流保護設定値に精度良く安定して制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態のボルテージレギュレータを示すブロック図である。
図2】本実施形態のボルテージレギュレータの差動増幅回路の一例を示す回路図である。
図3】従来のボルテージレギュレータのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態のボルテージレギュレータについて、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態のボルテージレギュレータを示すブロック図である。
本実施形態のボルテージレギュレータは、定電圧制御回路120と過電流保護回路121を備えている。電源端子10と接地端子11の間に入力電圧源101が接続される。出力端子12と接地端子11の間に負荷抵抗103が接続される。電源端子10と出力端子12の間に、抵抗111と出力トランジスタ102が直列に接続される。
【0013】
定電圧制御回路120は、差動増幅回路104と、基準電圧回路105と、分圧抵抗回路106を備えている。分圧抵抗回路106は、出力端子12と接地端子11の間に接続される。差動増幅回路104は、第一非反転入力端子に分圧抵抗回路106の出力端子が接続され、第二非反転入力端子に過電流保護回路121の出力端子が接続され、反転入力端子に基準電圧回路105が接続され、出力端子は出力トランジスタ102のゲートに接続される。
【0014】
過電流保護回路121は、差動増幅回路112と、コンパレータ113と、基準電圧回路114と、スイッチ115及び116と、インバーター117を備えている。差動増幅回路112は、非反転入力端子に電源端子10と抵抗111の一方の端子の接続点が接続され、反転入力端子に抵抗111の他方の端子が接続される。コンパレータ113は、差動増幅回路112の出力端子が接続され、反転入力端子に基準電圧回路114が接続される。スイッチ115は、差動増幅回路112の出力端子と過電流保護回路121の出力端子の間に接続され、制御端子はコンパレータ113の出力端子が接続される。スイッチ116は、差動増幅回路112の出力端子と接地端子11の間に接続され、制御端子はコンパレータ113の出力端子がインバーター117を介して接続される。
【0015】
分圧抵抗回路106は、出力電圧Voutを分圧した帰還電圧Vfbを出力する。基準電圧回路105は、基準電圧Vrefを出力する。差動増幅回路104は、帰還電圧Vfbと基準電圧Vrefの差を増幅して、出力電圧Vdrvを出力トランジスタ102のゲートに出力する。これにより、出力電圧を制御する負帰還が構成され、出力電圧Voutは設定電圧に制御される。
【0016】
差動増幅回路112は、抵抗111の両端の電圧の差を増幅して出力する。コンパレータ113は、差動増幅回路112の出力電圧と基準電圧Vref2を比較し、その信号Vdを出力する。スイッチ115は、差動増幅回路112の出力電圧が基準電圧Vref2より高い、すなわち信号VdがHighの時にショートする。スイッチ116は、差動増幅回路112の出力電圧が基準電圧Vref2より低い、すなわち信号VdがLowの時にオンする。差動増幅回路112の出力電圧は、スイッチ115を介して、過電流保護回路121の出力端子から出力電圧V121として差動増幅回路104の第二非反転入力端子に入力される。差動増幅回路104は、帰還電圧Vfbと出力電圧V121の差を増幅して、出力電圧Vdrvを出力トランジスタ102のゲートに出力する。これにより、出力電流を制御する負帰還が構成され、出力電流Ioutは過電流保護設定電流に制御される。
【0017】
図2は、差動増幅回路104の一例を示す回路図である。
差動増幅回路104は、第一非反転入力端子201と、第二非反転入力端子202と、反転入力端子203と、出力端子204と、NMOSトランジスタ205、206、207と、PMOSトランジスタ208、209と、電流源210と、反転増幅回路211を備えている。
【0018】
NMOSトランジスタ205は、ゲートが第一非反転入力端子201に接続される。NMOSトランジスタ206は、ゲートが第二非反転入力端子202に接続される。NMOSトランジスタ207は、ゲートが反転入力端子203に接続される。各々のソースは、共通に電流源210と接続される。PMOSトランジスタ208は、ドレインがNMOSトラジスタ205及びNMOSトランジスタ206のドレインと反転増幅回路211の入力端子に接続される。PMOSトランジスタ209は、ドレインとゲートが共通にNMOSトラジスタ207のドレイン及びPMOSトランジスタ208のゲートに接続される。反転増幅回路211は、出力端子が出力端子204に接続される。
【0019】
第一非反転入力端子201に帰還電圧Vfb、第二非反転入力端子202に電圧V121、反転入力端子203に基準電圧Vrefが入力され、出力端子204は出力電圧Vdrvを出力する。
上述したように構成した差動増幅回路104は、入力される電圧に対して以下のように動作する。
【0020】
基準電圧Vrefに対して帰還電圧Vfbと電圧V121の両方が低い場合、PMOSトランジスタ208の流す電流がNMOSトラジスタ205とNMOSトラジスタ206の流す電流よりも大きい。従って、PMOSトランジスタ208のドレイン電圧は上昇し、出力電圧Vdrvは低下する。
【0021】
基準電圧Vrefに対して帰還電圧Vfbが高い場合、PMOSトランジスタ208の流す電流がNMOSトラジスタ205の流す電流よりも小さい。従って、PMOSトランジスタ208のドレイン電圧は低下し、出力電圧Vdrvは上昇する。このとき、NMOSトラジスタ206よりもNMOSトラジスタ205の抵抗が小さくなるため、NMOSトラジスタ205が支配的に電流を流す。
【0022】
基準電圧Vrefに対して電圧V121が高い場合、PMOSトランジスタ208の流す電流がNMOSトラジスタ206の流す電流よりも小さい。従って、PMOSトランジスタ208のドレイン電圧は低下し、出力電圧Vdrvは上昇する。このとき、NMOSトラジスタ205よりもNMOSトラジスタ206の抵抗が小さくなるため、NMOSトラジスタ206が支配的に電流を流す。
【0023】
次に、本実施形態のボルテージレギュレータの過電流保護動作について説明する。
通常動作時は、差動増幅回路112の出力電圧が基準電圧Vref2よりも低いので、コンパレータ113の出力VdetはLo出力となり、スイッチ115はオープンし、スイッチ116はショートする。従って、差動増幅回路104は、第二非反転入力端子に接地電圧Vssが入力されるので、第一非反転入力端子と反転入力端子の電圧、すなわち帰還電圧Vfbと基準電圧Vrefに基づいた電圧を出力する。
【0024】
出力端子12が接地端子11にショートされたような場合、帰還電圧Vfbは接地電圧Vssになっていくので、差動増幅回路104の出力電圧Vdrvが低下する。出力トランジスタ102はオンしていくので、出力電流Ioutは増加する。出力電流Ioutが増加すると、抵抗111の電圧降下により電圧VRは低くなっていき、差動増幅回路112の出力電圧は高くなっていく。差動増幅回路112の出力電圧が基準電圧Vref2よりも高くなると、コンパレータ113の出力VdetはHigh出力となり、スイッチ115はショートし、スイッチ116はオープンする。よって、差動増幅回路104の第二非反転入力端子には、差動増幅回路112の出力電圧と同じ電圧が入力される。このときの差動増幅回路112の出力電圧は、基準電圧Vref2と同じ値である。出力電流Ioutが更に増加すると、差動増幅回路112の出力電圧は帰還電圧Vfbよりも高くなるので、差動増幅回路104は第二非反転入力端子と反転入力端子の電圧、すなわち差動増幅回路112の出力電圧と基準電圧Vrefに基づいた電圧を出力する。従って、差動増幅回路104は、過電流保護回路121の出力電圧に基づいて、出力トランジスタ102のゲートを制御して、過電流を防止する。
【0025】
ここで、コンパレータ113は、チャタリング防止のために、ヒステリシスが付加されていることが好ましい。また、基準電圧Vrefと基準電圧Vref2は、差動増幅回路104が第一非反転入力端子の制御から第二非反転入力端子の制御に滑らかに切り替わるために、同じ電圧であることが好ましい。
【0026】
先ず、出力電流Ioutが過電流保護設定値よりも小さい場合を説明する。
差動増幅回路112の出力電圧は、出力電流Ioutに比例して上昇するが、基準電圧Vref2よりも低いので、コンパレータ113の出力VdetはLow出力となる。従って、スイッチ115はオープン、スイッチ116はショートとなるので、過電流保護回路121の出力端子は接地端子Vssへ接続され、出力電圧V121は0Vとなる。従って、差動増幅回路104は帰還電圧Vfbが非反転入力信号として働き、定電圧制御回路120の負帰還により出力電圧Voutは設定電圧に制御される。このとき、差動増幅回路104の働きによって、第一非反転入力端子の電圧は反転入力端子の電圧と等しくなるので、帰還電圧Vfbは基準電圧Vrefと等しくなる。
【0027】
次に、出力電流Ioutに過電流保護設定値以上の出力電流が流れた場合を説明する。
差動増幅回路112の出力電圧が上昇して基準電圧Vref2よりも高くなると、コンパレータ113の出力VdetはHigh出力となる。従って、スイッチ115はショート、スイッチ116はオープンとなるので、過電流保護回路121の出力電圧V121は差動増幅回路112の出力電圧と同じ電圧となる。ここで、基準電圧VrefとVref2を同じ電圧に設定しておくと、出力電圧V121は帰還Vfbよりも高いので、出力電圧V121が差動増幅回路104の非反転入力信号として働き、過電流保護回路121の負帰還121により出力電流Ioutは過電流保護設定電流に制御される。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の過電流保護回路を備えたボルテージレギュレータによれば、過電流保護設定値以上の出力電流が流れた時に、出力電圧制御の負帰還を切断し、出力電流制御の負帰還のみで動作するように構成したので、出力電流を過電流保護設定値に精度良く安定して制御することが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
104、112 差動増幅回路
113 コンパレータ
106 分圧抵抗回路
120 定電圧制御回路
121 過電流保護回路
210 電流源
211 反転増幅回路
図1
図2
図3